日々の恐怖 10月25日 足(2) もう一度自分の置かれている状況を思い出す。個室に、ひとり。顔を上げてもそこには誰の姿も見えない。それなのに、足がある。 体は金縛りのように動かなかった。俺はその姿の見えない存在に言いようのない恐怖を感じていた。足が触れ合ったまま動けないでいると、ふとその足の感触が消えた。おそらくその足が消えてなくなったわけじゃない。机の下で足が当たった時に誰しもが取る行動。どけた。ただ足をどけたのだ。 目の前の存在が多少人間的な行動をとった事で多少冷静さを取り戻した俺は、とりあえずトイレに向かった。さっきのは何だったんだ。幽霊?妖怪?用を足しながら1人考えを巡らせる。いや…
日々の恐怖 10月19日 足(1) ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。 その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。 用意された個室に案内され、俺は席についた。 部屋には、まだ誰もいなかった。 畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、 足を下ろして座れるような作りになっている。 とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。 何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。 覗いてみても何もない。 テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷き…
日々の恐怖 10月14日 IPad(2) 姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」と赤ちゃんにIPadを向ける。 赤ちゃんはその日一番長々と、「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。すると画面に、”大宮さんがきよる”と表示された。 姉が、「 えー、なんか文章になった!すごい~!大宮さんて誰かな~??」と笑う。すると祖父母が、「 えっ!?」と画面に顔を近づける。「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?名前を入れよるんかね?」祖父が不思議そうに画面を眺める。姉は、「 えっ??」と祖父を見る。 祖母が…
日々の恐怖 10月5日 IPad(1) 四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど、夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、祖父母、父母、姉夫婦、俺、そしてその赤ちゃんの8人で、居間で夜更かししていた。 田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて、それ以外には姉夫婦の車が見えるだけ。海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。 皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて、「 面白いもの見せてあげるわ!」とボタンを押した。メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述…
「ブログリーダー」を活用して、大峰 正楓さんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。