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2005/05/05

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  • 白い紙

      僕の部屋にある白い紙を、父が取りに来る。使わせてもらえないか、と訊く。僕はだめだと答える。この紙にはカップ麺の絵を描くのだ。  カップラーメンなら商店街に売ってるよ、と母の声が言う。買いに行けばいいじゃない。    お前、絵なんて全然描いてないじゃないか。父は言う。  夏休みになったら描くんだよ。そもそも紙を何に使うの?  いや、熱湯を注いで3分待とうと思ってな。  ...

  • エース

      タクシーの料金は、5万円だった。地球の裏側まで乗っても、定額、5万円なのだ。階段の下で、そのタクシーは待っていた。君と僕は、乗り込んだ。  5万円だけ払って、行き先は、告げなかった。  道に、「エース」が倒れていた。黒い、スペードのエースだ。手に、携帯電話を握っている。僕たちは、代わりばんこに電話をかけた。ハワユー・エース。  誰に、捨てられたんだい?  動物園を、ゆっくりと...

  • 船団

      洗濯物を止めていた洗濯バサミを任務から解放すると、それは次々と宇宙に帰った。  それは宇宙船だったのだ。  V字型の小さな宇宙船は空に舞い上がって、渡り鳥のように船団を組んだ。  次の洗濯は3日後だ。僕は空にテレパシーで指令を送る。   ...

  • サクラ

      影が、コンサートのチケットを買いにきた。影は、誰に雇われたサクラなのか。前売をほしいと言うのだが、影にそんなものは売れない。  当日券で充分ですよ、どうせガラガラですよ‥‥  影は、僕の影だ。それは、僕のコンサートだ。影は、肩を落として帰っていく。   ...

  • カップラーメン

      カップラーメンの写真を渡された。じっと眺めているとそれは本物のカップラーメンになった。  携帯電話の写真も渡された。それも眺めているうちに本物になった。  誰かから電話がかかってきた。それは写真のカップ麺を食べた人からの苦情だった。  本物とは少し味が違うと言うのである。   ...

  • 銀行強盗

      川辺に下りて行った。川は流れていた。  流れの方向に歩いていくとテントがあった。そこで大人たちが銀行強盗ごっこをしていた。本物の紙幣と、本物の拳銃を使って。銀行だけが「ごっこ」だ。それはただのテントだった。   ...

  •   その女の人の膝から、糸が出てきた。  糸って、言わないで。  わかった、紐と呼ぶ。  僕はその紐を引っ張って、どうなるかいろいろ試した。  彼女のもう1つの膝は、何キロメートルも離れたところにあった。そちらからも紐が出ているのか、ここからは見えない。   ...

  • 殺人者

      部屋の明かりを点けて、殺人者が来るのを待った。しかしその晩は、誰も来なかった。もしかしたら来たのかも知れないが、よくわからない。朝になっても、僕たちは殺されてなかった。  明るい場所では、殺人者は仕事をしないのだろう。次の晩僕は、明かりを消すことを提案した。が提案は受け入れられなかった。失望した。僕はマンションの別の部屋に移り、明かりを消して、1人で眠った。   ...

  • 裸足

      待っている間、僕は自分の足が気になっていた。僕は靴下を履かず、素足にドクターマーチンを履いていた。みんなは裸足だった。  僕もみんなに合わせて、靴を脱ごうとした。しかしみんなは、その必要はないと言う。  みんなは、出かけると言う。裸足のままで。僕も出かけようとした。僕は靴を履いているし。念のため、もう1足を探した。  下駄箱に入れておいたはずの靴はなかった。「何を探しているの?」...

  • 糸を紡ぐ

      君は部屋で、糸を紡いでいた。糸は、糸巻きに巻かれた。その仕事が一段落すると、風力で動く車がやってきた。どこへお連れしましょう、と車は言った。  君の答えを、風の音がかき消した。気づくと僕は、3歳の子供だった。電力で動く車が、僕のところへやってきた。この車もまた、どこへお連れしましょう、と言った。   ...

  • 沈黙

      エスカレーターの隣の階段を歩いて上がった。その先に動く歩道があったけどそれも使わなかった。悪態をつきながら動く歩道の上をスケボーで滑っているやつが1人いた。しかし僕たちの沈黙はその悪態を飲み込んで揺るぎなかった。   ...

