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2005/05/05

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  • 夜警

      手に大きなキャベツの葉を持ち、ゆったりと扇ぐ。冷房はなかった。あるのは大きすぎるキャベツの葉だけだ。暑がりの君に風を送った。 「それキャベツでしょ? 食べるものでしょう?」  君は問うたが、僕は返事をしなかった。    気づくと朝だった。詰所の夜警さんが、僕たちに言う。「もう1人の夜警と話し合ったんだがね、俺たちは、もう眠らないことにしたよ、1日中起きてるんだ、ずっとね」 ...

  • 洗濯バサミ

      学校なのか仕事なのかはっきりしないが、休みたくて、布団の中から電話をしている。体調は良いわけではないが、寝てなければならないほど悪くもない。むしろ精神的なストレスからくる何かが、僕にそうさせるのだ。  無意識の内に僕は、自分の頬を洗濯バサミでつまんでいた。痛くはない。ちょっと違和感を感じるくらいだ。頬に何個か洗濯バサミをつけている。2階のバルコニーに立っている。手に色落ちした白っぽいジー...

  • コルセット

      トイレには3人の若者がいて、鏡の前で、髪を梳かしていた。  1人、凝った髪型をした男の頭蓋骨には、紐がついていた。仲間が2人、その紐を引っ張っていた。コルセットの紐を引っ張るようにして。   ...

  •   僕の首筋には、何かに噛まれた痕があった。「犬に噛まれたんだね」と大人が僕に言った。 「どうして犬だとわかるの?」僕は聞き返した。 「病院に連れて行った方がいいな」と別の大人が言った。 「誰を連れて行くんだ?」ここからは大人同士の会話だ。大人の話を聞いていると眠くなる。   ...

  • 行列

      雨の中、傘もささず、若者が行列をつくっていた。何に並んでいるのだろう。僕も最後尾につこうとした途端、「中止です」とアナウンスがあった。「中止します」。すると、ずぶ濡れの若者たちは、急に雨が気になり始めたようだった。   ...

  • 雲の上

     「久しぶり」「お久しぶりです」たくさんの人が、僕にそう挨拶してきた。  中には、本当に久しぶりの人もいたが、大抵は初めて会う人だ。  僕が、相手の顔をよく見ようとすると、彼らは帽子や手で、顔を隠す。    そして、なぜかよくわからないのだが、僕は突然、空が飛べるようになった。  雲の上では、また見知らぬ人々が、「久しぶり」「お久しぶりです」そう挨拶してきた。   ...

  • 無口な男

      いつの間にかデパートは閉店していた。出入り口に鍵がかけられてしまった。外に出られない。  途方に暮れていると、1人の男がやってきた。黒いスーツを着た、無口な男だ。どこから入ってきたのだろう。ここで何をしているのだろう。どこへ行くのだろう。話しかけても反応がないが、男についていけば出られるかも知れない。  後ろを歩いていくと、男の背丈は、どんどんと伸びた。僕の2倍〜3倍の長身になった。...

  • 沸騰

      僕が話すことに決め、実際に話し出すまでにかかった時間が、話の内容を変えてしまうので、僕は、自分でも聞いたことのない話を、聞いたこともない声で、君にするのだ。  匂いも味もしない煙草を、一口だけ僕は吸い、そうか、僕は流行りの風邪に罹ったんだな、と気づいて、けど、それも夢だ。  鍋を火にかけて、沸騰した水が、消えてなくなるのを見ている。何を料理するつもりだったのか、思い出すために、もうい...

  • 熱と光

      光が熱を失うのと、明るさを失うのはどっちが先だろうと思う。まず冷たくなって、それから消えていくんだろうか。それともまず暗くなって、そこから冷めていくんだろうか。   ...

  • 音の形

      音が近づいてくる。近づくにつれて音は小さくなる。音は僕は目の前にやってくる。もう何も聞こえない。  僕は音が君だと気づく。僕は音を抱きしめる。音は音を出そうとする。僕は音が目に見えるとでもいうように、君を見つめる。    僕が話すことに決め、実際に話し出すまでにかかった時間が、話の内容を変えてしまうので、僕は、自分でも聞いたことのない話を、聞いたこともない声で、君にするのだ。 ...

  • キッス・オン・マイ・リスト

      僕は手に何かを持っている。自分の持っているものが見えない。何だろう? それは重くはない。だがずっと持っていると手首が痛くなる。  その痛くなったところに君はキスする。すると痛みは増す。君は何度も同じ場所にキスする。痛みに耐えられなくなって僕は持っていたものを手放す。   ...

