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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

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  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 23

    「ねえ、春美先生……」さとみが声をかける。春美はさとみを見るが、また駈け出そうとするまさきときりとを押さえつけていて大変そうだ。「竜二、子供たちをお願いできる?」さとみが笑みを浮かべて竜二に言う。だが、それは取りあえずの愛想笑いだ。「春美先生とお話があるから……」「え?さとみちゃんがオレに笑いかけてくれた……」竜二の涙腺が崩壊しかかる。「いつも怒ってばかりだったさとみちゃんが……」「ほらほら、しっかりしてよ」虎之助が竜二の背中をさする。「さっきみたいに泣いていたら、さとみちゃんの御用が果たせないでしょ?」「うん……」竜二は涙を拭いながら言うと、うなずく。……なんだか竜二って大きな子供ねぇ。だからあのボクちゃんたちと相性が良いのかも。さとみは、竜二の生い立ちに同情した自分が馬鹿馬鹿しくなってしまった。結局は、竜二...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 22

    みきはまさきときりとを連れてさとみの前に立つ。まさきもきりとも、竜二に叱られた時よりも大人しくなって、みきの隣に並んでいる。「さあ、なんでもきいて」ミキは大人びた口調でさとみに言う。「このふたりって、ようちえんでもいたずらっこたちだったのよ」「そうなんだ……」さとみは言うとしゃがみ込み、子供たちと同じ目線になる。「でも、みきちゃん、わたしが話が聞きたいって、良く分かったわねぇ」「だって、ポコおねえちゃん、はるみせんせいになんかきいていて、はるみせんせいがくびをよこにふっていたから、こんどはこっちにきくのかなって」「凄い観察眼ねぇ……」さとみは感心する。「なんだか、名探偵みたいだわ」「わたし、テレビアニメで『名探偵エラリー』みているもん」みきが胸を張る。「わたしのうまれるずっとまえからやっているんだって、ママがい...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 21

    「あら、あなた……」さとみが言う。「たしか、わたしの部屋で……」「はい、そうです」その霊体は答える。「何とかここを抜け出して、彷徨っているうちに、強い力を感じたので、お邪魔したんです……」「でも、話は出来なかったわね……」「ここに連れ戻されたので……」「……どう言う事?」そこに虎之助が割り込んできた。「あなたのその格好って、保母さんみたいだけど?」「はい、そうです。わたし、春美と言います」その霊体が言う。「この子たちの通っていた幼稚園に勤務していました。帰宅途中でバスが事故に遭って……」「あら、お気の毒様な事……」虎之助が言う。「何処で事故に遭ったの?」「駅前の道路をバスが走っている時でした。猛スピードで逆走してきた乗用車があって、バスの運転手の田中さんがあわててハンドルを右に切って、そうしたら、バスの左側に居...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 20

    「竜二ちゃん!」虎之助が瞳をきらきらさせて竜二に後ろから抱きついた。竜二は思わず抱えていた子供たちを落としそうになった。子供たちは悲鳴を上げて竜二に強く抱きつく。竜二も子供たちをしっかり抱える。「おいおい、危ないじゃないかよう!」竜二は困った顔で言う。「それに、そんなに強く抱きつかれたら、あばら骨が折れちまいそうだ」「良いのよ!良いの……」虎之助の力がさらに強くなる。「あああ、わたし幸せ……」「あばら骨折るのが良いわけないだろうよ」背中に虎之助の頬擦りを感じながら竜二が言う。「それに、子供たちの前だぜ、ちょっと離れろよ」「な~にを照れてんのよう!」虎之助は離さない。「もう、好き好き、大好き!」「分かった、分かったよう」竜二は面倒くさそうに言う。それからからだを屈めて子供たちを下ろした。まさきもきりとも竜二の前か...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 19

    まさきときりとが、また歓声を上げた。さとみが振り返ると、薙刀を持った冨美代が立っていた。男の子たちは、新たに現われた冨美代の周りを回っている。「きものだ!それに、へんなかたな!」「わあい、くつはいてるぞ!きものなのに!」明治のハイカラ娘のスタイルは、子供たちには滑稽なものに映ったようだ。「ええい、お黙りなさい!」冨美代は騒ぐ子供たちを叱る。「どう言う躾をされたのですか!これでは野猿と変わりませんわ!」「さるだって!」まさきは言うと、鼻の下を伸ばし、下顎を前に突き出して、猿のような顔をし、猿のような声を出した。「きっきっきいぃぃ~!」「わあ、おもしろそう!」きりともまさきの真似をした。「きっきっきいぃぃ~!」「黙らっしゃい!」冨美代は言うと、薙刀の切っ先を男の子たちに向けた。「大人をからかうような子供は万死に値し...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 18

