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三月 さくら待つ月、四月 しあわせの始まり http://sangatusakura.seesaa.net/

☆自作の純愛小説と詩、毎日更新☆愛が人の心を開き、夢を繋ぎ、人と人、命と命、あの世にまで橋を架けます

愛が連れてくる幸せと、いつか来る別れ。 でも、彼らには永遠の別れはなかった…。 三代に渡る愛の物語。 ブログタイトルと同名の小説の他に、『時の追いかけっこ』『ひのくに物語』『雪洗YOU禅物語』『忘れられた零地点』『あの人は広い傘をもっている』などがあります。 別ブログ「幽霊っているんでしょうか」http://kuri-ma.seesaa.net/もどうぞ

kuri-ma
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住所
松戸市
出身
焼津市
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2010/06/03

  • 10《ゼロ・ポイント’23》 交差する記憶(スクランブル・交差点)2 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 今日は真子と、 その息子にズームアップです。 俊幸と真子の会話の続きから★ 「やっぱ、待ってたんじゃないか、彼を?」 「そんなはずないでしょ」 「奈津美は、ずっと待っててくれたんだ、俺のこと。記憶を失くしても」 「奈津美は幸せになる資格があるわ」 「お前もだよ。幸せになるべきだ。そのためにも、けじめを付けた方がよくないか?よりをもどすとかじゃなく、親だろ、二人は?大学生で父親になったら、確かに大変だっただろうと思うよ。けど、お前もだけど、相手もちゃんと責任は取らせてあげた方がいいと、思う。雄一のためだと思って」 ..

  • 9《ゼロ・ポイント’23》 交差する記憶(スクランブル・交差点)1 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 記憶が欠けたまま、 8年振りならぬ 12年振りの交際を続ける二人です★ 第3節 交差する記憶 (スクランブル・交差点) 俊幸と奈津美は、毎日夕方早い時間から会うのが日課のようになった。俊幸は、実家でパソコンに向かいながら、昼間と夜仕事をする。 甥っ子たちとの遊びの時間は気分転換に最適だった。そして奈津美と会う時間は、それ以上にかけがえのないものだった。 公園だけでなく、街にも出掛けるようになった。 「早瀬さん」と、奈津美が声を掛けると、その男性は笑顔で挨拶した。美春が紹介した見合い相..

  • 8《ゼロ・ポイント’23》 零地点(ゼロ・ポイント)4 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 精神科医の美春先生VS辰巳俊幸、 でお送りします。 「女医の教えるほんとうに 気持ちのいい〇〇」に 目からうろこの俊幸です★ * 俊幸は、奈津美の母と陽菜子に会った土台で、精神科医美春と話し、奈津美の現在と八年前の状況をようやく理解することができた。自分を責めてばかりの俊幸を、この三人の女性たちが、三人三様に慰めてくれた。 中でも美春医師のカウンセリングは、実践的で即効的な力となった。専門家の話というのは、説得力のあるものだ。 「『こんな風に会うのはやめよう』か」美春が言った。「それって、会いたくないとか、..

  • 7《ゼロ・ポイント’23》 零地点(ゼロ・ポイント)3 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 奈津美の親友、 陽菜子を通して 記憶を失う前の様子を知った俊幸。 彼は、新たに心に誓います★ 「…もっと早く来るべきだった」と彼は言った。 つまらないことで意地を張らなければ、八年も経つことはなかっただろう。 陽菜子が俊幸を慰めるように言った。「そうね。でも、あの頃はちょっと厳しかったかも。仕事も辞めざるを得なかったし。 お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの介護を、続けて奈津美がしたの。最期まで看取って。とっても献身的に。それで落ち着いたのよ。精神科には掛かってるけど、もう心配ないくらいに安定した。だから、今再会し..

  • (詩) 生まれた時から愛がすき♡ ★2023★

    ひとにとって いちばん大切なのが「愛」 愛が命を、家族を、故郷を、そして時間を 優しく包み、限りのあるものを エンドレスに 完全なものに変えていきます★ 「 生まれた時から愛がすき 」 わたしたちが生まれた理由(わけ)、それは愛 わたしたちが生きる意味、それは愛 わたしたちが貴い理由(わけ)、それは生命(いのち) わたしたちが感じる意味、それは生命(いのち) お祖父ちゃんが走り回ったこの山々 お祖母ちゃんが見つめていたあの海原 お父さんが大切にしていたその夢 お母さんが歌ってくれた希望の詩(うた) 生まれた時から愛がすき 愛..

  • 6《ゼロ・ポイント’2》 零地点(ゼロ・ポイント)2 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ ようやく奈津美との関係を 再出発させた俊幸。 高校の再現のような二人の恋。 彼女の失くした過去との接点を 彼は探り始めます★ * 俊幸は再び奈津美の母と対面した。 母はじっと彼を見つめると尋ねた。「俊幸君は、奈津美のことどう思ってくれているの?」 「大切に考えています」 「それは、このことを知る前のこと?それとも知ったから責任を感じてくれて言ってるの?」 「俺にとって、奈津美は昔も今も大切な存在です。この間久し振りに会って、それからは毎日会ってる。ずっと会わなかったのは行き違いがあったからで、今は、もう..

  • 5《ゼロ・ポイント’2》 零地点(ゼロ・ポイント)1 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ さあ、再びここに帰って来ました。 ファーストキスのここに…★ 第2節 零地点(ゼロ・ポイント) 奈津美と俊幸は、二人で中学の方に歩いた。 母校の中学校は、十二年前と同じようにそこにあった。門は閉まっていたが、やはり鍵は掛かっていなくて、すんなり中に入ることができた。グランドではまだ部活動の練習に励む中学生の姿があった。 奈津美が言った。「私のクラスに真子っていたじゃない。あの娘(こ)、高校中退して子供産んだんだけど、その子が今年この中学に入ったんだって」 「俺たちはOBっていうより、親の世代..

  • 4《ゼロ・ポイント’23》 マイナス地点(ポイント)4 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 奈津美との奇妙な食い違い、 記憶喪失の原因とは? 「マイナス地点(ポイント)」の最終話です★ 奈津美は、精神科医の美春を訪ねていた。 「それで、幸せそうな表情(かお)をしているのね。じゃあ、お見合いの方はどうする?相手は乗り気だったのよ。でも本命が現れたなら…」 「俊幸、…彼は、まだどう思ってるかわからないし…」 「だって、毎日会ってるんでしょう?嫌なら会わないはずよ」 「そうですね」 「彼は独身でしょ?付き合っている人とかもちろんいないわよね?」 「いないそうです」 「じゃあ、お見合いは私からお断りして..

  • 3《ゼロ・ポイント’23》 マイナス地点(ポイント)3 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 今日は俊幸と再会した、 ちょっと謎の 奈津美に迫ってみます★ 奈津美は、生まれてからずっと、この町に住んでいる。駅の周辺こそ賑やかになってきたが、彼女の住む所はのどかな住宅地だった。 けっして彼女はこの町を嫌いではなかった。むしろ愛着をもっていたが、家族以外からは、まるで忘れられたような気がしていた。自分だけが変わらずに、皆がひとかどの仕事を持ったり、家庭を築いたりしている。取り残されたような感覚だった。 何年も介護した祖父母が亡くなってからも、奈津美は家事を任されながら、仕事はしていなかった。その立場もそう感..

  • 2《ゼロ・ポイント’23》 マイナス地点(ポイント)2 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ 彼の忘れられない女性との 濃厚な回想シーン。 そして、彼は 帰郷しますが…★ 彼の名前は辰巳俊幸(たつみ としゆき)といった。都会での生活をやめ、この日、大学時代からずっと住んできたアパートを引き払う予定だった。 すべてのものを送り出し、立会いの不動産屋を待ちながら、彼はまた奈津美のことを思い出していた。 勤め始めた最初の夏、お盆休みで帰省していた時、やはり俊幸は彼女と会った。その時の奈津美は学生の頃のようなかわいさと共に、女性らしい魅力が兼ね備わったようだった。その後何年も、彼はその時の彼女の姿を思い浮か..

  • 1《ゼロ・ポイント’23》 プロローグ * マイナス地点(ポイント)1 「忘れられた零地点」

    小説 ▼△忘れられた零地点 〜ゼロ・ポイント〜△▼ある夕焼けの日、 その思い出が 二人の忘れられないゼロ・ポイントのはずでした… 甘酸っぱくも ほろ苦い青春の日々、 初恋ははかなく、 叶わないものといいますが・・・ 全30話を一挙再連載でお送りします★ 今日はヒロイン(?!)の登場です★ 「 忘れられた零地点(ゼロポイント) 」 プロローグ 彼女は今でも高校卒業前のその日を人生最良の日だと思っている。 夕陽が、オレンジ色に全てのものを変えて照らしていた。もう記憶が曖昧になってもいいほど時が経ったのに、落ちていく陽..

