日々の恐怖 4月14日 ガノンドロフ(2) 小学5年の夏休み、部活を終えて帰宅すると、父親にビールのお使いを頼まれたので千 円札を握りしめて個人商店へと向かい、6缶パックと500ml2本を買ったあと、チョコバットも 買った。 おこづかい制ではなかったので、お釣りは貴重な収入源だった。 頼み方が横柄だったので、500mlはシェイクして、開けたときにあふれるようにせめてもの復 讐をした。 家に帰ると父親が電話で誰かと話をしていた。 6缶パックを冷蔵庫に入れて、チョコバットを食べてたら電話を終えた父親が、 「 新聞集金のおばちゃんが行方不明になったらしい。」 と言ってきた。 聞くと電話の相手は町内会…
日々の恐怖 4月2日 ガノンドロフ(1) 父親は定年になるまで、小さな工場の副主任をやっていた。豆腐工場なので出勤するのは夜中9時ごろ、帰ってくるのは午前中だった。さも当たり前のように"豆腐工場なので"と書いたが、たぶん朝にスーパーに並ぶ豆腐のために夜中働く必要があったのではないかと推測している。 夜勤生活なので平日の昼間は寝ているが、土日は日中でも俺を含めた3人の子供を遊びに連れていってくれたりして、しんどかっただろうに無理してくれてたんだなと今になって思う。だが当時の父親は文字通りの亭主関白、何かあればげんこつが飛んでくるし、短気でガノンドロフみたいな見た目なので子供の俺には怖かった。 俺…
日々の恐怖 3月23日 ガキの頃の話 (11) 食事中も、「 おっさんの家が、どうのこうの・・・。」とか、「 金持ちのおっさんに気に入られた。」「 今度おっさんから、バイオリン習う約束した。」とか、訳の分からないことを繰り返し、見かねた父親がMに、「 何があったのか全て話せ。」と詰め寄り、観念したMが賽銭泥棒のことも含め全てを話した。「 罰当たりなことして!」と当たり前のごとく父は兄弟をぶん殴った。 が、それ異常に恐ろしかったのはS・Mの母。Sを全裸に縛り上げ風呂場へ連れて行くと頭から水を何度も浴びせたあと、部屋へ連れ戻すとベッドの柱に全裸状態のSを縛り付けタバコの火を体中に押しつけた。 タバ…
日々の恐怖 3月13日 ガキの頃の話 (10) 家に戻ったMがすぐに、父親にSがおかしくなったことを言うと、父親は車で飛び出して行き、数分後にSを引きずる形で連れ帰ってきた。「 嘘やろ……?」俺は言葉を失った。「 俺も最初は嘘やとおもた。俺を怖がらせる為に、SとMが組んでまた作り話しとるんやと思った。しばらくSが休んで、二人でお見舞い行ったやろ?あの時のSのチクったっていう言葉や、Mの様子が気になったからMに、「 お前がチクったんか?」って、こっそりあの後聞いた。そしたら、この話されたんや。お前は、知らんやろうけどな、あいつらの母親ヤバイんや。身内やから渋々付き合いしとるけどな、ほんまは俺ら家…
日々の恐怖 3月4日 ガキの頃の話 (9) MはSに連れられて空き家に入ったが何にもなかった。ええもんどころか、湿気た匂いと汚い家具、外人の少女が書かれた絵が壁に掛けられているくらいの何てことない空き家だった。「 何もないやん!」と呆れるMに対して、「 こっち、来てみ!」と、Sはさらに奥の部屋へとMを引っ張った。 そこでMはギョッとした。部屋の中だと言うのに、床に砂利が敷かれていた。「 何ここ?気持ち悪い・・・。」と言うMに対してSは、「 宝石や!」と言いだした。「 宝石・・・・?」頭をかしげるMの両手を器の形にさせると、Sは床の砂利をつかみMの手の中へ、「 宝石や。」と流し込んだ。 またいつ…
日々の恐怖 2月23日 ガキの頃の話 (8) Sは雨の降る中一人、あの山に出掛けた。さすがに一人で神社へ近づくのは怖かったらしく、しばらく周りを散策しながら当てもなく山道を歩いていた。それらしい家も見つからず、飽きてきて帰宅するために山を降りるはずだった。 いつも通りに山を下れば数分で民家へ繋がるような何てこともない山道を、その日は何故か違うルートで下った。このルートも大したことはない。何度か俺たちも通ったことはあるが、単にたどり着くのが自分たちの住む村の反対側だから遠回りという理由で滅多に選ばないルートであるだけ。 その別ルートを下ったさきに数件の空き家があることも、俺も含めみんな知っている…
