アメリカで銃は「自衛のため」に保持している人が多いそうです。ところで「意図」はともかくとして、その「実際」はどうなんでしょう?実際に「自衛」のために銃器が使用されている数と、そうではない(犯罪や事故)で使用されている数と、どちらが多いのかな?【ただいま読書中】『0番目の患者──逆説の医学史』リュック・ペリノ著、広野和美・金丸啓子訳、柏書房、2020年、2000円(税別)医学史は「(成功したり失敗した)医師の業績の歴史」です。しかし著者は「医学の主人公は患者」という観点から医学史を描こうとしました。感染症の世界では「ゼロ号患者」という言葉が使われます。パンデミックが起きる前に遡っての調査で見つかった最初の患者のことですが、著者は「患者ではない場合もある(=無症候のキャリア)」ことから「患者」の場合には「第一号患者...自衛の武器
金持ちでさえ「売り家と唐様で書く三代目」です。つまり貧乏になるのはけっこう容易なこと。まして生まれながらの貧乏人が貧乏を維持するあるいはもっと貧乏になるのはきわめて容易なことでしょう。【ただいま読書中】『日本における保育園の誕生──子どもたちの貧困に挑んだ人びと』宍戸健夫著、新読書社、2014年、3200円(税別)1876年(明治九年)、東京湯島の東京女子師範学校に附属幼稚園が開設されました。写真や設計図から見ると、ずいぶん立派なものです。定員は150人、お付きの女中に送り迎えをしてもらう幼児、つまり上流階級の子弟ばかりが集まっていました。ここには「富国強兵」を目指す明治政府の意志が働いています。学齢前の子供に知育と社会性を育てることが大きな目標でした。ここでは遊びも「有益の遊戯」でした。ああ、だから幼稚園は今...貧乏持続に努力は要らない
CD(キャッシュディスペンサー)がATMに置き換わってきた時代に、「自分で機械を操作しているのに、なんで使用料が必要なんだ」と私はぶつぶつ呟いていました。ただ「機械」の製造コストや置く場所の地代、掃除・集金・機械のメインテナンスなど、「コスト」はけっこうかかっているわけですから、誰かがそれを負担しなければならないわけです。最近はネットバンキングが普及してきました。ここでも私は「自分で操作しているのに、なんで使用料が必要なんだ」とぶつぶつ呟いています。えっと、この場合の「コスト」は「銀行のサーバー代」?でもATM維持費よりずいぶん安くなっているんじゃないです?【ただいま読書中】『銀行員は生き残れるか──40万人を待ち受ける運命』浪川攻著、悟空出版、2019年、1300円(税別)本書の冒頭は「2023年の銀行」の予...ATM使用料
かつての日本は、まっさらな新卒を一挙に採用して自分の会社で鍛え上げて使える人材に育てるのが根本方針でした。だからこそ年功序列に意味が出ます。育ってきた者は価値が高いのですから。そして、自分の所で育てたからこそよそには奪われたくない、だから終身雇用となります。しかし今の日本では、年功序列も終身雇用も死語です。その代わり「能力」とか「目標達成」とかが言われるようになりました。そのためか、履歴書だけではなくて自己PRのためのエントリーシートの提出が求められるようになりましたが、これは結局「即戦力」を企業が求めているように私には見えます。だけど大企業が行っている就職活動は、相も変わらず新卒を時期を決めての一斉採用。これって変じゃないです?「使える人材」を求めるのだったら、新卒ではなくて中途採用をすれば良いのですから。そ...新規採用の不思議
「医療の強化が必要」とどこかの誰かが今さら言っていますが、日本に必要なのは医療の強化だけではなくて政治の強化も、じゃないです?【ただいま読書中】『科学史の事件簿』「科学朝日」編、2000年、1400円(税別)先日読んだ『スキャンダルの科学史』が主に日本に焦点を絞っていたのに対し、続編に当たる本書は舞台が世界になっています。常温核融合の論文捏造とかクローンES細胞捏造とか、すぐにいろいろ思い出しますが、本書は1995年に単行本として出版されているので、今にして思えばけっこう古いネタが多い印象です。もしも科学史が「成功の歴史」として書かれたら、それは「大きな間違い」です。もちろん「成功」の積み重ねで科学は進歩するものですが、その陰には「捨てられた失敗」がうずたかく積み上がっています。あるいは「ピルトダウン人」のよう...もうすぐ第4波
緊急事態宣言をさっさと解除するそうです。これまでなにをやっても「遅すぎる」「後手後手」と悪口を言われていたから、今回くらいは「早すぎる」と言われたいのかな、なんてことは思いますが、これで「第四波」がくることは確実では?第三波で一度下がった患者数はまた少しずつですが増え始めているのですから。きっちりがっちり「これでもか」と言うくらい押さえ込んでから解除した方が「安心」は長持ちするのではないかなあ。ところで、「遅すぎる」「早すぎる」の“反対語”は「ちょうど良いタイミング」では?【ただいま読書中】『近代外科の父・パレ──日本の外科のルーツを探る』木村敏郎・森岡恭彦・佐野武著、日本放送出版協会(NHKブックス609)、1990年、757円(税別)パリへの留学経験を持つ三人の外科医が、近代外科の祖であるアンブロアズ・パレ...「遅すぎる」の反対語は「早すぎる」?
