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2023/10/11

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  • スケルトンデバイス

    恋なんて簡単ですよ。AIがそんな文字を映し出すものだから、わたしはムッとしてキーボードを叩いた。では堕としてごらんなさいな。先ほどまで異常に動いていたPCが静かになり、小さくただピッと音を鳴らした。いいですよ。古都子は三十路手前の女だ。容姿は彼女に言わせれば下の下らしいが、実際の所はもっと見目の良いものだ。何故そのような認知の歪みが出るのか?それは彼女自身のプライドのせいだろう。今も目の前のPCと...

  • 内緒話

    旦那様、わたくしは言ってない事がございました。本当は言うつもりなど存在しなかったとお思いでしょうが、本当に旦那様はわたくしをよく知っておいでです。結婚式の後のことです。わたくしは朝から結婚衣装に身を包んで、昼、夜と旦那様の隣におりました。本当にクタクタで、旦那様はわたくしと目が合うたびに、大丈夫か?と心配をくださいました。ええ、大変嬉しかったのを覚えています。疲れきっておりましたから、お部屋に戻っ...

  • 薔薇の園

    僕は毎日を生きている。朝起きて食事をして、出かける支度が済んだら家を出る。でもその前に君の部屋のドアを叩いて、行って来ますのキスをする。笑っているように見えるから機嫌がいいのだろうと、僕は仕事をして夕方には家路に着く。そしてまた食事をして眠る。僕の住む町は煉瓦の壁が続いていて、どこもかしこも赤い。高い場所から眺めると、迷路みたいだと観光客が言っていた。僕は迷路の意味がわからずに聞いたっけ。観光客は...

  • 輪廻

    世界は遠回りを続けている。星がこの町を一回りしたとして、この地面には美しい影が映り、光が差し込んでは消えていく。風が吹き、全てを包み込んで、木々を揺らし、草花が揺れると小さな花びらの中から羽虫が飛んでいく。鮮やかな景色の中で瞼を閉じるだけだ。世界は遠回りをしている。夢を見る。世界の夢を、見続けている。どうしてここにいるのかも分からずに、ただここにいて夜空を見上げている。星が流れ、願い事をすれば叶う...

  • mozart 07

    老人は一人小さな箱の前にいる。箱には貝殻の混じった砂と赤い土が入っている。それを時折、手に取っては捏ねて丸めてを繰り返す。老人の手元には得体の知れない形のものが転がっている。幾つかは少し壊れて歪に見えた。老人は手の平で丸めて小さな団子を作る。もう一つ小さな塊を捏ねると細長い形を幾つか作った。それを小さな団子につけていく。形を整えて手の中に包み込むとふうと息を吹き込んだ。すると手の中の団子がぴくぴく...

  • mozart 06

    森を火が覆いつくし、煙を上げて燃え上がる。木々のざわめきの中で動物達は一斉に駆け出した。皆同じ方向へひたすら走っている。小さな獣は大きな獣の背に乗り、互いを助け合い、灰が降りしきる森を走る。枝葉が燃え、火がついたまま落下する。その隣の木にはルリビタキの巣があった。小さな小鳥は緑の葉を銜えてゆっくりと飛び立つ。青い羽根を広げて、動物たちの後を追った。『誰が燃した?誰が森を?』灰が降りしきる小道を道化...

  • mozart 05

    戦ばかりで人が死ぬ。お触れが出る度に人々の心は枯れ果てて、遂には傭兵が街に住むようになった。町の人々は始めの頃は喜んだ、彼らのおかげで戦に出ずとも幸せに暮らせるのだと。しかしそれもすぐに終わりが来た。傭兵は当たり前の権利だといい、酒場や店で踏み倒し、道を歩く女を見つけると自分達の下へ引っ張り込んで犯してしまう。酷く暴れたために殺された者もあり、時折町の片隅に身包み剥がされて棄てられている。人々は傭...

  • mozart 04

    町外れの小さな教会には誰もいない。いや、たった一人牧師だけが悔い改めている。石造の前に跪き、両手を組んで頭を垂れていた。明朝にはきっとまた多くの子供が川で見つかることだろう。耳を澄ませると今朝からの雨がまだ酷く降っている。また増水は免れない。昨日説教した言葉を思い出して牧師は顔をあげた。ふと床板がきしむ音がして牧師は振り返る。そこには一昨日酒場であった男がいた。その男は若い紳士で、神が端整を込めて...

  • mozart 03

    鶫が空を飛んでいる。街を挟む石の橋を旗のかかった棺が運ばれている。橋の下は昨日の大雨で増水し川べりを削っていた。雨は長く続いている。だらだら降ったかと思うと、急に大雨になり、嵐が来る。風が酷く吹く時は、街の家々はどこかしら不具合が出た。雨漏りに屋根の欠損、それから川の増水を気にした老人が行方不明となり、その週末あたりには死体で見つかった。老人だけならまだしも子供が見つかると街は通夜のように静まり返...

  • mozart 02

    愚か者どもの行進だ。パペットが奇妙で奇抜な服を着てラッパを吹きながら人々を引き連れている。ぞろぞろと歩く愚か者どもの服はボロボロで、金も家もない浮浪者だ。街の者たちはそれを屋内で眺めている。ほんの少し開けた窓の隙間から、ドアの隙間から、何も言わずただじっと見ている。パペットは時折道の端にある家々に視線を投げる。それは恐ろしい目つきで、見られたものたちは瞬時に戸を閉めた。今までも愚か者たちはこの街に...

  • mozart 01

    夢は夢、まどろみの中でみる国の安寧など望んではいない。全ては奪いつくすためにあるのだと、人々は手に武器を持ち、知らない者は敵だとする。世界はゆっくりと闇に落ちていた。教会の屋根の上に何かがいる。地上では殺戮と略奪が続いているのを、それは普通の光景だというような顔で見つめている。人々はそれには気付かない。目の前にある欲望と飢えに興奮している。屋根の上のそれは足を組むと小さな声で歌い始めた。聞いたこと...

  • I DO 30

    血だまりに座り込んでいたアライはその場に倒れこみ、ゆっくりとまた参加者たちのほうへリクドウは歩き出した。参加者達も今度ばかりは絶望し、中には神に祈る者までいた。雨は少し小降りになり始め、それでも狂乱は続いている。一番隅で泣いていた男をリクドウは引っ張り出す。優しい口調で宥め始めた。『君は怖くないのかい?』『こ、こ、怖いです・・・。』『正直だね、いい子だね。』そっと頭を撫でてやり、その手で男の目を突い...