    「あっ、嬢様……」「さとみ殿……」呼びかける豆蔵とみつの間を通り抜けて、さとみは、みつと豆蔵に近づいているにやにやしている男の子たちの前に立った。「こらあ!」さとみは腰に手を当て、からだを前屈みにし、頬をぷっと膨らませて怒った顔をしながら、男の子たちを叱った。男の子たちは足を止め、驚いた顔をしてさとみを見上げた。しかし、突然笑い出した。「きゃはははは!おねえちゃん、ちっともこわくないよう!」「わはははは!おねえちゃん、ポコちゃんみたいだ!」男の子たちの笑いは止まらない。さとみはさらに頬を膨らませる。「君たち!見えていないと思っていたようだけど、もう丸見えだからね!」さとみが勝ち誇ったように言う。「もう、いたずらは出来ないわよ!」「いたずらなんかしてないよう!なあ、まさき?」「そうだよ、いたずらじゃなくってマジだ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 17

    松原先生が体育館の扉を開ける。重いドアは壁に沿って開いて行く。扉下部の滑車が軽く軋む。朱音は用意していた懐中電灯を、しのぶはデジカメを、自分のポシェットから取り出す。松原先生は壁にある電灯のスイッチに手を伸ばす。「あ、ちょっと待って、そのままで」さとみが言う。皆の動きが止まる。さとみはじっと体育館を見ている。気配はある。だが、やはり姿は見えない。百合恵は豆蔵たちとひそひそと話をしている。豆蔵がうなずき、みつと共に体育館に踏み込んだ。二人も気配を察しているようで、豆蔵は十手を帯から抜き取り、みつは鯉口を切る。「どう、さとみちゃん?」百合恵がさとみの横の並んで言う。「見えるかしら?」「……いえ、見えません」さとみは不安そうな表情で百合恵を見上げる。「百合恵さんは、見えていますか?」「わたしも見えない……でも、気配は...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪17

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 16

    百合恵の車が見えた。その脇に人が立っている。街灯から少し外れているので人影としてしか見えないが、すらっとしたシルエットだ。こちらに気がつくと頭を下げ、駈け寄ろうとして足を止めた。「アイちゃん、さとみちゃんには話してあるから、恥ずかしがらなくて良いわよ」やはり、アイなんだ。さとみは思った。アイは躊躇していたが、開き直ったのか、駈け寄って来た。オーバーオールに袖を肩まで捲り上げた黒のTシャツに、オーバーオールと同じデニム生地のキャスケット帽をやや斜めにして被っている。恥かしいのか、さとみと目を合わそうとしない。「アイ、似合っているじゃない」さとみは素直に思ったままを言った。アイは百合恵に負けないほどスタイルが良い。「その帽子、良い感じよ」「ありがとうございますぅぅぅ!」アイはいつも以上に大きな声で礼を言い、直角に上...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪16

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 15

    「さとみ、百合恵さんがお迎えに来てくれたわよ」夜に百合恵が迎えに来ることを聞いていた母親が部屋のドアを開けて言う。さとみはイチゴ柄の下着姿のまま、ベッドに座り込んで、床に並べた数種類の服を見下ろして難しい顔をしていた。母親の突然の乱入で、きゃあきゃあ言いながら慌ててタオルケットで身を覆う。真っ赤な顔で母親を睨む。「開けて良いかどうか聞いてって、いっつも言ってるじゃないのよう!」「出掛ける時間分かってんのに、何で裸でいるのよ?」「着替えをしていたんじゃない!そんな事も分かんないの!」「いつものポコちゃんで良いじゃない」「だって……」「百合恵さんもポコちゃんだったわよ」「……え?」「あんたに合わせたって言っていたけど……」母親がブランケットにくるまれているさとみを見て、小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。「当の本人が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪15

