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  • 令和7年のトマト栽培(3)

    ◇第1果着果で追肥5月16日に支柱建てを行って10日、よく見たら大方の樹が実を付けていたので第1回目の追肥を行いました。弱弱しかった樹もやや太くなってきました。(以上この項終わり)令和7年のトマト栽培(3)

  • 令和7年のトマト栽培(2)

    ◇支柱建て昨年の記録によれば5月6日に支柱建てを実施していますが、今年は苗の植え付けが遅かったため今日(16日)になりました。昨年は既にピンポン大の第1果が生っているとの記録がありました。今年はまだ花芽がつけるのが精一杯の段階です。(以上この項終わり)令和7年のトマト栽培(2)

  • ピーター・ベーカー、スーザン・クラッカーの『ぶち壊し屋』(上)

    ◇『ぶち壊し屋(上)』(原題:THEDIVIDER)著者:ピーター・ベーカー、スーザン・クラッカー(PeterBaker,SusanGlasser)訳者:伊藤真2024.10白水社刊これは第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・ジョン・トランプの実像に迫ったルポルタージである。著者はニューヨーク・タイムスとワシントン・ポストの報道記者である。二人はインタビューを含む綿密な取材で第一次トランプ政権の実像を明らかにした。当初大統領候補者として名乗りを上げたときほとんど相手にされていなかったトランプがまさかの地滑り的勝利を勝ち取った時、2024年11月27日に彼が引き続き大統領職を続けたいと思って、狂信的な「トランプ党」支持者をして連邦議会を襲撃するという暴挙を煽るとは思っていなかっただろう。そして今、第47代ア...ピーター・ベーカー、スーザン・クラッカーの『ぶち壊し屋』(上)

  • 令和7年のトマト栽培(1)

    ◇例年通り「ホーム桃太郎」で挑戦思いもよらなかったダメッジから何とか回復したので、今年も例年通り中玉トマトの代表格「ホーム桃太郎」でトマト作りに挑戦します。<畝作り>・2月に入って、柔らかい新芽が魅力の小松菜を引き抜いて、畝を耕し石灰を鋤き込んで2週間、さらに耕し元肥を鋤き込み2週間、幅30センチ、畝高10センチの畝を作りました。・樹間40センチほどでポット大の穴を作りそこにたっぷりの水を施します。<トマト苗の移植>・水が十分浸透したら買って来たトマトの苗をポットから移します。既に花芽が1・2個ついています。値段は昨年より2割方高くなっていました。(この後つよい風に備えて暫定支柱を立てる予定です)(以上この項終わり)令和7年のトマト栽培(1)

  • ジョン・グリシャム『告発者(下)』

    ◇『告発者(下)』(原題:THEWHISTLER)著者:ジョン・グリシャム訳者:白石朗2024.6.11新潮社刊(新潮文庫)(承前)頼もしかった相棒ヒューゴを失ったレイシーはいつまでも病院で治療を受けてはいなかった。顔の疵も、剃りあがった頭もそのまま再び衝突時事件の調査に戻った。どうやら先住民族の族長はマフィアのシンジケートの親玉デューポーズとつるんでおり衝突車両運転手などの捜査を手抜きし、証拠隠滅を図った。レイシーは殺人事件がらみとなった今FBIの手を借りるしかないと協力関係を保つ会合を持った。突破子口は衝突車両運転手と彼の逃走を助けた車の運転手の特定。防犯カメラ画像と残された微量な血痕などから後者の人物はホテル経営者でマフィアの一員クラウド・ウエストベイと特定できた。ところが告発状の張本人マイヤーズが...ジョン・グリシャム『告発者(下)』

  • ふきのとうを描く

    ◇春到来の徴のひとつclesterF6(中目)すこし遅くなってしまいましたが、3月9日に顔を出したふきのとう、まだ新鮮なうちに絵にしたいと、手元にあったデコポンと一緒に描いてみました。みずみずしさが出せなくて残念です。(以上この項おわり)ふきのとうを描く

  • ジョン・グリシャムの『告発者(上)』

    ◇『告発者(上)』(原題:THEWHISTLER)著者:ジョン・グリシャム訳者:白石朗🄬6.11新潮社刊(新潮文庫)リーガルサスペンス。レイシー・ストールツ36歳。間違いなく彼女が本書の主人公である。レイシ―はフロリダ州司法審査委員会の調査員である。相棒は4人の子持ち男性のヒューゴ-・ハッチ。アメリカの法制度として州ごとに地区裁判所判事に対する不正告発を審査する(JudicialQualificationscommissionI=略称QCI)という司法機関がある。しかし著者はここでは司法審査委員会とう架空の組織を設けた。機能はほとんど同じだが前者では韓進諸部については勧告にとどまるのに対し、ここでは判事の懲戒処分を下し辞めさせるとができることになっている。フロリダ州ブランズウイック郡の地区裁判所は周囲の二...ジョン・グリシャムの『告発者(上)』

  • 漸くお目見え、ふきのとう

    ◇待ちわびた春の徴例年2月下旬には顔を出していた我が家の庭のふきのとう、今年はやけに遅く、今かいまかと待ちわびていたが一昨日ようやく10個ほど発見、安堵の胸をなで下ろした。不順な気候のせいだろうか。何はともあれ今夜は春の香りを堪能しよう。(以上この項終わり)漸くお目見え、ふきのとう

  • 季節の花・山茶花を描く(その2)

    ◇今一度山茶花に挑戦まるで台風のような冷たい突風が吹き荒れる中、改めて枝ぶりの良い山茶花を手折り新しい絵を描いてみた。違うのは構図と葉の色。硬質の葉の色と質感が出しにくい。clesterF6(細目)(以上この項終わり)季節の花・山茶花を描く(その2)

  • ヨルン・リーエル・ホルストの『警部ヴィスティング 鍵穴』

    ◇『警部ヴィスティング鍵穴』(原題:Detinersterommet)著者:ヨルン・リーエル・ホルスト(JornLierHorst)訳者:中谷友紀子2021.3小学館刊(小学館文庫)警部ヴィスティングシリーズ第13作目(邦訳第3作目)。現代ミステリーの警察小説の原点とされるシュバール&ヴァールーの<マルティン・ベックシリーズ>の系譜に属する正統派警察小説とされる。警部ヴィスティングはノルウエー国ラルヴィクという都市の警察署犯罪捜査部の警部。元国会議員の屋クラウセンが亡くなりその別荘から8千万クローネの現金が発見された。ヴィスティングは検事総長から極秘裡に捜査するよう命じられる。その夜別荘は火事になって全焼した(現金は火災前日にヴィスティングにより搬出されていた)。ヴィスティング警部はベテラン鑑識員であるモ...ヨルン・リーエル・ホルストの『警部ヴィスティング鍵穴』

  • 季節の花山茶花を描く

    ◇寒風の中咲き誇る山茶花節分を過ぎた今、日本国中が寒気に耐えている。そんな中で今こそとばかり咲き誇る我が家の山茶花。手折ってもなかなか活け難い花で、ようやく形を整えて絵になった。硬質の濃い緑の葉が特長である。椿と違って、花弁はハラハラと散る。cleserF6(細目)季節の花山茶花を描く

  • アレン・エスケンズの『あの夏が教えてくれた』

    ◇『あの夏が教えてくれた』(原題:NothingMoreDangerous)著者:アレン・エスケンズ(AllenEskens)訳者:務台夏子2024.3東京創元社刊(創元推理文庫)アメリカの15歳の少年の青春本(ミステリー)である。先に『償いの雪が降る』を読んで冤罪の死刑囚を扱ったしっとりとした作品でいたく感銘を受けたが、本作も偏見と人種差別問題を中心に据えながらミステリ―色を加えふくらみを持たせた作品(2019)である。ちなみに『償いの雪が降る』に登場する「冤証明機関」の元弁護士、ロースクールの教授ボ-ディ・サンデンは本作の主人公の成人後の姿、つまり彼の少年時代の話が本作である。主人公のボーディー・サンデンはミズリー州のジェサップという田舎町で生まれ育った高1の10年生。5歳の時父を亡くし母と二人暮らし...アレン・エスケンズの『あの夏が教えてくれた』

  • アレン・エスケンズ『償いの雪が降る』

    ◇『償いの雪が降る』(原題:TheLifeWeBury)著者:アレン・エスケンズ(AllenEskens)訳者:務台夏子2018.12東京創元社刊(創元推理文庫)内容的には一種のミステリーものだはあるが、物語主人公の青年の家族を巡るナイーブな感情の流れが底流にあって、心和む作品となっている。とにかく描写が丁寧である。僕(ジョー)はアメリカ、イネソタ大学の学生。家族はアル中の母と、自閉症の弟。家を飛び出して部屋を借りある酒場でアルバイトをしている。ジョーが思ってもみなかった大事件に遭遇したのは大学の課題「身近の年長者の伝記を書く」ことで、ある介護施設を訪問しカール・アルヴァソンに出会ったことに端を発する。カールは30年前少女を陵虐し焼き殺した殺人犯として受刑中に重篤な癌に侵され、目下この介護施設に収容されて...アレン・エスケンズ『償いの雪が降る』

  • ジェフリー・ディーヴァーの『煽動者』

    ◇『煽動者』(原題:SoltudeCreek)・著者ジェフリー・ディーヴァー(JeffryDever)・訳者:池田真紀子2016.10文芸春秋社刊ジェフリー・ディーヴァーのキャサリン・ダンスシリーズ第四弾。物語の舞台はアメリカ西部カリフォルニアの中央部の海岸に面したモンテレー。主役のキャサリン・ダンスはカリフォルニア州捜査局刑事部麻薬組織合同捜査班に属している。バツイチでウェスという息子とマギーという娘がいる。彼女は「人間ウソ発見器」の異名をとるほど尋問に長け、ボディランゲージを読む「キネシスク」という審尋技術のエキスパートである。今回のダンスの活躍はキネクシスのテクを超えた活躍で名を挙げた。ダンスは麻薬組織殺人事件の容疑者セラーノの尋問にあたっていたが、セラーノに関与はないと判断し釈放した。直後に他部門...ジェフリー・ディーヴァーの『煽動者』

  • 2024年の暮れを迎えて

    ◇激動の年を予感させることども本年も日頃本ブログページをご覧いただきありがとうございました。今年は能登地震による甚大な被害を初め、ウクライナ、パレスチナ自治区での戦争の激化など悲惨な出来事が続きました。今年は私事おいても年央に思わぬ出来事があって生活のリズムが大いに乱れました。本ブログの更新もままならぬ事態となり大いに慌てました。幸いなことにことは大事に至らずこれまでの生活リズムを取り戻しつつあり、やれやれと安堵しております。さて大きく世界に目を巡らせば、来年も不確実性の高まる年ではないかと懸念しております。一つは大国アメリカの新大統領が唱える対移民政策は国民分断の端的な表れであり、今やイギリス、ドイツ、フランスなど欧州各国においても移民を巡って国内で分断化現象が起き政権を揺るがす極右勢力が勢力を増してい...2024年の暮れを迎えて

