「令和」と落書きされたデジタル時計が浜崎あゆみの歌を歌っている。 「平成」と書き換えてやれば歌うのをやめるとも思えない。 僕のアナログ時計には何も書かれていない。彼は歌わない。 ...
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「令和」と落書きされたデジタル時計が浜崎あゆみの歌を歌っている。 「平成」と書き換えてやれば歌うのをやめるとも思えない。 僕のアナログ時計には何も書かれていない。彼は歌わない。 ...
研究所に彼らがやって来て爆弾をあちこちに仕掛けていくのを、何もせず僕たちは見守っている。それは「演習」だった。 彼らが引き上げたあとで爆弾の撤去に取りかかった。仕掛けられた爆弾はリンゴのかたちをしていて、それを僕たちは1つずつ透明なビニール袋に入れ持ち寄った。 ビニールに入れるのは爆発したあとで飛び散らないようにするためだ。 「本当に爆発するんですか?」若い研究員の1人は馬鹿...
広い部屋に狭いベッドが何台も並んでいてそこに寝ているのは全員が大人の男だ。女子供はいない。あとになってから僕は野戦病院みたいだと思うが、僕たちはみな病気や怪我で寝ているわけではない。ただ眠たいのである。 1人だけ眠れないでいる男がとなりに横になっていて、僕も目を覚ましているのに気づくと話しかけてきた。 「‥‥とするとあなたはジャック・ロンドンの著作には価値がないとおっしゃる?」 ...
夢の中で本の頁をめくっていた。それは脚本のようだ。台詞はところどころ滲んで読めなくなっている。頁をめくるたびに読めない台詞は増えていく。そのうち白紙になってしまった。 最初の頁に戻ってもういちど読み直そうとしたがそこも既に白紙だった。本を閉じた。表紙にも何も書かれていない。ならノートとして使おうか。しかしそれはただの1枚の板だ。開くことができない。 ...
古い公会堂で行われた映画鑑賞会だった。入口で靴を脱ぎスリッパに履き替えた。映画を撮影したカメラマンがゲストとして登壇した。だが彼女の話の途中でほとんどの客は帰ってしまった。この近くで同じ映画が上映され、そちらには主演女優が来ているからだ。 最後まで残っていた僕も席を立つ。その直後にカメラマンの話は中途半端なところで終わった。僕はスリッパを履いたまま、靴を手に持って主演女優が来ている会場...
注文した料理がなかなか来ないので厨房を覗いてみると料理人の1人が倒れていた。病気か。仕方ないので自分の分は自分でつくろうと思ったがオーダーは溜まっている。 他の2人の料理人は新米のようで僕が仕切るしかないようだ。「安心して休んでください」と僕は倒れた料理人に声をかけた。「厨房は僕が守ります」 自分の分は後回しにしてオーダーを捌いていった。僕の調理法は簡単で「味の素」で味を整えるだ...
ピアノを弾く僕の前に、もう1台ピアノがあった。そのピアノの向こうに、またもう1台のピアノがあり、世界的巨匠が弾いていた。その向こうは客席だった。 巨匠の演奏が終わった。そのあとも、僕は少し弾いた。 今、僕とその巨匠は、テーブルを挟んで向かい合っている。 テーブルの上には、外された紫色のマスクが1つ、(誰のマスクだろう?)そしてヨーグルトが1つある。 ヨーグルトも紫色だ...
少女は「夢」と言い、ヒロスエは「有名」と言う。 眼鏡が似合う少女が僕に話しかけてくる隣で、ヒロスエも僕に話をしている。聞いてあげなければならないが、2人同時に話しているので難しい。 いま話題は、眼鏡のことだ。 ヒロスエを無視して、「とてもよく似合うね」と少女を褒める。 「ブス」 「すごいブス」とヒロスエは言った、僕に向かって。少女に対してではない。少女は聞いてない。...
「英語、教えます」と書かれた紙を持った少女が夜の街角に立っている。 「へへっ‥‥一発いくらなの?」サラリーマンふうの酔っ払いが声をかける。 「三千円」と少女。 「いいねぇ。ここで?」 「前金で払ってちょうだい」 「犬って英語で何て言うの?」 「ドッグ」 ...