  • 数字

      明るい廊下で、僕は紙に数字を記入していた。暗い部屋に移り、そこでも数字を書いた。数字は、動いていた。意志を持って、逃げていたのだろう。僕が数字を追いかけて、また部屋の外へ出たとき、そこは暗かった。数字だけが、明るく輝いていた。紙もペンももうなかった。廊下の先まで逃げて行き、こちらを振り返って、途轍もなく大きくなった数字は笑った。   ...

  •   帰ろうとして靴を探したけど見つかりませんでした。僕が靴を入れておいたはずの棚には本が入っていました。大きな画集や、重そうな図鑑など。1冊の写真集を取り出し見てみました。人物を写したものでした。外国の、都会でのスナップです。誰も靴を履いてない。   ...

  • テレビ

      僕はテレビに出て、見た夢の話をした。番組を見た父が、僕を訪ねてきた。「あれはオレに向けた、メッセージなんだろ?」 「違うよ」と僕は答えた。  部屋は散らかっていた。酒と、酒のつまみ。読みかけの本と雑誌。ここは本当に僕の部屋なんだろうか。僕は酒じゃない飲み物を探した。 「テレビ、もう消していいかな?」父に訊いた。  テレビの中には父がいて、まだ話し足りないと不満げに‥‥  ...

  • 着陸

      隣の男がトイレに立った。座席に戻ってきたときには女になっていた。裸になっていたのでわかった。  顔だけが男だった。酔っているかのようにふらふら。座席に倒れ込んだ。ひどく汗をかいている。    飛行機は僕だけを上空に残し、道路に着陸して、そのまま走りつづけた。道に車はない。道路では子供たちが遊んでいる。飛行機は幽霊のような彼らの間を通り抜ける。  空からそれを見ている僕。 ...

  • ルル

      僕たちに子供が生まれた。エメラルド色の背中、6本の細い手足。人間ではなく甲虫の姿をしていた。生まれたときから自分でトイレができた。偉いのねぇ、と女房は褒めた。  女房は子供にルルという名前をつけた。僕はルル子と呼んだ。返事はなかった。開いた窓から外へ出て行ってしまったのだ。「ルル」と呼んでも「ルル子」と呼んでも帰ってこなかった。   ...

  •   僕は王だ。オリンピックの代表選考会を見ている。僕の弟がトラックを走っている。弟は遅い。弟はビリだ。弟に勝った選手の1人が「僕は王よりも速く走れるぞ、僕が本当の王だ」と大声で叫びだす。   ...

  •   道を歩いているのではなかった。  僕は横たわった巨大な牛の脇腹の上を歩いているのだ。足下は柔らかくて歩き心地は悪くない。  しかしこの町全体を覆うほどの大牛が目を覚まして体を起こしたらどうなるのだろうと思った。  町には人っ子ひとりいない。    遠くに「机」が見える。近づいていく。  机の上には君の服と旅行鞄がある。そして歯ブラシが置いてある。気づくとホテルの一室だ...

  • バーゲンセール

      その上の階は、デパートのようだった。僕がやって来た方向へ行こうとして、たくさんの人が行列をつくっている。酷い混雑。だが僕が「そこ」から来たことを知って、並んでいる人みんなが笑顔になった。   1階には少年たちが、2階には少年たちと少女たちが、3階には少女たちがいて、双六のようなボードゲームをしていた。僕は2階まではエレベーターで、そこからは階段を上がっていった。3階の少女たちは、5分に...

  • 跳び箱

      体育の授業の前に、パンを買って食べた。今日は跳び箱を跳ぶ。生徒は僕の他に3人しかいなかった。  みんなオリンピック選手のように、跳び箱に手をついて、クルクル回転する。  床には、マットの代わりに、1ドル札が敷き詰めてあった。テロリストを支援するための資金だ、と言って君はそれを集めた。全部でいくらになるの、と僕は訊いた。   ...

  • 正八角形

      キリンの背中に、図形が書いてあった。正八角形だ、と僕は言った。正六角形でしょ、と君は言い返した。僕は図形の角を数え直したが、やはり八個ある。  キリンの群れの中に、一軒の家が建っていた。三階建てだと思っていた。だが数え直してみると、家は二階建てだった。鉛筆のように細長い家で、外に梯子がかけてある。家の中には階段がない。その家を買おうか迷った。   ...

