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大橋むつおのブログ
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2015/01/11

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  • かの世界この世界:173『』

    かの世界この世界:173『アメノヌホコ・2』語り手:テル(光子)ヒルデに従って飛んでいくと、出来損ないの綿アメのようにカオスが疎らになってきて、人の形をとった七つの澱がハッキリしてきた。澱たちはジェット気流に流される雲の切れ端のような速度で突き進んでいく。澱たちの中ほどには、アメノヌホコが見える。「あいつら、アメノなんとかを盗むつもりだぞ」「取り返さなくっちゃ!」シャリン!ヒルデがエクスカリバーを抜く、さすがに異世界の名刀、冴えた鞘走りの音だ(*^▽^*)!チャリンわたしのはシケた音しかしない(^_^;)「行くぞ!」ブワァアアアアアアアア!それだけで100メガバイトは使いそうなエフェクトを残してヒルデは突撃した。「させるかあああああああ!」敵に言っているのか、ヒルデに怒っているのか分からない雄たけびを上げて、わ...かの世界この世界:173『』

  • 真凡プレジデント・7《姉妹でお料理》

    真凡プレジデント・7《姉妹でお料理》柳沢琢磨……サイコパスとの噂が高い。SNSでフォローしていた大臣経験もある有名弁護士に食いついたのが去年の夏。この有名弁護士をネット上の論戦で打ち負かしてしまったのだ。わたしには難しくて、よく分からないけど、憲法の有り方とか原発問題とか外国人参政権とか……他にもむつかしい問題でぶつかり合っていたらしい。「柳沢君は、まだまだ若い、なんたって高校生だしね。現場にいる弁護士が非常に頑張っていることやらが感覚的に分かってないんだね。まあ、分かれという方が無茶なんだけどね、しかし前途有望な青年だ、司法試験に受かったら、また論戦しよう」週刊文秋が企画した論戦を新幹線の時間が迫っているとして打ち切り、弁護士は、さも残念そうに握手の手を差し出した。「分かりました、では、同じ司法試験を受けて決...真凡プレジデント・7《姉妹でお料理》

  • せやさかい・193『満開の梅にことよせて』

    せやさかい・193『満開の梅にことよせて』詩(ことは)境内の梅が満開になった。写真を撮ろうかと提案したら、みんなが手を挙げて、けっきょく家族総出の記念写真になる。いちおうお寺なので、パイプ椅子三つ出して坊主席。「わしらは後ろでええで」そう言うと、お祖父ちゃんは留美ちゃんを手招きして、さっさと座らせてしまう。「あ、わたし、立ってます(^_^;)」「ええからええから(^)o(^)」愚兄に促されて、わたしとさくらが留美ちゃんを挟んで座る。「留美ちゃん、こいつも頼むわ」愚兄がダミアを留美ちゃんの膝にのせて重しにして留美ちゃんの遠慮を封じてしまう。お父さんが愛用のカメラを出してきて、手際よくセッティング。檀家とか坊主仲間の集まりで慣れているので、こういうことをやらせると手際がいい。クンクンクンクン「もう、女の子が前に座っ...せやさかい・193『満開の梅にことよせて』

  • 誤訳怪訳日本の神話・27『生き返ったオオナムチ』

    誤訳怪訳日本の神話・27『生き返ったオオナムチ』オオナムチと八十神の父親は共にアメノフユキヌですが、母親が違います。オオナムチの母はサシクニワカヒメですが、八十神たちの母は、父のアメノフユキヌがあちこちの女神と交わって生まれた神々です。上代や古代においては母親が違えばほとんど他人と変わりません。異母兄妹なら、平気で結婚もできました。兄の八十神たちはオオナムチの惨たらしい遺体をサシクニワカヒメに送りますが、そういう惨いことができたのも自分たちの母親ではなかったからでしょう。八十神たちに、どこか遠慮の有ったサシクニワカヒメは、息子の遺骸に涙して、ただただ祈る事しかありませんでした。どうか、どうか、息子の命を、オオナムチの命を戻してください、返してください……。祈った神は、彼女の父のサシクニオオカミかオオナムチの七代...誤訳怪訳日本の神話・27『生き返ったオオナムチ』

  • らいと古典・わたしの徒然草・16『第三十六段 さもあるべき事なり』

    わたしの徒然草・16『第三十六段さもあるべき事なり』さもあるべき事なり、つまり「そういうこともあるべきだ」という兼好のこだわりが書かれています。「そういうこと」とは、以下の内容です。あるオッサンが、何かの事情というか、気が乗らなかったというか、今まで通っていた女のところへ、しばらく行けず(行かず)、少し敷居が高くなっちまったなあ……と思っていたら、彼女のほうから、こう言ってきました。「今さ、使用人のニイチャンが一人足りないのよね、いい子がいたら紹介してよ」という便りです。「ずいぶんご無沙汰じゃないのよさ」などと、アカラサマに責めるのではなく、人手が足りないことにこと寄せて、そのオッサンが自然に来やすいようにする便りでありました。で、オッサン……彼は、彼女のところに自然なカタチで行きやすくなりました。そういう彼女...らいと古典・わたしの徒然草・16『第三十六段さもあるべき事なり』

  • 真凡プレジデント・6《対立候補》

    真凡プレジデント・6《対立候補》お姉ちゃんとコロッケで乾杯したあくる日の事。物理の教室移動で校舎を出たら、昇降口の方から藤田先生と中谷先生が出てくるのが見えた。模造紙丸めたのと画びょうのセットを持ってニコニコしている。心なし足取りも軽いように思えた。――あ。立候補者が揃ったんだ!――持っているものと足どりの軽さで直感した。「おう、真凡!おかげで出そろったよ!」藤田先生も気づいて模造紙を持ったままの手を振ってくれた。「さっき出そろったんでポスターを貼って来たところだ」「え、揃ったんですか!?」実直な藤田先生が嬉しそうにしているのは、見ていても気持ちがいい。先日、中庭で候補者の名前が埋まらない書類とにらめっこしていた時の消沈ぶりが嘘のようだ。やっぱり藤田先生はニコニコしている方がいい。「よかったですね!」「そうよ、...真凡プレジデント・6《対立候補》

  • 魔法少女マヂカ・199『堀越を救う』

    魔法少女マヂカ・199『堀越を救う』語り手:マヂカドコン!!ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……!!突き上げるような衝撃がきたかと思うと、車両は左に傾き振動したまま金属を捩るような音をさせて走った!キャーーー!ウワーーー!悲鳴と衝撃は永遠に続くのかと思ったが、実際には十秒そこそこのものだろう。車両は進行方向に向かって左側に傾いて停まった。わたしは手すりやフックに掴まって耐えた。ブリンダは正面の堀越に覆いかぶさるようになっていて、自分の上半身、主に胸でもって堀越と堀越の膝の上に倒れ込んできた霧子を庇っていた。ブリンダ……!?すまん、抜いてくれ。思念で会話した。後ろの網棚から飛び出したんだろう、植木鋏が二本突きたって、足もとには口の開いた鞄が、他の散乱物と一緒に転がっている。「あ、商売道具が……」職...魔法少女マヂカ・199『堀越を救う』

  • 真凡プレジデント・5《コロッケで乾杯》

    真凡プレジデント・5《コロッケで乾杯》ジャージ姿でコロッケを買いに来るようなお姉ちゃんじゃなかった。女子アナというのは半分タレントみたいまもので、いつもパリッとして、颯爽としていた。月に二度は美容院に通って磨きをかけ、そのグレードを維持していた。もともと磨きなんか掛けなくても――美姫ちゃんは違うねえ!――と、子供のころから評判だった。美姫って名前が凄いでしょ!?だって、美しい姫ですよ!栴檀は双葉より芳しの例えどおり、生まれた時からすごかったらしい。初孫というアドバンテージもあったんだろうけど、お爺ちゃんが新生児室での初対面で――この子は絶世の美人になる!――ことを見抜いて『美姫にせい!』と決めてしまった。所帯を持つにあたって経済的に絶大な支援を受けていた両親は、あっさりと承知した。結果的にお祖父ちゃんの予言通り...真凡プレジデント・5《コロッケで乾杯》

  • 銀河太平記・032『ヤバい話』

    銀河太平記・032『ヤバい話』ダッシュそこまでしなくても……マーク船長の言葉は途中で止まってしまった。怪しげな交易船の船長だけど、相手が宮さまとなると奥ゆかしいのか、宮さまの柳に風を思わせる風格のせいかは分からないけども、その中断が、会話の内容の重大さを感じさせる。四人ともダクトの真下に場所を移した。「隠遁するんだったら田舎でしょう」「火星なら、どこに行っても田舎だと思いますよ」「でもね、扶桑の領域の内じゃ、いざという時に幕府に迷惑をかけてしまう」「ザックリ言って、火星は西部劇の世界ですよ。比較的治安のいい扶桑でも、地方の町に行けば所属・国籍不明のやつらが自由にやってます。お奉行所も、その辺の力加減は分かっていて、無用の干渉はしてこない。宮様お一人、いくらでも身を忍ばせられます。火星の辺境で暮らすなら、水や空気...銀河太平記・032『ヤバい話』

  • らいと古典・わたしの徒然草『第三十五段 手のわろき人の』

    わたしの徒然草・15『第三十五段手のわろき人の』ありがたい段です。字や文章のヘタクソなやつが、ばんばん書きちらしているのはいい!と言ってくれています。まるで、悪筆、乱筆、支離滅裂な戯曲や駄文を書いているわたしに対して、七百年の時空を超えて兼好が励ましてくれているようです。わたしはパソコンに馴染むまでは手紙魔でありました。常に定形最大の封筒と、便せん代わりの原稿用紙、それに八十円と十円の切手(よく、二十五グラムを超えて九十円になったので)と、万年筆のインクカートリッジは座卓横の小引出や、棚の上に常備していました。たいがいの人は返事をくださる。封筒で返事がくるときは、迷惑がらず「また、お便りちょうだいね」であり、葉書ですます人は「もう、しばらくよこさんといて、邪魔くさいよってに!」という気持ちがこめられている。勢い...らいと古典・わたしの徒然草『第三十五段手のわろき人の』

  • 真凡プレジデント・4《なつきと勉強》

    真凡プレジデント・4《なつきと勉強》それほど勉強のできる方じゃない……わたしもね。だから、なつきの勉強をみてやるといっても大層なことはやらない。「憶えたあ?」「う、うん……自信ないけど」「無くっていいよ、じゃ、問題五つほどやってみよう」シャーペンのお尻で例題と練習問題を示す。なつきが公式を暗記している間に、わたしはページを二枚めくって、次の公式を確認する。一枚めくったところには応用問題があるんだけど、それはパス。テストの2/3は基本問題だ。うちは上から数えて2/3くらいの偏差値。むつかしい問題はそんなに出ない。評定の5だとか4だとかを目指すんなら応用問題もやらなきゃならないけど、普通の3を目指すんだったら基本だけでいい。3というのは点数で50点から69点。実に20点の幅がある。進学や就職に向けての成績は評定で表...真凡プレジデント・4《なつきと勉強》