  • I DO 29

    恐ろしい光景に参加者たちが一斉に顔を背ける。それに気付いたのかリクドウは笑った。『なんだ、助ける気もないのか。こんなに可愛い子なのに。あ、君素敵な顔をしている。ほら、もっと怒ってごらんよ?』地面に手をついて睨みつけているアライが歯を食いしばった。何かに耐えるように拳を握る。『なんだ・・・君も駄目かい?じゃあ仕方ないね。』リクドウが彼らの目の前でソメキを弄ぶ。服を剥がされてソメキの泣き声が響いてくる。...

  • I DO 28

    雨雲が広がり雨が音を立てて降り出すと、公園の中は一層暗闇に包まれた。秘密のパーティの参加者たちは大きな木の下に入り、空を見つめている。少女は隣にいる女性の手を不安から握り締めると、女性は微笑んだ。『大丈夫だよ。ねえ、まだ自己紹介してなかったね。私、アライよ。』『ソメキです。よろしくお願いします。アライさん・・・私たち大丈夫なんでしょうか?私もうずっと怖くて。』『どうだろう。私にもわからない。でもソメ...

  • I DO 27

    ポリスのクレームを聞き終えてうんざりした顔で対策本部に入る。カツラギは青い顔をしてラップトップの前のタカハシを見た。『どうしましたか?』『あ、カツラギさん!』タカハシの傍に近づき彼の見ているディスプレイを確認する。『これって・・・ミライの?』『そうです。ミライ君のです。ここ見てください。』『・・・?本日二十時より秘密のパーティを開始。一緒に治しましょう?』『ここも見て下さい。』指で操作しメールを開く。メ...

  • I DO 26

    照明器具の横にカメラが置いてある。女は裸の体に腕を巻きつけて、先ほど脱いだ服に手を伸ばそうとした。『何をしてる。こっちへおいで。』甘ったるい匂いが充満している。女は戸惑いながら彼の手を取った。『・・・ねえ、ここあんたの部屋なの?』『そうだよ。ほら膝にお座り。』男の膝の上に腰かける。これから多分この男に抱かれるのだろうが、体の震えが止まらない。何か異常なのだ。テーブルのワインを飲み干して男は女にキスを...

  • I DO 25

    ラザロたちの捜索で、公園での黒い女の怪物に変身していた女と、路地裏で少年達を殺した黒い怪物に変身していたと思われる男を病院で保護した。二人とも嫌にリアルな恐ろしい夢を見ると精神科に通院していた。彼らの事情聴取を行い、夢のような時間として話が聞けた。女は以前あの公園で被害にあった者で、トラウマを克服すべく治療を続けていたが、あの日少女が追われているのを見てしまった。女は少女を隠れて追っていたが、柄の...

  • I DO 24

    あの事件以来、繁華街は夜になると人気が少なくなっていたが、それ以外ではやけに目立つ連中が集まり始めていた。店も居酒屋などは深夜近くまで開いていたがこの頃には二十四時を回るころには閉店し客を帰していた。売春倶楽部だけが煌々と看板をつけている。その前にいるのは金持ちの頭のいかれた奴かギャングくらいだった。ポリスは彼らギャングとは交渉済みで、所場代と問題さえ起こさなければ何も関係することはない。軍にもこ...

  • I DO 23

    『だから秘密のパーティか。』『ええ、意味が分かるものだけが来るでしょう、日時はラザロさんたちの結果を待って決めたいと思っています・・・駄目でしょうか?』ミライは上目遣いにカツラギを見る。『駄目って言ってもやるんだろうが・・・無茶はするなよ。』『はい!』すっと立ち上がりカツラギはドアに近づいた。『俺は一旦席を外す。戻るのは明日・・・になる。悪いがそのつもりで。』そう言い残して彼は部屋を出て行った。二人きりに...

  • I DO 22

    繁華街での事件は絶望的だった。多くの人々が目撃し皆が口々に噂する。デマも何もかもを食い尽くしたかのような話が吹き荒れている。繁華街は一時的に立ち入り禁止とされ、大掛かりな清掃が行なわれた。ポリスでも何人死んだのか把握できておらず、行方不明の連絡が後を絶たない。またこれも遊びの一環として使われ、状況は酷くなる一方だった。対策本部ではカツラギの話を聞いたタカハシが大体を纏めてくれていた。しかし防ぎよう...

  • I DO 21

    繁華街にて黒い化物が暴れている。通報を受けてカツラギは急いでいた。現地でラザロと合流となっているが、彼のいる場所が離れているためカツラギは走っている。どうやら現場に近づくごとに立ち止まっている人が多いことから、相当の人間が目撃している。ぜえぜえと肩で息をして唾を飲み込んだ。遠くで悲鳴が聞こえてカツラギは視線を上げる。そこには黒い影が聳え立っている。ビルの大きさくらいはあるだろうか。カツラギはホルス...

  • I DO 20

    最愛だと感じていた。なのにどうして?タイガは目の前に横たわる血だらけのユハナを抱き寄せる。涙が止まってしまった。背中を蹴られてユハナを守るように腕で包み込む。『ほら、死ねよ。早く。』罵倒され、頭が酷く痛んだ。なのに痛みはなくなり、じわじわと体が燃えていく。タイガはゆらりと立ち上がった。ユハナをそこに置いて後ろを振り返る。さっきまで酷く自分を詰っていた小さな男がそこにいた。夕刻。タイガはユハナと二人...

  • I DO 19

    ビジネス街の古い建物は廃ビルだ。入り口は鎖で施錠されているが裏口のドアの鍵は壊れていた。電気は通っておらず中は真っ暗だ。裏口付近には幾つかの汚れた靴が落ちている。暗い廊下を進むと水音が響いている。用務員室と書かれた部屋から聞こえている。用務員室には汚れた服が詰まれて酷い臭いがしていた。水音が止まり、タオルで体を拭きながら青年がふらりと現れた。細身の体は筋肉質で濡れた髪は癖なのかクシャクシャしていた...

  • I DO 18

    トオルは事件が起きた時のことをよく覚えていた。時々泣き出しそうになると、小さな拳を握って堪えるように俯いた。『それで・・・君の前で犯人の男が黒い怪物になったのかい?』『そうです。びっくりした・・・。』その顔に嘘はなかった。トオルの聴取の前に塾にいた生存者たちの聴取も行なわれていた。その証言から犯人はトオルにかまっていた事が分かっている。『何を話したのかな?』その質問の意味にトオルは首を捻った。この少年は...

  • I DO 17

    事件が起きてから二ヶ月が経とうとしている。その間も黒い影の目撃情報、殺人事件、模倣事件などは絶えず起きていたが、人々の関心は少しずつ薄れていき、大きな話題に上がることはなかった。ただ人々の敵意だけが残り、何かしら事が起きるとポリスのせい、軍のせいだと声が上がる。ポリスの中でも徐々に腐り始めた者が出て、市民との賄賂取引や共謀でマスメディアに対する餌がまかれ続けていた。対策本部はひっそりと活動を続けて...