その金槌は金属製ではない。使い物にならない。僕は金属製のやつを借りにいく。 「その金槌は金属製ですよね?」 「兄ちゃん、変なこと訊くねぇ」 「鋏も、ペンチも?」 借りてきた。鋏はとても切れ味がよい。 それを僕は研ぐ。 ...
気づかないで助手席のドアを開けてしまった。俳優の江口洋介の隣には彼のお兄さんが乗っていた。僕は後席に乗るのだ。 あまりにもそっとドアを閉めたせいで半ドアになってしまう。 「構わないさ」と江口洋介。 そのままアクセル全開で走り出す。 彼と僕は映画に出演していた。彼が主役で、僕は限りなくエキストラに近い脇役だったが。 なぜか江口洋介は今日の食事に僕を誘った。本当にどう...
広場には、囲碁や、将棋を楽しむ多くの人たちがいた。僕は、見るだけだった。 この広場にバスが来ると聞いて、待っている。 しかし、どうも違う。ここでバスを待っている人など誰もいないことに気づいた。僕は何を聞いてきたのだろう。 広場の向こうに舗装された道があり、そこにバス停らしきものもある。待っている人もいる。ここにバスは来ますか? 僕が訊ねると、来ないと言う。 バスはあの...
何かあったのか、流れに逆らって女が駆け下りてくる。上りのエスカレーターの上の方から、ロングスカートの裾を乱して。 脇によけた僕、すれ違うときは一瞬だった。 ...
エレベーターが来ない。待ち合わせに遅れてしまう。 ホテルのエレベーターホールには、僕と同じように、イライラした様子の宿泊客が、多数いた。 「バックスペースに、従業員用のエレベーターがある」 誰かが言った。移動することにした。 非常階段もあったが、そちらは、積み上げられた段ボールの箱で塞がっている。 ロビー脇のカフェで、友人が待っているはずだ。 若い女性2人を...
ショーウインドーの前にバスタブがあり、中年の男性が浸かっていた。 夏の午後僕は大通りを歩いてきた‥‥ブリーフ1枚で歩いていた。 全部脱いで、湯に浸かった。 脱いだブリーフは、信号機にひっかけておく。 信号が青になるのを待っている人々は、信号ではなく、僕のブリーフを見ることになった。 (ちなみに僕のブリーフは見られて恥ずかしい類の下着ではない、念のため。) 中...
年配のクライマーと、山を登る。1000メートルほどの低山だったが、トレーニングが必要だと言われた。何をすればいいのか。結局、何もしなかった。 だがいろいろあって、予定はキャンセルされた。 山は「船山」と言った。トレーニングの代わりに、僕は下調べをたくさんした。船山の歴史、山に伝わる伝承。 僕は1人で、船山ではない、近所の、もっと低い山の麓に来た。山頂を見上げた。 空は...
トイレの鏡で自分の姿を見る。僕は帽子をかぶっている。小さな帽子だ。風に飛ばされないよう、紐をアゴの下にかける。 そこは清潔だがとても暗いトイレだ。外に出た。外も暗い。夜なのだ。(夜は暗いのだ。) トイレの中で僕はなぜ風のことを心配したのだろう‥‥ おそらく、風は不潔なのだ。帽子も不潔。不潔な風が、不潔な帽子を吹き飛ばす。僕は手を洗う。 僕は清潔になった。 ...
金髪の女子テニス選手が、橋を渡ってくる。後ろ向きに歩いている、テーブルと椅子を引き摺って。世界ランキング上位の、有名な選手だ。 コマーシャルの撮影だろうか、と僕は思う。 いや、違うのだろうか。 僕は彼女のところへ行き、テーブルの引き摺りを手伝う。「引き摺ってくれてありがとう」とお礼を言われる。 「明日、イベントがあるのよ」 「それで今日のうちから準備するんですか?」...
山道を下っていく。前を走るオートバイが倒木にぶつかって倒れた。たいした事故ではないと思ったがライダーは死んでいて、さてどうしようかと思った。 幸いにして目撃者は誰もいない。僕は事故死したライダーを放置して、先を急いだ。急いでいたわけではないが、行き先はあった。標高がどんどん低くなる。麓の町は蒸し暑かった。...