  • (詩) すみれが愛される理由は 2023

    爽やかな春を ただ謳歌することができない人もいます。 寂しがり屋の意地っ張りは特に…。 春真っ盛り。 そして、季節はまた移っていきます。。。★ 「 すみれが愛される理由は 」 すみれが愛される理由は すっとした立ち姿の麗しく 好きだよと言われたら 俯きがちに ほほ染めて 素直に微笑むから タンポポがかわいい理由は 明るい陽射しの色をもらって 一心にあなたを見上げて 満面の笑顔のように 花を広げてくれるから。 すみれが愛される理由は… タンポポがかわいい理由は… 私がちっとも愛されない理由と ..

  • 8〈終〉 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    早春に 8日間でお送りする愛の物語── 「さき初めさくら」 小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ 春はまだまだと 思っていたのに…。 あきらめない人には、 きっと やってくるのです。 最終回、お送りいたします★ 遭難した山をじっと見上げながら、峻の心には、いろんな思いが湧きあがってきていた。 「お前に会えてよかったよ」と、峻は初めてその気持ちをはっきり明かした。 「ほんとにそう思う?」と、茜はしっかりと彼を見つめていた。 その瞳を見つめ返すことは、今までどうしてもできなかった。視線を逸らすようにして、そっけない素振りをしながら、わからな..

  • 6 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ とうとう茜の両親の前で、 「好きです」と告げた峻。 え、星一はなんて?! まだ信じられず固まっている 峻ですが…★ みどりが、すでに店に来ていた茜と共に戻って来た。 星一が口を開いた。「さぁ、二人が揃ったところで、言っておくぞ。峻、茜、お互いを大切に思えるなら、付き合っていいぞ。こそこそせずに、堂々と付き合えばいい」 「パパ…」と、茜は信じられないような顔をしていた。 「さっき、峻は冬山には登らないと約束したし、あと条件は健全に付き合うことだけだ」 峻はようやく口を開いた。「いいんですか?茜はまだ..

  • (詩) 四月、しあわせの始まり 2023

    新年度のスタート! 初々しい季節ですね。 フレッシュマンにも古参の人たちにも 同じように春はやってきます★ 「 四月、しあわせの始まり 」 しあわせの始まりはどこ? いつもあなた ほら 春が来ているでしょう シンデレラのガラスの靴は 十二時になっても消えない 真実の愛は きっと 魔法が切れても消えない しあわせの始まりはどこ? いつもあなた ほら あなたから笑い掛けて! 四季の始まりは春から 知り始めたばかりの街で 新入生と新入社員は 新鮮〜フレッシュ〜と言われるごとく 失敗..

  • 5 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ 年頃の娘になった茜と その父、星一…。 峻の気持ちに どのように関わっていくのでしょうか★ * 峻が“星の家”を訪ねて来たのは、次の土曜日だった。星一は、大学生の長男の星矢や、他のバイトに店を任せて、みどりと一緒に“ホール”と呼んでいる店の奥のソファーで彼と話した。この店では、スタッフの面接や、ちょっと大切な話は、ここですることが多かった。 「茜が好きなのか?」と、短刀直入に星一は切り出した。 「はい」と、峻は真っ直ぐ星一を見て言った。 「いつから?」 「ずっと前からです。気付いた時には、もう俺にとっ..

  • 4 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ 峻が助かった時、 最初に見ていたものとは…?★ 入ってきたのは、救助隊の一人だった。救急車に峻が忘れた携帯を、届けてくれたのだった。 峻は救急車の中で、携帯を開いたものの、疲労で眠ってしまい落としたらしかった。 救助隊員は直接峻の手に携帯を渡し、峻と茜を交互に見ながら、言った。「早速会いに来てもらってよかったね。ごめん、見るつもりはなかったんだけど、電話が鳴っていたので。あの時電話されてきたお嬢さんですよね?こんなかわいい彼女なら、見たくなりますよね、写真の一つも。命拾いした時は特にね」 「ありがとうござ..

  • 3 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    早春に 8日間で贈る愛の物語── 「さき初めさくら」 小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ 峻は、七年間もの間 待っていたんでしょうか、やはり。 山の遭難から救助された峻の許に 茜が駆けつけ、 峻の両親や意外な人の登場も!★ まだ春は遠い頃、天候の変わりやすい山に入って、峻が遭難したことは、ニュースでも報道された。 幸い救助された彼の入院先に、茜が駆けつけた。それは彼の両親より早かった。 「茜…」 茜は大粒の涙を流すと、ベッドの峻に抱きついた。 峻は診察が済み、大部屋に移ったところだった。カーテンで仕切ってあったから、プライバシ..

  • 2 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ 「待ちびと暮らし」って? 小学生の茜に 体当たりの告白をされた峻。 彼の長い日々が始まりました★ 峻が仕事初め前に、“星の家”を訪ねると、みどりがそっと訊いてきた。 「茜と何かあったの?」 彼はほぼ一部始終をみどりに打ち明けた。 「ごめんなさいね、峻君。困らせて。茜は真剣なんだろうけど。ませ過ぎてるわね」 「いや、そうじゃなくて」 「?」 「きっと、茜は素直に言ってるだけで、深い意味はないんすよ。ませてるって言えばそう言えなくもないけど…茜のこと、そう言ってほしくないんです。茜はまだ子供で、無邪気..

  • 1 ❀小説・さき初めさくら 2023❀ 「待ちびと暮らしの達人たちへ」より 【三月さくらⅤ-2】

    8日間でおくる愛の物語── 小説 ▼△三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり△▼ 息をひそめるように そっと見守るような そんな愛もあるのです。 早春にお届けする kuri-maもお気に入りの一篇★ 三月、さくら待つ月 四月、しあわせの始まり 第�X部 待ちびと暮らしの達人たちへ 第二章 さき初めさくら 〜心の高みに咲く花〜 触ったら 壊れそうな さまよう心を つかめない さくらの蕾は 固く結ばれたまま さっきまで 笑っていたのに さよならは きっと言えない 覚めない悪夢の中..

  • (詩) 満開の桜はすでに散る時を予感させる 〈〓三月桜祭り’23〉

    桜の便りを聞くと 気がそぞろになって 外に出て行きたくなります。 桜の吸引力はすごい!★〈三月桜祭り〉 最終日 「 満開の桜はすでに散る時を予感させる 」 咲き始めは満開を期待させる そして、咲き切った見事な花は すでに散る時を予感させる 今、咲くことを誇る桜花 咲いて咲いて、満開を告げる時 既に散り始める花がある 今を咲き誇る桜 咲くは桜、 満開の時は 既に散ることを予感させる それでもいい、その花吹雪は 多くの涙を払うように舞っていく 散った魂の分だけ 桜は 花をもらったのだから 枯れたように葉もなく、 堅い樹と枝だ..

  • (詩) 桜よ、僕を待たないで 〈〓三月桜祭り’23〉

    桜の詩、もうひとつ★〈sangatsu桜祭り〉 「 桜よ、僕を待たないで 」 桜、桜、桜の花 僕を待たないで 君は花咲き、散っていくのに忙しいように 僕は人生を生きるのに忙しいから 愛することに没頭し、仕事に明け暮れ 食べたり飲んだりで追われている ゆっくり花を愛でる余裕がないから 立ち止まることもしないけれど 季節の変化を感じる心は持つ 通りすがりに花の色を見て 空気の中に花の香りを感じ 運がよければ黒い髪に 花びらが舞い落ちることもあるかもしれない そうしたら、僕は まだまだ足を止めてはいけないと知るだろ..

  • (詩) ずっと待っていたのに 花(さくら)を 〈〓三月桜祭り’23〉

    待ちに待った桜の季節。 しかし、花の命ははかなくて 咲いたと思ったら もう散ってしまいます…★〈三月桜祭り〉 「 ずっと待っていたのに 花(さくら)を 」 ずっと待っていたのに もう 散ってしまうのか… ほら、見事だろうと誇るように咲いていた 花(さくら) ずっと待っていたのに もう散ってしまうのか… 散る姿も美しく いつまでも忘れられない ずっと待っていたのに もう 散ってしまうのか… ずっと待っていたのに 春は これからなのに 先に行くよと笑いながら 駆けるように行ってしまう 待つ月はいくつ? 咲く月はいくつ ひとつにもなら..

  • (詩) 桜、それしか目に入らない 〈〓三月桜祭り’23〉

    〈三月桜祭り〉桜は多くの人を呼びます。 年で一番のお祭りの 季節です★ 「 桜、それしか目に入らない 」 桜並木に、花びら模様の街道 いつもは人知れぬ並木道 この季節は花の数だけ 人が押し寄せる 人々は花形の大型女優、枝垂桜に御満悦 やはり人気は当代一のアイドル、染井吉野48 バックの山には八重桜、次期スターは確実 春の陽射しのスポットライトを浴びて輝く木々たち 細い枝に、豊満なドレスをまとい、 普段より、数倍も大きく見える 人の目は都合よく 見たいものだけに焦点を合わせる 高い電柱も、そこから伸びる電線..

