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ただいま読書中 https://blog.goo.ne.jp/mxd00665

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

おかだ外郎
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2015/01/19

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  • 正論

    「腹が立つくらいの正論」というものがありますが、聞いた人が腹を立てた時点ですでにその「正しさ」が他人に及ぼす効果は失われています。【ただいま読書中】『土偶を読む』竹倉史人著、晶文社、2021年、1700円(税別)「土偶」は「妊娠した女性」とか「デフォルメされた人体」とか「宇宙人」なんてことも言われています。しかし「本当に女性なのか?そもそもあれは人体か?デフォルメと言うが、本当か?」という疑問を持った著者は人類学の立場から土偶を“読む"ことにします。土偶のレプリカを常に手もとに置き、縄文人と同じような生活をすることで、縄文人が何を思ってあのような造形を生んだのかを知ろうというのです。そこから浮かんだのは、驚愕の解釈。土偶は「縄文人が大切にしていた食材(主に植物、一部貝類)を精霊として表現した写実的なフィギ...正論

  • 喉元過ぎれば熱さを忘れる

    10年経つと原発事故の悲惨さはもう忘れられてしまったようです。ならば、半世紀以上前の戦争の悲惨さなんか、もう戦争そのものがなかったことになっているのでしょうね。【ただいま読書中】『早良親王』西本昌弘著、吉川弘文館、2019年、2200円(税別)桓武天皇の同母弟で、崇道天皇という追尊天皇(天皇位には就かず、死後に天皇号を追贈された人)です。早良親王の祖父施基(しき)親王は天智天皇の第七皇子でその妻は越前の地方豪族の娘。父白壁王は末っ子でその妻和(やまと)新笠は百済の下級氏族出身です。家系図だけ見たら早良親王に天皇の“目"はありません。だからでしょう、白壁王の長男の山部王は官僚として励むことになり、弟の早良は幼くして東大寺に出され、仏道修行に励むことになります。その目が大きく変わったのが、称徳天皇の崩御で白壁...喉元過ぎれば熱さを忘れる

  • 体罰

    弱虫で卑怯者の行為です。だって「殴り返さない(殴り返せない)とわかっている相手」だけを選んで殴っているでしょ?【ただいま読書中】『命の救援電車──大阪大空襲の奇跡』坂夏樹著、さくら舎、2021年、1700円(税別)1945年3月10日未明、東京に大空襲がありました。それまで米軍の空襲は主に軍事施設を狙った精密爆撃でしたが、この時から米軍の戦術は市街地に対する無差別大規模破壊大量殺戮を目的とするものに変わります。3月12日未明には名古屋、そして13日23時57分から14日3時25分の間に大阪に274騎のB29から1730トンの焼夷弾が投下されました。大阪市は一面の火の海になります。「大阪の地下鉄の駅に逃げ込んだ人が、走っていた電車に命を救われた」という噂が一部で囁かれていました。しかしあくまで噂です。現実的...体罰

  • 正確な時計

    正確な時計世界で最初に発明された時計の正確性はどうやって確認されていたのでしょう?【ただいま読書中】『発明は改造する、人類を。』アイニッサ・ラミレズ著、安部恵子訳、柏書房、2021年、2800円(税別)材料科学者(兼サイエンス・ライター)の著者は「材料が発明家によっていかに形作られたか」だけではなくて「その材料がいかに文化を形作ったか」について探求しました。たとえば「時計」。正確な懐中時計の発明によって、「時間」は「商品」になりました。20世紀初めのロンドンで、実際に「時間」を売って歩いた女性の話が本書の冒頭に登場します。時計を持っていないけれど商売に「時刻」が必須の人(特に閉店時刻が厳密に決められていたパブの主人たち)のために、週に1回グリニッジ天文台に出かけて自身の懐中時計(「アーノルド」という名前で...正確な時計

  • 弔問外交

    “お友達"のプーチンとトランプは、いましたっけ?【ただいま読書中】『ばらまき──河井夫妻大規模買収事件全記録』中国新聞「決別金権政治」取材班著、集英社、2021年、1600円(税別)「政治」が大好きなことで結びついている夫妻が引き起こした事件の顛末です。最初は「文春砲」でした。「妻の選挙で運動員に規定以上の報酬が支払われ、その責任者は夫(しかも法務大臣)」というのです。即日河井克行は法務大臣を辞職、中国新聞は(というか、文春以外のすべてのマスコミは)文春の“二の矢"は何か、と固唾を呑みます。中国新聞は「多数の自民党県議などへの現金ばらまき」が“それ"と読んで、独自に取材を始めその感触を得て記事にします。しかし文春の“二の矢"は河井克行の「(選挙運動中の)60kmオーバーのスピード違反」。つまり結果として中...弔問外交

  • 円安対策

    「投機的な動きは許せない」と政府・日銀は円買い介入をしましたが、貴重な外貨(死語?)を手放して安物となった円を買い込むのは、結局国益を損じていません?さらに、円安傾向なのは「投機」のせいでしたっけ?【ただいま読書中】『あたしの、ボケのお姫様。』令丈ヒロ子著、ポプラ社、2016年、1400円(税別)中学生のまどかのクラスに5月という中途半端な時期に転校生るりりがやって来ます。小柄で昭和アイドルのような恰好をしていて、話すと完璧な天然ボケ。小学生の時に「あたしはお笑いの道を目指す」と決心して同級生のキエ蔵とコンビを組んで学校では人気者となっていたのに、“路線対立"(キエ蔵は完璧な脚本と徹底した稽古での漫才を目指すが、まどかは自由奔放な方が好み)のためにコンビ解消をしてしまい、その時の“傷"を今も引き摺っていた...円安対策

  • 敬老の日に思うこと

    高齢者の就労率がどんどん上がっているそうです。その記事を読んでいると、「人手不足だから」とか「日本人は勤労意欲が高いから」などの理由が挙げられていますが、これ、根拠はなんでしょう?ちゃんと「高齢者自身」に聞いたのかな?もしかしたら「年金では食っていけない」がトップの理由ではないか、と思いますが、これも私の想像でしかありません。だから実際にアンケートしたらわかるんじゃないかしら?【ただいま読書中】『嫌われた監督──落合博満は中日をどう変えたのか』鈴木忠平著、文藝春秋、2021年、1900円(税別)現役時代に3度の三冠王を獲得したとんでもない選手だった落合博満は、2004年から7年間中日ドラゴンズの監督を務めました。本書は「落合が監督になるらしい」という噂が囁かれるようになったところから始まります。日刊スポー...敬老の日に思うこと

  • 「緊張感を持って注視する」

    昔「壊れたレコードプレーヤー」という言葉がありました。しかし、ここまで“正確"に同じ言葉を確信的に繰り返している政治家を見ると、彼らの頭の中には「壊れていないテープレコーダー」が設置されているに違いない、という確信が私の中に生まれました。【ただいま読書中】『100万回死んだねこ──覚え違いタイトル集』福井県立図書館編著、講談社、2021年、1200円(税別)本書はちょっとしたクイズ本になってます。Q:あなたは図書館の司書です。「こんな本を探しています」と質問が来ました。あなたはその人に「この本のことですか?」とどんな本のタイトルを答えますか?夏目漱石の「僕ちゃん」……これは簡単。「坊ちゃん」。「蚊にピアス」……これも簡単。「蛇にピアス」。しかしこの質問で改めて「蚊」も「蛇」も虫偏であることを意識しました。...「緊張感を持って注視する」

  • 台風への備え

    まずするべきは、何でしょう?「緊張感を持って注視する」でとりあえず足りるかな?日本の政治家は「それで充分」とふだんから主張していますよね。【ただいま読書中】『NSA(上)』アンドレアス・エシュバッハ著、赤坂桃子訳、早川書房(ハヤカワ文庫SF2352)、2022年、1240円(税別)蒸気機関に駆動された産業革命の時代、イギリスではバベッジ卿(とエイダ)によって「解析機関」が製作されました。この解析機関が発展して電子化されていたら歴史はどうなっていたか、という歴史改変もののSFです。本書ではさらにもう一捻りが加えられていて、第一次世界大戦後に携帯電話とワールドネット(現在のインターネットのようなもの)も発明されていて、ちょうど現在の世界(スマホとネットの世界)とほぼ同じ状況になっているところに、ヒトラーが登場...台風への備え

  • 早起きは三文の徳

    一体何が「三文」なのか、ちょっと考えてみました。このことわざは勤労を是としている雰囲気です。早起きしてとっとと働け、と。しかし日本では「夜なべ仕事」も是とされています。「母さんは夜なべをして手袋を編んでくれた」(「かあさんの歌」)とは言いますが、「母さんは早起きをして手袋を編んでくれた」とは言いません。ただ、ここで問題になりそうなのは、照明でしょう。貧乏な家にとって、夜間の照明はそれだけで“浪費"です。もしうっかり蝋燭なんか使ったらそのコストを回収するために莫大な仕事が必要になります。それだったら太陽と共に起き出してお日さまという「無料の照明」を使った方が「三文の得」、そしてそれを実践する行為自体が「徳」であるぞよ、ということだったのでは?電気を使いたい放題でしかも遊びほうけている現代の人の姿を見たら、江...早起きは三文の徳

  • 喉元過ぎれば

    「2年も我慢したのだから」「行動制限が出ていないから」とこのお盆には人が散々動きました。「11年も経ったのだから」と政府は原発を再稼働どころか新造もする気です。【ただいま読書中】『戦火のマエストロ近衛秀麿』菅野冬樹著、NHK出版、2015年、2500円(税別)「戦火」と「近衛」で私がまず想起するのは「近衛文麿」です。由緒正しい摂関家の出身で、天皇の信任が篤かったのか首相を3回も務め、しかし軍の暴走を抑えられずその責任を占領軍に問われてA級戦犯として巣鴨プリズンに出頭を命じられ、自宅で自殺をした人。近衛秀麿は文麿の弟で、政治ではなくて音楽の道を選択しました。しかし1920年代の日本に「生きた西洋音楽」はほとんどありません。しかたなく秀麿は、東京音楽大学に潜り込んだり、貴重な楽譜を持っている人の所に行って見せ...喉元過ぎれば

  • 無問題

    「旧統一協会との関係はない」と言いつつ、選挙に協力してもらっていた人がいます。さらに「問題はないが、これからの関係は見直す」と同時に言う人もいます。関係があるの?ないの?問題がないのなら、どうして関係を見直す必要があるの?【ただいま読書中】『暁の宇品──陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』堀川惠子著、講談社、2021年、1900円(税別)広島が原爆投下の標的とされたのは、地形的に“好条件が揃っていたこと"があったこともありますが、軍都であることも大きな理由でした。ただ、戦前の日本の都市はどこも“軍都"だったはず。軍都広島の特異な点は「陸軍船舶司令部」があったことです。これは、陸軍の兵員輸送・補給・兵站を一手に担う組織で、人員は30万人と方面軍一つに相当するぐらいの巨大さでしたが、日本の史料にはその記述はほとんど...無問題