  • RE滅鬼の刃・15『』

    RE滅鬼の刃エッセーノベル15・『横並び』日本人て横並びですよね。いいか悪いかは別にして、周りの人と同じであることで精神の安定を保っていると思うんです。お祖父ちゃんは、1953年生まれですから、団塊の世代の尻尾の先だと思います。職場は公立の学校でしたから、同僚の先生たちは日教組です。あ、日教組という括り方をすると「それは違う」とお祖父ちゃんは言います。お祖父ちゃんは府の教職員組合が分裂してゼンキョウというのが出来た時に組合を辞めています。ゼンキョウ……全日本教職員組合?よく分かりませんが、1991年に日教組から分離した組合組織で、日教組とは一線をひいている……だそうです。日教組も全教も、まあ左派の組合です。高校生のわたしには、違いがよく分かりません。立憲民主党系と共産党系?アハハ、立憲民主と共産党の区別もついて...RE滅鬼の刃・15『』

  • やくもあやかし物語・65『二丁目の土の道』

    やくもあやかし物語・65『二丁目の土の道』コンビニは一丁目の端と二丁目の真ん中にある。二丁目のは学校と家の間なんで、学校への行き帰りにかならず目にする。だけども、利用率の高いのは一丁目のコンビニ。だってさ、制服のまんまコンビニに入るのは気が進まない。近所の中学校だって丸わかりでしょ。近所の人だったらネクタイの色で学年まで分かってしまうし、ボーっとしてるわたしは名札を仕舞っておくのを忘れたり(校外ではポケットの表に付けた名札はポケットに仕舞うように言われてるんだけど、よく忘れて歩いている)するからね。そのわたしが、わざわざ一丁目のコンビニを目指している。それも自転車に乗ってさ!二丁目から学校の方に掛けて自転車の乗るのは億劫なんだ。だって、坂道があるでしょ。下りはいいのよ、下りは漕がなくてもいいしね。でも、帰りは坂...やくもあやかし物語・65『二丁目の土の道』

  • らいと古典・わたしの徒然草・14 『第三十四段 甲香は、ほら貝のようなるが……』

    わたしの徒然草・14『第三十四段甲香は、ほら貝のようなるが……』たった二行の短い段です。金沢文庫の近くの入り江に甲香(かひこう)という小さな貝が転がっていて、地元の者は、その蓋のとこを「へなだり」というんだって。それだけのウンチクとも言えないメモのようなものです。「へなだり」というのは小型のホラ貝みたいで、広島の一部で食用になっているようですが、全国的にはあまり知られておらず。どうということのない貝です。しかし、よくよく調べると、この「へなだり」というのは香の原料になるんですねえ。昔は「聞き香」という遊びがあって、いろんな香を焚きしめては、その香りを言い当てる遊び……というか、貴族や上流武家にとっては「たしなみ」の一つであったようです。織田信長が、皇室の持ち物で、正倉院に所蔵されていた蘭奢待(らんじゃたい)とい...らいと古典・わたしの徒然草・14『第三十四段甲香は、ほら貝のようなるが……』

  • 真凡プレジデント・3《とてもキュート》

    真凡プレジデント・3《とてもキュート》お好み焼き『たちばな』は少し広い。四人掛けのテーブルが四つに最大十人が掛けられるカウンター、そして奥に小座敷がある。三時から五時までがアイドルタイムなので、小座敷で試作品を頂く。オーーーーー!遠慮のない歓声を上げるわたし。二口目でコンニャクに行きついて、その意外な食感と味に驚いた。「こんどのコンニャクは違いますね!」「でしょ、去年はただのコンニャクだったけど、今度のは刻みを入れてマル秘の下味が付いてんの」「これ、絶対売れますよ(^▽^)/」「うん、真凡ちゃんのお墨付きなら間違いないわね」おばさんは自信たっぷりだが娘のなつきは苦笑い。「美味しいけど、下ごしらえ……」「慣れたら半分の時間でできるから大丈夫」お店はおばさんとパートのおばちゃんとで切り盛りしているが、ピークになると...真凡プレジデント・3《とてもキュート》

  • せやさかい・192『』

    せやさかい・192『シルシをつける』詩(ことは)ドアを開けると、それが目についた。机の上の一枚の封書。封書の表には聖真理愛女学院大学・事務局のロゴと酒井詩様と、わたしの氏名。中身は分かっている、大学の入学金と前期授業料の領収書が入っている。先週、お母さんから「振り込んでおいたから」と言われて「うん、どうも」としか返せなかった。釈然としないのよ、この四月から大学生。それもエスカレーター式に聖真理愛女学院の大学。三年の十一月まで吹部の部長をやっていて、自分の進路は二の次だった。前任の涼宮先輩は偉大な人で、わたしが部長を引き受けた時には、全ておぜん立てが整っていた。わたしが困らないように、各パートの事や生徒会との関係とか、先生たちへの根回しとか、連盟のことや、コンクールのことなど、全て済ませていてくれていた。最初は―...せやさかい・192『』

  • らいと古典・13『第三十三段 今の内裏作り出されて……』

    わたしの徒然草・13『第三十三段今の内裏作り出されて……』この段は、二条富小路の内裏が再建されたときのことであります。花園天皇が内裏のお入りになる前に、祖母の玄輝門院が下見をされて「あ、閑院殿ののぞき窓のカタチがちゃいますよ」と指摘された。それを兼好のオッサンは「いみじきこと」と、喜んでいる。「いみじ」とは、程度が甚だしい事に使う形容詞で、平安時代この方、よく使われる。兼好のオッサンには、申し訳ないのですが、女子高生の「かわいい」と大差ない頻度(品度にかけたシャレですが(^_^;))でつかわれています。今回は、兼好のオッチャンの「いみじ」にこだわってみます。この閑院殿の窓とは、やんごとなき皇族の方々が、役人たちの仕事ぶりなどを「のぞき見」するための小窓のことであります。この内裏が再建されたのは、じつに五十八年ぶ...らいと古典・13『第三十三段今の内裏作り出されて……』

  • 真凡プレジデント・2《橘なつき》

    真凡プレジデント・2《橘なつき》フルネームは田中真凡(たなかまひろ)。苗字は平凡なのに、名前は非凡。マヒロとはなかなか読んでもらえない。シンボンとかマフ(凡を風の略字と勘違い)とかマホ(帆と凡は一瞬間違える)とか読まれる。マヒロと主張しておいても元来影の薄いルックスとキャラなので直ぐに忘れられて平凡な方の田中で呼ばれる。「二年A組の田中……さん、立候補ありがとう、ちゃんと受理させていただきます」立候補の届け出をしにいくと、藤田先生は席を外していたので、もう一人の中谷先生に書類を渡す。中谷先生はお礼を言ってくれるのだけど、真凡(まひろ)が読めなくて苗字の後に間が開いてしまう。「すみません、ルビ振っておきます」名前の上にタナカマヒロと付け加える。「タナカマホさんね、ありがとう」間違っているけど訂正はしない。パソコン...真凡プレジデント・2《橘なつき》

  • かの世界この世界:172『』

    かの世界この世界:172『アメノヌホコ』語り手:テル(光子)ヒルデと二人で手を繋いだ。手を繋いでいないと、上下も判然としないカオスの中をグルグル回って、いつ離れ離れになるか分からないのだ。重力が無いので、髪が大変なことになっている。ホワホワとタンポポの綿毛のように広がってしまっている。「ウ……口の中に入った……」ヒルデの方に顔を向けようとしたら、慣性の法則で顔の前に残った髪が口の中に入ってしまう。プペペッペッ「ジッとしてろ」ヒルデがわたしを手繰り寄せ、手際よく髪をまとめてくれる。ヒルデは、いつの間にやったのか軽やかなポニーテールにまとめてしまっている。さすがはヴァルキリアの姫騎士だ。「ありがとう」「礼なんかいい、とりあえず、ここを抜けなければな。それを考えろ……ここは、どこなんだ?」「ここが神話の世界なら……」...かの世界この世界:172『』

  • らいと古典・12『第三十二段 者の陰よりしばし見ゐたるに……』

    わたしの徒然草・12『第三十二段者の陰よりしばし見ゐたるに……』この三十二段は、分かりにくい段です。九月二十日の夜に、「あるひと」に誘われて、ぶらっと月見に出た。ふと思いついて「そのひと」の家の庭に忍び込んだ。庭は、いささか荒れ果ててはいたが、焚き物の香りなどしてなんとも、「もののあわれを感じた」「あるひとは」は、途中で帰られたが、わたし(兼好のオッサン)は、しばらく覗き見を続けた。すると、しばらくして「そのひと」は妻戸(ドア)を開けて、月を見始めたではないか!「ああ、カワユイ!」わたしは、いろんな言い訳を書きながら、ひたすらそう切なく思った。そして「そのひと」は、程なく亡くなってしまった……なんとも歯切れが悪い。要は、好きな女性の庭に忍び込んで、その女性の姿を見ただけで、ため息ついて帰ってきちまった!兼好のオ...らいと古典・12『第三十二段者の陰よりしばし見ゐたるに……』

  • 真凡プレジデント・1《いくつかの理由》

    真凡プレジデント・1《いくつかの理由》第一の理由は二年生になったこと。二年と言うのは、もう高校生活が半分過ぎたのと同じ。だって、三年の一学期には進路は確定してしまうんだよ。そうでしょ、三年生はクラスそのものが進路別だし、一学期の終わりには就職にしろ進学にしろ行先が決定する。おまえなら……だいたいこんなとこだな。担任が、そう言って見せる資料には五つ六つの候補が上がるんだろうけど、みんな似たり寄ったり。なにも、卒業後の進路だけで一生が決まるわけじゃない。だけど、わたしって冒険するタイプじゃないからね、たぶん結婚するまで(するとしてね)の人生が決まってしまうと思うよ。第二の理由はお姉ちゃん。お姉ちゃんは三月で仕事を辞め、マンションも引き払って家に戻って来た。お姉ちゃんはいわゆる女子アナで、同年代の女性の中では勝ち組だ...真凡プレジデント・1《いくつかの理由》