  • (詩) 花が世界を救う *櫻パンデミック!***** 〈〓三月桜祭り’23〉

    コロナをおしのけて 三月桜のお祭りのスタートです 花が世界を救う *櫻パンデミック!***** 櫻パンデミック! 花が世界を救う?! 会話のかわりに 花を一輪 抱擁のかわりに 心に 花束を そこから始まる 花療法 今年は早々に 桜祭りは各地中止の発表 それでも春は来る 長い冬の潜伏期間を経て 赤く固い蕾ばかりで咲く気配もなかったのに 突然出現したクラスター もう勢いは止まらない 櫻パンデミック 町中に透けるような薄い香りの 櫻の色に染まる 染まる・・ 今年のさくら 大地と春の空気の 相乗効果で免疫力をあげる そ..

  • 〈終〉58 《雪洗YOU禅物語’23》 エピローグ

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり いよいよ最終話。 登場人物が総出演しますので 読んでくださる方もご一緒に お楽しみ下さい。 7年前の記録、結婚式の一日、 VTRスタート!★ エピローグ 〜付録 圭一と香苗の結婚式&披露宴VTR〜 雅楽の調べが流れてきた。 古式に習い、圭一と角隠しの香苗が神の前に立ち、三々九度の杯が交わされた。 次には、披露宴の内容がダイジェストで、新郎新婦の姿を捉えていた。 ケーキカット、お色直し、キャンドルサービス、両親への手紙と、新郎の挨拶。花嫁や、親族の涙。新郎の目..

  • 57 《雪洗YOU禅物語’23》 お雛様のお嫁入り3 ~婚約・結婚篇~

    時は流れ── 今日は物語の最終話を迎えます★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 結婚式から 一気に時が経過しています。 圭一と香苗のその後は…?★ * 婚礼の日から、七年が瞬く間に過ぎた。 今思えば、香苗との兄妹としての関係を育んだ長い期間も、とても懐かしい。 結婚式までの期間は、やはり、あっという間だった。またとない最高に幸せな期間を、夢中に過ごした。日に何度も電話やメールを交わし、寸暇を惜しんで会っていた。 しかし、それと比較できない以上に幸せな満ち足りた時間を、結婚してから更に持つようになった。 私たちの関係は..

  • 56 《雪洗YOU禅物語’23》 お雛様のお嫁入り2 ~婚約・結婚篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 早春から さらに時が流れました。 春まっさかり、 ゴールイン目前です★ * 春がもう来ていた。 婚礼の前日、一日家族と過ごす予定だった香苗が、予告なく雪洗屋のショーウィンドーの前に立った。 「なんか、着物が見たくなっちゃって」と、香苗は微笑んだ。「最後だから、ちょっと散歩に来たの。付き合ってくれる?」 「ここには、これからはいつでも来れるじゃないか」 「だって、私の一番好きな散歩コースよ」 「私はいいけど、時間を取ったらご両親に悪いよ」 「じゃあ、堤防はカットして、家までだけ」 了解..

  • (詩) なぜあなたがいかなければならないのか ~惜春2023~ 〈〓三月桜祭り〉

    ちょっと早すぎます。 ちょっとまだ。。。 惜しむ時間の猶予を くれませんか。。。★ 「 なぜあなたがいかなければならないのか 」 〜 惜 春 〜 愛は蕾を解いて 生命の花を開いた 万物は季節がめぐるたび あなたの愛と生命の証しを見せるだろう 永々代々と なぜあなたがいかなければならないのか あなたの旅立ちの知らせの後 そこここに桜の便りがありました いつもより早い春の到来は あなたの出発を祝うかのよう なぜこの季節にあなたがいかなければならないのか この別れの季節に… 一気に春が芽をふき ..

  • 55 《雪洗YOU禅物語’23》 お雛様のお嫁入り1 ~婚約・結婚篇~

    最終章スタート。 今日は、老舗旅館のイケメン若旦那 藤野の、愛の物語を 一挙3話お届けします★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 最終章のスタート! 春がそこまで来ています。 二人の結婚の日も近づいてきました。 そして 行き止まりになりかけていた 若旦那、藤野の恋の行方は…?★ 十七章 お雛様のお嫁入り その早春、和泉家では、最後の雛祭りを祝うと、次の大安の晴天の日には、それを片付けて、花嫁道具に加えた。 環も、今年の冬位には結婚させることにしたので、環が自らの雛飾りを持って出て、香苗が持って来るという..

  • 54 《雪洗YOU禅物語’23》 <初めての喧嘩…(!)の結末2> 夏の踊り 秋の舞6 ~婚約・結婚篇~

    今日は「初めての喧嘩」にようやく決着が?! 「夏の踊り 秋の舞」の〆ともなります。★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 香苗の大切さに 改めて気づく圭一。 これは相当の執心です★ うまくやっているし、やっていけると思い込んで生きてきたが、それこそが、自分の愚かさ、小ささを表していることに気づいた。 ずっと、優等生の顔、親孝行の顔、いい兄の顔をしてきた。途中まではなんとかなった。 一人の男として香苗に責任を持つということは、なかなかハードルが高いことのようだ。表面的な顔を作ればいい、というわけではない。りっぱな男として、未来を約..

  • 53 《雪洗YOU禅物語’23》 <初めての喧嘩…(!)の結末1> 夏の踊り 秋の舞5 ~婚約・結婚篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり ケンカ以降、 避けているのか 会ってくれない香苗です。 圭一は…★ 初めての喧嘩…(!)の結末 翌日も香苗とは会えなかった。私は一人でカメラマンの河口と会った。 「今日はひとりなの」と訊かれて、それでなくても心許ないような気持ちがあったというのに、急に寂しさを感じた。この場にいない香苗の存在感、そして温かさを、逆に感じてしまった。 一人で生きるのが当たり前だった。人間は、孤独なものだ、などと達観ぎみに思っていた。なのに、今更なんでこんなにも、香苗のことばかり思ってしまうのか。 ..

  • 52 《雪洗YOU禅物語’23》 <花嫁の父との避けられない対峙> 夏の踊り 秋の舞4 ~婚約・結婚篇~

    一挙3話続けてどうぞ★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり ケンカ以降 香苗の様子がおかしいというのに、 今日はこの人に 会ってしまいました★ 花嫁の父との避けられない対峙 この世に苦手な人というのは数知れずいるが、苦手でもソツなく付き合うのが商売人としての当然の構えだ。 とはいえ、この人ほど微妙な関係というか、仲良くしたいがどのようにしたらいいか、戸惑う相手はいない。それが香苗の父だった。 和泉家の中で、それまで一番接するのが少ない人で、香苗との結婚話が出るまでは特別意識することもなかったのだが…、実はなんともい..

  • 51 《雪洗YOU禅物語’23》 <初めての…喧嘩(!)> 夏の踊り 秋の舞3 ~婚約・結婚篇~

    今日は一挙3話掲載します! 小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 幸せな日々、 気分のいいこと続きだった圭一ですが なぜか、その日から よい方に回らなくなったような…★ 初めての…喧嘩(!) 結納も済み、毎日のように会っては、どこかに出掛けていたある日、それは起こった。予兆のようなものは、今考えればあったのだが、それは突然起こったように感じた。 そして、起こってしまうと、その勢いは止まらず、取り返しがつかず、収拾がつかず、元に還すのは、絶望的のような気がした。 香苗が泣いて帰ってしまった後も、思い通りにならない、自分と相..

  • 50 《雪洗YOU禅物語’23》 <禊の効果 香苗の効用> 夏の踊り 秋の舞2 ~婚約・結婚篇~

    小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 夏の間は、香苗の浴衣姿の 数々の思い出ができました。 そして、季節は 夏から秋に移り変わったようです★ 禊(みそぎ)の効果 香苗の効用 秋になっても、禊は続けた。その冷たさが、適度の緊張感を呼び、気持ちがよくさえあった。 禊の効果、香苗の効用というものが、数々ある。それは、私の心を軽くしたし、大げさだが、運命すら変えていこうとしているようだった。 ただ単純に、今こうして命があることが、貴重に感じるのだった。 禊をすると、何かに生命を与えられ、生かされているという思いに、自然と満たさ..

  • (詩) さき初めさくら ❀2023❀

    春を待つ心 別れをおそれる想い…★ 「 さき初めさくら 」 触ったら 壊れそうな さまよう心を つかめない さくらの蕾は 固く結ばれたまま さっきまで 笑っていたのに さよならは きっと言えない 覚めない悪夢の中の 冴えないヒーローだった 悟ってもいい頃だね もう 支えがいるのは 僕の方だったと 触ったら 壊れそうな さまよう心を つかまえて 最後まで笑顔でと 心に言い聞かせる サンドイッチのパンのような さよならと 再会に 挟まれている さっきまで 浮..

  • 49 《雪洗YOU禅物語’23》 夏の踊り 秋の舞1 ~婚約・結婚篇~

    新章の始まりは、 香苗との交際で、幸せいっぱいの圭一の様子。 そして、秋風が吹き始めますが…★ 小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 新篇、新章、のスタート もう物語のゴールも近づきました★ 《 婚約・結婚篇 》 十七章 夏の踊り 秋の舞 その夏、香苗は初めて環のお下がりでない新調の浴衣を着た。私が贈ったものだ。香苗とは、毎日のように会っていた。楽しい日々は、夢のように過ぎていった。 今までの私には意味を持たなかった日常の些細な出来事が、急に色彩を帯びて、何かにつけて楽しみに変わっていった。 毎夏港で行..

