日々思いついた「お話」を思いついたままに書く
或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!
「……それって、どう言う意味?」マーベラがゆっくりと訊き返す。目付きが今まで違う。殺気を帯びている。「ジェシル、あなた、自分が何を言っているのか、分かっているの?」「そうだよ、ジェシル!」ジャンセンが割って入ってくる。「君は博士に会った事が無いから、そう言う歪んだ発想をするんだよ!」「だって、話を通したとは思えない展開じゃない?」ジェシルも負けていない。「それに、ジャン、あなただってそのマスケード博士から文献をもらったんでしょ?」「そうだけど、絶対に調べて来いなんて強要はされなかったよ。ぼくがジェシルの従兄弟と言うの聞き知って、都合の良い時に調査してみてはくれないかと丁寧に頼まれたんだ」「そうよ、カスケード博士は奥床しい方よ!」マーベラは語気を強める。「下衆な考えはやめる事ね!」「でも、そう言われたら、優...ジェシルと赤いゲート56
「ねえ、ジャン……」ジェシルがジャンセンを見る。「そのマスケード博士って、どんな人?」「どんなって、宇宙の考古学会の重鎮だよ」ジャンセンは両手を広げる。ジャンセンが子供の時に良くやった驚き呆れた時の仕草だった。「そしてね、とんでもない量の知識を持っているんだ」「それでいて、とっても温厚で優しいのよ」マーベラが口を挟んでくる。ジェシルはむっとした顔をする。「ご高齢なのに、とても若々しいのよね」「長生きの種族もいるから、その仲間なんじゃないの?」ジェシルの声は冷たい。「総じて長生きな連中って言うのは、碌な事を考えてはいないわ」「何よ、失礼ね!」マーベラが声を荒げる。「何にも知らないくせに、言わないでほしいわ!」「そんなに若々しく知識も豊富なのに、あなたやジャンに仕事を振るなんて変じゃない?」「そんな事無いわよ...ジェシルと赤いゲート55
「……それで、これから何処へ行くのよ?」ジェシルはジャンセンに訊く。「え?何処って……」ジャンセンはマーベラに顔を向ける。「それは……」マーベラはトランを見る。「それは……」トランは立ち止まり、皆を見回す。茂みの中は陽が遮られ、時折吹く風が茂みを音を立てて揺らし、木漏れ陽を落とさせる。「あのさ、ジャン……」ジェシルはジャンセンを睨み付ける。「ベランデューヌとダームフェリアのみんなから格好をつけて去って来たけど、行き先がはっきりしないって言うの?」「いや、そんな事はないよ」ジャンセンは平然と答える。「次はぼくたちがぼくたちの時代に戻るのさ」「どうやって?」「ほら、ここへ来る時に赤いゲートを通って来たじゃないか」「そうだったわね……」ジェシルは思い出す。「ここにあるゲートは機能しなかったわ」「そうそう、出口専...ジェシルと赤いゲート54
「何よう!」「ジェシル、君にはやってもらわなきゃならない事がある」ジャンセンは真剣な眼差しだ。マーベラは目を細める。「ベランデューヌの民とダームフェリアの民は和解した。神としての役割は終わったんだよ。だから、いつまでもぼくたちがここにいてはいけない」「え?どう言う事?」ジェシルは少し首を傾げて訊き返す。可愛らしく見えるその仕草にマーベラは目を細める。「……ジェシル、あなたって本当に何にも知らないのねぇ……」マーベラは、わざとらしいくらい大きなため息をつく。「そんなんでよくジャンセンに着いて来たわね」「なによ!」「なによって、なによ!」「わたしは、たまたまアーロンテイシアになっただけよ!」「それなら、わたしだってたまたまデスゴンになっただけだわ!」「そうね、あなたの性格にぴったりな悪の神、邪神デスゴンね!」...ジェシルと赤いゲート53
