**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 10.エリクの痕跡(2)
**************** 深い眠りの中で、シャルンは目覚めた。 頭上に幾本も青い筋が入った美しい岩が円蓋を作っている。周囲の円弧には黒い人影が灯りを掲げて立ち並ぶ。足元は青く輝く透明な円
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 10.エリクの痕跡(1)
**************** ルシュカの谷から戻る馬車はバラディオスが用立てた。 4人乗れる馬車を用意し、十数人の人手を連れて乗り込んできたバラディオスに、レダンは『祈りの館』の片付けと管理を
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 9.龍神祭り(5)
**************** 「シャルン、何してる、こっちへ!」「駄目です、陛下」 震える声を絞り出す。「ここに……龍神が………居ます」「は?」「どこに居るってんですか姫様、そんなものどこにも」 ぞ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 9.龍神祭り(4)
**************** 陛下はやはりリュハヤ様の方を美しいとご覧になっているのかしら。 さすがにちょっと不安になってレダンを見上げると、相手は厳しい顔でリュハヤを見つめている。いや、正
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 9.龍神祭り(3)
**************** ドン、ドン、ドォオン。『祈りの館』の中央に引き出された大きな木板を、男達が力強く木槌で打ち鳴らす。「これより、龍神祭りを執り行う!」 真っ白の衣をつけ、頭に白い
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 9.龍神祭り(2)
**************** 「いよいよ明日ですね」 ベッドの側に腰を下ろしたガストが呟く。「明日だな」 ベッドに寝転びながら、レダンは強い視線を天蓋へ向ける。「『祈りの館』の中央祭壇から地下
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 9.龍神祭り(1)
**************** 「…」 その夜、シャルンはリュハヤに借りた針の手をふと止めた。「姫様? お疲れでしょう、もう残りは私が」 同じように針を動かしていたルッカが気づいて労ってくれる。「
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 8.竃のダイシャ(4)
**************** 「…ガスト」 ぼそりとレダンが唸った。「………いや、止めた方が」「まだ何も言ってねえぞ」「続くことばが予想できるからですよ、短い付き合いじゃないですし」「なら、話が早
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 8.竃のダイシャ(3)
**************** ようやく少し落ち着いたレダンは、それでもシャルンを側に、昨日の話を聞き取った。「小屋に行く前に細い小道が湖に降りていましてね」 ガストが考え考え続ける。「周囲に
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 8.竃のダイシャ(2)
**************** 「どういうことですか!」 レダンの部屋に入ると、ルッカはいきなり大声で詰った。「何をなさってるんですか!」「ああ、すまん、けれど俺も我慢の限界でな」「にしても一応
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 8.竃のダイシャ(1)
**************** 翌日の昼過ぎ、シャルンの部屋の扉を小さく叩く音がした。「はい」 腰を浮かしかけたシャルンを制して、ルッカが扉へ近づく。「…シャルン様はおいでかしら」 生き生きと楽
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 7.花石(5)
**************** ダイシャが案内してくれたのは、幾つもあった鍵のかかった扉の1つだった。「こちらへどうぞ」 腰から下げていた鍵を使って扉を開ける。「まあ…」「足元が危ういので…お気を
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 7.花石(4)
**************** 「……陛下はどうして倒れられたのでしょう」 呟くように尋ねてみる。「…御公務のお疲れでしょう」 リュハヤはさらりと答えた。「王たる務めを理解している者がお仕えしてこ
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**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