  • I DO 16

    時刻は午後十九時を回ろうとしている。チャーリーはソルジャーたちを連れて街の巡回に出ていた。ここの所、緊急ダイアルが頻繁に鳴っている。車をゆっくりと走らせて人々の暮らしを監視する。誰の目にも穏やかな日常に見えるはずなのに、どこかしら狂っているのはもう止められないらしい。信号待ちの群れの中に、少女趣味な女が派手な男に殴られている。周りは気にも留めずに信号が変わると行ってしまった。『止めますか?』運転席...

  • I DO 15

    対策本部前、チャーリー率いる軍人達がずらずらと歩いてくる。それを横目にポリスたちは陰口を叩いていた。どうにもこの空気は変わらない。自分達が支配されこき使われているという意識がある限り、敵対は続くのだ。対策本部のドアを開くとミライとタカハシがこちらを振り向いた。『やあ、皆さん。』『二人とも顔色が悪い、寝てないのか?』部屋の隅にあるコーヒーポットの前に立つとミライは首を振る。『そんなことはないとは思い...

  • I DO 14

    真っ暗な現場には少女がぽつりと座っている。その前には均等に並べられた人だったものがあった。チャーリーたちが声をかけても少女の耳には届かないのか、うつろな瞳は目の前のそれに注がれている。ソルジャーが少女の肩に触れると、少女は気が触れたように体を震わせ、這ったまま隅に行くと両手で耳を塞ぎサイレンのように叫んだ。その場にいた者たちは彼女は恐ろしいものを見たのだと思った。数分してポリスたちが駆けつける。規...

  • I DO 13

    ビル郡の中にぽつんとある公園。人通りもなく夜間は男の一人歩きすらない。追い立てられるように後ろを振り返りながら少女が走っていく。真っ青な顔をして破れた服を手で押さえながら、公園の前に立つと首を振って中に飛び込んだ。少女は息を切らして公園を走っていく。その後ろを数人の少年たちが奇声を上げながら追って来る。やだ、やめて、怖い。少女は漏れ出す声を抑えて、視界が歪む中で公園の向こうを目指す。公園は中央に池...

  • I DO 12

    町の外れの小さな一軒家。この辺りは貧困層が多く治安はあまり良くない。一軒家のドアから飛び出してきたのは四歳と12歳の少年二人。身奇麗にはしているがTシャツの襟はボロボロに解れている。幼児の手をしっかり握り少年は歩き出す。『にいたん、きょうはどこいくの?』赤いほっぺをした幼児は兄を見上げると、その目を見て微笑む。『うん、今から教会でご飯を貰う。』少年は穏やかな目で幼児に微笑みかける。いつものやり取りだ...

  • I DO 11

    対策本部にぞろぞろと人が戻ってくる。チャーリーとカツラギが合流すると、細胞研究所からマリエが飛び込んできた。ミライが持ち込んだ猿の毛と唾液と口の中の組織のついた飴の棒。猿の毛からは波のような文様。あの路地で殺された少女の瞼についていたものと同じ形だった。しかし、唾液からは何も出ることはなかった。『報告書はここに置いておきます。』マリエは急いで説明し紙を置くと去って行った。現在も細胞研究所は小学校で...

  • I DO 10

    『お久しぶりです。ドクター。』ホワイトボードに向かっていたタカハシは声をかけられて振り返った。長身の男は片手を上げると、胸元に当てて小さく会釈した。『ん?んん?』タカハシは何か思い出したように左右に目玉を動かすと大きく目を見開いて笑った。『ミライ君か!』『はい。』ミライは屈託なく笑うとタカハシの差し出した手を両手で握る。『大人になったな。あんなに小さかったのに。』『はい、まだ三歳でしたから。ドクタ...

  • I DO 9

    呆然としたタカラダを残しチャーリー率いる軍服たちは来た道を戻る。職員の冷たい視線を浴びながら署を後にすると車に乗り込んだ。運転席の軍服が後部座席のチャーリーをフロントミラーで捉える。『チャーリー、良かったんでしょうか?話してしまって。』チャーリーは大きく息を吐くと目を閉じた。『・・・うん、問題は無い・・とは言い切れないが。タカラダが口外するかだ。』『口外・・・するんでしょうか?』『どうだろうな。彼らの根幹...

  • I DO 8

    閉鎖された小学校についての経過報告。対策本部にやってきたポリスが後ろの軍服に嫌な顔をしながら紙を読み上げる。『事件の起きた小学校は現在封鎖されています。学校側が清掃が済み次第に開校したいと希望していますが、問題が解決していないことから生徒達は自宅待機、リモート学習。事件概要については対策本部のほうが詳しいので省きます。被害者はレスキュー隊員2名、軍人を除く全員が死亡、学校用務員の二人については。一...

  • I DO 7

    夕刻、小学校のチャイムが鳴っている。校庭はがらんと静まり返り子供たちの姿はない。用務員の男は一度見回りを終えると用務員室に戻り腰を下ろした。この学校は至って普通で穏やかだ。なんの問題もない。用務員室奥にあるキッチンで湯を沸かすとお茶を入れた。これから夜間から朝までが男の時間である。その後交代の職員が来るが小学校に泥棒が入るということはない。湯のみを持ちモニターの前に座る。時間つぶしの動画が流れ始め...

  • I DO 6

    タカハシはホワイトボードを指差す。『そもそもこの波というのはそれぞれが持っています。標準が100から150.皆さんもそれくらいかと思います。ええ、今影響が出ていませんから皆さん標準ですね。さて、200というのをAとしましょうか。Aは周りの人に影響を与えます。たとえばBが影響を受けた場合にBが持つ欲を増幅させます。それはB以外の人間にも見ることができます。』『はい。』『それではこの国で起きた事件、それは小さな...

  • I DO 5

    『バディが死んだんだと?』軍服がカツラギの隣を通り過ぎ、ハハハと笑う。カツラギはポケットの中でぐっと拳を握るとギッと睨みつけた。笑う軍服の向こうから顔見知りが歩いてくる。笑っていた軍人の肩を叩くと、カツラギに近づいた。青い瞳の軍人。チャーリーはカツラギたちの上司にあたる。チャーリーはカツラギの前に立つと頭を下げた。『すまない、ちゃんと話しておく。カツラギは大丈夫か?』『ああ、大丈夫だ。でも気をつけ...

  • I DO 4

    繁華街の片隅。路地裏に男が娼婦を一人連れて入った。足元は汚く仕事着とハイヒールが汚れるのを嫌がりながらも、男の誘いに乗っている。奥まった場所は少し開けていてそこで男は女に奉仕するように求めた。スーツの胸元から財布を取り出してピン札を指で数える。女は札を数えてから頷くとそこに座った。出勤前の同伴、本来ならば食事をしてから店に行くはずなのになんでこんな事になっているのか。女は恍惚としていく男の顔を眺め...

