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  • 宿業・・21 白蛇抄第7話

    陸は思い悩んでいた。「どうすればよい?」朋世に話せば、これこそ機会だとあの男は草汰を連れ戻そうとする朋世を連れ去ってゆく事になろう?だが、それをふせいでみるため・・・とは言え、かといって周汰に何もかもぶちまけてしまえばよいのか?朋世が周汰の側にいられなくなろう?朋世が哀れなわけでない。朋世を失くす周汰があまりに哀れである。あれほど手放しで朋世をかわゆいといいのけ。この陸の命一つもかすのようにしか思わぬほどに朋世を糧に思う周汰がどんなに事実に苦しむだろう。事実に打ちのめされ、朋世を失えば、周汰はどうする?く・・・首をくくる事さえ、周汰は恐れないだろう?『いえるわけがない・・・。じゃが、どうすればよい?』陸は、朋世を責める言葉を呟いた。『馬鹿だよう・・・あんた。大馬鹿だよう』どうしようもない神の与えた節理を怨...宿業・・21白蛇抄第7話

  • 宿業・・22 白蛇抄第7話

    「おじちゃん」草汰はおじちゃんの後について歩いていた。「うん」草汰の呼ぶ声に気が付くとおじちゃんは立ち止まって草汰の声のした後ろを振り向いた。「ああ。草汰か。あいにきてくれたんか?」「うん」草汰はおじちゃんが好きだった。おじちゃんが草汰を見るときの目が好きだった。とても、優しくて、とうちゃに似ていた。だから、好きだった。それに、おじちゃんが寂しそうなのが、どうしてもおじちゃんを気にならさせた。『おじちゃん。元気になってよ?』そんな言葉を3つのこが言葉にする事もできずおじちゃんを見つけるとおじちゃんが嬉しそうにしてくれた草汰のできることをし始めた。「えっとねえ・・・ひとおつう・・ふたあつう」佐奈の心がびくりと動くのが佐奈にも判った。『この子は俺を元気付けようとしてくれている』と、判ったから。「草汰。ありがと...宿業・・22白蛇抄第7話

  • 宿業・・23 白蛇抄第7話

    佐奈が考え付く事は、朋世の亭主に事実をぶちまける事ばかりであった。草汰が佐奈のところにやってくると、佐奈は草汰を連れ歩いた。くたびれた草汰は、やがて身体を休めに木陰に入ると木にもたれ込んだまま鬱々と居眠りだしすっかり寝入ってしまった。その草汰を抱き上げると佐奈は村に向かって歩き始めていた。草汰が居なくなって捜し歩いていた周汰が、佐奈を見つけた。眠り込んだ草汰をそっと抱きとめる周汰に佐奈は口を開いた。「あまりににているので、つい、かわゆくてつれあるいてしまいました」と、含みのある言葉で周汰にわびた。「男の子はしょうがない。わしもそうじゃったに」小さくても男である。ひとところでじっとしている事もなく自分の行き場所をどんどん広げてゆくものなのである。だから、自分の広げた遊びの領地の先で誰と知り合って、誰と遊ぶ事...宿業・・23白蛇抄第7話

  • 宿業・・24 白蛇抄第7話

    相変わらず陸は見ていた。男が草汰をだかえ周汰にあった。あった途端。陸は朋世のもとに駆け出していた。「朋世。草汰のてて親がきよるぞ」「え?」「お前のうんだ子のてて親が・・・その腹の子のてて親が来て周汰におうている」「陸・・さん。なにをいうやら・・」朋世はとぼけた。確かに陸は朋世と周汰をどうにかしてやらねばならないと思っていたはずであった。が、口をついて出てきた言葉は陸自身を納得させた。「嘘をいわんでいい。草汰も其の子も周汰の子じゃないに」「馬鹿なことを・・この子は周汰の」「周汰には子種はないだろうに?」朋世が認めようとしない事実を陸は断定した。「な?」「何故そういうかとかや?簡単じゃに・・・。周汰は幾度我と睦んでも子を孕ます事はなかった。子だねがないからじゃ。それはおまえがよう、わかっておろうに」「え?」「...宿業・・24白蛇抄第7話

  • 宿業・・25 白蛇抄第7話

    「朋世。よう、ねておる。ふとんをしいてやらぬかや?」「あ。はい」周汰に促されて朋世は奥の間に布団をしいてやった。草汰を寝かしつけると周汰は黙ったままだった。「・・・・」何を言えばよい?佐奈という男とあっていたのか?何を言われた?何をきかされた?そんなことなぞきけはしない。「朋世」「は、はい?」何かききたげな周汰の言葉がとまった。「いや・・なんでもない」「周汰さ・・ん?」朋世が認めない事実を、陸が認めた事実を周汰は今、認めざるを得なかった。本当の事なのだ。そして、男の言うとおり朋世は出てゆこうとしているに違いない。一挙に押し寄せた事実を責める言葉より周汰の口をつかせた言葉は周汰の心の底だった。「どこにもゆくな」「え?」周汰は朋世に投げかけられた陸の言葉をすべてきいていたのだ。「今の今までお前を、草汰を、ほう...宿業・・25白蛇抄第7話

  • 宿業・・26 白蛇抄第7話

    佐奈は、立ち上がった。周汰のところに行くために。朋世を迎えるために。草汰をつれ行くために。足を踏み出そうとしたとき、佐奈の懐の中で高くはじける音が聞こえた。思い当たる物を懐からつかみ出すと、布袋の中の護り石を手のひらの上にさらけ出した。「え?」間違いなくはじける音は護り石が発した物である。手のひらの中の護り石には亀裂が入っていた。「ど、どういうことだ?」何かを知らせるために石ははじけようとしている。自分の姿の暗示か?自分こそがはじけるぞと、石が教えようとしているのか?『あの男を奈落の底に突き落とす見返りだと、いうか?』だが、それでもよい。いずれ、自分がはじけ飛ぶような事になっても、それでも、朋世が欲しい。草汰を手に入れる。初めの心のままに従うだけに過ぎない。あの日あの時少女を陵辱せずにおけなかった。その心...宿業・・26白蛇抄第7話

  • 宿業・・終 白蛇抄第7話

    戸口を開ける佐奈に草汰が気が付いた。「あ、おじちゃん」草汰の声に土間の向こうでわら縄を縫っていた周汰がふりむいた。「草汰・・むこうへいっておれ」「あ?う。うん」周汰の顔がいつもの顔でなかった。「とうちゃ?」おじちゃんのことに何か怒ってる。草汰が遅くまでおじちゃんについて歩いた事だったならそれはおじちゃんのせいではないのだけれど。「いいから。かあちゃのところへいっておいで」「おじちゃんは・・・」「草汰。わかっておるよ。とうちゃがおじさんとすこし、はなしがあるんじゃに」「本に?おじちゃんをおこりゃあせんね?」「ああ」「うん・・・」草汰は朋世の側に行った。佐奈は、周汰の前に歩み寄った。「ようにわかれはいうてやったか?心残りはないの?」「良く似ておるといって、朋世と草汰をお前の女房と子供とまちがえてくれるなや」「...宿業・・終白蛇抄第7話

  • 事実は小説より奇なり・・2

    事実は小説より奇なりの、中に書いた不思議な事は見ようによっては超能力者とか?エスパーとか?なにか、そういう類じゃないかと思われるかもしれない。だが、その当時から今もだろうけど・・そういう「能力」をみにつけたいとスピリチュアルに傾倒していく人も多く見かけた。ー人を助けられる能力が身に付いたらーーその能力で人の役にたちたいー立派な心掛けに見える。動機は純粋そのものだろう。だけど、白蛇抄を書いていた頃でもあったし違う見方が生じていた。情けは人の為ならず情けをかけておけばいずれは巡り巡って自分にかえってくる。判りやすい話は「笠地蔵」か。むか~~しむかし・・wwwまどろっこしいので、やめておくが地蔵に笠をかけてやるという「情け」の心がお地蔵から、帰ってくるわけであるがこれが、逆に地蔵を蹴飛ばしていたら自分も蹴飛ばさ...事実は小説より奇なり・・2

  • 事実は小説より奇なり

    ユニコーンを再掲載した。憂生日記でも、触れたが、実話をもとにしている。実話(自分の実話でなくても)をもとにしていたりエピソードにさしはさんでいたり、しているものは、いくつかある。煙草の煙に載せて(掌編)(1)彼の魂が・・(1)その中で、見たくねえ・・よ。終《見えちまった3》お姉さんはやっと、自分の感情を冷静にしゃべることができたのだろう。自分の思いを内にとじこめて、おしころして「あの人」と一緒に暮らししていたんだ。思いが行き場をなくし、里美が肩代わりした。肩代わりしなきゃ、お姉さんは本当に死んでいたかもしれない。生霊というのかどうか知らないが・・・妹、里美が、「姉」の感情を肩代わりしていた。このあたりの話は、実話から。いっさい、死のうなんて、考えるはずのない性格の「妹」がなにか、急にー死のうとするーが、そ...事実は小説より奇なり

  • ユニコーン・・1

    夫がセカンドカーを仕入れた。ためすがめつ、納車された車をみているとなんだか、不穏な思いがわいてきていた。ーなんで、こんなきれいな車があんな値段で手放されるのだろうー破格といえるほどの改造も惜しみなく施されていた。なにか、触りたくない。乗りたくないという思いがわいてきていた。嫌な思いは、はっきり私にささやいてきてもいた。ー事故車じゃないか??ーだが、夫が懸命にワックスをかけたり細かなところまで点検しているのをみていると嫌な思いを口に出すことはしなかった。ーなにかに、のりあげているなあ。ひんじが曲がっている。きちんと修復してるけど、わずかにねー夫がつぶやいた言葉に嫌な思いが膨らんできていた。ーのりあげたものは・・人間?ー仕事から帰ってくると、一目散に車のそばに行ってなにか、変更をかけるのだろう自動車屋さん?パ...ユニコーン・・1

  • ユニコーン・・2

    夫の熱心な手入れにひとつの解決があるように思えて来ていた。物にだって、魂・精神は宿る。なにか恐れを感じさせる「原因」を夫の愛情が癒し、解いてくれるんじゃないか。そんな事を思ったのは、やはり、どうしようもない不安と怖れを感じていたせいだったと思う。あれだけ大切にしているなら車にこびりついた「変な念」を浄化してしまうんじゃないか?そう信じることで不安ととりとめない恐れをねじ伏せようとしていたのだと思う。だが、そんなはやりのスピリチュアルじみた説得はなにも、役に立たなかった。その夜。寝入ってしばらくだったろう。色の付いた夢を見た。車の下の地面がおびただしい血溜りを作っている。尋常じゃない血の多さと裏腹にその血を流したものの存在は無かった。目覚めてしまったまま、ひとつの決心と結論を導き出すしかなかった。夫の愛情だ...ユニコーン・・2