  • イス

      家を見に行った帰り道、イスを見つけた。こんな道端に落ちているとは。この間イヌに盗まれたやつだ。小雨が降っていた。イスを両手で抱えてしまうと、傘がさせない。  隣を歩いていた男が、こちらを見て何か言った。そして、駆け出す。すると突然、雨は強くなった。川の流れる音が、大きくなった。僕の抱えていたイスが、倍の大きさになった。   ...

  • 表面積

      寝て起きると顔の表面積が大きくなっていた。鏡を見て気づいたのである。手で触れても顔が大きくなった実感はない。しかし鏡で見ると毛穴と毛穴の距離が数十メートルに広がっている。毛穴自体は大きくなっていないし、数も増えていない。  毛穴からは毛が伸びている。僕はそれを抜く。そして数十メートル隣の毛穴まで移動して、そこに生えている毛を抜く。すべての毛を抜き終わるころには何キロも移動している。僕は知...

  • カブトムシ

      寝ている間に、腕を1本盗まれた。腕の付け根には、カブトムシの絵が描かれていた。それは何かの合図だと思うが、何の合図なのかはわからない。犯人は子供だろうか?   シャワーをあびると、その絵は消えた。カブトムシの絵が消えると、そこから新しい腕が生えてきた。そういうことだったのか、と思う。いや、どういうことなのか、さっぱりわからないけれど。   ...

  • 路線バス

      その路線バスには、大きなスーツケースを抱えた外国人が多数乗っていて、いつもと雰囲気が違った。  前の席にいた地元の通勤客が僕を振り返って、「このバス、どこ行きでしたっけ?」と訊いた。初め韓国語で、それから思い直して英語で、僕は答える。  バスの左手には、古いソウルの町並み。  右手には、それを再現した映画のセットのような光景。   ...

  • 格好いい言葉

      ソファに寝そべっていた2人の若い女は、身を起こし、ただ「カッコイイ」と口に出した。  その本に、格好いい文章が書かれた、1枚の紙が挟まっていた。僕はその紙を抜き取り、ポケットに入れた。  もちろん、そのことは誰も知らない。だが僕が、みんなのいる部屋に戻ると、みんなが僕を見る目が変わっていた。  ドレスを着た女たちは、格好いい人を、あるいは独身の大金持ちを見る目で、僕を見た。 ...

  • 赤ワイン

      弁当箱の中の、食べ残したご飯を、空港のゴミ箱に捨てた。飛行機に乗る前に、まだ捨てるものがないか見てみた。すると僕のスーツケースの中身が、全部食べ物になっていることに気づいた。いつの間にか中身は、入れ替わっていた。食品は保存のきくものばかりではなく、痛みかけているものもあった。    上空から見た川は、赤ワインのようだった。照らす光もないのに、輝きながら流れている。飛行機はさらに夜空を...

  • 中身

      中身は僕自身知らない。どうやって開けるのかもわからない。誕生日のプレゼントとして僕が君に渡したのは、卵型のケースに入った「何か」だった。ところがみんなはそれを見て、「とても綺麗な花だね」と言ったり、「何の本なの?」と訊いたり。   ...

  • 合格

      ゴキブリを手でつかまえた。どうすればいいかわからなくて混乱した。電子レンジの中に投げ入れて扉を閉め加熱した。そしたらもっとどうすればいいのかわからなくなった。  そんなとき。自分は変われるかどうか調べる試験があって、僕はみごと合格した。そんな気分だ。他の誰が課したのではない、自分自身が課した試験に、僕は。   ...

  • コアラ

      僕たちの乗るマイクロバスは車道を1列になって歩く馬とすれ違ったときも、動物園の中に入ったときも、速度を落とさなかった。まっすぐ、コアラの元へ向かい、止まった。僕たちはバスを下りて、コアラに触った。バスは、発車した。僕たちの戻りを待たなかった。   ...