日々の恐怖 2月11日 ガキの頃の話 (7) そこでMがとうとう泣きだして、「 俺君は関係ない。Kも直接は関係ないけど、僕が話したから知ってる。」とだけ言うと、後は泣いて何も話さなかった。 俺とKは関係ないということで、直ぐにその場から追い出すように出された。そのまま、Kと帰宅することになるが複雑な気持ちは拭えなかった。「 俺だけ退けもんか?」と誰に言うでもなく呟いたあと、何故か悔しくて涙が流れた。「 ごめん。」とKは謝った。「 口止めされてたから。」「 どうせ、俺だけ退けもんや。お前らは兄弟・従兄弟やからな。」 と引くに引けず、俺はKに八つ当たりした。「 違う。Sがお前を巻き込むなって言うた…
日々の恐怖 1月30日 ガキの頃の話 (6) しばらく沈黙のやりとりが続いた後、そこはやはりリーダーなわけで、Sが最初に沈黙を破った。「 見ただけで、何で俺たちと分かるんや?俺たちの顔まで見たんか?俺ら一人一人の名前も分かるんか?」教師らは誰も口を開かない。立場が逆転したようにSは続ける。「 証拠もないのに、呼び出してええんか?悪さって何や?俺らが何したって言うんや?」と、一気にまくしたてたSに、「 言うてええんか?」と、Sの担任がSを牽制したが、勢いが止まらなくなったSを誰も止めることは出来なかった。「 言わんかい!」と、売り言葉に買い言葉なSをみて、俺はバレた後のことを考え始めた。しかし、…
日々の恐怖 1月22日 ガキの頃の話 (5) 帰り道の途中、どちらかが言うわけでもなく公園に立ち寄り、俺とKはブランコに腰をかけた。「 Mがチクったんやろ?」最初に口を切ったのはKだった。「 何でや?自分も一緒に居て、Sにお菓子買って貰って食べた癖に。しかも、Sは兄ちゃんやぞ。」とKはつづけた。「 だいたい、誰にチクったんやろ?」そんな話をしながら何も答えもでず、Mは裏切り者ということだけが延々と繰り返された。 それからしばらくしてSは学校に登校してきたけど、何となく俺もKもあの日以来、SとMに近寄ることを避けた。放課後に4人で帰ることも遊ぶこともなく、自然と俺・KとS・Mという組み合わせで別…
日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4) 風邪の割には中々登校してこないSを、俺もKも心配して何度もMに、「 Sの風邪、大丈夫か?」と尋ねても、「 Sは熱と言ってもそんなに高熱じゃないし、咳も出よらん。元気にしとるけど、体にブツブツが出来て、それが引かんから登校出来んだけ。」と聞かされた。 医者に行ったけど伝染病の類いでもないし、蕁麻疹と診断され大事をとって休んでるとのことだった。それを聞いて安心した俺とKは、「 うつる病気じゃないなら会いに行けるし、今日、一旦家帰った後お見舞いに行く。」とMに伝えた。 放課後、見舞いに行くとMから聞かされた通り、Sは元気そうな様子で俺らを迎えてくれた。「…
日々の恐怖 1月4日 ガキの頃の話 (3)そんな俺らを気にも止めずSは、「 あのおっさんが賽銭置きに来よったん辞めたんやろ。あいつ、俺が盗みよるの見たから置きにくるん辞めたんやわ。」Sによると最後の賽銭に有り付いた日、その日は五百円玉と十円玉が数枚。「 まぁ、こんなもんか・・・・。」と賽銭をくすねて駄菓子屋に向かうために山を下りようとした時、山の反対から男が登ってくるのが見えた。賽銭泥棒がバレたと思ったけど一向に男は神社に入ってくる気配もなく、ただじっとそこに立ち止まっていただけだった。 何故、俺達に今まで黙ってたかと言うと、” 誰もおっさんの気配に気付いてないことが怖かった。みんなに確かめて…
日々の恐怖 12月26日 ガキの頃の話 (2) ただ毎日賽銭にありつけたわけじゃない。最初に書いた通り寂れた神社だ。寧ろ賽銭がある方が謎なくらい。それでも、毎日通えば2週間に1回くらいのペースで数百円の賽銭を見付けることが出来たし、運が良ければ千円札の時もある。ガキの頃の話だから曖昧で、賽銭箱があったかどうかは定かではないが、賽銭はいつも箱には入っていなかったように思う。 無造作に置かれていて、簡単に盗めたと記憶している。賽銭箱をほじくったり何か道具を使ったり苦労して盗んだ記憶もない。それも盗みを働いてる罪悪感を薄めた要因のように思う。 そんな日が続いてしばらくは遊び場にも困らず美味しい思いを…