  • 48 《雪洗YOU禅物語’23》 禊(みそぎ)の夏5 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 数年前の、香苗と 老舗旅館藤乃の若旦那とのお見合い話。 そして、雪洗屋と藤乃との 因縁話とは?★ 私は藤野と会わないではいられなかった。香苗の気持ちが自分にあるという自信がなければあえてしなかったかもしれないが。 「相手が決まったら伝える約束だったよね。和泉香苗と結婚することになったよ」私が言うと、藤野はすんなり祝福してくれた。 「おめでとう。やっぱりというべきか、ようやくと言うべきか」 「君があの時京都に来たのは、どういう意図があったの?祖母ちゃんから香苗との縁談のことを聞いたんだけどね、君..

  • 47 《雪洗YOU禅物語’23》 禊(みそぎ)の夏4 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 両家に結婚を許可されましたが 本当に幸せになるには 浮いた恋人気分だけでは ダメなようです★ 香苗を送って行った後、元来た道を戻りながら、私は祖母に言われたことを、じっくり考えていた。 つくづく、香苗はよくやってくれたと思う。 小さな少女だった香苗が、最初は環の遊び相手から、祖母に見込まれ、雪洗家に伝わるもの全てを伝授されて、嫁として願われるまでになった。この私ゆえにではなく香苗ゆえに、私は結婚を許された立場であると知った。 自分では答えの出せなかった、そこに行き着けなかったかもしれない..

  • 46 《雪洗YOU禅物語’23》 禊(みそぎ)の夏3 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一とお祖母ちゃんの 会話の続きから★ 祖母は急に思い出したように言った。「植田のとこの下の子は、雄司か。あの子も大変だった」 なんのことだろうと思っていたら、私が東京駅のホームで聞いた両親の話のことだと、次の言葉でようやくわかった。 「まだ大学生だよ、付き合っていた娘ができちゃったと、結婚の話まで出てさ。次の日には間違いだったと連絡があったよ」 「恒彦じゃなくて、雄司の方だったの?」 「そうだよ。あの子は何も心当たりがないのに、彼女のことをかばってたんだね。別の男と関係してたというから、驚いたよ..

  • 45 《雪洗YOU禅物語’23》 禊(みそぎ)の夏2 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり お祖母ちゃんのお話は、 絶好調のようです★ 「昨日も和泉のお母さんから連絡があったけど、りっぱに済ませてきたようだったし、何よりだね」 「聞いたの」 「ああ。とにかく、はっきり言いたいことを伝えることが何よりだ。いつもあんたの言うことはわかりにくいからね。いったい、誰が何をどんな目的でどうしたいか、大切なことをはっきり言わないのが、殿方の癖かね」 「何のことを言っているの?」 「例えば、香苗さんを私に頼みたいと言う時も、あんたは遠回しに何かのついでのように言ったよね。見合いをする前から断りたいと言って..

  • 44 《雪洗YOU禅物語’23》 禊(みそぎ)の夏1 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり さて、名脇役 お祖母ちゃんの登場です★ 十六章 禊(みそぎ)の夏 私は祖母と向き合った。 祖母には一番、私たちの事を理解し、喜んでもらっていると思っていた。その祖母は意外にも、手厳しい言葉を言ってきた。いや、祖母が厳しいところのある人だとはよく知っていた。しかし、受ける私の方にこそ、そんな心の準備がなかったのだ。ただ、幸福に酔いしれていたのだから。 「さて」と祖母は言った。 「圭一さん、この度はおめでとう」 「ありがとうございます」と言いながら、私が、にやけてでもいたのだろうか。..

  • (詩) 風向きが変わるとき ~春一番~ 2023

    春はいろんなところで 準備していますが そのお知らせのようなものが 春一番ですね。 思いっきり派手でないと 驚かせるくらいでないと 春一番の役目は果たせません…★ 「 風向きが変わるとき 」 〜春一番〜 北風に耐えてきた日々 いつも向かい風に立ち向かって 人より努力しているのに進まないもどかしさ 晴れているようなのに いつも冷たい吹きさらしの中 風向きが変わるとき 一気に変わろうとする勢いを抑えられずに 激しく花を揺らす 花吹雪に砂埃、抑えつけられていた南風 今日は春の前夜祭 旗を振り切ってちぎり 渡..

  • 43 《雪洗YOU禅物語’23》 夢の通ひ路(かよいじ)4 ~盛夏篇~

    香苗が高校生の時に見ていた夢。 それは予知夢だったのか…。 今日は章の〆です★ 小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 今日は圭一の家に挨拶に。 行きなれた家とはいっても 二人で肩を並べて行くのは 初めてのこと… さて、夢の件は?★ * 京都から帰ったのはまだ昨日のことだというのに、行く前とでは、私は別人になったようだ。本州全域に梅雨明けが発表されていて、一気に季節も夏に変わっていた。 私は香苗の職場まで車で迎えに行った。こういうことも、初めてのことだ。 定時をかなり過ぎて、ようやく香苗が出て来た。 「ごめんね、着替えてきたから。..

  • 42 《雪洗YOU禅物語’23》 夢の通ひ路(かよいじ)3 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一が長い期間、 香苗への気持ちを 自分でも気づかないほどに 深く深く抑え込んでいたのは こんな理由でした★ 私も社会に出て、生易しくはない現実に、かなり鍛えられた。また、離れてみて、それまで重荷だった雪洗屋の格式とか伝統とかの中に、今まで見えなかった美点を幾つも発見した。呉服に関して言えば尚更だった。 私にとっても切ることのできない縁(えにし)や、自分でも気が付かなかった雪洗屋や家族への愛情。仕事に打ち込めば打ち込む程に、断ち切ろうとし、離れようとした私の本心を再確認したのだった。私は生まれながらに..

  • 41 《雪洗YOU禅物語’23》 夢の通ひ路(かよいじ)2 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり なんのシーンかといえば これは「両親への挨拶」ですね。 無事にできるでしょうか★ 私は緊張気味だったが、両親は既に待ってくれているような感じがあり、私は最初に切り出すことができた。 「今日はお許しを頂きに来ました。…結婚したいと思っています」商用でも何でも、こんなに緊張したのは、初めてだった。一瞬の沈黙に耐えられなく、私は言葉を重ねた。 「香苗さんと結婚させてください。精一杯大切にします」 香苗の父が何と答えたのかよく意味がわからなかった。私同様、あるいはそれ以上にお父さんも緊張していたのだとわか..

  • (詩) 三月、さくら待つ月 2023

    一月は一生懸命、 二月は忍耐。 「三月」といえば…、 「さくら待つ月」★ 「 三月、さくら待つ月 」 さりゆく冬を 風に感じ ささやくような 春の声を聞きながら 三月 さくら待つ月 さよならは 嫌だけれど いつまでも 慣れないけれど ああ 三月 さよならを越えて さいしゅっぱつ(再出発)をしなければ… さらさら流れる小川 さざ波 ゆるやかな湖畔にも もう時は訪れている 三月 さくら待つ月 さみしさを こらえ 再出発をしなければ… 再会できない人たちと サンキュー サ..

  • 40 《雪洗YOU禅物語’23》 夢の通ひ路(かよいじ)1 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 新章は、圭一と香苗の 離れていた距離と年の差、 それを越えて、 時間と時間を繋いだ 不思議な夢の話です★ 十五章 夢の通ひ路(かよいじ) 京都を後にして、帰途に着くと、夕方には香苗の家の近くまで来ていた。香苗を誘って、堤防に登った。 私は言った。「京都から帰ると、海を見たくならない?」 「そうなの?やっぱりお兄ちゃんも?」 「海を見ないと禁断症状が出るんだ。前から、ここが好きだった。落ち着くだろ」 私たちは、ゆっくり、堤防の上を歩いた。そして、また来た方向に折り返して、..

  • 39 《雪洗YOU禅物語’23》 泡になった人魚姫2 ~盛夏篇~

    今日は「泡になった人魚姫」 一挙に最終話まで☆ 小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 香苗の話の続きから。 アンデルセン童話 「人魚姫」に話は展開します★ 「私が最初に工房に行った時、結美さん『ああこの娘(こ)かって』思ったんだって。そういう話を少しずつ聞いていたらね、なんかお兄ちゃんの様子が見えてきた。きっと私のことを大切に思ってくれてるに違いないって、妹って言いながら。ねえ、��もう一人の妹�≠チて誰のこと?」と香苗は曇りのない笑顔で訊いた。 もう、とうに両手を挙げてしまいたい気分の私は、照れくさくて黙っていた。逃げ続けていた私を責めるこ..