  • ユニコーン・・・3

    次の日は夫の仕事も休み。朝からやっぱり車を触っていた。ガレージまで、朝食を伝えに行って一端、朝食を食べてから夫はガレージに戻っていった。皿を洗い、洗濯・掃除を終えてガレージに出向いたとき昨夜の夢が、なおさら自分をおびえさせていた。どうしても、車に触れない。触りたくない。だけど・・・あの夢の事を思うとなにか、解決しないと・・・もしかしたら夫に災難が降りかかる?夢の中に出てこなかった血を流した人物が夫になるかもしれない。そんな恐ろしい「何か」が車にまとわりついている。それを感じ取って、触ることが出来ない。だけど、夫に何かあったら・・・と、思うと覚悟を決めるしかなかった。何をどうすれば良いのか判らないままー判った。私が浄化するー浄化でいいのか、さえ判らなければどうすれば浄化できるのかさえ判らないまま車に自分の決...ユニコーン・・・3

  • ユニコーン・・4

    夢うつつの中で少女の声が響いた。「あ、ユニコーン!!」少女がユニコーンを見つけた様だった。だが、すぐに少女の声が凍り付いた。「怖い!!」少女の姿もユニコーンの姿も夢うつつの中に現れずなぜ、少女が怖いと思ったのか、それも判らずただ、酷くおびえているのは判った。ユニコーン?その少女を慕ってユニコーンが現れたのだろう。なのに、少女を脅かすユニコーンの姿があったということだろう。なぜ、ユニコーンが現れたのか?少女は誰なのか?なぜ夢の中に現れたのか?なぜ、恐ろしいと少女が叫んだのだろう。そんな思いがぐるぐると渦巻いているうちに気が付いた。あんなに、しんどかったのに気分は爽快。死に目かと思ったほどの苦しさが一切なくなっていた。どういうことだろう。だいたいユニコーンなんて・・・いるものだろうか?スピリチュアルの中では5...ユニコーン・・4

  • ユニコーン・・5

    仕事から帰って来るとはガレージに飛び込んで夕食が整うまで連日、車を整備していた夫が休日に試運転をかねてドライブに行こう・・と言い出した。一生懸命に整備していたんだもの嫌だ・・とは言えない。それに、「浄化してやる」と、覚悟したのに。そして、この前のユニコーンの事でもしかして、私を通過して、車が浄化されているかもしれない。乗ってみなきゃ判らないと思うものの浮かない思いになる。無理もないと思う。触っただけで死ぬかと思うような目にあったのだから乗ったら、どうなる事やら。そんな不安がある一方で浄化する・・と覚悟したからこそユニコーンが助けに来たんじゃないだろうか?と、いう考えがわく。夫の性格だから、そんな変な怨念じみたものは受け付けないし話が出来たとしてもお前が精神的に弱いんだ・・と、いうだろう。確かに夫は平気で触...ユニコーン・・5

  • ユニコーン・・6

    祝日をはさんだせいもある。1週間の間に3回も試運転に同乗することになった。私の憑依と思われるぐらつきや眠気はひどいもので、助手席でうたた寝しているばかりだった。気楽な助手席と、思われていることだろうけど瞳の中は鮮やかな色彩が陽光に映えて、乱舞しもしかすると、極楽の入り口で浮遊しているんじゃないかと思えた。ドライブインでの休憩も、車からおりると雲の上をあるいているというのは、間違いなくこんな感じだと、言いたくなる浮遊状態にいた。これが、3回も続くと、車にのりたいという思いが残って浮かばれずにいる血だまりの主ではないかという推量はまちがっている、と、思えてきた。相変わらず、夫は試運転の後に車を整備していたから次の休みも試運転になるのだろうと思っていた。浄化は埒があかないものでしかなく車に乗るたびぐらぐらして私...ユニコーン・・6

  • ユニコーン・・7

    車が動き始めるまもなしに私はぐらりとした幻惑の中に落ちたと判る。そして、異様な眠気に目を閉じれば極彩色の陽光が瞼の中で踊り狂う。ーもしかすると・・・これがいけない?例えば、車の外の景色を楽しむとかしたいのが主の思いだとしたら?ー今の私の状態では憑依されているーだけ。主がドライブを楽しみたいと思っていたのならこれでは、いつまでたっても、主の思いは叶わない。ぐらぐらに、負けまいと目をあけてしっかり、外を眺め始めたとき私のぐらぐらした揺れはなりをひそめた。私がドライブを楽しめば、それで良いんだ。と、糸口をつかんだ気がしていた。ところが・・・山道のせいだろう。カーブの多さに、夫の運転テクニックかなりのスピードで右に左に重心がずれていく。なんだか・・・気持ちが悪い。それは、憑依によるものでなく車酔いに違いなかった。...ユニコーン・・7

  • ユニコーン・・・終

    もう思い残すことは無い。と、言った言葉に私はたずね返していた。だって、運転手と同じように車を運転する疑似運転ドライブをたっぷり楽しませてあげられたとは思えなかったから。本当に満足しているのだろうか?もう1度、今度は運転手と同じように車を運転する疑似運転ドライブを行ってあげた方が良いのじゃないか?そんな思いが私に沸いていた。その考えは、あるいは主の本心が伝わって来ていたせいだったのかもしれない。ーもう1度、最後にあの車に乗りたいー主の声が響いた気がした。そして、もう1週間後、私は夫の車に乗り込んだ。流石に、ここひと月の間に何度もドライブしているから今週はもう行かないかもしれない、と思った。けど、不思議だったが行かないつもりでいた様子をみせていたのに夫はーやっぱり、行こうーと、言い出した。やっぱり・・・という...ユニコーン・・・終

  • はからい

    宿業と昔馴染み非常によく似た設定になっている。それもそのはずでこの昔馴染みの原作?の中に出て来る男(織田と名付けたが)この男の「太さ」が、いくつかの物語の軸を支えている。例えば白砂に落つ(24)お登勢(58)底・・・で(2)思案中(4)子供ができない夫婦(できにくい夫婦)という設定の後ろにあるのはこの男(織田)の「太い思い」が同じようにあるか、そこに気が付いていくかと、いう違いでしかなく、周五郎ばりの「性善説」が、物語の語られていない「土壌」であると思う。そして、ネットをうろつくうちにもっと、大きい「価値観」を言葉として、意識化させられることになった。精神障害のある男性だったが(色々、省く)ー狂いなんて、愛してくれる人が抱きしめてくれたら、必ず治るーその言葉の後ろには、彼を愛する人がもう居ないという意味も...はからい

  • 僕はRyoukoと暮らしている。戦争が終って2年。日本はどん底だった。肩を寄せ合う温もりが欲しい。二人が同じ部屋に住まい、お互いを求め合う日々が続いた。4畳半一間の小さな部屋に肩を寄せ合い、当り前のようにRyoukoを求めRyoukoを抱いた。その瞬間が二人に生きている証を与えてくれた。僕らの戦後はこうやって始まったんだ。小さな町工場に働いていた僕はいつも脅えていた。仕事は相手側の都合次第。仕事のないときは部屋でふらりと寝そべるしかなかった。Ryoukoも似たような者だった。僕たちは世間ではまだ幼い少年と少女でしかなかった。かき集めた金を前に僕たちはいつも溜息を付いた。小さな部屋を借りる金を払うと後はいくばくかの小銭・・・。暮らしはいつも貧窮を極め、僕はやるせなくRyoukoの肩を抱いた。抱いた手はいつし...蛙

  • 蛙-続編ー 1

    Ryoukoがでていった。僕はRyoukoがいつも座っていた空間をながめていた。Ryoukoはもうここに、居なかった。Ryoukoはもう、ここには戻ってこない。Ryoukoは「僕のRyouko」である事を止めた。僕はRyoukoのすわっていたあたりの畳に頬をおしつけてみた。Ryoukoの悲しい、せめぎがそこに染み付いている気がした。堕胎の後。僕の手を拒むRyoukoがいた。命を費えたRyoukoは僕を拒む事で、何かを取り戻そうとしていたに、違いない。僕は何も与えられない自分を見つめる。Ryoukoは女であることより、ありきたりの幸せをつかめない事に打ちひしがれていた。僕はなすすべもなくRyoukoを待った。Ryoukoがそのかいなを僕に伸ばしてくる事を。どうにもならない寂しさがRyoukoをくるみ、僕を求...蛙-続編ー1

  • 蛙-続編ー 終

    どのくらいの時間僕はそこにいたんだろう。あおむけの目の上には雲を運ぶ空がある。僕は雲の流れをじっとみつめつづけていた。空の中に落ちそうになる錯覚は僕を幻影にいざなう。Ryoukoがそこにいて・・・。ぼくは、手を伸ばす。つかもうとすると、ぼくはまっさかさまに落ちて行く。あきらめるしかない事実が僕をいたぶり、僕は、涙の海を泳ぐ。Ryouko・・・。Ryoukoへの追慕をぬって、誰かがこの庭石に近づいてきていた。不意に人の気配を感じた僕は腕で顔をおおいかくした。なき顔なぞ見られたくは無かった。だけど・・・。草いきれをかきわけて、近寄ってきた気配は僕を目指していた。僕を見下ろす影を感じながら僕はそいつがどこかに立ち去るを待つために顔を覆い続けていた。『話が出来るかな』抑揚のない中年男性の声。僕は其れがRyouko...蛙-続編ー終

  • 「ぼろぼろ」

    今日は清子にとって「はじめて」の日だった。学校が休みに入った先月末から、今日までの一か月。三日に二日のわりで、自由だった清子の生活が一日のうち六時間をスーパーマーケットのレジの前に拘束された。清子がマーケットのアルバイトを始めたのは給料日の後だった。そうとは知らされてない清子だったから、月末になっても、月が変わった十日にもマーケットが給料を支払ってくれないと判ると、一体いつが給料日なんだろうと不安になってきた。ひょっとしたら清子の休みの日に給料日があり清子の給料は支払われないまま忘れられているのかも知れない。が、給料はまだですか、いつですかと聞くのも清子には物欲しげで恥ずかしかった。昨今の高校生らしからぬ恥をしっているのはよかったが、尋ねられなかったことがいつまでも頭の隅に残り、毎回の通勤のたび『今日こそ...「ぼろぼろ」

  • 「ぎりぎり」

    3月末日に生まれた悟を見る度、両親は「もう少し遅く生まれていれば1学年下になれたのに」と、溜息を付いた。両親が溜息を付くのも無理がない。悟はどうしたわけ、言葉の発達が遅かった。知恵遅れといわれる症候群に配するほどのものではないのだが、発する語彙も少なく、感情を上手く伝えられなかった。其の事が彼をますます無口にさせ、自分を主張する事を隔てさせた。その悟がもう、十七歳になった。身体も大きくなった。勉強も両親が心配するほどの事もなく中程度の学力を維持している。無口であるのは変わらないがそれでも友人は出来る。話し上手と聴き上手のコンビネーションでそりがあうのだろう。悟の友人はよく笑いよく喋った。悟の部屋からは友人の間断ないお喋りと時折かみ殺した悟の笑い声が聞こえた。悟の静かな笑いがよい合図地になるのか、とめどなく...「ぎりぎり」