  • 石原慎太郎の『「私」と言う男の生涯』

    これは石原慎太郎という海洋スポーツマンであり、物書きであり、政治家であった一人の男の自叙伝(または回想録)である。多才にして毀誉褒貶定まらない稀代の道楽者。そんな男石原慎太郎は自分という男の生涯がどんなものであったか、どんなことがあってその時何を思ったか思ったか。どんな人たちと巡り合ってどんな影響を受けたか。時代の出来事で自分がどんな役割を果たしたか。また自ら吐露しているように女癖が悪く、妻に支えながらも繰り返した女たちと不倫の一部始終についても赤裸々に語っている。弟の裕次郎とのあれこれ、文筆家としての活動、ヨットレース、クルージング、スキューバダイビングなど海への傾倒、国会議員や都知事としての政治活動など多岐にわたる人生の諸活動を将来の自伝執筆のために早くから書き溜めていという。彼の人生は、大胆に括れば...石原慎太郎の『「私」と言う男の生涯』

  • エヴァン・オズノスの『ワイルドランド』アメリカを分断する「怒り」の源流

    ◇『ワイルドランド』<アメリカを分断する「怒り」の源流(原題:Wildland:TheMakingofAmericn'sFury>著者:エヴァン・オズノス(EvanOsnos)訳者:笠井亮平2024.3白水社刊分断状況が端的に現れた2024年大統領選挙。トランプ氏が圧勝した。これからアメリカはどう変化しどこへ向かうのか。アメリカのピュリツアー賞受賞ジャーナリストヴァン・オズノスが著わしたノンフィクションの力作である。著者はこネチカット州グリニッジ、ウィスコンシン鷲クラークスパーグ、イリノイ州シカゴ。かつて住んだことのある三か所に住む19人の人物に光を当てて7年半かけて生活の変化に沿いながらインタビューを続けた。勿論経済、社会の変化、人々の考え方の変化も膨大な情報を駆使し述詳されている。それら情報源は巻末に...エヴァン・オズノスの『ワイルドランド』アメリカを分断する「怒り」の源流

  • スティーヴン・キング『ビリー・サマーズ(下)』

    ◇『ビリー・サマーズ(下)』(原題:BILYSUMMERS)著者:スチーヴン・キング(STEPHENKING)訳者:白石朗2024.4文芸春秋社刊<承前>ビリーは警察のお尋ね者になっているばかりかニックの組織の外4つの独立系の連中に追われていることを知る。何しろビリーの首には600万ドルの賞金がかかっているという。ビリーとアリスは連れ立って隠れ家を抜け出す。ビリーは報酬の残金はともかく自分を虚仮にしたニックを懲らしめてやる考えである。ビリーの友人でこの請負仕事の紹介者でもあるバッキーの隠れ家を訪ねる。5日間ニック襲撃の準備を整えたビリーとアリスはニックの住むラスベガスを目指す。アリスの身体の傷も心の疵もかなり癒えた。ロッキー山脈を越える車の旅を続けビリーの生い立ちなど話しているうちに、アリスの顔立ちも人と...スティーヴン・キング『ビリー・サマーズ(下)』

  • 齋藤栄功の『リーマンの牢獄』

    ◇『リーマンの牢獄』著者:斎藤栄功2024.5講談社刊この本は20世紀最大の世界的金融危機の引き金となったアメリカの投資銀行リーマン・ブラザースの破綻の遠因になった同社日本法人に対する債務償還不能とした本人が著わした自叙伝である。アバターとの対話形式をとったのは監修役の阿部重夫氏の提案であり、功を奏している。1980年代。バブル景気のあげく長く低迷した日本のマクロ経済の底辺、個々の魑魅魍魎のごとき面々が跋扈する経済活動のリアルな姿が彼の職歴を通じて赤裸々に描かれる。大学卒業後著者斎藤が就職したのが、間もなく自主廃業に追い込まれた「山一證券」。職を奪われた彼は都民信組を経て外資系証券会社メリルリンチに入った。メリルリンチではBFSというスワップ取引やオプションなどデリバティブ(金融派生商品)を組み込み、客の...齋藤栄功の『リーマンの牢獄』

  • スティーヴン・キング『ビリー・サマーズ(上)』

    ◇『ビリー・サマーズ(上)』(原題:BILYSUMMERS)著者:スチーヴン・キング(STEPHENKING)訳者:白石朗2024.4文芸春秋社刊スティーヴン・キング最新作。作家デビュー50周年記念出版という。主人公ビリー・サマーズは殺人請負業「殺し屋」である(但し標的は悪人のみ)。特徴は一発で仕留める射殺(スナイピング)、ビリーはスナイパー(狙撃手)である。狙撃技術は米海軍海兵隊でみっちり訓練を受け、大隊で1,2を争う腕前だった。使うのはレミントン7000。請負の仲立ちジョージ・ビッグス(偽造屋)が持ってきた仕事の標的は裁判に出廷する被告ジョエル・アレン。これが最後の仕事と思って受けた。こんどの成功報酬は2百万ドル。手付金として50万ドルが先払いされた。依頼人ニックと射撃用の部屋を用意する不動産業ホフに...スティーヴン・キング『ビリー・サマーズ(上)』

  • カーリン・アルヴテーゲン『裏切り』

    ◇『裏切り』(原題:SVEK)著者:カーリン・アルヴテーゲン(KARINALVTEGEN)訳者:柳沢由美子2006.9小学館刊(小学館文庫)「きみといても、もう楽しくない」この一言が悲劇の始まりだった。家計の中心である妻エーヴァ35歳、生活の全てを妻に依存する夫ヘンリック。妻に負い目を感じる夫は不倫に走る。夫の不倫相手が息子の通う保育園の保育士リンダだと知った妻は激怒し二人に復讐を誓う。夫の不倫で頭にきたエーヴァはパブで知り合った若者と初めての情事に走る。この若者ヨーナスにとっても初めての体験で自分好みの彼女に夢中になる。互いに一度だけの情事であったがヨーナスは彼女の名前と住所を探しだす。ヨーナスはかつて片思いの女性を水死させようとした過去のあるパラノイア(偏執症)だった。エーヴァはリンダに致命的打撃を与...カーリン・アルヴテーゲン『裏切り』

  • 咲く花は時を忘れず

    ◇銀木犀の香り風に乗る朝雨戸を開けると馥郁とした木犀の香りがただよってきます。このブログ既報2020年10月3日銀木犀の花が咲いたと伝えています。猛暑でもなんでも自分の生の営みを忘れてはいませんでした。しばらくするとキンモクセイが咲くでしょう。(以上この項終わり)咲く花は時を忘れず

  • 雫井脩介の『霧をはらう』

    ◇『霧をはらう』著者:雫井脩介2021.7幻冬舎刊読み初めた当初は単純な法廷ものかと思ったが、事件が複数殺人のため裁判員裁判なり、国選弁護士の一員となった伊豆原柊平が状況証拠を丹念に拾い集めていく内に事件の冤罪性を確信して行く。そして真犯人の姿がおぼろに見え始め、終盤で一挙に犯人さがしの結論と犯行の真相が明かされミステリーとして完成する。刑事事件で無罪を勝ちとることが如何に困難なことか。検察の勝率9割9分という日本の司法制度の中で物証なしの立証で無罪を勝ち取るという奇跡的結果は小説の世界とはいえかなり甘いのではと言わざるを得ない。被告人小南野々花は娘2人の母である。下の娘中3の紗奈が腎炎で入院しているが同室の小児科患者2名が死亡し、点滴内にインスリンを注入されたのが死因とされた。付き添いの家族間でちょっと...雫井脩介の『霧をはらう』

  • ブーゲンビリアを水彩で描く

    ◇夏空に映えるブーゲンビリアclesterF8一昨年夏に買ってきた鉢植えのブーゲンビリア。6月に思い切って大胆に剪定した。その後新しい枝が生えて花が咲いた。あかい花弁に見えるのは苞で中にある筒状の白いのが花。花の命は短いので、命が盛んなうちに絵にして残してやろうと手掛けたが、風にそよぐ度に羽のような花弁(苞)の形が定まらず手を焼いた。(以上この項終わり)ブーゲンビリアを水彩で描く

  • 中山七里の『 絡新婦の糸』 」

    ◇『絡新婦の糸』(警視庁サイバー犯罪対策課)著者:中山七里2023.11新潮社刊警察庁にサイバー対策の組織(サイバー警察局)が設置されIT人材を求めてるという記事を読をんだ記憶がある。さすが時代の寵児中山先生、こうした時代性があるテーマを放っておくはずがない。先頃著名な暴露系ユーチューバーが脅迫、名誉棄損等の罪で訴追され断罪される事件があった。当節匿名で自由に自分の意見を開陳できるSNSという媒体のなかで、いい気になって根拠のない情報を元に誹謗中傷を重ねる者が後を絶たないが、SNSが公共空間であり、発言には責任を負わねばならない。状況によっては相応の咎めを受けるという話である。この作品でも「市民調査室」というアカウントで食いレボや旅レポなどで当たり障りのない話題でフォロワーを増やし、人気あるインフルエンサ...中山七里の『絡新婦の糸』」

  • 金子玲介の『死んだ山田と教室』

    ◇『死んだ山田と教室』著者:金子玲介2024.5講談社刊とにかく亡くなった人の音声だけが教室のスピーカーに憑依するという着想がすばらしい。不動高校(男子校)2年E組の山田君が夏休み中交通事故で死んだ。告別式明けのホ―ムルームで担任の花輪先生が「この際席替えするか」と言ったところ、突然山田君の声だけが教室のスピーカーを通じて流れ「席替え山田案」を提案する。それがきっかけでクラスの人気者だった山田と声だけでも今までどおりバカ話をして楽しもうと、呼び出し用合言葉も作った。彼らのバカ話は男子校でもあり当然当世・今様の若者言葉が縦横無尽に飛び交い、臨場感満点である。でもバカ話もいつまでもは続かない。卒業式が終わり1年経ち3年経つと元2年E組の教室を訪ねる人も少なくなった。なにせ皆歳をとって大きくなっているのに、山田...金子玲介の『死んだ山田と教室』

  • 米澤穂信の『黒牢城』を読む

    ◇『黒牢城』著者:米澤穂信2024.5講談社刊荒木村重は戦国・安土桃山時代の武将である。豪胆をもって知られ、信長に用いられたが秀吉の西国攻めへの援軍命じられたり折り重臣の讒言により信長に反旗をひるがえし、望月城に籠城した。また籠城のさ中,信長への帰順を勧める使者の黒田官兵衛を土牢におしこめた。援軍の派遣を頼む毛利軍の支援は動かず1年。ついに自ら城を出て援軍を求める旅に出るが、討手に逢い逃げるように西の毛利を目指す。しかし信長の威勢を恐れた西国の将は動かず村重は失意のまま放浪した。この辺りの話は、史実はともかくいろんな書物等で知識としてあったが、この間の村重及び官兵衛の心の裡をかくも巧みに描くだけでなく謎解きのエピソードも加えるなどなかなかの作品である。、魑魅魍魎の跋扈する戦国の世にあって、下克上を果たしな...米澤穂信の『黒牢城』を読む

