三日目「線とことばが交わるとき」 昼休み。 教室の空気が少しだけざわついていた。 「ねえ、あれ……昨日の机だよね?」 誰かの声に、自然と視線が集まる。俺も気になって見に行った。落書きが書かれていた、あの机。今度は――そこに、小さな“絵”が添えられていた。 言葉のすぐ下に、鉛筆で描かれた一対のスニーカー。雑なのに、妙に温かい。春の午後、少し埃っぽい廊下を歩いているような、そんな匂…
二日目「名前のない落書き」 放課後の教室には、まだ春の光が残っていた。 ガラス越しの西陽が机を照らして、影が長くのびている。窓の外ではグラウンドから野球部の掛け声が聞こえてくる。 そんな風景の中、俺はひとり、席に戻って筆箱を探していた。 ……なかった。昼休みに英語の辞書と一緒に出したはずだ。ロッカーにも机の中にも見当たらない。仕方なく机の下を覗き込んだとき、不意に目に入った。 机…
第一話「最初のページに風が吹く」 風がやけにあたたかい朝だった。 駅前の桜は満開を越えていて、花びらを落とすことに夢中になっていた。まるでこの春に間に合わなかった誰かを急かすように、はらはらと空を舞っていた。 俺は制服の襟を直しながら、自転車を押して坂をのぼっていた。今日から高校生活。中学のときの友達はそれぞれ違う道を選び、俺は誰一人として知り合いのいないこの高校に進んだ。期待よりも、…
第十話 光の書の真実 「ここまでご苦労だったな……だが、この先へは行かせない」 カインが鋭い笑みを浮かべ、手にした短剣をくるりと回す。その背後では黒蛇の部下たちが静かに剣を構えていた。 「ここで終わりだ、お前たち」 「そう簡単にやられるわけないでしょ!」 リナが杖を振り上げ、炎の魔法を唱える。 「ファイア・ストーム!」 灼熱の炎が渦を巻き、黒蛇の部下たちを包み込んだ。悲鳴を上…
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