  • 効率重視

    「スピード映画」に眉をひそめる人たちの多くは、20年くらい前に「あらすじで読む名作」とか「あらすじで読む世界の名著」で「読んだ気」になっていたことがあるのではないですか?やってることは昔も今も、それほど違わないような気が私にはするのですが。【ただいま読書中】『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』オーサ・イェークストロム作、KADOKAWA、2015年、1000円(税別)「セーラームーン」と「犬夜叉」で日本が好きになって、スウェーデンから日本に引っ越してきた著者。ブログに「日本でびっくりしたこと」を四コマ漫画で描いたらそれが評判になって、とうとう本になってしまった、のだそうです。日本文化(アニメや漫画)が、外国人の運命を左右している、と聞くと、日本人としてはちょっと複雑な気分になってしまいます。子供時代に...効率重視

  • 最大多数の最大幸福

    一番手っ取り早いのは、全国民を麻薬漬けにすること。【ただいま読書中】『逝年』石田衣良著、集英社文庫、2011年、429円(税別)「娼夫クラブ」というきわどい場所を舞台にしての「闘病純愛もの」として私は前作の『娼年』を読みました。巻末で警察の摘発を受けてクラブは閉鎖、オーナーは逮捕されてしまいましたが、本作では、ちょっと前には何も知らなかった大学生のリョウがクラブの立て直しという難題に挑戦することになります。当然娼夫と客(女性)とのセックスは濃密に描写され続けますが、著者は社会的なテーマ(性同一性障害、「普通」とは何か、など)を盛り込むだけではなくて、副次的なテーマとして「女性の加齢による肉体的変化を、いかにポジティブに描写するか」もじっくりと書き込んでいます。そして、全体としてみたら、前作の「闘病純愛」を...最大多数の最大幸福

  • わからないことだらけ

    この世は「わからないこと」に満ちています。それを「わかりたい」と努力するから、自分はまだ成長できるのでしょう。もしも「すべてがわかった」となったら、あとは死ぬしかない。さすがに「死」は実際に死なないと「わからない」でしょ?【ただいま読書中】『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?──これからの経済と女性の話』カトリーン・マルサル著、高橋瑠子訳、河出書房新社、2021年、2100円(税別)ニュートンが万有引力で表現した中では「星」は「質点(重心にすべての質量が集中した点)」として表現できます。そこでは「星の個性」ははぎ取られてしまいます。また、古典的な物理学では「原子」の運動によってすべての法則が説明できるとされていました。原子レベルでも惑星レベルでも、初期条件さえわかれば「未来」は完全に予測可能でした。アダム・...わからないことだらけ

  • 過去の未来

    昔のSF作品を読んだり見たりすると、今に通用する先進性を感じることもありますが、ときにものすごく古めかしいと感じることもあります。たとえば喫煙。昭和の時代に、今のように喫煙が激減するとは誰も思っていなかったから、21世紀の世界でも多くの人が煙草を吸っていたりするんですよね。【ただいま読書中】『日本アニメ誕生』豊田有恒著、勉誠出版、2020年、1800円(税別)1961年早川書房の第一回SFコンテスト(当時の名称は空想科学小説コンテスト)で入賞した著者は、SF作家としてデビューします。同じコンテストで入賞した平井和正が少年マガジンで漫画「エイトマン」の原作をしていましたが、それがテレビアニメになることと也、著者に「シナリオライター」の口がかかります(当時のプロは「けっ、テレビ漫画だと?馬鹿にするな」だったので、素...過去の未来

  • 師匠と弟子

    「出藍の誉れ」という言葉があるように、「師匠」が注目されるのは「師匠を越えるすごい弟子」がいた場合です。だけどそれって、「人を育てる苦労」にプラスして「自分の強力なライバル」を作ってしまうわけで、なんだか割が合わないような気がします。【ただいま読書中】『絆──棋士たち師弟の物語』野澤啓亘著、日本将棋連盟、2021年、1810円(税別)雑誌「将棋世界」2019年2月号〜20年6月号に連載された「師弟」に大幅に加筆されたものです。個人としての棋士は、なかなか本心を明かしません。記者がインタビューで苦労しているのは、私もテレビ画面でよく見かけます。ところが「師弟」を切り口にすると、棋士たちは驚くほど饒舌に自分について語り始めるのだそうです。本書に登場する「師弟」は「中田功/佐藤天彦」「畠山鎮/斎藤慎太郎」「木村一基/...師匠と弟子

  • スタンド

    野球場で、観客席のことは「スタンド」と言います。もしかして昔は立ち見席しかなかったのかな?【ただいま読書中】『対馬藩江戸家老──近世日朝外交をささえた人びと』山本博文著、講談社(選書メチエ38)、1995年、1456円(税別)江戸時代、対馬藩は朝鮮貿易の窓口でした。貿易は「官営貿易」と「私貿易(朝鮮と対馬の商人が直接おこなう)」に分けられ、さらに官営貿易は「進上貿易(=朝鮮に対する朝貢貿易)」と「公貿易(対馬藩と朝鮮政府の貿易)」に分けられました。官貿易には「1年に1万8千両まで」の制限がかけられていましたがそれは無視され、平均して年に5万両、さらにそれに私貿易の利益が上乗せされました。十七世紀末に、生糸の輸入量は長崎を上回っていて、対馬藩は京都の藩邸でそれを売りさばき、西陣織の主要な原料糸となりました。対馬に...スタンド

  • 偽装工作

    人工衛星やドローンの画像を分析することで、ロシア軍がどこに集結してどこに移動しているか、といった「軍事機密」を、民間人でも自宅で簡単に見ることができる時代になりました。ただそれが“常識"になると、当然その“裏をかく"ための努力が始まるでしょう。古くは第二次世界大戦時、イギリス軍は様々な偽装工作をしていました。都市に対するドイツ空軍の夜間爆撃を逸らすために、都市の郊外に「上空からの遠目には夜間の灯火管制をやっている都市とそっくりに見える特殊な施設」を建設してそこを爆撃させたり、ノルマンディー上陸の前には「別の日に別のところに上陸する予定」とヒトラーに思わせるために偽装部隊を集結させ偽情報を流すだけではなくて国王まで動員して欺瞞工作をしたり……ということで、ロシアもまた「次はここを攻める予定」と嘘をつくために張りぼ...偽装工作

  • 最新兵器

    ロシアはウクライナで民間人は殺していないそうです。ロシアの銃弾には「軍人には命中するが民間人には当たらない」、ロシアの砲弾やミサイルには「軍関連の施設や兵器に当たったら爆発するが民間のものでは不発になる」という最新の装置が装備されているんですね?すごいなあ。【ただいま読書中】『アンドロメダ病原体──変異(上)』ダニエル・H・ウィルソン著、酒井昭伸訳、早川書房、2020年、1800円(税別)もしマイケル・クライトンが生きていたら書いたかもしれない『アンドロメダ病原体』の「続編」です。「アンドロメダ病原体」がアメリカの田舎町をほぼ全滅させ、突然変異で人体には無害(プラスチックには有害)な存在として高空に散らばってから半世紀、赤道直下のアマゾン奥地に巨大な“異変"が発生します。アンドロメダ病原体と同じ構造を持つ巨大な...最新兵器

  • 困難な道

    「容易だからではなく、困難だから挑戦するのだ」はケネディー大統領の演説だったと記憶しています。実に魅力的で力強い言葉です。他人を不幸にするのは、容易です。権力を持てば、それはさらに容易になります。しかし、他人を幸福にするのは、難しい。そもそも人はそれぞれ違った存在で、何を幸福と感じるかの“ニーズ"の種類も量も異なります。「お前は“これ"で幸せになれ」なんて命令はしても意味がありません。しかし「困難だからこそ挑戦する甲斐がある」のですよね?【ただいま読書中】『アンドロメダ病原体』マイクル・クライトン著、浅倉久志訳、早川書房(ハヤカワ文庫SF208)、1976年、380円(税別)住民が死に絶えた小さな田舎町。そこをさ迷う一人の老人。絶え絶えに泣いている赤ん坊。住民を全滅させた原因は?生き残った人がいるのは、なぜ?当...困難な道

  • 大統領を選ぶ人

    バイデン大統領が「プーチンが権力の座にいていいのか?」と言ったことが内政干渉だと物議を醸しています。もちろんロシアの大統領を選ぶのはロシア国民です。ただプーチンさんは、「ロシア国民」ではなくて「自分の支持者」だけが投票するべきだ、と考えているでしょうね。そういえばトランプさんからも同じ発想を感じたことがあります。【ただいま読書中】『科学技術の失敗から学ぶということ──リスクとレジリエンスの時代に向けて』寿楽浩太著、オーム社、2020年、1800円(税別)「人間が関わって行う一つの行為が、はじめに定めた目的を達成できないこと」という「失敗の定義」(『失敗学のすすめ』畑村洋太郎)がまず紹介されます。ついで「未知」と「無知」の違いも。たとえばタコマ橋の崩落事故やコメット機の墜落事故はそれまで誰も知らなかった「未知」に...大統領を選ぶ人

  • 花吹雪

    花は散るために咲いているのではありません。子孫繁栄のために咲いています。【ただいま読書中】『フレドリック・ブラウンSF短編全集(2)すべての善きベムが』フレドリック・ブラウン著、安原和見訳、東京創元社、2020年、3500円(税別)フレドリック・ブラウンと言えば軽妙なショート・ショート、という“偏見"を私は持っていますが(たとえば「狂った星座」「スポンサーから一言」など)、本書に収載されている「闘技場」は、軽妙ではないストレートなショート・ショートです。中学生だった私に強烈な印象をたたき込んでくれた作品ですが、あれから半世紀以上経った今再読すると、その構成の妙に感心します。中学生の時には気づかなかったなあ。伏線が実にきれいに張られていて、それがきちんと回収されるのを目撃するのは、快感ですね。落語と同じように、様...花吹雪

  • 自分にも同じことが言える?

    ウクライナ侵略に関するロシアの言い分は「ウクライナの非ナチ化」「侵略ではなくて特殊軍事作戦」でしたね。その言い分が正しいのだとしたら、では「ロシアの非ナチ化」のためだったら「特殊軍事作戦」なら決行してもよい、ということになります?【ただいま読書中】『アフガン帰還兵の証言──封印された真実』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ著、三浦みどり訳、日本経済新聞社、1995年、1748円(税別)かつてのソ連では、マスコミは官製メディアで、出版物は検閲済みのものでした。しかしペレストロイカ後、著者は『戦争は女の顔をしていない』『ボタン穴から見た戦争』で「当事者の証言を集める」「真実を歪曲しない(右とか左とか特定の立場に立たない)」というソ連では過去にないスタンスで、第二次世界大戦を「女と子供」の視点から詳しく具体的に描き...自分にも同じことが言える?