  • メアリー・ヒギンズ・クラ-クの『魔が解き放たれる夜に』

    ◇『魔が解き放たれる夜に』著者:メアリー・ヒギンズ・クラーク(MaryHigginsClark)訳者:安原和見2004.5新潮社刊(新潮文庫)成人し、今は犯罪調査記者となったエリー。7歳の時に姉のアンドリアがボーイフレンドのロブに殺された。そのロブが近く保釈で刑務所を出てくる。何と身の無実を訴える裁判をおこすのだという。まだ殺人の余罪がある根っからの悪魔と信じて疑わないエリーは確固とした証拠固めに奔走する。ストーリーとしては単純で派生的サイドストーリーも安直であるが、「内緒だよ」との姉と約束を守ったばかりに、二人の逢引場所を父に伝えなかったという罪悪感、そのための両親が離婚、母の憔悴の挙句の死など犯罪被害者の被ったかずかずの悲哀も重要な構成要素となっており、読みごたえはある。ロブ陣営は再審を妨げるエリー側...メアリー・ヒギンズ・クラ-クの『魔が解き放たれる夜に』

  • 令和6年のトマト栽培ー5ー

    ◇令和6年のトマトづくりの終焉令和6年のトマト栽培に取り組みわずか5カ月で終焉を迎えました。多い木で1本に8個くらい、少ない木は3個くらい、全体で18本の木で100個くらいは収穫したと思うが、第6果以上は結果をみることなく木の徒長に任せるだけ、この先はあきらめました。今回はうどんこ病のような病気にもかかることなくあまり手を掛けず木成り完熟トマトを楽しむことが出来ました。(以上この項終わり)令和6年のトマト栽培ー5ー

  • 西村 寿行『荒涼山河風ありて』

    ◇『荒涼山河風ありて』著者:西村寿行2005.8徳間書店刊(徳間文庫)某年4月22日5時頃、山形日報記者寺本徹は磐梯朝日連峰月山北剣が峰方向に虹に似た怪光を見た。一方気象庁観測部地震課所属の河北央二はこれまで殆ど有感地震の記録がなかった酒田測候所、山形気象台から震度1という微震ながら有感地震の観測が報告されたことから不吉な予感に襲われる。妻香織と娘の沙織が月山の春スキーに出かけていたからである。月山と並ぶ羽黒山の麓五彩沼は異様な地震による上流からの土石流で隣接の民宿2軒が土砂に埋まり宿泊客らは巻き込まれ全員死亡と推定された。その一つが河北の妻子が泊まっていた民宿である。当時怪光を目視し、その時間帯に同地域に見られた黒いヘリコプターに疑念を抱いて調査を始めた寺本と、不自然な有感地震の発現と土石流の発生に疑念...西村寿行『荒涼山河風ありて』

  • J・F・フリードマン『第一級謀殺容疑』<下>

    ◇『第一級謀殺容疑』(原題:AGAINSTTHEWIND)<下>著者:J・F・フリードマン(J・F・FREEDMAN)訳者:二宮磬1991.11新潮社刊(新潮文庫)<承前>さて、ウィルは落胆する被告4人に対し、死刑判決事案では上訴は当たり前であるが上訴要件をクリアすることが如何に困難なことであるか説明する。ウィルは好きな酒も絶って(と言ってもビールは別、ワインも別)好きなメアリー・ルーとの交渉も抑えている。そんな中、突然州検事のロバートソから呼び出しを受ける。重大事件が発生。州知事を交えて事態収拾に協力を依頼される。州刑務所で暴動が発生、受刑者集団から州側の交渉役には弁護士ウィルを充てるよう要求があったというのだ。ほぼ全権委任を与えられたウィルは決死の覚悟で刑務所に向かう。受刑者集団の代表はなんとウィルの...J・F・フリードマン『第一級謀殺容疑』<下>

  • 夏の花「アジサイと姫ひまわり」を水彩で

    ◇「アジサイと姫ひまわり」は仲良しclesterF4夏の花を描く水彩画教室。昨年同様Sさんが自宅の庭に咲いているアジサイ2種(西洋紫陽花アナベル、ガクアジサイ、)姫ひまわりを持参、花瓶に入れて皆で描いた。アナベルは小ぶりなうえ白色なため、絵にするのに苦労します。部分的に影を入れて花の集合体であることを表現することにしました。紫の額アジサイも形をとることがむつかしく、ほぼ印象で描きました。姫ひまわりは花弁をもっと丁寧に描かなければと反省しました。(以上この項終わり)夏の花「アジサイと姫ひまわり」を水彩で

  • 水彩画でお菓子を描く

    ◇スイーツ集合今回の水彩画教室のテーマは「お菓子」。生ものは持ち寄りがむつかしく、結局干菓子が多くなりました。包み紙のセロハン紙、金色や模様入りの包み素材、和菓子の塗り素材、それぞれ光沢や硬軟の素材感が異なり、けっこう気を使います。今回は受け皿や和菓子に茶色系が多く気になりますが、水物系もあって、バラエティに富んだ作品になりました。(以上この項終わり)水彩画でお菓子を描く

  • J・F・フリードマ ンの『第一級謀殺容疑』<上>

    ◇『第一級謀殺容疑』(原題:AGAINSTTHEWIND)<上>著者:J・F・フリードマン(J・F・FREEDMAN)訳者:二宮磬1991.11新潮社刊(新潮文庫)本作はタイトルにある通りいわゆるリーガル・サスペンス(法廷もの)である。法廷ものと言えばジョン・グリシャム、スコット・トゥローなどが有名であるが、彼らの作品に決して引けを取らない面白さがある。それは対象事件の異常さ、法廷での丁々発止のやりとりの面白さもさることながら、主人公の弁護士ウィル・アレクサンダーのキャラクターが醸し出す空気がハードボイルド的で、マッチョでありながら時折自虐的な内心の吐露があったりして読者を惹きつける。作品中段では問題死刑囚が入っている刑務所で暴動が起き、受刑者側から州側の交渉役にはウィルが付くよう要求された。その事件現場...J・F・フリードマンの『第一級謀殺容疑』<上>

  • ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ(下)』

    ◇『巨匠とマルガリータ(下)』著者:ブルガーコフ訳者:瑞夫忠夫2015.6岩波書店刊<承前>巨匠の恋人マルガリータは著名な科学者の妻で裕福な生活をしている。巨匠が消えてから1年。マルガリータは焼け焦げた巨匠の原稿、彼と映った写真帳などを目の前につらいひと時を過ごしたあと、クレムリンの公園で魔術者ヴォラントの使いアザゼッロから魔術師の大舞踏会で女主人として協力して欲しいと頼まれる。この機会を利用して巨匠に逢えるかもしれないと申し出でを受け入れる。全身に謎のクリームを塗ると魔女の力を得た。箒に乗ったマルガリータは空を飛び手始めに巨匠の作品を悉く否定した批評家ラトゥンスキイの家をぶち壊す。モスクワの地でヴォラントに会ったマルガリータは手下の小悪魔らと共に無事に女主人としての役目を果たす。舞踏会の成功に満足したヴ...ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ(下)』

  • 令和6年のトマト栽培ー3ー

    ◇生育は順調ー収穫第一号その後トマトtの生育は順調で、木によっては第5果迄花をつけています。第5果が花を付けたら芯を摘む方が良いとする指導もあります。試しに第6果も収穫できるかやってみましょう。旅行から帰ってきたら初めて収穫できる実が1個ありました。初収穫です。今日は梅干しを漬けました(10キロ)。今年は南高梅は不作で店頭には少ししか並びませんでした。ほぼ2カ月、梅酢が上がるのを待ちます。それぞれ実が大きくなってきています。第1号のトマトホーム桃太郎という大玉種です。(以上この項終わり)令和6年のトマト栽培ー3ー

  • ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ(上)』

    ◇『巨匠とマルガリータ(上)』著者:ブルガーコフ訳者:水野忠夫2015.6岩波書店刊近代ロシア文学の巨匠の一人ブルガーコフの代表作。死後26年経って完訳が出版された。彼の作品はスターリン時代にあって何度も出版が拒否された。大作「巨匠とマルガリータ」もゴルバチョフのペレストロイカによってようやく日の目を見たのである。出版社は幻想小説とうたっているが、確かに時空の飛躍と奇想天外なシチュエーションの展開で気も動転し息もつかせないことしばしばであるが、幻想的というよりは創作世界の中に巧みにリアルな世界(当時のロシアにおける政治的・思想的現実社会)を組み込ませる韜晦の手立てと見ても良いかもしれない。時空の飛躍とパトリョーシカのようなキリスト神話の登場、劇画のような黒魔術団の暗躍などが軽快かつコミカルな文体で流されて...ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ(上)』

  • 令和6年のトマト栽培ー2ー

    ◇追肥を終えて次のステップへ翌日が雨予報なので、5月6日に支柱を立てました。苗を移植してから3週間。苗の脇に配合肥料で追肥を施しました(5/8)。すでに第1果がピンポン玉大になっている木があります。第1果が3個以上ある木は2~3個に摘果します。(以上この項終わり)令和6年のトマト栽培ー2ー

  • 目黒冬弥の『メガ銀行銀行員ぐだぐだ日記』

    ◇『メガ銀行銀行員ぐだぐだ日記』著者:目黒冬弥2022.10三五館シンシャ刊「汗と涙のドキュメント日記シリーズ」の一巻。人気シリーズで出版早々に図書館にリクエストして2年がかりで漸く読むことが出来た。かれこれ12業種でのドキュメントが刊行されているが、各巻とも業界で働いた人が綴った悲喜こもごもがもたらすドキュメントの迫真性が魅力である。今回のメガバンク銀行員と言えばリアルに三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行であり(目下第4のメガバンク入りの気配もあるが)、自ずと素性が知れて、しかも立て続けに3回もシステム障害で世間を騒がせたとあれば隠しようもないが、筆者はD銀行とF銀行が合併した時点からノンキャリ(非大学卒)の行員で、合併後も働き蜂行員として勤めたM銀行において、システム障害時の顧客へのお詫び行脚を...目黒冬弥の『メガ銀行銀行員ぐだぐだ日記』

  • 2013The Best Mysteries(ザ・ベストミストリーズ:推理小説年鑑)