  • 38 《雪洗YOU禅物語’23》 泡になった人魚姫1 ~盛夏篇~

    小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 京都での圭一と香苗 求婚後の二人です。 梅雨は明け、夏が来ました★ 《 盛夏篇 》 十四章 泡になった人魚姫 次の朝、香苗は結美さんと朝食の後片付けをしていて、爽雲はまだ一歳の娘の世話で、寝室に行ってしまった。 竹内家の兄弟たちは、めずらしそうに私を眺め、二人でこそこそ何か話していた。 「昨夜から何か気になるなあ。私の顔に何か付いている?」 「お姉ちゃんの持ってはる写真の人やんか~」と兄が言うと、弟が言った。 「でもこんなおっさん違うし」 「おっさんはないだろ、お姉..

  • (詩2編) どうせ解けてなくなる運命なら ***淡雪のたわ言 2023*** *<br /> もう 解けてしまってもいいと思ったんだ ~雪の季節の終焉 2023~

    届くことのない思い… 聞かれることのない思い…。 こんなにも愛しているのに。 彼の思いは今日を限りに きれいに消えていきます。 とうとう 時間は来てしまいました。 「 どうせ解けてなくなる運命なら 」 ***淡雪のたわ言*** * どうせ解けてなくなるこの命 どうせ消えていく運命なら 一度だけ、思いっきり僕一色の景色に 変えてみたかった * * * 朝起きたら一面の雪景色 それって感動的だろう どうせ消えていく運命だけれど 君の心にいつまでもきれいな姿で残っていたかった * * * どうせ変えられない運命なら ..

  • 37 《雪洗YOU禅物語’23》 人魚姫の日記 <片寄せる波>7 ~香苗・成長篇~

    今日は人魚姫の日記の クライマックス! 小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 香苗は 泣いていたのか それとも雨のせいでそう見えたのか?! 事実は…★ (10年目)6月30日(月) 圭兄ちゃんに会ってしまった。 それも植野さんと一緒の時に。 もう耐えられなくて、 植野さんには「もう会えません。連絡しないで」 と、はっきり言った。 圭兄ちゃんに突然会ってしまった事で 涙が止まらなかったから、 植野さんにはいろいろきかれたけど、 答えることができなかった。 圭兄ちゃんが好き、ということは 圭兄ちゃんにも言えな..

  • 36 《雪洗YOU禅物語’23》 人魚姫の日記 <片寄せる波>6 ~香苗・成長篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり いよいよ成人式、 そして卒業式 香苗の振袖姿は…★ 《九年目》 1月15日 成人式でした。 お祝いの日だったから、とても楽しかった。 最高の日。 それ以上望むものなんて、ないはず。 今までで、一番気に入った着物、 初めての振袖を着て、 一番好きな人にも見てもらって、 きれいだよとも言われて、 写真も撮ってもらって、 デザートつきのお食事もして、 もちろん二人きりではないけど。 大好きな友達と一緒なんだから、 とても楽しかった。 環ちゃんが一緒で、嫌だったことなん..

  • 35 《雪洗YOU禅物語’23》 人魚姫の日記 <片寄せる波>5 ~香苗・成長篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり いよいよ、 待っていた年月(としつき)を 終わりにする時がきたようですね★ 《八年目》 3月30日 圭兄ちゃんが帰って来る。 会社を辞めて、正式に雪洗の会社を継ぐことになるとか。 どんな顔して会ったらいいのか。 でも、思ったほど私の心が揺れない。 いつもと同じように、 ずっと昨日まで会っていたように会えたらいい。 4月3日 もう帰って来ているとは知らなかった。 あんなにも会いたかった人、夢にまで見た人が、突然目の前にいた。 今までどうしても会えなかった..

  • 34 《雪洗YOU禅物語’23》 人魚姫の日記 <片寄せる波>4 ~香苗・成長篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり (7年目)5月12日 若旦那が帰ってきて、みんなに京都のお土産を配っていた。 「生八橋っていってもね、色んな銘柄があるみたいでさ、 一番うまい所をきいて買ってきたんだ。 なかなかそこに住んでいる人じゃないとわからないよね」 なんかもしかして、圭兄ちゃんとやっぱり会ってきたんだろうか、って思った。 中居たちには匂い袋をくれた。懐かしい。 香りのしなくなった匂い袋に、ママの香水をたっぷりつけて、 圭兄ちゃんのシャツに香りを移したことを、思い出した。 若旦那に声を掛けられないように、そっと..

  • 33 《雪洗YOU禅物語’23》 人魚姫の日記 <片寄せる波>3 ~香苗・成長篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり あの藤野貴志の登場です。 さて、香苗とはどんな絡みが あったのでしょうか…★ (7年目)4月20日 藤乃で働くようになって、 日舞の日以外は行くようになったから、とても忙しい。 一通り仕事は覚えたけど、 お客様へのおもてなしは、 人相手だから、簡単じゃない。 いいお客さんもいるけれど、中には嫌な人も。 女将さんはとても素敵な人。 私が今まで知っている人の中で、 環ちゃんたちのお母さんはもちろん素敵だけれど、 それと並ぶくらい素敵な人かな。 もちろん、おばあちゃんは別..

  • (詩) 私の心には温かい雪が降っている 2023

    心の中に降る雪は いつまでも清く 白く、 そして温かいようです★ 「 私の心には温かい雪が降っている 」 雪はなぜなのかすべてを真っ白に覆い尽くした後 心の穢れをみな 浄めてくれたのか 私の心には温かい雪が降っている 雪が消えるとき 曇っていたはずの窓ガラスの 汚れも一緒に解け落ちる 雪が解けるとき 顔についた涙の跡も きれいに拭い去ってくれる 雪はなぜなのかすべてを真っ白に覆い尽くした後 その痕跡も残さず 姿を消してしまう 私の心には温かい雪が降っている 日陰に残された雪は 解けて凍って..

  • 32 《雪洗YOU禅物語’23》 人魚姫の日記 <片寄せる波>2 ~香苗・成長篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一の祖母から 行儀見習いを受けるようになり、 ちょっと背筋が伸びたように見える 香苗です。 彼女の思いは…★ (4年目)5月6日 おばあちゃんが好きな和歌。 住ノ江(すみのえ)の岸に寄る波よるさえや 夢の通ひ路(かよいじ)ひとめよくらん 波ってまるで私みたいだ。 寄せても寄せてもまた寄せてしまう思い。 波って、両思いになれない。 片側ばかりに寄せるから。 ��夢の通い路�≠チて何かな、 っておばあちゃんにきくと、 「そういうのがあるのかもね。 会いたい人に夢..

  • 31 《雪洗YOU禅物語’22》 人魚姫の日記 <片寄せる波>1 ~香苗・成長篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一と香苗は 兄弟のようだった時を経て ようやく 手に手を携えられるようになりました。 この章は、香苗の少女期から、 日記を通して振り返ります★ 《 香苗・成長篇 》 十三章 人魚姫の日記〜片寄せる波〜 〈香苗の日記から 抜粋〉 《一年目》 3月20日 圭兄ちゃんが、京都に行ってしまった。 かなの所に会いに来るのは、忘れちゃったみたい。 かなは今年中学生になる。 優平兄ちゃんも就職で、会社の寮に入った。 ようやく、中学生。 大きくなるっ..

  • (詩) 真珠貝の告白 2023

    真珠貝に入り込んだ砂粒のような愛は 貝の中で育まれ 大きな真珠の玉になりました。 小説とコラボの詩★ 「 真珠貝の告白 」 真珠貝の告白を 人魚姫が涙で受け止めた 涙の粒は 僕が育てた真珠の玉よりも 美しくきらめいた しっかりと閉じていた 真珠貝がその口を開く時 中に隠されていた珠玉は 輝きを放つ 砂を一粒 呑み込んでから ひそかに育んできた大切なもの 愛を一粒 呑み込んでから ずっとしまい込んだ僕のまごころ 波に揺られ 潮に流され 耐えて来た 泡が立つのは 心がうずくから 魂が震えるから こ..

  • 30 《雪洗YOU禅物語’23》 真珠貝の告白2 ~真珠貝篇~

    前編の最終話です★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 今日はいよいよ 約束が果たされるようです。 告白、というより…★ あの可愛かった香苗が、少女の時代を通して、ずっと私の言葉ひとつを頼りに、待っていてくれたのだ。私の求める、ただ一人の女性となって。 彼女の涙を、すべて受け留めていこう。今まで、どうしてあんなにも、香苗の気持ちに無関心でいられたのか。気づいてあげようとしなかった。自分の心を深く隠すことに気をとられるだけで、逃げて逃げて、逃げていることも見せないできた。 あの時「待っているんだよ」と、確かに私は言ったのだった。自分が言..

  • 29 《雪洗YOU禅物語’23》 真珠貝の告白1 ~真珠貝篇~

    いよいよ前篇の最終章。 クライマックスです★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 京都の料亭 向き合う圭一と香苗 二人の心は通じたようですが★ 十二章 真珠貝の告白 「失礼しますぅ」懐かしい京都の尻上がりのイントネーションで、襖の向こうから仲居が声を掛けた。「お食事はもう準備できますが?」 また後で持って来てもらうように言って仲居を帰すと、入れ違いのように父から電話が入った。 「わしが許すぞ」父は温泉宿に着き早くも一杯やっていると見え、上機嫌だった。 「香苗ちゃんと京都にいるということだが」 「父さんも知って..