  • 名人戦

    今年の将棋名人戦が2週間後に迫ってきました。渡辺さんと斎藤さんという、昨年と同じ顔合わせですが、A級では羽生さんがB1に陥落してその入れ替わりに藤井さんが上がってきます。そう言えば羽生さんは1993年にA級に上がったら即座に優勝して94年に当時の米長名人に挑戦、名人位を奪取、という偉業を成し遂げ、「一つの時代」を始めました。そして、今年羽生さんと藤井さんが入れ替わる、つまりまた新しい「一つの時代」が始まる予感がします。米長さんは大山さん中原さんの壁を越えられず、ずっと名人を取れずにいて、49歳で初めて名人位に就くという偉業を達成していました。そのことと、ずっと名人位に“嫌われていた"渡辺さんとが私には重なって見えます。昨年と今年名人に挑戦する斎藤さんもまたA級に上がったらその年度に名人位挑戦をしたという素晴らし...名人戦

  • 電力逼迫

    まず東京電力、ついで東北電力管内にも「電力逼迫警報」や「節電要請」が出されています。NHKのニュースでは「使わない部屋の電灯を切れ」とか「テレビの画面の輝度を落とせ」とかちまちましたことを言っていますが、「テレビなんか切って下さい」くらい言ったらその本気度がわかるんじゃないでしょうか。【ただいま読書中】『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内有緒著、集英社インターナショナル、2021年、2100円(税別)友人の勧めで「完全に目が見えないが美術館巡りが大好きな白鳥(しらとり)さん」と一緒に美術館に出かけた著者は、そこで様々な発見をすることになります。「どんな絵か」を白鳥さんに説明すると、自分がこれまでさらっと通り過ぎていた美術館の絵画が全く違うように見えてきます。見て説明している間にも印象は変わります。友人...電力逼迫

  • 5000円

    政府は年金受給者に5000円をばらまくそうです。参議院選挙で一票を買うためでしょうが、たった5000円で?人を馬鹿にするな、と言いたくなります。自民党本部が河井夫妻に渡したように1億5000万円だったら、なんてことも言いませんが。そもそも、「現役世代の給料が下がったら年金も連動して下げる」と法律を決めたのは政府です。で、その制度の通りこの4月から年金が下がるとなったら、一時金を配る……何をやってるのか、意味がわかりません。とうか、政府の人間も意味がわからずにやってるのではないか、という恐ろしい疑いを私は持っています。【ただいま読書中】『女と男の大奥──大奥法度を読み解く』福田千鶴著、吉川弘文館、2021年、1700円(税別)大奥とは「(将軍以外は)男子禁制の世界」と私は思っていましたが、実はそれは「思い込み」だ...5000円

  • 非国民、のようなもの

    アメリカでは警察官に異様にひどい目に遭うのは黒人、と相場が決まっていますが、現在のロシアでは平和を望む人が警察官にひどい目に遭っているようです。そういえば戦前の日本では非国民が特高にひどい目に遭っていましたね。本来警察は犯罪者をひどい目に遭わせるための権力の暴力装置ですが、非国民(のようなもの)を対象にした場合、それは警察というよりは権力者の私兵と言った方が良さそうに感じられます。【ただいま読書中】『オリンピックの汚れた貴族』アンドリュー・ジェニングス著、野川春夫監訳、サイエンティスト社、1998年、2000円(税別)閉鎖的な環境に棲息するIOC委員たちが、実際にはどんな人でどんな行動をしているのか、それを実証できる脚注つきで詳細に述べた本です。というか、タイトルですべてが物語られているのですが。クーベルタンは...非国民、のようなもの

  • 非軍事化の意味

    「次に侵攻するときにはもっと楽にやりたい」がロシアの本音ですよね?しかし、ロシアは準備した戦力の100%をつぎ込むとは、つまり予備兵力がゼロになったわけです。偶発的な戦争ならともかく、計画的な戦争としては、予備兵力がゼロになるのは完全な失敗では?【ただいま読書中】『易のはなし』高田淳著、岩波新書(新赤)25、1988年、530円著者は「西洋文明が易と出会っそれをどのように受容したか」をまず述べます。その方が西洋化した我々にとっても易がわかりやすくなるだろう、と。登場するのは、ニーダム、ライプニッツ、ユングなど錚々たるメンバーです。そういえば小説家のP・K・ディックもストーリー展開に詰まると易を立てて筆を進めた、と聞いたことがあります。あまり有名ではないかもしれませんが、私にとってはディックも「錚々たるメンバー」...非軍事化の意味

  • 事実と小説

    「事実は小説よりも奇なり」と言います。だけどその「奇」をそのまま「ノンフィクション」として書くのではなくて、一度自分の中の創作回路を通して「フィクション」として文字で上手く表現できたものが、良い小説なのです。【ただいま読書中】『フレドリック・ブラウンSF短編全集(1)星ねずみ』フレドリック・ブラウン著、安原和見訳、東京創元社、2019年、3500円(税別)ミステリー作家としてだけではなくてSF作家としても有名な(特にショート・ショートは絶品揃い)のフレドリック・ブラウン。中学生だった私をSFの世界に有無を言わせず引きずりこんだ張本人です。(もっとも単独犯ではなくて、星新一、小松左京、ブラッドベリ、クラーク、ハインライン、ハーラン・エリスン、コードウェイナー・スミス、平井和正などなどなどなど“共犯者"もたくさんい...事実と小説

  • 黙食

    学校や修学旅行では、黙食が基本となっているそうです。それだったら、手話を皆さん習ったらどうでしょう。これならいくら「おしゃべり」しても飛沫は飛びませんよ。【ただいま読書中】『円周率πの世界──数学を進化させた「魅惑の数」のすべて』柳谷晃著、講談社(ブルーバックス)、2021年、1000円(税別)古代人にとって円周率は重要でした。土地の境界が曲線の場合、それを円に近似させて面積を算出すればそこから収穫量が計算でき、それは税収に直結するからです。ただ、そういった実用面を無視しても、円周率の値を正確に求めようとすることには不思議な魅力があったようです。πの測定で一番手っ取り早いのは実測です。円を描いて直径の長さの紐と演習の長さの紐を並べてみれば良い。これで円周率は「3+1/7」と「3+1/8」の間にあることがわかりま...黙食

  • 犬の鳴き声

    日本で「犬は何と鳴く?」と聞けば「ワンワン」と返ってきます。ちょっと気の利いた人は「アメリカではバウバウだけどね」とかつけ加えてくれるでしょう。ところで、日本のスピッツは何と鳴きます?セントバーナードは?ドーベルマンは?どれも「わんわん」ではないように私には聞こえるのですが。【ただいま読書中】『長崎通詞ものがたり──ことばと文化の翻訳者』杉本つとむ著、創拓社、1990年、1700円(税別)江戸時代の長崎出島には、通詞・通事・通辞・通訳・訳家・訳師・訳官・訳司・訳士などと呼ばれる「通訳」がいました。表記は揺らいでいて、さらにオランダ語を担当する人たちは「阿蘭陀通詞」や「蘭通詞」、中国語の担当は「唐通事」と呼ばれることが多かったそうです。鎖国令直前、日本での「外国語」はポルトガル語でした。しかし鎖国によってそれは「...犬の鳴き声

  • 侵攻の結果

    プーチンさんはウクライナ侵攻で良いことが起きると期待しているのでしょうが、アフガニスタン侵攻で結局ソ連が崩壊したことを覚えていないのでしょうか?【ただいま読書中】『平安貴族の住まい──寝殿造から読み直す日本住宅史』藤田勝也著、吉川弘文館、2021年、1700円(税別)平安京は大路・小路で東西南北に仕切られ、その最小単位は「方一町(東西一町(約120m)×南北一町つまり14400平方メートル)」。上級貴族(いわゆる公卿)の屋敷は、この方一町が基本でしたが、藤原氏嫡流の東三条殿はこの方一町二つ分の広さを誇っていました。貴族は街路に沿って築地塀を築きその中に寝殿造の住居を建設しました。対して、十世紀後半頃から登場した「町屋(町人の住居)」は直接街路に面していました。寝殿造も町屋も、建物は現存していません。ただ、絵巻物...侵攻の結果

  • ジャパニーズ・チェス

    もしチェスが日本で生まれていたら、「キング」は「天皇」か「将軍」で、さらに「譲位」システムが実装されたでしょう。それによって天皇は上皇に、将軍は大御所になり、新しい天皇や将軍がその地位を継ぐのです。そして「クイーン」は行動範囲が「城内」に制限されることになったでしょうね。【ただいま読書中】『舌を抜かれる女たち』メアリー・ビアード著、宮崎真紀訳、晶文社、2020年、1600円(税別)先日読書した『説教したがる男たち』と同じジャンルに属する本です。『オデュッセイア』の冒頭に、テレマコスが母親のペネロペイアに向かって「公的な場で話をするのは、男の仕事だ」と王宮の大広間から追い出すシーンがあります。「女性に公的発言を禁じる」のは、古代からの西洋文化の伝統です。そしてそれは現代にも保存されていて(『説教したがる男たち』で...ジャパニーズ・チェス

  • ペア競技

    「ペア」といえば「男女」の組み合わせ、が定番ですが、たとえばフィギュアスケートの「男と男のペア」なんてのはどうでしょう。ふたりが同時に4回転ジャンプをしたら、すごい迫力じゃないです?あるいは「男女」だけど「国籍が違う組み合わせのふたり」。これはオリンピックでは無理でしょうが。【ただいま読書中】『がん免疫療法とは何か』本庶佑著、岩波書店(岩波新書1768)、2019年、760円(税別)「癌の免疫療法」は百年以上前から言われていました。最初に唱えたのはアメリカの医師ウィリアム・コーリーで、ジフテリアの毒素を投与したら癌が治る、と報告したそうです。そういえば日本でも半世紀くらい前に丸山ワクチンという結核用のワクチンが“抗癌剤"としてブームになりましたっけ。これらの「免疫療法」は、基本的に「人の免疫システムを使って癌細...ペア競技

  • 禁治産者

    戦前の日本女性は、選挙権を持っていませんでした。財産を処分する権利も持っていませんでした。戸主にもなれません(例外的に家族に男が全くいない場合だけは「女戸主」になれましたが、養子が入ってきたらすぐに男が戸主になりました)。つまりは、戦前の女性は現在の禁治産者と同じ扱いです。ときどき「戦前の日本」を美化する女性がいますが、そんなにご自分が禁治産者になりたいのか、とその破滅願望には驚きます。それとも、「女は黙っとれ」と言ってもらいたいのかな?【ただいま読書中】『説教したがる男たち(原題:MenExplainThingstoMe)』レベッカ・ソルニット著、ハーン小路恭子訳、左右社、2018年、2400円(税別)「徹底して無知でありながら、完璧で挑戦的なまでの自信に満ちた態度」は「特定のジェンダー」と結びついている、と...禁治産者

  • 謝罪のふり

    不祥事がばれた日本の政治家は、散々もったいをつけてから「謝ってやるからありがたく思え」と言わんばかりの口調で謝罪(のふり)をします(しないで逃げることもあります)。ただし、たとえ謝罪をしたとしても、贖罪は絶対にしませんね。だからこそ私は「謝罪のふり」と判断できるのですが。【ただいま読書中】『「研究室」に行ってみた。』川端裕人著、筑摩書房(ちくまプリマー新書223)、2014年、860円(税別)著者がまず「行ってみた」のは、以前『バッタを倒しにアフリカへ』で強烈な印象を私に与えてくれた前野ウルド浩太郎さんの「研究室」というか、アフリカの砂漠。おりしも大発生を始めたサバクトビバッタの群れに著者は大興奮ですが、前野さんがもっと興奮しているのが笑えます。意外な言葉もあります。ある程度研究が進んで、そこからさらに世界に飛...謝罪のふり