  • I DO 3

    高層マンションのベランダに出た女は缶ビールを片手に目の前に広がる夜景を眺める。先ほどまで恋人との逢瀬を重ねていたが、男は左手に指輪を嵌めて部屋を出て行った。女は口に銜えていた煙草を指で挟んでビールを飲む。高層であるこの場所もまだムアっとした空気が流れている。人工天気のせいで予定は立てやすいものの、胸糞悪い空気がいつまでも滞留している。小さく溜息をついてベランダの柵にもたれて隣の部屋のベランダを見た...

  • I DO 2

    午前二時、ポリスと軍が集まる中で検査服を着ている男が規制テープを貼っている。軍人と話していたポリスの一人が大きく溜息をついた。もう何度目だという顔をして目の前の青い目の男を睨みつける。『だから、二件だ。一件に纏めないでくれ。』彼はすっと奥を指差す。暗がりの中で数人の検査服に囲まれたビニールの死体袋。青い目の男は首を振る。『同じことだ。どちらにしろ被害者が増えただけ。我々は本部に戻る、君たちは捜査を...

  • I DO 1

    午後七時。街は仕事へ行く者、家路に着く者がすれ違いそれぞれが目的地へと向かっている。遠くビルの向こう側では獣のような声が大きく響いては消え、その先でポリスのサイレンが鳴っている。少女はサラリーマンの体にぶつかりながら走っていた。時々後ろを振り返ってはその目に恐怖を抱えている。両手で鞄を抱えて小さな子供がぬいぐるみを抱くように。丁度信号が変わって急ぎ渡り終えると塾の看板のあるビルへと飛び込んだ。ビル...

  • 月夜に溺れて 35

    真夜中、一人、部屋の中で琥珀が日記を前に泣いていた。他愛のないことが書かれているのに、どうしてだか涙が零れてくる。病状の悪化から文字が乱れて、最後のほうはほんの少しだけだった。最後の頁を捲り、ふと指先に触れたそれが厚いことに気がついた。『ん?』くっついた頁は隙間があり、そっと指を入れると簡単にはがれた。先ほどまで読んでいた女性の文字とは違う筆跡。綺麗な文字は男性のものだ。見つけたよ、君の事。どうし...

  • 声の魔法

    何気ない一日だったと思う。こうして二人で歩いて、ただランチを二人で食べて。他愛ない話をして笑いあって夕方まで公園で話をしてた。恋人とは呼べない距離、二人の間にあるパーソナルスペースはお互いを拒絶してるみたいに近づくだけでビリビリと音がする。一ヶ月前に出会った。雨の日だった。その日は朝から雨で、やたらと冷たい雨が降っていた。洗濯物は乾かず室内で乾燥機だけがごうごう動いてる音がしていて、私は重い腰を上...

  • トラバスタ博士と猫

    人型アンドロイドにも飽きてしまった。博士は目の前に寝転んでいるふわふわした毛並みの猫アンドロイドに手を伸ばすと、その毛皮に指を沈めた。不思議なことに暖かい。温度センサーがついているらしく、本物の猫と変わりはない。違うのはこの猫に必要なのは時々陽に当てることだ。陽を浴びることで充電が半永久的に可能らしい。猫の首元に指を触れさせるとゴロゴロと鳴く。今では家庭の殆どがこの猫らしい。生きている猫は殆ど皆無...

  • 愛し合うなら君がいい

    高速を車で飛ばしている、随分と走り続けているのに気持ちばかりが逸ってしまう。あの赤い車を抜かせば、そんなスピード狂のように僕は狂っている。早く君に会いたいのにハンドルを持つ手が震えている。共感、シンパシー。君が教えてくれた言葉だ。あの日は雨で僕は部屋の中で君を抱きしめていた。温もりが欲しくてたまらなくて心が飢えていたのかもしれない。手の中で柔らかい君の体が動くのをたまらずに抱きしめていた。指先が柔...

  • レイトレンサ

    夏の空は高い。太陽はじりじり焼き付けるようにアスファルトを照らし、幼子の手を引く母親の背中を焼いていた。もう三時を過ぎているというのにまだ暑い。帽子を被っているのにだらだらと汗が流れ、繋いでいる小さな手を離したくなる。小さな娘は暑いはずなのに私の手をしっかり握り、時折顔を上げては目を合わせて嬉しそうに笑う。何がそんなに楽しいのか、暑さのせいなのか優しい気持ちすら消えうせていた。少しくらい雨が降れば...

  • バタフライレポート ときめきメモリアルGS4 二次作品

    『おっそいなあ・・・。』本多行は待ち合わせ場所の店の前で周りを見渡した。男女二人が並んで歩いている。そういえばこの辺りはデートスポットだ。彼女が選んだ場所だし華やかな雰囲気はこの季節に合っている。十二月、街は緑と赤のクリスマスカラーにキラキラした装飾が多く見られる。彼女なら好きなはずだ。ちょうど待ち合わせの店のショーウィンドウには大きなクマのぬいぐるみが飾られている。両手にはメリークリスマスとメッセ...

  • 神の眠る島

    ロケットは随分と長く飛んでいた。位置情報が分からないようにとのことで周回をぐるぐると続けている。乗客の何割かは青ざめた顔でシートにもたれこんでいた。ロケットの窓からは何も見えない。シールドが張られていて到着するまでお楽しみといわんばかりだ。ちなみにこのロケットに乗っているのは数十人ほど。WaX7a01N0xx4i//ma、この島はそう呼ばれている。随分前からレッドリストに指定されており、世界保健機関だけが立ち入る...

  • for you

    暗闇に沈む一輪の花。ゆっくりと水泡に囲まれながら落ちていく。静かに音も立てず、ただゆっくりとゆっくりと。光りが差し込む場所などない。けれど花は小さな光を放ち自身を魅せつけている。暗がりからそれを見つめる者たちに。水の流れが変わったように遠くから水疱がつうと線を引く。それが渦を巻いて花に触れると、花はくるりと渦に乗って回り始めた。花びらについた水疱が回転で花から離れて周りを踊っている。岩陰で見ていた...

  • ハニーバタフライ ときメモGS4

    鐘の音を聞きながら教会を二人で出たのは一年前。今日は彼女がとうとうこの部屋に越してくる。二人で暮らすことになった。ミノルはベットに緊張してぴんと伸びた背筋で座った。実際、遊びに誘うくらいのレベルで彼女を同棲に誘っていたから彼女にはさらっと返事をしてかわされていたが、1ヵ月前に真面目な顔をして彼女は『そうしようかな。』と言った。返事が信じられなくて何度か聞きなおしてしまったが、彼女は普通のデートの誘...

