日々思いついた「お話」を思いついたままに書く
或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!
「ジェシル……」ジャンセンが声をかける。ジェシルは振り返る。ジャンセンの顔には驚きがあった。「……いやいや、大したもんだなぁ」ジェシルは長たちを見る。皆が座り直して話し合いを始めていた。誰もこちらを見ていない。それが分かると、ジェシルは思い切り不機嫌な顔になった。「何がよ?」ジェシルの声にも不機嫌さがにじんでいる。「何が大したものなのよ?」「何をそんなに不機嫌なんだい?」ジャンセンは不思議そうな顔だ。「威厳のある立派な態度だったじゃないか。ぼくの知っているジェシルからは思いもよらないよ」「それだけ、社会で揉まれているのよ!」ジェシルは、いつも偉そうな態度のトールメン部長を思い出していた。ジェシルはトールメン部長の偉そうにしているところを真似してみたのだ。結果は長たちの様子に表われていた。効き目があったと言...ジェシルと赤いゲート41
ジャンセンがジェシルの元へ着くと、長たちが立ち上がり歓喜の声を上げていた。ジェシルが助ける事を告げたのだろう。「偉大なる女神アーロンテイシア様!」恰幅の良いカーデルウィックは叫ぶと、両手を広げて、今にもジェシルを抱きしめそうな勢いだ。「こら、カーデルウィック!罰当たりな事をするでない!」最長老のデールトッケが諌める。カーデルウィックはぽりぽりと頭を掻く。「まあ、そうしたくなる気持ちは分かるがな……」ドルウィンは言うとジェシルをほれぼれとした表情で見る。「ドルウィン、お前さんも不謹慎そうな顔つきだぞ!」長の中で一番若いサロトメッカが真面目な顔で言う。「せっかくアーロンテイシア様がご助力下さるというのに、怒りを買うような真似は慎まれよ」神経質なボロボテットが唸るように言う。「浮かれている暇はそれほどは無いと思...ジェシルと赤いゲート40
「それって、わたしたちと一緒じゃない!」ジェシルは声を荒げる。「どう言う事なのよ!説明しなしさいよ!」「ぼくに怒ってもなぁ……」ジャンセンは困惑の表情でジェシルを見る。「とにかく、そのデスゴンはぼくたちと同じような状況下にあるんじゃないかとは推測できるね」「と言う事は、研究者と……」「その助手……」助手と言ったジャンセンをジェシルが殺気を込めたまなざしで見つめる。「……いや、その従妹……じゃなくって知り合い、いや、立派な援護者……」「そうかも知れないわね」立派な援護者の言葉でジェシルの機嫌が直った。「ジャン、あなた、心当たりの人なんていない?」「そうだなぁ……」ジャンセンは腕を組んで目を閉じ、考え込んでいる。しばらくして目を開けた。「……ごめん、思いつかない……」「そうなの?」「言えるのは、あの赤いゲート...ジェシルと赤いゲート39
「アーロンテイシア様……」最長老のデールトッケが話しかける。「単刀直入に申し上げます……」「そんなに畏まらないで良いわよ」ジェシルは楽しそうに言う。ジャンセンを言い負かしたのが嬉しくてしょうがない。「わたし、今とっても気分が良いから」「わしらをお助け頂きたいのですじゃ……」「え?」ジェシルは驚いた顔でデールトッケを見る。他の長たちも深刻な顔でうなずいている。ジャンセンも同じようにうなずいている。「ここって色々と恵まれた土地なんでしょ?」ジェシルはジャンセンに自分たちの言葉で訊いた。「村の人たちも明るいし問題ないって感じだけど……」「そうだけど……」ジャンセンが答える。「それ故に問題が起こったんだ」「村の人たちを見ていると、そんな風には思えないけど?」「長たちの所で話が止まっているからだよ。いずれは知られて...ジェシルと赤いゲート38
ジェシルは、あっと言う間に子供と女たちに囲まれた。男たちは、呪い師の老婆とメギドベレンカとに睨みつけられて、遠巻きに様子を窺っている。本当はジェシルに声をかけたくて仕方がないのだが、それは叶わず仕舞いのようだ。ジェシルを取り巻いている子供たちが口々に何かを言っている。しかし、ジェシルには分からない。それでも、声をかけられるたびにその方を向き笑顔を見せていた。「すっかりアーロンテイシアだな……」ジャンセンは、ジェシルの様子を見ながらつぶやく。ドルウィンがジャンセンに声をかけてきた。ドルウィンが促すところには、貫録と威厳を併せ持った年輩の男たちが五人、丸テーブルを囲んで形で座り、真剣な眼差しをジャンセンに向けていた。彼らはベランデューヌ一帯の村の長たちだった。これから、重要な話が行なわれようとしているのだ。そ...ジェシルと赤いゲート37
ドルウィンはジャンセンと話している。ジャンセンは何度もうなずく。話が終わると、ドルウィンは両手の平を上に向け、頭を下げ、その姿勢のままゆっくりと後退し始めた。「……ねぇ、あれって危険じゃない?石にでもつまづいたら転んじゃうわ」ジェシルは、不器用な動きで後退しているドルウィンを心配そうに見ている。「大丈夫、ここでは客を招くときにはこうやって誘導するんだよ」ジャンセンが答える。「後ろ向きに歩いても道には何の問題もないほど整えられている、って事を示しているんだ」「この時代の習慣って事?」「そう言う事だね。さあ、付いて行こう」ジャンセンは言うと、ジェシルを先に歩くように手で示した。「メインゲストのアーロンテイシアが先だ。ぼくは一応メッセンジャーって立場だからね。さあ。歩いて。あまり距離が開いちゃうと失礼にあたるか...ジェシルと赤いゲート36
ジェシルは駈け出す。手を握られているケルパムは、腕がぴんと伸びた格好で、転ばないようにと必死で駈けている。「ジェシル!ケルパムが……」ジャンセンが後ろから声をかけたが、曲り道で姿が見えなくなった。駆け去った後に舞う土埃を見ながらジャンセンはつぶやく。「……やれやれ、ベルザの実って、そんなに美味しいかなぁ?ぼくならペレザンデの実の方が好きだけどなぁ。あの口の中に広がる酸っぱ苦い味が最高だ」長やまじない師たちは呆然とした表情でジェシルの立てた土埃を見ていた。しばらくすると、ジェシルが駈け戻って来た。怒った顔をしている。皆が畏れて両の手の平を上に向けて頭を下げた。「ジェシル、言っただろう?怒った顔がダメだってさ」「そうは言うけど」ジェシルは鼻息が荒い。「ケルパムが全力でわたしの手を放して、わたしの前に立って、両...ジェシルと赤いゲート35
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