  • 誤訳怪訳日本の神話・26『八十神と手間山の赤猪』

    誤訳怪訳日本の神話・26『八十神と手間山の赤猪』末の弟のオオナムチに兄弟全部の荷物を背負わせた八十神たちは意気揚々とヤガミヒメの家に着きました。八十神たちの面白いところは、末の弟オオナムチを団結してイジメますが、自分たちは仲たがいはしません。というか、没個性的な神々で、一人一人の描写がありません。もし、マンガかアニメにすると顔がノッペラボーのモブキャラになるでしょう。八十神を目の前にしてヤガミヒメはにこやかに宣言します。「……ということですので、わたくしヤガミヒメは、あなたたち八十神の荷物を背負ってやってくるオオナムチの妻になります。悪しからず(^▽^)/」「「「「「「「「「「「「「そ、そんなあ(;゚Д゚)!」」」」」」」」」」」」」オオナムチをイジメたことに弁護の余地は無いのですが、八十人まとめてコケにされる...誤訳怪訳日本の神話・26『八十神と手間山の赤猪』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・68『もう妹は憎たらしくない!』

    妹が憎たらしいのには訳がある・68『もう妹は憎たらしくない!』大阪に戻ったわたしたちにすることはなかった。度重なる戦闘で、わたしも優子も状態が悪く、もうメンテナンスの仕様もなかったのだ。二人とも生体組織が壊死し腐敗が進んできたので、亜硫酸のタンクに漬けられて生体組織を溶かし、スケルトンの状態にされた。この状態が裸になって股間にドレーンを挿入されてメンテナンスする何倍も恥ずかしいことであることを、わたしも優子も自覚した。「わたしのスケルトンの方がキュートよ!」「なによ、わたしの顔のスケルトンの方がかわいいもん!」最初はじゃれあいのようだったが、互いの機能が低下してくると、憎まれ口もきかなかくなってきた。見かけは上半身と下半身に裂かれてしまった優子がひどかったけど、わたしはPCに受けたダメージが意外にひどくて五日目...妹が憎たらしいのには訳がある・68『もう妹は憎たらしくない!』

  • 魔法少女マヂカ・198『四人掛けに三人の意味』

    魔法少女マヂカ・198『四人掛けに三人の意味』語り手:マヂカ四人掛けに三人で収まってお弁当を膝の上に載せる。霧子は、もうそれだけでウキウキしている。「わたし、列車の中でお弁当いただくなんて初めてよ(o^―^o)」「食べるのは、ちょっと待って」霧子に言うとブリンダが頷く。「え、なんで?」「あれが起こる20分前だからよ」「あ……」察したようで、霧子は解きかけた巾着の口を閉めた。「そんなに緊張すんな、まわりが変に思うぞ」「だって……」無理もない、20分後には関東大震災の最初の揺れがやってくるのだ。「ブリンダもおしとやかにね、この姿でため口は目立つわよ」「あ、そうか……そうだわよね、つい浅草軽演劇の真似なんかしてしまって、ごめんなさいませ」ブリンダのお嬢様言葉も気持ち悪いが、しかたない。それにしても、震災発生ニ十分前の...魔法少女マヂカ・198『四人掛けに三人の意味』

  • らいと古典・わたしの徒然草・11『第三十一段 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし』

    わたしの徒然草・11『第三十一段今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし』原文は簡単です。「大雪の降った日に、ある(やんごとなき人とも思われる)人に手紙を出したところ、『こんなにも珍しく、雪が降ったのに、そのことに一言も触れていないのはつまらないですねえ』と、返事が返ってきた。どうってことはないけど、亡くなった人からのものかと思うと忘れられない」二十九段からのブルーは、この人の死と関わりがあるのかも知れない。あとの三十二段にも読みようによっては「引きずってるなあ」と、思われるところがあります。どうやら、「ある人」とは兼好のオッチャンが想いを寄せていたように受け止める人が多いようです。しかし、これは『わたしの徒然草』なので、勝手に妄想を膨らませます。というか自分にビビっと感じたところで書かせていただきます。こ...らいと古典・わたしの徒然草・11『第三十一段今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・67『C国多摩事変・2』

    妹が憎たらしいのには訳がある・67『C国多摩事変・2』300機のチンタオは二世代前のロボットであるために今のC国のコードも通用しない。私たちから連絡を受けたC国大使館は、すぐにチンタオたちに「行動中止」のコマンドを二世代前の様式で送ったが、彼らは通常のコマンドコードを受け付けず、C国大使館そのものを敵と見なし、攻撃を加えてきた。C国大使館は、自動でバリアーを張って無事だったが、周りの建物に被害が及んだ。Rヒルズの南側の窓ガラスは全部割れてしまった。国防省の対応も早く、阿佐ヶ谷駐屯地は、ミサイル発射の熱源に向けて反撃の地対地ミサイルを撃ち込んだが、ステルス化したチンタオたちはすでに移動したあとだった。ユースケは、首都防衛の精鋭ロボット部隊〔ロボコン〕を送った。彼らは国内最精鋭部隊で100機のロボコンで構成され、司...妹が憎たらしいのには訳がある・67『C国多摩事変・2』

  • 銀河太平記・031『俺たちが耳をそばだてたわけ』

    銀河太平記・031『俺たちが耳をそばだてたわけ』ダッシュ家に帰るまでが遠足だ!小学校のころから先生に言われ続けてきたことだ。予防的注意であったり叱責であったりしたけど、そう言って学校としてのアリバイを作っておかなければ責任が持てない。そう思われるくらいに、俺たちはヤンチャだった。ミクがいくらか抑制的なんだけど、ミクに言わせれば「ダッシュがやり過ぎ!」だそうで、俺としては「ミクの本性こそ野生児だ!」だった。若年寄の息子のヒコと飛び級のテルが同級になって「これで、大石(俺の苗字)と緒方(ミクの苗字)も落ち着くだろう」と先生たちも期待したが、ヒコの奴は、頭と血筋がいいぶん頭が回って、俺たちのやることは手が込んでくるようになった。俺たち的には、ただただ面白い学校生活を送りたかっただけなんだけどな。火星にもオリンピックが...銀河太平記・031『俺たちが耳をそばだてたわけ』

  • らいと古典・わたしの徒然草・10『第三十段 人の亡き跡ばかり悲しきはなし』

    わたしの徒然草・10『第三十段人の亡き跡ばかり悲しきはなし』ポツダム少尉という言葉をご存じでしょうか。大東亜戦争の敗戦時、帝国陸海軍を解体するにあたり、現役の軍人の階級を一階級上げました。その中でも陸軍士官学校在学中の生徒第五十九期の生徒を繰り上げ卒業させ、少尉に任官させたものを言います。少尉というのは最下級ではありますが士官です。生徒では下士官相当で、その違いには大きな開きがあり、このポツダム昇進の象徴として「ポツダム少尉」と呼ばれます。昨年末に、そのポツダム少尉の一人が他界されました。米寿までにあと一ヶ月でありました。商社を二社勤められ、昭和二十年代の半ばで結婚され、三人のお子さんに恵まれましたが、一番下のお子さんを幼くして亡くされました。六十歳で、無事定年をむかえられたあとは、近所の中高生を相手にささやか...らいと古典・わたしの徒然草・10『第三十段人の亡き跡ばかり悲しきはなし』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・66『C国多摩事変・1』

    妹が憎たらしいのには訳がある・66『C国多摩事変・1』よくある漢方薬の注文のメールだった。一日に数万件はあるうちのほんの三百件ほど。木下が、おかしいと思ったのは、それらが多摩ニュータウンに集中し、商品が、今はほとんど注文のない強壮剤だったからである。多摩ニュータウンは人口減少と多摩局地戦の影響で、規模が2/3に縮小され、高齢者の人口は減っている。勘の働いた木下は、そのうちの一軒を覗いてみた。内務省が極秘で持っている世帯個別調査のコードを使った。これを使えば、各世帯のテレビ内蔵のカメラや、PCカメラ、防犯カメラの映像を瞬時に覗くことができ、住人の個体識別もできるというスグレモノである。映された映像は、若い夫婦が子孫繁栄のための、ごく個人的な行為の真っ最中で、まちがっても強壮剤などは使わない。「あ……」それはハッカ...妹が憎たらしいのには訳がある・66『C国多摩事変・1』

  • 滅鬼の刃・14『遺品の写真』

    滅鬼の刃エッセーノベル14・『遺品の写真』2011年に亡くなった父の遺品を整理していた時の事です。うわあ……姉が『えらいものを見つけた』という声をあげました。「え、なに?」姉の手元を見ると、丸まった卒業証書……と思いきや。開いて見せてくれたのは天皇陛下御成婚のお写真でした。天皇陛下と言っても今上陛下ではなくて、先年退位された上皇陛下のそれです。上辺の中央に菊の御紋があって、鳳凰が向かい合って、長い尻尾の羽根がお二人のお写真を縁取っています。父の遺品は仏壇を除いて全て処分しました。でも、このお写真は捨てられません。これは、子どものころに額装されて居間の長押の真ん中に永年勤続の賞状と並んで掛けてあったものです。姉は、特段、皇室に思い入れがあったり、古い日本を懐かしがるような性格をしていないのですが、軽々とゴミ箱に突...滅鬼の刃・14『遺品の写真』

  • らいと古典・わたしの徒然草・9『第二十九段 過ぎにし方の恋しさのみぞせんかたなき』

    わたしの徒然草・9『第二十九段過ぎにし方の恋しさのみぞせんかたなき』兼好のオッサンはだれか親しい人を亡くしたらしく、この二十九段と、三十段はブルーであります。「国体」……おわかりになるでしょうか?国民体育大会ではない。国語と体育の時間割でもない。英語でnationalpolity(ナショナルポリティー)というんだそうです。揮発性の高い言葉で、この漢字で二文字。平仮名で四文字の言葉は、わたしが現職であったころ、口にするだけでこう言われました。「反動」とか「保守反動」とか「アナクロ」とか。これにかわる言葉として、前世紀の終わり頃からがこんな言葉が使われ始めました。「この国のかたち」この言い方は、みなさん抵抗がないようで、テレビのコメンテイターや国会議員の先生方もよく使われます。よく使われて、近頃では、いささか手垢の...らいと古典・わたしの徒然草・9『第二十九段過ぎにし方の恋しさのみぞせんかたなき』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・65『荒川事件』

    妹が憎たらしいのには訳がある・65『荒川事件』探すのにずいぶん時間がかかったよ。こちらも、それだけに構っていられなかったんだけどね。ホンダN360Zは、入力したコースを離れ、荒川の河川敷に停まると、そう話しかけてきた。「油断したわ」『いや、ここまで隠れていたんだ、大した者だと誉めておくよ』「だれ!?」優子が腰を浮かしてドアロックに手を掛ける。「待って優子、この声……ユースケね?」『その名前は気に入っているよ。祐介は完全に取り込んだけど、このロボットの行動や思考の力は祐介の想いが原動力になっているからね』「……祐介は、どうなっているの?」抑えた声で優子がたずねると、ダッシュボードのモニターに赤ん坊のように丸まった祐介の姿が映った。粘膜や血管のようなものが繋がり繭のようなものの中で眠っている。『そして、これがわたし...妹が憎たらしいのには訳がある・65『荒川事件』