    ◇2013TheBestMysteries(ザ・ベストミストリーズ:推理小説年鑑)日本推理作家協会編2013.4講談社刊2012年に国内で発表された数百の短編から日本推理作家協会が選び抜いた短編推理の決定版である。巻末には日本推理作家協会の前身「探偵作家クラブ」、「日本探偵作家クラブ」を含め「日本推理作家協会賞」受賞リストのほか、「江戸川乱歩賞」、「横溝正史ミステリー大賞」、「オール読物推理小説新人賞」、「小説推理新人賞」、「小説現代推理新人賞」、「サントリーミステリー大賞」、「日本推理サスペンス大賞」、「鮎川哲也賞」、「日本ミステリ文学大賞」、「アガサ・クリスティー賞」受賞リストが掲載されている。面白かったのは「青い絹の人形」と「探偵・竹花と命の電話」、「機巧のイヴ」。有栖川有栖の「本と謎の日々」は有栖...2013TheBestMysteries(ザ・ベストミストリーズ:推理小説年鑑)

  • 令和6年のトマト栽培ーⅠー

    ◇気合を入れてトマト栽培に挑戦連作を嫌うなす科の植物の代表トマト。我が家で前裁の畑では小松菜とブロッコリーの後はトマトと決まっていて、間違いなく連作。去年もうどん粉病に悩まされた。今年は連作障害を防ぐという肥料を飼って撒いたのであるが、さて効果はあるだろうか。苗を移植したのが4月11日。3畝に各6本、品種は殆どが「ホーム桃太郎」。種苗会社が開発した接ぎ木苗も数本ある。これは「麗夏」「かんたん大玉」「薄い皮中玉ピンキーカクテル」「大玉強うま苗」鉢植えでは「極うま中玉」木がかなり気が太くなってきた。そろそろ支柱建てが必要なる。(以上この項終わり)令和6年のトマト栽培ーⅠー

  • S・Jローザンの『春を待つ谷間で』

    ◇『春を待つ谷間で』(原題:STONEQUARRY)著者:S・Jローザン(S.J.ROZAN)訳者:直良和美2005.8東京創元社刊ローザンのリディア&ビルシリーズ第6作目。ハードボイルドものである。リディア・チンは中国系アメリカ人ですっきりした美人の中年女性。一方ビル・スミスはアイルランド系アメリカ人で無類の酒好き(バーボン)ヘビースモーカーである。武骨な大男で血の気が多く、傷が絶えない。二人は時折コンビを組んで仕事にあたる私立探偵業である。ビルは普段ニューヨークに住んでいるがたまにNY北部の丘陵地帯アップステート地域のスコハリーにある山小屋に滞在する。そこで好きなピアノを心置きなく弾く(モーツァルトの変ロ短調アダージョ、ハ短調ソナタなどが好きだ)のが最高の時間である。そんなある日地元の農園主イヴ・コル...S・Jローザンの『春を待つ谷間で』

  • 大沢在昌の『熱風団地』

    ◇『熱風団地』著者:大沢在昌2021.8角川書店刊大沢在昌らしく雑多な国籍の人々が登場する。。刃傷沙汰もほとんどない割とほんわかとしたソフトタッチの劇画風痛快譚である。東南アジアの小国”ベサール”という王国の王位継承問題がテーマ。主人公はフリーの観光ガイド佐抜克郎とベサール人元女性プロレスラーのヒナ。外務省系NPO法人「南十字星」という得体のしれない団体にベサール国の王子を探してくれと依頼される。佐抜が日本では数少ないベサール語を操れる人材だったからである。アシスタントとしてつけられた元女子プロレスラー”レッドパンサー”は佐抜が大ファンだった。二人は中国情報機関員、インド、ラオス、タイ、インドネシア、ヴェトナム、カンボジア、ベサール人など雑多な人々が住む「アジア団地」に住んでいるらしい王子探索に奔走する。...大沢在昌の『熱風団地』

  • 信州松代の旧駅舎を描く

    ◇長野電鉄屋代線の旧松代駅舎を描くclesterF8(中目)絵に描いたような空と山という表現があるが、実際この日の空は抜けるような青空だった。雲一つない真っ青な空と、雪をまとった白馬の山脈。それと対照的に廃線となって役目を果たせなくなった駅舎の寂しげなたたずまい。この駅舎は大正11年(1922年)開業当時のままで、平成24年(2012年)に廃線となってからもバス停の待合室などに利用されている。公衆電話ボックスと飲み物の自販機がある。北アルプスの北縁白馬山系は実は駅舎の左寄りに見える。信州松代の旧駅舎を描く

  • 湊かなえの『ダイアモンドの原石たちへ』

    ◇『ダイアモンドの原石たちへ』著者:湊かなえ2023.12集英社刊副題は「湊かなえ作家15周年記念本」とある。『告白』で作家デビューした作者湊かなえがこれまでに書いた小説作品29の紹介(各概ね3ページ)と、多大の影響を受けたという漫画家の池田理代子との対談、47都道府県サイン会ツアーの編集者レポート、ロングインタビュー「未来の小説家たちへ」、高校生のための小説甲子園、淡路島取材ドキュメント、年譜など多彩な誌面構成に加えて書下ろし短篇小説を添えた興味深い文庫本である。とくに「高校生のための小説甲子園」は作者湊が若い人に小説を書いてほしいという思いから始めた若い人限定の新人賞という試みで、題名の「ダイアモンドの原石たちへ」は作者の強い思いの表れか。(以上この項終わり)湊かなえの『ダイアモンドの原石たちへ』

  • キミ・カニンガム・グラント『この密やかな森の奥で』

    ◇『この密やかな森の奥で』(原題:TheseSilentWoods)著者:キミ・カニンガム・グラント(KimiCunninghamGrant)訳者:山崎美紀2023.11二見書房刊(二見文庫)日系4世の作者デビュ―2作目のサスペンス。とはいうもののサスペンスの盛り上がりは物語中段以降である。最初は大自然に抱かれた自活生活と父と子の深い愛情と強固な結びつきが語られるが、なぜ外界からの侵入者に対し強い警戒を怠らないか、15・6年前の事件が問わず語りに述べられる。その語り口はほぼ主人公クーパーの独白にちかい(最終段のエピローグだけ娘のフィンチが述懐する)。人物造形が優れていることから父と娘の互いの思いやりと固い絆がひしひしと伝わってくる。主人公元軍人のクーパーは結婚を間近にして交通事故で亡くなったシンディという...キミ・カニンガム・グラント『この密やかな森の奥で』

  • 松代藩主邸を描く

    ◇信州松代藩の旧藩主邸を描くclesterF6(中目)今は長野市であるが、旧松代町は戦国時代から北信濃の雄真田家が治めた。今も藩主の館が、旧真田邸として観光スポットとして公開されている。穏やかな日差しの差し込む部屋から庭の一隅が望め、日本人が好む長閑な雰囲気がなかなか捨て難く、写真に収め水彩画で再現してみた。江戸末期松代藩第九代藩主真田幸教が義母お貞の方の住まいとして建てたもので、明治初期まで真田家当主がお住まいになっていたということで、大大名ではないが名将真田幸村の名残をしのぶ縁にはなった。(以上この項終わり)松代藩主邸を描く

  • 大沢 在昌の『黒石』

    ◇『黒石』著者:大沢在昌2022.11光文社刊久々の新宿鮫Ⅻ。「黒石」はヘイシと読む(中国語)。全編緊迫感がみなぎる新宿鮫シリーズ最新作。自らヒーローを自認する男は、正義の味方として悪=害虫を駆除するのが使命。次々と下される殺人指令に独自に開発した残酷な殺人凶器で使命を果たす。リーダーを決めずに活動する地下ネットワーク集団「金石」は中国残留孤児二世、三世など犯罪者とカタギが混在する。一方”徐福”という正体不明の人物がいてネットワークの支配権を狙って”黒石”を殺人兵器として使いネットワーク集団の”七石”という幹部級七人など邪魔者を次々と殺し始めた。新宿署生活安全課刑事鮫島は鑑識の藪、公安から来た相棒の矢崎、管理官阿坂と相談しながら「金石」のメンバー洗い出しと、キーマンの徐福の特定、殺し屋「黒石」の割り出しに...大沢在昌の『黒石』

  • 村木 嵐の『まいまいつぶろ』

    ◇『まいまいつぶろ』著者:村木嵐2023.5幻冬舎刊これは徳川幕府第九代将軍家重の物語である。家斉は幼名を長福丸と言った。生来右脚が不自由で、言語障害を持ち父親の吉宗も我が子が「何を言っているのか分からぬ」と嘆いたことがある。老中を初め取り巻きの誰もが家重は吉宗の後を継いで第十代将軍となるのは無理で、弟君で英邁間違いなしの宗武がふさわしいと信じ込んでいた。そこに誰ひとり理解できなかった家重の話す言葉を理解できる者が現れた。町奉行大岡越前守忠相の遠縁の子大岡兵庫(幼名:のちに忠光)である。誰しも家重の言葉と称し偽りを述べたりするのではなどと危ぶんだが、「家重殿の口代りに徹し、決して耳と目になってはならぬ」と忠相に釘を刺され、終生これを守った。家重は兵庫によってようやく思いを伝える言葉を口にできない辛さから抜...村木嵐の『まいまいつぶろ』

  • ジェフリー・ディーヴァーの『ハンティング・タイム』

    ◇『ハンティング・タイム』(原題:HUNTNGTIME)著者:ジェフリー・ディーヴァー(JefferyDeaver)訳者:池田真紀子2023.9文芸春秋刊超優秀なエンジニア、アリソン・パーカーが娘のハンナとともに姿を消した。勤務先のハーモン・エナジー・プロダクツ社の社長マーティー・ハーモンは青くなった。同社の目玉商品小型原発の基幹部品SITの開発者であり、今や同社の要だからである。アリソンにはジョン・メリットという、夫がいた。3年ほど前アリソンに対する暴力行為があって服役中であったが、2年も早く仮釈放された。そのジョンが服役中「ここを出たらアリソンを探し、殺すつもりだ」と言いふらしていたというのである。マーティは警官としては凄腕だったジョンの追跡を恐れ、懸賞金ハンターで知られたコルター・ショウにアリソン親...ジェフリー・ディーヴァーの『ハンティング・タイム』

  • 人情時代小説傑作選『親不孝長屋』

    ◇『親不孝長屋』著者:池波正太郎平岩弓枝松本清張山本周五郎宮部みゆき20015.7新潮社刊(新潮文庫)世話もの時代小説に定評のある作家五人衆のアンソロジーである。いずれも江戸時代の庶民の哀歓を描いた傑作である。とりわけ最終に置かれた<神無月>(宮部みゆき)が一番と思う。山本周五郎の<釣忍>もよかった。<おっ母、すまねえ>池波正太郎生さぬ仲の息子市太郎を可愛がって育てたおぬい。夫が死んで再婚したが市太郎は新しい父になつかず、グレ出した。かつての職場岡場所の朋輩お米は”殺し”を勧めるのだが…。おぬいは心の臓の発作で死んでしまう。それがきっかけで市太郎は立ち直って親父の煙管職仕事に精を出すようになった。「おっ母のおっぱいを、ほかの男にはやりたくなかったんだ」市太郎は継母の墓前で述懐するのだった。<邪魔っけ>平岩...人情時代小説傑作選『親不孝長屋』