  • 書き方という個性

    タグ#小説のみにしてしまったのですが・・・(事後報告?)実際の所、その小説の分類歴史小説恋愛小説推理小説などという内容以前。ざっとわけて掌編短編中編長編と、あると考えているのですが実際、何文字までが掌編で、短編で中編で長編なのか感覚というか、書いている側の感覚と読む側の感覚は違うだろうしどんどん読み進めていける(面白いというべきか?)作品は短く感じるし読み辛さがある作品は、長く感じたり随所でなるほど~~なんて思わされると長いというより、「重みのある作品」という意味合いでの長さに捉えてしまう。個人的に3万文字までくらいだったら短編5万文字までくらいが中編長編は10万文字近い辺りからそれを超えるもの。掌編は1万文字・・いや、原稿用紙で25枚は、掌編とは、いいがたいか?5000文字くらいか・・・などと考えるわけ...書き方という個性

  • 宿業・・16 白蛇抄第7話

    佐奈が周汰の家から出てくるのを見咎めた者がいたのを、朋世は知る由もない。亭主の留守をねらって、あの愛くるしい朋世への思いを果たそうと、狩に出なかった男が誰なのだろう。厄介な男の執念をお陸は半分うらやましく思いながら、そして、あれほど周汰が思いを込める朋世を狙う男をお陸のほとであがなってやってもよいと思っていた。つまるところ朋世を護ってやろうという事と自分を宥める男を得る一挙両得の縮図にお陸は男の正体を見極めるだけのつもりであった。だが。朋世の家を出た男に何気なくすれ違って見せた陸の背中が凍りついた。「と・・朋ちゃん・・あんたあ・・いったい?」何を考えているんだよ?朋世の家を出た男は草汰にあまりにも似ていた。「嘘だろ?」朋世は周汰の留守に思いを果たそうとしただけの、男になぶられたに過ぎない。夜這い。いや真昼...宿業・・16白蛇抄第7話

  • 宿業・・15 白蛇抄第7話

    軽く、うとうとした朋世は周汰でない男の手に目覚めさせられていた。「あ?」朋世が何おか言おうしたとき、男は「静かにせねば子がおきるに」と、朋世を制した。「あ?」男は佐奈であった。「わしの子じゃの?」佐奈は紛れもない事実を確かめるように尋ねると、朋世が草汰を思い、静まったのを良い事に朋世のほとに手を差し込ませていった。「ほ。満足させられておるようじゃの。かわいがってもらえておるようじゃの」朋世の肉の鬱血を細い指で触れ続けた。畑に出る事もない。およそ力仕事なぞしたことのない、細い指がしなやかに朋世を弄り、朋世はその指の蠢きを追っていた。「な・・なんで・・いまさら」すんだ事になぜしてくれぬ?「俺の子を孕みたかった女子が、なにをいうに」佐奈は更なる子種を与えるためにあらわれたというのか?「ち・・違う、周さんのこじゃ...宿業・・15白蛇抄第7話

  • 宿業・・14 白蛇抄第7話

    朋世は今日はひとりである。正確には草汰が側におったが、遊びつかれたのか草汰は転寝をし始めると、本当にぐっすりと眠り込んでしまっていた。畑に猪が出てくる。今日はその猪を狩ると村の男衆がこぞって、山に出かけて行った。若い衆には、いの一番にお呼びがかかる。「いやだとはいえぬわの。そんなことよりも朋世の側におる方がよいに」いつまで続くか判らぬ狩に周汰はため息をついた。「まあ。はようにしとめるまでよ。帰ってきたら存分に朋世の相手をしてやるに」一時の朋世との別れを周汰は惜しんだ。「周さん」変わらず周汰は優しい。朋世の瞳が草汰を追うのに気が付くと「来や」奥の部屋に朋世を引き入れた。「母ちゃは、少ししんどいに」だから、奥の間で伏せこませてやるのだと草汰に言うと、草汰は母の手を煩わせては成らないのだと判った。その奥の間に引...宿業・・14白蛇抄第7話

  • 宿業・・13 白蛇抄第7話

    夜中のお甲の寝間の戸を叩く者が居る。夜這いと言う村の慣習を疎ましく思いながらお甲は布団の中に潜り込んだ。お甲の傍らには三つに成る、娘が寝ている。甲は夜這いを無視しながらそっと娘の寝息を聞いていた。「この子がおるから・・もうよいに」と、いつものようにお甲は戸を開こうとはしなかった。が、戸を叩く音が変わった。「え?」この戸の叩き方をするのは、峯吉か、作次か。もう一人思い当たる娘の父親の名が浮かんだ。「馬鹿な・・。定さんがくるわけなぞありはしない」物欲しさがお甲を狂わせかけたがお甲は我に返った。どうせ、峯吉か作次に決っている。あいつらはわたしが定太にまだ惚れていると思っている。だから、定太のふりをしているのだ。定太であればお甲が戸を開けるだろうと思っているに違いないのだ。甘い期待を裏切られたくはない。お甲は「お...宿業・・13白蛇抄第7話

  • 宿業・・12 白蛇抄第7話

    「わしは・・・」と、定太はつぶやいた。お甲に対してもお陸に対してもくだらぬ男でしかなかった。朋世に対する周汰の気持ちは確かに誠であろう。ゆえにお陸に対しての扱いは、くだらぬ女をくだらぬ男として扱ったという意味においてこれも裏側では誠でありえるかもしれない。だが、定太はどうであろう?お陸にただの肉欲をぶつけ、お陸をなくせばお陸の代わりにお甲を慰んだ。周汰はお陸を望まなかった。己の肉欲である事を十分わきまえていた。朋世への肉欲を陸ですりかえたわけでもない。ただ、歴然とあるほたえを認め、ほたえに従った。定太とどこが違うかといえば、周汰には自覚があったということだけでしかない。「わしは・・・己の醜い肉欲のためにお甲を」定太は呟いた。周汰が微かに笑った。「なれど、お甲はお前に本意であったろう?」例え定太がいかに醜く...宿業・・12白蛇抄第7話

  • 宿業・・11 白蛇抄第7話

    朋世が周汰の元に嫁ぎ三年の月日が流れていた。生まれた子に周汰は草汰という名を与えた。「草は根強い。どんな事があっても地に根をはっていきる」畑に生える雑草ほど強い物はない。二つになった草汰を、膝に抱きかかえ周汰はほおずりをする。「それに何よりも、おまえにようにておる」だからこそ尚のことかわゆいと、周汰は言う。仲の良い夫婦でもある。そろそろ二人目が欲しいと周汰は言うが、言った口の下から人が聞いたら赤面して逃げ出すような事をさらりと言ってのける。「だが、朋世が孕んだら、きずつのうて、だけぬようになる」と。草汰が腹におるとき周汰は朋世に触れようとして触れ切れなかった。「つらいの」朋世の腹の大きさを労わるのか、周汰自身の朋世に触れきれぬ心を言うのか。寝間では、草汰が生まれるまで毎夜、朋世を背中から抱いて周汰は眠った...宿業・・11白蛇抄第7話

  • 宿業・・10 白蛇抄第7話

    村の共同浴場というと実に聞こえがよい。竹垣で風をさえぎった露天風呂でしかないのである。そこで男は時折女を知らされることがある。お陸の手管に落ちた男。お陸との接合をもくろんで浴場に足を運ぶ男。どちらの馴れ初めが先なのかは定かでなくなった男にお陸は久方ぶりに顔を合わせた。「周汰さん」口説いたのか、口説かれたのか。身体を合わせなくなって、久しい周汰である。身体の疼きを癒されるだけを望んだ男ならお陸ももう知らぬ顔をしていたのかもしれなかった。だが、「周汰さん」裸身の身体をお陸は寄せていった。「ああ・・陸か」湯気の中に身を沈めた周汰ににじり寄った女に気が付くと周汰は照れたような笑い顔を見せた。もう、周汰の心は陸にはない。それを周汰の照れた笑顔が語っていた。いや、むしろ、初めから周汰の心は陸にはなかったのかもしれない...宿業・・10白蛇抄第7話

  • 芙蓉

    芙蓉がたちならぶ、小道をぬけて、朝露をスカートにまとわりつけて、君がやってくる。僕たちは今から、どこに行こうか。楽しい計画をねりながら、広げた地図に君の長い髪がさらり・・。僕は歯ブラシを片手に君の髪をさらり・・除けた場所に指をおく。「くぉくぉ」君が地図を見つめる。「ああ、紫陽花?」そう。そろそろ、きれいだろ?僕の心に君は返事を返す。「だけど・・いや!」なに、そんなに・・おっと・・僕はあわてて洗面所に口いっぱいの歯磨き粉をはきだして、口をゆすぐ。「きこえた?」部屋でなにかいってたらしいけど僕にはきこえてないよ。かがみこんで地図を覗き込む僕の肩に君の髪がさらり・・。「あのね・・紫陽花の花言葉しってる?」知らないよ。「移り気な心・・」ぴっとりと君が僕の腕におでこをあてる。「だから・・いや」馬鹿・・って、僕はいっ...芙蓉

  • 書かねば ならぬ!!

    昔馴染み・16挙げました。が、ここからの展開がつらい。浮浪のだんなのーああ・・やっぱりそうですかーは、裏に仕込みがある。気が付いている人もいるだろうと思うけど・・・そして、閃いたつもりの「昔馴染み」というタイトルも辛いタイトルになってしまうが・・・傍観者の立場で見れば、言いえて妙、と、いうタイトルになるのかもしれない。こう・・・なんていっていいか・・・ちょっと、自分をはげまさないと書き辛い・・・むごいことを書いてそれをすっきり掬い上げようと思うのも、原作の出来の良さのおかげ。たった一言(ではないが)のためにここまで、書いてきたんだ。書かねばならぬ!!書かねばならぬ!!