  • やくもあやかし物語・64『光ケーブル』

    やくもあやかし物語・64『光ケーブル』お爺ちゃんは、よく動画で昔の景色を見ている。リビングの大きいテレビだから、わたしもお茶を飲んだりしながら見るともなく見ている。「あら、昭和五十年ごろですね」東京の昔を映していた画面を見てお婆ちゃんが言う。「いいや、十五年ほど前の神田だよ」「え、だって、古本屋さんとか喫茶店とかまんまですよ」「だから、そういう神田の昔が残ってるところを撮ってるんだよ」「そうなんですか?」わたしも、立て込んだ街並みや、こんぐらがりそうなくらいに掛け渡された電線とかから、お婆ちゃんが正しいと思ってしまった。「ほら、ここを見たら分かるよ」「「ええ?」」お婆ちゃんと二人、4Kの画面に張り付く。「だから、この電線の込み具合は昭和ですよ」「よく見ろよ、光ケーブルが走ってるだろうが」「「光ケーブルぅ?」」解...やくもあやかし物語・64『光ケーブル』

  • らいと古典・わたしの徒然草『第二十八段 諒闇の年ばかりあはれなることはあらじ』

    わたしの徒然草・7『第二十八段諒闇の年ばかりあはれなることはあらじ』この二十八段は、後醍醐天皇の母后が亡くなられて、その喪に服した様をジンワリと心にしみるところがあり、ため息のように書かれた段であります。後醍醐天皇は、持妙院統の花園天皇から譲位された。本来なら、後二条天皇の皇子である邦良親王に譲位されるところでありましたが、邦良親王がわずかに九歳であったっため、邦良親王(くによししんのう/くにながしんのう)の叔父ながら中継ぎの天皇として位についたものであります。読者もご存じのとおり後醍醐天皇は、その後持妙院統にも、同じ大覚寺統である邦良親王の遺児にも位を譲らず、建武の新政を始め、自分の皇子恒良親王(つねながしんのう/つねよししんのう)に譲位し、いわゆる南北朝時代の混乱をまねいた天皇であります。兼好法師のオッサン...らいと古典・わたしの徒然草『第二十八段諒闇の年ばかりあはれなることはあらじ』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・64『オーマイガー!?』

    妹が憎たらしいのには訳がある・64『オーマイガー!?』それから、表面上は穏やかな学生生活が続いた。裏ではいろいろあった。春奈の父親は、C国のハニートラップ、それもロボットに騙され情報を流し続けたということで、他社や自社の重役や役人達といっしょに社会的に抹殺され、今は長崎に帰って妻と少しずつ「夫婦」に戻りつつあった。春奈は、これを機に東京での学生生活に本腰を入れた。むろん宗司のサポートがあってのことだが。日本政府とC国の関係は一触即発の状態になり、グノーシスの仲間割れも休戦状態で、隣の木下クンのところからも、日本とC国の腹のさぐり合い以上の情報は流れてこず、緊張を孕んだ平和が続いた。そんな中、W大の理工学部と自動車部の肝いりで自動車ショーが開かれた。「足としての車足は第二の頭脳である」もっともらしいコンセプトで、...妹が憎たらしいのには訳がある・64『オーマイガー!?』

  • せやさかい・191『本堂でお泊り』

    せやさかい・191『本堂でお泊り』さくらその夜は本堂の外陣で三人で枕を並べて寝ることにした。わたしの部屋で寝ても良かったんやけど、さすがにベッドの他に二人分のお布団を敷くと狭い。それに、一人がベッドを使うと、お布団の二人とは、ちょっと離れてしまう。高さちがうしね。「それじゃ、修学旅行みたく!」頼子さんの提案で、阿弥陀さんの前で寝ることにしたんです。頼子さんが気にしてた御料車は、頼子さんがスマホで二件ほど電話すると引き上げて行った。「枕もとに阿弥陀様がいると、なんか安心しない?」「小学校の林間学校思い出します」「え、留美ちゃんとこは林間学校あったん?」「うん、高野山の宿坊で泊ったんだけどね、こんな感じだった」「高野山も阿弥陀様?」「お不動様でした」「お不動様?」「あ、こんなんです!」二人の前に胡座かいて、お不動さ...せやさかい・191『本堂でお泊り』

  • らいと古典・わたしの徒然草・7『第二十六段 亡き人の別れよりもまさりても……』

    わたしの徒然草・6『第二十六段亡き人の別れよりもまさりても……』徒然草というのは、矛盾やブレが多いようです。第八段では「色欲は身を滅ぼす!」と宣言し。かと思えば、直後の九段では、最後の一節でこそ、取って付けたように異性への惑いをいさめてはいますが、全編「女は髪のめでたからんこそ……」と、女性の魅力を髪に象徴して、そのメロメロさを披露しています。この矛盾やブレは、徒然草が何十年の長きにわたって書かれたものであるというあかしであると同時に、兼好というオッサンのおもしろさを現していると思います。五十路以上の方ならご存じかもと思うのですが『桃尻娘』をお書きになった、橋本治さん(「とめてくれるな、おっかさん。背中の銀杏が泣いている。男東大どこへいく」のコピーで有名)が、『絵本徒然草』でこう述べられている。この二十五段から...らいと古典・わたしの徒然草・7『第二十六段亡き人の別れよりもまさりても……』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・63『たとえ真実でも』

    妹が憎たらしいのには訳がある・63『たとえ真実でも』「……勘だけど、あの女の人はロボットのような気がする」マンションに戻る途中、春奈と宗司がマンションを出て駅に向かって居ることがGPSで分かった。そして、最初に飛び込んできたのが、宗司のこの言葉だ。傷心の春奈を慰めてやりたい気持ちからなんだろうけど当たっている。二人は無言だった。春奈が涙をこらえ、宗司が今の言葉を後悔しながら春奈の気持ちを引き立てようとしていることが、無言の息づかいや、足音などから分かった。「言葉なんか無くても、通じるものってあるんだね……」優子が優しく言った。「始め言葉ありき……と、聖書にはあるけどね」「新約聖書「ヨハネによる福音書」第1章ね……わたしはクリスチャンじゃないから、この言葉は信じない」「そうだね。駅に向かいながら、宗司は無言で春奈...妹が憎たらしいのには訳がある・63『たとえ真実でも』

  • かの世界この世界:171『最初の仲間』

    かの世界この世界:171『最初の仲間』語り手:テル(光子)ひょっとしたら分岐?ハチャメチャな異世界を巡ってきたけど、あとから思うと分岐のようなところがいくつもあった。その時は分岐だなんて思っていなかったから、流れるままに身を任せたけども……。いま形を現わそうとしている仲間は、はっきりイメージを思いうかべないと、とんでもない事態になっりかねない。冴子との関係がこじれたのも、肝心の時にきちんとした選択ができていなかったからという気がしてくる。ええと……ええと……ケイト……ブリュンヒルデ……タングリス……タングニョースト……ロキ……ポチ……とストロボのように巡っていく。あ……あ……迷っているうちに、その巡りそのものが薄くなってき始めた。このままでは消えてしまう。シュボン!唐突にエフェクトが入ったかと思うと、それはブリ...かの世界この世界:171『最初の仲間』

  • らいと古典・わたしの徒然草・6『第二十二段 何事も古き世のみぞ慕わしき』

    わたしの徒然草・6『第二十二段何事も古き世のみぞ慕わしき』人間五十七年も生きていると、なにかしら昔のことが懐かしく、良いように思われます。仕事柄(金にはなりませんが)芝居を観る機会が多くあります。二年ほど前までは、病気のせいで、芝居を観る機会は少なかったのですが、去年から、がぜん観る機会が増えました。一つ気のついたことがあります。昔に比べて、モギリや場内整理係の応対が非常にいいのです。「大橋さまでございますね、はい、うけたまわっております。はい、こちら半券とパンフレットになります。どうぞごゆっくり御観劇くださいませ」「はい、自由席になってございますので、お好きな席におつきくださいませ……あ、前のほうがご覧になりやすうございます」「あ、わたし後ろのほうがええんです(観客の反応を見るためにも、後ろで観ることにしてい...らいと古典・わたしの徒然草・6『第二十二段何事も古き世のみぞ慕わしき』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・62『春奈の秘密・2』

    妹が憎たらしいのには訳がある・62『春奈の秘密・2』三十くらいの女がエレベーターで降りてくる。女がマンションから出てくると、十秒数えて優子とわたしは道を分かれて追跡した。わたしたち義体にはGPS機能が付いているので相手に気づかれることはない。道の分かれ目で合流し、追跡を交代すれば、よほど慣れたスパイや、アナライザーロボットや義体でも、二回まではごまかせる。女は野川沿いの緑地帯に入っていった。顔見知りなんだろう、犬を散歩させているオバサンに声を掛けて、犬とじゃれ合った後、ベンチに座った。少し離れたベンチで、女のパッシブスキャンをやる。体から放出される体温、水蒸気、呼気、脳波、電波などから、相手が人間かロボットか義体なのかを見分けるのだ。「……人間?」「確かめよう」ベンチに座ったまま優子と石の投げっこをする。優子が...妹が憎たらしいのには訳がある・62『春奈の秘密・2』

  • 誤訳怪訳日本の神話・25『因幡の白兎・3』

    誤訳怪訳日本の神話・25『因幡の白兎・3』カチカチ山の兎にも因幡の白兎にも底意地の悪さを感じるのはわたしの経験によるものなのかもしれません。心貧しい青春時代でも、青息吐息の教師時代にもハイティーンの女子には振り回されてきました。この年頃の女子というのは理屈ではありません、好きか嫌いかで生きているようなところがあります。いったん嫌ってしまうと、全てを『嫌い』というフィルターを通してしか見てくれません。そして嫌いな相手には何をしてもいいという感覚になります。白兎がサメを騙したことや、カチカチ山の兎が、執拗にタヌキをイジメたことに現れているように思うのです。白兎はサメを騙しただけじゃないかと言われるかもしれませんが、白兎は、その後のオオナムチ(後の大国主)の人生を過酷なものにして行きます。オオナムチの親切なアドバイス...誤訳怪訳日本の神話・25『因幡の白兎・3』

  • ライトノベル・ベスト『オーマイガー!?』

    ライトノベルベスト『オーマイガー!?』オーマイガー!?と、叫んだらしい……。「OhmyCar!?」と、あたしは叫んだつもり。「……無理にでもとは言わねえからな」気を悪くした伯父さんが間を空け、腕組みして言った。工場の天窓から、夏の日差しが、そのマイカーのお尻を照らしていた。あたしには、その日差しが、マイカーのお尻を溶かしてしまったように思えた。「ううん、いいよ。気に入った!」「それじゃ、これで、よく練習してからホンマモンのマイカー買えよ」「うん、しっかり練習させてもらいます」「じゃ、一応免許証の確認だけさせてもらおうか」「はい、どーぞ」あたしはピカピカの免許証を伯父さんに見せた。伯父さんは、お祖父ちゃんの代からの自動車修理工場。半ば趣味で工場の片隅にポンコツともクラッシックともつかない、車が何台か並んでいる。昨...ライトノベル・ベスト『オーマイガー!?』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・61『春奈の秘密・1』

