日々思いついた「お話」を思いついたままに書く
或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!
ジャンセンは座り込んだまま腕を組み、高い天井を見上げる。そのままの姿勢で目を閉じた。……おかしい、圧倒的におかしい。上の階の文献もそうだったけど、余りにも雑だ。時代が全く噛み合わないし、宙域も全く噛み合わない。時代も宙域も自由自在に行き来出来る状況じゃないと、こんな収集は不可能だ。しかし、宙域を駈け巡れるようになったのはここ五百年くらいだし、時代に関しては、まだタイムマシンは実用化の段階じゃない。古代にはぼくたちの想像を遥かに超えた文明が存在したなんて戯言があるけど、それは本当なのかもしれないぞ。いや待て待て!ぼくはそんな事を考えるだけの知識も情報も無いじゃないか!何を気取って考えているんだ!ぼくが出来るのは、文献を読み解いて行く事だ。ひょっとしたら、その途中でこの謎を解く事が出来るかもしれない。でも待っ...ジェシルと赤いゲート21
右側の扉に穴が開く。何も起こらなかった。「ジャン、地下一階と同じく、な~んにも無かったわねぇ」ジェシルは意地悪さ全開でジャンセンに言う。「それとも、やっぱり熱線銃で仕掛けを破壊したのかしらぁ?」「……まあ、それは後々調べる事にするよ……」ジャンセンは言うと、軽く咳払いをする。「とにかく、部屋に入って見よう」ジャンセンは言うと、すっと脇へと移動した。ジェシルに先に入るようにと促しているのだ。ジェシルは苦笑しながら、ジャンセンが手にしている発光粘土を取り上げ、扉の穴から先へと進んだ。ジェシルの身に何も起こっていない事を確認したジャンセンは、そろそろと扉の穴から入って行く。その際、左側の扉をそっと押した。「うわぁ!」ジャンセンの悲鳴にジェシルが駈け付ける。発光粘土の灯りで、ジャンセンは扉の穴の所で座り込んでいる...ジェシルと赤いゲート20
楽しそうに熱線銃を撃ちまくるジェシルとは対照的に、ジャンセンは暗い顔をしている。「何よ?」ジェシルはそんなジャンセンの雰囲気を察して振り返る。「こんな仕掛け、他にもあるんでしょ?だったら、気にする事はないんじゃない?」「いや、そうなんだけどさ……」ジャンセンはため息をつく。「こうも楽しそうにあっさりと壊されて行く様を見せられるとさ、歴史的な蓄積ってのが、何だか薄っぺらくて馬鹿馬鹿しいものに見えてしまうんだよなぁ……」「あら、いいんじゃない?」ジェシルは微笑む。しかし、そこには底意地の悪さが潜んでいる。「これで、ジャンも現実をきちんと見る事が出来るようになったって事よ」ジャンセンは返事をしなかった。ジェシルは向き直り、天井を撃ち続ける。踊り場までたどり着いた。そこから階段は真後ろ向きになる。「何だか、味気な...ジェシルと赤いゲート19
背中の感触と同時に、ジェシルは前方へと跳躍し、燭台を握ったままの『ブラキオーレス』を床に投げ捨て、壁に向かって振り返って片膝を突いた時には、メルカトリーム熱線銃を手にし、銃口を壁に向け、いつでも撃ち出せる状態になっていた。ジャンセンは床にうつ伏せになって這いつくばっている。背中を押された驚きで腰が抜けてしまったようだ。頭だけ壁の方に向けている。壁に設えてある書棚の二面が両開きの扉のように室内に向かって開いていた。下へと向かう階段が見える。続く地下への入り口だ。「ジャン……」ジェシルは立ち上がると無様な格好のジャンセンを見て、小馬鹿にしたようにくすっと笑う。「あなた、まるでカンデーリャ星のベラートカゲみたいだわ。その首の捻り方なんか、そっくりだわ」「ふん!」ジャンセンは鼻を鳴らしながら立ち上がる。「ちょっと...ジェシルと赤いゲート18
ジェシルは顎でジャンセンに指示を出す。ジャンセンは壁に向かって両手を突き出す。壁と言っても、びっしりと書棚になっている。ジャンセンは書棚の棚の一部をつかんで、ジェシルが肩に飛び乗るのを待つ。「行くわよ」ジェシルが言う。しかし、ジャンセンの返事が無い。「ジャン……?」ジャンセンは伸ばしていた両腕を曲げて、顔を書棚に近づけた。何やらぶつぶつ言っている。「ジャンってば!」「え?」ジャンセンは怒鳴るジェシルに振り返る。その顔は大発見をしたと自慢していた子供の頃の顔だ。「ジェシル!この文献は凄いぞ!伝説と言われたクンザザ族の事が書かれている!クンザザってさ、異空間を行き来できる能力があるって言われていたんだ。誰もがそんなの作り話だって一蹴してたんだけどさ、ここにそのクンザザに関する文献が並んでいるんだ!これは大発見...ジェシルと赤いゲート17