  • ドールに寄せて・・・

    ドールを某所に掲げたときの事を思い出す。読み終えた彼女は、「エリカ」を含むドールは、本当の所、ドールなのか、人間なのかと、いうようなことを(曖昧にしか覚えてないのでこの書き方)尋ねたと思う。申し訳ないことだけど、その質問にー小説などを、表面上で、読む人なのだーと、思った。なぜ、作者ははっきり、断定しなかったのだろう?という疑問は良いがなぜ、作者ははっきり、断定しないのだ!と、いう詰問と答えを教えろというー安直さーが見えた気がした。それが、出版社・編集部に勤務していたという話だったので、なおさら、大丈夫か?と、いう思いと文章の奧を読めない、と、いうことと発展させていく思いが無い。と、いうこと。一種、アスペルガーのように(誤解無きように伝えれば、アスペルガーというのは多かれ少なかれ誰もが保有しているという考え...ドールに寄せて・・・

  • ドール

    ここに捨てられて、もう2週間たつかしら?ご主人さまは車の中に私をつっこむと、一直線にこのごみの埋立地にやってきたわ。ビニール袋にいれられたままショベルカーで穿り返した暗い穴ぼこにほうりすてられるとご丁寧に廃棄物を山ほどかぶせてくれた。きっと、他の職員が私をみつけたら、ご主人様の仕業だとわかってしまうからだわ。性遊具でしかなかった私の末路はごみの山にうもれ、文字通り、ごみに化したけど、ご主人様が私をすてるまで・・それは、それなり、私をかわいがってくれた。私をエリカとなづけたのは、何故だかわからないけど、あの女子高校生がくるまで、ご主人様は私に夢中だった。女子高校生を明菜とよんでいたけど、それでも、まだ、私はご主人様にかまってもらえていた。でも、そのかまい方は明菜の方が好きだということをあらわすための子供じみ...ドール

  • ・・杜若・・

    「なんだかさ・・どっちが、どっちか、よくわかんねえよな」菜穂子の足元にきずかいながら、声をかけた。「だね・・・。だいいち、名前から・・いやだよね」「うん・・」返事をしながら、菜穂子の言った意味を考える。これが、きっと、菜穂子が俺と別れる気になった理由だろう。相手の気分をそこねまいと、必ず、「いい返事をする」菜穂子はそれを、おどおどしたチワワみたいだと嫌がった。相手の顔色をみながら、いつも、びくびくしてちょっと、ビックリさせたら失禁でもしかねない。ー逆にこっちの神経が緊張状態ーやすらげないんだよね。俺は菜穂子の言葉にうなづくしかなかった。ー嫌いになったわけじゃないんだ・・ちょっと、草臥れちゃったーちょっとは、菜穂子の優しい嘘。でも、俺をにくんでるわけじゃない。むしろ、あわれんでるかもしれない・・・。「ね、明...・・杜若・・

  • 煙草の煙にのせて

    病院の当直をおえると、北原さんが、横にならんだ。彼女も同じ当直番だったが、病棟が違う。職員玄関で、タイムコーダをおしたあと、すぐに、北原さんがやってきた。並んで駐車場まで歩くことになった。病院の隣にある駐車場まで歩く時、患者のうめき声が聞こえてきた。入院病棟は駐車場に面して建っているから、時折、患者の大きな声が漏れ聞こえてくる。「今日、搬送された男の人だよ」北原さんはその声の主を教えてくれた。「やっぱり・・・。産婦人科とかの看護師になったほうがよかったかもしれない」私がつい、愚痴をもらしてしまうのは、北原さんの妙に姉御肌な性格を知っているからだと想う。北原さんは駐車場までくると、車にのらずに、煙草に火をつけはじめた。それが、合図で、私も、煙草をひっぱりだす。「院長がだいぶ、おかんむりみたい」「ああ?これ?...煙草の煙にのせて

  • 昔馴染み・14

    兆治を見つけた。黒門町の甚兵衛長屋右手の四軒目黒門町の甚兵衛長屋右手の四軒目今ならひょっとこに浮浪のだんなも織田のだんなも雁首揃えてる。と、急ぎに急いでひょっとこの暖簾を押した。ーあれ?織田のだんながいないーだが、そんなことよりまず浮浪のだんなに・・息せきって飛び込んできた三治をみると浮浪のだんなは、ーおや、さんちゃん、おはやいお帰りで・・ーさんちゃんじゃねえやと反駁している場合じゃない。「だんな、兆治・・兆治を・・みつけやしたぜ黒門町の甚兵衛長屋右手の四軒目に、やさを構えてやがる」じゃあ、とらまえに行きましょうかねとかお奉行に直談判しにいってきますとか動き出すと思ったのに、浮浪のだんなは「さ、さんちゃんも酒のつづき・・」隣の席に来いと手招きする。「え?」出鼻をくじかれるなんてものじゃない。「え?あの?兆...昔馴染み・14

  • 昔馴染み・・13

    もしも、三治が兆治の人相書きを見ていなかったら三治の前を横切った男が兆治だと判らなかっただろう。日に焼けていると思った肌は半年の間、お日様の当たらない場所に隠れ潜んだのだろう浅黒かっただろう肌の色は抜けて、むしろ生っちろくみえていた。身なりも整えている。古手屋でずいぶん、はずんだのだろう。地味にみえるが生地が良く、品も良い、まだ新しい着物と見えた。ーどういうことだ。こいつは、たんまり銭をもっている。色は白いが、肌艶はよい。世話をする女でもいるのか?金に飽かせて、女をかこっているか?この呈だと、どこかに家も構えている?ー無性に腹が立ってくる。その金の在りようを鼻薬に、役人を引き込んだ。役人だって馬鹿じゃない。端金であぶない橋を渡ろうなんて思いやしない。端金じゃ、目もくらみはしない。いったい、どれだけの金がさ...昔馴染み・・13

  • 昔馴染み・・12

    兆治を探す・・・みかけない顔やさぐれた男日に焼けた男三治はぶつかっていってはよろけた勢いを装い袖をめくりあげ2本の筋が入っていないか確かめた。だが、そんな入れ墨を入れられた男がそこらを堂々と歩いている事も少なかろうしその少ない機会で、うまいこと、兆治にいきあたると考えるほうが無理がある。こんなことを繰り返していたらごろつきどもにどんな因縁をふっかけられるか判らない。「兆治の人相書きは、ないんだろうか?」浮浪のだんなに言えば、人相書きくらい手に入るんじゃないか?と、ひょっとこに行ってみることにした。すると・・・ー居たー浮浪のだんなが、なにか紙をひろげていて織田のだんなも居合わせて、それをのぞき込んでいた。ーきっと、兆治の人相書きだー島にお奉行まで連れていく段取りの良さ。浮浪のだんなのことだから島から帰るとき...昔馴染み・・12

  • 昔馴染み・・11

    三治は、やっと、気が付いた。浮浪のだんなが言う「ですからね、あちきは、お奉行をつれていった。そういうことですよ」と、いうのは、そも最初、人相書きを見たときから兆治が島の役人を手先にしているということも役人が、悪事を働いている事にも察しがついていたということだ。そして、気の優しい与吉が罠にはめられたということと兆治が、与吉の気弱さに漬け込んこんだんだろう。殺されているのは、与吉のほうだと判ったんだ。だけど、役人をこらしめようったって町人に何ができるだろう。兆治の手引きをした役人を吟味して罰を与える事の出来る人をだんなが連れて行った。そして、織田のだんなも・・・そうだ。浮浪のだんなとおなじようなことを考えたんだ。だから、与吉が死んでるだろうってことをにおわわすことが出来た。なんで、そんなに頭が回るんだ?字がよ...昔馴染み・・11

  • 昔馴染み・・10

    浮浪のだんなの報せは三治が覚悟した通りだった。取り乱さずに話を聞けたのは織田のだんなの助言があったからだと思う。「浮浪のだんなの報せは、おそらく、おまえには、つらい話になる」「浮浪のだんなが、話つらくならねえようにもな」話一つするにも、細かな気配りがいる。浮浪のだんなの気持ちも三治の気持ちも推し量れる織田のだんなだからこそ浮浪のだんなと逢ったしょっぱなから、意気投合になる。そのくせ、口数は少ない。多くを語らずとも、お互いがお互いを量れる。量るだけの枡をもっている、と、言うことなのだろう。与吉のことは、あきらめがついた。生きているのか、死んでいるのか、判らずちゅうぶらりでいたら気持ちの整理がつかなかっただろう。だが・・・浮浪のだんなに告げられたことがひっかかる。「半年まえに、兆治と与吉が居なくなってしまった...昔馴染み・・10

  • 昔馴染み・・・9

    あれから数えて五日になる。もしかして、今日は浮浪のだんなに逢えるかと思う。が、逢えるということは織田のだんなのいう「つらい思い」をすることかもしれない。ひょっとこの暖簾をくぐるのがなんだか、気が重い。だいたい、人生なんてのは皮肉なもんだ。待ち焦がれてる時には相手はやってこない。逢いたくないと思うときに、相手がやってくる。だから、なおさら気が重い。三治の予感は、当たっていた。暖簾を分けた手の向こうに浮浪のだんなが見えた。「だんな・・・」浮浪のだんなは徳利をもちあげて、振って見せる。三治はそれで判った。素面じゃ聞くに聞けず、話すに話せない。そういうことだろう。浮浪のだんなは、女将に奥の小上がりの席に移ると合図して三治を振り返った。その顔が、なんだか、ひどく優しく見えた。小上がりに座り込むとまもなしに女将が徳利...昔馴染み・・・9

  • お騒がせします

    お騒がせの、順番替え終わりました。邪宗の双神白蛇抄第6話を、引いて貰えば、最初から読めます。で、このおかげで、(このせいで・・・)昔馴染みが下にいってしまったので、順番替え無しで再投稿します。引き続きお騒がせします。二本立て、1本終了なので、次は白蛇抄第7話宿業を揚げる予定です。お騒がせします

  • 邪宗の双神・53 白蛇抄第6話

    その様を呆然と見詰めていた比佐乃はやがて一樹の傍に静かに歩み寄った。そして、比佐乃は持っていた脇差しを一樹の後ろ首から突き立てていた。邪鬼丸の命を奪った刀は、邪鬼丸の存念を晴らすが如く、時を経て、その時波陀羅の腹の中にいた陽道の子を、邪鬼丸が殺された時と同じ形で仇を討ち終えるかのようでもあった。刀の切っ先が波陀羅に届き、その痛みで波陀羅が覚醒した時、おびただしい血の海のなか、比佐乃は気を喪失し、まなこは一点を見定めず焦点を結んでおらず呆けた顔のまま、座り込んでいた。波陀羅は何が起きたのか、すぐには悟れなかった。咽喉わを刺された一樹は絶命しており、双神が二人で一樹の身体を持ち上げるとなみづちが刀を引きぬき一樹の身体の中にいなづちが入りこんで行った。一樹は起きあがると「波陀羅、さらばじゃ」言った途端に消え去っ...邪宗の双神・53白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・54 白蛇抄第6話

    そして、その夕刻。一樹の咽喉に、畳針を深く刺し貫く澄明の姿があった。。澄明の目に映った者は驚愕と恐怖が混在した顔をしていたが、一瞬の内に何もかもを判断し諦念し哀しく情けない顔に変わった。恐ろしいほどの呪詛の念誦が封じ込められた畳針に更に澄明は、不動明王の真言を唱えている。「ナウマク・サマンダバザラダン・カン」修験者を守護し、修行の功を達成させる明王である。その力の中には金縛りという、まさしく不動明王ならではの力がある。その力を利用して双神を閉じ込めてしまうのである。刺し貫かれた針をぐいと押さえ込み澄明が真言を唱え終ると「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前」さらに九字の真言を唱えた。「破邪・・・臨・兵・闘…・・」白銅が続けて九字の手印をきりながら澄明の声に重ねてゆく。澄明の手は痺れたように動かず手印を切る事...邪宗の双神・54白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・55 白蛇抄第6話

    が、その時であった。榛の木の後ろに小さな芽が吹き出しているのを澄明が見つけて小さく叫んだ。「あ、芽がでておる」澄明の声になみづちは身体を捻じった。なみづちもそれを見つけると「あ」と、声を上げた。同時に澄明は一つの時に気がついていた。「双神。一樹の身体の中に入れ・・・」澄明はなみづちの傍に座り込むと畳針を一樹の身体から抜いて呼びかけた。「閉じ込めてくるるのか?」なみづちの中にも一縷の望みが湧いているのである。先ほどの一樹の身体の中から伝わって来た雷の力で双神を元一つに戻せれるのではないか?澄明が思うのと同じ様になみづちもそれを感じ取っていたのである。「ああ」いなづちは一樹の身体の中に閉じ込められた事を呪い呟いてたが、榛の木が芽を吹き出しているのなら訳が違う。一樹の身体の中に双神が入り込み針を貫けば、おそらく...邪宗の双神・55白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・終 白蛇抄第6話

