― 模諜枢教 ― 「コ・ジェヒョン門主は元気だったかしら。 久しぶりに会って来たのでしょう。」 何かを思い出したように微笑んだファランは、口の端に笑みを残…
― 西京の門 ― 夜が明けると柔らかな日差しが馬車を包み込んでいた。 ここに着いた時は、まだ水滴を落としていた馬車も今では薄っすらと朝露が滲む程度だ。 馬車…
― 西京の門 ― 山寺を出発したばかりの頃は雨足も強くなかったから、馬も軽快に走って馬車を引っ張ってくれていたが、雨が強くなるにつけ立ち止まる事が多くなった…
― 苔むす山寺 ― ミニョとジェルミを見送った五人は、テギョンを起こさないようテギョンの眠る部屋から、一番離れた所に集まっていた。 といっても各々がそれぞれ…
― 模諜への道外れにある山寺 ― ミニョの説得で山寺に向かう事になった一行は、かつては光焔だった模諜の地を後にした。 とはいえ行く先である山寺は、かつての光…
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― 模諜枢教 ― 「コ・ジェヒョン門主は元気だったかしら。 久しぶりに会って来たのでしょう。」 何かを思い出したように微笑んだファランは、口の端に笑みを残…
― 西京の宿 ― テギョンに問われたジフンは、どう答えるかを考える前にそっと目だけを動かしてヘイに助けを求めてみた。 しかしすぐに諦めて視線をテギョンの足元…
― 模諜枢教 ― 広々とした堂閣、その一辺に壇上があり、壇上に置かれた背面の高い椅子にモ教主ファランが座っている。 四方の壁は丹念に磨かれた黒檀で、天上に向…
― 西京の門 ― ジェルミも言ったように西京の門は模諜宗家の管理下にない。 そして模諜枢教と対立している宗家も西京の宗家ではないのだ。 とはいえ何かと交渉す…
― 苔むす山寺 ― テギョンは夢を見ていた。 一見いつもと同じ夢に見えるが、目の前にいるのはミニョの前世ではなくてミニョ自身だ。 戸惑い困惑する表情も、キョ…
― 西京の門 ― 夜が明けると柔らかな日差しが馬車を包み込んでいた。 ここに着いた時は、まだ水滴を落としていた馬車も今では薄っすらと朝露が滲む程度だ。 馬車…
― 西京の門 ― 山寺を出発したばかりの頃は雨足も強くなかったから、馬も軽快に走って馬車を引っ張ってくれていたが、雨が強くなるにつけ立ち止まる事が多くなった…
― 苔むす山寺 ― ミニョとジェルミを見送った五人は、テギョンを起こさないようテギョンの眠る部屋から、一番離れた所に集まっていた。 といっても各々がそれぞれ…
― 模諜への道外れにある山寺 ― ミニョの説得で山寺に向かう事になった一行は、かつては光焔だった模諜の地を後にした。 とはいえ行く先である山寺は、かつての光…
― かつての光焔 ― 手を上げたジフンに顔を向ける。 どの顔も不思議そうな表情だ。 ジフンがこの場で何か言う事があるとは想像すらできないからだ。 一瞬の迷い…
― かつての光焔 ― いざ寝ようという段になると、テギョンがミニョとは夫婦だからと突然一部屋を要求してきた。 誰もが声も出せないほどに驚いたのは当然だが、そ…
― かつての光焔 ― 「その模諜の都へは、祭りが始まる前に行くのかしら、それとも終わってからかしら?」 ヘイは小首を傾けて、しなを作りながら立てた指を顎に…
― かつての光焔 ― テギョンの酷い物言いに、ジェルミは顔を真っ赤にして「失礼だ!」と憤った。 だがテギョンはそれすらも小馬鹿にしたように笑うから、隣でミニ…
― かつての光焔 ― 「あの~、もしかしてずっと起きてました?」 フニは奥の間にいる二人を気にして、シヌに近づいてからかなり小声でそう訊いたが、聞いていた…
― かつての光焔 ― フニは引き戸の前に座っていたが、そこは小さな窓があるだけの、いわば奥の部屋の前室だ。 座った時はまだ外からの陽射しが届いていたが、いつ…
― かつての光焔 ― 昨夜と同じ部屋(続き間の大部屋)をそのまま使える事になると、テギョンたちはする事がなくなった。 これまでは宗家に身を寄せた時以外、連泊…
― かつての光焔 ― そっその笑顔は反則よ――テギョンから目を背けたミニョは顔が熱くなっているのを感じる。 さらには胸に広がる喜びや嬉しさに、自然と顔が緩ん…