日々の恐怖 12月17日 ガキの頃の話 (1) もう40年近く前、ガキの頃の話。田舎の悪ガキだった俺は、大人から立ち寄ることを禁止されていたある場所に、秘密基地と称して学校帰りに遊びに行くのが日課だった。 何故、禁止かと言うとそこは町内では知らない人はいないというくらい有名な自殺スポット。小さな山を少し登ると寂れた神社と境内に大きな木があって、その木で首吊り自殺が時々おきるような場所。 俺らの親が子供の頃から有名らしいが、頻繁に自殺騒ぎがあるわけではない。忘れた頃に誰かが首を吊るというような数年に一回有るか無いか。ただ、俺の田舎は如何せん閉鎖的な小さな村だから、「 〇〇とこの××さん、自殺神社…
日々の恐怖 12月14日 コンビニの災難 (3) しかし奇妙なことに、捨てられた時間帯にいたはずの店員や当日いたという客も含め、誰もゴミを持ってきた人間を目撃していないというのである。ゴミ箱に投棄する音などの気配すら無い。監視カメラには入店して捨てて帰るまでバッチリ映っているのに、その間は誰も気付いていないのだ。 原因は何なのか心当たりはあるのか聞いてみると、彼は暫く考えた末に、「 なくはないんですけどね。」と答えた。「 ホラ、ウチの店の裏に神社あるじゃないですか。」壁に遮られて見えない神社の方角を指差す。「 神社の駐車場に、あるゴミを投棄していくヤツが増えてるらしくてですね。」「 ゴミ箱を店…
日々の恐怖 12月5日 コンビニの災難 (2)するとアッサリ犯人は判明した。近所にある幼稚園に勤める年配の男性事務員さんだったそうで、供述によると、” 園で管理していた園児の短パンが不要になったため、コンビニに捨てただけ。”という迷惑きわまりない理由だったそうである。「 そりゃあまた迷惑な話だなあ。しかし、幼稚園で短パンなんて管理してるものなのかね?」「 警察もそこは疑問に思ったらしくてですね、いまも調査中なんだそうですよ。」なかなかに業の深そうな話だったが、語る店員の顔は優れない。どうしたのかと尋ねてみれば、話のオチはそこではないらしく、むしろそれが始まりだったのかもしれないと大きな溜め息を…
日々の恐怖 11月23日 コンビニの災難(1) 取引先のコンビニで店員さんから聞いた、数年前の話です。大抵の場合、今のコンビニはゴミ箱を店内に設置している。これは家庭で出た未分別のゴミを投棄されたり、収集車に回収してもらえなかったゴミ袋をゴミ箱の前に放置していったり、衛生上問題のあるゴミを入れられたり、充分に火を消していないタバコの吸い殻や熱を持った状態の灰皿の中身を捨てられて火事になるのを防ぐ為でもある。 そのコンビニも最初はゴミ箱を店の外に置いていたそうだが、レジカウンター周辺の改装を期に店内へと移設した。やはり家庭ゴミの放置等が問題になっていたのと、立地的に店舗のすぐ裏の山に稲荷神社があ…
日々の恐怖 11月16日 国有鉄道宿舎(3) とりあえず何とかなってるからいいか、と思っていたのも束の間、ある日、夜8時過ぎに電話がかかって来た。障子の向こうから、とうに亡くなったはずの自身の祖母から語りかけがあった、という電話だった。今現在、襖が開かないので外に出られない。どうしよう、というものだった。 内容が内容だけに、合鍵を持って今から宿舎に行くことになり、中学生の私も同行することになった。ただでは行けないので、知り合いのお寺でお札と御守りを貰って行くことにして、さっそくお寺に電話すると、「 すぐ来なさい。」とのこと。お寺でお経をあげてもらい、お札と御守りを持って父のいる宿舎へと向かった…
日々の恐怖 11月10日 国有鉄道宿舎(2) 日は山に沈もうとしている。私は、” 一見してのどかでいい街だなぁ・・・。転校してこの街に来たら、どんな毎日だったかなぁ・・・。”と考えながら、玄関を出て通りまで歩いて自販機のジュースを買って戻ると、縁側に座った母が驚いて声をかけて来た。「 今までお前がトイレから風呂場にかけて掃除をしていたのではないか?下から登って来たから驚いた。今の今まで音がしていた。」という。 私は縁側から駆け上がってトイレから風呂場、台所、寝室と見て回ったが、何の姿も無かった。私がさっきトイレから出たら人の気配がしたと母に告げると、とりあえず戸締りをきちんとして暗くならないう…
日々の恐怖 11月2日 国有鉄道宿舎(1) かつての国有鉄道には宿舎があった。アパートみたいなところから一軒家のようなものまで様々で、家族が住んでいる、管理局のある街とは離れたところへ転勤命令が出た場合、単身で赴任先の街に行く事がしばしばあった。 父も、とある街へ首席助役として赴くことになったが、機関区の近くの宿舎ではなく、300mほど離れた小さな山の中腹にある一軒屋、いわゆる高級宿舎に入ることになった。最も、山と言ってもその街の駅前にある繁華街の傍なのだが、山のふもとにある専用の駐車場に車を止め、斜面を歩いて20mも登るかどうかの距離でその宿舎の玄関まで行くことができた。 昭和の終わり頃の当…