    森羅山を抜ける頃になって波陀羅に白銅が「波陀羅。男はもういやか?」と、言う。「は、はは・・・もう、懲りた」淋しい顔で笑いながら、波陀羅は答えた。「そうか。わしは、御前がいっそ男になれば良いと思うての」「は?」突飛な事を言い出した白銅である。波陀羅も澄明も顔を見合わせていた。「いっそ、波陀羅。御前が一樹になりすましたらどうかと思うての」「え?」澄明は白銅の言う意味合いが、すぐさまに理解できず、突飛な進言に虚をつかれていた。だが、波陀羅のほうは、一度は一樹に成り代わって死のうとまで思ったせいもあり、一樹に成り代われるなら成り代わってしてやりたいこともあった。「そうじゃの。我が子と通じるような事をしでかした鬼じゃ、いっそ、それが良いかもしれんが・・・」波陀羅の言葉が止まった。「お、男になぞ・・・なれるのですか?...邪宗の双神・終白蛇抄第6話

  • ランキングじゃないのよ~~HOHO~~~♪

    このブログを開設して3008日たっている。おそらく、その時も、書いていた物をこちらに移そうと思ったのだろう。ところが、なぜか、放置・・・約8年放置・・・考えてみると・・・他ブログの記事掲載にいそしみだした時期と符号する。そして、7月末日から記事を揚げだしたが三行ほど並んでいるランキングとPV/UU0とランキングに入らないー位こんな調子。7月24日~7月30日-位0PV|0UUそして挙げ始めた第1週7月31日~8月6日14100位2467PV|578UU正直・・・なんという数。ブログ人で上げていた頃は順位は無かったと思うが一桁違っていた(と、記憶する―気にしていなかった)気にしなかったというのは、ひとつにダイレクトにコメントを下さった方が多くかつ、物語に入り込んでくださった人が多かった。それで、ランキングと...ランキングじゃないのよ~~HOHO~~~♪

  • 陽気でおらねば・・・

    久しぶりに読み直す作業でもあった。邪宗の双神・53白蛇抄第6話の中ーそして、比佐乃は持っていた脇差しを一樹の後ろ首から突き立てていた。邪鬼丸の命を奪った刀は、邪鬼丸の存念を晴らすが如く、時を経て、その時波陀羅の腹の中にいた陽道の子を、邪鬼丸が殺された時と同じ形で仇を討ち終えるかのようでもあった。ー(文章の拙さは自分でも、目を覆いたくなるがこの際、ほっておいて・・・基本一発書きで、推敲していないので、なおさら目立つ。挙げながら余裕が有るときは多少、直したwww)で、このエピソード対をなす部分が波陀羅・・・8白蛇抄第5話途端に女子の声が上がるかと思うておったが「邪鬼。我にはお前が初手じゃったに、お前には・・この女が最後になるに・・・」「えっ」邪鬼丸がやっと織絵の正体に気が付くが時すでに遅い。織絵に締め付けられ...陽気でおらねば・・・

  • 物書きと音と音楽

    時代に逆行してきたともネットに逆行してきたとも、思う。ネットを始めたのは、かれこれ、20年ほど前。そのころから、ずっと・・・音量は0にしている。今ほど、楽に「音楽」をブログに掲げることが出来なかった。動画も難しい。スクリプトで画面、画像を切り替えるくらいが自分のできる精一杯だった。そんな折、個人サイトに訪問すると音楽が流れてくる。今のように、ユーチューブの画面をクリックして初めて音楽が流れて来るという状態ではなかった。なかば、強制的に聴かされる。かつ、今ほど、良い音がパソコンから出て来るわけじゃない。なにやかやとメール着信とか・・ただでさえ、音が氾濫していていつのまにか、テキストに向かうときは、音量を0にしてしまいそのほうが、楽になりずっと0状態を維持している。ついでをいうと音楽は自分のシステムで聴く。(...物書きと音と音楽

  • 邪宗の双神・42 白蛇抄第6話

    食事を終え腹をはらした白銅を玄関先まで送出すと、澄明は再び鏑木の部屋に入っていた。澄明は座り込むと宿根神の言った事と白銅の言った事とを考えていた。宿根神の言った双を成した神とは誰の事なのか、どう言う経緯かで、双をなしたかという事は、城に上がった白銅が主膳から聞かされる話で当て所がついていく事になる。さらに、澄明は白銅の言った魂が一つになっているという言葉にひかかる物があった。宿根神の言葉から双神が元一つの者であったと明かされてみると、双神は例えて言えば澄明と白銅のように魂を一つの物にする為に溶けあいたいと思うのではないか?が、まほろばの中にというのであれば彼等には実体がないのは確かな事である。それであるのに御互いが睦み合う事が出来ず、元一つになりたいという要求だけは止めど無く涌かされて行くのである。生き越...邪宗の双神・42白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・41 白蛇抄第6話

    白銅と澄明は、まだ黙したまま座っていた。一切の外からの思念を阻んでいるのであればかのとに何があったか知る事もないのは無理の無い事である。やがて澄明の方が先に膝を崩しだした。白銅の方はそれを待っていたかのように「浮んだか?」「白銅の方は?」「わしは、どう言うわけか、主膳殿が浮かんで来て。・・・どうにも判らぬ」「何か、あるのでしょう?この事で髪揃えの儀式も先延ばしにしてあるし、勢姫の事にしろ、主膳殿の子である一穂様が着け狙われたのも、何か主膳殿に元があったのがきっかけなのかもしれない。その折に政勝にも目を着けたというのが、順序かもしれませぬ」「成るほどの。聞いてみて来るかの?で、お前は?」「私の方は私が自分で言うた事が言霊になってしまっているのではないかという事ばかり・・・」「何を言った?」白銅もひのえが言霊...邪宗の双神・41白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・40 白蛇抄第6話

    かのとが目覚るまで、見届けるという黒龍を捨て置くと八代神は波陀羅の手を引いて外に歩みだした。「やれやれ・・・朝から仏様を拝まんですんだ」庭先に出ると八代神は波陀羅を振り返った。「八代神。我はこの先どうすればよい?」「そうじゃの。伽羅にも言われておったろう?比佐乃に母親の思いを伝うる者はお前しかおるまい?」「双神が所にいっても、比佐乃の、一樹の、魂はもう、元には戻らんのか?」「一樹はどの道死ぬる。魂を元に戻したとて因縁は消えぬ」「比佐乃は・・・・」「これ以上、双神の贄にされぬように伽羅の言うたように澄明を頼ってみぬか?」波陀羅は何度か言われる内に不思議な事に気がついていた。「何故に伽羅の言うた事をしっておる?」「いうたろう?元親じゃ。御前の反古界なぞ親の前では役に立たん」「な、ならば?あの、双神に魂をいれた...邪宗の双神・40白蛇抄第6話

  • 断筆宣言から復帰して

    物を書き始めたのは10代なかば。6年位続けていたがある時、今でいう「性同一性障害」に近い設定だった。双生の姉を護るため、疑似的男性の気持ちになっていた妹だったが姉が、ある男性と恋に落ちる。姉を託すに足りる相手だと確信すると妹は、もう自分が疑似男性というナイト(騎士)でいる必要がなくなったと知ると、同時に姉にとっても逆依存にみえるだろう自分を心配させると、考えて妹は姉妹共通の友人であった男性(と、いうより、男の子?ノンセクシュアルな存在だった)と、結ばれることで妹もまた、「女性」として生きていくということを(すなわち疑似男性でなくなったと)姉に悟らせていく。姉は気がかりがなくなっただろうし妹も普通の?人生を送れる、と、安心した事だろう。第2部に入り姉と精神的に決別した妹が大学を出て・・・就職しそこで、さらに...断筆宣言から復帰して

  • うがち

    白蛇抄という物語を書こうと決めたときー因縁の繰り返しーを、ほどかねばならない。と、思った。だが、そもそも、因縁というものがなんであるか。今の世の中でいえば遺伝子ーDNAの差配ということになる。第1話蟷螂は因縁(遺伝子ーDNAの差配)から逃れられぬ蟷螂である。第2話悪童丸で、因縁(遺伝子ーDNAの差配)を変転させようとする陰陽師が現れる。因縁(遺伝子ーDNAの差配)から逃れられることは出来ないが蟷螂のように、その差配のまま生きるしかないということでなく自分の代・もしくは今、ここまでで因縁(遺伝子ーDNAの差配)を断ち切る。だが、因縁(遺伝子ーDNAの差配)から逃れられることは出来ない。見た目は同じ繰り返しであってもー因縁を通り越すーことで、因縁を変転させることが出来るはずと考えたのが白河澄明である。第2話の...うがち

  • 邪宗の双神・39 白蛇抄第6話

    じりじりと後退りをしていたかのとを押さえつけ今、まさに波陀羅はその首を締上げていたのである。そのかのとの傍に降り立った黒龍は念を身体の中に振り湧きたたせると懇親の力を込めて波陀羅を突飛ばした。「何者?」波陀羅の双神への懇願を、成就を、邪魔する男が政勝でないのを見て取った波陀羅は大声で叫んだ。が、波陀羅の焦りが相手が何者かを見定める事を忘れさせてしまい、黒龍に挑みかかる事を恐れなくさせていた。突然現われた相手が只者でないと判った時には、男が波陀羅を捩じ伏せ、その力で波陀羅の首を捩じ切ろうかとという程の力を込め出していた。『潰える・・・・何もかもが潰えてしまう・・・・・』波陀羅の意識が遠のいてゆこうとするその時、その手の力が緩んだ。「阿呆。お前が、そうしたらいかんというたに」真白き着物を纏った老爺が、男の手首...邪宗の双神・39白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・38 白蛇抄第6話

    天空界では黒龍の憤怒が納まらないままであったが。「な、なん・・じやあ?」うとうと、黒龍の傍らで遅寝を決めこんでいた八代神は、またもやの黒龍の叫び声に目を覚まさせられていた。「あの、女鬼。あろう事か、かのとに化身しおった」忌々しそうに黒龍が言う。「か、かのとに・・・なんでまた?」「政勝を牛耳る気じゃったのじゃろう」「はあーーーん」「八代。もう、みぬ振りをするな。もう、許せんわ。あの女鬼が魂を握り潰してしまえ」「ほ?ほおお?」魂を差配する神であれば、出来ぬ事でない事を黒龍は怒りの余りに口に出していた。「人を呪わば穴一つと言うぞ。短慮はいかん」「かのとが殺されてもか?」「そこまで女鬼が切羽詰まったは、御前が二人を守護するからじゃろうが?」八代神の言い分に黒龍が「黙って、二人を双神の贄に渡せば良かったと言うのか?...邪宗の双神・38白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・37 白蛇抄第6話

