夜空にひらくいとうみくアリス館ネットで児童文学を探してゐて見つけた本である。読み終はつて、いい本に出合つたと感じてゐる。母に捨てられた少年が主人公。複雑な生ひ立ちが災ひしたのか、心が張り詰めるとつい手が出てしまふ。職場で嫌がらせを受けたことで、その職場の先輩を殴つてしまふ。傷害罪で訴へられて家庭裁判所に送られた。そこでの審判は、試験観察といふ処分になつた。そんな少年を迎へたのが花火制作の工場(正確には煙火店といふらしい)であつた。その家の主人もまた、複雑な経験を持つた人である。長男を無免許でバイクを運転してゐた少年にひき逃げされてゐたのだ。家族でスーパーに買ひ物に来た時に、車から奥さんが長男を下ろして少し目を離してゐた瞬間のことであつた。罪ある少年に息子を殺されたのに、罪ある少年を迎へ入れる試験観察の引き...いとうみく『夜空にひらく』を読む