ジェシルは周囲を見回す。四方の壁には棚が設えられている。「ねえ、ジャン……」ジェシルはジャンセンを見る。「ここよりさらに地下へは、どうやって行くの?」「どうやってって……」「だってさ、この部屋には扉は無いわよ?それに、さっき下りてきた階段はここまでしか無かったじゃない?」「確かにそうだったなぁ……」ジャンセンは腕組みをして考え込む。「どうなってんだろうな……」「ジャン、まさか、この先に行き方は分かっていないの?」「資料には、地下への下り方が載っていただけだから……」ジャンセンは腕組みしたままの姿でジェシルを見る。「下りて行けば階段があるものだって思うじゃないか」「何よ、それぇ……」ジェシルはむっとする。腕組みした姿が偉そうなのも気に食わない。「何よ!地下へ下りれば階段があると思ったって?ちゃんと調べたんじ...ジェシルと赤いゲート16
ジャンセンは床に羊皮紙を置いて、腕組みをすると、ぶつぶつ言いながら考え込んでしまった。ジェシルはまたうんざりする。……こうなると、ジャンって動かなくなっちゃうのよねぇ。いいわ、放っておいて戻っちゃおう。お腹も空いちゃったしさ。ジャンはお弁当を持ってきているみたいだし……ジェシルはそう決めると踵を返した。「おい、ジェシル!どこへ行くんだ?」ジャンセンが突然声をかけてきた。ジェシルは驚いて振り向く。「あら!随分と早いじゃない!」ジェシルは苦笑する。「ジャンってさ、考え事が始まると長くなるから、ランチにでもしようって思ったのよ」「何を呑気な事を言っているんだよ!」ジャンセンがむっとした顔をする。迫力の無さに、ジェシルは鼻で笑う。「いいかい、これは歴史的な大矛盾であり、何とか解決しなければならない問題なんだよ!」...ジェシルと赤いゲート15
部屋は真っ暗で、どこに何があるのかは全く分からない。「ジャン、灯りが必要だわ!」ジェシルの声がする。姿は見えない。「そんな事も言われなくちゃ気がつかないわけ?」「ああ、そうだね……」ジャンセンは答えながら、声のする方に向かって、思い切り舌を出して見せた。……ジェシルって、昔っからこうだよな。何でも仕切っちゃってさ!ぼくはそんなジェシルが大嫌いだあ!ジャンセンは心の底からそう思った。「ジャン!」ジェシルの鋭い声が響いた。「わたしに向かって、べえって舌を出しているんでしょ?そんな子供じみた事はやめてよね」ジャンセンは慌てって舌を引っ込めた。……どうして分かるんだ?真っ暗の中だぞ?「ふん!あなたのやる事なんか、ぜ~んぶお見通しなんだから!」ジェシルの勝ち誇った声がする。「子供の頃から、ちっとも変わらないわ。文句...ジェシルと赤いゲート14
ジャンセンの粘土照明のお蔭で、かなり遠くまで見る事が出来た。ジェシルはためらうことなく壁を熱線銃で撃つ。その度にジャンセンのかすかなうめき声が聞こえてくるのが、ジェシルには妙に楽しかった。やがて階段が終わり、平らな石を敷き詰めた踊り場のような場所に立った。ジャンセンは粘土を少しちぎってこねくり回すと床に抛った。発光し回りがより鮮明に見えてくる。正面には金属製の両開きで黒色の丈の高い扉があった。「……ここが地下一階の部屋への扉のようね」「その様だね……」ジャンセンは言うとジェシルの前に立ち、扉に触れようとする。「ジャン!」ジェシルは語気を強める。「階段であれだけの仕掛けがしてあったのよ!この扉だって怪しいものだわ!」「え?あ、そうか……」ジャンセンは慌てて手を引っ込めた。「危なかったよ。……でもさ、この扉の...ジェシルと赤いゲート13
「ジャン……」ジェシルはため息をつくと、きっとジャンセンを睨み付けた。「そんな冗談、面白くも何ともないわ。むしろ腹が立つわよ!」「何を怒っているんだ?」ジャンセンは不思議そうな顔をする。「そんな怒ってばっかりだと、美容に悪いんじゃなかったっけ?」「あなたが来るなんて話を聞くまでは、美容に問題はなかったわよ!」「じゃあ、ぼくのせいだって言うのかい?」「そうだって言っているじゃない!」「そうなんだ。そりゃあ、悪かった」ジャンセンはあっさりと謝罪した。ジェシルは拍子抜けする。しかし、すぐに昔を思い出した。ジャンセンは謝ればそれで終わりな所があった。「謝ったんだから良いじゃないか」と本気で思っているのだ。だから、この謝罪もそんなものだろうと、ジェシルは思った。「……で、この粘土なんだけどさ」「ほうら、思った通りだ...ジェシルと赤いゲート12
「怖いものはないって、どう言う意味だい?」ジャンセンは無意識に両手を上げながら訊く。その間もジェシルは不気味な笑みを浮かべている。「……まさか、本当にぼくを……」「ふふふ……冗談よ」ジェシルは銃口を天井に向けた。ジャンセンは大きくため息をついて手を下ろした。「これから地下に行くんでしょ?さっきみたいな罠があったらたまったもんじゃないわ」「まあ、確かにそうだけど……」ジャンセンは、はっとした顔をする。「でもさ、その銃で破壊しながら進もうって言うのかい?」「命は大切よ」「そうだけどさ、この仕掛けって過去の遺産なんだよねぇ……何百年経っているのかは調べてみないと分からないけど、それが起動したんだ。凄いとは思わないか?」「凄いって……」ジェシルは呆れる。「あなた、命が危険に晒されたのよ?分かっているの?」「分かっ...ジェシルと赤いゲート11
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