  • 28 《雪洗YOU禅物語’23》 梅雨明け宣言2 ~真珠貝篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり さて、東京駅の 新幹線ホームに来ています。 香苗は京都へ、 そして圭一の家族は別のホームから 新幹線に乗る予定ですが…★ 香苗を見送りながら、「うちの嫁になってくれたらなあ」祖父が小さくつぶやいた。 最近幼い子供のようになった祖父は、香苗を見ると口癖のように言うのだった。そう言える祖父が羨ましかった。 あの春に取り逃がした小鳥…。前は、いつでも私の近くに来て囀(さえず)っていたというのに、目を合わすこともなく、家族に向けた簡単な挨拶だけで行ってしまうなんて…。 見えない距離感を感じて、私は..

  • (詩) ばれんたいん宣言 2023

    バレンタインデーが近づきました。 様々なハートが込められた たくさんのチョコたち…♡♡♡ 「 ばれんたいん宣言 」 馬鹿なことをしてると思う 恋愛ではなく、ただのイベント 楽しんでしまえばいい 陰気な気分を吹き払って バレンタインは年中行事 友チョコしてた頃が懐かしい こんなドキドキはもう卒業して ハッピーなカップルになりたい バッチリきめてみたい 連絡してみようか 大切なのは心なのに 印象的な言葉を探してしまう バレンタインは必須科目 ..

  • 27 《雪洗YOU禅物語’23》 梅雨明け宣言1 ~真珠貝篇~

    いよいよ前編のクライマックスに!! 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり さて、そろそろ梅雨明けも間近かのようですが…★ 十一章 梅雨明け宣言 金曜の晩、私は遼平と会う約束をしていた。 あの夜以来、会うか電話するか、頻繁に交流していた。ずっと空席だった兄の優平のポストを、遼平はいつの間にか確保していた。優平にはない勘の良さもあって、私はすっかり彼のペースに乗せられて、香苗とのことも任せ、とても心強く感じていた。 「カナはどう?風邪は治ったの?」 「ああ、まあね」 「週末にでも会えるかな」 「…どうかな」 「まだ調..

  • 26 《雪洗YOU禅物語’23》 梅雨の長雨4 ~真珠貝篇~

    今日は3話続けて、 「梅雨の長雨」の最終話まで★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 香苗が幼い頃から 圭一との関係は始まっていました 数々の思い出と約束で積み重ねられた その関係は 梅雨の長雨のように ずっと晴れる間がないのでしょうか★ 香苗の母がそんな私に更に声を掛けてくれた。「またいつでも来てね」 とても、嬉しい言葉だった。また、来ることが出来るだろうか。だとしたら、こんな来方ではなく、堂々と訪ねて来たい。 「ありがとうございます」と万感を込めて言うと、和泉家を後にした。 数歩踏み出してから、雨が少し降っているのに気が..

  • 25 《雪洗YOU禅物語’23》 梅雨の長雨3 ~真珠貝篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり ようやく、雨夜のなんとか とも言うような 圭一と遼平の長話は終わり、 舞台は変わって和泉家に★ 遼平と一緒に和泉の家に行ったのは、深夜だった。 「こんな遅くに何なの?」と出て来た彼らの母に、ろれつが回らなくなった舌で遼平は訊いた。「香苗は?」 「風邪引いたみたいで、とっくに寝てるわよ」 「香苗に会いたいというから連れて来たのに。俺はもう圭兄と兄弟になるって決めたの。あっ父さんもほら、圭兄を連れて来たよ。未来の…だよ」と言う最後の方は特に、何を言っているのか理解できなかった。そして、彼は居間に倒れこ..

  • 24 《雪洗YOU禅物語’23》 梅雨の長雨2 ~真珠貝篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一と遼平の会話の続き。 圭一の気持ちは。。。 そして、実兄から見る香苗の気持ちは。。。★ 「香苗のこと、好きなんだろう?」 私の目頭からはまた涙がにじんだ。魂の波動に襲われた胸も苦しかった。 遼平がまた言った。「そんなに好きなら、どうしてこうなったの?」 「会いたいな、カナに」と私は遂に漏らした。 「圭兄なら、いつでも誘えば香苗は喜んで出てくるさ」 「そうかな」その為なら、何でもするのに。 「もちろん今日はだめだよ。タイミングが悪い」 「私がカナを思っているとわかっていた?」 「ああ。..

  • 23 《雪洗YOU禅物語’23》 梅雨の長雨1 ~真珠貝篇~

    梅雨の長雨のように 長いシーンが続く章です。 3話続けてどうぞ★小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 梅雨の日の突然の再会は…★ 十章 梅雨の長雨 その日午後から降り始めた雨は、夜になってもずっとやまなかった。 私はさっき会った香苗の顔を思い出していた。車窓に流れる雨のせいではっきり確認できなかったが、あの時潤んでいたような気がする香苗の瞳を。 胸をまた、切ないものが流れた。 この何ヵ月かで、私は自分がいかに女々しい男であるか、思い知らされた。もう、あきらめなければならないと思いながら、いつも香苗の笑顔が..

  • 22 《雪洗YOU禅物語’23》 失った春2 ~真珠貝篇~

    一気に3話 章の終わりまでどうぞ★ 小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり すべてが よい方向に 向かっていきそうだった、 そんな流れが 一挙に転回する今日のお話。 さて…★ 会が盛り上がる中、従弟の恒彦(つねひこ)から、声を掛けられた。彼の父は、私の父の弟だが、雪洗を出て、植田家に婿養子に入っていた。 「環に紹介してって言ったんだけど、なんか知らないけど、圭ちゃんの許可が必要みたいで…」香苗を紹介してほしいというのだ。 「あの娘の兄貴もいるのに、どうして?『俺よりも圭兄に訊いて』って言われたよ。まさか特別な関係ってことないよね。付き..

  • (詩) 初めて雪の中を歩いた 2023

    雪の中を歩いたことがありますか? 胸踊るものでもなんでもないこともありますが 時に人を こんな気持ちにさせます★ 「 初めて雪の中を歩いた 」 初めて 雪の中を歩いた 昨夜解け始め、再び凍った雪は 少しざくざく カキ氷のようだった 初雪のドカ雪 すべてが雪野原に変わった 白一色に 初めて 君に出会って いつまでも 忘れられない人になった 初めて 愛を知りました この愛は永遠不滅 世界がまるで違って見える 君一色に 初めて 雪の中を歩いた 僕の足跡だけが くっきり残っている 初めて 愛を知って ..

  • 21 《雪洗YOU禅物語’23》 失った春1 ~真珠貝篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一が真珠貝のように 大切に秘めた愛。。。 いよいよ開くのでしょうか。 新篇、新章のスタートです★ 《 真珠貝 篇 》 九章 失った春 春が来ていた。 雪洗屋の創業祭はよい滑り出しだった。 そしてその晩、都内で盛大なパーティーが行われた。招待客の顔ぶれを見ながら、改めて、雪洗屋の人脈の広さに驚き、代々培われてきた伝統の重みを感じていた。 私が今までやってきたと思っていたものは、ささやかな塵屑のように、微かな風でも飛んでしまうようなものだったのかもしれない。親たちが..

  • 20 《雪洗YOU禅物語’23》 春と春の間に2 ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 春から始まり、 一年が過ぎていきます 香苗が京都に行ってから 圭一が感じ続けていたもの、それは…★ その内に、環は一人で京都へ行けるようになった。香苗が環にボーイフレンドを紹介し、何度か会っていたようだった。 私たちの家族にとって、それは驚きであり、心配でもあった。 環に障害があるのは、どうしようもないことだった。日舞はよくできるといっても、それ以外は、日常生活の一つを取っても自立は難しいだろうし、不憫とは思いつつ、一生結婚は無理だろうから、家族が抱えていくつもりでいた。 香苗は私たちの固定..

  • 19 《雪洗YOU禅物語’23》 春と春の間に1 ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 卒業と共に京都に旅立った香苗。 残された圭一の方が なぜか落ち着かないようです。 この春とまた翌年巡ってくる春の間、 つまり一年を凝縮した章です★ 八章 春と春の間に 久かたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花のちるらむ 紀友則 香苗は京都に発った。私には、八年振りに故郷で過ごした春だった。 静心(しづごころ)なくというが、一気に散っていく桜の花を見ながら、もしかしたら私も平安人(びと)の心を少し理解できたのかもしれなかった。 行く季節は、止める..

  • 18 《雪洗YOU禅物語’23》 卒業式 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり この章もラストに入りました。 卒業の日です★ 卒業式 まだ寒い弥生の日、香苗の短大の卒業式があった。 送迎してあげてほしいと、私は遼平から頼まれていた。家族全員仕事で行けないという。断る理由もなかったので、引き受けたのだった。 その日、振袖袴姿の香苗を乗せて、車で送って行った。 「本当は、袴は着たくないの、綺麗な柄が隠れちゃうから。でも、みんな袴だから目立つのは嫌だし。卒業式にしか着れないんだから、袴姿もいいわよね」 なんやかや言いながら、香苗は振袖を着る機会があるだけ..