  • ロレックス

      テレビでロレックスを見せびらかしている若い女に対抗心を剥き出しにした。引き出しの中に白いロレックスが眠っていた。僕はそれを腕にはめた。そしてスーツを着て、ネクタイを締め、散歩に出かけた。並木道を1人で歩いた。誰ともすれ違わなかった。  暗くなってから家に戻り、もういちど引き出しを開けた。そこには別のロレックスがあった。家中の引き出しを開けていった。まだあるはずだった。   ...

  • 幽霊

      雪の日、寒い朝、君の吐く白い息は千切れていくつかの幽霊のようになり、廊下へ出て、順に狭い階段を下りた。僕のその、いちばん最後の幽霊の後をついて行く。1階で、幽霊たちは僕のためのパーティを開いてくれた。そこでどんな歌が歌われるのか、君は知らないだろう。   ...

  • フランス料理店

      ある男性と一緒に、電車に乗っていた。彼は僕の父親だと言う。だがどう見ても僕より若いし、僕たちは全然似てない。  僕たちは、初めての駅で降りた。駅前にある、消費者金融に用事があった。僕は借りていた金を返すのだ。彼は金を借りるのだ。  駅前に、「お1人様専用のフランス料理店」があった。ひどく腹がへっていた。でも今は駄目だ。次回、1人のときに来よう。   ...

  • 昼のアンテナ

      僕の夢の中で、彼は長身のイケメンに姿を変えていた。性格もすっかり明るくなっていたので、彼が誰だか、最初はわからなかった。画廊で絵を見せてもらったとき、やっと気づいた。画風は、昔と変わらなかった。    店は、閉店した。もう朝だった。最後まで残っていた僕は、店のスタッフと一緒に、掃除を始めた。女主人に、雑巾を渡された。あちこち拭いているいる内に気づいたのだが、鉢植えは造花だった。 ...

  • 自伝

      友人がバイトしている店で、無料のコンサートがある。それを聴きに行くと、店頭には、そのミュージャンの自伝が積まれていた。信じられないことに、日本語で書かれていたので、誰も読めない。誰も、手に取ろうとしない。  そういえば、僕は日本人だったっけ。だから日本語が、読めるんだっけ。夢中になって、頁をめくっている間に、自分が誰なのか、なぜパリに来てるのか、思い出した。   ...

  • 訓練

      韓国のどこか。「訓練」が始まった。僕は気分が悪そうにしていた妹を抱きかかえて隊長の前に整列した。ハングル語がプリントされたTシャツ(何て書いてあるのか読めなかった)を着ていた隊長は本当に韓国人だったのかと疑問に思う。いったい何の訓練だろう。僕たちは一言も韓国語を喋らなかった。  虹が子供を産んだ。そしてすぐに消えた。僕と妹。僕たちはその場所で空を見上げ、毎日虹を待った。大きくなったら虹に...

  • 雪道

      さっき降った雪が、もう溶けてる。車道は濡れて、凍っていた。スリップしたバスに、タクシーがぶつかった。次の瞬間には、パトカーが来ていた。やって来るのが、異常に早かった。サイレンも聞かなかった。  君の家の庭には、まだ雪が残っていた。ドアをノックすると、知らない人たちが出てきた。親と子供たち、家族のようだ。彼らは、町に出て行った。もう、夏だった。   ...

  • 三角

      男2人と女1人、三角関係だった。1人の男が歌を歌った。歌詞は外国語でわからない。女はその歌を聴いて、2人のもとを去った。歌わなかった男が、彼女を追いかけた。歌った男は僕のところに来て、「どう思う?」と訊いた。   ...

  •   寺で女の子が雑巾掛けをしながら僕に言う。「おならが出そうなの」 「出せば?」と僕は答える。そして僕も屁をこく。  ...

  • 盗み

      電話の声が、僕に盗みをするように促す。「盗めって、何を?」僕はペットボトルの水を盗んだ。  すると「段ボールごと盗みなさい」  僕はトラックを借りて、荷台に段ボールを積み込む。在庫を全部。誰が通報した。パトカーが何台もやってきた。そのうちの1台に、君が乗っていた。  君と、3人の偽警官。その車に乗って、僕は走り出した。   ...

  • 하駅のスタバ

      濁った水の中を歩いているようだ。いつの間にか地下鉄の하駅に来ている(実在しません)。スターバックスに行きたい。見つけた。僕らは従業員専用の入り口の前に立つ。出入り口はそれしかない。  駅の構内は冬の植物園のようでむっとする。霧が出ている。日本車が展示してあった。車内には草木が生い茂っていた。霧はさらに濃くなった。何も見えなくなった。   ...