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 14

    「会長!」二時間目が終わった後の休憩時間だった。この休憩時間は他の時間よりも少し長い。教室の外の廊下に、行き交う生徒に混じって朱音としのぶが立っていた。昨夜、百合恵が帰り際に「明日、ちょっとあるかもしれないから、良く寝ておくのよ」と言っていたのを思い出したさとみだった。「どうしたの、まだお昼じゃないのに。何かあったの?」廊下に出たさとみは二人に訊く。二人は大きくうなずく。「あの、ちょっと、お耳を……」朱音は言うと、さとみの耳を指差す。内緒の話があるようだ。さとみは耳を寄せる。「松原先生からの伝言です。今夜、体育館に行きます。十時に校門集合です。特別顧問の百合恵さんも来ます……」「え?」さとみは驚いて耳を離し、朱音の顔を見る。「大丈夫なの?」「話では、昨日の夜、松原先生に百合恵さんから電話があって決まったそうです...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪14

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 13

    ジーンズの前部に挟まれた長方形に折られた青い布が半分ほど覗いて、滑らかで白い肌とコントラストを作っていた。布はお札ほどの大きさのものを丁寧に包んでいる。「……百合恵さん、それは?」驚いたさとみは布と百合恵の顔とを交互に見る。「まさか、お金を払って、なんて……」「ほほほ、面白い事を言うわねぇ」百合恵は笑いながら、布を引き出した。布は力無く、だらりと曲がる。「これはお金じゃないわ。それに、こんな薄っぺらじゃ、札束とも言えないじゃない?」「じゃあ、何なんですか?」「これはね……」百合恵はさとみに布を手渡す。さとみは怪訝な顔をしながらも受け取る。百合恵の肌の温かさが残っていた。「護符……まあ、お札ね」「お札……?」「わたしのお店のお客さんでね、亡くなったおじい様の遺品を整理していて見つけたそうなの。相当古いもののようだ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪13

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 12

    「……あら、冨美代さん、何しに来たの?」虎之助がわざとらしく言う。「別に、あなたには関わりがございませんでしょ?」冨美代は虎之助を睨む。どうやら、虎之助は、みつから冨美代へとライバル心を持ち替えたようだ。そして、冨美代もそれを受けて立っているようだ。「わたし、てっきり、愛しい愛しい嵩彦様を追いかけて行っていると思っていたわ」虎之助が言う。明らかに言い方に棘がある。「それとも、ここに愛しい愛しい嵩彦様がいらっしゃるのかしらぁ?」「教養の足りない方は、愛と言えばすぐにからだの結びつきばかりを考えますのね」冨美代が小馬鹿にしたように言う。「わたくしと嵩彦様は、あなたのようにべたべたとした破廉恥な関係ではございませんの」「あらそうなの?それはそれは、ふふふ……」虎之助は笑う。「愛の表現なんて多様にあるのよ。あなたのよう...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪12

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 11

    「さとみ様!聞いてくださいまし!」現われた冨美代はむっとした顔のままさとみに迫る。「は、はい……」さとみは冨美代の迫力に押される。「嵩彦様のは、もう、ほとほと愛想が尽きました!」「……結婚をしたんじゃなかったっけ?」「ええ、致しました」冨美代はさらに機嫌の悪い顔になる。「それが間違いだったようでございます!」「そんなぁ……」「情にほだされたのでございますわ。わたくしが浅はかでございました」「……何があったの?」「結婚すると何をするかご存知ですか?」冨美代はじっとさとみを見つめながら言う。「さとみ様ならご存知ですよね?」「え……?」「本当、あそこまで合わないとは思いませんでしたわ」「……性格の不一致……?」「左様ですわ!」さとみは困った顔を豆蔵とみつとに向ける。豆蔵はにやけながらぽりぽりと頭を掻き、みつはやや赤ら...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪11

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 10

    「豆蔵が来れない理由、知りたい?」「はい……」「じゃあ、座って」百合恵に促され、さとみとベッドに座る。その隣に百合恵が座る。ほんのりと甘い香りが漂う。……百合恵さんの香りだわ。さとみは思う。「さてっと……」百合恵はさとみに笑みを向ける。「実はね、豆蔵に限らず、みんなが顔を出さないのは、竜二が原因なのよ」「え?竜二……?」「そうなのよねぇ……」百合恵は言うと、大きなため息をついた。「ほら、女子トイレの出来事で、虎之助が流人と共に居なくなったじゃない?あれなのよ……」「……良く分からないですけど……」「あの時、わたし、きっと竜二は泣くわよ、とか言っていたじゃない?」「そう言えば……でも、竜二もイヤがっていたから、問題ないんじゃ……?」「大有りだったのよ」百合恵はもう一度大きなため息をついた。「竜二、やっぱり、虎之助...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪10

