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2015/01/11

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  • せやさかい・189『王女旗はためかせ』

    せやさかい・189『王女旗はためかせ』ヨリコお婆さまは危機を感じている。まず、コロナでしょ。コロナって中共ウイルスのことなんだけど、バイデンが中共ウイルスっと言ってはいけないという大統領令を出したので使用を控えているのよ。べつにヤマセンブルグ公国はアメリカの属国じゃないんだけどね、弱小国はアメリカを立てておかなきゃならないしね。コロナの事は、お婆さま自身が高齢者なんで、本人も周囲の人たちも心配。なんせ、ヤマセンブルグの跡継ぎは正式には決まっていない。理由は簡単。わたしが日本国籍を放棄していないから。国王の二重国籍は認められない。お婆さまにもヤマセンブルグの国民にも申し訳ないんだけど、わたしは、まだ母の国の国籍を捨てられない。そのかわり、お婆さまの言うことはきちんと聞いている。高校に進学するときに専用のガードを付...せやさかい・189『王女旗はためかせ』

  • かの世界この世界:168『ほとんど元の世界』

    かの世界この世界:168『ほとんど元の世界』語り手:テル(光子)学校の中を一通りまわった。冴子が他人になってしまった以外は何も変わっていないように感じた。クラスの友だちは普通に話しかけてくれるし、席に戻って五時間目の教科書を出すと、表紙の隅に憶えのあるシミがちゃんとついている。黒板に目を向けると、今日は日直だ。そうだ、日直だった。日直の最大の仕事は黒板を消すことだ。改めて確認すると、四時間目の板書はきれいに消してある。相棒の戸倉さんがやってくれたんだ。「ごめん、戸倉さん、ボーっとしてて日直忘れてた(^_^;)」「いいわよ、寺井さん考え事してたみたいだったし」「え、あ、ちょっとね」「よかったら、学級日誌とってきてくれる?ちょっと担任には会いにくくって」そう言うと、戸倉さんは手元のプリントに視線を落とす。プリントは...かの世界この世界:168『ほとんど元の世界』

  • 誤訳怪訳日本の神話・18『姫を櫛に変えて(#´ω`*#)』

    誤訳怪訳日本の神話・18『姫を櫛に変えて(#´ω`*#)』大宜都比売(オオゲツヒメ)をブチ殺した後のスサノオは様子が変わります。それまでの乱暴者は影を潜めて、普通のヒーローになっていきます。普通と書いたのは個人的な趣味です。読んでいる限りでは高天原までのスサノオの方が断然面白いと思います。スサノオは、出雲の国のトリカミという所にやってきます。何気に川に目をやると上流から箸が流れてきます。「……箸が流れてくるということは、この上流に人が住んでいるんだなあ(^▽^)/」人恋しいスサノオは、エッチラオッチラ川に沿って歩いて行きます。一軒の家から爺さん婆さんの泣き声が聞こえてきました。年寄りが泣いているのを見過ごせるスサノオではありません。キャラ変してしまったようですが先に進みます。「通りがかりのもんだけど、年寄り二人...誤訳怪訳日本の神話・18『姫を櫛に変えて(#´ω`*#)』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・47『優奈と幸子の二転三転』

    妹が憎たらしいのには訳がある・47『優奈と幸子の二転三転』そこにはねねちゃんが立っていた……。「これ、警察病院からもらってきたの。亡くなる前にママが、一時的に元気になった時の薬剤」「これは……」そうだ、里中ミッション・4でねねちゃんの義体にインストールされた俺が里中リサを看取った時のものだ。まだ残っていたんだ。「優奈ちゃんにも効くわ、元々は、戦闘中に負傷した者を一時的に健常にもどし、あとで治療するためのものだから」「じゃ、優奈ちゃん出場できるのね!」みんなが喜んだ。幸子も喜んだが、仕様書を読んで顔が曇った。「心臓に負担が……15%の確率で効かないこともあるのね」「……ええ、それに状態によっては、完全に戻らないこともあるわ。使うかどうかは、あなた達次第。じゃ、明日は会場で見てるわ。チサちゃんも来るんでしょ?」「う...妹が憎たらしいのには訳がある・47『優奈と幸子の二転三転』

  • 魔法少女マヂカ・194『』

    魔法少女マヂカ・194『霧子の決心』語り手:マヂカ食べ過ぎです!ダイニングに入ってきた春日が目を三角にした。キッチンに繋がるドアの所でメイドのクマちゃんがお握りを載せたトレーを捧げ持ったまま笑いをこらえている。わたしはノンコと顔を見合わせて、三枚目のトーストに伸ばした手を引っ込めた。「あなたたちは食べてください。お嬢様のお供をするには体力も精力もいりますからね。クマは、いちいち笑わない。そのお結びは……」「これでおしまいだから!」「では、さっさとお食べになってくださいまし。早くしないと学校に間に合いません」そう言うと、メイド長の春日はあくびを噛み殺しながらダイニングを出て言った。ムシャムシャムシャ十秒もかからずにお握りを食べてしまうと、お皿を七枚重なったトーストのお皿の上に載せて立ち上がる。「さ、今日も一日張り...魔法少女マヂカ・194『』

  • 誤訳怪訳日本の神話・17『スサノオ追放!』

    誤訳怪訳日本の神話・17『スサノオ追放!』天岩戸をお出ましになったアマテラスはスサノオを高天原から追放します。スサノオの持っていた珍しいお宝を全部召し上げた上、スサノオのシンボルであった髭を剃らせ手足の爪を全部抜かれてしまいます。ちょっとエゲツナイですなあ。1945年に連合軍によってパリが解放されると、パリ市民はドイツ軍に協力的であった女性をとっ捕まえては丸坊主にして大通りを歩かせ、みんなで罵倒しました。ちょっと似てます。スサノオとアマテラスの関係なのですが、どうも血肉を分けた姉弟には見えません。スサノオが高天原に現れた時も、アマテラスは姫騎士のように完全武装し、高天原の軍勢を従えて迎え撃とうとしています。アマテラスはご存知の伊勢神宮の主神であり皇祖神であり天津神(あまつかみ)の代表であります。方やスサノオの子...誤訳怪訳日本の神話・17『スサノオ追放!』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・46『栄光へのダッシュ・2』

    妹が憎たらしいのには訳がある・46『栄光へのダッシュ・2』優奈が倒れた。明後日が本番という稽古中に!「ゲホ」っと口を押さえた優奈の手に赤いものが溢れ、そのまま前のめりに倒れて意識を失った。「顔を横向きにしろ、窒息するぞ!」蟹江先生が、すぐステージに駆け上がり、狼狽えるだけの加藤先輩を押しのけた。「無し無し(無呼吸、無拍動)なんだな!?」「はい」「救急車を呼べ!」そう叫んで蟹江先生は優奈の胸をはだけ、気道を確保すると人工呼吸を始めた。祐介は、顕わになった優奈の胸にたじろいで、一瞬目を背けた。「アホ!こんな時は声をかけてやらなあかんのよ。みんな寄って、声を掛けて、マッサージしてやる!」加藤先輩が怒鳴り、みんなが優奈の側に寄り、手足をさすりながら声をかけた。「優奈!」「優奈先輩!」「山下優奈!」蟹江先生と加藤先輩たち...妹が憎たらしいのには訳がある・46『栄光へのダッシュ・2』

  • 銀河太平記・027『宮さまの裏ワザ』

    銀河太平記・027『宮さまの裏ワザ』ダッシュ13号艇はボートに分類される雑役艇だ。動力はイオン電池で200年前の小惑星探査機のそれと原理的にはいっしょだ。スピードは全然で、並みの船(宇宙船)がリニア新幹線だとしたら、やっと自転車ほどの速度でしかない。月と地球は目と鼻の先なので、船なら30分ほどのところを丸一日はかかってしまう。「君たちは、将軍には会ったことはあるのかい?」森ノ宮さまが学校の先輩みたいな気楽さで声をかけてくださる。たった一つのキャビンなので黙っていては気づまりだろうとのお気遣いなんだ。学園艦が何者かによって撃沈されてショックを受けている俺たちへの気遣いでもあるんだろう。「えと、お見受けするという点では週に一回くらいですけど、学期に一回は学校に来て、気さくに生徒にも声をかけてくれます」「たいていの生...銀河太平記・027『宮さまの裏ワザ』

  • 誤訳怪訳日本の神話・16『天岩戸(あまのいわと)を開く!』

    誤訳怪訳日本の神話・16『天岩戸(あまのいわと)を開く!』天の安河原の会議のつづきからです。高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の息子である思金神(オモイカネノカミ)が提案します。「どうだろう、天照大神よりも偉い神さまにやってきてもらうというのは?」なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?一同息をのみます。「バカなこと言うなよ、アマテラスさまは最高神であられるのだ、アマテラスさま以上に偉い神さまなんているわけねえだろーが」「一芝居うつんだよ。じつはな……かくかくしかじか」プランを述べるオモイカネ。テレビのヤラセ番組のようなことを言いますが、日ごろから思慮深い知恵者として有名なことが幸いしたのか、一同は賛成することになります。まず常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集めて鳴かせます。いかめしい名前ですが常...誤訳怪訳日本の神話・16『天岩戸(あまのいわと)を開く!』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・45『栄光へのダッシュ・1』

    妹が憎たらしいのには訳がある・45『桃畑律子の想い』優奈は懸命に練習した。桃畑律子の想いが分かったからだ。自分たちが生まれる前に、自分たちと同じ年頃の少女たちが対馬の山中で戦って死んでいった。そして、それは軍や政府の一部の人間しか知られず、評価もされないどころか、存在さえ認知されていないことを。優奈は知ってしまった。あの少女部隊のことは公表することはできないが、その想いは伝えたいと思った。「声で歌うんじゃない、体で歌うんだ!体が弾けて、その結果想いが歌になるんだ!」加藤先輩の指摘は厳しかった。そして、加藤先輩自身も壁にぶつかってしまった。叱咤激励はできてもイメージを伝える段階で自分のイメージもエモーションも希薄になっていく。「これじゃ、ただのサバゲーのプロモだ。覚めたままビビットにならなきゃ!」冷蔵庫の中でお湯...妹が憎たらしいのには訳がある・45『栄光へのダッシュ・1』

  • 滅鬼の刃・9『』

    滅鬼の刃エッセーノベル9・『水たまり』昔は、あちこちに水たまりがありました。水たまりと言うのは沼とか池とかいうものではありません。沼とか池なら天気に関わらず存在します。水たまりは、雨が降らなければ出現しません。ちょっとした大雨が降った後など、ここはベニスか!?というくらい風景が一変したものです。低学年のころ、家から小学校までの舗装道路というと、学校の前の150メートルほどだけでした。学校までは一キロ近くありましたから、ほとんどが明治のころからそのまんまというような地道でした。地道と言っても、二車線半くらいの道幅で、地域に中小企業も多くあって9時ごろには、けっこうな交通量になります。小中学生の登校は、その三十分ほど前には完了しているので、交通安全的には黄色い帽子を被る程度の事でした。しかし、登校時間を外れた時間帯...滅鬼の刃・9『』

  • 誤訳怪訳日本の神話・15『天岩戸(あまのいわと)』

    誤訳怪訳日本の神話・15『天岩戸(あまのいわと)』日本史上はじめての引きこもりです。スサノオの乱暴にブチギレたアマテラスは天岩戸に引きこもり、固く入り口を閉ざしてしまいます。やってられっかあああああああああ!!すごい怒りで岩戸を閉ざします。現代の引きこもりのような湿っぽさは微塵もありません。いじけた様子もありません。湿っぽくいじけたようになってしまったのは、岩戸の外の世界です。なんといっても、アマテラスは名前の如く太陽神で、それが隠れてしまったのですから世の中は真っ暗です。疫病や天変地異の災いが頻発し、高天原でさえ院隠滅滅のありさまです。こういう危機的な状況には英雄が現れ、艱難辛苦の果て、多大な犠牲を払った上で解決します。RPGで勇者や姫騎士、魔導士などが活躍するパターンですね。危機的状況=英雄出現フラグであり...誤訳怪訳日本の神話・15『天岩戸(あまのいわと)』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・44『桃畑律子の想い』