「ジャンセンさん!」トランは驚いている。しかし、すぐに状況を呑み込んだようで、大きくうなずいた。「……そうか、アーロンテイシアのメッセンジャーはジャンセンさんだったんですね」「デスゴンは君たち姉弟だったんだね」ジャンセンは嬉しそうにトランを見る。「デスゴンの正体がマーベラって分かった時点で気付くべきだったなぁ」「相変わらずのマイペースですねぇ」トランも楽しそうな顔だ。「ジャンセンさんがいるから色々と詳しかったんですね。ぼくは本物のアーロンテイシアとそのメッセンジャーかと思ってました」「本当にそうだったら、幸運だったわ」マーベラは忌々しそうなジェシルを睨む。「でも、とんだ暴力女だったのよねぇ……」「姉さん!」トランがマーベラを叱る。「知り合いにこうして逢えただけでも物凄い幸運だよ!」「まあ、ジャンセンに逢え...ジェシルと赤いゲート52
「……今頃、訊くの?」マーベラは呆れた顔をする。「遅くない?」「あなたから言わなかったじゃないのよ!」ジェシルはマーベラを睨む。「ジャンとの再会に惚けちゃってたんでしょ?状況も把握できないなんて、非常識極まりない女ね!」「うるさいわね!」マーベラもジェシルを睨む。「あなただって、何にも言わないじゃないのよ!石で攻撃してきちゃってさ!乱暴の極みなくせに!」「あれはアーロンテイシアの闘神の力が出たのよ!わたしがやったわけじゃないわ!」「そう言うんなら、デスゴンだってわたしじゃないわよ!」「どうだか……」ジェシルは嫌味な表情をマーベラに向ける。「あなたのそのねじ曲がった性格がデスゴンに好かれたんじゃないの?」「じゃあ、あなたは暴力的な所がアーロンテイシアに好かれたようね!」二人は睨み合う。不穏な気配が漂い始める...ジェシルと赤いゲート51
「マーベラ……マーベラ・トワットソンはね」ジャンセンは二人のやり取りに気がついておらず、説明を続ける。「ぼくと同じ、考古学者だよ。仲間だ」「考古学者……?」ジェシルは言いながら、訝しそうな眼差しでマーベラを見る。ジャンセンが「仲間」と言った時、勝ったと言うような表情をしたマーベラに腹が立つ。「そんなお仲間さんが、どうしてこんな所に?」「彼女は基本フィールドワークが中心で、文献や伝承の真偽を現地調査するんだ」ジャンセンはジェシルの質問には答えていない。それも腹が立つ。「優秀な考古学者なんだよ」「ああ、そうなの」ジェシルは素っ気なく答える。ジャンセンが「優秀」と言った時、再び勝ったと言うような表情をしたマーベラにさらに腹が立つ。「それで、わざわざ、ここまで現地調査に来たって言うの?そんな事したせいで、デスゴン...ジェシルと赤いゲート50
ジャンセンと彼女はじっと見つめ合っている。民たちはそんな二人を息を殺して交互に見据えている。「……ジャン……」ジェシルはジャンセンの腕を突つき、小声で訊く。「どうしたのよ?……まさか、知り合いとか……?」ジャンセンは無言のままジェシルに振り返る。ジャンセンの目を驚きのせいか、大きく見開かれている。ジェシルはデスゴンだった彼女を見る。整った顔立ちをした若い女性だ。やや褐色の肌に黒い瞳と黒い眉が大人な感じを表わしている。その反面、ぷっくりとした赤い唇が少女の様な愛らしさを見せていた。黒い瞳はジャンセン同様に大きく見開かれている。「ジャン!黙っていたら分からないわよう!」ジェシルは苛立たしそうに言う。「驚くのはもう良いから、彼女は一体誰なの?」「……ジャンセン」かすれた声が彼女から発せられた。「ジャンセン・トル...ジェシルと赤いゲート49
……え?ああ、そうだったわ!石を放った途端、ジェシルは我に返った。だが、放った石を止める事は出来なかった。すでに棒立ちだったデスゴンの仮面に全ての石は当たった。仮面は粉々になって四方に撒き散らされた。デスゴンはそのまま地面にゆっくりと落ちた。うつ伏せたまま倒れている。ジェシルも倒れているデスゴンの傍に降り立った。民たちは歓声を強くする。拳を突き上がる者、両手を叩く者、互いの肩を叩き合う者、興奮状態だった。と、茂った森の中からオレンジ色の肌をした大男が現われた。赤いなめし革で作った袖なしの服に足首までのズボン、それらがはち切れそうなほどに筋骨が隆々としている。民たちの歓声は一瞬で止み、恐れの色を目に宿して男を見つめている。男は無言で民たちを睨み回した。サロトメッカが大剣を両手で握り、からだの正面で構えた。ジ...ジェシルと赤いゲート48