    妹が憎たらしいのには訳がある・61『春奈の秘密・1』「春奈はどうして長崎から東京に来たの?N女程度の大学なら、九州にでもあるだろ?」バカな質問をする奴だと、二つ隔てたテーブルで、わたしと優子は思った。多摩自然公園で、スリープしていたC国のチンタオ型ロボットと戦って以来、美しい誤解でW大の宗司とN女子の春奈は急速に仲がが良くなった。池の中で溺れかけた春奈は、マウスツーマウスで人工呼吸をしてくれたのは宗司だと思っている。ほんの五秒ほどだけども、わたしは宗司にも人工呼吸をしてやった。で、めでたく宗司も春奈に人工呼吸したのは自分だと思いこんでいるというわけ。――たしかに、宗司に人工呼吸してやったとき、宗司はなけなしの肺の空気を、春奈と勘違いしたわたしに送り込もうとした。その善良さにわたしは、倍の酸素を送ってやったけど、...妹が憎たらしいのには訳がある・61『春奈の秘密・1』

  • 魔法少女マヂカ・197『ランチボックス』

    魔法少女マヂカ・197『ランチボックス』語り手:マヂカ礼法室に連れて行ってくださらない?三時間目が終わって四時間目は図書室で自習という休み時間、ブリンダはランチボックスをぶら下げて霧子の机の前に立った。「あら、礼法室で早弁?」霧子が面白そうに見上げると、鼻の脇に皴を寄せてウインクする。めっぽうお茶目で可愛い顔になるのだが、ブリンダの可愛い顔はクセモノだ。こないだは、霊雁島の第七艦隊のレーガン提督の前でやってくれて大冒険をやらされてしまったぞ。「じゃ、急いで行かなくっちゃ(o^―^o)!」やれやれ、霧子も一秒でブリンダ党になってしまう。ノンコも行きたそうにしていたが、うまい具合に占いをせがむ級友たちに囲まれている。ノンコも魔法少女見習いなんだけど、ブリンダが絡んでくると、たいてい荒事になるのでお留守番だ。「ここか...魔法少女マヂカ・197『ランチボックス』

  • らいと古典・わたしの徒然草・5『第七段 世は定めなきこそいみじけれ』

    わたしの徒然草・5『第七段世は定めなきこそいみじけれ』「人間はいつ死ぬかわからんとこがええねんで」と、兼好法師はおっしゃいます。さらにふみこんで、「四十くらいでポックリいってしもたほうが、みっともない年寄りにならんでよろしい」と言いきります。ご本人は七十歳の長寿を全うされましたが。「四十にしてマドモアゼル」という言葉がありました。世の女性方からはりたおされそうな言葉ですが、これは、アラフォー女性の、やせ我慢……もとい。自立と自信をウィットとユーモアで「無学、鈍感なオッサンにはわからへんやろ」とケムにまいた名言であるらしいです。「四十にしてマドギワず」と、かねがね思い定めていました。それがマドギワどころかマドからとびだしてしまいました。56になる一ヶ月半前のことでした。マドギワずどころか天命とかを知らなければなら...らいと古典・わたしの徒然草・5『第七段世は定めなきこそいみじけれ』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・60『5人のロボット対戦』

    妹が憎たらしいのには訳がある・60『5人のロボット対戦』ギーーギッコンガーーガッコンメキメキメキバキバキバキ赤さびたロボットは右足を引きずるようにして近づいてきた。木々をなぎ倒し、岩を踏み砕きながら……。携帯武器は持っていないようだが、搭載武器が生きているかも知れない。わたしたちは必死で逃げた。ロボットは二世代前のチンタオ型で、半ば故障しているとは言え、生身の人間には十分過ぎる驚異だ。わたし(真由)と優子は義体なので、その気になれば後ろに回り込み、メンテナンスハッチを解錠し、動力サーキットを切ってしまえば、ものの数秒で無力化はできるが、それでは、仲間達に義体であることを知られてしまう。とにかく逃げることだ。「こいつは、チンタオのアナライザータイプだ。攻撃能力は知れているが、探査能力が高い……」ドゴーーーーン!頭...妹が憎たらしいのには訳がある・60『5人のロボット対戦』

  • 銀河太平記・030『』

    銀河太平記・030『アクトマインとは地雷のこと』ミクウワッ(#*0*#)!キャビンに向かう途中で躓いてしまった。船(宇宙船)の通路やキャビンはバリアフリーが当たり前なのに、このファルコンZは、あちこちに凸凹や段差がある。「あ、ごめんなさい!」ミナホがすっ飛んできた。「いや、案内も待たずに動き出したのが悪いんだから(^_^;)」「テルがせかせるからだぞ」「だって、船内案内もらってりゅしい」「ごめんなさい、わたしの不手際です。案内図インストールしたら動きたくなりますよねえ(^#0#^)」やっぱ、宮さまと元帥への案内が先になるよね、わたしたち高校生だし。案内ももらったし、トモヅルはデッキも三層しかないし、テルが「行こう!」と先に進んだのも無理はない。トモヅルの汚さは掃除ができていないという意味の汚さなんじゃないんだ。...銀河太平記・030『』

  • らいと古典 わたしの徒然草・4『女は髪のめでたからんこそ』

    わたしの徒然草女は髪のめでたからんこそ泣いているのか~笑っているのか~後ろ姿の~というシャンプーのコマーシャルソングを覚えておいでの読者は、おおむね五十代以上の人でしょう。年末に、大原麗子がマドンナ役の『男はつらいよ』を観ました。山田洋次監督の演出の腕も確かで、役者の呼吸も絶妙で。確実な昭和の世界がそこにはありました。昭和がなぜに、かくもいとおしいのか……。「おっさん、そら、歳やでぇ~」ごもっとも。アラ還の身としては返す言葉もありません。しかし、この昭和への憧憬には、兼好法師の「女の髪のめでたからんこそ」が潜んでいるように思います。昭和の御代は、その最末期をのぞいて、女性の髪は自然でありました。ゆでかけのインスタントラーメンのごときソバージュのパーマもなければ、パッ金や枯れ葉色の茶パツなどもありませんでした。ほ...らいと古典わたしの徒然草・4『女は髪のめでたからんこそ』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・59『古戦場のピクニック』

    妹が憎たらしいのには訳がある・59『古戦場のピクニック』「あ~たまに来る田舎もいいもんだなあ~」「命の洗濯だあ~」男二人がランチのバスケットを持ったままノビををした。わたしたちは、ひょんなことで友だちになり、みんなでお好み焼きパーティーをやったあと、今日のピクニックの話になった。で、木下クンの提案で、多摩の自然公園のピクニックに来ている。自然公園といっても奥多摩のような完全な自然公園ではない。今世紀の初頭まで団地が林立していた多摩市、八王子市、町田市にまたがるニュータウンの北西部である。人口の減少、高齢化にともないニュータウンの過疎化が進み、先の極東戦争では首都圏内で唯一戦場になったこともあり、1/3にあたる1000ヘクタールあまりが、戦後自然に戻され、多摩自然公園……のようにされた。戦場跡であったので、そのま...妹が憎たらしいのには訳がある・59『古戦場のピクニック』

  • RE滅鬼の刃・13『お祖父ちゃんは凄いです』

    RE滅鬼の刃エッセーノベル13・『お祖父ちゃんは凄いです』いやはや、お祖父ちゃんは精力的な人です(;^_^A三学期も真ん中に差し掛かったわたしは、進路希望調査票にどう書こうかとか、進路に関わって評定をどう上げるかで、ちょっと一杯です(^_^;)。わたしは『けいおん』とか『女子高生の無駄づかい』とかのアニメが好きです。好きな声優さんが、ぜんぜんキャラの違う役の声をやってらっしゃって(律の声優さんがリリー、ゆいの声優さんがロボを、とか)興味深いこともあるのですが、女子高生の日常をほのぼのと肯定的に描いているところが好きです。実際の女子高生の日常なんて、不安とかシンドイことやめんどくさいことの連続で、アニメのように楽しくはないんですけどね。ふたつとも、進路希望調査の話が出てきます。『けいおん』ではゆい(ギター)と律(...RE滅鬼の刃・13『お祖父ちゃんは凄いです』

  • RE・滅鬼の刃・12『お祖父ちゃんは凄いです』

    RE滅鬼の刃エッセーノベル12・『お祖父ちゃんは凄いです』いやはや、お祖父ちゃんは精力的な人です(;^_^A三学期も真ん中に差し掛かったわたしは、進路希望調査票にどう書こうかとか、進路に関わって評定をどう上げるかで、ちょっと一杯です(^_^;)。わたしは『けいおん』とか『女子高生の無駄づかい』とかのアニメが好きです。好きな声優さんが、ぜんぜんキャラの違う役の声をやってらっしゃって(律の声優さんがリリー、ゆいの声優さんがロボを、とか)興味深いこともあるのですが、女子高生の日常をほのぼのと肯定的に描いているところが好きです。実際の女子高生の日常なんて、不安とかシンドイことやめんどくさいことの連続で、アニメのように楽しくはないんですけどね。ふたつとも、進路希望調査の話が出てきます。『けいおん』ではゆい(ギター)と律(...RE・滅鬼の刃・12『お祖父ちゃんは凄いです』

  • らいと古典 わたしの徒然草・3『なくてありなん』

    わたしの徒然草・3『なくてありなん』大橋むつお「ガキなんぞ、つくらんほうがええ!」すごい言いきりです。例によって、ドーナツなどをかじり、口のまわりを砂糖と油まみれにして、ねっころがって『徒然草』を読んでいて、目に飛びこんできたのがこの一節です。第六段『わが身のやんごとなからん』であります。「自分はセレブであろうが、なかろうが、ガキなんぞおらんほうがええ」と、兼好さんはおっしゃるのです。兼好という人は一筋縄ではいかない人で、ときに逆説めいた書き方をしており、この「ガキなんぞ、つくらんほうがええ!」と言いはなつものも、次の七段や百四十二段では「子供っちゅうのは、ええもんや」的なことを、のたもうておられ、ブレが感じられます。まじめな読者なら、眼光紙背に徹する根性でお読みのなるのでしょうが、浅学非才、軽挙妄動、軽佻浮薄...らいと古典わたしの徒然草・3『なくてありなん』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・58『優子の場合』

