「知らぬ」 苛立ちもあった。不甲斐ない自分自身に対する怒りもあった。 芹沢鴨が亰都に戻ってから、これまでとは決定的に異なる何かが動き出していた。その何かに抗うでもなく、流されるでもなく、服部は唯戸惑うばかりだった。そんな現状や、そうする事しか出来ない自分に対する怒りもあった。 怒りは服部の力を引き出す筈だった。窮地に陥って、そこから導かれる力というものもある。 しかし、この場では状況を覆すには至…
そんな馬鹿な。 毛内は、自分が目にしているものが信じられなかった。 確かに、清河は凡庸な剣客ではない。だが同時に、服部が遅れを取るほどの相手ではないとも見ていた。しかし、毛内の眼前で繰り広げられる戦いは、まるで大人と子供だった。 服部の斬撃は容易く止められ、跳ね返された。逆に、清河が送る斬撃に、服部は押される一方だ。 当惑しているのは、服部自身も同様だった。 清河の太刀筋が鋭いのは確かだ。しかし…
策というと?」 「例えば、必要とあれば我々を切り捨てて乗り換えるためとか。あるいは万一の時に、我々に対抗する手札として確保するためか」 「俺達を捨て駒にするつもりだって言うのか」 「例えばの話だ」 語気を荒げる平間に、新見はため息を洩らしながら続けた。 「しかし、あながちない話でもないと思っている。今は用心するに越したことはない」 そんな仲間達のやり取りの間も、芹沢は無言のままだった。ともすれば…
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