  • 17 《雪洗YOU禅物語’23》 成人式2 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 成人式の日♪ 雪辱を晴らすための作戦は 大成功だったようです★ 「悔しがってるでしょうね。自分が一番いい着物着てるって、思ってただろうから」と環が言った。 「言い触らしたりも出来ないしな」と遼平が言った。 「言い触らそうが、言い触らすまいが、こちらはどちらでも構わないさ」と私は言った。 「ねえ、どういうこと?」と、事情を知らされていない香苗が訊いた。 「敵(かたき)討ちだよ」と遼平が答えた。 「もっと、言ってあげたかったのに」と、環が言った。 「あの、姉妹には、頭を使わないと。それでもまた嫌味を..

  • 16 《雪洗YOU禅物語’23》 成人式1 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり いよいよ成人式。 香苗の振袖のお披露目ですが…★ 成人式 そうして迎えた年明けの成人式には、環と共に香苗を祝いに行った。 会場のロビーで、香苗を車で送ったまま待っていた遼平と合流した。そこで、遅れてホールに入っていく佐々尾家の三女、綾華の姿を見かけた。次女の琴華も同伴していた。 「ああ、いつも嫌味な娘(こ)」と環が感情的な口調で言った。 「こちらには気付かなかったようだけど」と私が言うと、遼平が言った。「ああやって、遅れて注目を引くってことか。美人で高い着物を着ていれば、嫌でも..

  • (詩) 一生懸命な一月、逃げ出しそうな二月 2022

    一月は「行き」 二月は「逃げ」 三月は「去る」といいますが 「三月さくら」では…★ 「 一生懸命な一月、逃げ出しそうな二月 」 一生懸命な一月 一月と三月の狭間で 逃げ出しそうな二月 一生懸命な人の一月 息をつけないくらい 真剣に 一生懸命な一月を過ぎ 二月を行く時 忍耐という言葉を 思いつつ行く 虹の七色は にわか雨の涙と 太陽の笑顔で出来ている 人魚姫の真心は 届かなかったの? 偽物の愛を選ぼうとするの? 一生懸命な人の一月 息をつけないくらい 真剣に 一途に 生きてきた 意地..

  • 15 《雪洗YOU禅物語’23》 菊舞の会 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり今日は 一挙3話続けてどうぞ★ 7年ぶりに 圭一が見に行った“菊舞の会” そこで気づいたものは…?★ 菊舞の会 京都から帰ってきて、改めて、私は長く留守をしていたのだと感じた。 環と香苗のつながりは、家族の誰よりも強くなっていた。 環が日舞を続けられたのも、香苗の力が大きかったに違いない。緊張したら固まってしまい、パニックしてしまう環が、いつも本番でも本領を発揮できたのは、香苗がついていたからだ。特に私が京都に行ってからは、環がいつも側に置きたがったという。 その環が、..

  • 14 《雪洗YOU禅物語’23》 友禅工房2 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 香苗が気に入った竹内爽雲。 着物は素敵なのですが…。 どうして香苗の振袖を 引き受けてくれたのでしょうか★ そして爽雲は、私も何度か聞いたことのある、お決まりの話を始めた。 毎回、初めて明かすかのように感傷的な話し方をするのだが、この話をするということは、実はかなり機嫌がいいと思われた。 爽雲と夫人の結美さんは、十五歳年が離れている。先代が亡くなる前に結婚をということで、夫人が二十歳になったばかりで、両親から奪うように結婚してしまった。だから成人式の時には、もう未婚ではなかったから振袖を着せてあ..

  • 13 《雪洗YOU禅物語’23》 友禅工房1 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 今日は、京都での プロローグの場面に つながっていきます★ 友禅工房 香苗は爽雲の着物をとても気にいっていた。執心といってもいいくらいだった。 目を輝かせて香苗は言った。「素敵!芸術よね。もっと別のも見てみたい。こんなきれいな着物、見ているだけでも素敵」 竹内爽雲は、京都の会社時代、私の担当だったことがあり、以来、懇意にしてもらっていた。 先代からの名前のある巨匠ながら、気さくな人で、私のことを気に入ってくれ、人間としての付き合いをしてきた。その縁で、今年から雪洗屋にも、..

  • 12 《雪洗YOU禅物語’2》 再会 <For~友禅> ~帰郷篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 再会です。 この章で、 プロローグのシーンへと続きます★ 《 帰郷篇 》 七章 For 友禅(フォー ユーぜん) 再会 私が初めて光に出会ってからの十年と、陰に逃げ込んだ七年が過ぎた。幼い香苗と知り会ってから、併せて十七年の月日が流れ去ったことになる。 私は七年間勤めた会社を、五月の連休前に辞めることが決まっていた。正式の退社前に有給休暇の消化の為に京都から一時帰ったのは、四月の初め頃だった。 晴れた日だった。懐かしい故郷の海はまったく変わ..

  • 11 《雪洗YOU禅物語’23》 雪洗祖父母の物語~故郷からの薫風~2 ~京都篇~

    京都篇、最終話▼△ 小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 雪洗屋と藤乃に まつわる話とは? 祖父と祖母が若かりし頃、 美男美女だったという頃のお話から★ 藤野が何を話そうとするのか、見当もつかず、私は言いよどんでいた。 「雪洗屋と藤乃とは、因縁めいたことがあるんだよ。祖父母の代にも両親の代にもね」と藤野は話し始めた。 祖母はまだ娘の頃、藤乃を手伝っていたところ、若女将にと見込まれるようになり、藤野の祖父との縁談話もあったのだが、従兄妹結婚を心配する両親によってその話はなくなり、雪洗屋からの縁談を受けて祖父と結婚したと言うことだった。 「..

  • 10 《雪洗YOU禅物語’23》 雪洗祖父母の物語~故郷からの薫風~1 ~京都篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 新キャラも登場の、新章スタート! すっかり京都になじんだ圭一の許に 思い掛けない客人が…。 雪洗、三代につながる愛の秘話?!★ 六章 雪洗祖父母の物語 〜故郷からの薫風〜 軟らかそうな若く青い結び葉が、風でそよいでいた。新緑のなんともいえない薫りが立っていた。 外から会社に戻った私は思い掛けない人の来訪を知らされた。 藤野貴志(ふじのたかし)と告げた彼は、祖母の母方の親戚に当たる旅館の息子だという。 私が京都に来て、七年目のことだった。 故郷からの、そして祖父母..

  • (詩) 2023版 「はつゆきパート2」 (折句)

    初雪というのは、 何かの儀式のように厳粛で、 それに触れた人たちにも、 一生で一度の 清く美しい物語が 作られることがあるのかもしれません★ 「 はつゆきパート2 」 はかなくも美しい雪の結晶 冷たく凍えた指先に触れる 夢ならば 覚めないで 消えかかったはずの希望を信じたい 早すぎたのか もろすぎたのか つつかれたら 泣き出しそうな 揺さぶれば こぼれそうな 気持ち膨らみ あふれる想い 花を愛でいた頃の心 閉ざして 強がり見せて 顔をあげて 行く先も告げずに 旅立とうとする 期待に答え続けていきたい本当は はるかな春に..

  • 9 《雪洗YOU禅物語’23》 魂の波動3 ~京都篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一の京都ライフとは、 気楽なようで 孤独なものでした★ * 私は仕事に遣り甲斐をみつけることで、自分自身の居場所を獲得していった。私自身が本当に求めるものではないのかもしれないが、今与えられた仕事の中で、精一杯やるしかないのだ。 現実的なことの中に、より合理的な方法を選択していく。それが、私の生き方となった。仕事の面では、それで成果を出すことができた。臨機応変なスタイルというと聞こえがいいいが、日和見的な状況判断でやってきた。遠く見えないことまで、心配しても仕方がない。 優平のような友人はなか..

  • 8 《雪洗YOU禅物語’23》 魂の波動2 ~京都篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 京都にいる期間、 圭一が胸に抱え続けた秘密、 そして時々胸を襲う 「魂の波動」とは? * 香苗が高校一年の時、優平が結婚することになり、披露宴に招待された。私は、仕事上のことで参加しにくい状況だったことも確かだったので、それを理由に断ることにした。 優平は大切な友人だった。彼と顔を合わせることは大学以来ほとんどなかった。お互い仕事で家を出ていたし、故郷から離れていたから。 披露宴にただ出ないのもツレないので、結婚前に彼の住む街に出向き、久し振りに会って話をした。 かつての同級生が結婚す..

  • 7 《雪洗YOU禅物語’23》 魂の波動1 ~京都篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 舞台は変わって京都。 社会人となった圭一は…★ 《 京都篇 》 五章 魂の波動 社会人となった私は、家も出て、京都で生活を始めた。 京都には海がない。 いつでも行ける気軽な場所にあったものが、ないというだけのことで、辛いということを知った。海が恋しいと思ったのは、初めてだった。ただ、波の音を聞きたい、そして水平線を確認したかった。 海に日常的に触れることができない。それが、私のストレスになった。休日には、近畿の様々な海岸を訪れた。行きやすいのは、大阪から兵庫に続く線..