  • 一粒の汗

    「Uber」とか「menu」とか、デリバリーアプリのDMが我が家によく届きます。店の人は料理を作るのに汗をかきます。配達人は配達で汗をかきます。だけど、店と配達人と客の間の情報を仲介するだけで、一粒の汗もかかない業者が、一番金を稼げる、というのは、なんだか釈然としない思いです。【ただいま読書中】『14歳からの宇宙論』佐藤勝彦著、益田ミリ漫画、河出書房新社、2015年、1300円(税別)まずは相対性理論、ついでビッグバン宇宙論について、わかりやすい解説があります。ビッグバンの根拠となった宇宙マイクロ波背景放射が、学者ではなくて電話会社の研究員によって発見された(そして彼らがノーベル賞を受賞した)、というエピソードも楽しめます。「真空の相転移」「インフレーション理論」など、実際に“その時"“その場"にいて論文を書い...一粒の汗

  • 同性婚への反発と男女同権への反発

    同性婚に対する保守派の反発は、「同性が結婚すること」も重要な原因でしょうが、もう一つ、外形的に「両者が平等である」(「男が女に対して優位であること」が保たれていない)ことにも原因があるのかもしれません。日本では、憲法の文面はともかく、実質としては女性は男性の“下”におかれています。それは、婚姻で男女どちらの姓が選択されるか、戸籍で筆頭者が男女のどちらか、給料が同じか、議員や社長の男女比がどうなっているか、などを見たらすぐにわかるでしょう。そして「男>女」であることが無条件に大好きな人がいます(実際に私自身、昭和のそういった文化で育った影響で、現在でも「男>女」と心の底では信じているフシがあります)。ならば、同性婚であってもどちらが「夫」でどちらが「妻」かの分担をあらかじめ決めておき、さらに「夫が絶対で妻は夫に隷...同性婚への反発と男女同権への反発

  • 統計不祥事

    日本のお役所には、小学校に戻って、国語と算数と道徳の授業をやり直す必要がある人が、多いようです。もちろん「国語」が最優先です。算数と道徳の教科書を正しく読む必要がありますから。【ただいま読書中】『月と人の歴史と物語』デイヴィッド・ウォームフラッシュ著、露久保由美子訳、原書房、2021年、2500円(税別)年代順に100のエピソードで「月と人」について語った本です。最初は45億年前「月の形成」から。そして月の地質年代についての記述が続きます。しかし、月に火山活動があったとは、その熱源はどうやって供給されていたんでしょうねえ。紀元前8000年にはすでに太陰暦があった、とか、紀元前4〜2世紀には「月は球体である」「地球は球体である」「太陽は地球よりはるかに大きい(だから「太陽が地球の周囲を回る」のではなくて「地球が太...統計不祥事

  • プライドではなくて見栄

    「プライドが邪魔をして……」という言葉があります。だけどプライドは、「邪魔をするもの」ではなくて「見えないところで自分をしっかり支えるもの」ではありませんか?【ただいま読書中】『美人コンテスト百年史──芸妓の時代から美少女まで』井上章一著、新潮社、1992年、1165円(税別)昔から人は「美人(の品定め)」に敏感です。『古事記』には「妹は美人だが姉は不美人」なんて記述がありますし、『源氏物語』の「雨夜の品定め」は有名です。江戸時代にはメディアが「美貌のランク付け」を始めました(はじめは「遊女評判記(遊郭の遊女のランキング)」、18世紀になると「娘評判記(市井の小町娘のランキング)」。それに投票や合議という“システム"が加わったのが明治時代でした。1883年(明治16年)東京日日新聞が「美人共進会」(全国から美人...プライドではなくて見栄

  • 女子学生亡国論

    1960年代にあった、社会に対して貢献しない女子が中学や高校卒業後に家事手伝いなどの花嫁修業をせずに高等教育を受けると「優秀な男子学生」が大学からはじき出されることによって、国力が落ちて結局日本が滅びる、という主張です。ということは、日本はすでに亡びているんですよね。どこぞの医学部の女性入試差別などを見ると「女子学生亡国論」そのものは半世紀経ってもまだ滅びていないようですが。【ただいま読書中】『ILOの創設と日本の労働行政』吉岡吉典著、大月書店、2009年、3000円(税別)1919年のベルサイユ平和条約には「人道的な労働条件を確保」することが「世界平和」に必要で、そのための国際機関設立が謳われました。同年10月には第一回ILO総会が開かれ「8時間労働(週48時間に制限)」「失業」「婦人や児童の労働」などについ...女子学生亡国論

  • 言葉は文字列

    「家内」や「奥さん」という言葉(あるいはそれを使う人)を、「女性を閉じ込めようとしている男女差別論者だ」と非難する人がいます。そういった人にとっては「言葉が実際にどのように使われているか」よりも「言葉の見かけ」や「言葉の出自」の方が重要なのでしょう。ところでそういった人たちはご自分のことを「お前」とか「貴様」とか呼ばれたら、喜ぶのでしょうか?「言葉の出自」は「御前」「貴い様」、つまりとってもありがたいことばなのですが。さて、お前はこのことを、どう思う?【ただいま読書中】『神社の起源と歴史』新谷尚紀著、吉川弘文館、2021年、2000円(税別)まずは「神社」が存在しなかった時代から。2003年に、紀元前10世紀後半には九州北部(玄界灘沿岸)で稲作が始まっていたことがわかりました。そこから稲作はゆっくり広がり、65...言葉は文字列

  • にらみ

    将棋の世界には「羽生にらみ」という言葉があります。羽生さんが眼鏡の奥からやや上目遣いに相手をにらむ、実に怖い目つきのことです。ところが本日の本の巻頭、もっとこわい「にらみ」がありました。佐々木勇気六段の、殺気丸出しの「にらみ」です。盤のこちら側に座っているのは藤井聡太四段(当時)。歴代トップの公式戦29連勝を達成し、この対局に30連勝がかかっていました。「そんなに簡単に“連勝の餌食"になるわけにはいかない」という先輩の意地が「殺気」となって放出されていたのでしょうが、もし視線で人が殺せるなら、この佐々木さんのにらみで何人も即死者が出ていたことでしょうね。将棋は、精神的な格闘技なのかもしれません。【ただいま読書中】『師弟──棋士たち魂の伝承』野澤亘伸著、光文社、2018年、1400円(税別)将棋界の「師弟制度」は...にらみ

  • 「シュークリーム」は日本語?

    和製英語ということばがありますが「シュークリーム」は「シュー(フランス語)」+「クリーム(英語)」ですから和製英仏語?ちなみに「シュークリーム」はフランスでは「シュー・ア・ラ・クレーム」、英語圏では「クリーム・パフ」と言うそうです。日本でしか通用しない言葉は、つまりは「日本語」ということ?【ただいま読書中】『シュークリームの発想と組み立て』誠文堂新光社、2021年、3400円(税別)東京と神奈川の「シュークリームの名店」10点で、どのような「シュークリーム」をどのように作っているか、を詳しく紹介してくれる本です。登場するのは「PatisserieduChefFUJIU」「ベルグの4月」「Sucre-rie」「Arcachon」「PatisserieYuSasage」「ENVEDETTE」「PATISSIERSH...「シュークリーム」は日本語?

  • 錯覚

    列車に乗って駅で停車しているとき、隣の列車が動き出したときにそれを自分の方が動き出した、と錯覚することが時にあります。これは別に身の危険を招く錯覚ではないので笑い話にすれば良いのですが、先日はちょっと危ない錯覚をしてしまいました。車の出入りが激しい駐車場で、駐車しようとしてバックで区画に入れて停車寸前、突然自分の車が後方に加速しているように感じたのです。慌ててブレーキをぐっと踏みましたが、それでもどんどん後ろに進んでいるように感じられます。つまり、私が停止しようとするのと同じタイミングで右隣の車が発進したのですが、それを私は「隣の車は停止していて、自分の車が後ろに加速している」と視覚的に錯覚したのでした。いやいや、冷や汗をかきました。ぐっと踏んだのがブレーキで良かった。これが踏み間違えてアクセルを踏んでいたら、...錯覚

  • 言葉からわかること

    根拠なく想像だけで物を言う人間の言葉からよくわかるのは、「真実」や「事実」ではなくて「その人の想像力の限界」です。【ただいま読書中】『アクセサリーの考古学──倭と古代朝鮮の交渉史』高田貫太著、吉川弘文館、2021年、1800円(税別)5〜6世紀の朝鮮は、北は高句麗、南には新羅・加耶・百済がお互いに敵対したり協力したりの争いを繰り返していました。そこに倭も関係しています。その交流については、各地で出土するものを見れば、ある程度見当がつきます。新羅の耳飾りがいくつも倭にあれば、それは新羅の人が贈った(送った)わけです。そこには何らかの意図があるはずですし、受けた側がそれを使っていればそこにも何らかの思惑があるはず。耳飾り、冠、帯金具、首飾り、腕輪、指輪……写真が豊富に収載されて、各地の特徴がわかりやすくなっています...言葉からわかること

  • 新しい物好きはほどほどに

    新型コロナウイルスで現在注目されているのは新顔の「オミクロン株」です。で、オミクロンはデルタより軽症だから感染対策はもう手を抜いても良い、と熱心に語っている人が多くいます。だけど“古顔"は絶滅したわけではなくてまだ何割かはデルタでしょ?新顔に夢中になって古いのを無視していたら、まだ現役の古顔からの逆襲を食らってしまいません?【ただいま読書中】『幻の本土上陸作戦──オリンピック作戦の全貌』NHK「果てしなき殲滅戦」取材班+中津海法寛著、祥伝社(祥伝社新書634)、2021年、880円(税別)沖縄戦の最中、アメリカ軍は“その後"を考えていました。海上封鎖で弱らせる案もありましたが、日本側の「決意」があまりに固いため、強硬策しかない、と「ダウンフォール作戦」が立案されます。この作戦は「オリンピック作戦(南九州に上陸、...新しい物好きはほどほどに

  • 試験の公平性

    「受験機会」や「合否の判定」が「公平」であることが「公平な試験」の絶対条件でしょう。しかし現在の大学入試の「共通テスト」、科目選択でどちらが有利とか、「国公立と私立で扱いが違う」とか、制度設計が最初から「不公平」になっています。そこにさらに、受けた方が得とか損とかが後付けで加わったわけ。こんな不公平な試験で人生を決定されて、受験生の皆さん、納得できるのかな?【ただいま読書中】『アボカドの歴史』ジェフ・ミラー著、伊藤はるみ訳、原書房、2021年、2200円(税別)アボカドは他の多くの植物と同様、動物に種ごと実を食べてもらい別の場所で排便してもらうことで自分の棲息範囲を広げる戦略を選びました。ところがアボカドがターゲットとしていた大型草食動物の多くは更新世に絶滅。生き残った大型草食動物(象、馬、バイソンなど)はアボ...試験の公平性

  • 座右の銘

    誰かからの借り物の言葉。【ただいま読書中】『感覚が生物を進化させた──探索の階層進化でみる生物史』実重重実著、新曜社、2021年、2500円(税別)「生物の分類」は時代によって変化しますが、現在は「分子系統解析」の手法が主流となり、「原核生物」が複数共生することで生まれた「真核生物」から多種多様な生物(主な幹は「アメーバ」「動物菌類」「植物」「ゾウリムシ」「ミドリムシ」「ケイ藻」「円石藻」「タイヨウチュウ」の8種)が生まれたとされています。ミドリムシは、葉緑体を持ち、昼は浮かび上がって光合成をし夜は沈みます。光合成が十分できない場合には遊泳して細菌を捕まえて食べる、植物のような動物のような単細胞生物です。光を求めて運動をするので、光を感受する器官を持っています。遊泳中にミドリムシはくるくる回転し、それによって光...座右の銘