  • ぼくのちょうちょ ときメモGS4

    十年と三年と。一瞬で過去と未来を繋げてくれた彼女は、いつも蝶のようにふわふわ飛んでいる。さてどうやって捕まえようか・・・そんな気分になるのはどうしてだろう。卒業から一年。二人で暮らし始めた家に学校、バイトと終わった彼女が帰ってくる。玲太はキッチンで食事を作っていた手を止めてドアが開くのを見る。『お帰り。』『ただいまー。』彼女はにこっと笑うと鞄を開いて何かを取り出した。『お土産。あとで一緒に食べよう?...

  • 帰りたい場所

    磨かれた革靴に視線を落としてアスファルトを歩く。岡田ハガネはポケットに手を突っ込むと手に当たったジッポライターを取り出した。カチッと蓋を開けると火をつける。少し蒼い炎を眺めて蓋を閉めるとまたポケットに突っ込んだ。古い町並みに商店街の看板が見える。橋のようにかけられた看板をくぐって道なりに行くと商店街の終わりに一軒だけ開いている煙草屋がある。煙草屋は津場砂と書いてツバサと読む。津場砂竹千代という老婆...

  • 兎守

    海の向こうに見える鳥居、少し赤茶けた門が陽を背に立っている。あの場所に何があるのか祖母に聞いたことがある。祖母は怪訝な顔をしてこちらを見た。『何故知りたい?』祖母の声は静かに低くいつもの優しい声ではなかった。『なんとなく・・・。』そのような答えを飲み込んで黙り込むと祖母の目を見る。彼女は小さく溜息をつくと、遠くにある鳥居を見た。『あれは・・・トカミ様だ。』『トカミ様?』『ああ、トカミ様は兎に守と書く。兎...

  • 惑星にて

    S・ギル・レッドフォード。その名前を知るのはもういない。銀髪に美しい紫の瞳を持つ赤ん坊は教会で産まれた。シスターの一人が誰ともわからぬ子供を身ごもって、神父はそれを当たり前のように受け入れたのだ。シスターたちもそれが当たり前のように。赤ん坊は数ヶ月もしないうちに大きくなり、二年経つ頃には普通の人間で言う十代くらいになっていた。遺伝子を弄くられた結果だと神父は言っていたが、少年はその意味すら分からなか...

  • 雨の日は一緒にお茶を 3

    空に星が瞬く頃、シヴァは車を走らせ家の前に滑り込む。灯りがついているからまだ起きているのかもしれないが、時計は十二時を回っている。随分と遅くなってしまった。鍵を開けて家に入ると家の中は掃除されて綺麗になっている。今日は随分とがんばったようだ。居間では暖炉の傍でカイルが眠っている。シヴァはそれを横目に自室に戻ると服を着替えて台所でお茶を入れる。二つカップを持つと彼女の傍に座った。『待ちつかれたか…。...

  • 雨の日は一緒にお茶を 2

    雨の日の午後。街の喫茶店でシヴァはティルと話していた。ティルは熱いコーヒーを飲み頬杖をついて外を眺めている。『それで…私になんの用があるんだ?』不愉快そうにティルの眉毛がピクリと上がる。『すまないな。カイルがいないから不機嫌なのはわかるがカイルのことだ。』『なら聞こう。』シヴァが用件を話すとティルは口元を綻ばせた。『ほう、それはいいな。で、私が必要というわけだな?』『そうだ。』『わかった。あの子の...

  • dear lover

    眠れない夜に電話をくれてありがとう。そっけない態度であなたの言葉を遮ってしまったけどとても嬉しかったの。携帯電話のショートメッセージならこんなに簡単に優しい言葉が書けるのに、わたしの唇は嘘つきね。次のデートの約束、どこに何時なんて言うからからかうつもりで言ってしまったの、そんなに早く会いたいのって。あなたは会いたいよって言ったから私は心臓が止まってしまうかと思った。耳にあなたの優しい声が残ってる。...

  • ひぐらし

    夏の夕暮れ、このごろは夕立もなくからりとしたままでまだ熱い風が頬を攫っていく。目前を歩く恋人は振り返りもせずに、ポケットに両手を突っ込んだままだ。私はその後をゆっくりとついていく。不機嫌というわけではない。けして。ただ、会話の中で歯車がかみ合わなかっただけ。私は後ろ手にバックを握ると俯いた。主張の違いなど誰にでも起こる。恋人同士であっても日常茶飯だ。国と国になれば人の命をかけた争いになるし、災いは...

  • しゃらしゃら

    魂の行方。行く先は誰も知らず、死にかけた者たちは不思議な夢物語を語る。花の咲く彼岸にて親しい人と会った、河の向こうで親しい人が手招きした。実際のところ、何もわかりはしない。死とは生と隔絶されたものだから。魂となって人の形をとるのかわわからない。生前と同じ形か、それとも死ぬ間際の酷い姿か・・・。自死した者はどうだろうか。現世から離れたいと願い死んだはずが、またその現世で人の間を彷徨っている。痛みがなけ...

  • キャッチャー

    夢を捕まえる罠。色とりどりの蜘蛛の巣の中から気に入ったものを一つ。美しい装飾で金糸が光に当たっては輝く。これが良いのだと思ったが、その向こうの藍色が闇に染まる巣が目に止まった。部屋に飾るならこれだろう。キャッシャーで購入すると店を出た。外はまだ明るく空は青に白が少しかかっている。あと数時間もすれば先ほど買った巣の色と同じ色がこの青を染めるだろう。暗闇がやってくる。美しい夜の暗闇が。じわじわ橙に染ま...

  • 月夜に溺れて 34

    静まり返った続木の敷地を雪久は琥珀の手を引いて歩いている。何も言わずに彼女をここまで連れ帰ってしまった。明日も仕事があるのだから、あのまま寮へ返すのが良かったはずなのに、それすら選べずに手を繋いでいる。琥珀は何も言わない。ただ雪久の手を握り返しただけで。続木の洋館を通り過ぎて、奥の一軒屋にたどり着くと鍵を開けて琥珀を招き入れる。使用人の珠はすでに帰ったようで中はしんとしている。『どうぞ、あがって。...

  • 月夜に溺れて 33

    待ち合わせ場所の喫茶店。雨が少し降り出したので雪久は足早に店のドアを開いた。中ではすでに煉陽明がコーヒーを飲んでいる。『すいません、急にお呼び立てして。』『いいえ。』雪久が席に付くと、陽明は小さく頷いてコーヒーを一つ注文した。『それで・・・電話でも少し聞きましたが。』『ええ。高唾礼子さんの件です。』テーブルに運ばれてきたコーヒーに一つだけ角砂糖を入れるとかき混ぜる。『その件を話す前に・・・知り合いが怪我...