日々の恐怖 10月25日 足(2) もう一度自分の置かれている状況を思い出す。個室に、ひとり。顔を上げてもそこには誰の姿も見えない。それなのに、足がある。 体は金縛りのように動かなかった。俺はその姿の見えない存在に言いようのない恐怖を感じていた。足が触れ合ったまま動けないでいると、ふとその足の感触が消えた。おそらくその足が消えてなくなったわけじゃない。机の下で足が当たった時に誰しもが取る行動。どけた。ただ足をどけたのだ。 目の前の存在が多少人間的な行動をとった事で多少冷静さを取り戻した俺は、とりあえずトイレに向かった。さっきのは何だったんだ。幽霊?妖怪?用を足しながら1人考えを巡らせる。いや…
日々の恐怖 10月19日 足(1) ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。 その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。 用意された個室に案内され、俺は席についた。 部屋には、まだ誰もいなかった。 畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、 足を下ろして座れるような作りになっている。 とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。 何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。 覗いてみても何もない。 テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷き…
日々の恐怖 10月14日 IPad(2) 姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」と赤ちゃんにIPadを向ける。 赤ちゃんはその日一番長々と、「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。すると画面に、”大宮さんがきよる”と表示された。 姉が、「 えー、なんか文章になった!すごい~!大宮さんて誰かな~??」と笑う。すると祖父母が、「 えっ!?」と画面に顔を近づける。「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?名前を入れよるんかね?」祖父が不思議そうに画面を眺める。姉は、「 えっ??」と祖父を見る。 祖母が…
日々の恐怖 10月5日 IPad(1) 四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど、夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、祖父母、父母、姉夫婦、俺、そしてその赤ちゃんの8人で、居間で夜更かししていた。 田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて、それ以外には姉夫婦の車が見えるだけ。海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。 皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて、「 面白いもの見せてあげるわ!」とボタンを押した。メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述…
日々の恐怖 9月22日 40男の夏(3) 更に月日は流れ、数年前の夏。 小5の息子が夏休みと言うこともあり、家でダラダラと過ごしていた。 そこに、暑さでイライラしていたのか、俺の嫁から外で遊べとカミナリが落ちた。 昼飯を食べたあと、仕方なく息子は3DSを握りしめ自転車に跨がり、 友達が集まっているであろう図書館へ行こうとした。 が、何を思ったのか、息子は自転車に乗って件の山へ向かった。 「 名前を呼ばれたから。」 と後で言っていた。 それから夕方になった。 が、17時になっても息子は帰って来ない。 友達のとこで時間を忘れて遊んでいるのかと、あちこちに電話したがいない。 町内も探してみたが、全…
