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BL小説『いつか君に咲く色へ』連載中です。人の感情を色で把握できるDKとその色をもたない同級生のおはなし。ゆっくり恋になっていきます。

『ありえない設定』⇒『影遺失者』と『保護監視官』、『廃園設計士』や『対町対話士』(coming soon!)など。…ですが、現在は日常ものを書いております。ご足労いただけるとうれしいです。

風埜なぎさ
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2014/08/13

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  • 【SS】:Release me #6

    昼まえに響生のアパートを出た。電車とバスを乗り継いで、水族館を目指す。思えばふたりだけで公共交通機関をつかうのははじめてで、デートみたいと思う。これを、どういう外出と位置づけたらいいのかわからない。「ひさしぶり。水族館に行くなんて」「俺、大学んとき年パス持ってた」「魚が好きなんですか?」 響生が「んー」とうなった。返答を選ぶときの癖らしい。ややあって、「海を知らない魚たちって、ちょっと考えちゃう...

  • 【SS】:Release me #5

    一瞬、あまりにも大きすぎる言葉の意味をとらえきれなかった。おなじことを思うって?それはつまり、響生さんが、僕を。「いつから……」 あいまいな問いだけが、喉からあふれた。いったいいつから?あの四年前の夜、あたらしい扉に手を伸ばした。暗闇へと続く扉とわかっていてあけた、あのつめたいドア。のしかかる闇を覆す光など、ないと思っていたのに。響生が「んー」とうなった。「ぶっちゃけ、ああやって抱いてみてから。触...

  • 【SS】:Release me #4

    交わりのあとの緩慢な充足のなかで、響生がシャワーを使う音を聞く。その音がドライヤーの音に変わったあたりで、ゆるやかに眠気が這い上ってきた。とぎれとぎれに、温風を吐きだす機械の音のむこうで響生の声がする。聞き取れないので、「なんですか?」とすこし声を張った。ぶおん、と音が止まる。寝室に、響生が戻ってくる。「あした、予定がなかったらいっしょに出かけないか」 寝巻きに着替えた響生に覗き込まれ、陽詩はゆ...

  • 【SS】:Release me #3

    響生が指で陽詩の唇に触れた。優しくなぞる。自分の唇の輪郭というものを、とたんに意識した。「抱かせて、陽詩くん。いいだろ?」 問いかけの声がかすかにふるえて聞こえた。陽詩だってこの状況で拒めようはずもないのだが、なにかにとてもおびえているような声だった。陽詩は目を開けた。視線で響生をとらえる。またひとつ、と思う。またひとつ、この人を好きになってしまった。「……僕も、響生さんとしたいです」 響生がそっ...

  • 【SS】:Release me #2

    照明を絞った部屋は暗みががったオレンジに沈んでいて、響生の表情はよくうかがえなかった。それでも、陽詩の身体を撫ぜる手がやさしいので怖くはない。肩から腰までをそっと撫でおろされるとあまい痺れが走る。性的な意図よりは慈しむような手のひらの温度に戸惑った。「響生さん?」 優しさを示されるはずはないのだ。愛されているわけではないのだから。こんなふうに触れられるのはつらい。もしかしたらと期待してしまうから...

  • 【SS】:Release me #1

    アパートの最寄り駅の雑踏のなかで声を聞き取ったのはイヤホンの調子が悪かったからだった。耳から引っこ抜いて接続を確認していたら、義兄になるはずだった人の声が耳に滑り込んできた。「……陽詩くん?陽詩くんだろ」 のろのろと数回まばたきするあいだにも、声は名前をなぞる。軋む首を動かして見遣れば、コートを羽織った響生が立っていた。陽詩が取引を持ち掛けた夜から四年が経ち、獣医学部の三年目にさしかかっていたのに...

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