chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
D
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2023/10/11

arrow_drop_down
  • 雨の日には一緒にお茶を 1

    『だめです!絶対だめ!』バスルームに立てこもったカイルの声がドアの前にいるシヴァの顔を曇らせる。『カイル?大丈夫だから。』『それでもだめです!』シヴァは溜息をつくとドアに手を当てて額をこつりと当てた。『わかった。でも風邪をひかないうちに出てきてくれ。』なんでこんなことになったのか。シヴァは居間の暖炉の前に座るとうなだれた。シヴァにとってはそんなに大事ではないのだが、カイルのとっては一大事のようだ。...

  • 闇の先の向こう側

    藍色の空が紫に変わっていく。そこから漆黒に染まる頃には星がゆったりと顔を出す。今夜の月は丸く、見上げた戦儀雨芽(そよぎあめ)は顔色をにごらせた。コートの襟を立てて視線を低くする。長い前髪と眼鏡で顔を隠すと早足に歩き始めた。まずい、まずい、まずい。こわばって足が縺れてしまう。不安からかポケットに突っ込んだ両手が小刻みに震えている。こんなことなら独りで外出するのではなかった。人通りの多いはずの道に出て...

  • 如月の虎と狼

    高校二年、如月(きさらぎ)ユエ。新学期にクラス替えは少し憂鬱だった。仲の良かった友達と離れて、殆ど面識のないクラスメイトたちと馴染めるかはユエの中で問題だったが教室に入るとどこか今までと違う雰囲気に驚いた。『おはよう。今日からよろしくー。』教卓の傍にいた女子の一人がユエに笑いかけると他の子たちも同じようにする。『よろしくね。』顔を確認しながらとりあえず自分の席に着く。出席番号で振られた席は窓際の方...

  • フライデーナイト 2

    メイリンシャン深夜過ぎ、小さなバックを肩からぶら下げてトウコはいつもの店のドアを開ける。バーはこの時間そこまで混み合っていない。カウンターに座って注文をすると、やってきたグラスをちびちび舐めた。舌の上で味を楽しんでからごくりと飲み干す。ふと視線の先にケイがいた。今は可愛らしい女の子と仲良く飲んでいるようでトウコが静かに手を振るとケイも同じように手を振った。ケイとは少し前にこのバーで出会った。格好良...

  • フライデーナイト 1

    抱き合えるならそれでいい?彼がそう言ったので私は目の前のグラスを飲み干して彼の胸に飛び込んだ。トウコは毎夜日付が変わる頃にフラフラとバーに現れてはカウンターの椅子に座り、ブランデーを頼む。財布の中は空っぽで、このバーにはボトルが入れてあるから来ているだけでなくなれば当分来なくなる。ボーイがそろそろなくなると言っていたからあと少しの命だろうか。毎日の労働にうんざりしてカウンターに頬杖を着いて向こうに...

  • 月夜に溺れて 30

    文月、高良さんのお嫁さんが来た。襖越しに見た綺麗な人。私が目利きをしていたと聞いて御礼を言ってくれた。大したことなんてないのに。申し訳なさそうにして、私のほうがろくでもないのに。雪久ちゃん、可愛い。可愛い声で奨ちゃんって呼んでくれる。子は生せなかったけどできることはあるかしら。可愛い可愛い雪久ちゃん。葉月、体が痛い。嘘をつくのは得意だけど高良さんにはすぐわかってしまう。お医者も呼んでくれて、私は幸...

  • 月夜に溺れて 29

    暗い闇の中、外灯がほんのりと照らしているだけで静寂だ。時々明かりのついた家から人の声がするが感じられるのは繋いだ手の暖かさ。大きな手に包まれている。よくみると指と指の間に重ねられている繋ぎ方はよくいう恋人同士がするものらしいけど、琥珀は緊張でそれすら何も言えずにいる。多分、気分が高揚している?見上げた彼の顔は暗くてわからないけどそんな気もしている。まだ恋人でもない女の手を繋いでいるのはいつものこと...

  • 月夜に溺れて 28

    それは突然のことだった。珠の怪我が治った頃、琥珀は昼からずっと読書をし続けていたが、夕方ごろに帰宅した雪久に声をかけられた。返事もままならぬ状態で、家にいるよりはいいでしょう?という珠の勧めもあり、よそ行きの着物に着替えると雪久につれられて出かけることになった。運転手のいる車に乗せられて見知らぬ家に着く。表札には真舌とあり、声をかけてから玄関を開けると中には婚礼衣装を着飾った男がいた。すらりとした...

  • 月夜に溺れて 27

    会話が途切れ、藤田が断って部屋を出て行く。どこか寂しげな顔をした瑪瑙に気付いて陽明は苦笑する。『何故、引き止めないんですか?』しゅんしゅんと鳴る薬缶からお茶を湯飲みに注ぐと瑪瑙の前に差し出し、自分の湯飲みにも注ぎ込む。暖かい湯気が昇る湯飲みに彼女は手を伸ばすと眉をひそめた。『まだ、仲直りができてなくて。』そういえば、少し前に藤田が何かしてしまい喧嘩したようなことを言っていた。『…そうですか。それは...

  • 月夜に溺れて 26

    続木清は和室で花を活けていたが、苛立った足音に顔を上げて廊下を覗き込む。洋館の廊下は美しく陽が差し込んでいるが、向こうから歩いてくる母・美鈴の様子はそれとは正反対だった。『清さん!何をしているの!』癇癪を起こしている声に清は苦笑しながら立ち上がると美鈴を迎えた。『お花を活けていました。どうかしましたか、お義母さん。』とりあえず調子を合わせて話をすればじきに治まるだろう。『雪久の婚約者、あの垂涎寺の...

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、Dさんをフォローしませんか?

ハンドル名
Dさん
ブログタイトル
sambasambasamba
フォロー
sambasambasamba

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用