    妹が憎たらしいのには訳がある・44『桃畑律子の想い』エレベーターのドアが開くと中年の男性が降りてきた。頭頂部が禿げかかって、どこか人生に疲れた中間管理職風だ。男は二三歩歩いたところで、緩んだオナラをした。それが情けないのか、ため息一つついて、再びトボトボと廊下を歩き出した。突き当たりの廊下を曲がって、バンケットサービスの女の子がワゴンを押しながらやってきた。女の子は壁際に寄り男性に道を譲って一礼をする。そして、男性を体一つ分見送ると、ワゴンからパルス銃を取りだして男性の背中を至近距離で撃った。男性は、また緩んだオナラをすると、前のめりに倒れ、廊下の絨毯を朱に染めた。同時にスタッフオンリーのドアから警察官が現れ、一瞬状況の判断に迷って隙ができた。女の子は、警察官を羽交い締めすると、持っていた銃で、警察官のこめかみ...妹が憎たらしいのには訳がある・44『桃畑律子の想い』

  • やくもあやかし物語・61『杉野君の視線の先……』

    やくもあやかし物語・61『杉野君の視線の先……』小出先生に書庫の整理を頼まれた。べつに図書委員の当番じゃなかったんだけど、廊下を歩いていたら、小出先生が事務室から出てくるところで、出てきたところから目が合ってしまって、逸らすことも逃げることもできずに、とうとう目の前まで来ちゃったので、ペコリお化けみたく頭を下げて行こうとしたのよ。「あ、小泉さん」すれ違って油断したところに声をかけられてしまった。「今日の方か後なんだけど、急用で二時間ほど学校出なきゃならないの……」そういう切り出し方で頼まれてしまった。蔵書点検というのが学年末にあるんだけど、その準備作業みたいなこと。図書当番じゃないので、直接司書室から書庫に向かう。あ、見えるんだ。書庫と司書室の間にはドアとガラス窓があって、司書室出たところの閲覧室のカウンターと...やくもあやかし物語・61『杉野君の視線の先……』

  • せやさかい・188『不敬罪ですよ!』

    せやさかい・188『不敬罪ですよ!』さくら留美ちゃんのお母さんは七日間コロナと戦った。自発呼吸もでけへんようになって人工呼吸器。これがお年寄りやったら命が無いとこや。せやけど、留美ちゃんのお母さんは、まだ四十代やったんで、命は助かった。せやけど、意識が戻ってこーへん。主治医の先生は『脳の一部が機能を失ってる、見込みがないわけではないが、時間がかかるかもしれない』と防護服を着てアクリルのバリヤー越しに説明しはったらしい。「うちに来てもらい!」わたしの説明を聞くと、テイ兄ちゃんは一言で結論を出した。「せやけど……」「十四歳の女の子が背負うには重すぎる。さいわい、うちは間数だけは多い。文芸部でも使てたし、馴染みやすいやろ」そこまで言うと、すぐに家族全員を本堂の阿弥陀さんの前に集めて話を決めてしもた。「ほんなら、すぐに...せやさかい・188『不敬罪ですよ!』

  • 誤訳怪訳日本の神話・14『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』

    誤訳怪訳日本の神話・14『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』日本は八百万(やおよろず)の神さまの国です。その八百万の神さまの東の横綱が天照大神で西の横綱が出雲大社であります。何度も申しましたが、今の皇室に繋がる大和朝廷の神さまがアマテラスで、出雲大社に象徴される出雲勢力の神さまの大元がスサノオであります。出雲勢力がどれだけ強大であったかは、十月を神無月として、十月には日本中の神さまが出雲に集まるということになったこと。で、出雲地方だけは十月のことを神有月(カミアリツキ)と言うことでも分かります。スサノオは高天原で大暴れします。大暴れの結果、高天原を追放されることになるのですが。これは出雲勢力が大和勢力に敗れたことを反映させるためにできたストーリーだと言われています。それはさておき、面白いので観ていきましょ...誤訳怪訳日本の神話・14『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・43『優奈 そしてプレコンサートへ』

    妹が憎たらしいのには訳がある・43『優奈そしてプレコンサートへ』あたしにできるわけありませんよお(#>0<#)!優奈は、目と口を倍ほどに開き、まるで悪魔払いをするように。見方によっては、ウルトラマンが及び腰でスペシウム光線を発射するときのように、両手で×印を作って抵抗を試みた。「絶対、絶対、ぜった~い、で・き・ま・せ・ん!!」しかし、加藤先輩と幸子を相手にしては、唾の聖水も、スペシウム光線も無力だった。「あたしとサッチャンの意見が一致したの。これは、その通達であって、優奈に選択権は、あらへんの」加藤先輩は、唾の聖水を拭いながら宣告した。「今の優奈ちゃんの力では、確かにしんどいけど、優奈ちゃんの前向きな姿勢は、きっとわたし以上の仕上がりになるわよ」幸子もニヤニヤしながら、しかし、真剣な目で告げた。「視聴覚教室の修...妹が憎たらしいのには訳がある・43『優奈そしてプレコンサートへ』

  • オフステージ・153『だけじゃん言うな』

    オフステージ(こちら空堀高校演劇部)153『だけじゃん言うな』啓介運命って、あいまいなもんだと思う。俺の親父は二人姉弟の長男だ。親父の父親、つまり祖父さんは寅さん風に言うと職工で、カミさんと子供二人を養っていくのがやっとだった。親父は、この爺さんと婆さんの二番目の子どもで、上が女なんで、長男と言うことだ。長男だから、貧しいところをオッツカッツで、なんとか大学まで出してもらった。そして、大学を出て働いた職場でお袋と出会って結婚して俺が生まれた。実は、親父の姉、つまり伯母さんの上にもう一人いた。男の子だ。七カ月の早産で生後三十分で死んでしまった。もし、この男の子が早産でなくて、ふつうに十月十日(とつきとおか)で生まれていたら、親父は生まれてこなかった。爺さんは三人も子どもを育てる余裕は無かったから、親父のあとにでき...オフステージ・153『だけじゃん言うな』

  • 誤訳怪訳日本の神話・13『イザナギの三神・スサノオ・2』

    誤訳怪訳日本の神話・13『イザナギの三神・スサノオ・2』高天原(たかまがはら)というくらいですから、高い空の上にありました。そんな空の上に、スサノオはどうやって行ったか?むかし、スサノオの話をアニメにした『腕白王子のオロチ退治』というのがありました。たしか東映動画の作品で若き日の宮崎駿監督も参加していたと思います。アニメではアメノフチコマという空を飛べる馬に乗って行くことになっていますが、記紀神話では記述がありません。まあ。神さまだから行けたということでいいのではないかと思います。「え、弟のスサノオがやってくるって!?なんなの、それはあああああああヽ(`#Д#´)ノ!?」スサノオが高天原にやってくるのを知ったアマテラスは、歓迎するどころか激怒して嫌がります。そうして、自分も他の神さまといっしょに完全武装してスサ...誤訳怪訳日本の神話・13『イザナギの三神・スサノオ・2』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・42『幸子失格』

    妹が憎たらしいのには訳がある・42『幸子失格』我が家には、ささやかなこだわりがある。二十一世紀も半ば過ぎだというのに、いまだに紙の新聞をとっているのだ。新聞を開いたときに、アナログな情報の山が紙とインクの匂いをさせながら目に飛び込んでくるのは、脳の活性化に役に立つと日本人ノーベル賞受賞者のナントカさんが提唱して以来、右肩下がりだった新聞購読が増えるようになり、今でも世帯の25%は紙の新聞を購読している。しかし、この紙の新聞で弁当を包むという前世紀の習慣を維持しているのはウチぐらいのものだろう。これは意外なことにお袋の習慣なのだ。編集という特殊な仕事柄のせいなのかもしれないが、去年、親父とのヨリが戻り、家族の復活をしみじみ感じたのは、この新聞紙に包んだ弁当を学校で開いたときかもしれない。お袋は早起きで、朝の支度を...妹が憎たらしいのには訳がある・42『幸子失格』

  • かの世界この世界:167『冴子!』

    かの世界この世界:167『冴子!』語り手:テル(光子)モニターに映る三つ子ビルは傾きながらも立っている。三つ子ビルは、異世界を含むこの世の全てを現わす模式図だ。世界樹に似ている。一つのビルが崩れてしまうと、影響を受けて他の二つも倒れてしまう。そして、それぞれのビルには無数の部屋があって、その無数の部屋が無事であることで安寧を保っている。逆に、ビル全体が無事でなければ、一つの部屋を安寧に保っても意味がない。それを理解して、わたしは異世界への旅に出たんだ。「世界は無事なんですね……」「うん、光子ががんばってくれたから」「安心はできないけど、しばらくは大丈夫。あなたの周囲も、かなり改善されたわ」「光子が卒業するまでは無事でいられると思うよ。まだ、やらなきゃならないことはあるけど、もう寺井光子でなくてもいい」「そうよ、...かの世界この世界:167『冴子!』

  • 誤訳怪訳日本の神話・12『イザナギの三神・スサノオ・1』

    誤訳怪訳日本の神話・12『イザナギの三神・スサノオ・1』イザナギが、命からがら黄泉の国から戻って産んだのが三人の神さまです。産んだと言っても、男神なので、目を洗ったり鼻を洗ったりして出来た神さまたちです。困難と穢れに打ち勝って、その末に聖なる神さまが生じるという、まあ、観も蓋も無く言ってしまえば演出ですね。三人の神さまの中で、重要なのはアマテラスです。ツクヨミもスサノオもアマテラスを引き立てるための脇役です。脇役ではありますが、準主役と言っていいドラマが三番目のスサノオにはあります。本当なら、スサノオは日本のポセイドン(ギリシア神話の海の神さま)になるはずでした。父のイザナギは、そう命じたからです。しかし、スサノオは見かけは立派なアンチャンであるのですが、とてもマザコンでありました。「なああ、父ちゃん、なんで俺...誤訳怪訳日本の神話・12『イザナギの三神・スサノオ・1』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・41『Departure(逸脱)・2』

    妹が憎たらしいのには訳がある・41『Departure(逸脱)・2』母が息を引き取りました……モスボールおねがいします。それだけ伝えると、管理室からナースがやってくるまでの間に、わたしはママのバトルスーツに着替えて駐車場に向かった。「わるいけど、アズマ貸して。夕方までには帰ってくる」「あ、あんたは?」「甲殻機動隊、第一突撃隊隊長里中リサ。ねねのママよ。ねねの制服とカバン預かっといて」「え、ええ!?」わたしは、呆然とする拓磨を置き去りにして第三名神を目指した。二時間後、わたしは防衛省から一キロ離れたパーキングに着いた。セキュリティーレベル2のエリアで、政府関係者や、政府と特殊な関係にある者でなければ、パーキングは許されない。幸い、このアズマは、小なりと言えど青木財閥の車である。パーキングのセキュリティーには、青木...妹が憎たらしいのには訳がある・41『Departure(逸脱)・2』

  • まりあ戦記・053『今度のウズメは三人乗り』

    まりあ戦記・053『今度のウズメは三人乗り』ウズメにそっくり。でも、比較にならないほど大きい!わたしが乗っているウズメが三階建てくらいだとすると、目の前に横たわっているソックリは十階建てぐらいはある。「なんで、こんなに大きいの?」素朴な質問をすると、ナユタがあとを続ける。「って、ゆーか、なんでマンションの下に、こんなのがあるの?」「職住近接というやつですか(^_^;)」中原さんが締めくくる。さすがは現役っていうか、本物少尉。「今度のウズメは三人で操作するんです(^▽^)/」徳川曹長が、新型ワンボックスカーを納車しにきた自動車販売会社の営業のようなことを言う。床下からの振動と騒音がひどいので「いったいなんなのよ!?」とみなみ大尉がヒスを起こし、金剛少佐が「しかたない、飯の前に見ておくか」と、みんなをクローゼットに...まりあ戦記・053『今度のウズメは三人乗り』