  • 6 《雪洗YOU禅物語’23》 思春期の終焉・葉陰の約束(真夏の幻) <春との決別> ~思春期篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 明るいひだまりのような日々から 遠ざかった 圭一の大学生活…。 彼の心の求めるものは…★ 四章 春との決別 思春期の終焉 思春期の始めの頃に香苗に出会い、そして高校生活の終わりと共に、私の思春期も終わった。そして、和泉家にはほとんど訪れることがなくなった。 「圭兄ちゃん、また来てね。また絶対すぐ来てね」と香苗が言ってくれた言葉とは反対に、だんだん敷居が高くなっていた。 高校時代は、優平とどこでも一緒に過ごした。大学が別々になり、私たちは兄弟よりも近くにいた日々..

  • 5 《雪洗YOU禅物語’23》 香苗の審美眼と予知能力・香りの思い出 <思春期の陽だまり2> ~思春期篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 香苗との戯れのような 数々の約束を積み上げた 圭一の思春期の最後の時期。 彼にとって、そのひだまりは 居心地がよいものでした。 香苗の審美眼と予知能力 和泉家の存在により、私は改めて、私の家庭のことを知った。家族一人一人の私に向けられていた愛を、知った。 小さい頃両親と過ごした思い出が、私にはあまりなかった。いわゆる、祖母ちゃん子だった。 代々の老舗の呉服屋に過ぎなかった雪洗屋を、“着物の雪洗”として、祖父の代で全国の百貨店に店舗を展開し、大きな会社としていたから、祖父と..

  • 4 《雪洗YOU禅物語’23》 約束・兄妹ごっこ <思春期の陽だまり1> ~思春期篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 圭一が心の中にもつ温かいもの。 それは、思春期に培われたものでした。 忘れられない日々を語ります★ 三章 思春期の陽だまり 思春期の春に出会った陽だまりは、容易に忘れることができない。 和泉家の陽だまり。家族の笑い声と、小鳥のような香苗のお喋り。 百面相のような表情の変化も面白いし、満面の笑顔は何に例えたらいいのだろう。花に例えるとしたら、花屋にある洗練された切花ではなく、野に咲いているような、名もない、でも人の目を楽しませる、かわいく生命力のある花だ。 私と優平の周りを、よ..

  • (詩) 「命の洗濯日和」 2023

    「命の洗濯」があるならば、 絶好の 「命の洗濯日和」もあるはず。。。 辞書にはありませんが、 めったにない上天気を表す言葉、 あるいはちょっとありそうでない 特別な贅沢な時間。。。 そう考えてください★ 「 命の洗濯日和 」 命の洗濯日和は 一月の こんな寒い日にふと訪れる コーヒーの一杯が 有難く感じられるから 命の洗濯日和は 太陽を独り占めにしたような気分になれる 昨日の喧嘩を帳消しにしてくれる 暖かい陽射しに包まれるから ちょっと疲れた 汗まみれの 汚れ物をジャブジャブ洗えるから 命の洗濯日和は 新雪の後の日は、尚お得..

  • 3 《雪洗YOU禅物語’23》 空色のワンピースと紫陽花 ~思春期篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 中学生の圭一と、 幼い香苗との 梅雨の切れ間の物語。 読み切りの短編としても、 爽やかな一話です★ 二章 空色のワンピースと紫陽花 朝は激しく降っていた雨は、午後になって嘘のようにあがり、青空が見えていた。中学からの帰り道、私は虹を追いかけるように帰ってきた。 すると、店のショーウインドーの前に、空を映したような、水色のワンピースを着た香苗がいた。いつも着物を見ながら輝いている瞳は、涙を湛えていた。 香苗の祖母が亡くなり、その日は葬式があったはずだった。 「お祖母ちゃん、なくな..

  • 2 《雪洗YOU禅物語’23》 ひさかたの… ~思春期篇~

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 海沿いの街 老舗呉服店の息子圭一の お気に入りの場所とは? 《 思春期篇 》 一章 ひさかたの… 私の生まれ育ったその街は、海辺に程近く、海からの風が吹く時は、なんとなく潮で湿ったような空気が流れていた。それでも、堤防に登って、潮風に打たれるのが昔から私は好きだった。 どんなに高く寄せたとしても、堤防にぶち当たって砕け散る運命だというのに、何度でも何度でも、飽きることも、休むことも、挫けることもなく、寄せ続ける波。大きく寄せてみたり、軽く寄せてみたり、激しく寄せて飛沫(しぶき)を..

  • 1 《雪洗YOU禅物語’23》 プロローグ

    小説 ▼△ 雪洗YOU禅物語 △▼ ゆきあらいゆうぜんものがたり 1年ぶりにお送りするのは 長編「雪洗(ゆきあらい)YOU禅物語」 着物、日舞、短歌… 和のテイストをたっぷりお楽しみください。 とある関東の海沿いの街と、 京都を舞台にした物語。 プロローグは 京都のシーンをピックアップ★ 「雪洗(ゆきあらい)YOU禅物語」 プロローグ 古い日本古来の、以前は茅葺(かやぶき)だった家屋を改造して造られた工房は、高い天井のせいか、外は汗ばむ暖かさだというのに、気持ちよく涼しかった。 ここは京都市郊外にある京友禅師、竹内爽雲(たけうち..

  • 〈終〉24 《あの人は広い傘をもっている'22》 Final Sean 雨降って地固まる

    ※2023年になりましたが、タイトルは’22でそろえます 小説 ▼△あの人は 広い傘をもっている△▼ ようやく最終章です。 いくらか時が流れているようですが 彼らはどうなったんでしょうか★ Final Sean 雨降って地固まる 「今だから言うけど、あの時の体験談はここに残ったみたいで、気がついたら同じことをしてたんだよね」暢は染野と話をしながら、胸の辺りを押さえた。 その部屋は、いつだったか染野がマジックを披露したマンションのリビングで、あの時は真新しかったが、今はそこかしこに生活観が出ていた。ベランダには、小さな男の子の服や、暢のものと思わ..

  • 23 《あの人は広い傘をもっている'22》 Sean14 余命数ヵ月の花嫁(後)

    ※2023年になりましたが、タイトルは’22でそろえます今日の3話は、最高のクライマックス シーンがあります★ 小説 ▼△あの人は 広い傘をもっている△▼ 暢が心に決めたこととは…。 今日は一番のクライマックスになるはず★ 早朝の厳しい寒さに向き合うかのように、暢は風を受けて歩いていた。 もう気持ちは決めていた。 彼女が病気を理由に身を引こうとするのではないか、というのが唯一の心配だったから、彼は伝えることしか頭になかった。 “さと”に入っていくと、美里はにっこり笑った。暢にとってはもうすでに愛しい、守るべき存在だった。 彼女を見た瞬間、いつだったか染野..

  • 22 《あの人は広い傘をもっている'22》 Sean14 余命数ヵ月の花嫁(前)

    ※2023年になりましたが、タイトルは’22でそろえます 小説 ▼△あの人は 広い傘をもっている△▼ 今日は急展開! どこかで聞いたようなタイトルを 持ってきてスミマセン★ Sean14 余命数ヵ月の花嫁 正月は過ぎ、“さと”も営業が始まり、暢の冬休みも終わった。 何も以前と変わらないように見えるが、今までは間に入ってくれていた百合子は介さずに、暢は美里に直接電話やメールで連絡をくれるようになった。 「毎日お店に来てくれるし、メールもくれるから。それに日曜にはアパートにも行ってるんです」と、美里は百合子に報告した。 「そんなんで、いいわけ?」と百..

  • (詩) 「成人式」 (折句) 2023 *新成人の皆さんおめでとうございます*

    新成人式の方々に この詩を贈ります☆ 「 成 人 式 」 世界中で いちばん 人生で いちばん 幸せで 輝いた 瞬間を きらきらと 輝いた 瞬間を せまいこの国で いっぱい いっぱい 自由に 夢を 描いて 真剣で ひた向きな 瞳を 昨日よりも 前向きな 一歩を 世界中に 祈りを 自分には 愛を 信じてる 明日が 来ること 奇跡は この時から 始まると 刹那に 生きたくなる時も 時間のしばりから 羽ばたこう 心配は 昨日に 追いやって ..

  • 21 《あの人は広い傘をもっている'22》 Sean13 鬼のかく乱3

    ※2023年になりましたが、タイトルは’22でそろえます 恋人との結婚を控えた染野が、 暢に知恵を授けようとしますが… 「プロセスというのがあるから」と暢は言った。 「そうなんですが、今更無理ですね。彼女がツムジを曲げるのも分かるな。肝心なあなたがそんな反応じゃ」と染野は笑った。「実は、僕もあやうく捨てられるところだったんですよ」 「尊敬するよ、あの前川と結婚するなんてね。絶対落ちないって言われてたんだよ、あいつは」 「付き合い始めるのは順調でしたよ。僕は年下だからかな、よけいに気兼ねなく話せたのがよかったのかも」 「あいつも過激だよな、狂言結婚の相手にされて、..

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三月 さくら待つ月、四月 しあわせの始まり
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