  • まん延防止

    沖縄県では、呑み屋を閉鎖するよりも基地を閉鎖する方がよほど効果的なのでは?【ただいま読書中】『不条理日記完全版』吾妻ひでお作、復刊ドットコム、2019年、2500円(税別)「不条理」「SF」「ロリ」「エロ」などで一世を風靡した作者ですが、先日「亡くなって2年」ということを改めて思い出して、本書を読む気になりました。そういえば『失踪日記』の読書記録をこのブログに書いたのは、何年前のことになるでしょう?もう十年以上経つかな?ディック、ブラウン、クラーク、ベスター、星新一、ボブ・ショウ……彼らの代表作をほんの一コマ(長くてもたった数コマ)でパロディーとして表現してしまう、もうこれは笑うしかありません。原作の見当がつかないものも混じっていますが、それでも面白い。それに、作者が書く女の子って、可愛いんですよね。こんな漫画...まん延防止

  • 「あの時代」

    安倍時代のこと?──未来の日本人【ただいま読書中】『ノー・ガンズ・ライフ(2)』カラスマタスク作、集英社、2015年、600円(税別)さて、EMSという新しい組織が登場します。これは復興庁の中にある拡張者対策局ですが、前身は軍の警察で、拡張者関連の犯罪を統括しています。で、乾十三はそこの局長とコネがあって、お互いに持ちつ持たれつ、でも完全には信用できない、というきわどいバランスを保つことが必要な関係を保っています。で、前巻で「守ってくれ」と依頼された子供(名前は鉄朗)の安全を確保するために、十三はEMSからの極めて危ない依頼を受けることになります。戦争の時に最初に作られた「第一世代」の拡張者に対する連続殺人事件の解明です。いやもう、危なすぎるでしょう。「戦場で一緒に活動した特殊チームのメンバーが、戦後に次々殺さ...「あの時代」

  • 読んで字の如し〈人偏−12〉「何」

    「如何物食い」……いかんなものを食べる「幾何」……幾って何?「何様」……「何」という姓のお客さま「何時」……なんじかいつかわからない「何時の間に」……なんじといつの間に「何曜日」……「何」という曜日「何する」……何をするかはわかっている「何するんだ」……何をされたかはわかっている【ただいま読書中】『交通誘導員ヨレヨレ日記』柏耕一著、三五館シンシャ、2019年(20年9刷)、1300円(税別)本書出版時点で著者は73歳。「最底辺の職業」と自嘲する交通誘導員の仕事をヨレヨレになりながら体験したことを集めて日記形式に再編集した本です。その仕事ぶりを読んでいて、私がいかに想像力が乏しいか、思い知らされました。工事現場などで1日中交通誘導をしている人たち、たとえばトイレはどうしているかを考えたことがなかったので。経営して...読んで字の如し〈人偏−12〉「何」

  • 男らしさ

    「学究肌の科学者」「冷静で優秀なエンジニア」「情熱的なプレイボーイ」「マッチョな監督」「暴力的な強姦魔」……これらはすべて「女性」よりは「男性」にふさわしい姿に見えます。つまりどれも「男らしい」。でもこれらをひとりの人間でいちどにすべて満たすことは困難そう。では「男らしさ」の本質って、何でしょう?【ただいま読書中】『ジェンダーと脳──性別を超える脳の多様性』ダフナ・ジョエル&ルバ・ヴィハンスキ著、紀伊國屋書店、2021年、1800円(税別)17〜18世紀のヨーロッパで平等主義が広まると、「男と女は平等か」という大問題が持ち上がります。その判定は「宗教」にではなくてより公正そうな「科学」にゆだねられました。そこで起きた議論のまあ面白いこと、様々な主張が持ち出されますが、一貫しているのは「男は女より優秀」という思想...男らしさ

  • イセイ

    異性との結婚は当然なのに、異星人との結婚はまともなこととされないのは、なぜでしょう?【ただいま読書中】『ノー・ガンズ・ライフ(1)』カラスマタスク作、集英社、2015年、600円(税別)戦争中に兵士の能力を向上させるために「身体機能拡張処理」技術が開発されました。拡張された能力は人本来の脳では上手く操縦できないため「補助脳」が設置され、人間離れした能力を発揮する人たちは「拡張者」と呼ばれます。九龍城塞を思わせる渾沌とした戦後都市で、頭全体が巨大なレボルバーに改造された拡張者「乾十三」は、拡張者が起こすトラブルを解決する「処理屋」を営んでいました。その事務所を訪れた剣呑な雰囲気の拡張者から依頼されたのは、自分が誘拐したとされる子供を守って欲しい、というものでした。そして、それは、街を支配する巨大企業ベリューレン社...イセイ

  • AIと勝負

    もしもAIと勝負しなくちゃいけなくなったら、私は丁半のサイコロ賭博を選択します。これなら確率的に良い勝負になるはずですから。でも、たとえば1億回もサイコロを振るのは、面白くないでしょうね。あ、それも「サイコロを振るAI」に任せればいいのか。【ただいま読書中】『イメージと読みの将棋観ファイナル』日本将棋連盟、2021年、1640円(税別)難解な局面の棋譜を示して、そこで何を考えるかを棋士たちにそれぞれ語ってもらう『将棋世界』の連載です。連載は2006年から始まり、様々な強豪棋士が登場しましたが、本書にまとめられたのは2019年〜20年の連載からの抜粋で、登場するのは、藤井聡太・郷田真隆・屋敷伸之・木村一基・糸谷哲郎・高見泰地・増田康宏(敬称略)という一流どころ。さらに藤井二冠(出版当時)のインタビューもついている...AIと勝負

  • 質疑不応答

    国会質疑のテレビ中継を見ていて、「原稿を読むだけだったら、字が読める人なら誰でもできるのではないか?」という疑問を感じました。あんな棒読みをする人のために、本給だけではなくて「文書交通費」という名前の月100万円のお小遣いまで別口で支給していると思うと、月1万円のお小遣い(しかも本給の中からのもの)でやりくりしている人間としては、腹立たしい思いです。しかも原稿を読み間違えたり、後になってから「国会答弁は変更するからそれでいいよね」と平気で言う人たちを見ていると、ますます腹立たしくなります。【ただいま読書中】『ふたつのドイツ国鉄──東西分断と長い戦後の物語』鴋澤歩著、NTT出版、2021年、2600円(税別)著者は「東」「西」「ベルリンの壁」といった言葉はすでに「中途半端な過去」に存在する、と言います。たしかにそ...質疑不応答

  • 英語の能力

    日本人のほとんどは英検1級程度の簡単な試験にも通らない、と嘆いている声がネットにありました。もしかして「英検1級なんて簡単だ」と自分の英語能力を誇りたいだけなのかな、とも私は思いましたが。ところで、同じ検定試験をアメリカ人やイギリス人やオーストラリア人が受けたら、何%が通るのでしょう?それがわからないと、その試験がどの程度の難度で何を判定しているのかもわからないような気がします。【ただいま読書中】『読書と人生』寺田寅彦著、KADOKAWA(角川ソフィア文庫)、2020年、840円(税別)小さな文庫本ですが、読んでいてそこに含まれている「教養」の重厚さに私は打ちのめされてしまいます。文系とか理系とかの薄っぺらい言葉を超越した「教養」。もちろんここに登場するのは「昔のこと」です。だけど、明治や大正の時代の制約を綺麗...英語の能力

  • 女○○

    おなご先生(女教師)、女給、女漫才師、女社長、女医……こういった言葉には「この職業は本来男のものだった」という主張が込められているように私には感じられます。さらにその言葉が言われ始めた時には、「その職業で女性はまだ少数派」であると同時に「女性がその職業に就くことが社会的に公認されている」ことも示されていると私は考えます。最近は「女上司」ということばがネットで登場します。すると、「上司」という“職業"もまた、現在は女性は少数派であるけれど、これからどんどんその割合は増えていく(真に男女平等の社会(会社)ではその割合は半々に近づく)はずということでしょう。そういえば、政治の世界で、首長が女性、は日本ではまだまだ少数派ですが、「女議長」「女市長」「女都知事」なんて呼び方はされていませんね。ということは、日本で「女性の...女○○

  • 野菜の再利用

    最近我が家の冷蔵庫に、野菜クズが詰め込まれたポリエチレン袋があるのに気づきました。これ、本来は生ごみだよなあ、と思っていると、しばらくしてとんでもなく美味しい野菜スープが登場。はい、野菜クズなんて言ったらいけませんね。「ベジブロス」です。なんだか環境保護にも良さそうだし、お財布にも優しい。ただ、“出し殻"の野菜は残りますね。これ、乾かして油で揚げたら美味しい「ベジチップ」にならないかしら。【ただいま読書中】『明暦の大火──「都市改造」という神話』岩本馨著、吉川弘文館、2021年、1900円(税別)「明暦の大火」と言えば別名の「振り袖火事」は思い出しますが、それ以上の記憶を私は持っていません。ローマ大火・ロンドン大火とならぶ世界三大大火とも言われ、その後幕府は防災を念頭に江戸改造を行った、と言われています。ところ...野菜の再利用

  • 海中は海上にあらず

    海上自衛隊に潜水艦がいるのは、名前に反していませんか?航空機は……「海の上の空中」と強弁することは可能だし、そもそもかつて日本海軍には局地戦闘機(空母ではなくて陸上基地から発進する海軍の戦闘機)がいたからこちらはOKにしますが。【ただいま読書中】『帝国陸海軍の戦後史──その解体・再編と旧軍エリート』山縣大樹著、九州大学出版会、2020年、4000円(税別)占領軍は「日本軍は武装解除、解体」と命令したはずですが、実際には「日本軍」は戦後の日本政治に大きな影響を残していました。本書は「旧軍エリート(主に佐官以上の職業軍人)」が「戦後(占領期の45年〜52年、さらにその後の10年)」にどのような活動をしていたか、を研究して「日本の戦後」の一面を明らかにしようとしています。敗戦後、陸軍省・海軍省は第一復員省・第二復員省...海中は海上にあらず

  • 将来構想

    巨大建造物、たとえば東京スカイツリー、いつかは“寿命"が来ます。そのときどうやって安全にしかも安価に取りこわすのか、プランはきちんとできているのでしょうか?【ただいま読書中】『捨て方をデザインする循環ビジネス』中台澄之著、誠文堂新光社、2020年、1600円(税別)著者は「捨てる側」ではなくて「1日60トン以上の廃棄物を受け入れる側」で仕事をしています。だからでしょう、「安易な否定」や「理想論」や「べき論」を排した「現実に即した考え方」が必要と言います。テクノロジーの進歩は、人の生活を便利にし、安全にしてきました。そして同時に大量の廃棄物も生んできました。我々はこれから「自由にものが捨てられない社会」に住むことになります。そのとき「捨て方」を考慮していない商品を開発する企業はその社会には居場所がないでしょう。我...将来構想

  • 甘え

    「密を避けよう、会食は我慢しよう」と政府が呼びかけているときに会食やパーティーを平気で開催していた政治家は「自分は政治家だから特別だ」と「甘えている」のではないでしょうか。それとも、「貧乏なのは、努力が足りない、甘えている、自己責任だ」という主張に対して「貧乏には、格差社会の方にも問題がある」と言えるように「甘えた政治家がいるのは、そういった政治家を選挙で選ぶ社会にも問題がある」と言うべき?【ただいま読書中】『あくびはどうして伝染するのか──人間のおかしな行動を科学する』ロバート・R・プロヴァイン著、赤松眞紀訳、青土社、2013年、2400円(税別)著者は「スモールサイエンス」と言っていますが、私たちの身近な行動を研究の対象としてみよう、という本です。まずは「あくびはゆっくりしたくしゃみに似ている」から始まりま...甘え