  • マネキン

      鳥の仮面を付けた男が、ベッドに横たわるマネキン人形を優しく撫ででいる様子を、遠くから僕は見ている。  すると路の先から、同じ仮面を付けた男たちが、何人もやってきた。僕とすれ違い、‥‥あのマネキンの寝ている部屋へ向う。  振り返らず、僕は歩いた。‥‥いつの間にか隣に、あのマネキンのように白く、すべすべした巨大な女がいた。   ...

  • ジュース

      列車には窓がなく外の様子がわからないが、乗り合わせた僕たちはみんなで晴れていると思い込むことにする。僕は更にその思い込みに季節を付け加えることにした。「夏」。気持ちのよい朝だ。隣の席の若い女性グループが食堂車から僕にもジュースとクロワッサンを持ってきてくれる。   ...

  • 地下鉄の出口

      待ち合わせた地下鉄の出口は、番号ではなく「うんこ」と名付けられていて、僕たちを気まずくさせるのです。 「ちんこ」の前で待ち合わせるよりは、まだマシですけど。  それでも「うんこの前で待ってるね」とは言いづらい。  ぶんこの前で、文庫本で、などと言い換える君。絶対に僕が先に着いていなければと思うのです。   ...

  • カモノハシ

      新幹線の「舳先」と言っていいのか、カモノハシのクチバシのような先端部分の上に、僕ら選ばれた幸運な乗客のための席はあって、時速300kmを体感するのですけれども、鉄道オタクのような1人の大男が、アルコールを持ち込んだ若い女性たちのグループに、それはジェットコースターに乗りながら、あるいはスカイダイビングをしながら、酒を飲むようなものでしょう、と反語的な苦言を呈しました。   ...

  • 居間と台所の明かり

      真夜中に僕は目を覚ました。もう眠くはなかった。そのまま起きることにして1階に下りた。歯を磨いてトイレに行きたかった。だが1階は僕の家ではなかった。  居間と台所の明かりがついている。そこにはいないはずの人たちがいた。双子の妹たちと、お手伝いさんの女性。彼女らには僕の姿が見えないようだ。  父と母が帰ってくるらしい。彼女らはその支度をしているのだ。  この家には息子がいただろう、と...

  • 高所恐怖症

      2階の僕の部屋の、床は透明だった。高所恐怖症の君は、それを怖がる。服を次々と脱ぎ捨て、床を覆った。  黒かった君のシャツや下着は、床に置かれると白くなり、光った。君はその上を歩いて、僕に近づいてくる。僕は靴と靴下だけを脱ぎ、待った。   ...

  • 光るデザート

      白くて丸い、光るデザートを買い、写真を撮った。その画像を、誰にも見せずに、ずっと保存していた。違法なポルノを、隠し持つようにして。  1人部屋に戻ってから、その画像を見た。すると今日の君の演奏が、感覚的に理解できた。スマホの発する光が、僕を包んだ。  終演後に君と話す機会はなかった。君のピアノは素晴らしかった。それをそのときに伝えたかった。   ...

  • 舳先

      電車は鉄橋の手前で線路から外れてUターンした。怖じ気づいたのだろう。台風で川が氾濫しそうになっている。川の向こう側の県に僕は住んでいて、雨がひどくなる前に家に帰りたかったのだが。  鉄橋の手前の駅で僕たちは下ろされた。川を渡ってくれる電車が来るのを待った。  自分でもよくわからない理由で僕はホームのいちばん前、「舳先」に立つ。そのとき川は決壊した。濁流が押し寄せて来るのを見た。駅のホ...

  • 乗り過ごし

      スマホを見ていたら乗り過ごしてしまった。いちども下りたことのない駅で僕は下りた。反対側のホームで引き返す電車を待った。  その間もスマホをずっと眺めていて、行き先を確認することもなくやって来た電車に乗った。  車内は混んでいたが1つだけ空いた席があった。お年寄りや身障者が座るためのシートだ。僕はよく確かめもせずその席に座った。  まだ熱心にスマホを見ていた。結局終点まで乗った。僕...

  • 階段

     「どこへ行こうとしてたのだ?」  悪魔の家に行こうと思って支度しているところに悪魔がやって来て訊いた。 「わかんなくなっちゃった」、と僕は答えた。 「君は何しにうちへ来たの?」 「私もわからなくなってしまったのだ」  「私は階段だ」と悪魔は言った。 「階段‥‥」 「私は飛躍したい」。私は悪魔ではないのだ。  その言葉を聞いて僕は一段抜かしで上がった。 ...