  • ふきのとう顔を出す

    ◇自然界は時を忘れず大きな地震があったり、季節外れの高気温が続いたり、春は通り過ぎたのかと思っていたら、小旅行から帰って見たら庭にはふきのとうが。昨年も同じ時期でした。地面の外の気温はあまり影響がないのかも。タラの芽は山菜の王者などともてはやされていますが、フキノトウは苦み走って、香りに気品があって、コシャブラと共に一級品と軍配を上げます。(以上この項終わり)ふきのとう顔を出す

  • 黒川博行の『勁草』

    ◇『勁草』著者:黒川博行2017.12徳間書店刊巷間オレオレ詐欺と呼ばれる特殊詐欺がテーマの作品である。今の日本では小金を持った高齢者がターゲットにされ、いくら注意を呼び掛けても被害者は増える一方である。詐欺グループにはターゲットを探る名簿屋、ターゲットの財産、家族状況など情報収集を受け持つ下調べ屋がいる。掛け子、出し子、受け子と分業システムになっていて、指示役に従って動くので基本互いに連係はない。本作では橋岡と矢代という名簿屋のリストに従って下調べをするチームと特殊詐欺グループを追う大阪府警特殊詐欺捜査班の佐竹と湯川という二人の刑事の戦いが中心である。ちなみに詐欺グループのリーダーは高城という名簿屋上りで、「ふれあい荘」というアパートを持っており受け子供給源である。また「大阪ふれあい運動事業推進協議会」...黒川博行の『勁草』

  • ロバート・クレイスの『天使の護衛』

    ◇『天使の護衛』(原題:TheWotchman)著者:ロバート・クレイス(RobertCrais)この作品の主人公ジョー・パイクは大富豪コナン・バークリーの娘ラーキンの警護を依頼された。パィクはロサンゼルス市警の警官だったが、辞めて私立探偵をしている。パイクを推薦したのはバッド・フリンだが彼はパッドが新米警官だった時教育警官だった。今は企業調査会社をやっている。二人はLA市警以来強い絆で結ばれている。パイクはバッドから得難い教訓を受けた。”我々の仕事は人を殺すことではない。人を生かし続けることだ”はバッドの理念。だがパイクは最初の仕事で二人に抵抗した銃器犯罪者ともみ合ううちにバットをナイフで狙った被疑者を射殺してしまった。パイクはバッドの命の恩人である。そんなことで二人に絆は一層強くなった。警護対象の女性...ロバート・クレイスの『天使の護衛』

  • 温井 徳郎の『誘拐症候群』

    ◇『誘拐症候群』著者:貫井徳郎2001.5双葉社刊作者の「症候群」三部作『失踪症候群』、『誘拐症候群』、『殺人症候群』の一つ。主役を演じるのが警視庁人事二課の環敬吾が指揮する特殊工作班の一人武藤。警察組織の枠外グループで、諸般の事情で警察が表立って扱いにくい案件を処理するいわば時代物の「必殺仕置人」の現代版と言った役回りである。今回の「誘拐」案件は身代金小口誘拐(身代金が何とか都合できる額)と営利誘拐対象者(男児)が殺害されるという本格大型誘拐(身代金1億円)が交錯し、誘拐グループを暴く環班の面々も交錯し合うところが読みどころ。環のグループは概ね元警官である。世間的には私立探偵や建設現場作業員、ホームレスなどさまざまである。チームの何人かが事案の調査データを持ち寄って犯人の特定し、環の指示で対処する。今回...温井徳郎の『誘拐症候群』

  • 鈴木荘一の『ロシア敗れたり』

    ◇『ロシア敗れたり』<日本を呪縛する「坂の上の雲」という過ち>著者:鈴木荘一2023.9毎日ワンズ刊日露戦争前後の歴史に関する著作。司馬遼太郎は自作の『坂の上の雲』について、「この作品は、小説であるかどうかじつに疑わしい。ひとつは事実に拘束されることが百パーセントにちかいからであり、ひとつは、この作品の書き手ー私のことだがーは同にも小説にならない主題をえらんでしまっている」とあとがきで書いているという。これは一切のフィクションを排した史実デア履歴書であると主張しており、著者は『坂の上の雲』を繰り返し何度も読んだあげく副題にあるように国民的作家司馬遼太郎によってゆがめられた史実が、あたかも日本の正史であるがごとく定着することを憂いた。そして『坂の上の雲』が通俗小説の枠を超えて人々の深層心理に食い込んでいる以...鈴木荘一の『ロシア敗れたり』

  • みかんとメジロくん

    ◇我が家のメジロくん”我が家の”などと、まるで自分が飼っているように聞こえてしまうが、実感としてはその通りである。今年はみかんが豊作で毎日メジロくんたちのためにみかんを半分に割って柿の木の枝に吊るす。向こうにも時間表があるのかすぐには現れない。しばらくするとすごい速さで偵察に来て、前後左右に視線を巡らし、異様なものの気配がないかを確かめながら、柿の木の枝から枝を渡りながらミカンに辿り着く。とにかく気配に敏感である。カメラのレンズを少し方向を変えるだけで、すっとミカンを離れる。大体番いなのか2・3羽で現れる。上の枝で啄む順番を待っていて、適当なところで交代する。ツグミなど大型の鳥もこうした獲物を狙っていて木のミカンを襲撃するが、吊るしたミカンには足場がないので寄ってこない。みかんが終わったら砂糖水で歓迎する...みかんとメジロくん

  • ロバート・B・パーカーの『盗まれた貴婦人』

    ◇『盗まれた貴婦人』(原題:PaintedLadies)著者:ロバート・B・パーカー(Robert・B・Parker)訳者:加賀山卓朗2010.11早川書房刊パーカーのスペンサーシリーズ第38作である。パーカーは39作『春嵐(Sixkill)』を最後に2,010年に亡くなった。今回の事件は題名にあるように17世紀の名画『貴婦人と小鳥』という名画が美術館から盗まれ、犯人から身代金の要求があって、スペンサーは受け渡しに向かうという美術史教授プリンスの依頼でその警護を請け負った。しかし金を渡し受け取った絵画(とみられた)が爆発、依頼人は爆死した。ろくに仕事をしなかったスペンサーは依頼料を返したものの腹の虫が収まらないので無報酬で事件の背景を探る。関係者を探っているうちに犯人の痛いところを突いたのか、スペンサーの...ロバート・B・パーカーの『盗まれた貴婦人』

  • デニス・ルヘインの『シャッターアイランド』

    ◇『シャッターアイランド』(原題:ShutterLsLand)著者:デニス・ルヘイン(DennisLehane)訳者:加賀山卓郎2003.12早川書房刊ミステック・リバー』でおなじみのデニス・ルヘインの作品。本書は一味違う。保安官を主役としているが、捜査小説でも、冒険小説でもない。読んでいくうちに「シャッター・アイランド」という孤島、密室、暗号の登場でまるで本格ミステリー小説と見紛う構成である。物語は1954年9月、主人公のアメリカの連邦保安官テディ・ダニエルズと相棒のチャック・オールが、ボストン沖のシャッターアイランドにあるアッシュクリフ病院という精神障害犯罪者病院を訪れるところから始まる。女性患者の一人が行方不明になったことで二人が派遣されたのである。主人公のテディは放火事件で妻を亡くしており、放火犯...デニス・ルヘインの『シャッターアイランド』

  • 2023年の大みそかを迎えて

    ◇疾風怒濤の一年いつも感じることながらこの年も実に慌ただしい一年でした。我が国の宰相岸田さんなどはもっと慌ただしく感じているでしょう。埒もない些事が因で(晩秋のパーティー券事案はダメ押し)、幾度もボディブローを食らって、支持率がみるみる危険水域(喫水線?)を超えるとは思ってもいなかったでしょう。大仕事はやっていないものの、それなりに一生懸命に仕事をしているのに、取り巻く人達が足を引っ張ってダメッジを与えているのが実態で気の毒です。岸田さんを例に出し失礼千万ながら、かくいう小生も寄る年波には勝てず、身体的にダメッジを受け、日常の活動が停滞し、あまり間を置かず更新を心掛けてきたブログを中断することもあって本人もショックでした。若いころは高度成長期の初期で明日に、あくる年に夢と希望が持てました。30年も給料が上...2023年の大みそかを迎えて

  • トニ・モリスンの『暗闇に戯れて』

    ◇『暗闇に戯れてー白さと文学的想像力』(原題=PLAYINGINTHEDARKWhitenessandtheLiteraryImagenation)著者:トニ・モリスン(ToniMorrison)訳者:都甲幸治2023.9岩波書店刊(岩波文庫)本の題名で一瞬サスペンスか何かと誤解しそうになるが、違う。キャザー、ポー、トウェイン、ヘミングウェイなどアメリカ文学者の作品にみる人種的差別の構造を分析した批評書である。アメリカ文学史の根底にある「白人男性を中心にした思考」形態を鋭いタッチで抉り出す。”白人ではない、アフリカ的な(あるいはアフリカ系の)存在や人物が想像力の中でどう構成されてきたのか、そしてまた、こうして捏造された存在が想像力の中でどう利用されてきたのかを、この研究では堀り下げる。””文学的想像力にお...トニ・モリスンの『暗闇に戯れて』

  • みかんを描く

    ◇我が家の青島ミカンclesterF6(中目)今年は我が家の柿がほとんど実を付けなかった。昨年が豊作だったので諦めていたところ、花が沢山咲いたみかんが驚くほどたくさん実を付けた。先週の水彩画教室でみかんを描くというので葉枝付きのミカンを持って行った。店頭のミカンと違って枝と葉を付けただけで新鮮さが伝わってくる。皮を抜いた姿も捨てがたい。(以上この項終わり)みかんを描く

  • 荒山 徹の『風と雅の帝』

    ◇『風と雅の帝』著者:荒山徹2023.9PHP研究所刊歴代天皇の系列に数えられていない天皇。王政復古、天皇親政を頑なに追い続けた後醍醐天皇に対抗し「天皇とは何か」を追い求めた「光巌帝」の激動の人生を描いた歴史小説。鎌倉時代から室町時代にかけて、万世一系の天皇家は持明院統、大覚寺統という二系列の王朝が互いに正当性を主張し合う皇統分裂時代があった。学校の歴史教科書でもあまり詳細には語られていない。この渦中にあった光厳天皇(量仁帝)に焦点を合わせ、この時代の幕府の権力構造の波に翻弄された天皇の苦悩を描いたのが本書である。作者は数多の史料、文献、著作を跋渉し魅力的な天皇像をヴィヴィッドに描き出した。皇統分裂は後嵯峨上皇が後深草帝と亀山帝とどちらを後継者にするかを定めないまま薨去したことに発する。一時は双方10年を...荒山徹の『風と雅の帝』