  • 発達する理由

    低気圧や台風が進路を進むにつれて「発達」することがあります。それが一番よくわかるのは中心気圧の低下。だけど不思議じゃないです?低気圧や台風には中心に向けて空気が大量に吹き込んでいます(気圧が低い方に空気が流れるのは当然です)。それなのに中心気圧が下がるとは、中心に吹き込んできた大量の空気は、一体どこに行ってしまったのでしょう?【ただいま読書中】『連星からみた宇宙──超新星からブラックホール、重力波まで』鳴沢真也著、講談社(ブルーバックスB2150)、2020年、1000円(税別)「連星」とは、二つの恒星(太陽系の太陽)が共通重心の回りを回っているもののことです。私たちが住む太陽系では恒星は一つだけですが、宇宙では連星が多く、夜空に光る「星」の実は半数が連星なのだそうです。地球から見て(太陽を除いて)最も明るいの...発達する理由

  • 調べなくてもわかること(2)

    先日の「調べなくてもわかること」でフクシマ直後に政府は内部被ばくについてきちんと調査をしなかった、と書きましたが、実は甲状腺被ばくについては調査がされていました。ただし福島県民200万人(うち18歳以下は40万人)のうち1080人だけ。これでは統計的に“弱い"数字です。どうしてきちんと調査をしなかったのでしょう?(ちなみにチェルノブイリでは3箇国で30万人以上が検査を受けています)ということで、本日の読書です。【ただいま読書中】『福島が沈黙した日──原発事故と甲状腺被ばく』榊原崇仁著、集英社(新書1051B)、2021年、900円(税別)「1080人」の数字(の少なさ)にも驚きましたが、その対象が「原発から30km以上離れた住所地の住民」に限定されていることにも私は驚きました。これは「都合の悪い数字は記録に残し...調べなくてもわかること(2)

  • ウイルスとの共生

    ウイルスは人を殺したり苦しめる“敵"と見るのがふつうですが、ヒトのDNAの相当な部分はウイルス由来と聞いたこともあります。つまり“仲間"というか“共生関係"。だったら新型コロナウイルスにも「人を殺すよりも、共生するのはいかがですか」とメッセージを送りたいですね。ただ、新型コロナウイルスを組み込まれたら「わたし」がどうなってしまうのか、ちょっと不安ではありますが。【ただいま読書中】『共生生命体の30億年』リン・マーギュリス著、中村桂子訳、草思社、2000年、1800円(税別)マメ科の植物は根に根粒菌がついています。これは「共生」です。細胞の中にミトコンドリアや葉緑体があるのも、元を辿れば別の生物が入り込んでともに生きることになった、つまり「共生」です。著者は、「進化(新しい種の誕生)」や「最初の種の誕生」そのもの...ウイルスとの共生

  • 調べなくてもわかること

    フクシマの原発事故の後、体内被曝を心配する声に対して政府は「大丈夫だから、調査をする必要はない」と繰り返していました。私にはそれは「逆」に見えました。「調査をしたら大丈夫とわかった」ではないか、と。あるいは「チェルノブイリ」を引き合いに出して「甲状腺癌などは心配ない」と言う人もいました。私にはそれは理解できませんでした。チェルノブイリはチェルノブイリ、フクシマはフクシマ、調査しなければ両者が違うか同じかの断言はできないだろう、それがどうして調べないで断言できるのだろう、と思ったのです。さらに有志が甲状腺を調査して異常を見つけると「そういった調査をしなければ見つからなかった(フクシマとは無関係に存在していた)ものだから、心配ない」と言う人もいました。これも不思議な言い分です。それを言うためには「フクシマ」でスクリ...調べなくてもわかること

  • 選挙

    立憲民主党の代表選挙が始まりました。自民党のように、総選挙の“前"にやるべきでしたね。【ただいま読書中】『カラスをだます』塚原直樹著、NHK出版新書646、2021年、850円(税別)カラスはマヨラー、嗅覚はほとんどない、バカ舌である、紫外線を見ることができる、なんてカラスに関する知識の乱れ打ちです。著者は、カラスの鳴き声を真似し、剥製を攻撃させようとし、カラスに似せたドローンを飛ばします。遊んでいるのではありません。真面目な研究です。「カラス」という題材と、著者のふざけた口調にだまされて、著者が遊んでいるだけ、と誤解する人もいるかもしれませんけれどね。だけど、誤解は、誤解する側の問題でしょう。「カラスによる被害」と言えば、糞害とか出したゴミ袋を破られてまき散らされるとかうっかりヒナに近づいた人が親鳥に襲われる...選挙

  • 清教徒

    私は世界史でメイフラワー号のことを習ったときに清教徒はイギリスでは住みにくいからアメリカに渡った、と思っていたのですが、清教徒革命は1640〜60年(メイフラワー号は1620年)。王政を廃止できるくらいに清教徒は力を持っていたわけです。清教徒って、当時のイギリスでは強かったのでしょうか、それとも弱かった?【ただいま読書中】『火山大災害』金子史朗著、古今書院、2000年、2500円(税別)ポンペイ(とヘルクラネウム)をほぼ全滅させたのはベスビオ火山です。ところが人々の関心はもっぱらポンペイ(とヘルクラネウム)に向いてしまって、火山そのものがあまり注目されないことを、著者は残念がっています。「1991年の火山噴火」と言えば、日本では6月の雲仙普賢岳(の火砕流)を私は思いますが、世界的には4月に大噴火をしたフィリピン...清教徒

  • 一冠分エラい?

    将棋の藤井聡太さんが竜王を獲って「三冠」から「四冠」になりました。なんだか「一冠」分エラくなったような印象ですが、でも藤井さんは藤井さんのままで、どこが変わったわけでもないはずです。まあ、一局真剣勝負をした分だけはまた強くなってはいるのでしょうが。【ただいま読書中】『生命科学クライシス──新薬開発の危ない現場』リチャード・ハリス著、寺町朋子訳、白楊社、2019年、2700円(税別)「不都合な真実」の話です。第一章は、画期的な新薬に結びつきそうな生物緯学研究の論文の多くが「再現性がない」問題。私はまず「STAP細胞」のことを思い出します。「画期的な論文」は評判となり、多くの人が群がります。しかしそのほとんどはクズなのです。「科学」で大切なのは、「仮説」と「その検証」です。科学者は「自分が間違っているかどうか」を自...一冠分エラい?

  • えっせんしゃるわーかー

    コロナ禍になって「良かったこと」もいくつかありますが、その一つが「エッセンシャル・ワーカー」という言葉の登場でしょう。これまで世間が無視していた人たちがいないとこの社会が回らないことに気がついた、ということですから。ただ、気がついただけで、高く評価する動きにつながらないのは、もどかしいものです。彼らの働きに自分たちの生活が依存している癖に、彼らを軽蔑するって、変じゃないです?映画「おくりびと」で納棺師の仕事について多くの人が知ることになったように、たとえばごみ収集の現場についての映画が作れませんかねえ。「この社会」の裏側がよく見えるのではないか、と思うのですが。【ただいま読書中】『ごみ収集とまちづくり──清掃の現場から考える地方自治』藤井誠一郎著、朝日新聞出版、2021年、1500円(税別)『ごみ収集という仕事...えっせんしゃるわーかー

  • 国会議員の地元はどこ?

    国会議員は県会議員や市町村会議員とは違って「国」のために仕事をするはずです。だったらなぜ彼らには「地元」があるんです?「地元」とやらのために仕事をするのは、県会議員や市町村会議員に任せたら?国会議員の「地元」は本来「国」のはずですから。【ただいま読書中】『元人気マンガ家のマンション管理人の日常』元人気マンガ家T著、興陽館、2021年、1200円(税別)人気のマンガ家だったはずが40歳過ぎてから連載を打ち切られ単発の仕事もなくなり「こんなはずではなかった」とあせりつつバイト生活に入ったTさんは、いくつかの職を経験して偶然マンション管理人になります。さて、そこで彼が出会った“日常"と“非日常"は……「物担」という不動産の業界用語が突然出てきて私は面食らいますが、読んでいるうちに「管理会社の物件担当」であることが自然...国会議員の地元はどこ?

  • ふかわりょう

    この人の存在をきちんと意識したのは、NHKFM「きらクラ!」でした。「そういえば同じ名前のお笑いの人を以前テレビで見たことがあるなあ」と思って耳を傾けると、なかなかの話術とクラシック音楽に対するけっこうな思いと知識を持っている人で、だから私にとってふかわりょうさんは「テレビに出てくるお笑いの人」ではなくて「ラジオで出会った音楽系の人」です。【ただいま読書中】『世の中と足並みがそろわない』ふかわりょう著、新潮社、2020年、1350円(税別)本書を読んで「いやあ、真面目な人だなあ」が第一印象です。真面目というか、ストイックというか、考えすぎというか。でもこういった態度、私は好きです。クラブには行ったことがないので著者がやっているクラブのDJという職業が具体的に何をやっているのかイメージは抱けませんが、著者の仕事ぶ...ふかわりょう

  • 人間対妖怪

    妖怪が怖いのはなぜでしょう?姿形が人間とはずいぶん違うし、何を考えているのかもわからないから?すると妖怪も人間を怖がっているのかな?姿形が妖怪とはずいぶん違うし、何を考えているのかもわからないでしょうから。【ただいま読書中】『古生物学者、妖怪を掘る』荻野慎諧著、NHK出版新書、2018年、780円(税別)「妖怪」と聞くと「荒唐無稽」と言いたくなりますが、著者は「はじめに確かな目撃例があったのに、観察が不十分だったり記録が不完全だったり、後世誇張や歪曲があったりして『妖怪』になった事例があるのではないか」と考えて古文書を改めて読んでいます。妖怪で「角があるもの(鬼や悪魔)」は人を襲う「怖い存在」です。しかし自然界では、哺乳類の鹿・牛・羊・犀・キリン、昆虫ならカブトムシやクワガタ、すべて「草食」です。早くも記紀に「...人間対妖怪

  • 掃除

    掃除は「汚れの移動」ですが、「掃除してきれいになった」と喜んでいる“裏"では、移動してきた汚れが集まって寄り汚くなった部分が生じているはずです。【ただいま読書中】『渋川春海──失われた暦を求めて』林淳著、山川出版社、2018年、800円(税別)古来「暦」は「権力の象徴」でした。暦は「天の動き」から作られますが、「暦」はつまり「天」と「時間」が合わさったもの、つまり時空間、つまり世界のすべてを示しているもので、それを管理する人間が中国では「天子」です。ところが暦に書いてある「月食」や「日食」の日付が間違っていたら、それは誰にでもわかることになり、天子はその資格を失います。ところが昔の暦はけっこう不正確だったんですよね。これでは権力者の面目が潰れます。そのため「正確な暦」を求めての改訂作業が、近世の東アジアでは中国...掃除