いわゆる「氷河期」だと「就職がとても難しい」と人は苦しむことになります。しかし大量採用の時代だと、社内での競争は厳しく出世の目はなく(社長になれるのは一人だけですから)、やがて景気が後退したら希望退職が大量に募集されることになります。【ただいま読書中】『スキャンダルの科学史』「科学朝日」編、朝日新聞社(朝日選書570)、1997年、1339円(税別)「科学朝日」に連載された、日本科学界に起きた「スキャンダル」を集めています。登場するのは、有名無名の日本人ですが、外国人も二人混じっています。一人は京大のサイクロトンを破壊した事件でのハリー・ケリー。もう一人は、ハリー・ケリーと協力しながら日本の応用研究振興に尽力したイシドル・ラビ。錬金術まがいの詐欺事件に関係したり、恋愛スキャンダルを起こしたり、大間違いの“大成果...就職の難
企業からの接待に関して官僚も政治家も、最初は「否定」で入り、否定しきれないと次は「疑念を持たれる内容ではない」「行政が歪められたことはない」とか言います。つまり「全否定」から「部分否定」に移行する。「『越後屋、お主も悪じゃのう』の接待を受けました」なんて公言(全肯定)するわけはないので、「事後にことばで何を主張するか」は無視して良いでしょう。注目するべきは「どんな行動をしたか(仲良く飯を食ったか金品のやり取りをおこなったか、その後どんな決定を行政や立法でおこなったか)」だけで良いと思います。【ただいま読書中】『西洋美術とレイシズム』岡田温司著、筑摩書房(ちくまプリマー新書365)、2020年、1000円(税別)旧訳聖書「創世記」、洪水後のノアが葡萄酒に酔っ払って裸で寝ているのを息子に目撃される、というエピソード...無効な言明・有効な行動
昭和の時代、「はいちょう」というものがありました。漢字で書くと蠅帳。通気性を保ちつつ料理にハエがたかることを防ぐ家具や食卓の上に乗せる小さなカバーです。料理を無防備に放置すると、てきめんハエがたかってくるからそれを防ぐ必要があったのです。総務省の接待や昔の大蔵省の接待、復興マネーにたかる人たちの話を聞くと、このハエのことを思います。美味しそうなものがあったら、わんわん集ってくるんだな、と。ちなみにこのハエ、うんこにも大喜びで集ります。【ただいま読書中】『あをによしそれもよし(1)』石川ローズ作、集英社、2018年、600円(税別)会社に行こうとしてうっかりタイムスリップをしてしまったサラリーマン山上(やまがみ)。彼が最初に出会ったのは奈良時代の役人小野老(おののおゆ)。おいおい、と私はツッコミを入れたくなります...ハエがたかる
人類の歴史のほとんどは「手に入るものを食べる。食べなければ、死ぬ」でした。下手したら自分が食べられる方に回ることもあったはず。「食べたいものを食べる」という贅沢を言えるようになったのはつい最近、それも世界の一部に限定されています。グルメとかダイエットとか飽食とか大量の食べ残しとか……これってどこか間違っているような気がするのは、文明の進歩のありがたみを勘違いしています?【ただいま読書中】『戦争がつくった現代の食卓──軍と加工食品の知られざる関係』アナスタシア・マークス・デ・サルセド著、田沢恭子訳、白楊社、2017年、2600円(税別)2つの世界大戦でアメリカ軍は「準備が重要」という教訓を得ました。その「準備」には、武器弾薬だけではなくて食料も含まれていました。きちんと兵士に食べさせないと、勝てないのです。親が子...食べる事
今は「ジーンズ」ですが、昔の日本では「ジーパン」と呼ばれていました。私が好きで履いていたのはBISONの製品でたしか一本3000円くらいでした。それから半世紀も経って物価は上がっているのに、店によっては1000円以下の「ジーンズ」があるのは、どうしてですか?【ただいま読書中】『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?──ファストファッションの工場で起こっていること』長田華子著、合同出版、2016年、1400円(税別)バングラデシュの首都ダッカの縫製工場で働く人が次々紹介されます。22歳のスミさん。バングラデシュの女性の初婚平均年齢は18.5歳ですが、スミさんは独身で兄夫婦の家に同居しています(ちなみに兄の奥さんも縫製工場勤務)。月給は3000タカ(日本円で約4000円)、その内2000タカを実家に仕送りしていま...ジーパンの値段
このことばでは「セックス」の方に非常に重点が置かれていますが、「フレンド」の方の大切さも忘れてはいけないのではないです?【ただいま読書中】『一六世紀文化革命2』山本義隆著、みすず書房、2007年、3200円(税別)一六世紀には軍事革命も起きました。著者は「大砲」に注目しています。遠距離砲撃では弾道計算が必要になり、重量のある大砲の輸送と設置では機械学が必要になるのです。火器の登場前、落城させるためには城壁を歩兵が乗り越える必要がありました。そこで城壁はどんどん高くなります。ところが大砲から見ると「高い城壁」は「でかい的」でしかありません。一五世紀末には従来の城は攻城砲の敵ではなくなり、そこで大砲対策として城壁は低く分厚くなりました。天守閣を堂々と造っていた日本は「大砲の時代」を迎えることがなかった、ということで...セックスフレンド