すっかり油断していたデスゴンだった。大量の石礫を避ける事が出来なかった。仮面の前で両腕を交差させるのが精一杯だった。その腕と晒されたからだとに石は容赦なく飛ぶ。さらに、デスゴンに当たった石は再び宙で集まり、デスゴンに飛ぶ。それが繰り返された。「さすがはアーロンテイシア様じゃ」デールトッケが一連の出来事を見て、ハロンドッサに言う。「わしら考えを汲み取って下されたな」「左様、左様」ハロンドッサは大きくうなずく。「デスゴンは勝ったとでも思ったのだろうさ。アーロンテイシア様のつぶやいた『愚かな』はデスゴンへの言葉であったのだ」二人の長の言葉に、民は恐る恐る顔を上げた。石はひっきりなしにデスゴンを打ち続けている。民たちは歓声を上げ始め、アーロンテイシアの名を叫ぶ。皆から少し離れた所に立っていたジャンセンも宙を見上げ...ジェシルと赤いゲート47
アーロンテイシアはデスゴンと対峙する。互いに宙にあるが、堅固な地盤の上にいるかのようだ。「……ふふふ……」デスゴンは陰湿な眼差しでアーロンテイシアを上から下へ下から上へと眺め回し、小馬鹿にしたように鼻で笑う。「アーロンテイシアよ、その依童、まだ日が浅い様だな」「それがどうしたと言うのだ?」アーロンテイシアは平然と答え、両手を組み、ぼきぼきと指を鳴らす。「この者は依童は、われが依るよりも前から、すでに闘神のしての資質を持っていたのだ」アーロンテイシアは好戦的なジェシルの気性を言っているのだ。アーロンテイシアの口の端が軽く吊り上る。「デスゴンよ、お前の依童の見た目はそれ相応だが、闘気のようなものは感じないぞ。……まあ、はったり好きなお前には相応しいとは言えるだろうがな」「アーロンテイシア、お前は何も分かっては...ジェシルと赤いゲート46
長たち、集まっていた者たちが、一斉に動きを止め、空を見上げた。皆不安げな表情だ。呪術師のメキドベレンカが空に向かって何やら叫んでいる。ケルパムは空を見回している。一番若く好戦的なサロトメッカは挑むような眼差しを空に向けている。神経質なボンボテットは空を見上げるのを止めて、しきりに頭を左右に振っている。いつもは陽気なカーデルウィックもその太い体に鳥肌を立てている。知恵者のハロンドッサは右手でつるつる頭を幾度も撫でさすりながら思慮深い眼差しで空を見上げている。「……ねえ、今のは?」ジェシルは空からジャンセンに顔を向き直して訊く。「まさかとは思うけど……」「ああ、ぼくもそのまさかだと思う……」ジャンセンも皿からジェシルに顔を向き直す。「……あれはデスゴンだ」「デスゴン……」そう呟き、ジェシルは空を見上げた。そこ...ジェシルと赤いゲート45
「じゃあ、デスゴンがどこに呼び出したのか、教えてもらおうか?」ジャンセンが長たちに問いかける。「ヤツらが求めているベランデュームの未開拓の地とダームフェリアの境界区域ですじゃ」デールトッケが答える。「そして、時間は陽が昇りケーロイ鳥が鳴く時との事ですじゃ」「それって……?」ジェシルがジャンセンに訊く。「早朝だと美容に響いちゃうわ……」「なんだ、アーロンテイシアが憑いたと感心していたのになぁ……」ジャンセンは二人の言葉で言うと、がっかりしたようにため息をつく。「それなのに、何が美容だよ……」「そんな事を言っても、急にいつもの感じに戻っちゃったんだもん!」ジェシルは口を尖らせて答える。「ケーロイ鳥が鳴く時って、何時なのよ?」「心配するなよ」ジャンセンは苦笑する。「ぼくたちの時間で言うと、お昼のちょっと前だ」「...ジェシルと赤いゲート44
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