  • 血脈

    よく「血がつながっている」とか「血を分けた」と言いますが、卵子にも精液にも血液は含まれていませんよね。【ただいま読書中】『木曽義仲』下出積與著、吉川弘文館、2016年、2200円(税別)久寿二年(1155)源氏一族の棟梁争いで甥の義平に討たれた義賢の遺児駒王丸(二歳)は、源氏の勢力が及ばない信濃に落ちました。頼ったのは地方武士中原兼遠。その庇護ですくすく育った駒王丸は元服して木曽次郎義仲と称しました。兼遠は義仲を主君とし自分の子供たちを献身させます。「木曽四天王」のうち樋口次郎兼光と今井四郎兼平は兼遠の息子、義仲に嫁いで二人の男子を産んだ女子と巴御前も兼遠の娘でした。「平家を討伐せよ」との以仁王の令旨により、まず頼朝が伊豆で挙兵、ついで木曽義仲も挙兵します。雌伏していた源氏だけではなくて、平家に反感を持つ者や乱...血脈

  • 便乗商法

    観光地に行くと同じ土産物を「元祖○○」とか「本家○○」とか別の店で売っているのをよく見ます。だけど「開発者」がそんなにたくさんいるわけではなくて、「本当の開発者の店」と「それを真似た便乗者」とがあるはず。で、意外に便乗者の方が繁盛しているのではないかな。開発者は「開発」にエネルギーを消費して余裕がなくなっているはずですが、便乗者は「○○が売れる」ことを見極めてから「宣伝」に資源を全投入できますから。そういえばお薬も「後発品」がやたらと宣伝されています。これも温泉饅頭と同様、「便乗者」の方が繁盛している、ということでしょう。ただ、さすがに「元祖」や「本家」は名乗れないようですが。【ただいま読書中】『下級武士の田舎暮らし日記──奉公・金策・獣害対策』支倉清・支倉紀代美著、築地書館、2019年〈20年3刷)、2400...便乗商法

  • ヒマシ油

    戦前にヒマシ油は下剤でしたが、同時に飛行機用の潤滑油でもあったそうです。これで燃料が松根油だったら、とっても「ナチュラル」な戦闘機になりそうですね。【ただいま読書中】『客室乗務員の誕生──「おもてなし」化する日本社会』山口誠著、岩波書店(岩波新書1825)、2020年、840円(税別)アメリカで初の「スチュワーデス」が空を飛んだのは1930年。日本初の客室乗務員は1931年春に登場しました。東京航空輸送社は「エアガール」を募集しましたが、それを讀賣新聞は「エロ・ガール」国民新聞は「エロ・ガールならぬエーア・ガール」都新聞は「空の旅行にエロ式の進出」と伝えました。「エア・ガール」に社会(新聞記者)が期待したのは「エロ」だったのです(そのころの社会風潮が「エログロナンセンス」だったからかもしれません)。しかし東京航...ヒマシ油

  • カート・ヴォネガット

    私がこの人の作品を初めて読んだのは1970年代、まだ「カート・ヴォネガット・ジュニア」と名前にジュニアがくっついていましたっけ。最初に買ったのは東京の丸善か紀伊國屋のどちらかで「CatsCradle」と「WelcometotheMonkeyHouse」の動物づくしのペイパーバック2冊でした。英語力が無かったので「なんかニヒルだなあ」という感想しか抱けませんでしたが、今日読書した短編集の解説によると、この人の特徴は「モラル」なんだそうです。ふーむ、もう一回じっくり読まなきゃいけないなあ。でも、日本語で。【ただいま読書中】『カート・ヴォネガット全短編(1)バターより銃』カート・ヴォネガット著、浅倉久志・他訳、大森望監修、早川書房、2018年、2700円(税別)カート・ヴォネガットが残した膨大な短編を集め、テーマ別に...カート・ヴォネガット

  • 選挙の○○

    今回の自民党の総裁選は「選挙の顔」を選ぶ選挙だったそうです。だけど不思議です。今月末の総選挙、「岸田さんの評価」はできないでしょう?だってまだ実績はありませんもの。評価するとしたら「安倍内閣」「菅内閣」の実績の方。「選挙の顔」が岸田さんだとしても、「選挙の下半身」が誰かが問題なのではないかなあ。【ただいま読書中】『認知症患者安楽死裁判──事前意思表示書か「いま」の意思か』盛永審一郎著、丸善出版、2020年、2600円(税別)本書出版の時点で安楽死が法的に認められている国は、オランダ(2002)、ベルギー(2002)、ルクセンブルグ(2009)、コロンビア(2015)、カナダ(2016)、オーストラリアのヴィクトリア州(2019)。致死薬の提供が合法とされているのはスイス・アメリカのオレゴン州など9つの州とコロン...選挙の○○

  • 「リ」の有無

    行動は「アクション」、反応は「リアクション」。自分にとって大切なのは、どっちかな?【ただいま読書中】『ハエトリグサ』清水清著、岩崎書店、1981年、1100円土壌が痩せた場所に育つハエトリグサは、根で栄養を吸収することを諦め、虫を捕らえてそこから栄養を得るように進化した、と考えられているそうです。捕虫葉は縁にトゲトゲが生えていて二枚が合わさるように設計されています。葉の内側には小さな感覚毛が生えていて、何かがそこに2回触れると0.5秒くらいで捕虫葉が閉じます。面白いのは、髪の毛で触れても反応するのに、雨や風では反応をしないことです。どうやって見分けているんでしょうねえ。葉の表面には消化液を出す腺細胞が分布し、虫を捕らえると消化液を分泌して虫を溶かします。口と胃袋とを兼ねた構造ですね。消化には数日間かかります。水...「リ」の有無

  • 気持ちがわかると

    私は時に「気持ちがわかって欲しい」と思うことがあります。ただ、そう思った瞬間「本当にそうなったら、まずい」とも思います。だって私の気持ちって、他人に伝わっても良いことだけではなくてどろどろした悪いものもありますので。それがそのまま他人に伝わってしまったら、まずいことが起きるのは必定なんですよね。【ただいま読書中】『性からよむ江戸時代──生活の現場から』沢山美果子著、岩波書店(岩波新書1844)、2020年、820円(税別)「小林一茶と日記」と言って私がすぐ想起するのは『父の終焉日記』ですが『七番日記』も有名だそうです。これは一茶が四十八歳から五十六歳の日記ですが、彼が五十二歳の時に迎えた妻菊(二十八歳)との交合や妻の月水(月経)などの詳細な記録を含んでいます。17世紀末〜18世紀ころ、日本では「月経末期から7日...気持ちがわかると

  • ダメ暴力親父の論法

    昭和の頃のテレビドラマで、酔っ払って妻(専業主婦)や子供に暴力を振るう駄目親父が「誰の稼ぎで生活できていると思っているんだ!」と怒鳴り散らすシーンが時々登場しました。ところで「稼ぎがある」ことが「家族に対する暴力を正当化する理由」になりましたっけ?現在の皇室の結婚話で「国費が使われているのだから」と結婚に干渉しようとしている人が実にたくさんいます。ネットどころか週刊誌などでの誹謗中傷もすごい。ところでこういった人は「自分たちの税金が使われている」から「干渉したり誹謗中傷することは正当化される」と主張しているのですが、これって昭和のダメ暴力親父とおなじ論法では?【ただいま読書中】『ギロチン──処刑の文化史』吉田八岑著、北宋社、1991年、2000円(税別)ギロチンはギヨタン博士が考案し、フランス革命の混乱の中で最...ダメ暴力親父の論法

  • 移動花火

    移動販売車とか移動図書館とかキッチンカーなどと同じノリで、移動花火打ちあげ車なんてのはどうでしょう。コロナ禍が始まって「密」を避けるために事前予告無しでのゲリラ的な打ち上げ花火大会(小会?)が行われていますが、予告がなくても打ちあげ準備を河原などで始めるとそれを見かけた人から情報が拡散されて人が集まる、なんてことがあり得ます。そこで、大きなトラックの荷台などにあらかじめ打ち上げ花火をセットしておいて、花火大会を始める直前に現地に乗り入れて打ちあげる、という趣向の車です。これだったら「今夜市のどこかで打ち上げ花火大会を行います」なんて予告も可能です。場所がわからなければ「密」にはなれません。【ただいま読書中】『承久の乱──真の「武者の世」を告げる大乱』坂井孝一著、中央公論新社(中公新書2517)、2018年(19...移動花火

  • はじめての鉄道

    ペリー提督が日本にやって来たときに持ち込んだ“西洋の驚異"の一つに蒸気機関車の模型がありました。それを見た日本人はひどく驚いたそうですが、それは平賀源内の「エレキテル」に驚いたのとほぼ同質の「珍奇なものへのおどろき」だったはず。本当に驚くためには、欧米に渡って駅から列車に乗り込んで運ばれる、という体験をする必要があったはずです。それが「社会システム」であることがすぐにわかったはずですから。【ただいま読書中】『駅の社会史』原田勝正著、中央公論新社(中公文庫)、2015年、800円(税別)1872年(明治五年)8月17日右大臣岩倉具視を特命全権大使とする使節団は汽船でリバプール港に到着、馬車でリバプール駅に、そしてそこからロンドンのユーストン駅に列車で向かいました。その時の日本側の記録からは、好奇心や興奮がほぼダイ...はじめての鉄道

  • 奇跡の人

    「ヘレン・ケラー」と言えば「三重苦」「サリバン先生」「water!」「奇跡の人」などの単語がすぐに浮かんできますが、ではその人が何を考えどんな行動をしていたか、私は全然知りません。私にとってヘレン・ケラーは「障害児」ではあっても「個人」ではなかったようです。【ただいま読書中】『ヘレン・ケラーの急進的な生活──「奇跡の人」神話と社会主義運動』キム・E・ニールセン著、中野善達訳、明石書店、2005年、3000円(税別)ヘレン・ケラーが23歳で出版した自叙伝『私の生活の物語』はベストセラーとなり、彼女は有名人となりました。1900年に20歳でラドクリフ・カレッジに入学。そこで様々な困難と共に、友人とも出会います。1904年にカレッジを卒業したヘレンは、自分の公的な役割は、聾や盲の人々の権利擁護、と考えるようになってい...奇跡の人

  • 新内閣の有望な面々

    日本プロ野球のドラフト会議直後のマスコミの口ぶりでは、指名を受けた新人のほとんどが「即戦力」とか「数年後にはチームの大黒柱」とかの扱いを受けているのですが、それが実際にどうなるかは数年後には誰の目にも明らかになるわけです。“歩留まり"はせいぜい1割とか2割ではありません?でもマスコミはそのことについて何の反省もせず、毎年毎年同じことを繰り返し続けます。現在新内閣の顔ぶれをマスコミが盛んに宣伝していますが、それを見ていて、ドラフト直後のマスコミの態度を連想してしまいました。【ただいま読書中】『脳波の発見──ハンス・ベルガーの夢』宮内哲著、岩波書店(岩波科学ライブラリー293)、2020年、1300円(税別)19世紀のヨーロッパでは、「脳がいかに機能しているか」の研究が盛んに行われていました。頭蓋骨が欠損した患者で...新内閣の有望な面々