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 9

    泣くだけ泣くと、涙は涸れる。わあわあ泣いていたさとみも、終いにはすんすんと鼻を鳴らすだけになっていた。それでも、百合恵の胸から顔を上げない。百合恵は幼子をあやすかのように、ずっとさとみの背中を優しく叩いている。「……百合恵さん……」さとみは顔を伏せたままで言う。泣き続けたせいか、声が嗄れている。「わたし……」百合恵は何も言わず、さとみの背を叩いている。しばらくして、さとみを顔を上げた。乾いてしまった涙の跡が両頬に残っている。百合恵を見上げる両の目は悲しみ色になっている。半開きの唇が震えている。すんすん鼻を鳴らしながら、それに合わせてからだがぴくんぴくんと動く。そんなさとみを見ながら、百合恵は優しく微笑んでいる。「うん?」百合恵が優しく問う。さとみは顔を伏せる。「わたし……」さとみがつぶやくように言う。「わたし、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪9

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 8

    それ以降は何も起こらなかった。しばらく見ていたのだが、何も無かった。時間も時間なので、皆は帰宅した。さとみはイチゴ模様のスエット上下に着替えて食卓に着く。いつもは元気にご飯をお替りするさとみだったが、その日の夕食は一膳だけだった。母親がさとみのおでこに手を当てて熱が無いかを確認した。「……熱は無いわね」母親はぴしゃぴしゃとさとみのおでこを叩きながら言う。「帰り遅かったけど、何か食べたりしたの?」「いや、してない……」さとみはつぶやくように答える。「深刻な問題があるのよう……」「深刻な問題ねぇ……」母親はさとみの顔を覗きこむ。いつになく真剣な眼差しの母親だった。「……まさか、さとみ……」「え?」さとみは母親の真剣な表情に思わず緊張する。「な、何よう……」「あんた」母親はごくりと喉を鳴らす。「彼氏君にふられたんじゃ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪8

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 7

    しばらく数学準備室でだらだらと時を過ごし、程よい時間となったので、松原先生を先頭に、さとみたちは体育館に来た。千賀子が言っていたように、女子バスケ部の一年生たちが部活の後片付けをしている。練習が厳しかったのか、疲れた表情で黙々と作業に当たっている。「顧問の正田先生、厳しいからなぁ……」松原先生がつぶやく。「本人も女子バスケで大活躍したから、気合の入れ方が違うんだよなぁ」「それって、やり過ぎじゃないですか?」しのぶが怒ったように言う。「学校の部活なんですよね?確か、学習指導要領では『教職員の指導の下に、主に放課後などにおいて自発的・自主的に活動するもの』って定義されていたと思います。みんなへとへとになりたくて部活しているとは思えないんですけど」「まあ、そう言うな、栗田」松原先生は苦笑する。「運動部に関しては『自発...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪7

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 6

    楽しい事に費やす時間は全然足りないと思うのに、イヤな事に費やす時間は一向に進まない。朱音とさとみは、数学準備室の休憩用の古びた二人掛けのソファに並んで座って、前に置かれた古びたテーブルで問題集を広げ、もらった紙に色々と書き込んでは、頻繁に壁掛け時計を見上げながら、ため息をついている。体育館の部活が終わるまで、まだ時間があった。しのぶは松原先生と何だか数学の難しい話をしているようだ。「……会長……」朱音が隣のさとみに小声で話しかける。「まだまだ時間がありますねぇ……」「そうねぇ……」さとみはため息をつく。「松原先生、良い先生だとは思うけど、数学の先生じゃあねぇ……」「会長、今何問目を解いているんですか?」「ふふふ……」さとみは力なく笑う。「まだ、三問目よ……」「凄いじゃないですかぁ」朱音が羨ましそうに言う。「わた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪6