― かつての光焔 ― ミニョが言わんとする事はジェルミにだって分かっていた。 「だけど、ミニョだって疲れてるのに・・・・・・」 ミニョの膝で眠るテギョ…
― かつての光焔 ― ミニョは夢を見ていた。 ただ、いつもの夢とは違って崩れ落ちるのはミニョではない。 傷を負い、戦い疲れたテギョンがミニョの目の前で倒れる…
― かつての光焔 ― (何も写さない眼は何を捉えて攻撃を仕掛けるのかしら。 なぜ彼らは私たちを敵だとみなしたの。 彼らの望みが分かればいいのに。) ミニョ…
― 風林堂 ― 風林堂の朝は早い。 朝餉の前に風林堂内を掃除し、その後で修行を行う。 テギョンたちも同じように起床し、それぞれに部屋の掃除を済ませると、修行…
― 風林堂 ― ミナムが湯あみを終える頃、ドンジュンとジェルミの二人が、別々の所からミナムを気にしてやって来た。 一時は落ち着きを見せていた二人の仲は、ミニ…
― 風林堂 ― 美しい筋肉の動きに沿って流れる、一筋の汗に目を奪われていると、風を切って矢が的に刺さる。 「さすが宗主、一発必中の腕前。」 フニが嬉しそ…
― 風林堂 ― 黙々と山道を下りて行くシヌの後ろについて行った先は、見学の初めに見た道場だ。 だがそこに居たはずの堂徒の姿はどこにもない。 「堂徒はいいの…
― 風林堂 ― フニが言い放った事をジェルミは否定こそしなかったが、一つだけ確信している事があった。 ミニョが斐水門に戻る選択をしたのは閉じ込められる事を受…
― 風林堂 ― ミニョと違って、内心の動揺をうまく隠すミナムの心情にシヌは気付いていないようで、フニに促されたからか、特に何かを言う事もなく、殺生門を抜けて…
― 風林堂 ― 節度や礼節を重んじる風林堂らしく、来客用の宿泊施設も男女に分けられてあり、女性用は比較的なだらかな平地に建てられているが、男性用は傾斜地に建…
― 風林堂 ― テギョンは自分の推測に漏れがないかを、迅速に黙考すると、そのまま思考しながら口を開いた。 「光焔教事件は噂が少ない、それがずっと疑問だった…
― 風林堂 ― フニとは別々に案内されたヘイは、部屋に入るなり案内してきた女堂徒にミナムはどこの部屋になるのかを訊いてくるよう言いつけていた。 困惑顔をしな…
― 風林堂 ― 誰かが話している途中で、テギョンが口を挟む。 そんな事はこれまでに一度もなかった。 (もしここにフニ宗士がいれば、きっと信じられないって顔…
― 風林堂 ― 序列に従っていない事に、カン堂主の眉は顰(ひそ)められたままだったが、テギョンたちの方は、共に旅をする間にいつの間にか序列を気にしなくなって…
― 風林の宿 ― 翌朝、宗主の部屋に出発の確認に伺った宿の主人は、戸口の外まで聞こえてきたテギョンの声に驚いた。 宿の主人にあるまじき行為だが、彼はそろりと…
― 風林 ― シヌがカン堂主と話し始めた頃、ミナムたちは風林の都を夕餉をとる店を探しながら、ぶらぶらと散策していた。 風林の都は所々に朱の柵に囲まれた御社や…
― 風林堂 ― 結局、ミナムが言った最初の部屋割り通りになって、重い荷を下ろし一息つこうと、ミナムが畳の上に大の字になって寝転がった頃、シヌは梵天山の山門で…
― 風林の境界 ― ミナムが目を覚ますとテギョンはすでに起きていた。 テギョンがゆっくり休めるよう、寝ずの番をするはずが、凭(もた)れ掛かっていたはずのテギ…
― 風林の河原 ― 「それで、」シヌは言った後に一息置いた。 酒ではなく自ら淹れた茶を飲むと、静かに落ち着いた声で訊く。 「ファン宗主を助ける為とはどう…
― 風林の河原 ― 二人の為じゃない、ミナムのこの一言は一気に場の空気を重くした。 しかし魚の焼けるおいしい匂いが漂い、荷の仕分けを終えたフニが手に甕を二つ…
― 風林の河原 ― テギョンが湯から上がると、ゆっくりとでも湯の温度は下がっていく。 それでも暫くは肩まですっぽり浸かっていたミナムだが、このままぬるくなる…
― 風林の境界地 ― ミニョは許嫁なのに―――ドンジュンのこの発言に誰もが驚いた。 特にジェルミは、ドンジュンの視線の先に眉をひそめ首を傾ける。 (どうして…
― 風林の境界地 ― 「おまえは俺の後ろにいろ。」 襟首を掴まれたミナムは、テギョンの声に耳を疑った。 これでは、まるで庇護される子供のようだ。 「ヒ…