崖下に落ちたバスの乗客の内、犠牲になった2人は、ゾンビ化して蘇った。その2体の死体が、ドリフのようなコントを始めたが、あまりにもブラックだったので、誰も笑わなかった。バスガイドさんも、生き残った僕たち乗客も引いた。 観光バスの中には、外国人が多かった。気を取り直して、ガイドさんは歌った。外国人たちも、一緒に歌った。僕は、歌えなかった。そのメロディはよく知っていたが、英語の歌詞を知らなか...
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崖下に落ちたバスの乗客の内、犠牲になった2人は、ゾンビ化して蘇った。その2体の死体が、ドリフのようなコントを始めたが、あまりにもブラックだったので、誰も笑わなかった。バスガイドさんも、生き残った僕たち乗客も引いた。 観光バスの中には、外国人が多かった。気を取り直して、ガイドさんは歌った。外国人たちも、一緒に歌った。僕は、歌えなかった。そのメロディはよく知っていたが、英語の歌詞を知らなか...
自宅に遊びに来た友人をもてなすためにパンを焼くことにした。あとはオーブンで焼くだけのパン生地をその友人は持参してくれた。 あいにくウチにはオーブンがない。 しかしコタツを指差し何か言いたげな彼女を見て、 「そうか」 これが使えるよね。 「時間はかかるかも知れないけど‥‥」 僕たちはバルコニーに出た。家のバルコニーは1つの町ほどの広さがあり砂浜までつづい...
海外旅行に行くのだ。あと5分で荷造りを終えなければならないのだ。なんでこんなギリギリになってしまったのだ。わからないのだ。 布団の中にゴキブリがいるのを見つけた。急いでいるこんなときに。殺虫剤をふりかけて殺した。 飼っているウサギが引き出しの中に入りたがっている。閉じ込められるのが好きなのだ。そのくせしばらくすると、ドンドンと内側からやり出す。やっぱり出してくれというのだ。 ...
クイズ大会が催されたのは高校の長い廊下で、参加者は僕を含めて3人。 2階の廊下では簡単なクイズが出された。3階のクイズは難しい。罰ゲームがあると聞いたので、僕は2階のクイズに挑戦することにした。 あとの2人は3階へ行ってしまった。 やっぱり3階が楽しかったかも知れない。 1人でこんなことをして、何がおもしろいのだろう‥‥ 始める前にトイレに行った。鏡で自分の顔を...
目薬をさすのが苦手な僕に小皿が用意されていました。嗚呼小皿に目薬が満たされているのを見て悟ったのです。眼球を取り外してここに浸けろというのでしょう。ええそうしてやりましたとも‥‥ ...
歩いている彼を、僕は走って追いかけたが、追いつけない。ゆっくり歩いているように見える。でも距離はどんどん離されていく‥‥ 僕はバスに飛び乗る。松葉杖をついた男性を乱暴に押しのけた。そのせいでちょっとしたトラブルになり、彼を完全に見失った。 繁華街の、裏通りを歩いている‥‥。予備校の模擬試験が行われている会場前に出た。試験官をやっている知り合いの男Aがいる。外から合図を送っ...
てきとうにキーボードを叩いていると偶然『罪と罰』のような小説が書けてしまった。どうしたらいいかわからなかったので学校の国語の先生に見せた。すると先生もどうしたらいいかわからなくなったようだ。もうしわけないような気持ちになった。 僕は普通にキーボードを叩いててきとうなミステリー小説を何編かつくった。それを先生に見せると今度は褒めてくれた。 「ところでこの間の小説はどうでしたか?」「何...
巨大な埠頭には似つかわしくない小舟が何艘も浮かんでいる。逃げてきた男はその内の1隻に乗り込み沖へと漕ぎ出す。そうして追いかけてきた男たちに何か叫んだがあとで聞いた話によるとそれは歌だった。短いラップのような歌でそれを聞いた追っ手たちはそれ以上追おうとはしなかった。持っていた書類を丸めて小舟に投げつけた。 ...