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 5

    「う~ん、そうかぁ……」数学準備室にしのぶと朱音、さとみがいる。三人を前に、自分の椅子をきいきいと軋らせている松原先生は、ぽりぽりと頭を掻いてる。千賀子の話を聞いて、放課後に「百合恵会」の顧問である松原先生を数学準備室に訪ねた三人だった。麗子は用事があると言ってアイを強引に連れて帰ってしまった。さとみは「用事があるんなら仕方がないわね」と言いつつも、心の中で「弱虫麗子」と馬鹿にした。数学準備室は他の先生方は居なかった。「で、どうでしょうか?今夜とか?」勢い込んで話すのはしのぶだ。「駈け回る体育館なんて、凄くないですか?」「まあ、凄いねぇ……」「それに、ちかがかわいそうです」朱音も掩護する。「あの子、本当にバスケが好きなんです。それなのに、部活に参加できないなんて……体育の授業でも、体育館の時はおどおどそわそわっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪5

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 4

    「……と言う事があったんです……」千賀子は話し終えると顔を青くさせている。「それで、タオルはどうなったの?」さとみが訊く。「近づくと、また浮き上がったりとか……?」「やめてよ!」そう言ったのは麗子だ。話をしていた千賀子以上に顔が青い。「アイ、話は終わったようだから、屋上に行こう!」麗子は強引にアイの腕を引っ張る。アイは困惑した顔をさとみに向ける。さとみはうなずいてみせる。アイは一礼して、麗子に引っ張られて行った。「……麗子先輩、どうしちゃったのかしら?」朱音が急ぎ足で去って行く麗子の後ろ姿を見てつぶやく。「……まさか、怖がり、だったりして……」「そんな事無いわよ」しのぶが言う。「だって、会長と幼馴染って言ってたじゃない?それに、あのアイ先輩と仲良しなのよ?そんな人に怖い物なんかないわよ」「そうか、そうだよね……...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪4

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 3

    タオルの置き忘れた場所の見当はついている。一緒に行くと言ってくれた友人の真奈美には「大丈夫よ」と言って、先に帰ってもらった。いくら同性でも、汗まみれタオルは見られたくない。それに、内緒にしている事だが、千賀子は結構汗っかきだった。それが分かるのも恥ずかしい。帰り支度を終え(とは言っても、部活のジャージ姿に、大きめのスポーツバッグを肩にかけた、いかにも運動部と言った姿ではあったが)、千賀子は体育館に向かった。体育館の一番高い天井部分に、ぼんやりした薄緑色の水銀灯が三つ、常夜灯として間隔を置いて並んでいる。いつの間にか外も薄暗くなっている。普段はこんな様子の体育館を見た事が無かったが、なんだか薄気味が悪い。「さあ、とっととタオルを回収、回収!」千賀子はわざと明るい声を出して、自分に言う。タオルは思った通り、壁の傍の...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪3

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 2

    「わたし、バスケ部なんですけど……」千賀子が話し始める。一年生は練習の後、用具の片付けがある。この学校のバスケ部は、特に女子は強いので人気がある。なので、新入部員が多い。一年生だけで充分に片付けが出来る。「わたし、体育館のモップ掛け担当なんですけど……」何人かで床のモップ掛けを行なっている。「その体育館で……」千賀子はそこまで言うと口をつぐんでしまった。「何だよ、いきなり黙っちゃ、分かんねぇじゃねぇかよう!」アイがいらいらした声を出す。「わざわざ会長が訊いてくださっているんだぞ!」「わっ!」千賀子が悲鳴を上げる。「すみません!」「ダメよ、アイ。そんな言い方しちゃ」さとみがぷっと頬を膨らませる。「ちかちゃん、怖がっているじゃないの」「すみませんでしたぁ!」アイがさとみに上半身を直角に曲げて頭を下げる。「でも、黙っ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪2

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第五章 駈け回る体育館の怪 1

    「ねえ、かねぇ、のぶぅ……」学校の昼休み、いつものようにさとみ会長の居るクラスへ向かおうとする朱音としのぶは、クラスメイトの田所千賀子に呼び止められた。「なあに?ちか?」朱音が振り返る。「急ぎ?そうじゃなかったら後にして欲しいんだけど」「集合に遅れると、アイ先輩が怒るのよ」しのぶもうなずきながら言う。「そのくせ、ちょくちょくアイ先輩は遅れるんだけどね」「……じゃあ、後で良いわ」千賀子がため息をつく。「でも、気になっちゃって……」「そう言われちゃうと、気になるなぁ」朱音がしのぶを見る。「……どうする?」「何についての話なの?」しのぶが千賀子に訊く。「それによっては優先順位が変わるわ」「うん……」千賀子はそう言うと黙ってしまった。しのぶは千賀子の次の言葉を待っているが、朱音は明らかにそわそわしている。アイの怒った顔...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪1