日々の恐怖 9月13日 40男の夏(2) そして月日は流れ、俺がまだ鼻たれ坊主で、ファミコンが出るちょっと前の夏休みのことだった。当事小4だった俺は、友達3人と一緒に朝から山へクワガタを取りに行った。その辺りの山は一族(と言っても、親父を含めその兄弟)で所有している山だ。だから普段からよく遊んでいた。迷った事は一度もなく、その日も奥へ奥へと進んで行った。 最初のうちは四人仲良く虫を捕っていたが、やはり虫の大きさで争いが起こり、「 自分だけででっかいの捕ってやる!」となり、それぞれがバラバラに虫捕りを始めた。木を蹴飛ばしたり、登ってみたり、根元を掘り返してみたり、夢中になって虫を探していた。 太…
日々の恐怖 9月1日 40男の夏(1) 40男の夏は妙に熱い。もう100年は前のことだ。父方の祖母には2歳離れた兄(俺の大伯父)がいた。その大伯父が山一つ越えた集落にいる親戚の家に、両親に頼まれ届け物をしに行った。山一つと言っても、子供の脚で朝一に出発すれば夜には帰って来られる位くらいの距離だ。歩き馴れた山道で、大伯父はいつも朝一に出て、夕方ちょっと過ぎには帰って来ていた。 しかしその日は、夜を過ぎても大伯父は戻らなかった。向こうの親戚の家に厄介になっているのだろうと、両親はあまり心配もしていなかったが、2日経ち3日経ったところで、そろそろ畑仕事も手伝ってもらいたいからと、親戚の家に大伯父を迎…
日々の恐怖 8月20日 監視カメラ コンビニの店長さん(故)から聞いた話です。最近のコンビニは死角を無くすために監視カメラだらけにしてるんだけど、店長さんがいたコンビニも、通常より2台増設して万引きなどの犯罪対策に熱心だった。(実際、深夜に発生した強盗未遂では犯人逮捕に繋がった)「 時々カメラが止まるんだよね。」店長さんは眉を八の字に傾けながら愚痴を漏らした。カメラ自体や録画機器の故障で一斉に止まるのではなく、順番に止まるのだという。「 どんな順番で?」「 駐車場から自動ドア、本の棚がある窓際の通路からソフトドリンクのコーナー、お菓子の棚、弁当のコーナー、自動ドア側とは反対のレジ、自動ドア、駐…
日々の恐怖 8月13日 ゆっくりと歩く女の人(2) しばらくして、祖父母ともに相次いで死に、俺とオカンは介護から解放された。正直、祖父母が死んだ時、俺はほっとした。やっと死んでくれた。もう夜中にトイレにつれていけと喚く人はいなくなったんだ。その癖、わざと目のまでうんこもらして、お前のせいだと、さっさと処理しろと喚く人は消えたんだ、と嬉しくて泣いてしまった。 後ろめたさから、その後俺は祖父母のことについて話を一切しなかった。オカンも同じような感じだったから、きっと同じように思っていたんだろう。 俺は逃げるように実家から出て、一人暮らしをはじめた。一周忌・三回忌・七回忌、すべて理由をつけて拒否した…
日々の恐怖 8月3日 ゆっくりと歩く女の人(1) 12年前の話です。当時、俺はオカンと2人で父方の祖父母を介護していた。 もともと祖父が事故で身体障害になり寝たきり、その後介護していた祖母が認知症になり、長男である父が引きとったものの、本人は介護する気なし。姉は既に結婚していて、弟はその話がでた直後に遠方の専門学校に入学を決めて逃亡。仕方なく、母と当時大学生だった俺と2人で介護することになった。 介護は想像以上にきつく、俺もオカンも交代で精神科に通いながらの介護で、夜は眠剤つかって寝ていた。お互いギリギリのなか、俺も介護だけじゃなく家事も手伝うようになっていた。 その日、夕方にうんこもらした祖…
日々の恐怖 7月29日 飲食店の紹介の仕事(4) 無視して撮影続けて1時間くらい経った。一発目の定食でシャッター押す前、モニターで店長と構図確認してたら、フレームの左上からいきなり赤い何かがさっと入って引っ込んだ。 一瞬だったけど、見えたのは真っ赤に爛れてる手だった。ひどい火傷した状態の手。ただ被写体と比較すると実物はかなり小さいし(3歳児くらいの大きさ)、店長も一緒にモニター見てるんだけど何も言わないから、” 見間違いかなぁ・・・・。”と思って続けて、また30分くらい経った頃、いきなり店長が、「 も~。」って呆れたように呟いて上を向いた。 で、厨房から戻ってくると小皿1枚。” もしかして料理…
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