  • 月夜に溺れて 32

    真昼の病院、消毒薬の匂いがする廊下を足早に進み目的の部屋のドアを叩く。小さな返事が聞こえてドアを開くと、ベットに眠る真舌の隣に少し青い顔の菊が雪久を見てホッと息を吐いた。『菊さん・・・。』菊の手足には包帯が巻かれている。説明では彼女自身は擦り傷だけのようだがベットに横たわっている真舌の頭に巻かれた包帯には気がかかる。雪久が眉をひそめると菊が首を横に振る。『義直さん・・・さっき気がついて・・・今は眠ってるだ...

  • 月夜に溺れて 31

    古い建物に大きな荷物を運び込んで一息つくと琥珀が頭を下げた。『すいません・・・荷物を一つにまとめちゃったから・・・。』『いや。これくらいはもてますよ?これで全部かな?まあ、必要なものがあればいつでも言ってもらえれば用意するから。』雪久は荷物をぽんぽんと叩いて笑う。この部屋は琥珀が仕事に通うために小鹿が用意したものだ。女子寮になっていて彼女が紹介された仕事場から近い。『ここなら仕事場から近いし、不便はない...

  • フィルター

    わいわい賑わう居酒屋の店内。各々が手にグラスを持ち楽しんでいる。間に合わせで参加していた睦原(むつはら)かじかは隣に座っている友人メイを睨んだ。『もう・・・こんなのごめんだからね。』小さな声で叱咤するとメイが片手で拝む。『わかってる。ごめんって。』テーブルの上には所狭しと食事が並べられている。かじかの前に座っている宮崎という男はこの中ではリーダーらしく皿に取り分けている。『睦原さんもなにか取る?』ふ...

  • 忘れてしまったあなたへ

    月がゆっくりと上がっていく。夜の静けさの中では獣たちの遠吠えも少し寂しい。丘の上の家に住むナカは時々外に出ては空を見上げている。一年と二十五日。朝は菫の砂糖漬けと作る。昨日、少し離れたお隣さんが摘んで持ってきてくれた。なかなか優しい人で人当たりも良い。ナカのような人間にも優しいのは徳を積んだからだろうか?そんな風にナカが話すとお隣さんはフフと笑った。くだらない世間話だ。午前のうちにベットのシーツを...

  • 手の中の純情

    真っ白い部屋。右側にはマジックミラーが貼られている。目の前の大男は先ほどから私の顔を覗きこんでは睨みつけ、筋張った拳で何度も何度も机を叩いている。繰り返される言葉の意味を私は理解している。それでも私は首を縦に振ることはない。エージェントと呼ばれる男が私の前に現れたのは数年前。エージェントはいわゆるアンドロイドで脳は人のものを持つ。容姿が美しいタイプで0A(ゼロエー)と呼ばれていた。後続のQ4(キュー...

  • 黒い烏 秘密 TOP SECRET 二次作品

    12月某日。とある研究施設にて殺人事件が発生。通報を受けた警察官によると、勤務交代の警備員からの通報により事件が発覚する。施設入り口付近廊下にて職員と警備員の男性二名が頭を銃で撃たれ死亡。室内でも職員男性二名が死亡、これも銃で頭を撃たれている。メインルームは電灯が破壊され、モニターだけが煌々と光りその前には女が一人椅子に座っていた。上半身血まみれの下着姿の女の右手には銃がテープで巻きつけられており...

  • どちらさまですか?

    ピンポーン。インターホンの音。時計は深夜一時を指している。こんな時間に誰だろうか?彼女は玄関に近づくと暗い玄関ドアを見た。玄関ドアは木製で頑丈だが両脇上面をすりガラスで飾っているため、わずかだが外がうかがえる。ドアの向こうには黒い影が見える。ピンポーン。またインターホンの音。今夜に限って家人はいない。誰か居れば安心して対応できるのにどうしようもない。電気をつけずこのまま居留守を使うべきだろうか?少...

  • まばたきのうちに

    雨だ。待ちに待ったはずなのに・・・どうして涙が出るのか。空が藍に染まっている。赤い鳥居を抜けて階段を上がってくるあの子が来る。時刻はいつもどおり。待っているだけでいいはずなのに心が落ち着かない。神ともあろうものが・・・。もうじき私は罰を受けるだろう。長い年月、美しい文字で彩られた文を貰った。読めはしないのに私は何度もそれを見返している。楽しくて楽しくて、楽しくて・・・楽しくて。神を愛するのか?あの子にそん...

  • お絵かき

    久しぶりに真面目にお絵かきを実施中。楽しいけど難しい。良い点は、登場人物の顔が見えることでなんとか性格が見えてきたことかな。お絵かきはツイッターで上げてます。Gdmtpt作ったばかりだから好き勝手書いています。...

  • 雨の日には一緒にお茶を 1

    『だめです!絶対だめ!』バスルームに立てこもったカイルの声がドアの前にいるシヴァの顔を曇らせる。『カイル?大丈夫だから。』『それでもだめです!』シヴァは溜息をつくとドアに手を当てて額をこつりと当てた。『わかった。でも風邪をひかないうちに出てきてくれ。』なんでこんなことになったのか。シヴァは居間の暖炉の前に座るとうなだれた。シヴァにとってはそんなに大事ではないのだが、カイルのとっては一大事のようだ。...

  • 闇の先の向こう側

    藍色の空が紫に変わっていく。そこから漆黒に染まる頃には星がゆったりと顔を出す。今夜の月は丸く、見上げた戦儀雨芽(そよぎあめ)は顔色をにごらせた。コートの襟を立てて視線を低くする。長い前髪と眼鏡で顔を隠すと早足に歩き始めた。まずい、まずい、まずい。こわばって足が縺れてしまう。不安からかポケットに突っ込んだ両手が小刻みに震えている。こんなことなら独りで外出するのではなかった。人通りの多いはずの道に出て...

  • 如月の虎と狼

    高校二年、如月(きさらぎ)ユエ。新学期にクラス替えは少し憂鬱だった。仲の良かった友達と離れて、殆ど面識のないクラスメイトたちと馴染めるかはユエの中で問題だったが教室に入るとどこか今までと違う雰囲気に驚いた。『おはよう。今日からよろしくー。』教卓の傍にいた女子の一人がユエに笑いかけると他の子たちも同じようにする。『よろしくね。』顔を確認しながらとりあえず自分の席に着く。出席番号で振られた席は窓際の方...

  • フライデーナイト 2

    メイリンシャン深夜過ぎ、小さなバックを肩からぶら下げてトウコはいつもの店のドアを開ける。バーはこの時間そこまで混み合っていない。カウンターに座って注文をすると、やってきたグラスをちびちび舐めた。舌の上で味を楽しんでからごくりと飲み干す。ふと視線の先にケイがいた。今は可愛らしい女の子と仲良く飲んでいるようでトウコが静かに手を振るとケイも同じように手を振った。ケイとは少し前にこのバーで出会った。格好良...