コンセント差し込み口は天井に1箇所しかなかったので、業者が部屋にテレビを運んできたときも、彼らはどこに設置すればいいのか迷った。本棚の上を片づけてそこに置くしかないが、それでも線は届くか届かないかだろう。 あったはずの延長コードが、見当たらない。母に訊いてみると、捨てたと言う。「ピンク色の延長コード、気に入っていたのに」「色が気持ち悪かったの、男の子なんだからあんなのだめ」「白と黒もあ...
テレビの前に、籠が2つあった。1つには人間の赤ん坊が、もう1つには仔犬が入っている。 仔犬はぬいぐるみかも知れない。 テレビでは、戦争映画を放送している。テレビの中から兵士が出てきた。超リアルな3Dだ。超リアルな銃を赤ん坊に向け、発砲する。 僕はチャンネルを切り替えた。兵士は消える。と、赤ん坊の両親が帰ってきた。 アナウンサーが時報を読み上げている。58秒、5...
美容院にて、僕はカットを任された。長めのボブにした、若い女性客。どういうスタイルにしてくれとは言わない。ただ「任せる」と言う。 彼女の毛先は、洋服の裾のようだ。ほつれないように、ミシンで仕上げているのだ。 僕は慎重に切り込みを入れ、裾をほどいた。 「切りっぱなしにしてみましょう。ラフな雰囲気で‥‥」 ...
ピアノを弾いている僕に少年はイカの干物を投げた。演奏を一時中断して訊いた、 「何?」 少年はもう1つ干物を投げた。両手がイカの干物で塞がった。 「お話をしてよ」と彼は言う。 「ピアニストになる前、僕は‥‥」 話そうとしたが何も思い出せない。 ...
少女が食べようとしていた巻き寿司に、砂がかけられた。ひどい嫌がらせ。 「気にすることないよ」と少女は僕に言った。(それは僕が少女にかけようとした言葉だ‥‥) 少女は僕の肩に手を回す。つかまえられた。長い腕に。彼女は僕の顔を白い包帯でぐるぐる巻きにし始めた。 「どうしてこんなことするの?」 「気にすることないってば‥‥」 もう何も見えなかった。口もきけなくなった。辛うじ...
ホテルの部屋は、バスの中だった。座席を倒したベッド。チェックアウトの時間だったが、くずぐずしていた。座席の間を歩き回った。 誰もいなかった。みんな下車(チェックアウト)してしまった。運転席の方まで行った。 フロントガラスの向こう、ビルの谷間の空に、大きな白い月が見えた。 僕は500mmの望遠レンズを向け、月をこちらへ引き寄せる。 振り返ると、バスに乗客が戻ってきていた...
腹が減って倒れたのは荒野だった。食べなくても平気だろうと思っていたが‥‥。 死体置き場で目覚めた。気づくと腹は減ってない。死んだわけではなさそうだが、もう食べなくても大丈夫そうだ。 歩いて家に帰ろうとした。家がどこだか思い出せない。 ...
彼の二の腕にはふさふさした毛が生えていた。髪の毛よりも黒く滑らかで豊かな毛だ。女の毛髪のようだった。美しい。彼はその毛を長く伸ばしていた。 マラソン選手だった。彼は実業団に所属している。暑くないのだろうか。いやもちろん暑いだろう。 「もちろん暑いさ」と彼は言った。 ...
「あとは、みんなで話し合って、決めてね」 彼女は、ボディコンのドレスを着た。 「あたしは、席を外すから」 そう言って、外に出かけてしまった。 こんな朝から、あんな服を着て、 どこへ行く‥‥? 彼女と入れ替わりに、何人か入ってきた。若い男性が1人、やや年配の女性が1人、お年寄りが1人。 あとでわかったことだが、若者の母親と祖母である。 若者はボディコ...
特に滑りやすい靴を履いてきたが、ローラースケートにすべきだった。バスの後ろから出ている紐につかまって、僕は滑った。やはり、失敗した。ほんの少しの間で、踵がすり減ってしまった。スケボーでも、よかったのだ。 隣で滑っていた、就活のスーツを着た女性に、笑われた。彼女は、ローラースケートが上手だ。 ...