  • 時間よ止まれ

      そのとき僕は時間よ止まれと思った。お前は美しい。実際に口に出して言った。でも悪魔はやってこなかった。 そういう契約をしていなかったから‥‥「どこへ行こうとしてたの?」 悪魔の家に行こうと思って支度しているところに悪魔がやって来て訊いた。「わかんなくなっちゃった」、と僕は答えた。「君は何しにうちへ来たの?」「私もわからなくなった」      ...

  • 黒い足

      僕は裸足だった。靴はいつの間にか脱げていた。靴の中に入れておいたはずの僕の足の指はなくなっていた。  靴を探した。指か。指はいらないだろう。だが指だけが見つかった。指はとても黒かった。人体の一部のようには見えなかったが、これは僕のものなのだろうか。   ...

  • サボテンと木

      庭のサボテンが成長して普通の木になった。高さは数十メートル、もうトゲはない。上の方はどうなっているんだろう? 見に行くと天辺にちょこんとサボテンは乗っかっていた。   ...

  • 僕の便器

      住宅街の道の真ん中に僕の便器はいた。  だが本当に僕の便器なのかはわからない。彼はその場に固定され動けなくなっているようだ。 「みんなに見られるのが恥ずかしいです」彼は訴えるので、周りを薄い木の板で囲った。そうすると簡易トイレのようになった。  用を足して扉を開けると、外にはたくさんの人が並んでいる。僕は全員に意味もなく謝った。   ...

  • ベトナム

      広間にいた僕たちの頭上でベトナムの国旗が振られた。僕たちは立ったまま君の演奏を聴いているところ。次の公演はベトナムなんだな。アンコールはベトナムの民謡だ。  電気機関車と線路と山が描かれた大きな皿を僕は手に持っている。今日のコンサートの記念にと渡された皿だ。ベトナムにはこんな汽車は走っていないかも知れないが。   ...

  • 極度乾燥

      極度乾燥した果物。ただしドライフルーツではない、ただ乾燥した果物。食べ残すべきではない、とその人は言う。口の周りに、子供のように、食べカスをつけて喋る。口の中は、カラカラだった。   ...

  • ヒヨテリ菌

      恐ろしいヒヨテリ菌(実在しません)に感染した患者が床に直接寝かされていた。治療と称して僕たちは彼の顔を足で踏んだ。すると患者の鼻の穴から茎が伸びてきて紫色の花が咲いた。   ...

  • 木星

      木星の衛星にいました。君と木星を見に来たのです。空に浮かぶ木星。太陽系最大の惑星。  そして足元の水槽の中にも、「木星」はありました‥‥  水槽に手を入れ、木星をまさぐる僕に、君は訊きます、「木星に生物はいる?」 「探してみるよ」    木星の大きな渦を、ぐるぐるとかき混ぜていたのは僕です。   ...

  • 誓い

      みんな小走りでした。1人として歩く者はなかったです。僕も小走りしました。疲れると停止して、体力が回復するのを待ち、そしてまた小走りし始めます。決して歩きません。みんなで誓ったのです。   ...

  • ハイウェイ

      バルコニーに出ました。僕の目の前を蝶が高速で過ぎていきました。あんなに速く飛ぶ蝶を初めて見ました。  次から次と蝶は飛んできます。ここは蝶たちのハイウェイになっていたのです。僕は蝶に撥ね飛ばされそうになりました。  クラクションは鳴らされませんでした。蝶たちは上手に僕を避けていきます。  バルコニーの先でさらにスピードを上げた蝶たちが、空の彼方で虹と一体化するのが見えました。 ...

  • 目隠し

      突然寝室の明かりがつき、人の気配がして僕は目を覚ました。起き上がって確かめようとしたが体が動かなかった。黒い布で目隠しがされていて、目を開けても何も見えなかった。  耳には栓がしてあって、何も聞こえなかった。  誰かがゆっくりと近づいてきて、僕の胸に手を当てた。その手が僕の体内に入ってくる。手は僕の心臓の位置を、正しい場所に置き直しているのだ。  だが心臓の位置がちょっと動くたび...

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