  • 荒木田みつ殺法帳 9

    「もう良かろう……」低い声が言う。「一斉に攻めて肌を晒しものにしてやるが良い」「承知!」四人の女は一斉に言うと、各々の得物を構えた。みつは前を押さえたまましゃがみ込む。「ははは!無駄だ!我らは肌を傷つけずに着ている物だけをずたずたに裂くことが出来る!ご自慢の胸当ても床に落ちてしまうだろうさ!」ゆめが嘲笑う。「せいぜい恥辱に塗れるが良い!」四方から得物が飛び交う。みつは頭を低くしたまま動かない。幾度も女たちの得物が交錯する。その度にみつの着物の背が裂かれ、散り散りになった布切れが舞う。「ほうら、巻いた晒も裂けるぞ!」「ほほほ!女侍などこの程度のものよ!」「恥ずかしいか?ならば舌でも噛み切れ!」「刀が無ければただの女さ!」女たちは口々にみつを嘲りながら得物を繰り出している。着物の背が割れ、晒も裂かれた。女たちの手が...荒木田みつ殺法帳9

  • 荒木田みつ殺法帳 8

    一人、道場に座るみつだった。父の三衛門が出掛けて、しんとなった家にみつ一人だった。父の心は分かっている。余計な者がいては存分に腕が揮えないと察したからだ。事実、父が出掛ける際に「存分にな」と言葉を残した。みつは「心得ております」と返した。「はたして、どのような技の輩がいるのやら……」みつはつぶやく。知らずに笑みが浮かぶ。強敵を前にしての武者震いのようなものだった。昼天を過ぎた陽が射し込んでいる。降った雨を蒸し上げている。気の早い蝉が短く鳴いた。昼下がりののどかな一時に見える。しかし、みつは複数の気配を感じていた。「来るか……」みつは立ち上がる。大小の刀を左腰に落とす。用意は出来た。「……ふっ、さすが、噂に聞く女侍、荒木田みつよの……」低い声が道場に響く。姿は見えない。どこからの声かも分からない。しかし、みつは動...荒木田みつ殺法帳8

  • 荒木田みつ殺法帳 7

    「なっ……!」驚愕の声を上げた女は、素早くみつから離れた。切っ先の折れた懐剣を手にし、呆然とした表情で立っている。折れ飛んだ切っ先は床板に突き刺さっている。「何も驚く事はない」みつは言うと、木刀を持たぬ左手で己が胸元を広げて見せた。腹から胸へときっちりと晒が幾重にも巻かれている。「今日は出稽古だった。そのような時には得に晒をきつく巻く。どうも胸が揺れて落ち着かんのでな。それでもまだ胸元は女の弱点。なので、腹から胸へと特に誂えた鉄の板を着けているのだ」みつは言うと、木刀で胸元を叩いて見せた。こんこんと金属を打つ音がする。女はがくりとその場に膝を突く。完敗を認めたのだ。「お前、名は?」みつが木刀の切っ先を女に向けて訊く。女は顔をそむける。「わたしは負けを認めた者に追い打ちを掛けるような事はしない。ただ、名を知りたい...荒木田みつ殺法帳7

  • 荒木田みつ殺法帳 6

    三衛門がみおを連れ、さらに面倒くさがるおためを従えて、篠田の屋敷へと出掛けた。家が襲われた際、おためを巻き込まないための配慮だ。皆が出掛け、一人となったみつは、手拭いを使って庭に落ちた鉄の棒を拾い上げる。「……毒は無しだな」みつはつぶやく。「と言う事は、これを撃ち込んで命を狙うと言う事か……変わった技を使うな。裏の世界とか言うヤツか……」裏の世界では、斯様な特殊と言うべき得物や技を持っての暗殺を生業とする者たちがいると言う。仕える主を定めず、金に応じて動く、そう言う輩だと聞く。みつの口元がほころぶ。ぞっとするほどの美しい笑みだ。しかし、この笑みは未知の敵に対しての溢れかえるまでの闘争心がさせていた。みつは道場に移り、壁に掛けてある木刀を一本手にする。軽く一振りするが、風切音が鋭い。それから素振りを始めた。「……...荒木田みつ殺法帳6