走行中だったが、電車の扉は開いたまま。危険な位置にその女の人は立っていた。僕の方を振り返って微笑んだ。そうして、電車から飛び降りた。夢の中で、そんな夢を見た。 電車の扉は、まだ開きっぱなしだ。女の人はまだ飛び降りていない。「危ないですよ」と僕は声をかけたが、今度はその人は振り向かなかった。微笑んでもいなかったと思う。駅に着いた。 ...
ラーメンを茹でるのに先に具のキャベツを鍋に入れある程度茹で上がったところで麺を投入し、そこで台所から離れたらにどと戻ってこれなかったのは犬岡くんのせいだ。 犬岡くんは自分はスマップのメンバーだと言い、他のメンバーと一緒に写った写真を見せてくれる。 その写真をうっかり穴の中に落してしまった僕は写真を拾いに穴の中に入った。 穴の中にはたくさんの足があって、足は写真を踏んづけてし...
知らぬ間に宝くじが当たったようだ。きっとオンラインで買ったやつだ。大金が口座に振り込まれている。僕はその金を全部引き出し、宝くじ売り場へ向かい、そこで売られている宝くじを全部買う。そこで気づいたことがあるのだが、1億円分の宝くじの束は、1億円の札束より軽い。 ...
町の上空に浮かぶ雲のベッドで僕は目覚めた。寝ているうちにまた巨大化してしまったようだ。ベッドから足を下ろすとき住宅を一棟踏み潰してしまった。 いつまで寝ぼけているんだ、と町の住人から怒りの声が上がる。 ベッド下に落したティッシュの箱を取ろうとして暴れ回り、町の一区画を更地にしてしまったところで、完全に目を覚ました。 ...
東大生とは、東京大学の学生ではなくて、東京大学に連れていってくれる人のことだと、その人は主張し、5月のある日、東大を案内してくれたのだ。 東大は東京の大学というより寺院のようで、建物の中に入るとき、靴を脱がなければならなかった。 その日は休みなのか、構内に学生や教員の姿はなく、静かだった。 犬小屋があって、そこで白い犬が寝ていた。 ...
右側通行の道路、右ハンドルの日本車とすれ違った。赤いスポーツカー。運転していた女性が歩道の僕に手を振った。僕も振り返すと、それを合図に人が集まってきた。日本語が通じるか挑戦したい、という人たちだ。日本語を学んでいる学生たちだった。 ...
その家の玄関の前には大猫がいて、カメラを構えた僕が近寄ると後ずさった。そうか写真に撮られるのが嫌いなんだ。家に入るのに大猫が邪魔だった。どうすればどいてくれるだろうと思っていた。無事追い払うことができた。 ...
夕日を浴びて電車が走っている。電車には人は乗ってない。ジャガイモが積まれている。収穫したばかりのジャガイモだ。 線路はあるところで直角に曲がっている。電車はそこを上手く曲がれず、脱線してまっすぐに行ってしまう。まっすぐ行った先には車庫がある。まだ車庫に入りたくない、と電車は思う。 ...
陰茎は固く絞られた雑巾のようだった。僕だけじゃなくみんなのがそうなっている。ニュースでやっていた。みんなそうなってしまったなら仕方ない。 小便をするときはそれをさらにきつく絞る。残尿感があるならまだ絞れるってことだ。 ...
この写真家を僕はアラーキーという仮名で呼ぶことにする。つまり僕が拾ったのは普通のエロ本・エロ写真集ではなかったのである。後で見てわかったが、それはあるストーカーの日記だった。彼(おそらく男だろう)は複数の女性を追いかけていて、隠し撮りした写真の他に、標的の女性の利用するバスの時刻表や、訪れるカフェのメニューなども参考資料としてあり、その本を持っているのが僕は怖くなった。 ...
アイマスクの代わりに黒いタオルを巻いて寝ていた。電車の中だ。電車が駅に着いた。慌てて飛び起き、降車した。目的の駅の、1つ前だった‥‥ やってしまった‥‥降りたホームで、次の電車を待った。それはすぐ来た。先行する電車に追いつき、しばらく平行して走る。向こうの乗客たちが、僕に手を振っている。 ...