  • 誤訳怪訳日本の神話・11『イザナギの三神・アマテラス』

    誤訳怪訳日本の神話・11『イザナギの三神・アマテラス』三人姉弟の長女であるアマテラス=天照大神(あまてらすおおみかみ)は、伊勢神宮の神さまであります。伊勢神宮というのは、日本の神社の総元締めで、アマテラスは皇室のご先祖であり、事あるごとに天皇や皇室の方々が参拝されています。庶民の間でも伊勢神宮と言うのは「一番偉い神さま」であると同時に、もっとも親しみのある神社で、内宮外宮を含め125社の宮社すべてを含めたもので、正式には『神宮』であります。銀座に似ていますね。銀座は単に地名であるだけではなく銀座通りにある商業施設と文化の総称で、単に『銀座』と言えば東京の銀座で、それ以外の(銀座にあやかった)銀座は、わたしの街の高安銀座のように、地名が頭に付きます。江戸時代、庶民が旅行する場合には名主や町年寄が発行してくれる通行...誤訳怪訳日本の神話・11『イザナギの三神・アマテラス』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・40『Departure(逸脱)・1』

    妹が憎たらしいのには訳がある・40『Departure(逸脱)・1』病室に入ると圧縮された十数年の時間が解凍され、インストールしているような間が空いた。……………そして、ようやく言葉が出た。「ねね……?」「……ママ」「ねねなのね……?」「うん、ねねだよ……本当にママなんだ!」「こっちに来て、顔をよく見せて……」わたしは(俺の感覚はほとんど眠ってしまって、ねねちゃんそのものになっている)ベッドに近づき、ママが両手で顔を挟み、記憶をなぞるように、そして、それを慈しむように撫でるのに任せた。髪がクシャクシャになることさえ懐かしかった。ママは仕事にいく前に、いつもこんな風だった。「意外と、胸が大きい」「もう十六歳だよ」「もう大人だね……」ママは、ベッドに横になったまま、わたしを抱きしめた。「ちょっと苦しいよ、ママ」「ご...妹が憎たらしいのには訳がある・40『Departure(逸脱)・1』

  • 魔法少女マヂカ・193『霧子の横・5・こいつは神か運営か』

    魔法少女マヂカ・193『霧子の横・5・こいつは神か運営か』語り手:マヂカ今次の震災を境に世の中は大きく変わっていくんだ。新畑は、ちょっとたじろいだような目をして切り出した。「僕は、大正と言う時代の修繕をやっているんだ、君たちの時代の言い回しだとメンテナンスとかアップグレードとかいう仕事だよ」「新畑さんは、神なのか?」長年魔法少女をやっていると、ときどき神のような者に出くわす。神田明神は、その名の通り神さまだし、江ノ島の児玉八音(こだまやつね:21・22回に出てくる)は江の島弁天の化身だった。西郷隆盛は、まだ神になりきってはいないが、こうして大正時代に飛ばされたのは、西郷の眷属のJS西郷の仕業のようだし。「『運営』というのがしっくりくるかなあ」「ゲームか」「かもしれない。時々バグが出るしね。僕の仕事は、そのバグの...魔法少女マヂカ・193『霧子の横・5・こいつは神か運営か』

  • 誤訳怪訳日本の神話・10『イザナギの三神・ツクヨミ』

    誤訳怪訳日本の神話・10『イザナギの三神・ツクヨミ』ギリシア神話における月の神はアルテミスです。ゼウスの娘で、アポロンの双子の妹ということになっています。ギリシア神話に出てくる女神は、たいがい豊満なガッチリ美女。ミロのヴィーナスを思い浮かべればイメージできると思います。その豊満グラマラスな美女群の中で、アルテミス一人だけが、華奢でペチャパイの女の子なのであります。狩の神さまでもあるアルテミスは、ノースリーブのミニワンピで背中に矢筒を背負っています。サンダル履きで、髪はベリーショート、とうぜん性格も、ティーンの女の子そのもの。敏捷な気分屋で、ツンデレの元祖。ジブリの『もののけ姫』に似ていると言えばイメージしていただけるでしょうか。こんなエピソードがあります。ある日、池で水浴びをしているところをリア充の若者に見られ...誤訳怪訳日本の神話・10『イザナギの三神・ツクヨミ』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・39『里中ミッション・4』

    妹が憎たらしいのには訳がある・39『里中ミッション・4』里中副長は複雑な表情で俺の顔を覗き込んだ……。「もう一度、ねねにインストールされてやってくれないか」「え、また青木のやつが?」「彼は、もうねねの崇拝者だよ。こんどは、ちょっと厄介だ……」というわけで、ボクは再びねねちゃんのPCに入り込んで里中ミッションを遂行することになった。土曜日だったけど、大阪フェリペは私学なので通わなくてはならない。家にはハナちゃんの修理に手間取っていると伝えてフェリペの校門をくぐる。やっぱり女子校というのは慣れない。まず制服。前は緊張していて、スカートの中で内股が擦れ合う違和感しか感じなかったが、フェリペの制服は、ジャンパースカートの上から、一つボタンの上着を着るだけである。体を動かすたびに、自分の……今はねねちゃんの体の香りが、服...妹が憎たらしいのには訳がある・39『里中ミッション・4』

  • 銀河太平記・026『飯の用意をしろ』

    銀河太平記・026『飯の用意をしろ』ダッシュ怪我人が出なかったのはすみれ先生のおかげだろう。見てくれはゴリラみたいな筋肉バカだが、ここ一番の緊急事態で的確な判断と操船ができるのはさすがだ。「みんな、けがは無いか!?」安否確認も、俺たち生徒を先にして、元帥と森ノ宮親王を後にした。副官のヨイチは、とっさに体ごと雑のうを元帥と親王殿下の背中にあてがって、主人と貴人の安全を計っていた。「無事なようでなによりだ……」全員の無事が確認できると、親王殿下が安堵の声をあげられる。華奢な体つきなのに、穏やかな声には、不思議に人を安心させる響きがある。「姉崎先生、フライトレコーダーは無事ですか?」元帥が声をあげると、すみれ先生はインタフェイスの画面を数回タッチした。「精度はよくありませんが、残っています。ご覧になりますか?」「頼み...銀河太平記・026『飯の用意をしろ』

  • 誤訳怪訳日本の神話・9『イザナギの勝利!』

    誤訳怪訳日本の神話・9『イザナギの勝利!』千引岩(ちびきのいわ)を挟んでイザナギとイザナミの言い合いになります。元夫婦の神さまの言い合いなので、ただの悪態のぶつけ合いではすみません。「このヘタレのイザナギ!こうなったら、あんたの国の人間を一日1000人ずつ殺してやるからね!!」「な、なにをぬかす!それならなーーー!オレはがんばって、毎日1500人ずつ子どもを作っちゃうんからな!!」この言い合いの結果、人間の世界では1500-1000=500で、毎日500人ずつ人口が増えることになりました。そして、この千引岩(ちびきのいわ)は島根県東出雲町に残っています。島根県は古代の昔は、大和勢力に対抗していた出雲勢力の中心で、今でも神話の故郷であります。『怪談』を書いたラフカディオハーンを魅了し、小泉八雲として日本に帰化させ...誤訳怪訳日本の神話・9『イザナギの勝利!』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・38『ハナちゃんの向こう傷』

    妹が憎たらしいのには訳がある・38『ハナちゃんの向こう傷』水っぱなを袖で拭いたような向こう傷がついてしまった。「やっぱり、流れ弾……」『どうしよう、顔に傷がついちゃったあ(^_^;)』一見ぶっそうな会話だけど、これは、俺と高機動車ハナちゃんとの会話。東京での『メガヒット』の帰りの空でハナちゃんは、向こうの世界から飛び込んできたパルス弾の流れ弾がかすめて傷が残ってしまったのだ。ハナちゃんは、フロントグラスを赤くして恥ずかしがった。「ニュースで、老朽化した人工衛星が落ちてきたって言ってるよ……」チサちゃんが、スマホを見ながら言った。「ウワー、怖い~、ヤバイとこだったんだ」幸子は、プログラムモードで、佳子ちゃんや優子ちゃんといっしょにブリッコしている。『カッコ悪いから、ハナ、メンテにいってきますう。太一さん着いてきて...妹が憎たらしいのには訳がある・38『ハナちゃんの向こう傷』

  • RE・滅鬼の刃・7『REを付けることにしました』

    RE滅鬼の刃エッセーノベル7・『REを付けることにしました』読者の方から、ややこしいというメッセを頂いたので、わたし(栞)の回は頭にREを付けることにしました。昭和二十八年生まれのお祖父ちゃんは十分に年寄りです。でも、お祖父ちゃんのお友だちなどに伺うと、その昭和二十八年前後生まれのお友だちからしても古いのです。高校で日本史を教えていたということもあるんでしょうが、よその地方を言う時も~県と呼ぶよりは~の国という旧分国名で言った方がピンとくる人なんです。ちなみに、大阪は摂津・河内・和泉の三国です。摂津というと、ちょっと文化的な印象で。河内というと、元気というかけんかっ早いというか、ちょっとヤンチャな感じ。和泉というと泉州と言う方がピッタリで、タオルとかの織物工業、堺とかでは鉄砲づくりが早くから世界的な発展を遂げ、...RE・滅鬼の刃・7『REを付けることにしました』

  • やくもあやかし物語・60『ドッペルゲンガーかも』

    やくもあやかし物語・60『ドッペルゲンガーかも』自分にソックリなお化けをドッペルゲンガーっていうんだよ。知ってた?ドッペルゲンガーを見ちゃうと死んじゃうとか、気が狂ってしまうとか言う。お母さんもお爺ちゃんお婆ちゃんも、それを見たんだよ。え?ちがうよ、お母さんがお母さんを見たんじゃなく、お爺ちゃんがお爺ちゃん、お婆ちゃんがお婆ちゃんを見たんじゃなくて、やくも(わたし)のソックリさんを見たんだよ。お母さんは、駅前のロータリーのとこを、まるでデートする相手の男の子を見つけたみたいに軽やかに走っていくわたしを。お爺ちゃんお婆ちゃんは、図書館で熱心に本を読んでいる『耳をすませば』の雫みたいなわたしを。その時は、デザートのショートケーキ食べながら『けいおん』のティータイムみたく、アハハと笑ってしまいだった。でもね、お風呂に...やくもあやかし物語・60『ドッペルゲンガーかも』

  • 誤訳怪訳日本の神話・8『ヨモツヒラサカ 女は怖い! その③三度のピンチ』

    誤訳怪訳日本の神話・8『ヨモツヒラサカ女は怖い!その③三度のピンチ』黄泉醜女(よもつしこめ)たちが、すぐ後ろまで迫ってきました!イザナギは髪に付けていた「黒い木の蔓つるの輪(シュシュのようなもの)」を投げました。それは、瞬くうちに、たわわに身を付けた野葡萄の木に変わります。黄泉醜女たちは一せいに群がって、ムシャムシャベチョベチョと野葡萄を食い漁ります。その間にイザナギは、いくらかの距離を稼ぐことが出来ました。しばらくすると野葡萄を食べつくした黄泉醜女たちが再び背後に迫ってきて、イザナギは心臓バックンバックンで生きた心地もしません。イザナギは、次に髪にさしていた櫛の歯をバラバラと投げました。櫛の歯はたちまちみずみずしいタケノコに変わり、黄泉醜女たちは腹ペコの鹿か熊のようにタケノコに群がりハグハグボリボリと食べ始め...誤訳怪訳日本の神話・8『ヨモツヒラサカ女は怖い!その③三度のピンチ』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・37『まとまらない考え』

    妹が憎たらしいのには訳がある・37『まとまらない考え』幸子は俺のメンテナンスしか受け付けなくなっている……。そんな考えが頭をよぎった。なにか大変なものが動き出している。そんな気がして、高機動車ハナちゃんに乗って大阪に帰る間、これまでのことを振り返る俺だ。メンテナンスして、幸子はもとに戻っていた。帰りは、その幸子を中心に、チサちゃん、佳子ちゃん、優子ちゃんも盛り上がっていたので、一人で集中することができた。この世はパラレルワールドと言って、ほとんど同じ世界が同時に存在し、そのことは両方の世界のごく一部の人間しか知らない。二つの世界の有りようについては、両方の世界に跨るグノーシスという組織がコントロールしているのだが、絶対ではない。グノーシス自体揺れている。味方であったハンスが敵になったり、敵であった美シリ三姉妹が...妹が憎たらしいのには訳がある・37『まとまらない考え』