  • フライデーナイト 1

    抱き合えるならそれでいい?彼がそう言ったので私は目の前のグラスを飲み干して彼の胸に飛び込んだ。トウコは毎夜日付が変わる頃にフラフラとバーに現れてはカウンターの椅子に座り、ブランデーを頼む。財布の中は空っぽで、このバーにはボトルが入れてあるから来ているだけでなくなれば当分来なくなる。ボーイがそろそろなくなると言っていたからあと少しの命だろうか。毎日の労働にうんざりしてカウンターに頬杖を着いて向こうに...

  • 魔女様にはかないません

    よく晴れた午後だ。昨日は星が落ちたとニュース番組が大慌てで、よくよく見れば僕が住んでいる家の近所の寺だった。だから朝から近辺は騒がしくTVではよく知る場所が映ってた。学校ではその事で持ちきりで、住所が近いと知った連中は僕の周りに寄ってきたけど僕の対応が悪かったのかさっさと掃けてしまった。実際星が落ちたことよりも重要な試験、新しい魔法の取得のために勉強が必要だったし、それともう一つ、引越し先を決めな...

  • はらはらくさはら

    ぴゅうと風が吹き込んで木々を揺らしている。赤い花の刺繍の着物を着た山神は小枝の上で座り遠くを見つめていた。もうこうして数年待ちわびているのに帰ってきやしない。山のふもとから嬉しそうな顔をして上がってくるのは小さな子供ばかりで待ち人は現れずだ。子供たちはりんごの頬をして山神を見上げた。『かみさま、おらんちのりんご食うか?』頬と同じ色をしたりんごを着物の胸から取り出してむんずと掴み持ち上げる。山神はふ...

  • 月夜に溺れて 30

    文月、高良さんのお嫁さんが来た。襖越しに見た綺麗な人。私が目利きをしていたと聞いて御礼を言ってくれた。大したことなんてないのに。申し訳なさそうにして、私のほうがろくでもないのに。雪久ちゃん、可愛い。可愛い声で奨ちゃんって呼んでくれる。子は生せなかったけどできることはあるかしら。可愛い可愛い雪久ちゃん。葉月、体が痛い。嘘をつくのは得意だけど高良さんにはすぐわかってしまう。お医者も呼んでくれて、私は幸...

  • 月夜に溺れて 29

    暗い闇の中、外灯がほんのりと照らしているだけで静寂だ。時々明かりのついた家から人の声がするが感じられるのは繋いだ手の暖かさ。大きな手に包まれている。よくみると指と指の間に重ねられている繋ぎ方はよくいう恋人同士がするものらしいけど、琥珀は緊張でそれすら何も言えずにいる。多分、気分が高揚している?見上げた彼の顔は暗くてわからないけどそんな気もしている。まだ恋人でもない女の手を繋いでいるのはいつものこと...

  • 月夜に溺れて 28

    それは突然のことだった。珠の怪我が治った頃、琥珀は昼からずっと読書をし続けていたが、夕方ごろに帰宅した雪久に声をかけられた。返事もままならぬ状態で、家にいるよりはいいでしょう?という珠の勧めもあり、よそ行きの着物に着替えると雪久につれられて出かけることになった。運転手のいる車に乗せられて見知らぬ家に着く。表札には真舌とあり、声をかけてから玄関を開けると中には婚礼衣装を着飾った男がいた。すらりとした...

  • 月夜に溺れて 27

    会話が途切れ、藤田が断って部屋を出て行く。どこか寂しげな顔をした瑪瑙に気付いて陽明は苦笑する。『何故、引き止めないんですか?』しゅんしゅんと鳴る薬缶からお茶を湯飲みに注ぐと瑪瑙の前に差し出し、自分の湯飲みにも注ぎ込む。暖かい湯気が昇る湯飲みに彼女は手を伸ばすと眉をひそめた。『まだ、仲直りができてなくて。』そういえば、少し前に藤田が何かしてしまい喧嘩したようなことを言っていた。『…そうですか。それは...

  • 月夜に溺れて 26

    続木清は和室で花を活けていたが、苛立った足音に顔を上げて廊下を覗き込む。洋館の廊下は美しく陽が差し込んでいるが、向こうから歩いてくる母・美鈴の様子はそれとは正反対だった。『清さん!何をしているの!』癇癪を起こしている声に清は苦笑しながら立ち上がると美鈴を迎えた。『お花を活けていました。どうかしましたか、お義母さん。』とりあえず調子を合わせて話をすればじきに治まるだろう。『雪久の婚約者、あの垂涎寺の...

  • 月夜に溺れて 25

    『それでどうだった?』部屋に戻るなり、小鹿は興味津々の顔で雪久に質問する。『先生…ご自分でなんとかするって話が俺に流れただけでそんなに他人事にならないでくださいよ?』『アハハ、すまんな。で?瑪瑙さんにどう話したんだ?』雪久は椅子に座ると煙草に火をつけた。『何も。実際何も言ってません、彼女は少し気付いているようでしたが、陽明さんのことも娘のことも何も言ってません。』『なるほど…瑪瑙さんはそれで納得を?...

  • 月夜に溺れて 24

    続木の家の前、琥珀は雪久に連れられ歩いていた。垂涎寺から持ってきた荷物は雪久が片手で持ち、呆然としたままの琥珀の手を引いている。少し前から頭が整理できず目の前がぐるぐる回っているようだった。話し合いに行ったはずが、目の前の続木雪久が一言言っただけで収まってしまい、終いには琥珀を貰うと言った。和尚の父と母はそれならと送り出してくれたが、いまだ琥珀の気持ちは揺れたままだ。玄関を開けて使用人の珠に荷物を...

  • あけおめ

    こんばんは、あけましておめでとうございます。今年も沢山書こうとは思っているんです。新年早々に三年前に作ったプロットの結末が降りてきまして爆笑しながら書いていました。なんでこんな悩んで書いていたのか謎ですが。けれど一つ問題なのは、現実にあるものの名前を使うかどうかでそれを入れるのが悩ましい。そして表現をもっとフラットにすべきかどうか。あまりエッジを利きすぎると危険な気もします。...

  • 長編小説への入り口

    長編小説の入り口はこちら。簡易で作ります。close to you はじめから月夜に溺れてはじめからあなたの暇つぶしになれれば幸いです。現在小説はFC2行ってみる?、カクヨム行ってみる?にて投稿中です。一番早いのがFC2になります。...

  • 月夜に溺れて 7

    『あら、花蓮さん。さっきぶりですか。』煌びやかな女性たちに囲まれた煉陽明は花蓮の手を取り優しく微笑むと、花蓮の傍にいた小鹿と雪久に目を留めた。『そちらの素敵な紳士たちはどなたです?紹介していただけますか?』『ええ、そのつもりで。』花蓮は煉陽明に二人を紹介すると彼は立ち上がり頭を下げた。その立ち振る舞いに女性たちは少し動揺していたがその美しさは雪久にもよくわかった。『それで…小鹿雨月殿は何かお聞きに...

