東京・猿楽町にある和食器屋[代官山 暮らす。]店主の、日々思うこと、和食器や雑貨のお話を少々。
昨日の記事 では、福井の作り手・土本訓寛さんが制作する焼締の器の話をしましたが、今日は、象嵌の器について。訓寛さんが成型を担当し、そのあと久美子さんが加飾して完成する器たちの話です。 ずっと前の記事 で、ふたりで作る象嵌の徳利とぐい呑みの画像を紹介していますので、そちらもあわせてご参照ください。無釉の焼締には、越前の伝統を感じさせる原初的な力が宿っていますが、象嵌(三島手)には、大陸から渡ってきた技巧の妙とエキゾチックな魅力を感じることができます。 前回の訪問では、その作業を拝見することはできませんでしたが、今回はちょうどタイミングよく見学させてもらうことができました。 素地に紋様を彫り、そこ…
昨日の記事 の続き。土本さん夫妻の作品というと、かわいらしい絵柄の象嵌作品が思い浮かびますが、夫・訓寛さんは、個人作家として焼締の器を制作。地元で掘られた土を成型し、穴窯で焼成する、というシンプルなスタイルでの作陶を続けています。 福井県越前町で育まれてきた越前焼の原点は、まさに高温で焼き締める無釉の器であり、それはやきものの原初的な姿だと言っても過言ではありません。いっときは衰退もしたようですが、今こうやって古陶の流れを受け継ごうとする作り手がいるのは、心強いことではないでしょうか。 ただ、ここで大事なのは、やきものは時代とともに更新されていかないと、やがて過去の遺物になってしまうということ…
二年ぶりの北陸出張。新幹線の終着駅・金沢から在来線で南下し、旧知の九谷焼の作家・川合孝知さんの工房(石川県能美市)に立ち寄り、さらに次の目的地・福井県越前町へ。 ここ数年、とてもお世話になっている土本訓寛さん・久美子さん夫妻の工房を訪ねてきました。 建物の内外の至るところに、越前ならではの野趣あふれる焼締の器が無造作に置かれているので、土本さんに失礼かとは思いつつ、時間が経つのも忘れてひとつひとつの作品を手に取って長居してしまいました。中世から続く窯業地・日本六古窯のひとつに数えられる越前焼の里はとても長閑で、独特の時間が流れています。古くから人が生活を営んだ場所にはたぶん、その営みの残像のよ…
先週発生した九州豪雨災害では、福岡県と大分県の境のあたりが、大きな被害を被っています。あの周辺は民藝的な窯業の集積地で、小石原(福岡県東峰村)と小鹿田皿山(大分県日田市)があります。 どちらも、今年4月中旬に出張で訪れた地域。小鹿田は視察だけでしたが、小石原は以前からお付き合いのある窯元が二軒あり、秋の展示の打ち合わせと器の発注をしてきました。標高が高い地域なので、九州と言っても桜の開花は遅く、4月の中旬は、桜とともに菜の花をはじめとした春の花々が一斉に咲き乱れる時期。 確かに交通の便はよくない地域なのだけれど、その分美しい山や川がそのまま残っていて、本当に桃源郷のような美しさでした。 災害発…
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