  • せやさかい・187『留美ちゃん、ちょっと!』

    せやさかい・187『留美ちゃん、ちょっと!』さくら留美ちゃんのお母さんは大和川を超えた大阪市内の病院に勤めてはる。病院は、去年の春から指定感染症、つまりコロナ患者を収容する病院になって、もう目の回るような忙しさ。こないだお見舞いに行った専念寺さんが入院してる病院は普通の病院で、外来は例年の半分ちょっと。患者さんらはコロナになったらあかんので、お医者さんやら病院に行くのは控えてる。コロナ以来、マスクや手洗いを徹底するようになったんで、風邪やらインフルエンザに罹る人は劇的に減ったいうこともあんねんけど、一部のコロナ病院は医療崩壊も心配されるほどのてんてこ舞い、その他の病院は倒産が噂されるほど暇らしい。留美ちゃんは、忙しいお母さんに代わって、家事一般はなんでもこなす。せやから、心配はないと思うねんけど、夕べの電話は、...せやさかい・187『留美ちゃん、ちょっと!』

  • 滅鬼の刃・7『』

    滅鬼の刃エッセーノベル7・『MT世代』明治大恋歌(歌:守屋浩作詩:星野哲郎作曲:小杉仁三)というのがありました。日露の戦争大勝利まだうら若き父と母……という歌いだしです。テレビの歌謡番組で観た記憶があるので、たぶん小学校のころに流行った歌です。坊ちゃんみたいなコスの守屋青年が歌っていました。美空ひばりが『やわら』を歌った時に、ああ、守屋青年と同じだと感じましたから、『やわら』以前なのでしょう。すごいですね、父と母が日露戦後……だから、1905年~1910年ぐらいのことでしょう。今からだと110年くらい昔の事です。1953年生まれのわたしの祖父母がこれくらいの生まれです。歌の二番に『十九歳の母』とありますから、まさにこの世代。今は、明治生まれも稀ですね。明治末年の生まれでも112歳を超えてしまいます。子どものころ...滅鬼の刃・7『』

  • 誤訳怪訳日本の神話・7『ヨモツヒラサカ 女は怖い! その②黄泉醜女』

    誤訳怪訳日本の神話・7『ヨモツヒラサカ女は怖い!その②黄泉醜女』石室の中のイザナミの腐り様は簡単に言えばゾンビですなあ。神さまのゾンビなので、体のあちこちに雷が付いて稲妻が走っていて、キモイというよりは危険であります。「見たなあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」「イ、イザナミ……(;'∀')」「あれだけ覗いちゃいけないって言ったのにいいいいいいいいいいいいいいいいい!」ゾンビを相手に話し合いもなにもあったものではないので、イザナギはひたすら逃げます。イザナミは黄泉軍(よもついくさ=死の世界の軍隊)と黄泉醜女(よもつしこめ=死の世界のブス)たちに追いかけさせます。まあ、ゾンビの大群です。ちなみに、ここに出てくる黄泉醜女は、日本の文献史上初のブスであります。このくだりの主題は、とて...誤訳怪訳日本の神話・7『ヨモツヒラサカ女は怖い!その②黄泉醜女』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・36『幸子の変化・2』

    妹が憎たらしいのには訳がある・36『幸子の変化・2』出てきたのはAKR総監督の小野寺潤だ。そして、横のひな壇にも小野寺潤が……。ええええええええええええええええ!?スタジオのどよめきが頂点にさしかかったころ、MCの居中と角江が、さらに盛り上げにかかった。「こりゃ大変だ、潤が二人になっちゃった!」「い、いったいどういうことなんでしょうね!?」二人の潤は、それぞれ、自分が本物だと言っている。「でも、あなたが本物なら、わたしは何なんでしょうね?」二人の潤は、まだ演出の一部だろうと余裕がある。二人の潤を真ん中にして、メンバーのみんなが、マダム・タッソーの蝋人形と本物を見比べる以上の興奮になってきた。「蝋人形は、動かないから分かるけど、こんなに動いて喋っちゃうと分かんないよ」メンバーの矢頭萌が困った顔をした。「じゃ、じゃ...妹が憎たらしいのには訳がある・36『幸子の変化・2』

  • オフステージ・152『家庭科クラブの謎・3』

    オフステージ(こちら空堀高校演劇部)152『家庭科クラブの謎・3』ミリー明治時代に、こんな事があったんだ……手を温めるようにして湯呑を抱えて、蜂須賀くんは続ける。ちょっと年寄りじみてるんだけど、こういうシミジミ感はタナカのお婆ちゃんに通じるものが合って好きだよ。「五代前のお祖父ちゃんが、明治天皇に呼ばれて宮中に参内したときのことなんだけどね、あ、宮中とか参内とか分かる?」「うん、パレスに呼ばれたってことだよね」「それで、明治天皇の居間みたいなところで、気楽に昔話とかしてたんだ。明治天皇は人と話すのが好きで、お暇な時には、いろんな人を呼んでお話になっていた」わたしも、湯呑を抱えてくつろいでしまう。「そのうちに、明治天皇が御用で席を外したんだ。テーブルの上には来客用にたばこのケースが置いてあるんだけど、宮中のたばこ...オフステージ・152『家庭科クラブの謎・3』

  • 誤訳怪訳日本の神話・6『ヨモツヒラサカ 女は怖い!①』

    誤訳改訳日本の神話・6『ヨモツヒラサカ女は怖い!その①』母殺しのホノヤギハヤヲの神を切っても、イザナギの気持ちはおさまりません。ま、切っても数が増えるだけということもありますが、とにかく、最愛の妻を失った気持ちはおさまりません。で、イザナミが逝ってしまった黄泉(よみ)国へ会いに行くことにしました。黄泉国とは、今の島根県の東部にあたりますので、古代において大和政権と並んで力があった出雲の国の説話の影響があるとも考えられます。でも現世と死者の国が地続きであるというのは、仏教伝来以前の日本人の死生観を知るうえでもおもしろいことです。日本の古代の文化が残っているとされる沖縄では、死者は海のかなたのニライカナイに行くとされ、けして地獄極楽でも天国でもありません。黄泉国についたイザナギは、洞窟の中から出てきたイザナミに、こ...誤訳怪訳日本の神話・6『ヨモツヒラサカ女は怖い!①』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・35『幸子の変化・1』

    妹が憎たらしいのには訳がある・35『幸子の変化・1』その日は週間メガヒットの生放送の日だった。19時局入りだったので、幸子は演劇部の部活もケイオンの練習もしっかりやって、18時過ぎに正門前で高機動車ハナちゃんに拾ってもらって帝都テレビを目指した。帝都テレビは東京の港区だ。1時間足らずで、500キロ以上移動しなくちゃならない。リニアでも無理だ。ハナちゃんは、高速に入ると急加速し、気がついたら空を飛んでいた。「ハナちゃん、空も飛べるんだ!」お母さんが、無邪気に喜んだ。『これでも甲殻機動隊の高機動車ハナちゃんで~す。マッハ3で飛びますよ~。今のうちに食事してくださ~い(^▽^)/』ハナちゃんもウキウキしている。お母さんは、用意しておいたハンバーガーをみんなに配りだした。「マッハ3で飛んでるのに、衝撃もGも感じないね」...妹が憎たらしいのには訳がある・35『幸子の変化・1』

  • かの世界この世界:166『帰還』

    かの世界この世界:166『帰還』語り手:テル(光子)カテンの森で野営の準備をしていた。テントのペグを打とうとすると、森の奥から百年分の雷が落ちるような音がして、すぐに四号の仲間と共に駆けつけると、トール元帥の戦車部隊がグチャグチャに撃破され、森の木々をなぎ倒して無残な姿をさらしていた。最前線で手ひどくやられ、全滅する寸前にワープして撤退してきた様子だ。戦車と言うものは、外骨格の怪物で、撃破されても形は残るものだ。それが、超重戦車の六号でさえ、ひしゃげた缶詰のように形を留めていないものがある。その残骸たちに囲まれてトール元帥が瀕死の重傷で横たわり、タングリスが駆け寄って、装具を解いたかと思うと、野戦服まで脱ぎだして、身一つになって元帥の上に身を投げ出した。「お、おまえらは見るな!」ヒルデが小さな体で立ちふさがって...かの世界この世界:166『帰還』

  • 誤訳怪訳日本の神話・5『イザナギ・イザナミの神生み』

    誤訳怪訳日本の神話・5『イザナギ・イザナミの神生み』日本の八百万(やおよろず=たくさん)の神さまの総元締めは伊勢神宮の天照大御神(あまてらすおおみかみ)であります。ヨイショっと、ここで自分に掛け声を掛けます。なんちゅうか……アマテラスが生まれて、神さまの総元締めになるには、むかしジブリの宮崎駿らが映画のアニメ『腕白王子のオロチ退治』を書いた話をクライマックスとして、そのあとのエピローグで、さらにもう一本長編アニメが作れるぐらいの質と量があります。今日は、とりあえずイントロのところだけ語ってみたいと思います。国々を生み終つて、イザナギ・イザナミは、さらに神々を生みます。これはキリスト教で万物は神がお創りになったということとモチーフは一緒です。とりあえず、生まれた順に並べてみます。はまずオホコトオシヲの神、次にイハ...誤訳怪訳日本の神話・5『イザナギ・イザナミの神生み』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・34『編成替えして夕陽丘』

    妹が憎たらしいのには訳がある・34『編成替えして夕陽丘』加藤先輩!話あるって!放送室!ちぎったように言うと、真希ちゃんは、さっさと行ってしまった。「なんやろ……?」ドラムの謙三が、真希ちゃんの残像に声をかけるように呟いた。うちのケイオンは規模も大きく、技量も三年の選抜メンバーなどは、スニーカーエイジなどでもトップクラス。だけど、それ以外は、マッタリしたもので、軽音楽部というよりは、ケイオン。楽器を通じて結びついている友だち集団に過ぎず、そういう緩い結びつきのバンドの連合体みたいなのが実態で、口の悪い先生は「国連みたいやなあ」という。加藤先輩と言えど、日頃の他のバンドを呼び出したり、指導したりということは、ほとんど無い。狭い放送室のスタジオは、先輩達と楽器で一杯。俺たち四人が入るとギュ-ギューだ。「ごめん、こんな...妹が憎たらしいのには訳がある・34『編成替えして夕陽丘』

  • まりあ戦記・052『ちょっと、なに、これえ!?』

    まりあ戦記・052『ちょっと、なに、これえ!?』わたしの家はカルデラ(特務旅団の基地)の中にある。最初は、わたしのボディーガード兼影武者のマリア(ロボット)と暮らしていたんだけど、マリアがテロに遭って影武者の任務に付けなくなってからは高安みなみ大尉のマンションに同居している。わたしと同居するにあたってみなみ大尉の部屋は拡張された。それが、観音(かのん)のお寺から帰ってみると、また拡張されていた!!「ちょっと、なに、これえ!?」驚きの声をあげたのはみなみ大尉。今朝までは、わたしと大尉の部屋以外はキッチンとリビングがあるきりだったのが、お隣りの壁をぶち抜いて三つも部屋が増えている。わたしの部屋はそのままで、同じ規模の部屋が二つ。『光子の部屋』と『なゆたの部屋』「うわあーーーナユタの部屋だあ(#^▽^#)!」ナユタは...まりあ戦記・052『ちょっと、なに、これえ!?』

  • 誤訳怪訳 日本の神話・4『日本列島を生む!……その③』

    誤訳怪訳日本の神話・4『日本列島を生む!……その③』書き落としましたが、淡路島を生む前にイザナギ・イザナミは淡島を生んでいますが、この子も具合が悪く流されています。で、早とちりでイザナギが「これは、女子から声かけたんでまずかったんだぜ。今度はオレの方から声かけて、やり直してみよう!」と書きましたが、二人は、それまでに天上の神さまにお伺いをたてます。ただ古事記には天の神さまとあるだけで、具体的には書いていません。まあ、物語的には、その後の淡路島以下の島々を生む描写を際立たせるためのハッタリ的描写なんだと言われています。しかし、こういうハッタリにこそ、時代の背景や民族性が出るものです。天界の神さまは、鹿の肩甲骨を持ってきて、これを火で焼いて、そのヒビの入り方で占います。日本史の授業で古代の占いの方法で習う「太占(ふ...誤訳怪訳日本の神話・4『日本列島を生む!……その③』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・33『葉桜の木陰』