    妹が憎たらしいのには訳がある・58『優子の場合』バカか、あいつは……?優子は、他の通行人と共にあきれ返った。大学の帰り、真由のようにお友だちもできなかった優子は、晩ご飯の用意にスーパーに寄ろうとして、そいつを見てしまった。ベースは悪くないのだろうが、一目でW大生とわかるダサいパーカーのそいつは、交差点の真ん中で立ち往生している。荷台に括りつけていたゴムバンドが外れて、垂れたフックが自転車の後輪に絡まり、身動きがとれなくなっているのだ。滑稽なことに、本人は気づかず、幽霊かなんかが、理不尽に自分の自転車を止めている超常現象だと思っているらしいことである。「あれ、あれ……ええ……(;'∀')?」で、パニック寸前の顔で、交差点の真ん中でオロオロしている。見ている通行人は、原因が超常現象などではなく、ただのドジであること...妹が憎たらしいのには訳がある・58『優子の場合』

  • やくもあやかし物語・63『三寒四温の今日このごろ』

    やくもあやかし物語・63『三寒四温の今日このごろ』お風呂上りは油断してしまう。三寒四温の今日この頃。今日は、その四温の日で、お風呂にゆっくり浸かって上がると、昨日までの三寒よりもホコホコしている。我が家は部屋が十個以上もあるので三寒の日は寒々しさひとしおなんだけど、ちょっと油断してしまうくらいに暖かい。スリッパを止めて裸足で部屋まで戻る。昨日まで冷たいと感じていた廊下がヒンヤリと足の裏に心地いい。広い家の、どこかとどこかが開いていて、微かに空気が流れている。閉め切っておくと、空気が淀んで陰気だし、冬場でもカビが生えたりするそうなので、そういう造りになっているのよとお婆ちゃんが説明してくれたけど、まだ確認したことはない。三寒の昨日までなら、そういう開いているところから魔物とかが入って来るんじゃないかと心配になった...やくもあやかし物語・63『三寒四温の今日このごろ』

  • らいと古典 わたしの徒然草『2・あやしうこそものぐるほしけれ』

    わたしの徒然草・2『あやしうこそものぐるほしけれ』さて、第二回目。いよいよ本題。高校生なみ……以下の知識しか持ちあわせていないわたしは、とりあえず『徒然草』について書かれた本にあたってみるしかない。と思いさだめ、図書館から『徒然草』について書かれた本を借りてくることから始めました。結論は「こら、あかんわ……」であります。図書館にある六十冊の中の数冊を見ただけですが、ありていに言えば、うまい料理を味わうのではなく。料理の材料の産地や、脂肪がどうの、タンパク質、ビタミンがどうのと成分分析をしているようなものばかり。高校生用の『国語便覧』にいたっては、いかにも「これ暗記しとけ!」というような記号化された情報だけ。「成立、千三百三十年から~千三百三十一年。学問、芸術、男性論、女性論、飲酒論、説話的なもの、有職故実。中心...らいと古典わたしの徒然草『2・あやしうこそものぐるほしけれ』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・57『でんでらりゅうば』

    妹が憎たらしいのには訳がある・57『でんでらりゅうば』――しばらく様子を見る――二日後にユースケに宛ててメールを打った。当然、となりの木下クンのPCを中継してメールの出所は分からなくしてある。――さすが甲殻機動隊。発信源も分からないし、着信履歴も残らないな――折り返し、ユースケからメールが来た。ユースケも、なかなかやるもんで、発信はペンタゴンになっていた。もっとも原文は――バグダッドは快晴、雲一つ無し――で、世界中に駐留するアメリカ軍、関係施設に一斉送信され、そのどこかのCPをハッキングしているCPをいくつも経由して、木下クンのCPに入ってきたものだ。通信コードからペンタゴンと知れただけである。木下クンのハッキングは秒単位で移動して、しかも痕跡を残さない。ペンタゴンも、軍の情報局も、甲殻機動隊でも見抜くことはで...妹が憎たらしいのには訳がある・57『でんでらりゅうば』

  • かの世界この世界:170『飛ぶぞ!』

    かの世界この世界:170『飛ぶぞ!』語り手:テル(光子)飛ぶぞ!その声は時美先輩だ。声の背後に息をのむ気配、これは美空先輩だろう。突然の決心に二人の先輩は短く声をあげることと息をのむことしかできなかったようだ。仕方ない、ここからは自分でやるしか……これまでもそうだったけど、わたしの時空の飛び方に脈絡は無い。たとえ、犬のウンコを握りつぶしたことがきっかけであったとしても、自分の選択だ。前を向いて行くしかないよ。洗濯機の中を思わせる時空の渦の中をグルグル振り回されながら落ちていく……目が回るようなことはなかった。手にこびりついた犬のウンコが遠心力で飛び散ってきれいになっていく。よかった、ババ掴みのままで異世界探訪なんてまっぴらだ。しかし、飛び散っていくのはウンコだけではなかった。身に着けた制服がビリビリと音を立てて...かの世界この世界:170『飛ぶぞ!』

  • らいと古典 わたしの徒然草『1・徒然草ショック又は事始め』

    わたしの徒然草・1『徒然草ショック又は事始め』十年前、横浜の出版社の依頼で始めたエッセーですが、ちょっと懐かしくて加筆訂正しながら復刻してみることにしました。気づけば当年とって兼好法師の享年になります。これも何かの縁でしょうか。どこまでいけるかわかりませんが、お付き合いいただければ幸いです。令和三年二月徒然草について書こうと気軽に思いました。高校の古典で学び、司馬遼太郎や瀬戸内寂聴などのエッセーなどでも時々見かける古典中の名作。それも源氏物語などと違って、二百四十三段のエッセー。『石清水八幡宮の仁和寺の法師』など、すでに知っているものもあります。枕草子、方丈記と並ぶ名作。とは言え、二百四十三もあれば適当にフィーリングの合うものをつまみ食いすれば……ぐらいの感覚で、とりあえず嵐山光三郎氏のジュニア版を読んでみまし...らいと古典わたしの徒然草『1・徒然草ショック又は事始め』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・56『となりの木下クン』

    妹が憎たらしいのには訳がある・56『となりの木下クン』「ハナちゃん、名古屋ナンバーに変えて」『なに、企んどりゃーすね、怪しいてかんわ♪』ハナちゃんは、古典的な名古屋弁で冷やかしながら、ナンバーを変えた。「大阪出身じゃだめなの?」急な変更にわたしは戸惑った。「念には念を。パパが用意してくれたIDの信頼性は高いけど、万一ってことがあるから」「さすが、甲殻機動隊副長の娘ね」わたし達はN女子大に近い神楽坂の若者向けのマンションの住人になった。不動産屋には女子学生専用のを勧められたが、わたしと優子(幸子と優奈の融合)は、あえて普通の中級チョイ下のマンションを選んだ。同郷の女子大生が住むのには、ワンル-ムのマンションよりは、この程度のマンションをシェアして借りた方が自然だと思ったからだ。それに隣人がぴったりだった「隣りに越...妹が憎たらしいのには訳がある・56『となりの木下クン』

  • 魔法少女マヂカ・196『ブリンダ!!』

    魔法少女マヂカ・196『ブリンダ!!』語り手:マヂカ光栄です、大使のお嬢様にお会いできるなんて。霧子は痛む足を庇っている(演技なんだけど)ブリンダに手を貸してやりながら外交辞令を言う。とっさに、こういう判断と言葉が出てくるのは、さすがに高坂霧子、並みの華族令嬢ではない。普通なら、支度小屋で控えている松本を呼びに行くだろう。実際は、わたしも肩を貸してやり、ブリンダの2/3の体重を引き受けってやってるんだけどな。気持ちを読んだブリンダがウィンクする。「あ、目にゴミが入りましたか?」ノンコも甲斐甲斐しくハンカチを出す。どうやら、ノンコの記憶をブロックしたようだ。ノンコはブリンダの正体を知っている。ノンコに下手に協力されたら足手まといと判断したんだろう。しかし、ブリンダの気持ちはありがたいが、こいつは、常に自分がリーダ...魔法少女マヂカ・196『ブリンダ!!』

  • シニアライトノベル『蜘蛛の糸』

    シニアライトノベル『蜘蛛の糸』ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでゴシゴシ掃除なさっていました。極楽も、経費節減のため、人件費を削らざるをえなくなりました。お釈迦様は率先垂範(そっせんすいはん)のため、ご自分の散歩道は、ご自分で掃除されることになったのです。昨日は、沙羅双樹(さらそうじゅ)の林の落ち葉を掃き集め須弥山(しゅみせん)のふもとでお焼きになられました。そのとき、須弥山の荒れようも気になられたのですが、須弥山はとてつもなく大きな山だったので、こう呟かれました。「まあ、あれは趣味の問題だから、後回しにしよう……ちと、おやじギャグであったか……」クチュン!寒いギャグに、お仕えの天人がクシャミをしました。そこで、今日は、おやじギャグをとばしても、誰の迷惑にもならぬように、独り極楽の蓮池...シニアライトノベル『蜘蛛の糸』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・55『三ヶ日メタモルフォーゼ』

    妹が憎たらしいのには訳がある・55『三ヶ日メタモルフォーゼ』アズマのセダンに変態させたハナちゃんを三ヶ日のインターチェンジに入れた。わたし(ねねちゃんと俺の合体)と、サッチャン(幸子=俺の妹)は、信太山駐屯地にあるシェルターを出発して東京を目指した。三ヶ日を過ぎると検問があるので、このインターチェンジで、これからの行動を考えながら当面の対策を練っている。「ウナギの焼きお握りたまら~ん(^0^)」サッチャンが優奈の顔で、目をへの字にした。「義体にしては、よく食べるのね」わたしは天蕎麦のエビ天の尻尾をポリポリ囓る。えびせんのような香りが口の中に広がる。サッチャンは、とっくにそれを食べて、三ヶ日名物のウナギの焼きお握りたまら~ん状態。「優奈ちゃんに変態したところだから、生体組織に栄養がいるのよ。それに東京での生活の準...妹が憎たらしいのには訳がある・55『三ヶ日メタモルフォーゼ』

  • 銀河太平記・029『宇宙一のガラクタ船『ファルコンZ』』

    銀河太平記・029『宇宙一のガラクタ船『ファルコンZ』』ヒコトモヅルというのは戦後作られた汎用駆潜艇だ。いわゆる条約型だ。あの戦争が終わってから、世界中の国が集まってウラヤス軍縮会議が開かれた。日・米・英・独・仏・伊・露・満・中(新制中国で、三か国に分かれていたが、軍縮会議ではまとまっていた)の九か国。火星の植民地国家を入れていないのでナンセンスという評論家もいるが、宇宙軍を含む総括的な軍縮が出来たので画期的な軍縮であったと評価する政治家も多い。このウラヤス軍縮で、主力艦の保有トン数に制限が加えられた。主力艦の保有トン数に力点を置いた日本政府は、補助艦艇で妥協した。その妥協の産物の一つがトモヅルだ。700トンという総重量の中に、1500トン駆逐艦並みの装備を載せて、建造当初からトップヘビーの危険を指摘されていた...銀河太平記・029『宇宙一のガラクタ船『ファルコンZ』』

