「することが無いの」ニコニコと笑いながら八代神は、白峰に声をかけた。が、白峰は応える気力も失せている。天空界に引き戻されるように上がって来ると、白峰は十日ほどどっと、深い眠りの狭間に落ちた。十一日目に薄目を開けると八代神が覗き込んでいた。「何時までも、拗ねていてもしょうがなかろう?」丸で赤子か何かを諭すような物言いである。「判らぬでもないがの。千年はもう、取り返せぬ」「煩いの」「ほ、元々黒龍が物への、横恋慕。叶わぬ、叶わぬ」「・・・・・・」白峰の頬につううと涙が伝う。「判っておった。が、・・の・・」男泣きに泣崩れる所なぞ見とうもない。慌てて、八代神はその場を立ち去った。地上を見下ろせばそこには愛しいひのえがおる。が、その横にはつかず離れずひのえを守る白銅の姿がある。『人間に負けた訳ではないわ』己の情の薄さ...邪宗の双神・・1白蛇抄第6話