同じお面をかぶった2人組の強盗を見て僕は双子だと思った。 「馬鹿か」 「早く‥‥を出せ」 その声も同じだった。見分けがつかない。 「そっくりだね」と僕。 「んなことは、いいんだよ」 「さっさと出しやがれ」 強盗は拳銃を突きつけた。 「僕にも双子の妹たちがいる」 「はぁ?」 「そっくりだけど見分けはつくよ」 「これはお面だ」と強盗。 「お面が...
「傘貸して」 「やだよ」 雨の季節が来た。地面から緑色の茎が生えている。1本だけ。ネギのように見えるが違う。それは傘だ。それはあちこちに生えている。強い風が吹いて斜めになる。 ...
整形外科医になった妹に手術してもらうことになった。お兄ちゃんは口をもっと大きくした方がいいと言う。横に広げるのだ。洗濯バサミのような器具で僕の唇の両端は引っ張られた。その状態で笛を咥えさせられた。何か吹いてと妹はリクエストした。 ...
無人のゴール前でパスを受けたバスケの選手が、丸出しにした尻をペンペンしたりして、相手チームをからかうが、 どうすることもできない。 彼はシュートを決めた後、ゴール裏にあった平屋の住宅に駆け込み、奇声を上げ、中にあったテレビやソファーを窓から投げ捨てる。 ゴール周辺が、粗大ゴミ置き場のようになる。ボランティアによる片づけが始まる。試合は一時中断する。 ...
宝くじを買う。そこには僕の顔が、紙幣のように印刷されている。手に取り、ずっと眺めている。5億円。当たったのだ。 1日中、ニヤけている。 「お兄ちゃん、もしかして」妹が声をかけてくる。僕は当たりくじを妹に見せる。 「この顔はお兄ちゃんの顔だ、間違いない!」 「これで大金持ちだな」 「金持ち兄ちゃん(笑)、私にいくらくれるの?」 「お前さ、これからバイトだっけ?...
日本の大富豪がモナリザを買ったという。ニュースを見た。世界的名画だ。 例の謎の微笑がテレビに大写しになる。 だがその顔は、どう見ても僕の顔だった。モナリザは、僕だった。 大富豪がインタビューで答えている。 「今日から私がモナリザ」 いつ入れ替わったのだろう。モナリザと大富豪と僕と。 ...
その女性は、バスの中で歌い出す。「あのカーブを左に曲がると、町は外国気取りよ」 僕は初めて聞くが、よく知られた歌らしい。乗客のみんなが、合唱し始める。実際にはバスは、右折する。急停車する。 みんなが降りるので、僕もつられて降りた。しかしそこは、僕の行きたい場所ではない。 みんなは改めて、左に行った。僕はまっすぐ行くことにする。僕の行く道にだけ、雨が降っている。 ...
バスを待っていると知らない女性が話しかけてきた。僕の親しい友人だというふりをしたがっているようだ。東洋人にしては異様に彫りが深く、きれいな人だったし、話もおもしろかったので、僕も演技してあげることにした。 愛想笑いをしたり、「そうだね」などと相槌を打ったみたりである。そのうちにバスが来た。 バスの中では、僕たちは少し離れて座った。すると彼女の隣に座った男性が、彼女に話しかけた。彼...
そこは砂漠だった。歩いていくと雪原になった。足元の雪は固く凍りついている。 何度も滑って転びそうになる僕の、ポケットの中の電話が鳴った。安全な「小屋」にいる友人たちからだ。 「今夜の巨人・中日は、どっちが勝ったんだ?」 知るか、と思ったがテキトーに答える「巨人」 「何対何で?」 雪原の中に、黒いセダンが1台停まっているのを見かける。何なんだろう? 僕は乗せてもらおう...
彼女は高校の制服を着ている。バッジを見ると2年生だ。男の後をついていく。それは学校のある方向とは違う。 僕は高校の方へ向って歩き出す。僕は3年生だ。僕の前を女の人が歩いている。僕も女の後についていく形になってしまった。彼女の顔は見えないけど美人だろう。 ...
国境を歩いて越えたとき、クレジットカードも現金もないことに気づいた。家に忘れてきた。家は歩いて帰れる距離にあったが、戻る気にならなかった。もう面倒くさかった。考えるのも、決断するのも。 1人で来ていた。ジャージの上下を着ていた。パジャマの代わりにしている、紺色のジャージだ。ポケットに煙草の箱があった。国境の兵士に渡そうと思って持ってきたやつだ。彼らがワイロを欲しがると思ったのだ。 ...
