本の魅力を発信していくためのブログです。 小説を中心に、様々な書籍を2000字で紹介します。 「このブログを見ていれば、最近の文学界隈まる分かり」、そんな風に思ってもらえるよう、頑張ります。
関西在住の会社員。黙々と本を読んでいます。
2024年10月
【書評】平熱のまま、この世界に熱狂したい|弱き者の握る、櫂の力強さ【宮崎智之】
F・スコット・フィッツジェラルドは失われた世代を代表する黄金の作家だった。 彼の代表作である「グレート・ギャツビー」は世代を超えて愛され、何度も映画化されている。その名はある種のダンディズムの象徴とされ、日本では男性整髪料の名として広く知られている。 ギャツビーは哀れなほど愛に生きた男だった。その絢爛豪華な日々と、それとは対照的な寂しい最期を、私はフィッツジェラルド本人に重ねざるを得ない(或いはフィッツジェラルドの死を、ギャツビーに重ねると言うべきか)。 フィッツジェラルドの好んだ死というのは、どうしようもなく致命的で、自己破壊的で、ロマンチックだった。どの本で読んだのだったか、彼を捉えた最期…
【書評】決定版カフカ短編集|外的な不条理と感傷の不在について【フランツ・カフカ】
初めて読んだカフカは、新潮社から出ている「変身」だった。世の中の多くの人がそうではないだろうか? あれは高校生のときで、私は軽音楽部に所属していた。ロックバンドという響きに憧れ、大きな声で叫ばれた言葉こそ真実だと思い込んでいた。そこで組んでいたバンドのベースが、フランツ・カフカと顔がそっくりだったのだ。それだけの理由で私は「変身」を手に取った。 「変身」は救いのない話である。実のところ、初めて読んだとき私はその内容にあまりピンと来なかった。私の中にカフカという作家を受け入れる為の受容体が用意されていなかったのである。 こいつは凄い作家だぞと思い始めたのは、その数年後、大学入ってからのことで、「…
【書評】「レーエンデ国物語」ファンタジーが世界を創造する【多崎礼】
もうかれこれ十年以上前になるが、私はファンタジー小説というものを読み漁っていた。 始まりは確か、イ・ヨンドの「ドラゴンラージャ」だった。ドラゴンあり、魔法あり、お喋りな魔剣や女盗賊や心優しいエルフあり、ファンタジーの魅力をみっちりと詰め込んだ冒険譚である。 そんなファンタジー世界にどっぷりと嵌ってしまった私は、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」やラルフ・イーザウの「ネシャン・サーガ」、中学生男子の誰もが通る「ダレン・シャン」、ジョナサン・ストラウドの「バーティミアス」なんかも読んだ。ちなみに、ファンタジーと言えば真っ先に名前が挙がるトールキンの「指輪物語」は二巻ほどでストップしている。映画で見…
最早10月の折り返し地点、9月の振り返り記事を書くのも些か遅すぎるのではないかと思わないでもないけれど、私のポリシーとして「書評ブログが雑記ばかりではなさけない!」というものがあり、ずるずると後ろに伸びてしまった。 そんな訳で、今更のように9月の振り返りである。 今年の夏は暑かった。正直、今も夏を完全に脱し切れた感覚はない。にも拘らず、世間でのクールビズ期間は終わり、私もネクタイを首に巻いている。最早秋は感じるものではなく演じるものである。しかしそうは言っても、クーラーで涼みながら本を読むというのは気持ちのいいもので、来月の電気代を除けば良い夏の過ごし方をしたのではないだろうか。9月はそんな具…
10月に入り、漸く秋らしい気候になってきた。季節を感じさせるものは、何も気温や年間行事だけではない。夏アニメの終わりもまた、世の移り変わりを示す鏡である。 今年の夏、私が最も楽しみにしていたアニメは「逃げ上手の若君」だった。原作は松井優征さんという方で、「魔人探偵脳噛ネウロ」や「暗殺教室」などヒット漫画を次々世に出している超売れっ子である。製作はCloverWorksさん。こちらも瑞々しい演出で名作を世に多く生み出している。 さて、肝心の「逃げ上手の若君」であるが、こちらの主人公は北条時行。足利尊氏によって滅亡に追い込まれた、鎌倉幕府の生き残りである。逃げ上手というタイトルは、この時行が尊氏の…
【書評】『「性格が悪い」とはどういうことか――ダークサイドの心理学』【小塩真司】
はてさて困ったものだ。 最近、私が勤める会社の人事異動があり、パワハラ気質の上司がやって来てしまった。高圧的で労働環境を悪くするが、一部お気に入りからはカルト的人気があり、数字も出している――つまるところギリギリのラインを攻める人物であり、明確な被害が出るまでは誰も手を付けることが出来ない。そういう暴走機関車のような人物のもとで働くことになってしまった。就労意欲の低減が骨無に沁みる毎日である。 そんな中、書店をぶらついていて本書に行きあった。是が非でも買わなければならないと、私の本能が叫んでいた。本当のところを言えば、私は本書を読んで、その上司の欠点に論理的な根拠を添えようとしていたのだろう。…
短歌というものを始めたのは、とにかくブログの宣伝をしたいが為であった。 『X』でアカウントを作ったとき、何かしら人目について、かつ文学的な内容を簡潔に表現できるものを探そうと思って、思い付いたのがそれだったのだ。動機としてはかなり不純な部類に入るだろう。 そうは言いつつも、始めてしまったのだから引くに引けない。大体ひと月ほど毎日詠み続けてきて、素人なりになんとなくコツらしきものも見えて来た。コツというより、方向性とでも言うべきか。そんなノウハウめいたものを明け透けに出来るほど通暁してはいないのだけれど、まあこれも経験と思ってまとめてみたい。 もし今夜地震が来たら大変だね それは愛の告白かしら …
2024年10月
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