    妹が憎たらしいのには訳がある・33『葉桜の木陰』「僕の姿が見えるようだね……僕が何者かも」言われてみればその通りだ。死んだ人が見えたり、その人が佐伯雄一さんだというのは俺の思いこみだ。「思いこみじゃない。キミたち兄妹の力だよ」「俺たちの?」「ああ、向こうの妹さんは気づかないふりをしてくれている」「佐伯さんは、その……」「幽霊だよ。今日は、こんなに賑やかに墓参りに来てくれたんで嬉しくてね」「すみません、亡くなった方を、こんな風に利用して」「パパは、そんな風に思ってないわよ、お兄ちゃん」「パパ?」「墓石の横に、千草子の名前が彫ってあっただろ」「ええ、今度のことで、ある組織がやったんです。申し訳ありません」「いや、あれは、元からあるんだよ。ただ、赤く塗ったのは、その組織の人たちだがね」「それって……」「千草子ちゃんは...妹が憎たらしいのには訳がある・33『葉桜の木陰』

  • 魔法少女マヂカ・192『霧子の横・4』

    魔法少女マヂカ・193『団子坂の喫茶店』語り手:マヂカここに落ち着こう。新畑が指差したのは坂道の中ほどにある喫茶店だ。震災直後に開いている喫茶店などあるはずも無いだろうが、凌雲閣の地下に出入り口があったところから、おそらくは霧子の心象風景、あるいは異世界……いや、礼法室の上に楼閣が存在していたところからおかしい。しばらくは流されるままに見ておくしかないか。喫茶店には、わたしたちの他にもお客はいるのだが、視野の端に捉えている分には普通に見えているが、視線を向けると解像度が落ちたようにボンヤリしてしまう。仕方がない、明らかに見えるところだけを見て、聞こえるだけのことを聞こう。一階にも空席はあるのに、新畑は当然のように二階の窓際席に誘った。席に着くと、すでにアイスコーヒーが三つ置いてある。グラスの表面が汗をかいたよう...魔法少女マヂカ・192『霧子の横・4』

  • 銀河太平記・025『同乗者』

    銀河太平記・025『同乗者』ダッシュ二十三世紀も中ごろ近くの現代、動力のほとんどはパルス機関になった。パルス機関は、相当な大型船(古典的な言い方では宇宙船)でも亜光速が出せて、今では太陽系が、到達時間ではかつての地球的な規模に縮小してしまった。ただ、亜光速になっても慣性エネルギーの相殺ができるようになったのは、この二十年くらいのことだ。慣性エネルギーと言うのは、例えば車が急発進するとシートに押さえつけられるような圧を感じるだろ。逆に、停止する時には前に飛び出しそうになる。左に曲がると右に、右に曲がると左に持っていかれそうになる。まあ、Gってやつだな。慣性エネルギーの問題が解決しなければ、亜光速なんて簡単には出せない。急加速したら、すさまじいGがかかって、体がペッタンコになってしまう。物理的なGに慣れるだけなら数...銀河太平記・025『同乗者』

  • 誤訳日本の神話・3『日本列島を生む!……その②』

    誤訳日本の神話・3『日本列島を生む!……その②』☆オノゴロジマから淡路島イザナギ・イザナミの両神は、前回説明にもたついた矛で、サラダオイルにクラゲがプニプニしているところをコウロコウロ(昔の擬音は面白いですなあ)とかき混ぜて、矛を引き上げ、引き上げた矛から滴った一滴がサラダオイルにクラゲの所に落ちて、オノコロジマができました。なんとなく『ひょっこりひょうたん島』を思わせる名前ですね。そこに大きな柱をお建てになって、その柱をそれぞれ逆に回って出くわします。ここからが世界にも稀な即物的でおおらかな性描写になります。「いやあ、ナミちゃんおひさ~!ところでさ、ナミちゃんの体ってどうなってんの?男子って平気な顔しながら、とっても興味あんだよね(^▽^)/」「ウフフ、あたしはね、一か所未完成で、溝になったままのところがあん...誤訳日本の神話・3『日本列島を生む!……その②』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・32『チサちゃんの墓参り』

    妹が憎たらしいのには訳がある・32『チサちゃんの墓参り』日ごとにチサちゃんは変わってくる。チサちゃんは向こうの世界の幸子で、ひいひい祖父ちゃんの一人が違う(向こうの世界では、新潟に原爆が落とされ、源一というひいひい祖父ちゃんは亡くなっている)けども、五代もたつと、ひひ孫になる幸子とチサちゃんのDNAの違いは6・25%に過ぎず、見た目には、まったく区別がつかない。だから、こちらの世界で保護するときには、髪を短くしたり眉の形を変えたりしたが、挙措動作はまるで同じ。幸子がプログラムモードのときなど、薄暗がりだと区別がつかなかった。それが、最近微妙に変わってきた。例えば、ティーカップを持つときに小指を立てるようになった。呼びかけて振り返ったりすると微に小首を傾げて、幸子とは違った可愛さになる。念のため、幸子が可愛いのは...妹が憎たらしいのには訳がある・32『チサちゃんの墓参り』

  • やくもあやかし物語・59『やくもにそっくり……』

    やくもあやかし物語・59『やくもにそっくり……』あら!?門を入って来るなり、「ただいま」も言わずに、お母さんが声をあげた。「え!?」あまりに素っ頓狂な声なので、家族としての礼儀である「おかえりなさい」の挨拶もできない。「やくも、駅前にいなかった?」「え、駅前?」「え、あ……ごめん、お母さんの見間違いだ。あ、ショートケーキ買ってきたから、あとで食べよ(^▽^)」ヒョイと持ち上げたパッケージは、駅前に開店したって噂ケーキ屋さんだ。「嬉しい!広告しか見てなかったから、食べたかったの(^▽^)!」「今からじゃ、お夕飯が入らなくなっちゃう。デザートにね」「あ、うん、もちろん!」正直、ケーキの一つくらい入るよ。でも、お爺ちゃんお婆ちゃんには夕飯前のケーキは重たい。母子そろって気配りをする。お風呂掃除をしていると、リビングの...やくもあやかし物語・59『やくもにそっくり……』

  • 誤訳 日本の神話・2『日本列島を生む!……その①』

    誤訳日本の神話・2『日本列島を生む!……その①』第一回で書いた天の神さまたちがイザナギ・イザナミに、こう言いました。「このサラダオイルのクラゲのようなものをなんとかして国を創っちまえよ!」なんとも無茶なことをいいますが、さすがは初めて登場した実体の有る神さま。神さまたちが立派な矛をくれたので……。と、ここで最初の疑問。矛とはなんぞや?矛盾の矛にあたるものですが、案外これが分からない。わたしも大学で聞いた時、正直分からなかったのですが、あまりに原始的な質問なので、控えた覚えがあります。で、教える立場になって、初めて調べました。槍と同様な武器なのですが、外見上では矛は柄との接合部が袋穂とよばれるソケット状になっています。いわば帽子ですね。槍は茎(なかご)を差し込んで固定する方式、人に例えると、頭のてっぺんに差し込ん...誤訳日本の神話・2『日本列島を生む!……その①』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・31『里中ミッション・3』

    妹が憎たらしいのには訳がある・31『里中ミッション・3』俺の脳みそとねねちゃんのCPが一緒になってのお仕置きが始まった……。「大阪城の天守閣って、鉄筋コンクリートなんだよね」まずは、小学生レベルの話題で拓磨の自尊心をくすぐる。「ああ、そうや。昭和の6年に市民の寄付金で再建されたんや。150万円の寄付が集まったんやけど、5万円はうちのひいひい祖父ちゃんが寄付しよったんや」拓磨は単純にのってきた。「すごい、再建費用の5%だね!」「ハハ……ねねは、数学弱いんだな」「どうして?」拓磨は、アイスクリームを買いながら計算していた。「150万円のうちの5万円なら、3・3%じゃん。ほら」アイスをくれた。「このアイスいくら?」「いいよ、こんなのオゴリの内にも入らへん」「いいから、いくら?」「うん、300円やけど」「150円が儲け...妹が憎たらしいのには訳がある・31『里中ミッション・3』

  • せやさかい・186『スカイプで部活はできません』

    せやさかい・186『スカイプで部活はできません』さくらせりなずなごぎょうはこべらすずなすずしろ……ここまで言うて、銀之助は詰まってしまう。『えと……』モニターの前で腕組みして、いけずなわたしはニヤニヤと笑う。『もう一回!』「はい、どうぞどうぞ」『せりなずなごぎょうはこべらすずなすずしろ……』やっぱり詰まる。「ブッブー、時間切れ。まあ、緊急事態宣言も出てんねんさかい、家でおとなしいしてなさい」『せんぱ~い(´;ω;`)ウゥゥ』あたしは、無慈悲にスカイプをオフにして、すっかり冷めた紅茶を飲み干す。銀之助て憶えてますか?うちら文芸部のニューフェイス。せやけど、入部したのは三カ月も続いたコロナ休校のあとで、ろくに部活もでけへんうちに、今度のコロナの二次ピーク。文芸部というのは三密が前提の部活やさかいねえ。いや、世間の文...せやさかい・186『スカイプで部活はできません』

  • 誤訳日本の神話『天地のはじめ(アメツチノハジメ)』

    誤訳日本の神話・1『天地のはじめ(アメツチノハジメ)』※始まりにあたってわたしは、かつて日本史の教師でした。わたしが生徒であったころは、日本史の教師はずっと日本史で、古いノート一冊あれば事足りました。気楽な商売でした。一年生の担任になっても日本史とか世界史が自分の持ち教科であれば、一年の地理などは持たずに、二三年生の授業だけを持っていて、自分のクラスにはホームルーム以外は顔を見せない、どうかするとホームルームも生徒任せで、月に数回しかクラスに顔を見せない先生もおられました。自分が教師になると大違い。たいてい、複数の小教科を兼ね、ノートも、その年その年の教科書に合ったものを作り(教育基本法だったか指導要領だったかに、授業は教科書によらねばならないとあります。それ以上に教科書を大切にさせる=授業に教科書を持ってこさ...誤訳日本の神話『天地のはじめ(アメツチノハジメ)』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・30『里中ミッション・2』

    妹が憎たらしいのには訳がある・30『里中ミッション・2』ターゲットは帰り道の横断歩道にいた……。それまで圧縮されていた情報がいっぺんに解凍された。信号機のポールに半身を預けて気障ったらしく(俺の感性では、そう見えた)立っているのは、このところしつこく、ねねちゃんに言い寄って来ている大阪修学院高校の二年生。――青木拓磨――草食を装った肉食男子。姿勢が、いつも左右非対称。自分をかっこよく見せる演出以外に、狙った女の子が逃げられない位置を確保するための準備姿勢でもあるらしい。大阪市内にいくつもビルを持っている『青木ビル』社長の次男。凡庸な兄を幼稚園のころには追い抜いたと錯覚して『青木ビル』の後継者は自分であると思い込んでいる。修学院とフェリペは最寄りの駅がいっしょで、入学早々から拓磨はねねちゃんに目を付けているのだ。...妹が憎たらしいのには訳がある・30『里中ミッション・2』

  • 滅鬼の刃・6『500枚のイラスト教材』

    滅鬼の刃エッセーノベル5・『500枚のイラスト教材』勉強はせんかったなあ……。わたしが学校の勉強を投げ出したくなった時に、ことのついでのように言います。こころは『俺も勉強嫌だったし、しなかったけどなんとかなったぞ、気にするな』という、お祖父ちゃんなりのフォローなんです。お祖父ちゃんは、病気で辞めるまで三十年近く高校の先生をやっていました。本当に勉強はしなかったようで、高校を四年、大学を五年行っていました。まともに就職したのも二十八の歳だったようで、まあ、豪傑です(;^_^。わたしは留年なんかしたら、ぜったい心が折れてしまうので『テヘペロ(#^_^#)』的なリアクションしておしまいにします。お祖父ちゃんは地歴公民の先生だったのですが、生徒や学生のころの成績は無残なものです。じっさいに通知表を見せてもらったんですが...滅鬼の刃・6『500枚のイラスト教材』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・29『里中ミッション・1』