    政勝を社の外に放り出し、政勝の目の前から社の存在を掻き消してしまうと、双神はもう次の手立てを考えならなければならなくなっていた。今一歩の所の失敗に社の中では腹立ちを押さえ切れず怒鳴り声を上げているいなづちがいた。そのいなづちを見ながらなみづちも腕を組んで考え込んでいたのである。「波陀羅。わしは御前の化身振り見事であったと思うておる」なみづちが考え込みながら出した言葉にいなづちが食って掛った。「ならば、何故、政勝が気がつく?何故じゃ?有得ぬ」「ふ、よほど馴染んでおると、思わぬか?波陀羅が化身した女子の肌では、かのとでないと気が付かれたのでないか?」その言葉を波陀羅に振り向けて、なみづちが云わんとする意味合いは織絵の身体を乗っ取り生き越して来た当の波陀羅が一番良く、判っていたのである。つまり、移し身でなく、か...邪宗の双神・37白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・36 白蛇抄第6話

    伽羅に教わった屋敷を波陀羅は覗き込んでいたが、人の出てくる気配にずいと下がると、隠れる場所を探してそこから様子を窺っていた。遅番になった事もあって政勝は今朝はゆっくりと起きだすと登城の用意をし始め、かのとに送られて門まで出て来たのである。もう、二歳たとうかというのに相変わらず仲睦まじいのであるが、夫婦の二人住まいである事に加えまだ子のないせいでかのとも他に手を取られる事も無いので政勝をゆっくり送ることも叶うのである。「いってくるの」政勝が言うと、その姿が小さくなるまでかのとは門の脇で政勝を見送っていたのであるが、波陀羅にとっては、かほどに都合の良い事はない。食入るほどにかのとを見詰めその姿を目に焼き付けたのはいうまでもない事である。やがて波陀羅は、かのとの身に姿を映しかえると、政勝の後を追って行った。城に...邪宗の双神・36白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・35 白蛇抄第6話

    社の外の日差しは明るく、社の傍らの柔かなにこげに包まれた猫柳が膨らむのを見守る様に日の光が新芽を包んでいた。『政勝というたな』政勝を探す事は造作ない事であったが、波陀羅はその前に伽羅に逢いたかった。波陀羅が伽羅の元へ行くと、波陀羅の姿に気が付いた伽羅の方から尋ねてきた「双神におうたのか?」伽羅の言葉に波陀羅が軽く頷くだけで、やはり波陀羅の望みはらちない事に終ったのだと伽羅は考えていた。「比佐乃は御前が寄越した金で、家を借りておる。澄明が裏で仕切ってくれてな。澄明は陰陽師であらば比佐乃さんが己の身上を読まれると恐れるだろうからと表にはでておらん。御前の銭は一樹から預かって来た物であり、森羅山でおうた女がそれを宿に届けて遣したと言う事になっておる」澄明から聞かされた事をそのまま告げると「ああ。それが良い」波陀...邪宗の双神・35白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・34 白蛇抄第6話

    社の中で目覚めた波陀羅は己の横で寝入る一樹の顔を見詰ていた。双神が波陀羅を社に引き入れた目的がこれであったかと思うと無念の思いに胸が張り裂けそうであった。が、まだしも何処の誰かも判らない女の相手をさせられる事を思えば一縷の慰めが有った。ましてや、波陀羅も双神に逢う事がそれ故に達せられるのであれば致し方ない事であるというしかなかった。一樹を起こさぬ様に傍らを離れると波陀羅は双神のいる奥の間に歩んで行った。双神が波陀羅の気配に目を覚ますと声を掛けた。「波陀羅。御前の忠誠、よう見せて貰うた」波陀羅は双神の前に平伏すと深く頭を下げた。「御願いが御座います」双神が顔を見合わせほくそえむのをひれ伏した波陀羅が気が付くわけはなく「何かな?」尋ね返されると波陀羅も束の間言葉を無くしていた。忠誠を見せたといってみても波陀羅...邪宗の双神・34白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・33 白蛇抄第6話

    ひのえと白銅の魂が寄り添っている同じ時刻。京の都の一隅の立ち食い蕎麦の屋台に波陀羅はいた。屋台の行灯の薄明るい灯に照らされた椀の底の汁まで飲み干すと波陀羅は立ち上がった。「やだよ。姉さん。もう行くのかい?」人懐っこい顔と物淋し気な顔が奇妙に同居している、波陀羅とはいくつも年の離れた女が声をかけた。「ああ」言葉少ない返事が返って来ると、遠ざかって行く波陀羅に女は呟いていた。「何をしゃかりきになってるんだろうね」その声に屋台の男が「はあ?好きでやってんだろ?おまえ。そう言ってたじゃねえか」掃き捨てるように言った。「まったくね。あたしも、こんな事、好きでやれりゃぁ。いいだろうね」商売道具の茣蓙を掴むと女は「やれ、もう、一商売してくるかね」立ち上がって、先の商いで得た銭の中からいくつかの銭を男に渡した。蹴ころと呼...邪宗の双神・33白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・32 白蛇抄第6話

    帰ってみて、玄関先の草履に気がついた澄明である。「かのとがきておるな」呟きながら入って行くと、やはり草履はかのとの物であった。かのとは居間に顔を覗かせた澄明に気がつくと「ひのえ」立ち上がって澄明の部屋に澄明を押していった。「なんですか?」火鉢の炭を継ぎ足してやりながら澄明が尋ねると「まずは政勝様の事よう判りましたに、ほっとしました。礼を言いにきました」何処か、切り口上である。「それだけでは、無いでしょう?」澄明が伺う様に覗き込んでいると「双神が何の為に政勝様の思念を振るような事をして、あのような事をさせていたのです?政勝様にきけばそれは、聞き忘れたというて・・・」「それを私に怒って、どうするのです?それと、もう、いい加減に政勝様はやめなさい。政勝と呼ぶか、良人、主人という風に呼んだらどうですか?」「今、か...邪宗の双神・32白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・31 白蛇抄第6話

    「澄明さん」澄明の顔を見ると、男はなんだか嬉気に名前を呼んできた。「どうなさいました?」澄明が聞けば「いやあ。宿に泊っておる女子が森羅山に社が無いかとかどうかとか、言い出しましてね。まあ、そりゃいいんですが。なんか事情があるようで、女房の奴がその女子が首を括って、おっちんだらどうするって言出すしまあ、来て見てやってくださいよ。詳しい事は道々話しながら行きますから・・・どうか」拝む手付きをするのである。澄明はこれは波陀羅の子の比佐乃の事であるなと見当がついていたので直に男の言うまま足駄をはむと男と並んで宿屋に向かって歩き出した。「いや。森羅山に社なぞねえってのに、あるって言いはるし、果てにはそれをあるって女が森羅山にいたっていうんですよ。大体おかしいでしょう?そんな、ありもしねえ物をあるっていうし・・・」男...邪宗の双神・31白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・30 白蛇抄第6話

    澄明は、神楽着の部屋で伽羅を前にして座っていた。朝早く人目を避けてやって来た伽羅に聞かされた内容に澄明は瞳を伏せていた。「あれが、双神に逢う為に何をするか判っておいでですよね?」涙が零れそうなのを堪える伽羅の顔はくしゃくしゃになっていた。「すまぬ。伽羅」澄明が己の力の無い事を伽羅に詫びているのである。「いんやあ。御前様のせいでないに。我も我のせいではなかろうに、どうにも哀しゅうて。これをみてくれや・・・」薄汚ない小袋を伽羅は澄明の前に置いた。澄明がその子袋の口紐を解き開いてみるまでもなく引き寄せた質感でその中に入っているものがたくさんの銀の小粒だという事はすぐに判った。「銀の小粒の様じゃな。こんなにたくさん・・・どうしました?」「朝に、起きた時には置いてあったに。波陀羅に決っておろう?」澄明も黙りこっくっ...邪宗の双神・30白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・29 白蛇抄第6話

    宿に居続けている比佐乃も途方に暮れている。次の朝にもう一度、森羅山の社に行こうと思って宿の者に尋ねると「森羅山には社は無い」足下に返事が返って来るだけでなく、うろのある椎の木の事は確かに聞いた事があるがそんな事より森羅山に入る事自体がとんでもない事だ。お止めなさいと宿の亭主からおかみ、はてには番頭、手代まで顔を並べて言うのである。「なんともありませなんだ」比佐乃が昨日、夕刻遅くに森羅山の中に入っている事を告げると、「まあまあ、良く、ご無事で」おかみが言うのに続けて亭主が「命拾いをしたと思って、もう、行っちゃあいけませんよ」宥めるのである。「そうですよ、。あそこは山童もおるに・・まあ、よう、無事に・・・」命さえ危うかった場所と知らずに立ち入った己であるとおかみに二度まで言われると比佐乃も、今更ながらにぞおお...邪宗の双神・29白蛇抄第6話

  • えらいこっちゃWWW

    昔馴染み・・・書いていくにつれつじつま合わせが必要になってくる。良い言い方をすると奥行きが広がる?さきにくっちゃっべってしまうと、9の設定のまま、通常に進めていくと、役人の悪事が露見しそれを退治しなきゃいけなくなる。ところが、ウィキによると芹沢鴨との交流もあり「一緒に日本を変えないか?」という持ちかけに「あちきは浮浪雲なんでね、日本を変えようなんて気はありませんよ」と笑顔で返し、芹沢を黙らせたと、いうのがある。芹沢鴨が、浮浪雲の眼鏡にかなったかという点に着目するとーこ~~んな奴とは、やってられないーと、相手にしなかったともとれる。文久3年(1863年)9月、芹沢が懸想していた吉田屋の芸妓小寅が肌を許さなかったため、立腹した芹沢が吉田屋に乗り込み、店を破壊すると主人を脅して、小寅と付き添いの芸妓お鹿を呼びつ...えらいこっちゃWWW

  • 邪宗の双神・28 白蛇抄第6話

    同じ頃、不知火は陰陽師藤原永常を尋ねていた。「長浜!?長浜からいらせられた?」「その通りです」「な・・・何がありました!?見れば、貴方も陰陽師?」「ご推察の通りです」まじまじと不知火を穴の開くほど見詰めていたが、やがて「玄武・・・・を護られておる?」と尋ねて来た。「不知火と言います。賀刈陽道という陰陽師に纏わる事を知りたく思いましてな」やっと不知火が切り出せば永常は途端に顔を曇らせた。「御話しを伺いましょう。私も気に成っておる事が御座いますし」不知火を奥の部屋にに導き入れると不知火に囲炉裏の前の座を勧めた。「ここに来る前に、一樹と比佐乃という陽道の忘れ形見の所在を確かめに行って参りました」頷くかのように首を前に落とす永常は「おらなんだでしょう?」二人の不在を知っていた。「何ぞ、ご存知ですな?」不知火がきけ...邪宗の双神・28白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・27 白蛇抄第6話

    双神の社の中では、旅の疲れに身体を投げ出し寝入っている一樹の姿があった。その横でその寝顔を覗きこんでいたなみづちがであったが、いなづちを振り返った。「いなづち・・・もう・・堪らぬに。なんとかしてくれねば」なみづちにぐずぐずと文句を言われるまでもない。いなづちとて焦っているのである。「いなづちは良いわの。波陀羅がシャクテイを送りつけてきおるに・・・我には何もない」「そうは言うても、快楽の高みだけのシャクテイに、どれほど餓えが満たされよう」京の都に降立った波陀羅が双神との伝手を得るために、その身を鬻ぎマントラを唱えシャクテイを送りつけ始めていた。それを、いなづちは確かに受け止めていた。「何も・・・無いよりは良いわ。我は餓えを忍び、この三月、一穂を差配して政勝とかのとのシャクテイを一穂の中に植え込んでみたのは何...邪宗の双神・27白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・26 白蛇抄第6話