「国家公務員が倫理法に違反した」ことに対して「もう総務省の人間ではないから事情聴取ができない」とか「退職したら民間人だから国会には呼べない」とか主張する人たちは結局「真相解明」や「再発予防」を「したくない」と主張しているわけです。どうして「真相解明や再発予防をしたくない」のか、その「真相解明」をしたくなります。【ただいま読書中】『地球の超絶現象最驚図鑑』武田康男監修、永岡書店、2017年、980円(税別)「天空」「山と大地」「水中」「雪と氷」「宇宙」の5つのカテゴリーごとに「すごい自然現象の写真」を集めてあります。たとえばサハラ砂漠のハブーブ。これは大規模な砂嵐ですが、高さは1500〜2500m、幅は1000km(東京と網走を結んだ距離)になることさえあります。本書にはアメリカアリゾナ州の砂嵐の写真がありますが...真相解明
変化が常に良いものとは限りません。今より悪くなることもまた「変化」です。しかし、「悪いことが起きるかもしれない」と変化を拒否することは、「今より良くなること」も拒否することになります。もちろん「現在が最高最善」なら変化はまったく不要なんですが、それだったら現状に対する不平や不満もないはずですよね。【ただいま読書中】『一六世紀文化革命1』山本義隆著、みすず書房、2007年、3200円(税別)「ルネサンス」は「十四世紀に始まった、古代文芸を再生することで人間性を解放する運動」と大体定義されています。しかし著者は、科学史の観点からは「違和感」を感じる、と述べます。同じようなことを感じた林達夫は「ルネサンスの大きな例外」として「レオナルド・ダ・ヴィンチ、パラケルスス、ヴェサリウス」を上げています。これらの人は「古典文芸...変化
私は「昭和」について色々語りたくなることがあるのですが、それを聞かされる若い人は、私が若いときに大正や明治について聞かされたときに感じた「それは昔の話だろ」という感覚を味わっているのでしょうね。【ただいま読書中】『バベルの図書館』つばな作、太田出版、2014年、638円(税別)「語られなかった言葉」「書かれなかった文字」がもしも「存在」していたら?そんな不思議な発想から生まれた漫画のようです。「眼光紙背に徹する」が極端な形で能力化した少年と、聞こえる音あるいは聞こえない音から別の世界を聞き取る少女。二人の出会い(あるいはすれ違い)によって起きたこと/起きなかったこと。書かれなかったのに紙の上に浮かび上がる文字、目の前にいないのにいる人、起きたのに起きなかった事件……メルヘンチックな絵柄なのに、なんだかちょっぴり...前の時代
教育には大きく二種類あるように私には感じられます。1)大人が持つ理想像を子供に押しつけ、それ以外になることを認めない2)その子が持つ天分を十全に発揮させるように支援する【ただいま読書中】『ヨーロッパの舌はどう変わったか──十九世紀食卓革命』南直人著、講談社(選書メチエ123)、1998年、1700円(税別)明治時代に「西洋人のでかさ」に劣等感を持った日本人は「欧米に追いつけ追い越せ」で栄養の改革をしようとしました。具体的には西洋の食事の導入です。しかし、西洋の徴兵時の身体検査で身長の記録では、十八世紀半ばのノルウェーで159.5cm、十八世紀末のハプスブルク帝国で160cm。これが1982年オランダの新兵では180.7cmになるわけで、この間に「ヨーロッパでの食卓の近代化」があった、と著者は考えます。ちなみに、...二つの教育
素数は下から「2、3、5、7、11、13」ですが、これはあくまで「十進法」での表記です。二進法で表現すると「10,11,101,111,1011,1101」、三進法だと「2,10,12,21,102,111」、五進法だと「2,3,10,12,21,23」……なんだか規則性があるようなないような。というか、何か規則性があったらものすごく面白いことになりそうです。【ただいま読書中】『家計簿と統計──数字から見える日本の消費生活』佐藤朋彦著、慶應義塾大学出版会、2020年、1600円(税別)「家計簿」で見えるのは「その家庭の経済状況」です。しかしそれを国レベルで調査すると「国の経済状況」がリアルに見えてきます。日本で最初の近代的な家計調査は、1916年(大正五年)の「東京ニ於ケル20歳工家計調査」だと言われています。...素数
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