枕草子を読んできて(123)
110二月つごもり、風いたく吹きて(123)2019.9.21二月つごもり、風いたく吹きて、空いみじく黒きに、雪すこしうち散るほど、黒戸に主殿寮来て、「かうして候ふ」と言へば、寄りたるに、「公任の君、宰相の中将殿」とあるを見れば、懐紙、ただ、すこし春ある心地こそすれとあるは、げに今日のけしきに、いとようあひたるを、これが本はいかがつくべからむと思ひわづらひぬ。「たれたれか」と問へば、「それそれ」と言ふに、みなはづかしき中に、宰相中将の御いらへをば、いかが事なしびに言ひ出でむと心ひとつに苦しきを、御前に御覧ぜさせむとすれども、うへもおはしまして、御とのごもりたり。◆◆二月の末、風がひどく吹いて、空が真っ黒で、雪が少しちらつくころ、黒戸に主殿寮(とのもりづかさ)の男が来て、「こうしてお伺いしております」と言うので、...枕草子を読んできて(123)
2019/09/21 09:35