    妹が憎たらしいのには訳がある・29『里中ミッション・1』俺はねねちゃんになってしまった……。つまり義体であるねねちゃんに俺の心がインストールされて、いまの俺の体はねねちゃんなのだ。「インスト-ルは90%に押さえてある。完全にインスト-ルすると、太一は自分の体も動かせなくなるからな。今日は一日オレの家で休んでいてくれ」「で、ミッションは?」声の可愛らしさにたじろぐ。「言い回しが男だなあ……インストールを95%にしよう」里中隊長がタブレットを触って、体に電気が走った。「ア、アン……」変な声が出た。「そう、その調子だ。ねねの行動プログラムに従って学校に行ってくれ。問題は直ぐに分かる。じゃ、よろしくな」そこで車を降ろされた。角を曲がって五十メートルも行けばフェリペの正門だ。視界の右下に小さく俺の視界が写っている。まだ、...妹が憎たらしいのには訳がある・29『里中ミッション・1』

  • やくもあやかし物語・58『令和69年』

    やくもあやかし物語・58『令和69年』春眠暁を覚えずという言葉がある。春は気持ちが良くって、なかなか起きれないとい寝坊助の言い訳みたいな……もとは漢詩らしいんだけど、最初の一節しか覚えていない。今朝は、この『春眠暁を覚えず』状態で、まだ寝床の中。心地よいから……もあるんだけど、明日から始まる学校が気がかり、ハッキリ言って嫌だから起きられないことも理由の一つ。八カ月前に転校して来て学校に馴染んだとは言いにくい。クラスで友だちは居ないって言うか、口を利くのは図書委員の杉村君と小桜さんくらい。クラスの人たちは顔は分かるが名前は分からないという人たちばかり。数人は顔さえ分からない。交換手さんも、気を使ってなのか呆れたのか、目覚まし代わりのベルも鳴らさない。かすかに原チャの音がして――おはようございます、ヤクルトです――...やくもあやかし物語・58『令和69年』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・28『バーチャルな履歴』

    妹が憎たらしいのには訳がある・28『バーチャルな履歴』向こうの世界の幸子は千草子、通称チサと名乗って俺の家に同居することになった。髪をショートにして眉を少し変えたチサちゃんは幸子によく似た従姉妹ということで十分通った。うちと同姓の佐伯という画家が、この時期に亡くなったので、役所の方で戸籍を改ざんし、チサちゃんは、その遺児ということになっている。甲殻機動隊はチサちゃんの履歴をつくり、パソコンを使って亡くなった佐伯さんの関係者や、チサちゃんが在籍したことになっている学校関係の人間の記憶にインストールした。むろんチサちゃん自身の記憶もそうなっている。これでチサちゃんのグノーシス対策は万全だ。学校は、うちの真田山ではなく、大阪フェリペへの編入だ。ねねちゃんといっしょにすることで、セキュリティーにも万全を期したようだ。「...妹が憎たらしいのには訳がある・28『バーチャルな履歴』

  • やくもあやかし物語・57『ほーむあろーん記念日』

    やくもあやかし物語・57『ほーむあろーん記念日』お母さんと引っ越してきて八カ月がたった。ほんとうは半年ぐらいで、しみじみと振り返るつもりだった。いろいろ、あやかしたちが出てくるけど、落ち着ける家だと思ったんだよね。家の広さとか古さがいいんだけど、なにか家そのものがお母さんのお腹の中という安心感。だから、半年くらい経ったら、お茶でも飲みながらしみじみするような予感があった。それが、毎日おもしろいので、気が付いたら八カ月。もっと調べたら、なんと、八カ月と八日。八が並んだ。それでね、お茶を淹れると茶柱が立って、ささやかな湯気の向こうに、ちょっと前のわたしが浮かび上がった……それは、初めて、ひとりでお留守番をした日だった……。今日から変わるのかと思ったら予告だった。年号よ、年号。うちは、わたし以外は昭和生まれ。だから、...やくもあやかし物語・57『ほーむあろーん記念日』

  • 滅鬼の刃・5『』

    滅鬼の刃エッセーノベル5・『うかつな思い出』準急に間に合わせるため、三つ手前の信号から走りました。十五年ほど昔の事です。平年よりも五度ほど高い気温だとは天気予報で知っていたのですが、ソメイヨシノが終わって、造幣局の通り抜けの八重桜には間があると言う四月の半ばごろの事なので走っても汗にはならないだろうとタカをくくっていました。混んでいるエスカレーターを尻目にホームへの階段を上がると、ちょうど準急が出たところでした。上着を脱いで額の汗を拭こうと思ったらハンカチがありません。脱いだ上着でゴシャゴシャと汗を拭いて、カミさんは、こういうの嫌がったなあと反省。やっときた各駅停車に、オッサンが気楽に腰を下ろせるほどの空席がありません。しかたなく、隣の車両に移動して、六人掛けのシートに三人しか座っていないのを発見して腰を下ろし...滅鬼の刃・5『』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・27『新型ねねちゃん』

    妹が憎たらしいのには訳がある・27『新型ねねちゃん』一瞬分からなかった。一人は髪をショートにして眉の形を変えた向こうの世界の幸子だ。もう一人、パーカーのフードを取ったのは……ねねちゃんだ。「審議会の結論は『サッチャンの力に頼らないで極東戦争を戦うこと』になったけど、こちらのグノーシスみんなが賛成してるわけじゃないの。だからセキュリティーの面からも、こちらのサッチャンといっしょにするほうが安全だということ」「こちらでは、千草子(ちさこ)という名前で、従姉妹ということになります。チサって呼んでください」向こうの幸子……いや、チサが緊張した顔で言った。「こちらは……」「ねねちゃんの新しい義体?」「里中副長へのお詫び」「本当は、現状を変化させないため。ねねちゃんが一人いなくなったことのツジツマ合わせは大変だからなの。そ...妹が憎たらしいのには訳がある・27『新型ねねちゃん』

  • やくもあやかし物語・56『さざれ石』

    やくもあやかし物語・56『さざれ石』部屋の中でカサコソと音がする。最初はゴキブリかと思った。前の家でゴキブリが出た時、お酒に酔ったお母さんがティッシュで捕まえ、捻りつぶすようにしてゴミ箱に捨てたことがある。でも、ゴキブリはティッシュの包みの中で生きていて、そいつがカサコソと動いていた。酔いのさめたお母さんと悲鳴を上げた記憶も生々しいのだ。だから今度もかと思った。ところが、ゴキブリではなかった!カサコソは、どうやら、通学カバンの中から聞こえてくるので、放っておくこともできない。思い切ってチャックを開けて、無言でのけ反る。開けた途端に、虫だかゴキブリだかが飛び出してきてはかなわないもんね!及び腰で中を覗くと、お婆ちゃんにもらった匂い袋がカサコソいっている。匂い袋の中にはお守り石が入っているのだ。ほら、学校帰りにメイ...やくもあやかし物語・56『さざれ石』

  • オフステージ・151『家庭科クラブの謎・2』

    オフステージ(こちら空堀高校演劇部)151『家庭科クラブの謎・2』ミリー外で話そう。そう言うと蜂須賀小七くんは、通学カバンを持ったわたしを先導した。校門を出て、普通なら地下鉄の駅を目指して商店街を東に向かう。商店街は東に向かって上り坂になってるんだけども、下校の開放感があるので、僅かだけども楽園に向かっているような趣があるのよ。アーケードの向こうには、上り坂だから青空が広がっていたりするしね。その青空に、ポッカリ雲なんかが浮いていると、まさに『坂の上の雲』って感じで、人生を前向きに考えようというような気持ちになる。登校するときは、逆に下り道になっている商店街に突っ込む。下りになってるから微妙に勢いが付く。下り坂だから勢いがついて、平地になっているよりも数十秒速くなる。人によっては一分くらい早く学校に着く。このこ...オフステージ・151『家庭科クラブの謎・2』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・26『高機動車ハナちゃん』

    妹が憎たらしいのには訳がある・26『高機動車ハナちゃん』平穏な日々が続いた。校舎屋上でのねねちゃん爆殺事件は、里中副長と幸子の手際の良さでだれも気づかなかった。情報衛星が一機、爆殺の瞬間をサーモグラフィーで捉えていたが、調子に乗った生徒が、ちょっと多目の花火遊びをやったということでケリが付いた。当然甲殻機動隊が手を回したことだけど、ご丁寧に大量の花火の燃えかすまで撒いていった。おかげで、全校集会で生徒全員が絞られ、屋上は当面生徒の立ち入りは禁止された。向こうのサッチャンは姿が消えた。グノーシスの誰かがリープさせたようだ。しばらくして『当方の幸子は、こちらで預かる。義体化はしない。グノーシス評議会』というメールが入った。ブログが炎上した。と言っても、屋上の事件とは関係ない。幸子のモノマネは、マスコミでも頻繁に取り...妹が憎たらしいのには訳がある・26『高機動車ハナちゃん』

  • やくもあやかし物語・55『開会式』

    やくもあやかし物語・55『開会式』やっぱり開会式から観なきゃなあ。そう言って、お爺ちゃんはレコーダーを操作する。お爺ちゃんはとっくに退職してるんだけど、ご近所のお世話とか趣味の色々で忙しい人なんだ。やることに優先順位がある。ご近所とか他人様の事⇒家の用事⇒趣味⇒それ以外の事という順番。テレビを見るのは(それ以外の事)にカテゴライズされていて順位が低い。お気に入りの番組は録画しておいてまとめて観る。朝ごはんの片づけを手伝っていたら、お爺ちゃんのテレビ鑑賞が始まった。視界の端に入る画面や流れる音声で高校野球を観ているんだと分かる。第一試合も三日目だと言うのに、わざわざ開会式から観ている。自慢じゃないけど、わたし、野球は見ない。野球じたい、体育で二時間ほどしかやったことがない。野球場にも行ったことが無い。「ごくろうさ...やくもあやかし物語・55『開会式』

  • かの世界この世界:165『』

    かの世界この世界:165『瀕死のトール元帥』語り手:ポチ宿のオーナーのオジサンがハンマーが頭上で炸裂して目の前が真っ白になって……意識が飛んだ。意識が戻ると、真っ白な中を漂っている。もし、真っ白じゃなくて真っ暗闇で、無数の光のドットが点滅していたら宇宙空間に放り出されてしまったのかと思う。だって無重力で浮かんでいるんだからね。自分の手足を見ると、もうベスの姿じゃない。フェンと出会った時の女の子の姿。他に比較できるものがないので、等身大なのか1/6サイズに戻ってしまったのかは分からない。しばらく漂っていると、頭の方から風を感じる……あ、こっちが下なんだ。そう思って、頭を巡らすと、白の真ん中が緑が浮かび上がってきて、緑の先が細かいトゲトゲになっているので森の上に落ちているんだと分かる。ちょっと、いろんなものが焦げる...かの世界この世界:165『』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・25『序曲の終わり』

    妹が憎たらしいのには訳がある・25『序曲の終わり』甲殻機動隊里中副長の娘のねねちゃんが立っていた……。サッチャンは不審に思って一歩引きさがる。その分幸子が前に出て、俺が挟まれる形になる。「あなたは……」「この子は……」ねねちゃんが薄く微笑む。「義体の微笑みね」「ああ、中味はグノーシスのハンス。性別・年齢不明だけど、いちおう味方だよ」オレが説明すると、ねねちゃんは労るように言い添える。「AGRの連中が、そっちのサッチャンを狙ってる。甲殻機動隊で保護させてもらうわ」「そりゃありがたい。幸子、この子はねねちゃんと言って……」「里中副長さんの娘さん」「知ってたのか?」「お兄ちゃんの記憶を読んだの」「だったら話は早いや。甲殻機動隊なら安心できるからな……って、人の記憶なんか読むなよ(^_^;)」「そうよ、じゃ、預かってい...妹が憎たらしいのには訳がある・25『序曲の終わり』