  • スポーツ

    ヨーロッパではチェスは「スポーツ」として扱われる、と初めて聞いたときには耳を疑いました。ただ「スポーツ」を定義するとき「身体の鍛錬を必要とする活動で、勝敗や記録を目的とする」「ルールに則ったフェアプレイが原則」としたら、チェスは「身体」の中でも「脳」の鍛錬を必要とする活動、ということで、立派な「スポーツ」だとしても全然問題はないわけです。ということは、将棋や囲碁も「スポーツ」として扱ってもよい、ということになりそうです。【ただいま読書中】『SportsGraphicNumber1010藤井聡太と将棋の天才。』(2020年9月17日号)文芸春秋、2020年、582円(税別)「ナンバー」という雑誌は、創刊されたときには「ナンバー1」という雑誌名で、その次は「ナンバー2」「ナンバー3」とどんどん雑誌名が変わっていく、...スポーツ

  • 魚の目

    多くの魚では両眼は身体の側面に付いています。つまり正面をしっかり両眼視することが構造上困難です。そんな状態で前に向かって全力で泳ぐのは、怖くないのでしょうか?【ただいま読書中】『竜のグリオールに絵を描いた男』ルーシャス・シェパード著、内田昌之訳、竹書房、2018年、1100円(税別)目次;「竜のグリオールに絵を描いた男」「鱗狩人の美しき娘」「始祖の石」「嘘つきの館」物語の舞台は19世紀のパタゴニア。ただし“私たちの地球"とはどこかで時間線が別れた“別の世界"のお話です。数千年前に魔法使いによって心臓の動きを止められ、しかしその呪文が不完全だったためにまだ生き続けている巨大な(全長が1マイル以上の)竜グリオールは、時の流れ自体からエネルギーを得て“成長"し続け、回りの生物たちに魔法的な影響力を与え続けていました。...魚の目

  • 児童文学賞

    有名な児童文学賞は、イギリスならカーネギー賞、アメリカならニューベリー賞です。ところがニューベリーさんはイギリス人。なぜこうなったのでしょう?そういえばアンドリュー・カーネギーもイングランド人ではなくてスコットランド人でした。欧米人は「自分の国の出身者じゃないといやだ」なんて言わないのかな。日本の代表的な児童文学賞に外国人の名前をつけるようなものなのですが……って、日本に国際的に名前が知れた(受賞者が国内外のマスコミで盛大に取り上げられる)児童文学賞がありましたっけ?【ただいま読書中】『子どもの本の世界を変えたニューベリーの物語』ミシェル・マークル文、ナンシー・カーペンター絵、金原瑞人訳、西村書店、2020年、1800円(税別)18世紀のイギリス、最初に登場する子供たちはみな泣いたり悲しんだりしています。しかし...児童文学賞

  • 「威圧にひるまない」

    菅首相が「(中国の)威圧にひるまない」と言っているのを見ると、政権に忖度する官僚たちの「人事権の行使が怖いんですけど」という呟きが聞こえるような気がします。【ただいま読書中】『芙蓉の人』新田次郎著、文藝春秋(文春文庫)、1975年(2014年新装初版)、510円(税別)先日『富士山測候所物語』を読んだので、本書を再読することにしました。明治二十八年(1895)2月16日、富士山に単独で挑んだ野中至は、その日のうちに頂上に立ち夕方には御殿場まで戻る、という驚異的な短時間での冬季富士山初登頂に成功します。しかしそのニュースは世間には注目されませんでした。清の北洋艦隊提督丁汝昌が降伏を申し出た翌々日で、日清戦争の勝利が目前となった日本では、野中が目指す「高層気象観測」などに目をくれる余裕はなかったのです。富士山頂に観...「威圧にひるまない」

  • 将棋めし

    藤井聡太さんの“ブーム"からこっち、将棋めしやタイトル戦の時のおやつが非常に注目されるようになりました。ところで本当に重要なのは、「誰が何を食べたか」だけではなくて「それを食べてどのくらい満足したか」ではありませんか?【ただいま読書中】『将棋観戦記コレクション』後藤元気編、筑摩書房(ちくま文庫)、2016年、1600円(税別)昭和の時代、私が「現在の将棋」を知るための手段は、新聞の将棋欄と月刊雑誌(「将棋世界」や「近代将棋」)、NHK教育テレビ日曜午前中の「NHK杯トーナメント」だけでした。そこにある「観戦記」や「解説」を“参考書"に棋譜を読み解き「プロが何を考えているか」を憶測していたのです。現在は囲碁・将棋チャンネルやabema-TVなどで簡単に“現在の対局風景"を眺めることができるし、AIが形勢判断を教え...将棋めし

  • 3次元の天気

    私が通った小学校には、木陰の芝生の上に百葉箱があって、当番が観測データを記録していました。ただこれは「地表の天気」です。中学校の理科の授業で、各地の気象データをもとに日本地図の上に等圧線を書く実習をしましたが、これって「地表(2次元)の天気の連続図」に過ぎず、「大気圏(3次元)の天気」はどうなっているのだろう、と思いましたっけ。だって、「上」がわからなければ正確な天気予報はできないでしょうから。太陽や雲や雷は「上」にあるのです。「明日の天気は」と思うと人は「上」を見るのです。【ただいま読書中】『富士山測候所物語(気象ブックス012)』志崎大策著、成山堂書店、2002年、1600円(税別)「富士山の高さ」を最初に測定したのは伊能忠敬で、3982mとしています。海岸を旅しながら多数の地点から三角法で測量したのでしょ...3次元の天気

  • 実験場

    アメリカ政府にとってヒロシマ・ナガサキは放射能の人体実験場でしたが、フクシマは放射能による環境汚染の実験場なのでしょうか。そういえばこれまではビキニ環礁とか砂漠とかばかりで、「森林汚染」はチェルノブイリ以外にはあまりありませんでしたね。すると「森林の除染」は「実験(観察)の邪魔」ということに?【ただいま読書中】『森林の放射線生態学』橋本昌司・小松雅史著、三浦覚執筆協力、丸善出版、2021年、2000円(税別)フクシマで放出された核種で特に多いのは上から順に、キセノン133(半減期5日)、ヨウ素131(半減期8日)、セシウム134(半減期2年)、セシウム137(半減期30年)と推定されています。セシウムは沸点が摂氏671度で核燃料が溶融した状態では気体になって放出され、その後温度が下がって融点の28度以下になると...実験場

  • 家族の絆

    夫婦別姓だと家族の絆が壊れる、という意見がありますが、現在の日本で離婚する夫婦は100%「同姓」ですよね?実際に別姓夫婦の何%が離婚するかを見ないと、比較できないのでは?【ただいま読書中】『史上最高の投手はだれか』佐山和夫著、潮出版社、1984年、1000円アメリカ大リーグがまだ「白人専用」だった時代、黒人の野球選手はニグロリーグでプレイしていました。そこには今からは信じられないレベルの名選手がごろごろしていました。著者はたまたま目にした新聞の(ニグロリーグから大リーグのインディアンスに移った名投手サチェル・ペイジの)訃報記事に導かれ、日本ではほとんど知られていないニグロリーグの世界に踏み込んでいきます。ここで語られるのは、信じ難いビッグプレイやグレイトとしか言いようがない記録の数々です。これは「ニグロリーグの...家族の絆

  • アフガニスタンからの避難者

    日本政府のふだんからの主張通り「自助」と「共助」がメインなんですね。【ただいま読書中】『空気と人類──いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか』サム・キーン著、寒川均訳、白楊社、2020年、2800円(税別)地球は気体でできた、と話が始まります。もちろん星間ガスが集まって星ができた、ということです。地球ができて数億年、我々にはひどく暮らしにくい環境でした。「大気」はありましたが、主に火山が噴き出したガスで、呼吸は無理です。しかし、火山のガスの中に含まれていた窒素は安定していて他のガスに比べると分解されにくく少しずつ大気の中に蓄積していきます。そして、その次に登場するのが、酸素です。こう書くと、地球の歴史を悠々と語る本のような印象になってしまいますが、もちろん全然違います。登場するのは、頑固さのために火山爆発犠牲...アフガニスタンからの避難者

  • 「フランス」料理

    バブルの頃「フランス料理」と言えば「三つ星レストランのフルコース」とほぼ同義で日本では言葉が使われていました。だけど「日本料理」が「一流料亭の会席料理」だけを意味するわけではないのと同様、「フルコース以外のフランス料理」もあるのではないか、と私は思っていました。たとえばフランスの郷土料理とか家庭料理とか。日本でも同じですよね。【ただいま読書中】『フランス郷土料理』アンドレ・パッション著、河出書房新社、2020年、8800円(税別)本書では行政区分に従ってフランスを13の「地方」に分けています。しかしその一つ一つがベルギーやスイスとほぼ同じ大きさなのですから、簡単にまとめることは難しいのではないか、と私はまず地図を見ながら思います。そしてページをめくると、見たこともない料理がレシピ付きで次々に登場。そのどれも美味...「フランス」料理

  • 命の値段

    「視覚障害者の逸失利益「平均賃金の8割が相当」、未成年時の事故で働けなくなった女性の控訴審判決広島高裁」(中国新聞)障害者の命の価値は、健常者の7割(山口地裁)あるいは8割(広島高裁)、だそうです。すると交通事故で障害者を殺したら「ラッキー、健常者より安くつく」と叫ぶ人が出てきそうですね。さらにこの裁判官は「もっと差別をして障害者の賃金を目減りさせたら、障害者への賠償金はもっと減らすことができる」と主張していることにもなります。でもそれって憲法違反では?というか、人の価値って、障害獲得賃金(の予想)だけで決まるものなんです?【ただいま読書中】『ナチスに抗った障害者──盲人オットー・ヴァイトのユダヤ人救援』岡典子著、明石書店、2020年、2500円(税別)ナチスドイツは「優秀なアーリア人の血への汚染」を防ぐために...命の値段

  • 天然自然

    「自然の○○」とか「天然の××」とか宣伝している商品のほとんどは、プラスチック容器に入っているかプラスチック包装をされています。【ただいま読書中】『日本珍景踏切』伊藤博康著、創元社、2020年、1600円(税別)「踏切」は普通「鉄道」と「道」がクロスする地点に存在します。ところが日本には様々なユニークな踏切があるのです。例えば「遮断機の向こう側を通るもの」。普通は電車や機関車などですが(昔は汽車もありました)、本書で通過するものとして写真で紹介されるのは「フル規格の新幹線」「地下鉄」「ケーブルカー」「舟」「モノレール」「バス」「トレーラー」「人間」……いやもう、写真を見るだけで笑っちゃいます、というか、よくもまあこれだけ見つけてきたものだと著者に感心します。「踏切を渡ったところにあるもの」として「駅」「参道の石...天然自然

  • アンダー

    放射能汚染水は「処理水」と名前を変えられ、海底パイプを通じて誰にも目撃されないように量の測定もされないようにして海に垂れ流しをされるのだそうです。なるほど、かつて「アンダーコントロール」されていた汚染水は「アンダー・ザ・シー」で放出されるんですね。しかし「地中凍土壁」で汚染水の量はもう増えない、という宣伝が盛んにされていませんでしたっけ?東京電力は、海の下でも地面の下でも変なことをいろいろやりたい企業のようです。【ただいま読書中】『イギリス工場法の歴史』B・L・ハチンズ、A・ハリソン著、大前朔郎・石畑良太郎・高島道枝・安保則夫訳、新評論、1976年1802年イギリスで制定された「工場法」は「過度労働や不健康な労働条件による危害から年少の虚弱な労働者の健康を保護する」ことが目的として明文化されていました。著者はそ...アンダー

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