  • 荒木田みつ殺法帳 5

    涼やかな淡い藍色の絣を着て、正座した腿の上に盆を乗せたみおは、湯呑を口へと運ぶ三衛門とみつを、嬉しそうな顔で見ている。みつがおため婆さんに話をすると、たちどころにこの絣の着物を用意してきた。後はこちらでと言うおため婆さんにみおを預けて、みつは父三衛門の部屋へと戻って来た。しばらくして斯様に着替えたみおが茶を淹れた湯呑を持って来たのだった。「これはみおさんが淹れてくれたお茶かい?」三衛門が訊く。みおはうなずく。「そうかい。いつもと味が違っているんでね。いや、美味いよ。いつもと同じ茶葉とは思えんな」「父上、お茶に感心しておらず、早々にお支度をなされませ」みつは言うと湯呑を口へと運ぶ。その仕草にみおが熱っぽい眼差しを注ぐ。「みお殿も斯様に着替えておりまするぞ」「分かっておるわ!茶くらいゆっくりと呑ませろ」「その詰まら...荒木田みつ殺法帳5

  • 荒木田みつ殺法帳 4

    篠田頼母は三衛門とは囲碁仲間だった。今は隠居した身だが、かつては幕閣に居た者で、未だにその力は及んでいる。「だがの、みつ」三衛門が諭すように言う。「篠田様とはそのようなしがらみを抜きにした間柄じゃ。そのような話をいたせば、たちどころに嫌われ、二度とお邪魔は出来なくなるであろうな」「しかし、此度はそんな事を言ってはおられません」みつは厳しい表情をする。「白昼堂々と町の娘を拉致する藩があるのです。さっさと見つかって潰れればよろしいのです。それに同じ女として許せません」「相変わらず、口さがないのう、お前は……」三衛門は呆れる。「それはともかく、みおさんをどうしたものかのう。長屋に帰すわけにもいくまいて」「それならば……」みおがおずおずと言う。「こちらに置いては頂けませんでしょうか?お家の事は何でも致します故……」「そ...荒木田みつ殺法帳4

  • 荒木田みつ殺法帳 3

    「わたくし、みおと申します……」娘、みおは語り出した。京橋の大店に奉公していた下働きの女中に若旦那が手を付けて産まれたのが、このみおだった。身籠ったと知れると、怖気づいた若旦那によって、わずかな金を握らされて追い出された。「何と言う身勝手な男だ!」みつが腹を立てる。「今からその店に行って天誅を加えてやろう!」「いいえ、それには及びません」みおが笑む。「若旦那に代替わりして、あっと言う間に店を畳む事になりましたので……元々が商才の無い人だったようです。今頃どこでどうしているのやら」「自業自得だな」みつはうなずく。そして、三衛門に向き直る。「父上、お分かりでございましょう。悪を為す者は悪を刈り取るのです。このみおを襲った者たちも、その咎を刈り取るのです」「それを言うなら、お前の峰討ちも刈り取らねばなるまいて……」「...荒木田みつ殺法帳3

  • 荒木田みつ殺法帳 2

    「……と言う訳でございます」朝、出稽古の帰りに遭遇した一件を、父、自身も剣術道場を営む荒木田三衛門に話すみつは、両拳を畳に付き、頭を軽く下げている。その傍らには先程の娘が座って、深々と頭を下げている。みつの雨に濡れた着物はすでに生乾きとなり、娘の跳ね上げた泥は乾いて白くなっていた。「全く、お前と言う娘は……」三衛門はため息をつく。「で、相手はどこの藩の者だ?」「さあ……?」起き上がったみつは腕組みをする。「向こうが名乗らなかったので訊いておりません」「お前は名乗ったのか?」「それは当然でございます、父上」みつは平然と答える。「何も隠す事など致しておりませぬ故」「何と言う……」三衛門はぴしゃりと己が額を叩く。「それでは、相手がこちらへと来るではないか!そこの娘を取り返そうとして!」言われた娘は全身をびくっとさせて...荒木田みつ殺法帳2

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