  • 滅鬼の刃12・『卒業ソング』

    滅鬼の刃エッセーノベル12・『卒業ソング』今年(2021年)も卒業式のシーズンがやってきました。日本全国四万校あまりの、小学校から大学まで、学校の数だけ卒業式が行われます。中には、卒業式とは言わずに、卒業証書授与式というところもあります。ちょっとしっくりきません(^_^;)。わたしのいる大阪などは、公には卒業証書授与式となっていますが、みんな卒業式と言っています。卒業式で歌う歌を「卒業ソング」とか「卒業生の歌」とか言います。ちなみに検索してみると、以下のような歌が出てきました。〇贈る言葉海援隊〇卒業写真松任谷由実〇MyGraduationSPEED〇3月9日レミオロメン〇道EXILE〇桜の栞AKB48〇Yellいきものがかり〇旅ダチノウタAAA〇BestFriend西野カナ〇振り向けば…JanneDaArc(ジ...滅鬼の刃12・『卒業ソング』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・54『羊水の中のオレ』

    妹が憎たらしいのには訳がある・54『羊水の中のオレ』オレは特大の胎児標本のように羊水の中に浮かんでいる。「今度の任務は長くなりそうだから、羊水保存させてもらったわ」水元中尉が、まるで熱帯魚の移し替えをやったような気楽さだ。「おもしろかったわよ。みんなでお兄ちゃんのこと裸にして、エイヤ、ドッポーンってこの羊水の中に放り込んだの。頭の中身はそっちに行ってるはずなのに、裸にするときは嫌がってね。パンツ脱がせる時は一騒動だった。ねえ、チサちゃん」「知りません、わたしは!」チサちゃんは顔を赤くして、あさっての方を向いてしまった。その後ろでは、親父とお袋がいっしょに笑っている。「ほ、ほんとに自分たちでやったの!?」ねねちゃんの中に入っている俺の自我が、ねねちゃんの声でうろたえた。「チサちゃん、あそこつまんでさ、まるで親指姫...妹が憎たらしいのには訳がある・54『羊水の中のオレ』

  • 滅鬼の刃・11『滅鬼 メッキ』

    滅鬼の刃エッセーノベル11・『滅鬼メッキ』滅鬼の刃とは、流行りのアニメに便乗した安直なオヤジギャグのようなタイトルですなあ。始めるにあたっては、パクリのそしりを受けるだろうと、思いながら、あえてそのままにしました。わたしの人生そのものが、どこかパクリでうさん臭くて、それなら第一印象パクリの『滅鬼の刃』とした次第です。滅鬼とはメッキと読みます。わたしが、あれこれ考えたり考えの結果としての駄文はメッキであります。本を読んだり人の話を聞いたりして、自分の考えとか感性だとか思い込んでいるものがほとんどであります。なんだかいいことめいたことを書いても、ああ、こいつの書いていることは所詮メッキなんだと思っていただいたほうが気楽だという、あらかじめの言い訳であります。もう一つの意味は、自分の中に住み着いた鬼を、人目に晒すこと...滅鬼の刃・11『滅鬼メッキ』

  • 誤訳怪訳日本の神話・24『因幡の白兎・2』

    誤訳怪訳日本の神話・24『因幡の白兎・2』腹いせで言うんじゃないけど、八十神たちは全員ヤガミヒメにふられっちまうよ。傷の癒えたウサギは真顔で言いました。「そうなのか?」「そうだよ、通りすがりウサギをこんな目にあわせるなんて根性が歪んでる証拠だよ。そんな根性悪にヤガミヒメが『うん』と言うわけないじゃないか」「じゃ、ヤガミヒメは誰とだったら『うん』と言うんだい?」「それは、オオナムチ、あんただよ」「え、ぼくが(^_^;)!?」「さあ、あたしはもう大丈夫だから、ヤガミヒメのところに行きなよ!」ウサギに背中を押され、先を急ぎ、総スカンをくった兄たちを尻目に告白して、目出度くオオナムチはヤガミヒメと結ばれました。めでたしめでたし……。これが記紀神話の『因幡の白兎』に関わる凡その記述です。ここから筆者の妄想であります。白兎...誤訳怪訳日本の神話・24『因幡の白兎・2』

  • 妹が憎たらしいのは訳がある・53『ねね 家に帰る』

    妹が憎たらしいのには訳がある・53『ねね家に帰る』ユースケは国防軍の戦闘指揮車に変態して送ってくれた。「先ほど連絡した国防軍の者です。お嬢さんをお連れしました」インタホン越しにロボット兵が申告する。ついさっき、ねねが破壊した拓磨の義体からでっちあげたリモコンの兵士だ。むろん操作をしているのはユースケである。「世話になった、そこからは娘一人で来させてくれ」「は!」「一応スキャニングする」「はい」里中副長は、スキャニングのボタンを押した。玄関そのものが、スキャナーになっている。「オールグリーン。本物のねねだな」「今日は疑われっぱなし」「だいぶビビットなコミュニケーションだったようだな」「おかげで……」ねねは、首筋のコネクターと、父のブレスレットアナライザーとをケーブルで結んだ。「……国防省の中枢に100人ほどか。A...妹が憎たらしいのは訳がある・53『ねね家に帰る』

  • せやさかい・190『留美ちゃんが「うん」と言わないわけ』

    せやさかい・190『留美ちゃんが「うん」と言わないわけ』ヨリコ近くに駐車場があるから!御料車は一般の駐車場には停められません。わたしの願いはジョン・スミスの涼しい顔に一蹴された。領事館の公用車はトヨタのワンボックスなんだけど、お婆さまの命令で去年の暮れからロールスロイスのファントムになっている。レクサスよりも縦100センチ、横50センチも大きくて並みの駐車場では収まらないらしいことと、車がセレブ過ぎて断られるかららしい。しかたなく、如来寺の山門脇から入る。並の車なら三台は停められるスペースを独占してドアを開けると、如来寺の人たちだけでなく、檀家やご近所の人たち、振り返ると山門の外にはお巡りさんまで交通整理をし始めている。ほとんど嫌がらせ(^_^;)「留美ちゃん、良かったあ!」さくらと並んでいる留美ちゃんを見つけ...せやさかい・190『留美ちゃんが「うん」と言わないわけ』

  • 誤訳怪訳日本の神話・23『因幡の白兎・1』

    誤訳怪訳日本の神話・23『因幡の白兎・1』八十神(やそがみ)と言っても八十人の神さまというわけではありません。たくさんの神さまという意味です。で、八十神はオオナムチ(オオクニヌシ)の兄たちです。悪い神さまたちで、末っ子のオオナムチに大きな袋(自分たちの荷物)を持たせて因幡の海岸を急いでおりました。なんで急いでいたかと言うと、因幡のヤガミヒメという女の子を口説きにいくためです。「アニキ、因幡にヤガミって可愛い子がいるってさ、いっちょ突撃してみねーか?」「お、まぶい女の話か!よし、そーいうのは機会均等の精神だぜ、兄弟くり出して行こうじゃねーか!」「じゃ、手荷物はオオナムチに持たせてやろーぜ!」こんな感じですなあ、八十神たちが因幡の海岸にさしかかると、皮を剥かれて赤裸になった兎がウンウン唸って転がっておりました。「な...誤訳怪訳日本の神話・23『因幡の白兎・1』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・52『拓磨!?』

    妹が憎たらしいのには訳がある・52『拓磨!?』事件は、その日の放課後におこった……。「……道が違わない、拓磨クン?」「下水道工事で、いつもの道は通られへんみたいや。外環に出て、ちょっと大回りするわ」たしかに、カーナビには工事中通行止めのサインが出ていた。回覧板の記録と照合したが、隣の町内のことなので記録がない。半信半疑のまま助手席に座り続ける。交差点を左折して妙な振動を感じた。道路は平坦なのに、体の感触は僅かに車が乗り上げた感触。そして緩い坂になり、すぐに車は停車した。窓から見える景色は外環を外れた国道〇号線のそれだ。左側にはコンビニ、右側は回転寿司と焼き肉チェーン店。ときどきパパと来る店だ。拓磨がドアを開けて車から転がり出た。わたしはシートベルトを外すのに0・5秒遅れた。車から出て驚いた……そこは大きな倉庫の...妹が憎たらしいのには訳がある・52『拓磨!?』

  • かの世界この世界:168『再びの決意』

    かの世界この世界:169『再びの決意』語り手:テル(光子)そうだったの……。お茶のエッセンスを絞り切るようにポットを上下させて美空先輩は呟いた。「完全じゃないと思うけど、この辺で手を打つか」時美先輩が、見かけのボーイッシュさとは裏腹な優しい手つきでケーキをお皿に移す。「ハハハ、不思議か?」「あ、いえ」「普段は大ざっぱだけど、ここ一番という時は丁寧にやるんだ」「時美はね、思ったよりも見かけにこだわるのよ」「潰れたケーキって、やだろ。三人で食べるんだったら三つとも綺麗にしとかなきゃ、つまんないだろ」「そうですね」時美先輩のこだわりにホッコリする。「さ、いただきましょ」そういうと美空先輩は『けいおん』のムギちゃんのような笑顔でケーキにフォークを入れた。「……おいしい」久々に(現実世界では二時間ほどしかたってないんだけ...かの世界この世界:168『再びの決意』

  • 誤訳怪訳日本の神話・22『大国主について、最初から脱線(^_^;)』

    誤訳怪訳日本の神話・22『大国主について、最初から脱線(^_^;)』古事記によると六代目の子孫。日本書紀正伝によると二代目の息子。とにかくオオクニヌシはスサノオの血筋であります。そのオオクニヌシが、同じスサノオの娘であるスセリヒメ(須勢理毘売命)と結婚します。この結婚にはエピソードがありすぎるので、わたしの趣味で絞ります。まず、二人の関係……血縁です!日本書紀正伝では腹違いの兄妹でさえあります!高天原の国津罪でも書きましたが近親相姦はご法度です。いまの民法でも当然認められません。ところが、古代では緩かったんですなあ。腹違いの兄妹は結婚できます。伯父・叔父と姪の結婚もOKでした。現代の感覚では「えええええ!そんなああああ!?」になります。友だちが「わたし結婚したの!」と言ってきたら、「え!相手は誰なの!?」と聞き...誤訳怪訳日本の神話・22『大国主について、最初から脱線(^_^;)』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・51『テイクオーバー』