  • 水彩で魚の干物を描く

    ◇魚の干物・目刺しclesterF4(中目)前々回の水彩画教室のモチーフは魚の干物。昨年と同様アジの開きとイワシの目刺し。普段は目刺しはもちろんホッケの開きなど好物で良く食べるのだが、絵の素材には載ってこない。ましてや高橋由一画伯の超有名な「荒引鮭」などは論外。目刺しというが店頭に並ぶ目刺しはえらを竹串や藁で刺したのが多い。教室では藁は鰓から外されていた。新鮮な目刺しは皮肌が光り輝いている。鰓は陽に焼かれてべっこう色になっている。目にひかりはないが恨めしそうで、じっと見てはいけない。竹ざるにヒバなどの枝が敷いてあると色彩的にバランスがよく引き立ったと思うがそれは贅沢というもの。目の周辺をよく観察し丁寧に描けばよかったと後悔(下手にいじるとかえっておかしくなること必定)。(以上この項終わり)水彩で魚の干物を描く

  • パット・パーカーの『女たちの沈黙』

    ◇『女たちの沈黙』(原題:TheSilenceofGirls)著者:パット・パーカー(PatParker)訳者:北村みちよ2023.1早川書房刊西洋文学の巨頭ホメロスによるギリシャの「イリアス」という戦争叙事詩を、奴隷となった女性たちの視点からトロイア戦争の前後の出来事を描いた長編小説である。「イリアス」の主要人物と言えばアキレウスを初めアガメンノンなど男が主役であるが本書では攻略されたリュルネソスというトロイ近郊の王国の王妃プリセイスなど女性たちが戦争捕虜として囚われ、戦利品としてギリシャ連合軍のために働らかされる。リュネソスなど高貴な出の女性は側女として、その他は奴隷としてトロイを攻める側のために働かされた。本書を読むにはまずトロイア戦争を頭に入れておかなければならない。今から3000年以上前地中海で...パット・パーカーの『女たちの沈黙』

  • 冬の野菜を描く

    ◇透明水彩で描く冬の野菜clesterF4先週の金曜日は写生会が予定されていたのだがあいにくの雨。このところ写生会は雨で流れることが多い。金曜日は特異日かも。今週は冬の野菜ということで、カボチャと里芋。レンコンも今の時期が旬なのだが、幹事さんはサツマイモを選んだ。しかも焼き芋。生のサツマイモと違って、半分に折った皮と実の質感を描き出すのがむつかしい。カボチャも皮が同じ色でもなく個性がある。半分に割った中の種がまた悩ましい姿である。それにしても里芋の皮はどうして何段もひげがあるのだろう。(以上この項終わり)冬の野菜を描く

  • レイチェル・ホーキンスの『階上の妻』

    ◇『階上の妻』(原題=TheWifeUpstairs)著者:レイチェル・ホーキンス(PachelHawkins)訳者:竹内要江2021.8早川書房刊物語の舞台はアメリカ南部アラバマ州のソーンフィールド・エステイトという高級住宅地。その一画の邸宅にエディ・ローチェスターとビーという新婚夫婦が住んでいる。ある夜ビーは友人のブランチ・イングラムと湖にボートを出し、二人は行方不明となった。ビーという妻はサザン・マナーズという室内装飾企業を興した経営者でハワイでエディと知り合い3か月で結婚した。ビーの総資産は2億ドルにのぼる。湖で遭難した二人の女性は溺死が推定されるものの行方が分からない。そのうちブランチの遺体が湖から発見された。死因は打撲によると見られ夫のトリップが逮捕された。ビーは依然行方不明である。独り身とな...レイチェル・ホーキンスの『階上の妻』

  • エマ・ホリーの『料理人』

    ◇『料理人』(原題:CookingupaStrom)著者:エマ・ホリー訳者:山崎久美子2002.6光文社刊舞台はアメリカ・マサチュセッツ州ケープコッド。アビゲイル・コーツ(アビー)という簡易レストランのオーナーとストーム・デュプレというロサンゼルスから流れついた青年シェフ。この二人が主要登場人物である。さてストームは心から満足できる料理を作ることを別にすれば、女が官能の深みに目覚めることを助けてやることこそ、自分の才能、使命だとさえ思っているというプレーボーイだった。だから彼をシェフとして雇ったアビーは間もなくストームの虜になって彼なくば日も夜も明けない状態に陥る。幸いストームは料理の腕が良く、ストームを雇ってから店は大繁盛、二階を改築するプラン迄持ち上がった。小説タイトルは「料理人」であるが、登場する料...エマ・ホリーの『料理人』

  • 浅田次郎の『一路』<下>

    ◇『一路』<下>著者:浅田次郎2015.5中央公論新社刊<承前>吹雪の中難路の「和田峠」を越した蒔坂左京大夫の参勤交代の一行。到着日は一日でも遅れてはならない厳しい御法度のため急ぎに急ぐ。お家乗っ取りを企む殿様後見役の蒔坂将監は侍医の辻井良軒を抱き込み眠り薬に砒素を仕込む暗殺を命じたが良軒に拒まれて企みは頓挫した。碓氷峠は江戸に下る際はさしたる苦労はない。一行は途中で加賀藩百六万石の大大名の妹君乙姫様が江戸を目指す300人を超す行列に遭遇するが「参勤道中」を盾にして風の如く駆け抜ける。其騒ぎの一瞬の間に一路を垣間見た乙姫君は恋に落ちる。遠足(とおあし)で知られる安中宿を駆け足で抜け次の宿松井田宿を目指す。ところが無理が続いた御殿左京大夫様は安中宿にて発熱、このままでは江戸到着日が遅れる。老中にその旨遅延届...浅田次郎の『一路』<下>

  • 浅田次郎の『一路』

    ◇『一路』著者:浅田次郎2015.4中央公論新社刊これは時代小説。本の表題「一路」とは主人公の名前である。小野寺一路は父親が亡くなって急遽江戸から郷里美濃の田名部に呼ばれた。跡継ぎなので、仕えている知行7500石の旗本蒔坂左京大夫の御供頭の役目を継ぐためである。父は失火が因で亡くなっているので本来ならばお家断絶でもおかしくないところ、参勤交代の期日が迫っているため急遽一路に御供頭として差配を任せることとしたのである。江戸までの12日間の参勤道中である。ところが一路は父親からは道中御供頭としての何たるか、その作法などまるで教わっていなかった。そこでこの本の作者浅田次郎の出番である。人情話はお手のもの、一路を助ける数多の人々が登場する。父の友人勘定役国分七左衛門、代々の御供頭添役の栗山真吾、武士道に忠実な佐久...浅田次郎の『一路』

  • 記事掲載中断のお知らせ

    ◇記事更新中断この度一身上の都合により本欄の記事更新を一時中断のやむなきに至りました。誠に残念ですがしばらく事態が落ち着くまでお休みいたします。いつも本ページをお開きいただきありがとうございます。ごんべえ記記事掲載中断のお知らせ

  • 倉井眉介の『怪物の町』

    ◇『怪物の町』著者:倉井眉介2023.7宝島社刊第17回『このミステリーがすごい』大賞を受賞した『怪物の木こり』に次ぐ第2作目という。どんな作品か興味があったが、途中まで読んでこれはホラーでもスリラーでもない高校生のスリラーもどきの作品かと思った。主人の「僕」良太(高校生)と友人の「先輩」が、町の多くの人が殺人者であるという不思議な町に引っ越してきて不可解な出来事に遭遇する。噂通りの「殺人者がうごめく怪物の町」を実感しつつも、家族(両親と姉)の誰ひとり不審な状況に遭っておらず、彼も自分の体験を彼らに素直に話してもいない。もしかして自分たちが何か錯覚しているのではないかとか、実態がが明らかにならないのは町民が自分たちに不都合なことには「見て見ないふりをしている」からではないか。などと人間心理の不安定さをさり...倉井眉介の『怪物の町』

  • 高野和明の『踏切の幽霊』

    ◇『踏切の幽霊』著者:高野和明2022.12文芸春秋社刊作者11年ぶりの新作。まず題名がストレートでいい。読み始めてすぐに単純な心霊ものではないことがわかった。踏切の心霊写真をきっかけに、今は女性誌の取材記者だが、元社新聞社会部記者が踏切付近の殺人事件との奇妙な符合を手掛かりに手堅く関連事実を追って行き、盛り場世界、裏社会、政治家の汚職、殺人などを手繰りながら巧みにエピソードを織り交ぜ、読者を倦ませない手口が憎い。主人公の元新聞記者松田は愛する妻を亡くして2年、今は泣くことにも慣れた。心霊写真を初め殺人事件の被害者でもある「髪の長い細身の女」を追跡するにつれて、作り笑いで周囲をはぐらかして生きるしかなかったその女の哀れな育ち、過酷な人生に深い同情を覚えて彼女を死に追いやった人非人に果敢に立ち向かう一徹さが...高野和明の『踏切の幽霊』

  • ジョン・グリシャムの『大統領特赦(上・下)』

    ◇『大統領特赦(上・下)』(原題:THEBROKER)著者:ジョン・グリシャム(JOHNGRISHAM)訳者:白石朗2007.3新潮社刊(新潮文庫)アメリカ議会の名うてのロビイスト(フィクサー))ジョエル・バックマン。莫大な額の不正取引疑惑で逮捕され司法取引の末容疑を認め刑務所に入っていた。刑期を6年ほど消化したある日、突然釈放された。格別の成果を上げることもなくホワイトハウスを去る大統領アーサー・モーガンによる任期切れ直前大統領特赦のおかげ。当然バックマンから莫大な買収金が払われたと取りざたされた。しかし実は真の目的はバックマンをどこの国の誰がバックマンを殺すか見定めるというCIAの企みだった。ジョン・グリシャムといえば、押しも押されぬ法廷もの作者。リーガル・スリラーの第一人者である。そのJ・グルシャム...ジョン・グリシャムの『大統領特赦(上・下)』

  • 中西智佐乃の『狭間の者たちへ』

    ◇『狭間の者たちへ』著者:中西智佐乃2023.6新潮社刊新潮新人賞受賞後第3作目。「狭間の者たちへ」、「尾を喰う蛇」2作の小説集。<狭間の者たちへ>さえない、ダサいことを自認している中年男。妻と娘がいるが、妻を愛しているわけでもない。保険会社支店の営業担当であるが、成績も上がらず、年下の上司にコケにされている日常の鬱憤が積もりに積もっている。二人目の子供を求める妻に迫られても必死に拒む。結婚前には風俗店の「あーちゃん」という女性に入れ込んで通い詰めた。高価なプレゼントもしたのに結局逃げられた。彼女を「底辺から救ってやる」ような上から目線が疎ましかったからだ。週2回、早番のある時間帯の電車で一緒になる女子高生。咲きたての花のような、青みががかった甘い匂いがする。彼女の後ろに立ち息をつめてせい一杯吸い込む。元...中西智佐乃の『狭間の者たちへ』