高速道路を僕は歩いている。険しい山を削ってつくられた道だ。時速300キロで走る透明な車が、僕の体を通り抜ける(逆なのかも知れないが、透明なのは僕の方で)。 路肩に男の子がいる。1人で遊んでいる。危険だ。僕は声をかけた。 親に電話してやるよ、迎えに来いって言ってあげる。 おうちの電話番号、覚えてる? 迷子の男の子が教えてくれた番号にかけると、それは僕の実家だ。死んだはず...
足元に酒瓶があった。隣のテーブルの方に蹴飛ばした。赤い酒が入っていた。僕は酒を飲まない。 隣りのテーブルで飲み食いしていたグループが僕に手を振って挨拶したのを見て席を立った。 店の外に出ると明るかった。朝だ。カネを払わずに出たことを思い出した。 僕はいろんなことを忘れていた。椅子の背には上着をかけたままだった。上着の内ポケットには財布が入っていた。 ...
僕は窓際に追いつめられた。窓から外に逃げようと思った。 しかし窓には鉄格子が嵌めてあった。 そいつは僕の体の中から「13歳の心臓」を抜き取ろうとした。 取っても死にはしないとそいつは言うが‥‥そもそも「13歳の心臓」って何だ? ...
愛する女に初めてキスしようとしたとき、私は自分が女になっていることに気がついた。 私がキスをすればこの女は男になるのだろうか、と考えながらキスした。目は閉じなかった。女の変化を観察していたが、何も起こらなかった。相思相愛の私たちの未来が、少し不安になった。 ...
女が「レストラン」と言っている。それを聞いた男が「レンタカー?」と返す。「レストラン」大声。「何借りるの?」さらに大声。「レンタルビデオ?」日本人の観光客だ、地下鉄の中。僕は用もない次の駅で降りる。 ...
怪獣の背中に生えているような刺が、道路に生えていた。車は走れなくなった。ある日突然のことだった。僕は茫然と見つめた。 刺は完全な等間隔で生えていた。人工物には見えなかったが、自然の物とも思えなかった。僕はスマホを覗き込み、世界を裏で牛耳る悪の組織の陰謀ではないかという説が、狂人たちの口から、説得力をもって語られるのを待った。 ...
ポケットから取り出した紙片、4つに折られていたのを開いて、約3分間、お湯に浸すのだ。 書かれていた文字が、お湯に溶け出して、紙が真っ白になったら、取り出すのだ。 文字が溶けたお湯を、僕は飲むのだ。知識が僕のものになる。 ...
電話は、黒いダイヤル式の電話だった。ネットに投稿した僕のエッセイを読んだという人から、電話がかかってきた。「嬉しいよ」と言う、その声は知らない、若い男のものだった。たしかに嬉しそうな声であった。 「何が嬉しいの?」僕の返事にも、相手は愉快そうに笑った。その笑い声が僕を不安にさせる中、手にした受話器が、重くなったり、軽くなったりした。この自分の手にしているものは、いったい何なのだろうと僕は...
地下鉄の車内で、ピンク色のルーズソックスを履いた黒人の女のコが僕を見つめている。目がハートになっている。こんなハンサムな人は見たことがない、とその目は語っている。 「私と結婚して」と目は言う。 「私は大富豪の娘よ」 大富豪は次の駅で降りる。僕は降りない。大富豪の座っていた席に別の女性が座る。こんなに美しい女性は見たことがない。 ...
長い石段を上がりきると「門」だった。「門」にやってきた。旅の目的地だ。スマホをもういちど見た。 スマホによると、僕は90%の確率で「答え」を見つけることになっているのだ、その門のところで。 さらに10%の確率で「新しい自分」に出会えるという。 ...
手作りのバッグを君は持ってきて僕を旅に誘う。 人生で必要なものは全部入っていると、バッグを開け、中身を見せてくれる。ハサミがない、と僕は思った。 ハサミを何に使うの? うーんとね、切るんだ 旅先に切れるものはないの そうか残念‥‥ それじゃ今のうちに、と僕は思って、紙を切り始めた。僕は紙を1枚しか持ってなかった。切ることによってそれは2枚になり、3枚になった。...