    比佐乃がめぼしい宿を見つけて泊まれる事が適うと、波陀羅は名残惜しくもあったが、比佐乃に別れを告げると衣居山の伽羅の元に急いだ。伽羅の棲家を覗いてみても、伽羅の姿は見えず途方にくれて居ると、木々が揺らめく気配がして伽羅が波陀羅の前に降り立った。「おお・・波陀羅。何処にいっておったに・・・ああ・・早う・・は、入れ」波陀羅の無事な姿を見ると伽羅は肩を押して中に招じ入れた。「勢が乳が張っていかんと言うに搾ってしまえというても、早苗が飲む分じゃにいかんというて、堪えよるに叱りつけて宥めて大騒ぎをしておった」留守のわけを説明しながら、「波陀羅。囲炉裏の火を大きくしてくれるか?鍋に昼の残り物があるにそれでよければ暖めて食おうぞ」波陀羅への心遣いを見せる伽羅に波陀羅も頭を垂れるしかない。部屋の隅につんである薪を取りに行く...邪宗の双神・26白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・25 白蛇抄第6話

    比佐乃と派陀羅。その二人が椎の木の辺りを通り過ぎると、隠れていた白銅と善嬉は二人が行き越したと伸び上がって確か二人の背を見送った。「酷い様じゃの」と、善嬉が言う。「やはり、澄明の言う様に社は現われませなんだな」「おかしいのお。不知火の言霊が来てしばらくしたら、一穂様に付いておった影が消えてしもうたからこれはてっきり、双神合い並びて、あの女子を迎えに出るかと思うたのにのお」善嬉は何度も首を傾げていた。「善嬉にはあれらが喋っていた事聞えましたか?」「いんや。遠すぎていかん何処にも隠れ様がない場所にへたり込みよってからに」更に重ねて白銅が尋ねた。「読めませぬでしょう?」「ああ・・・確かに、読めん」いつか聞いた反古界が確かに二人ともを包んでいたのである。「帰りましょう」白銅に促がされると「そうするか」善嬉もこの寒...邪宗の双神・25白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・24 白蛇抄第6話

    その顔を見ると胸の中から堰きあがってくる物がある。それを押さえた波陀羅であった。これは一樹を好いておる。人に後ろ指を刺されるような己らの睦み合いの中から、一樹への情を育み、一樹の子を得る事を本望と思う妻の心になっておる。それが判ると尚更に比佐乃の境遇が憐れであり、この地に来て初めて呼ばれたであろう、ご新造さんと言う言葉一つに喜びを見出している比佐乃がいじらしくもあった。「ご新造さん?なら、あ、ああ?ならば、一人でこんな所にきてはご亭主が心配なさろうに・・・」さも今気がつきましたという様に、気になっていた一樹の事に触れてみると「それが、その良人が社の中に居る筈なのです」「ああ・・・なんぞ、用事を言いつかったのですな?」波陀羅も当り障りなく答えておいたが、胸の中の慟哭を抑えるかのように、胸を押さえつけねば立っ...邪宗の双神・24白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・23 白蛇抄第6話

    空が白む前に波陀羅は宿屋の二階の小窓より身を擦り抜けさせると外に飛出して行った。路銀なぞ元より持っていないのを承知の上で比佐乃の後を追って宿屋に上がり込んだのであるから波陀羅にとっては致し方ない行動だったのである。朝になって比佐乃が起きて出立する頃になると、宿屋のおかみが尋ねて来た。「娘さんは昨日・・・隣の部屋に泊まった女子を最後に見たのは何時頃でしたか?」「あ、私は食事を戴いてから、すぐに臥せこんで寝てしまいましたので隣の方が女子の方だという事も存じ上げませなんだ」「ああ、厭だねえ。とんでもないよ。方だの、存じるだなんてそんな女じゃないんですよ」「あの?何か御座いましたか?」「ああ、いんやあ。娘さんには関係の無い事なんですがね。宿代を払わないまま出ていちまったんですよ。それがね、内もその辺りはよくよく考...邪宗の双神・23白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・22 白蛇抄第6話

    夕刻の日の暮れの早さに飽きれながら政勝は退城の時刻となると、辺りを見廻しつつ帰宅の仕度を整えていた。と、櫻井が「早番ですか?冬は早番の方が良い。朝は暗い内から出るのは辛いがやがて明るうなりますが、夕刻はちょっとすぐるともう暗くなる」ここしばらくの遅番に愚痴る様であったが、声を潜めて尋ねて来た。「なんぞ?ありましたか?」「何ぞって?なんじゃ?」「いや・・・九十九善嬉が一穂様に張り付いておられる」「ああ。その事か。髪揃えの前の禊を・・・」「政勝殿。貴方は、私に、殿に言上した事と同じ事をいって通じると思っておりますか?」「いや・・・事実」「何故、澄明様がこられぬ?何故九十九殿です?」「さ・・・さあ?」「さあ?さあ、なのですか?政勝殿。政勝殿は何ぞあるのを私に隠しておらるる」「あ、いやあ。わしもこれからそれを澄明...邪宗の双神・22白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・21 白蛇抄第6話

    波陀羅は、気配を殺し道沿いにある大きな松の後ろに隠れるとしばらく佇んで、長浜の陰陽師の一人である不知火をやり過ごしていた。前をゆっくりと歩く比佐乃の様子を窺いながら、かつ、比佐乃をつけている事に気取られない様に気を配りながら歩いていた。比佐乃が傍らの石にへたり込んだ時波陀羅も余程声を懸けて力を貸してやろうとしたが、不知火の姿に気が付いて慌てて隠れたのである。波陀羅は伽羅の元を出る時、やはり双神に逢うしかないと決意していた。その為にはどうしても双神にシャクテイを送り付けるしかない。そうしておいて双神への忠誠を見せるしか、閉ざされた社への道が開けぬと考えていた。かといって長浜の町で行動を起こせば陰陽師達の目に止まりそれが故に一層、双神が姿を見せぬようにもなりかねないし、伽羅がまたも泣いて止めよう。伽羅の心の優...邪宗の双神・21白蛇抄第6話

  • ブログランキングに登録してみた

    ブログランキングに登録してみた。こ~~~んなのが記事の最後にくっつくようになった。で、小説ブログの面々はいかがなるものであろうと覗いてきた。が~~~~~~~ん!!官能小説が、多い上位、その類。ただでさえ、それらと間違われそうな表現を駆使しているのだから、登録はなんだか、官能小説であると認めてしまった行為に思えてくる。実際、官能小説NOT官能小説の線引きは判りにくい。取り敢えず、官能小説と本人が認めているものは官能小説と判断するべきだと思う。で、本人が認めていないのに官能小説(の類というのも含め)に扱われる。(アダルトサイトのキャッチに使われたり・・・登録場所で、官吏に~勝手に、官能小説に分類されたり)が、本人が認めていないという「線引き」こそが、見えない。で、その「線引き」別途、官能小説は書いている。これ...ブログランキングに登録してみた

  • 邪宗の双神と昔馴染みと・・・

    邪宗の双神出てきた陰陽師wwwー不知火は思い迷いながら山科の町にいる陰陽師を訪ねると決めた。事の真偽をはっきりさせる為にはやはり、山科に向かって歩み出すしかないのである。ーこの陰陽師波陀羅・・終白蛇抄第5話の、最後の最後で、やっと出て来る。「陽道と織絵の不思議な死に親戚の矢祖平助は、陰陽師である藤原永常を呼んだ。永常はその死体を見るとその正体に気が付いていた。陽道の身体の中で息絶えた鬼がいる。一方の織絵の身体の中は裳抜けでしかなくそれも、随分前に織絵の魂が脱け出ていた筈である。同じ様に織絵の身体の中にも鬼が巣食っていたのは明らかであった。鬼同士、どういう諍を起こしたのか判らぬが長年に渡り二人の身体を乗っ取っていたのは、間違いない。その上、子まで成しているのである。不思議な気持ちのまま永常は二人の子を透かし...邪宗の双神と昔馴染みと・・・

  • 邪宗の双神・20 白蛇抄第6話

    一方、不知火である。波陀羅の子がいる山科まで足を伸ばす事になるとは夢にも思っていなかった不知火であるが、こうなったら仕方がないのと旅仕度を整えると早速出かけて行った。だが、半日も歩かぬ内に不知火は引き返そうか、そのまま、山科まで行こうか、迷う事になった。と、いうのも、向こうから歩んできた年の頃、二十ぐらいの女子が大きく息をついて傍らの大きな石に持たれかかったのだが、それがかなり辛そうに見えて傍まで駈け寄ろうとした不知火だった。が、不知火はうっと息を飲んで立ち止まってしまったのである。「これは!?波陀羅の子?」いやな気配がしなくもない。それもその筈で感じた不安のままその女子を見透かしてみれば澄明が言っていたような反古界がある。さてはと不知火も女子の魂の様を見てみれば、その酷さに目を覆いたくなった。余程、声を...邪宗の双神・20白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・19 白蛇抄第6話

    その頃、政勝は自分の取った奇妙な行動が、澄明に言われた一穂の後ろの黒い影に関係があるらしいと、気が付いており、そうでなくとも、白銅と供に首をかしげていた社に一穂が引き寄せられていった事やらとにもかくにも澄明に合って話しをせねばならぬと、帰宅の刻が来るのをじりじりした思いで待っていた。そこに善嬉が廊下を通りすぎて行くのが見えた物だから政勝は慌てて善嬉を追いかけて行った。「待たれよ・・」声を懸けると善嬉が政勝に言い放った。「役に立たぬ。随身じゃの」一穂との事を知っている口ぶりだったので「そこもと?」言わずもがなであるならば、敢えて言いたくもない政勝であるが、それでも善嬉が知っているのかを確信したくもあり、態々出向いて来た膳嬉の用事が何であるのか?やはり、黒き影の事であるなら一体、どうしょうというのであろうか?...邪宗の双神・19白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・18 白蛇抄第6話

    伽羅から聞かされた事で澄明に見えて来た物があった。それで直、澄明は残りの二人を集めた。伽羅により波陀羅という女鬼からもたらされた話しをする。と、「双神はおそらく、政勝を使って一穂様とかのとのシャクテイを得ようとしているのだと思われます」「シャクテイ?」不知火は聞き返してきた。が、善嬉は腕を組んだまま黙って澄明の続きを待っていた。「性の根源力・・・気・・と、言って良いかと」思い当たる言葉もなく澄明はそう説明すると、不知火が「成る程・・・で、政勝を使うとは??」不知火の疑念をはっきりと言い正したのは善嬉の方で「出きるものか。政勝は、龍が子孫だぞ」今や公然の秘密となった事を言い放った。澄明はその善嬉に無念そうに首を振った。「いえ。黙っておりましたが、政勝の思念を振るほどの妖力を持っております」「なんと?」不知火...邪宗の双神・18白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・17 白蛇抄第6話