カーテンを開けると眩しい日差し。夏の朝だった。朝から暑かった。しかし窓の外は雪だった。激しく降っていた。積もってはいなかった。積もるのだろうか。 子供と一緒に予想した。どのぐらい積もるだろう。スキーができるくらいに? いや積もりはしないさ。結局その日、僕たちは外に出なかった。なので雪がどうなったのか知らない。次の日の朝はいつもどおりの夏だった。 「もう雪は溶けてしまっただろうね」 ...
郵便受けに入っていたスーパーの特売のチラシを手に歩き出すと住宅街は幟の立ち並ぶ商店街に変わっていた。驚いて後ろを振り返ったがそこはもう僕の家のある区画ではなかった。空には飛行船が浮かんでいて通りには賑やかな音楽が流れている。とにかくしばらく歩いてみることにした。 僕の家の前に着いた。どうしてこんな商店街のド真ん中に僕の家があるのだろう。玄関のドアは閉まり切ってなかった。これはいけない、...
僕の家は広い。だからなのか、たくさんの人が集まってくる。何人かは知り合いだ。さっきまで話していた。彼らは自分のウチに帰った。玄関まで見送りに出た。 2階に残っているのは知り合いの知り合いといった連中だ。寝室では女のコが2人、裸になって抱き合っている。その向こうでは誰かが煙草を吸っていた。ここは禁煙だよ、と僕は注意して窓を開けた。 ...
出かけようと思ってパジャマのズボンを脱ぎ、ブラックジーンズを探した。それは家の中にはなかった。なぜか郵便受けの中にあった。新品のように見える。サイズはちょうどよかった。それをはいて家の中に戻った。 2階のベッドには花柄のシーツがかけられていた。学校の教室のような広い寝室だ。「教室」の隅の方で妹が寝ていた。女の「先生」が妹を起こした。あれは母だろう。 なら「教室」というのはどこなの...
捨てられていた子猫を拾い上げた。僕の耳に音楽が聞こえてきた。クラシックの名曲だと思うが、どうしてもその題名を思い出せなかった。 僕は子猫を放した。そうすると音楽はやんだ。題名は思い出せないままだったが、気分は楽になった。 (猫を抱き上げるとまた音楽が聞こえてくるんだろう。どうせ題名は思い出せないんだろう。もやもやするんだろう。そんな音楽ならない方がいい‥‥) もういちど猫...
赤いランドセルを背負った小学生の女の子が日傘をさしていた。最近ではこの年頃から紫外線を気にするのだ。と思って見ていたら驚いた。女の子は急速に成長を始めた。成人して年寄りになって消えた。その間数秒。数秒で僕は寂しくなった。 ...
芝居で「アイラブユー」と喋る鹿の役を演じることになった。「アイラブユー」としか言わない。散歩中の犬に「アイラブユー」と話しかける。犬は逆上してキャンキャン吠える。町じゅうの犬が同調して吠える。なぜなんだ。 ...
スカートをはいた人が2人、ズボンが1人、そして僕、長い階段を上っていた。地上に出た。銀行の中にある食堂に入った。ランチの時間で混んでいた。 銀行の窓口のお姉さんが、注文を取りに来た。お姉さんは耳が聞こえないらしく、紙に書いてくれと言った。食べたいものと、自分の名前と、生年月日を書く。名前は代表者だけ書けばいい。ズボンをはいていた若者は偽名を使った。そして昭和17年生まれと書いた。 ...
僕は壁の時計を見た。僕の隣にいた僕の分身も壁の時計を見る。僕の分身は「時間だ」と言う。すると遠くにいた僕の分身たちが、全員近くにやってくる。彼らは何も言わない。彼らは腕時計をしていた。 ...
デビッド・ボウイの魂が僕の体に入ってくるので、僕の体の中に、僕の居場所がなくなる。 僕は幽体離脱して、ボウイの体の中に入ろうとする。うまくいく。僕は自分の携帯にメッセージを送り、ボウイの魂と連絡を取る。「イケメンの人生を楽しめよ」と返信がくる。 しばらくしてボウイの魂は天国に行く。抜け殻になった僕の体はまっすぐ正面を見ている。僕は僕のマネキンのような体に寄り添い、向き合い、彼の目...