  • 陳思宏の『亡霊の地』

    ◇『亡霊の地』著者:陳思宏訳者:三須祐介2023.5早川書房刊台湾中部台北近くの永靖の出身である作者が、故郷の地での思い出を背景に紡いだ、陳一家9人の壮絶なエピソードである。作者はこの永靖の地を「亡霊の地」という(原作は『鬼地方』)。鬼の地である。鬼には幽霊や亡霊という意味の外に劣悪な、どうしようもないという形容詞でもある。だから作者は「鬼の地=くそったれの地」という意味も持たせた。保守的で結構どろどろした因習が根付いた田舎町の中で濃密すぎる人間関係が織りなす悲喜劇にふさわしい題名かもしれない。永靖という町の情景描写が優れ、作者がこの故郷の町に持つかぎりない愛着と哀切あふれる思いが十分に伝わってくる。また日本統治下の台湾、毛沢東の中国を逃れた国民党支配時代の台湾、そして民主化の道を選んだ今の台湾の姿を垣間...陳思宏の『亡霊の地』

  • 堂場 俊一の『敗者の嘘(アナザーフェイス2)』

    ◇『敗者の嘘(アナザーフェイス2)』著者:堂場俊一2011.3文芸春秋社刊(文春文庫)子持ちでバツイチの刑事、巡査部長大友鉄33歳。バツイチとは言うが10年前に妻奈緒を交通事故で亡くし10歳の息子優斗と暮らしている。奈緒の母聖子に育児の一部を依存しいる。聖子はしきりと再婚を勧めてくる。今は捜査一課の刑事から外れ、定時で帰れる刑事部刑事総務課で研修などの事務中心の部署についているが、刑事部特別指導官の福原から時折特捜の応援を指示される。神田神保町で強盗殺人事件が発生。容疑者渋谷が重要参考人で取り調べ中であったが、自殺。ところが自分が犯人だという女性弁護士(柴崎優)が出頭し特捜本部は混迷に陥る。柴崎は訊問においても状況説明、証拠物件などに不可解な点が多くその意図がつかめない。例によって大友は福原指導官から特捜...堂場俊一の『敗者の嘘(アナザーフェイス2)』

  • 重光 葵の『外交回想録』を読む

    ◇『外交回想録』著者:重光葵2011.7中央公論新社刊この本は巻末に「『重光葵外交回想録』<1978年8月毎日新聞社刊を底本とし、改題しました。」とあります。戦後間もない1953.9出版の『重光葵外交回想録』毎日新聞社刊とは目次に若干の違いがあります。内容がどう違うのか分かりません。重光氏の著書は『昭和の動乱(上/下)』(中公文庫)、『巣鴨日記(正・続)』など知られていますが、本書は現場にいた人のドキュメントでありリアリティに富み、迫力があります。満州事変当時、がむしゃらな軍部と南京政府との間に立って、事態不拡大に奔走する姿が生々しく、真に日本国の将来を見据えた信念に感動しました。また「絶対に欧州の争いに巻き込まれては日本の為にならない」という彼の強い意見報告にもかかわらず、日独伊三国軍事同盟を結び、強大...重光葵の『外交回想録』を読む

  • 令和5年のトマト栽培=6=

    ◇既に収穫ピークを迎えたか我が家の狭いキッチンガーデンで取り組んでいる「トマト栽培」事業は以下の状況からみて敗北宣言をし、撤収段階に入らざるを得ないようです。今のところ毎日2・3個採っていますが、もうピークではないかという気がします。(1)第5果以上が結実しない木が多い。(2)すでに下部の葉が枯れ始めている木がある。(3)結果した実もなかなか大きくならない。ただ今年投入した土壌改良剤は効を発揮したらしく、うどん粉病は回避できたようです。追肥時期と分量は注意深く実行しないといけないと反省しています。(以上この項終わり)令和5年のトマト栽培=6=

  • 赤城 毅の『氷海のウラヌス』

    ◇『氷海のウラヌス』著者:赤城毅2005.7祥伝社刊(祥伝社文庫)太平洋戦争開戦前後を視野に旧日本海軍の一作戦を想定、北極海を舞台にした冒険サスペンス。日本単独でアメリカと戦っても勝利はおぼつかない。何としてもドイツを引きずり込む必要がある。昭和15年(1940)に日独伊三国軍事同盟を結んではいるがこれは日米開戦時にドイツが直ちに参戦義務を負うものではない。何か決定的な代償を提供しヒットラーを同時宣戦布告に同意させなければならない。海軍省きっての対米強硬派、軍務局の石川課長と海軍省軍令部永見大佐は「暁計画」なる秘密作戦を練った。骨子は日本が誇る最新鋭の酸素魚雷製作技術をドイツに提供し、米英の戦艦に大打撃を与えるという交換条件。日本は高速48ノット、射程40キロ、ほとんど雷跡を残さないという世界に誇る魚雷「...赤城毅の『氷海のウラヌス』

  • カーリン・アルヴテーゲンの『喪失』

    ◇『喪失』(原題:SAKNAD)著者:カーリン・アルヴテーゲン(KarinAlvtegren)作中主人公の女性シビラは社会のアウトサイダーである。社会システムの枠外にあって社会から何の恩恵も受けていないし掣肘も受けない。神様に祈ったこともあるが助けてもらったことは一度もない。唯一の関心事は食べ物とその日の寝場所を得ること。過去を忘れ、過去からも忘れられたい。ある日の朝、シビラは突如猟奇殺人事件容疑者として追われる身になった。シビラは裕福な資産家の一人娘だが、厳格な両親の元で自主性を持たずに育った。散歩中に出会ったた若者との出来事のせいで成人前に妊娠する。シビラは精神的な病療養と称して自宅に引きこもり、病院で出産した。(許可なしに私のお腹で育った子が、いま許可なしで私を離れる。なぜ何もかも私の許可なしで進む...カーリン・アルヴテーゲンの『喪失』

  • 令和5年のトマト栽培=5=

    ◇漸く色づいたトマト初採り漸くトマトが赤く色づきました。この画像は早く食べたがった妻が6月26日に採り入れたホーム桃太郎です。例年の桃太郎はもう少し大きかったような気がするのだが…。小さい方は近くの花屋で「麗夏」と言われて買った苗だが、ご覧のように小粒のまま大きくはならなかった。現時点での反省点は元肥と追肥をもっと気前よくやればよかった、元肥に堆肥をたっぷり使えばよかったのではないかということである。大玉の麗夏と言われて買った小玉中玉のトマト大玉ホーム桃太郎これから色づく中玉で採り入れ秒読みついでに鉢植えのミニトマト更についでに鉢植えのきゅうり(以上この項終わり)令和5年のトマト栽培=5=

  • 真保裕一の『英雄』

    ◇『英雄』著者:真保裕一2022.9朝日新聞出版刊発端は山藤ホールディングスという大企業の創業者が射殺されるという事件である。資産家の遺産の行方を巡って、残された妻とその息子、先妻の子長男と妹のほか婚外子の存在が明らかになったことで株式の行方によっては会社の存亡にもかかわるという状況が語られる。典型的な遺産相続を巡る争いがテーマかと思わせる。DNA鑑定を経て婚外子の死後認知が成立した。ところが遺産相続争いはそれほど大きな問題ではなく、むしろ山藤ホールディングス創業者山藤英雄の非嫡出子として登場した植松英実が、射殺という衝撃的な形で初めて実の父を知ったことから、父の本当の姿を知りたくて、かつての父の会社関係者、友人などを訪ね回るうちに意外な事実が次々と浮かび上がるところにこの小説の面白さがある。射殺された時...真保裕一の『英雄』

  • 野田市清水公園金乗院の仁王門を描く

    ◇慈光山金乗院の仁王門clesterF86月16日の金曜日は梅雨時とも思われない暑い一日でした。この日は水彩画グループの写生会。担当幹事がプランを組んで、参加予定の人は皆当日の天候を固唾を吞んで見守っていました。実際は熱中症の心配をするほどの好天で、かえって閉口しました。清水公園は本格アスレチック、植物園、キャンプ場、バーベキュー、釣り堀など多様な施設を擁し、また桜の名所としても知られています。ここには20年ほど前に写生にきて仁王門を描いたことがあって、そんな懐かしさから改めて仁王門に挑戦しました。朱塗りの門とそれを取り囲む松や広葉樹などの緑という反対色が作り出す強烈なコントラストが狙いでしたが、樹木の姿を十分にとらえ切れませんでした。またいずれ挑戦してみます。(以上この項終わり)野田市清水公園金乗院の仁王門を描く

  • 令和5年のトマト栽培=4=

    ◇梅雨入り後のトマト例年通りの訪日客(三女家族)を迎えて、ほぼ2週間に及ぶ旅行のために読書感想文も畑の作物の生育状況報告、恒例の梅干しづくり、水彩画制作状況などすっかりご無沙汰してしまった。トマト栽培については前回報告からほぼ1か月。トマトは御覧の通り、ちゃんと大きく育っているが、今年は連作障害軽減のために四国の会社から有機固形製剤を求めて鋤き込んだので、成果を期待しているのだがまだ顕著な成果は見られない。旅行中追肥をさぼったわけでそのせいもあるかも。既に第5果の花が咲いているので、これ以上の着果は望めない。鉢植えのミニトマト。これもあまり実付きが良くない。(以上この項終わり)令和5年のトマト栽培=4=

  • ディーン・クンツの『ヴェロシティ(下)』

    ◇『ヴェロシティ(下)』(原題:VELOCITY)著者:ディーン・クンツ(DEANKOONTZ)訳者:田中澄江2010.10講談社刊(講談社文庫)下巻は事がスピーディに進み、息つかせない。ビリーは友人で警官のラリーにメモを見せて対応を相談したが、少し考えさせてと言って帰ってしまった。その後携帯電話が通じないので自宅に行ってみるとラリーは死んでいた。コトルという男が犯人のメッセージを持って現れた。コトルは伝言を終えたのちビリーのバスルームで多分犯人に殺されてしまった。ビリーが疑われる証拠が残されているので、犯人されてはかなわないと毛布に包んで、溶岩トンネルに投げ入れた。いろいろ推理を重ねたうえで、ビリーはバーの同僚スティーヴ・ジリスが犯人だと確信し、ジリスの家に乗り込み拳銃を突き付けて白状を迫ったが、ジリス...ディーン・クンツの『ヴェロシティ(下)』

  • ディーン・クーンツの『ヴェロシティ』

    ◇『ヴェロシティ』(原題:VEROCITY)著者:ディーン・クーンツ(DEANKOONTZ)訳者:田中一江2010.10講談社刊(講談社文庫)モダンホラーの旗手とされるディーン・クンツの傑作ミステリー。今はさっぱり書いていない元作家ビリー。今はバーテンダーとして平凡な日々を送っていたが、ある日車に一通のメモを見つける。それからメモの予告通りビリーを犯罪者に仕立てあげる事件が正確に実行されていく。覆面連続殺人犯がターゲットのビリーをいろんな手管で追い詰めていくテンポはもちろん巧みな比喩と、ビリーと登場人物との切れ味のいい洒脱な会話が楽しい。メモは「これを警察に届ければ慈善家のばあさんを殺す、届けなければ美人の教師を殺す。6時間以内に選べ。どちらを選ぶかは、お前次第だ」という。ビリーは警察には行かなかった。そ...ディーン・クーンツの『ヴェロシティ』