  • やくもあやかし物語・54『桜の季節・2』

    やくもあやかし物語・54『桜の季節・2』擬人化しておきました(^^♪カチャンと切れる音まで弾んでいる、交換手さんも春が好きなんだろうか。擬人化の意味は見当が付いたし、家を出ると直ぐに分かった。お向かいの庭、桜が植わっていたところに女の子が立っている。桜色のワンピース着てホワホワと。髪も桜色のボブカット、ネコミミかと思ったら、先っぽの方に切れ込みがあって――あ、サクラミミなんだ――人を見つめたりはしないんだけど、擬人化された桜なんだと思うとヘッチャラだ。見つめても視線が合ったりしないのも気楽だ。目が合うと擬人化さんでもドギマギするだろう。よく見ると、ワンピースの所々に半ば3Dになった桜の花が見える。ワンピースも桜色なのでボンヤリ見ていたのでは気づかないんだろうけど、桜の花は生命力があるって言うのかホワホワしている...やくもあやかし物語・54『桜の季節・2』

  • まりあ戦記・051『みんないっしょの過去帳』

    まりあ戦記・051『みんないっしょの過去帳』これは、もう阿弥陀様のお導きだね!放課後にいたるまで、なにくれと世話を焼いてくれた観音が感心した。三人揃って昇降口に向かって、これまた三つ並んだロッカーからおソロのローファー出して履き替えて、正門を出たところで、ごっついRV車がシズシズとわたしたちの前に止まった。「おお、ちょうど通りかかったところだ、家まで乗せてってやろう、そっちは友だちの釈迦堂さんだな、いっしょに乗っていきなさい。大尉、前に回ってくれ」不機嫌なオーラが後部座席から前に回って来る。「え、みなみさん?」「さっさと乗りなさい、家に着くまでは任務だから」「え、任務?」疑問に思ったのは、わたし一人で、中原少尉はポーカーフェイスで、ナユタはニコニコと、観音は「ヤッター」と嬉しそうに乗り込んだ。「釈迦堂さんの家は...まりあ戦記・051『みんないっしょの過去帳』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・24『むこうの幸子ちゃんを救出』

    妹が憎たらしいのには訳がある・24『むこうの幸子ちゃんを救出』満場の拍手だった!生徒会主催の新入生歓迎会は例年は視聴覚教室で行われる。しかし、今回は二つの理由で体育館に移された。一つは、飛行機突入事件で視聴覚教室が使えなくなったこと。もう一つは、今年は例年以上の参加者が見込まれたからだ。俺が新入生だった年の歓迎会はショボかった。なんと言っても自由参加。ケイオンもまだスニーカーエイジには出場しておらず、それほどの集客力が無かった。今年は違う。加藤先輩たちが、昨年のスニーカーエイジで準優勝。これだけで新入生の半分は見に来る。そして、なにより幸子のパフォーマンスだ。路上ライブやテレビ出演で、幸子は、ちょっとした時の人だ。二三年生の野次馬もかなり参加して、二階席のギャラリーまで使って広い体育館が一杯になった。「わたしら...妹が憎たらしいのには訳がある・24『むこうの幸子ちゃんを救出』

  • やくもあやかし物語・53『桜の季節・1』

    やくもあやかし物語・53『桜の季節・1』『そろそろ桜が咲きますよ』交換手さんが電話で教えてくれた。わたしはうかつな子なので、咲きはじめの桜と言うのは、あまり記憶にない。気づいたら四分咲きくらい、どうかすると満開なのが散り始めてから気づいたりする。そういうことを見越して交換手さんは知らせてくれたのかもしれない。ボーっとしてるってことでもあるんだろうけど、なんで桜が咲くのに気付かないんだろう。そんなことを意識しながら通学路を歩く。そして、気が付いた。桜を意識して歩いていると、いろんなことに気づく。あの家は三階建てだったんだとか、素敵な出窓があるとか、坂道から崖下の道に曲がる時、空がスカーっと広くなることとか。もう半年余り通っているのに初めて気が付いたよ。俯くと言うほどではないけど、視線を低くして歩く癖があるんだなあ...やくもあやかし物語・53『桜の季節・1』

  • 魔法少女マヂカ・192『霧子の横・3・震災直後』

    魔法少女マヂカ・191『霧子の横・3・震災直後』語り手:マヂカ1923/09/01霧子は強張った手を揉み解すようにすると、キッパリと震災当日の日付を示すドアノブに手を掛ける。「いくわよ」「うん」瞬間、止めようかと思った。日付しかないのだ。関東大震災は9月1日の午前11時58分に起こっている。たしか土曜日だ。学習院の女生徒であった霧子は震災の瞬間は学校に居たはずだ。女子学習院は堅牢な造りになっていて、学校そのものの被害は軽微だ。土曜日であったこともあり、迎えの車は、もう学校に着くか、学校の近辺まで来ていて、直に屋敷に帰っているはずで、震災直後の惨状は直接には目にしていないだろう。魔法少女は、数百年にわたって様々な戦争や自然災害を見ているので、地震や、その惨状に驚くことは無いが、霧子は勝気な女生徒とはいえ、普通の女...魔法少女マヂカ・192『霧子の横・3・震災直後』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・23『幸子テレビに出る』

    妹が憎たらしいのには訳がある・23『幸子テレビに出る』「対馬戦争が最後のカギだったんです」桃畑中佐が静かに言った。「しかし、あれで三国合わせて二千人の戦死者が出たんですよ。ロボットによる戦闘が膠着状態になったんだから、あのあとは外交努力による解決こそが望ましかったんじゃないですかね」メガネのキャスターが、正義の味方風に桃畑中佐を責めた。「あれで、当事国は目覚めたんですよ。多くの命を犠牲にしてまでやる戦争じゃないって」「その結果南西諸島も対馬も日本の領土と確定はしましたけど、新たなナショナリズムを掻き立てたんじゃないんですか!」「……あなたは僕になにを言わせたいんですか」「だから、極東戦争は、生身の人間が……あなたの部下も含めて、命を失ったことに反省がないことが問題だと思うんですよ。思いませんか!?」キャスターの...妹が憎たらしいのには訳がある・23『幸子テレビに出る』

  • やくもあやかし物語・52『本館西側の忘れられた像・2』

    やくもあやかし物語・52『本館西側の忘れられた像・2』ヒマな図書当番、今日も杉村が居ない。さすがに呆れると言うか、腹が立つよ。生の感情は表に出さないようにしているんだけど、書類を取りに戻った小出先生が「杉村君は入院してるみたいなのよ」という。「え、そうなんですか!?」思いのほか語尾の?に!が付いてしまった。「詳しくは知らないんだけど、会議でそんなこと聞いた。ま、暇だろうけど下校時刻まではよろしくね」そう言って小出先生は行ってしまった。わざわざ言ってくれたということは、わたしの顔に、どこか不満の色が浮かんでいたんだろうね。頬っぺたをペシペシ叩いて緊張と言うか強ばりをほぐす。ほぐし過ぎて眠くなってくる。目の前に人の気配。ガバっと顔をあげると……生成りのワンピースの女の子が立っている。……あ、本館西側の忘れられた銅像...やくもあやかし物語・52『本館西側の忘れられた像・2』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・22『レイブン少女隊』

    妹が憎たらしいのには訳がある・22『レイブン少女隊』幸子の頭脳には二つのバージョンがある。サイボーグとしてインストールされた状態で働くプログラムバージョン。僅かに残った数パーセントの脳細胞が働くニュートラルバージョン。プログラムバージョンは急速に成長している。感情表現も豊かになり、さまざまな人の声や表情などを完ぺきにコピー、あるいは合成して表現できる。時々、それが幸子が取り戻した本来の姿かと思うほど生き生きしていて、不覚にも兄として喜んでしまうことがあったりする。ニュートラルバージョンは……分からない。下手に絡んで、幸子の言うことやる事に心を動かすと神経にやすりを掛けられそうな得体の知れなさを感じて、傍にいながら一歩引いてしまう。情けない兄だが、情けないなりに寄り添ってやろうと思う。一歩引いたら、次には二歩近づ...妹が憎たらしいのには訳がある・22『レイブン少女隊』

  • やくもあやかし物語・51『本館西側の忘れられた像・1』

    やくもあやかし物語・51『本館西側の忘れられた像・1』うちの学校は21000平米もあるんだよ。21000平米と分かってもピンとこないんだけど、東西南北の長さが書いてあったからね、数字に弱いわたしでも「おお!」って声が出たりする。東西に150メートル、南北に140メートル。大の苦手の50メートル走の三倍もあるんだよ。うちと隣の町内がすっぽり入る広さで、前の学校よりも広いとは思っていたけど、こんなに広いとは思わなかった。なんで知っているかと言うと、調べたから。なんで調べたかというと、図書当番が退屈だから。相棒の杉村が休んでいるのよ。慣れない頃は一人で当番するのが嫌で、図書の小出先生も転校したてのわたしに気を使って代わりの当番を寄越してくれたりした。ほら、図書分室のくだりで出てきた小桜さんとかね。三学期も末になってき...やくもあやかし物語・51『本館西側の忘れられた像・1』

  • 銀河太平記・024『噂の13号艇』

    銀河太平記・024『噂の13号艇』ダッシュ名は体を表すって言うよな。俺は、友だちにはダッシュって呼ばれてるけど、本当は漢字の一(いち)だ、大石一。ときどきハジメと読まれてしまうけど、親は一と書いてイチとルビを振って出生届を出したから紛れもなく一(いち)なんだ。なんで一かっていうと、親父とお袋にとって最初の子どもだからだ。めちゃくちゃ分かりやすいだろ。でも、子どものころからダッシュって呼ばれる。一はダッシュって読めるだろ。それと、子どものころから足が速かったから、ミクなんかに言わせると「足だけじゃないでしょ」ともいう。まあ、ニックネームだけど、やっぱ名は体を表してる。未来は、未来に向かって欲しいって、これもご両親の気持ちが現れてる。火星は独立したとはいえ、まだまだ開拓途上の星だ。だから、明るく元気に未来を見つめて...銀河太平記・024『噂の13号艇』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・21『AGRの存在』

    妹が憎たらしいのには訳がある・21『AGRの存在』ようやく三日目に学校は再開された。幸子は筋向いの佳子ちゃんといっしょに先に行く。出かけるときに、ちょっとしたドラマがあった。「おはようございます」トイレに行こうと廊下に出たところで、玄関に立っている佳子ちゃんと目が合った。「おはよう……」「あの、はっきりしときたいんやけど」「は?」「お兄ちゃんのことは、なんて呼んだらええのかしら?」「あ……なんとでも」「お兄ちゃん……はサッチャンの言い方やし。ウチが言うたら、なんやコンビニのニイチャン呼んでるみたいやし、お兄さんは、なんかヨソヨソしいし……」「そのときそのときでいいんじゃない」幸子が割って入った。「そやかて……」「なんなら、太一さ~んとか呼んでみる」「いや~そんな恋人みたいな呼び方(n*´ω`*n)」「じゃ、いっ...妹が憎たらしいのには訳がある・21『AGRの存在』

  • やくもあやかし物語・50『セーラー服の卒業生』

    やくもあやかし物語・50『セーラー服の卒業生』アイロンをかけただけなのに清々しい。転校して来て数カ月しかたっていないので、他の子の制服よりはおニューなんだけど、それでも数か月分はくたびれている。でも、アイロンという魔法は制服も主のわたしをも清々しくしてくれるのだ。襟の折り返しとかポケットの縁とかスカートのヒダとかが小気味よくエッジがたっている。むろんヒダとかにはパーマネント加工がしてあって、アイロンをあてなくてもピンとしてるんだけど、やっぱシャキッとした感じになっている。姿見の前でクルリンと回ってみる。上着もスカートもフワっと広がる。なんだか春の妖精になったみたいで気持ちがいい。こんどは両手を水平まで上げて、勢いをつけてクルリン!スカートが広がり過ぎておパンツが見えてしまう。家の中でよかった。机の上の俺妹女子キ...やくもあやかし物語・50『セーラー服の卒業生』