  • ショール

      僕は君に本を読んだ。朗読しながら、町中を歩き回った。カフェのテラス席で、ランチの間も読んだ。  ショーウインドーの中の、ショールを見ている。肌寒くなってきた。背中から君を抱きしめた。雨が降り出した。君は下着をつけていなかった。  海岸に出た。海水は砂浜と同じ色だった。彼方まで砂浜がつづいているように見える。足元に海水が来ているようにも見える。木の椅子に老人が腰掛けている。その隣に僕た...

  • お見舞い

      暗殺者が僕を撃った。頭を狙った弾は外れて肩に当たった。スマホのカメラを構えた通行人が一斉に倒れた僕の写真を撮る、動画を撮る‥‥  血の海の中で僕は気の利いた最期のセリフを考えている‥‥  救急車は僕が気を失う直前に到着した。    アニメの登場人物のような青い髪をした男が病院から君に電話した。君はやってきた。お見舞いにたくさんの本を持って。  青い髪の男は、まだ電話中。...

  • 飛躍

      子供が僕に笑いかけてきた。その子は本来は、とてもシャイなのだろう、自分がなぜ知らない大人に笑いかけているのか、説明を始めた。  彼女の説明は長く、飛躍が多く、そしてわかりづらかった。(というかワケがわからなかった。)  全部話し終えると、彼女はもう笑顔ではなかった。その真剣な目は、少し怒っているように見えた。「友達になってあげようか」とその子は僕に言った。   ...

  • リモコン

      自動ドアの前に足を置いた。僕の体重は軽すぎて扉は開いてくれなかった。店の従業員が出てきて、僕にリモコンを手渡す。次からはこれで開けてくださいと言う。  僕はリモコンを手に町の通りを見て回った。いちばん大きな店に入ろうと思って。だが店は全部同じ大きさだ。(リモコンをあっちこちに向けて、開くのボタンを押した。)   ...

  • デパート前

      食事をするために僕はそのデパートへ向った。だがどうしても辿り着けなかった。最初は徒歩で向った。次は路面電車で。「デパート前」という停留所で降りればいいはずだった。  海外からの観光客がいた。彼らもそのデパートへ向うようだ。僕は後をついて行った。それでも辿り着けなかった。   ...

  • 食料品店

     舞台は2〜30年前のフランス、パリではない地方都市。エピスリーと呼ばれる小さな食料品店。コンサートに行く、君が演奏する。(食料品店の中で行われる演奏会)紙のチケットを持った人たちが並んでいる。予約はしたが僕はまだ発券してもらってない。「チケットは持ってる?」「持ってない」君との会話は英語。君は茶色いツーピース(セットアップ)のスーツを着ている。肩にかけた大きな、重そうなバッグ...

  • Tシャツにヒゲ

      レストランの案内された席についたとき、何の脈絡もなく僕はヒゲを抜きたくなった(しかし鏡がない)。  すると1人のおばさんが目の前に立った。おばさんのTシャツにはヒゲが生えていた。僕はそれを抜くことで自分の欲求を満足させたのである。      ...

  • 動物園

      小雨の中、動物園まで駆けた。  結局使う機会はなかったレインコートがポケットの中にあった。走っている内に雨は上がった。そもそも小雨だった。  動物園の中からたくさんの人が出てきて駐車場へ向う。今から入ろうとするのは僕だけのようだ。動物たちの匂いがする。動物たちの鳴き声が聞こえる。僕を呼んでいるみたいだ。   ...

  • レーニン

      彼はイクときに「レーニン」と叫ぶ癖があった。隣の部屋にいてもその声は聞こえた。「誰?」と後で僕が質問すると、彼は恥ずかしそうに顔を伏せた。そして「知らないのか?」と逆に訊いた。   ...

  • 頷く

      彼はテレビを見るのが好きだ。いつも頷きながら見ている。彼は本を読むのが好きだ。いつも頷きながら読んでる。  彼は僕の話を聞くのが好きだろうか。僕の話を聞くときには絶対に頷かない。    彼の手足は細い。昆虫の手足のように細い。僕は話をしながらその手足に生えた毛を見る。   ...

  • 硫酸

      何でも溶かしてしまう硫酸のプールにその人が両足を浸したとき悪魔がやってきたので僕は逃げた。  その人は悪魔につかまってしまうだろう。両足はもう溶けているだろう。逃げられないだろう。  だけど悪魔は言うのだ、「あのコの足は溶けないよ」 「お前の足はどうだい? 逃げられるのかい?」  僕は逃げた。「綺麗な足だね」。ここは地獄だ。エレベーターで地上に帰ろうと思いボタンを押した。 ...