  • 月夜に溺れて 6

    月の頭になり、朝からバタバタと忙しない使用人たちが家の中を歩き回っている。その中、小鹿に渡されていた書類に目を通していると珠が申し訳なさそうに顔を出した。『すいません、雪久さん、うるさくしてしまって。』『いや、構わないけど…あったの?』『それが…見つからなくて。』雪久は書類を置くと珠と一緒に使用人たちの集まる部屋へ移動した。押入れの中を出して一つ一つ念入りに調べている男が顔を上げた。彼は番頭だ。『あ...

  • 月夜に溺れて 5

    『面白い爺さんだな。』徳利を持った真舌が笑い転げ、その隣で菊が口元を隠して笑う。今朝は調子が良いからと小鹿の運転手を免れて、夕方から真舌の家に転がり込んでいてる。先ほど弁当を持ってきた菊が合流した形だ。『ああ、そうだ。紹介がまだだった。』真舌は菊の肩をそっと抱き寄せる。『晴れて俺の恋人になった上斑菊(うえむらきく)さんだ。こないだ会ったろ?』菊は微笑を浮かべて頭を軽く下げる。よく見ると色が白く綺麗...

  • 月夜に溺れて 4

    清廉女学院の小鹿の部屋に主が戻ってきた。久しぶりの通勤ともあって小鹿の頼みで雪久は運転手を任され、もう一度学校へと来ることになった。いつの間にか持ち込まれていた書類が机の上に散らばっているのに気付き、雪久は手早くそれを纏めて整えた。すでに授業へと出た小鹿のいない部屋で窓を開ける。そして煙草を銜えると一服した。先日受け持った授業を終えて安堵したものだが、こうしてチャイムが鳴るごとに拘束されないことが...

  • アニメの話 JJKS

    ジュジュツカイセンのアニメを撮り貯めていたので、やっと時間を作ってみました。二時間ほどTVの前で釘付けになっていましたが…やっぱりああしたアニメは一つ一つ見たほうが疲れません。というのも渋谷編は大変重い(笑とても面白いのですが、大分ぐったりしました。すごいアニメだと思います。動かない場面が少し多かったので調整したのかしら?とも思ったんですが、それでもよく動くアニメですよね。アクションシーンは素晴ら...

  • close to you 20

    エピローグ午後のカフェ。屋内の窓辺に近い席にシヴァとゼロが二人で座っている。テーブルには湯気の上がるカップが二つ、ゼロの前にはカフェで人気のケーキが一つ並んでいる。『本当にいいの?』ゼロはそう言いながらケーキにフォークを刺し口に運ぶと顔を綻ばせた。シヴァは頬杖をつきフフと笑う。『カイルが以前来た時に美味しいと言っていたからな。』『ああ、そういうこと?』文句を言いつつケーキの皿を綺麗にするとカップに...

  • close to you 19

    ジャスト・ライク・ミー『父さん!父さん!』シヴァの耳に子供の声が聞こえて、目の前の光景に視界がにじんだ。ああ、これは夢だ。昔の、思い出したくもない記憶だ。叔父が父を棺おけに押し込めると銀の海に沈めた。銀の海は熱く煙が激しく上がっている。棺おけが滑り込むと聞いたことのない激しい声が響き渡った。シヴァは耳を塞いで傍にいた母に寄り添った。が叔父は母の手を引き、何かを話している。父の酷く辛い声に耳を塞いだ...

  • close to you 18

    ウィットネス・トゥ・ザ・タイムスディアからの連絡が入ったのは一ヶ月後だった。が正確にはディアの電話でかけてきたのは娘のミラーだった。ミラーの話によると、ふらりと散歩に出てから帰ってこず心配になり部屋を捜索すると電話が残されていた。連絡がつくように電話を持つ人であったことから彼が置いて出ることはないようだ。その後クルスとゼロからも連絡があり、共に誘拐されたのではないかと考えていた。シヴァも同じ考えで...

  • close to you お名前図鑑

    close to youお名前図鑑 登場順名前のついていない人はありません。カイル :ヴァンパイアシヴァ :世の中に冷めたお茶好きなヴァンパイアレイン :シヴァの恋人ミア :ふわふわ幽霊ドクターゼロ:エルフの医者ララ :人魚の少女オガタ :頼れるナース長ヘインズ:病院の経理ティル :ゼロの嫁 元ラミアメイリル:探偵ディア :カイルの父親クリステン:カイルの母親マリアン:カイルの親戚シモン :カメラマンアリ...

  • close to you

    イラストを何十年も描いていなくて、絵が浮かんでも描けずに悲しい思いをしています。物語を書いていると頭に光景が浮かぶのでそれが見せられたら素敵なのにと思います。また時間があれば練習をしたいです。最近の流行の絵は本当に綺麗で、色彩も美しく目を奪われます。私は昔のパステル画や油彩などのアナログがとても好きですが、今のデジタルで塗られたイラストはとても素敵だと思っています。そしてそれを描ける人たちをとても...

  • 月夜に溺れて 3

    夜半過ぎ、ハハハと電話口の小鹿が笑う。『ああ、言ってなかったか?』雪久は自宅の廊下に座り込んで受話器を睨みつけた。『いや、先生…言っておいてくださらないと困りますよ。』『ハハハ。でも君なら上手くやるだろうと思ってたさ。』『それにしても寝てくださいよ…何してたんです?』今日の報告のための電話連絡は小鹿の指定で遅い時刻になっていた。『んーちょっと。頼まれごとがあってね。』『まさか…女がらみじゃないでしょ...

  • 月夜に溺れて 2

    海沿いの通りには洋館がずらりと並んでいる。元は外国人の別荘として使われていた物が払い下げられたらしく、今では金持ち達がそこに暮らしている。その中の木々が鬱蒼とした洋館の門の前に真舌は車を止めた。どうやらここがお目当ての場所らしい。真舌が車を降りると門の傍にいた使用人に声をかけた。話は通っているらしく門が開かれて奥へと案内された。門からは石畳が続き、木々が生い茂っているせいでとても暗い。時々庭なのに...

  • close to you 17

    ウェイト・フォー・ザ・ライト・オブ・デイ慌しい夜が明けて、病院は静寂を取り戻しつつあった。誘拐されていた子供たちは病院と保護施設へと送られた。マグマ議員は銃所持で拘束されているが、彼が言ったとおり誘拐に関係した者が逮捕されることはなく、マデリーンたちもお咎めはなかった。いずれマグマも開放されるだろう。ドクターミライの兄であるクルスは元警察官で誘拐事件などで警察に協力をしている。今回も連絡を受けて警...

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