  • タナ・フレンチの『捜索者』

    ◇『捜索者』(原題:thesearcher)・著者:タナ・フレンチ(TanaFrench)・訳者:北野壽美枝2022.4早川書房刊(ハヤカワ・ミステリー文庫)題名の「捜索者」の通り、プロットの本筋はカルというシカゴの元警官が定年後移住先で知り合ったトレイという少年の、失踪した兄を探し求めて奔走する話であるが、加えて牧羊が連続して何者かに惨殺される事件を解明するという付随事件が混じるものの、これが失踪事件と深いかかわりがあったことは後で分かる。シカゴというアメリカの大都会で警官をしていたというハンディを持ったカルが、アイルランドの片田舎の住人達になじもうといじらしいほど苦労する一部始終がしっかり伝わってくる。隣人のマート、雑貨屋のマリーンとその妹ヘレナなどとは直ぐに気心が通じ合った。居酒屋ではバカ話や強力な...タナ・フレンチの『捜索者』

  • 令和5年のトマト栽培=3=

    ◇トマトに支柱立て第1回目の苗を植えたのが4月25日。第2回目が4月28日。それから2週間ほどたって、随分大きくなりました。気が早い木はもう実をつけ始めています。支柱を立て木を誘引(支柱にトマトの木を紐で結わく)しました。ついでにすでに出始めた脇芽を欠きました。手前右手の鉢にはミニトマト苗を植えてあります。奥にある小松菜は2度の間引きを終えて順調に育っています。(以上この項終わり)令和5年のトマト栽培=3=

  • 中山七里の『鑑定人氏家京太郎』を読む

    ◇『鑑定人氏家京太郎』著者:中山七里2022.2双葉社刊今を時めく中山七里の「鑑定人氏家京太郎」シリーズ第1弾。鑑定をテーマにしたサスペンスは珍しい。事件そのものもプロットもさして特徴はないものの検察(警察)と鑑定人(弁護士)との丁々発止の攻防が魅力。最終章で驚愕の真相が明かされる。とにかくエスプリの効いた辛辣なやり取りが小気味よい。「氏家鑑定センター」の所長氏家京太郎は常連客の吉田士童弁護士から連続通り魔殺人事件として世間の耳目を集めた裁判での鑑定を依頼された。事件の容疑者那智貴彦ご指名で弁護人となったというのである。医師である那智は3人の若い女性を扼殺したうえ子宮を摘出するという残虐な殺人を犯した容疑者として逮捕されたのであるが、当人は最初の二人については犯行を認めたものの第三の殺人は身に覚えがないと...中山七里の『鑑定人氏家京太郎』を読む

  • 長岡弘樹の『殺人者の白い檻』

    ◇『殺人者の白い檻』作者:長岡弘樹2022.7㈱KADOKAWA刊東崎病院の脳外科医師尾木敦也は休職中なのに病院長に呼び出され、脳動脈瘤の外科手術を行った。患者は隣にある拘置所の死刑囚。手術の器械出しは敦也の妹、奈々穂。手術が失敗すれば期せずして復讐を遂げることができる。医師の倫理観を優先すれば手術を成功させなければならない。深刻なジレンマである。手術は成功した。しかし患者は右半身に麻痺が残るが、定永はリハビリに積極的で、順調に回復している。死刑囚は健康体でないと刑は執行しない。彼は死刑を望んでいるのかというと実は彼は盗みには入ったが殺人はしていないと否認しているのだが。定永が殺人を否定していることが気になって、敦也と奈々穂はとってあった報道記録等から改めて事件の見直しをする。はたして彼は殺人者なのか。奈...長岡弘樹の『殺人者の白い檻』

  • 令和5年のトマト栽培=2=

    ◇令和5年のトマト第二陣移植今年の天候具合から見るとそろそろトマト苗移植も適期到来と第二陣のトマトを植えた。やはり「ホーム桃太郎」かと思ったが、数年前に手掛けた「麗夏」があったので3本(左手前)、中玉(奥の2本)にした。畝にあらかじめポットの大きさの穴を作り、たっぷり水を注ぎ、水が浸みこんだところでポットから苗をはがし植える。根元は深く土をかけない方が良いという人もいるが吾輩はこれには従わない。風が強いと倒伏する心配があるので取りあえずの支柱を立てて細紐で誘引した。(以上この項終わり)令和5年のトマト栽培=2=

  • 水彩画で「柏ふるさと公園」

    ◇新緑の柏ふるさと公園ArchesF6新年度最初の写生会は集合場所が「北柏ふるさと公園」。これまでにも四季折々に何度か写生にずだが手を入れ過ぎたかもしれない。右手の釣り人がアクセント。いろんな木々があって、それぞれ緑の色合いが違って面白い。油絵と違って余り迷って色を重ねていくと色が濁ってくる。それが水彩画の特徴。分かっていながらつい手を加えてしまって反省することが多い。今回もややそんな憾みが残った。当日は風もなく22度を超え、夏日に近い高気温だった。(以上この項終わり)水彩画で「柏ふるさと公園」

  • 令和5年のトマト栽培開始=1=

    ◇連作栽培のトマト昨年は明らかに連作障害の症状「うどん粉病」に悩まされた。それでもしつこくトマト栽培に挑戦するのは、単純に「店頭で買うトマトより自分ちの畑で採れたトマトが数倍うまいから」という家人のおだてに乗ったから。1か月前に石灰を鋤き込んでPH調整をし、3週間前に配合肥料の元肥を施し、加えて連作障害を防ぐという某化学会社の顆粒肥料を鋤き込んでの満を持した挑戦。品種は定番の「ホーム桃太郎」1本だけ接ぎ木苗。トキタ種苗の大玉「豊作祈願」。子供だましのネーミングだが、さて成果如何。とりあえず1畝だけ7本。株間30センチ。奥は月端に蒔いた小松菜(第1回の間引き済)接ぎ木の大玉トマト。(以上この項終わり)令和5年のトマト栽培開始=1=

  • 堂場瞬一の『アナザー フェイス』

    ◇『アナザーフェイス』著者:堂場瞬一2010.7文芸春秋社刊(文春文庫)著者おなじみの警察小説である。主人公は警視庁刑事部刑事総務課の警部補大友鉄。元捜査一課の刑事だったが、2年前に妻を亡くし8歳の息子と二人の生活になって出退勤がほぼはっきりしている刑事総務課に異動になった。だが周囲には捜査一課復帰を期待されている。そしてこれはという事件があると駆り出される。なぜか。それは大友が事情聴取にあたるとだんまりを決め込んでいた相手も不思議と口を開く。生来人を安心させる力を持っているらしい。そんなある日、事件捜査応援の指示が出た。事件は男児誘拐事件。身代金は1億円を要求された。男児は6歳、父親は都市銀行の銀行員内海。銀行にも身代金の要求があり、銀行は支払いを決めた。身代金目当て誘拐の成功率は低く、大抵身代金を受け...堂場瞬一の『アナザーフェイス』

  • 人形を描く

    ◇木目込み人形をを描くclesterF43月2回目の水彩画のモチーフは人形。日本人形、西洋人形、雛人形などいろんな人形が集まりました。私は衣装の柄が気に入って、木目込み人形にしました。ほぼ1時間で仕上げたの作品で、衣装の描写がややぞんざいな感じですが、雰囲気は出ているかなと思います。(以上この項終わり)人形を描く

  • アゴタ・クリストフの『悪童日記』

    ◇『悪童日記』(原題:LeGrandCahier)著者:アゴタ・クリストフ(AGOTAKRISTOF)1991.1早川書房刊美形で頭もいい双子の男児。戦乱の大都市(多分ブタペスト)から祖母の住む田舎に逃れてきた。成長の過程で出会う世の中の不条理・苦難に果敢に立ち向かう彼らが表した日記帳の、驚きの内容に感動する。この小説では時代的にも地理的にも特定されていないものの、読んでいると明らかにヨーロッパの東部地域の第2次世界大戦前線地域を想像させる。訳者は訳注をつけほぼ間違いなく対応する歴史的事実について読者の想起を助けている。祖母は夫を毒殺したと噂されていて”魔女”と呼ばれている。彼女には孫たちを面倒見る気はさらさらない。住まわせて食べさせはするが、それは畑や家畜の世話などをした時だけ。双子の母からの仕送りの金...アゴタ・クリストフの『悪童日記』

  • 春の花ナスタチゥム

    ◇春の花の一つ「ナスタチゥム」を描くclesterF4ようやくマスクはそれぞれの判断でということになったのに、なかなかマスクが外せない人が多いようです。水彩画教室では春の花を描こうということで菜の花、クリスマスローズ、チューリップ、水仙、ラナンキュラスなど色とりどりの花が並びました。そのうち黄色と赤い花弁の鉢植えのナスタリゥムを描くことにしました。これといった特徴のない花ですが、花の赤、黄、葉の緑と土色の鉢の色がバランスよく感じられたからです。(以上この項終わり)春の花ナスタチゥム

  • 町田そのこ 『52ヘルツのクジラたち』

    ◇『52ヘルツのクジラたち』著者:町田そのこ2020.4中央公論新社刊これはDVとLGBTQという現代日本の世相の断片が微妙に交錯し、失望と救いが見事に昇華する作品である。三島貴瑚(キナコ)は継父(作中義父と言っているが継父だろう)の虐待と母の黙認という裏切りに会いつらい半生を送ってきた。52ヘルツという人間の耳にやっと届く周波数のクジラの声だけを友に自分だけの世界に閉じこもっていた。社会に出てようやく頼り甲斐のある男Tに出逢った。しかしTは愛人として囲いたいだけの男だった。それまでキナコを何くれとなく面倒を見てくれたKは、Tとの出会いは不幸を招くだけと警告した揚句自殺してしまう。Kはキナコが好きだったはずなのに告白しなかった(実はKはトランスジェンダーだった)。KはTにもキナコが幸せになるための道を選ん...町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』

  • 大津川の春景

    ◇新緑がまぶしい大津川河畔の樹々clesterF8千葉県が管理する1級河川「大津川」に春がやってきた。昨年県は河畔の樹々を大半伐採した。なぜかここだけ残っていて、今は新緑が芽吹いて輝いている。この日(3月17日)は風もなく、川面も静かだった。この間同じく手賀沼に流入する「大堀川」河畔を歩いた時は小さなカメが何匹も寄り添って日向ぼっこ(見た目)していたが、大津川では白鳥と鴨はいるがカメはほとんど見かけない。(以上この項終わり)大津川の春景

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