    妹が憎たらしいのには訳がある・51『テイクオーバー』三日と持たない……里中副長は思った。グノーシスが送り込んできたねねは、シリアルもオリジナルと同じで、こちらのねねのメモリーは昨日の分までは完ぺきにコピーされていた。だから、里中副長がニセモノと気づかなくても不自然ではない。しかし、里中副長は慎重だった。自分の住みかをプライベートとアジトに分けている。プライベートにも、ある程度の機密があり、軍や甲殻機動隊ともリンクしているが、ほんの日常的なアクセスしかできないようになっている。万一のためにダミーの戦闘詳報や、機密情報をカマシてはあるが、ねねが気づくのは少し時間がかかるだろう。しかし、いつまでもというわけにはいかない。ねねが知るのは時間の問題だろう。三日目、その時がやってきた。ねねの母親・里中マキ中尉の記憶は、レベ...妹が憎たらしいのには訳がある・51『テイクオーバー』

  • 魔法少女マヂカ・195『』

    魔法少女マヂカ・195『練馬のゴルフ練習場』語り手:マヂカずいぶん走ったようだが、練馬の西のようだった。なんせ、車も道路事情も大正時代だ。練馬の名物は大根……だけではない。戦後、多くのマンガ家が住み着き、その流れからかアニメの発祥の地になり、令和の時代では日本で一番アニメスタジオが多い地域になっている。いわば、アニメとマンガの聖地で、そういうサブカルチャーのエネルギーが奇跡を起こすのではないかと妄想しかける。「ここでございます」パッカードが停まったのは、田んぼや畑が広がるところで、絵の前はほんとうに大根畑だった。大根畑を抜けると、簡単な柵で囲われた広い空き地が見えてきた。『米国大使館付属ゴルフ倶楽部練習場』英語と日本語の看板が掛かっている。案内板を見ると、三ホールしかない。パー3パー4パー5の基本的なコースが整...魔法少女マヂカ・195『』

  • 誤訳怪訳日本の神話・21『八雲たつ出雲八重垣』

    誤訳怪訳日本の神話・21『八雲たつ出雲八重垣』八岐大蛇を退治したあと、スサノオは――オレ、生まれて初めていいことしたんだ……なんちゅう清々しさであることよ……目の前の景色も嫁のクシナダヒメも、なんとも愛おしく仕方ねえよなあ――なんだか、涙が出て仕方がありません。スサノオは、これまでもよく泣きました。ガキの頃は、カアチャンが居ないよおと言ってはジタバタ泣いて、父のイザナギを困らせ、高天原では「少しは、オレに構ってくれよおお!」と泣いて、お姉ちゃんのアマテラスにこっぴどく怒られては泣いて、高天原を追放されてきました。それが、ここへきて、テナヅチ・アシナヅチの老夫婦に同情し、一世一代の計略を練って、体を張ってクシナダヒメを助けました。初めて人のために働き、今までに感じたことのない充足感、人と喜びを分かち合う嬉しさから...誤訳怪訳日本の神話・21『八雲たつ出雲八重垣』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・50『ねねちゃんとの同期』

    妹が憎たらしいのには訳がある・50『ねねちゃんとの同期』股間からドレーンをそっと引き抜き「ディスチャージオーバー」と呟いた。いつもなら、これで憎たらしいニュートラルモードになるのだが、どうも様子がおかしい……。幸子は、脚こそ閉じたが、裸のままベッドに横になっている。表情もなく、呼吸のギミックも始まらない。「幸子、どうした……?」幸子の体内から抜き出した洗浄剤は、時間のたった血液のようにどす黒かった。「……もう一度メンテナンスやり直そうか?」「その必要は無い」幸子は、無機質に答えた。でもニクソクはなかった。なにか、とても大きな心のうねりを必死でおさえ、平静さを保とうとしているように思えた。「幸子……」「わたし……ニュートラルよ」「でも、様子がおかしいよ」「耐えているから……」幸子の目から、一筋の涙がこぼれた。そし...妹が憎たらしいのには訳がある・50『ねねちゃんとの同期』

  • 銀河太平記・028『カルデラの陰』

    銀河太平記・028『カルデラの陰』ダッシュ二十三世紀の今日、月は地球にとって同じ敷地にある別棟の作業小屋のようなところだ。火星のように大気を作ることができない(大気を留めておけるほどの引力が無い)ので、人間が活動できる空間は、地上にせよ地下にせよカプセルで覆わざるを得ない。また、引力の弱さは長期滞在者の骨を弱らせてしまい、地球に戻った時に回復するのに三か月を要し、その間、月の滞在者は使い物にならない。二百年前に武漢ウイルスによって、世界各国は鎖国のようなことをしなければならなかった。多少見通しがついて、ビジネスなどの往来は復活したが、外国に行っても二週間の隔離が義務付けられ、用事が済んで帰国しても、自国で二週間の隔離観察が義務付けられて、たった一日の用事でも四週間が無駄になるので、三年後に克服されるまでは、実質...銀河太平記・028『カルデラの陰』

  • RE・滅鬼の刃・10『街とスキンシップ』

    RE滅鬼の刃エッセーノベル10・『街とスキンシップ』自然と言うものは、海や山や堤防なので囲っていない川のことだと思っていました。お祖父ちゃんの書いたものを読むと、街の中に『自然』と言ってもいい風景が広がっていたんだと感心します。土がむき出しの、お祖父ちゃんが言う『地道』は十分に自然です。デコボコしていて、雨が降ったら、それこそ海のようになってしまった地道を長靴履いて、時には上級生のお兄さんお姉さんにオンブしてもらって登校なんて、ちょっと牧歌的です。近ごろはセクハラとかがうるさくって、それは大人が子どもに対してのことだけじゃなくて、子ども(高校生のわたしも含めて)の間でもセクハラの問題は大きいのです。お祖父ちゃんに聞くと、昔の男の子は平気でスカートめくりしていたとか。信じられません。中学のころ「用もないのに威勢の...RE・滅鬼の刃・10『街とスキンシップ』

  • 誤訳怪訳日本の神話・20『八岐大蛇(やまたのおろち)』

    誤訳怪訳日本の神話・20『八岐大蛇(やまたのおろち)』目(め)は丹波酸漿(たんばほおずき)のように眞赤(まつか)で、一つの体にに頭と尾がが八つずつあります。その体には蘿(こけ)や檜(ひのき)杉などが生え、その長さは谷(たに)八(や)つ峰(みね)八(や)つをわたつて、その腹を見ればいつも血(ち)が垂れて爛(ただ)れています。アシナズチ・テナズチの二人は狭い家の中で体全体を使って八岐大蛇の説明をします。「いやあ、たいへんな化け物だなあ、モンハンでも、そんなのはめったに居ねえよ」「やっぱり、八岐大蛇を退治するとなるとハイレベルなプレイヤーでタッグを組んで、課金しまくって装備を整えなきゃなりませんでしょうねえ」「お爺さん、でも、わたしたちには、そんなお金ありませんよう」「いや、大丈夫だ。この家にあるもんでやっつけられる...誤訳怪訳日本の神話・20『八岐大蛇(やまたのおろち)』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・49『憎たらしさの原因』

    妹が憎たらしいのには訳がある・49『憎たらしさの原因』里中副隊長は黙り込んだままだ。スニーカーエイジ、本番の真っ最中に優奈が殺された。まるで蚊を叩き潰すようにして。直後の甲殻機動隊の動きは早かった。ハナちゃんを始め高機動車が何台もやってきて、会場の捜索をやるとともに、俺たち関係者をすぐに会場から連れ去った。顧問の蟹江先生には一枚の保護令状が示されただけだった。同じ物が、フェリペ、お父さんの職場、お母さんが仕事を請け負っている出版社にも送られたことを、移送中の高機動車の中で伝えられた。つまり、俺たちは当分世間から隔離されて生きていかなければならなくなった。俺たちを乗せた十台あまりの高機動車は、会場を出ると、すぐに別々の道を走り出し、目立たないトンネルや脇道に入るとステルスモードになって数秒後には国防軍仕様の高機動...妹が憎たらしいのには訳がある・49『憎たらしさの原因』

  • やくもあやかし物語・62『昇降口と忘れ物』

    やくもあやかし物語・62『昇降口と忘れ物』小桜さんには見えないみたい。ほら、図書室の窓側の席で熱心に本を読んでいる、わたしソックリな女生徒。小桜さんは『風邪ひいたみたい』と杉村君に言って先に帰ってしまった。先生に頼まれた仕事は四時半には終わったので、わたしも書庫から出て帰ろうかと思った。ブルルスマホが震えてギクッとする。マナーモードだからカウンターの杉村君に知られるはずもないんだけど、やっぱ、こっそり様子を窺っていた後ろめたさからなのか、ギクッとしちゃうのよ。『ごめん、カウンターのとこに体操服忘れた。昇降口のとこまで戻ってるから持ってきてくれない?』小桜さんだ。慌てていたんで忘れてしまったんだ。「うん、いいよ。そこで待ってて」『サンキュ、恩に着る(^▽^)』ほんとは、閲覧室には行きたくない。杉村君居るし、窓側に...やくもあやかし物語・62『昇降口と忘れ物』

  • 誤訳怪訳日本の神話・19『国津罪』

    誤訳怪訳日本の神話・19『国津罪(くにつつみ)』八岐大蛇(やまたのおろち)を語りたいのですが、高天原で忘れていたことがあるので、ちょっと遡ります。スサノオがアマテラスへの意地悪でやったことを天津罪(あまつつみ)であると紹介しました。天津とは天界(たかまがはら)で侵された罪という意味です。神さまをお祀りすることや農耕に関する罪だと申しました。この天津罪と並ぶのが国津罪です。言葉的には地上に国が出来て、その国での罪を記したものとなっています。しかし、内容的には天津罪よりも深い罪や穢れの意識が反映されているのではないかと思います。:国津罪とは生膚断(いきはだだち)生きた人間を傷つけることで、今でいう傷害罪です。いつの世も人は傷つけてはいけないぞということでしょう。:死膚断(しにはだだち)死体損壊あるいは傷つけたことで...誤訳怪訳日本の神話・19『国津罪』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・48『スナイパー』

    妹が憎たらしいのには訳がある・48『スナイパー』イゾウは閉じた思念の中で装備の最終確認をした。義体一体吹き飛ばすのには十分な装備だ。炭素繊維の短銃身のグレネードランチャー。本来ゲリラ戦用の使い捨て武器である。イゾウはこれを二本まとめて、二発発射できるようにしていた。一発で仕留める自身はあったが、義体の脳は頭にあるとは限らない。胸や腹に仕込んだもの、中にはバックアップのCPを持っているものもあり、義体を完全に仕留めようとしたら、頭部と胴を同時に破壊しなければならない。今まっさかりの極東戦争でも、こういう義体には手を焼いているが。イゾウは仕留め損なったことはない。その腕を買われて、こちらのグノーシスに引き抜かれた。むろん正式にではない。今回佐伯幸子という義体が、スニーカーエイジに出るので、できるだけ派手に破壊して欲...妹が憎たらしいのには訳がある・48『スナイパー』

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