  • 前向き

      子供を連れた若い母親が後ろ向きに歩いていた。 「あなた、後ろ向きに歩いてますよ」と教えてあげた。「子供もです」 「こっちが前ですよ」僕は母親と子供の向きを直してあげた。  すると母親はものすごい勢いで前に進み出した。子供は置き去りになってしまった。   ...

  • ウェスト

      ウェストが細い人形が好きだと、その人は僕に宣言した。突然のことだった。  手に「ウェストが細い人形」を持っている。 「ウェストが細い人間には興味はないんだ」 「ウェストが太い人間は?」  その質問には答えず「ウェストが太い人形は嫌いさ」   ...

  • 使者

      使者がやってきた。僕は「それ」を手に使者につづいた。「それ」は僕の手の中で形を変える。「それ」が元々何であったかはわからない。  今僕が手にしているのは銃だ。僕はスーパーにいた。真っ昼間なのに店は閉まっている。日曜日なのかも知れない。使者はもういない。僕も何でここにいるのかわからない。(銃を早く捨ててしまおう。)   ...

  • 強盗

      みんなが体操服を着て体育館で体育座りをしている最中に、僕は2人の女子と抜け出して拳銃を手に、スーパーに盗みに入った。  僕たちは拳銃で店の人たちを脅したくさんのお菓子を盗るつもりでいたが店内には誰もいなくて拍子抜け‥‥  もう拳銃は使わない。僕はそれを分解してポケットの中に入れた。結局何も盗らずに外に出た。女子2人はいなくなっていた。僕は自分が靴を履いていないことに気づいた‥‥ ...

  • 透明

      僕らが乗り込んだ車は、ドアもシートも、すべて透明だった。  後席に、君と腰掛けた。すると僕らの着ていた服も、透明になった。  しかし君はまるで表情を変えなかった。それで僕は、(僕の目にだけそう見えるのだろう)と思い込もうとした。    しばらくして目が慣れてくると、君の、ブラジャーなどの下着が見えてきた。見えたような、気がした。   ...

  • デュエット

      ステージに向う通路で、僕は僕とデェエットする歌手のキワドい衣装を初めて見た。  別に何も着なくてもいいのよ、と彼女は言った。誰も見てないから。  あなたも着なくていいのよ。観客はいない。  僕は言い返した。この服気に入ってるんだ。  あっそう。    僕たちは舞台に上がった。彼女の言うとおり誰もいなかった。バックバンドさえいなかったが、構わず僕は熱唱した。  彼女...

  • 天国

      天使が落した爆弾は、爆発するときも音を立てなかった。光も熱も発しなかった。それはただ炸裂し、そして景色が変わった。天国に人がいなくなった。   ...

  •   町は奇妙だった。何が奇妙なのか最初はわからなかった。今やっとわかった。影が長いのだ。日が傾いているわけでもないのに、ありえないほど、地平線の彼方まで伸びる影を引き摺って、人々は歩いている。  日は、永遠に高いまま。そしてなぜか、人々の歩くスピードは、全員同じ、秒速5センチメートル、みんなゆっくりだ。気づいたのだが、彼らは、ノロノロと、僕を追いかけているのだ。      ...

  • 配給のパン

      配給のパンをもらうために並んだ。その列の隣に並んでいるのは金を払って買いたい人たちだ。 「同じパンなんでしょ?」と疑問に思って僕は訊いた。 「同じじゃないわ」金持ちのおばさんたちは反論した。 「食べ比べてみようよ」僕が配給のパンを一欠片渡そうとすると、 「あなたからもらうわけにはいかない」おばさんたちは断った。  そしておばさんたちは配給の列に並んだ。財布を手に持っている...

  • 口紅の色

    「最近はこんな店で遊んでいるのね」、そこはどう見ても学校の教室だったが。  そのちょっと派手な女の人は、記憶を失った僕のところにやってきて、そう言った。 「その男、彼氏?」  女のもっと派手な友人たちが彼女をからかう。 「そうよ」と女は言った。  そしてピンク色の唇を僕に突き出し、クラスのみんなの前でキスしてと言った。その口紅の色に見覚えがあった。   ...

  • ゴミと靴

      店内で手に取ったブーツの中には、たくさんのゴミが入っていた。紙屑の他に、生ゴミもあった。僕の手持ちのゴミをそこに加えると、それ以上何も入らなくなった。  僕はそのブーツを、陳列されている他の靴の奥に戻した。  そしてまた違う靴を手に取り、とてもいい靴だねと褒めてから、試着していいかと店員に訊いた。すると店員は、裏からゴミを持ってきて、これをお使いくださいと僕に手渡した。   ...