  • せやさかい・185『後出し年賀と初釜』

    せやさかい・185『後出し年賀と初釜』さくら去年の内に出した年賀状は二十枚。元日と三日の日に来た年賀状は二十二枚。で、四日の今朝は三枚の年賀状をポストに入れに行く。え、数が合えへんて?22-20=2やろてか?あのね、予想せえへんかった人から三通来たわけですわ。それを後出し年賀で出しにいくわけ。後出しのうちの二通は小学校のころの友だちと、六年の時の担任の先生。うちは、卒業と同時に引っ越ししたから、もう小学校関係の人らとは切れてしもてたと思てた。去る者は日日に疎して言うやんか。引っ越してへんかったら、中学も一緒やったやろし、街で出会うこともあるやんか。コンビニとか行ったら、バッタリ出会って「お久しぶり(^▽^)/」ってなノリでね。それが大和側の向こうに行ってしもたら、もう、ほとんど別世界に行ったようなもん。せやさか...せやさかい・185『後出し年賀と初釜』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・20『6・25%のDNA』

    妹が憎たらしいのには訳がある・20『6・25%のDNA』「おはよう」の声はいつもの通りだ。昨日、大阪城公園の路上ライブから帰ってからの幸子は変だった。普段の無機質に歪んだ笑顔をしないのだ。いつもならパジャマの隙間から胸が見えてると言っても平気でいるのに、夕べは頬を赤くして怒っていた。「おはよう」の声がいつも通りなんで俺は試してみた。「第二ボタン、外れてるぞ」「うん……」狭い洗面所の中だったので、いっそう丸見えだったけど、いつものように気にもしない。顔を洗うので、洗面台を交代しながら幸子がささやいた。「あとで、わたしの部屋に来て」「お、おお……」なんだか機先を制されたみたいでカックンなんだけど、いつものように顔を洗う。洗顔を終えて幸子の部屋へ。「夕べ、別のわたしがいたでしょう」「幸子、こういう状況で、部屋に人を入...妹が憎たらしいのには訳がある・20『6・25%のDNA』

  • やくもあやかし物語・49『制服にアイロンをかける』

    やくもあやかし物語・49『制服にアイロンをかける』やっぱし……。そう呟くのは三回目……いや、四回目かな?さっき黒電話が鳴って、受話器を取るといつもの交換手さん。――念のために申し上げておきますが、えりかちゃんは人ではありません――ちょっとお節介な気がした。「分かってるって、あんな小さい子が土筆やお料理のあれこれ知ってるわけないもん」――気づいておられたのならいいんですが、えりかちゃんの正体は……――「いいよ、分かってるから」――そうですか、ならいいんです。後々になって分かったらショックじゃないかって……――「どうも、ありがとう」ガシャリ!それだけ言って電話を切った。この家に越してから親しくなった人間は少ないんだけど、ヘンテコな知り合いは多い。ペコリお化けとか四毛猫とかツインテールのメイドお化けとか……いまの交換...やくもあやかし物語・49『制服にアイロンをかける』

  • 滅鬼の刃・4・『わざわざ法律』

    滅鬼の刃エッセーノベル4・『わざわざ法律』お祖父ちゃんは「食べれない」という言い方を嫌います。子どもの好き嫌いを戒めての事ではありません。「栞(しおり)、ちゃんと『食べられない』と言いなさい」と注意されるのです。そうなんです『ら抜き言葉』を注意するのです。「たかが二三十年の言葉の流行りで日本語を崩しちゃいけないよ」そう注意されて――ほんとかなあ――と思って、昔の小説を引っ張り出します。なるほど、小松左京も野坂昭如も佐藤藍子も瀬戸内寂聴も司馬遼太郎も、ちゃんと『ら入り言葉』です。いっしょにテレビを見ながらホカ弁を食べていて『そのパセリはプラスチックだから食べれないよ』と注意したら、お茶目なお祖父ちゃんは、ズイっとラー油を押し出しました(^_^;)。わたしが生まれる前は、学校では日の丸も君が代もNGだったとは知りま...滅鬼の刃・4・『わざわざ法律』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・19『ニホンの桜』

    妹が憎たらしいのには訳がある・19『ニホンの桜』「すごい、テレビの取材まで来てる!」連休前の大阪城公園の取材に来て、たまたま見つけたんだろう。「ナニワTV」の腕章を付けた取材チームが熱心にカメラを向けている。「AKRやってぇや!」オーディエンスから声がかかる。「リクエストありがとうございます!それではAKR47の小野寺潤で『ニホンの桜』」そう言ってイントロを弾き出すと、身のこなしや表情までも小野寺潤そっくりになっていった。《ニホンの桜》春色の空の下ぼくたちが植えた桜二本の桜ぼく達の卒業記念ぼく達は涙こらえて植えたんだその日が最後の日だったからぼく達のそして思い出が丘の学校のあれから幾つの季節がめぐったことだろうどれだけくじけそうになっただろうどれだけ涙を流しただろうぼくがくじけそうになったときキミが押してくれた...妹が憎たらしいのには訳がある・19『ニホンの桜』

  • やくもあやかし物語・48『土筆を食べる・2』

    やくもあやかし物語・48『土筆を食べる・2』はかまを取ってあく抜きするんだよ(^▽^)/まだまだ子どもなのに、えりかちゃんは土筆の料理法をよく知っていた。わたしってば、水洗いして、サッと湯通ししたらサラダみたいに食べられるんだと思ってたからビックリした。えりかちゃんはシンクの上にやっと首が出るくらいの背丈だから、調理のほとんどはわたしがやる。でも、指示を出すのはえりかちゃん。「ハカマ取りをしっかりね」土筆には等間隔に腰蓑を逆さにしたようなのが付いてる。このハカマは硬くて食べられない。「やだ、手が汚れるよ~」触っただけでアクみたいなのが指先にまとわりつく。スーパーで売ってる野菜しか知らないわたしにはひどく汚らしい。「なに言ってんの、こういう手間もおいしさのうちなんだよ」のっけからお叱りを受ける、でも不愉快じゃない...やくもあやかし物語・48『土筆を食べる・2』

  • オフステージ・150『家庭科クラブの謎・1』

    オフステージ(こちら空堀高校演劇部)150『家庭科クラブの謎・1』ミリー――家庭科クラブ家庭科クラブの部員は直ぐに家庭科準備室に集合しなさい――NHKに女子アナウンサー部というのがあって、そこに、NHKの会長から懇願されて定年を五年も過ぎて現役で女子アナウンス部の部長がいたらこんな風だという感じで杉本先生はアナウンスした。待つこと15秒ほどで最初の「失礼します!」の声があって、その後1分以内に七人の部員が集まった。学年章で二年が二人と一年が五人と分かる。男は二年の男子が一人で、あとは全員女子。「演劇部のミリーと一年のSさんが、たくさんお弁当作ってきてくれたから、勉強のため、みんなでいただきましょう」え、さすがに十人で食べる量じゃないんだけど。おなじ思いなんだろう、家庭科クラブのメンバーも戸惑ったように顔を見かわ...オフステージ・150『家庭科クラブの謎・1』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・18『臨時休校』

    妹が憎たらしいのには訳がある・18『臨時休校』明くる日は臨時休校になった。奇跡的に死傷者が出なかった(グノーシスたちがやったんだけど)とはいえ、飛行機が校舎に突っこんできたんだ。警察や、国交省の運輸安全委員会の現場検証は今日が本番だ。それに、突っこんできたのは視聴覚教室だけど、他の校舎や施設も無事ではない。復旧には一週間はかかる……と、これは俺の希望的観測。ケイオンで視聴覚教室を使っていたのは加藤先輩たち中心メンバー。先輩達の楽器はおシャカになってしまったけど、そこは選抜メンバー、みんな自分ちにスペアの楽器を持っている。加藤先輩は、昨日は幸運にもスペアの方だったので、ギブソンのアコステは無事だった。――アタシらはスタジオ借りてレッスン、あんたらは適当に――加藤先輩からは、こんなメールが来ていた。いかにもアバウト...妹が憎たらしいのには訳がある・18『臨時休校』

  • やくもあやかし物語・47『土筆を食べる・1』

    やくもあやかし物語・47『土筆を食べる・1』土筆と書いて○○○と読む。知った時には感動した。だって、普通に読んだら『どふで』とか『つちふで』だもんね。あなたは読めるかしら?つくしって読むんだよ。知らなかったでしょ?そいでもって食べれるんだよ。ほんとだよ。そうだ、いちど食べてみよっか!?だめだめ、食べれるって言っても、そのまま食べれるわけじゃないんだよ。ちゃんと、処理してお料理しないとね。以上、わたしの独り言。図書館で借りた本を開いてみると、窓から差し込む日差しが柔らかくなっているのに気が付いた。本立ての横に並んだ『俺妹女子キャラ』たちも眠そうに見える。春眠暁を覚えずだよ。開きかけた本を閉じて庭に出てみた。春の日差しの中で読書してみようって気分になったんだ。でも――春は名のみの風の寒さや~🎵――と、歌にもある通り...やくもあやかし物語・47『土筆を食べる・1』

  • 滅鬼の刃・3・『正月の日の丸』

    滅鬼の刃エッセーノベル3・『正月の日の丸』昔の正月と言うとしめ縄と日の丸が当たり前でした。そう、正月三が日は旗日でありました。会社や大きな商店ではしめ縄日の丸どころか門松が門前に据えられていました。昔と言っても戦前の話ではありません。わたしが子どもの頃の正月ですから、昭和四十年くらいまでのことです。元日の朝、年賀状を郵便受けから出そうと表に出て見ると、人気(ひとけ)のないことと、大晦日とは打って変わったしめ縄と軒ごとに日の丸が並んでいる新鮮さに、子どもながら『年が改まった』と感じたものでした。いまは、門松はおろか、しめ縄も日の丸もほとんど見かけません。いまは、昔、門松があったくらいの割合でしか日の丸を見かけません。いまは、学校や官公庁には年がら年中日の丸が揚がっています。学校に勤めていたころ、入学式や卒業式を控...滅鬼の刃・3・『正月の日の丸』

  • 妹が憎たらしいのには訳がある・17『パラレルワールド』

    妹が憎たらしいのには訳がある・17『パラレルワールド』バグっていたアクション映画が急に再生に戻ったような衝撃がやってきた……。ドッカーン!ガラガラガッシャーン!ガッシャンガッシャン!グシャ!グチャ!コロン……。様々な衝撃音、飛び交う破片、大勢の叫び声……それが女の子たちの泣き声に変わったころ、ようやく冷静さを取り戻した。飛行機は、グラウンド側から突っこみ、視聴覚教室を破壊し、飛行機自身と視聴覚教室の破片を反対の中庭側にぶちまけていた。一瞬炎も吹き出したけど、さっきのような爆発にはならなかった。そして、これだけの事故であったにもかかわらず死傷者が一人も出なかった。優奈を庇った祐介の背中に迫っていたプロペラの折れは、祐介の頭の直ぐ上を飛んで中庭の木に突き刺さった……あれは、どう見ても祐介の背中に刺さるはずだった。パ...妹が憎たらしいのには訳がある・17『パラレルワールド』

  • やくもあやかし物語・46『最初に借りた本』

    やくもあやかし物語・46『最初に借りた本』二千冊は読んだんだけどねえ……。お母さんがため息をつく。午後から時間が出来たと言うので、図書館に連れてこられた。気ままなお母さんが気まぐれに思いついたことなんだけど、お母さんが娘のわたしに何かしてやろうと思いつくことと、お母さんに暇があるという条件はめったに重ならないので、学年末テストの真っ最中だというわたしの条件には目をつぶって「いくいく!」と元気に返事したのだ。結婚して実家を離れるまでに、お母さんは二千冊余りの本を借りて読んだんだそうだ。「ハーーーーーでも、読んだ記憶のある本がほとんどないよ……」トドメのため息。図書館の蔵書はここだけで五万冊あるらしい、年間数百冊の本が加わって、ほぼ同数の本が廃棄される。どんな本を読んでいたか知らないけど、二十年もたっていれば、そう...やくもあやかし物語・46『最初に借りた本』

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