  • 野球

      僕たちが2人で野球を始めると、見ていた人が「何をしているんですか?」と訊いた。 「野球です」と僕たちは答えた。 「一緒にやってもいいですか?」 「いえ、そのまま見ていて下さい」    その人はまだ僕たちを見ている。  通りかかった人に「何をしているんですか?」と訊かれると「野球です」と嘘を答え、 「あなたも一緒にやりませんか?」   ...

  • 獣の眠り

      目覚めると僕は毛皮のある動物になっていた。本能に従い自分の体をあちこち舐める。そうするとなぜか眠くなった。寝て起きたばかりなのに。  となりには自分と同じような動物が寝ていた。もぞもぞと体を動かし始め、‥‥彼(彼女)は目を覚ましそうだ。僕はそいつの手足を軽く舐めた。そうするとそいつはまた深い眠りに落ちる。   ...

  • 昨日

      難病の子供を手術した。治ってすぐに退院した。毎日同じ手術をしている。まるで日本中の子供がこの病気に罹るようだ。手術しても治らない者もいる。手術の順番を待っている間に手遅れになる子もいる。  「僕は治るの?」と昨日の子は訊いていた。「治るよ」と僕は答えた。「治ったらどうなるの?」「退院して家に帰って遊ぶんだろ?」「そっか」  「治らなかったらどうなるの?」「それは難しい質問...

  • 炊飯器

      炊飯器で、ご飯が炊きあがった。炊きあがってすぐに食べなかったので、それは水になってしまった。気をつけていたのだが、また米を無駄にしてしまった。もうお腹はすいてなかった。僕はその水を一口飲んだ。   ...

  • ゲームのルール

      床の青いタイルだけを踏んで移動していた。それは僕がルールを決めたゲームだった。宮殿のような家だった。1人で住んでいた。たくさんの部屋があったが、青いタイルがないせいで、僕には入れない部屋が多かった。   ...

  • 完璧な俺の

      その女性がお団子にまとめていた長い髪をほどくと、彼女に対して歌が歌われた。  完璧な俺の、俺の、俺の‥‥  という歌だ(歌詞はもう思い出せない)。   夏の海辺だった。男たちが順番にその歌を歌った。その女性の気を引くためだが、彼女は誰にもなびかなかった。  最後に僕の番になった。知らない歌だったが、何度か聞いているうちに歌詞とメロディは覚えた。  ほんとに歌わなければな...

  • 花びら運搬車

      そこ。そこには高いビルがあって、地下には地下鉄が走っている。僕は徒歩でそこへ向っている。そこは都市だ。 「時間がかかるんじゃない?」心の声が君の声色を真似して懸念を僕に伝える。 「かかるかもね」   途中、僕は川辺で桜を目にする。花は半分以上散ってしまっている‥‥   そこから僕は急ぐことにして、車に乗る。助手席に、桜の花びらが積んである。振り返ると後席も、ピンク色の花び...

  • 白い鞄

      ホテルにチェックインした。フロントの女性は僕の持っていた白い鞄に向って、「いつもありがとうございます」と言った。  鞄は「今回もお世話になります」と応えた。  僕に対しては威張り腐って「ルームのキーを受け取っておいてくれたまえ」  僕はフロント係からキーを受け取り、鞄を部屋まで運んだ。    排便中、なかなか尻を離れていかないウンコに向って、僕が「降りてね、降りてねぇ」と...

  • 草原

      大木をくり抜いてつくった家に僕たちは住んでいて、外に出ることは滅多にない。出たところで、家の周りには何もなかったし。  そこは草の生えていない草原のようなところ。地面に穴が開いていて、木でできたマンホールのようなフタがしてある。  ときどき、僕たちは、フタを開ける。すると決まって、大雨が降ってくる。わけもわからず、僕は大笑いする。びしょ濡れになって、君は踊り出す。   ...

  • 透明

      飛ぶ。だがある高さ以上に昇ることができない。空に透明な天井がある。それがおもしろくない。僕は地面を歩くことにした。動物のように四つん這いで。羽根はもうなくなっていた。  見えない雨が降っている。僕は透明な傘をさしている。傘をささないで歩いているように見える。それがすごく格好いい。   ...

  • 白い紙

      台の上に置かれた小さな紙を、みんなが覗き込んでいる。何か文字が書いてあるが、誰も読めない。僕もそれを見てみた。  そこは空港だった。けれど飛行機に乗るために来たわけじゃない。たくさんの人がいた。誰もが小さな、白い紙を手に持っている。紙には文字が一文字書かれている。僕はそれをつづけて読んでいく。(意味の通らない文章になる。)  ...

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