    「それで?」白銅に促がされると、「ああ・・。此度の黒い影。双神じゃろう」「双神?」「わしの推量もあるが、一人は一穂に付いておってもう一人はあの女鬼を食い尽くして新たな生贄を求めて隙を窺っている」「双神というのは?」「この世界の者では無いそうな。仏界にも、神界にも、言わんや。天空界にもあのような者はおらなんだ。と、なると何処ぞから突然生じてきた者か。流れついたか」「な、ならば?喩えて言えば、それはたたり神と同じような?」「かもしれぬし。八代は魔界から現われたのやもしれぬとも言うておる」「たたり神ならその怨念手繰れば解決もあろうが、魔界の者であらば、今以て姿さえはっきり見せぬにそれも判らぬに。その上双神と言うか?」「それについての、伽羅が例の女鬼から話しを聞いておるに。あれを呼ぼうてある。もうしばしでここに現...邪宗の双神・17白蛇抄第6話

  • 昔馴染みと邪宗の双神と・・・

    昔馴染みのほうも、登場人物、でそろいつつあります。原作があるということが強みになるのは多くの人が現在進行形で読んでいる場合でしょう。例えば鬼滅の刃の二次創作を書こうとしたとき多くの説明が不必要になる。竈門炭治郎竈門禰󠄀豆子と、いう名前だけで別キャラーを投入しても通じてしまうところがある。今回浮浪雲という作品の1話を起こしてみようと思った時に漫画(原作)なら織田(仮称)がでてきても、説明が要らない。(むろん、キャラ設定は画で出来ている)それが、文字にしようと思うと織田のキャラから書いていかねばならない。それを浮浪のだんなをうわまわる器の広い人間である。とか、説明してたらこれは、あらすじが、同人さんがよくやるキャラ紹介の範疇になってしまう。手が及ばないながら浮浪のだんなを上回る「魅力」をもっていることを作品中...昔馴染みと邪宗の双神と・・・

  • 邪宗の双神・16 白蛇抄第6話

    頭の中で怒号する声に政勝が意識を取戻した時、政勝は自分のしている事に頭を叩かれたよりもひどい痛みを感じた。政勝の胸の中に身体を預けている一穂のその口を啜り、あらぬ事か政勝の手は一穂のまだ幼い陽の物を弄っていたのである。一穂の方はそれを望んでいたかのように、うっとりと政勝に身体の重み全てを預けて政勝にされるままにいたようなのである。『わしは!?な、何を?』政勝の驚愕に気が付きもせず一穂は魂ここに在らずという逞である。政勝はその一穂の肩を掴み激しく揺さ振ると「一穂様。一穂様。気をしっかり取り直して、ここを早う出ましょう」一穂を呼覚ます。「政勝?何をしよる?ここは何処じゃ?」揺すぶられた事に些か気を悪くして、不服な顔をして見せたが、不思議な面持ちのかわると、己の所在を確かめるのか、ゆっくりと、辺りを見渡していた...邪宗の双神・16白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・15 白蛇抄第6話

    三日の開けるのを待つ間白峰のため息が何度つかれたか、八代神は『また、いうておる』そのため息に飽きれている。ため息を傍で聞かされるのでは八代神も敵わぬが、かといってひのえが傍にて護りおれば、いやでもそのため息の数も増えようというものである。『はあーま、それを見ているわしもため息をついておるのも、どうだかのう』ひのえ達への心配ばかりでなく八代神にため息までうつしてくれた白峰が家を並びて出てくるひのえと白銅に気がつくと知らぬ気を装おう為と、ひのえの護りに入っているのを隠したくあったのか、慌てて、社に戻っていったのを八代神はくすくすと笑っておったが、その顔が真顔になった。八代神の傍らにいた黒龍はこの前から思念で政勝とかのとを追いながら護りに入っていたのである。が、その黒龍もうとうとと微かにまどろんでいたのである。...邪宗の双神・15白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・14 白蛇抄第6話

    「只事では無いでないか。これはいかん。黒龍が所に言ってこねば、小言どころですまぬ」歩み寄ってくる八代神に聞き及びたい事が有るという顔で黒龍は待っていた。「なんぞききたいようじゃな」八代神も目敏い者である。「あ、いや。白峰がの」「気になるか?」白峰が降り下ったのに気がついていた黒龍も流石に、白峰の行く宛てを探るのは差し控えていたがやはり・・・気になるようであった。「ひのえが所じゃ」「な、何?」瞬時に黒龍の顔色が変わったので八代神も白峰を庇う。「案ずるな。もう馬鹿な気はおこさぬわ。それよりも、かのとと政勝の方にも」半分も告げぬ内に黒龍が「な、なんぞ?」不安気な声で尋ね返してきた。「どうやら双神に目をつけられておるようじゃ」「双神?双神というは、あの?」「森羅山に社があっての。そこに政勝が入りこんだらしい。それ...邪宗の双神・14白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・13 白蛇抄第6話

    「やれぬわ」悲しき涙を拭いながら白峰は天空界に昇って行く。と、「なかなかの役者じゃのう」雲つく中に顔を出した白峰を引き上げるために八代神が手を差し延べて来た。白峰を引き上げる八代神の手に体を預け、白峰は天空界にたつと八代神に縋りついていた。「な・・・なんじゃ?」「何もかも、何もかも、白銅に盗り上げらるるわ」とうとう男が泣くを見せられる事になった八代神は肩に落ちる白峰の涙にこの場を立ち去るわけにも行かず白峰の背を柔らかく撫で擦っていた。「良いではないか。お前もそうに望んだ事じゃろうが・・・」「本意ではないわ」駄々を捏ねる子どもの様な所作が白峰を存外に可愛らしく、八代神を苦笑させていた。白峰は八代神に縋っていた体を離すと己が手で顔を覆って涙を脱ぐうていたが、その手がふと止まると口元に指先を押し当てた。どうやら...邪宗の双神・13白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・12 白蛇抄第6話

    「呼びよるぞ」白峰の社の中から齢をおうた巫女が奇声を発して白峰が降り下る事を必死に祷っているのである。その姿の横には、慎ましく正座して白峰を今か今かと待ち受けている不知火がいる。何かあったらしいのを気にも留めずに、凡そ知らぬ気でいる白峰に八代神の方がじれて声をかけてきたのだが「聞こえておるわ」白峰も素っ気無い返事なのである。「行ってやらぬのか?あれはひのえの仲間であろう?」「ひのえではないわ」「あ、当り前じゃ。気にならぬのか?」「別に・・」白峰が動きたくなる言い方を八代神も考えた。「ひのえに何かあったのかもしれんぞ?」「ならば、ひのえがこよう?」そうきたかと思いながら、八代神は更に「ひのえがこれぬのかもしれぬぞ?」すると、八代神の言葉に白峰も言いたくもない事を言わせると、口惜し気な顔で「ならば不知火でなく...邪宗の双神・12白蛇抄第6話

  • 邪宗の双神・11 白蛇抄第6話

    「伽羅。我は、邪鬼丸が死んだ事なぞとうに知っておる」「そうか。邪鬼丸は阿呆じゃったからとうとう、あのような・・・」何おか話そうとしている伽羅の言葉を波陀羅は遮った。「どう死んだかも、いつ死んだかも、我は知っている」「え?そう・・・」「そうじゃ。何故なら、我が邪鬼丸を殺した本人じゃ」波陀羅が告げた事実に、伽羅が猛り狂うて挑みかかって来るかと思っていた波陀羅は伽羅の撃を払おうと身構えていた。一度は新羅の手に掛って仇を果たされてしまおうとまで覚悟していた波陀羅も今は二人を救えないとしてもせめても一樹の子を身篭った比佐乃を案じ、子のてて親である一樹の心にてて親らしい思い一つでも沸かさせてやらねば邪淫の果てに生を得た子が憐れであり、なによりも当の一樹と比佐乃が人として生き得る幸せを、親の思いになる幸を味あわせてやら...邪宗の双神・11白蛇抄第6話

  • 2本立て~~~~!!

    浮浪雲の二次創作?は、なんとか、なりそうに思える。が、これにかかりきりになると次の物語の掲載が遅れる。と、いうことで、二本立て???しかし、懐の銭の二次創作?(元ネタは落語)の時もそうだったけど人物を登場させるエピソードを作る接点を結ぶ(いわゆるお膳立て)と、いうことをやるだけで結構、書くことが増える。カテゴリーになんといれるかと考えたときに昔馴染みとタイトルが浮かんだ。ー本番強し?ーま、それであってるか判らないがそのまま書くとして昔馴染み・・3も構想が出来ている。乗って書いていた時はいくらでも先の設定・話(文章)がわいてきて随分先の話(挿入)なのでわすれてしまいそうになる。しかたないと、スペースをうってたっぷり空白をつくっておいて書き留めた。それが、例えば1万文字辺りを書いてる時に5万文字めくらいの話が...2本立て~~~~!!

  • 二次創作というより、書き起こし?

    ちょっと前にジョージ秋山の漫画浮浪雲の中の1話を文字にしてみようと思うと書いた。元ネタもストーリーも人物もあるわけだから楽といえば、楽なはず・・・・が、この浮浪のだんな飄々としていてあれやこれやと、「ぶつぶつ」言うタイプじゃない。そういうキャラクターに「つぶやかせる」以前にどういう「まなざし」なのか、掴めない。弱った。どう書いていこう・・・出だしなど考えてみるがしっくりこない。浮浪のだんなという軸が決まらないからあとが続かない。で、後回しにして、笑う女を揚げたわけだwww書こうと思った時が一番良いタイミング。それを逸すると、付けたし三昧のごてごてになる。あ、別の言い方をすると「鉄は熱いうちに打て」だな。ままよ。破綻したら、破綻した時。ひょうたんから駒棚からぼたもちだって、あるかもしれない。書いてみなきゃ駒...二次創作というより、書き起こし?

  • 笑う女・・・1

    恵美子。年齢は19になろうか。うすらわらいをうかべるような、口元と焦点のあわない瞳は精神障害者特有のものだろう。俺達はなにもできない何の意志表示もしない恵美子の笑いをうかべたような口元から、恵美子を笑子と呼んでいた。笑子がこの施設に預けられる事に成ったのは笑子が13になる秋の頃だった。その春に施設に勤務しだした俺達が笑子の専属になったのは、笑子の抱える環境と症状によった。もちろん、所長は新規従業員の経験をつませるためでもあったろう。笑子は此処にきた当初、女性介護者の手に委託された。だが、笑子は女性介護員に対して異常な程の恐怖しか見せなかった。直ちに笑子を此処に連れてきた父親に笑子の今までの環境を聴くことになった。父親は笑子の反応を伝え聞くと「やはり・・・」と、この事態を推測していたことをにおわせた。思い当...笑う女・・・1

  • 笑う女・・・2

    「つかぬ事をたずねますが、そちらでお雇いになった介護員は男性・・」園長はそこで、いったん言葉をきって、とまどいながら、続けた。「男性?だった・・・の、ですか?」父親は恵美子になにかあるのかと、いぶかったようだが、深くは追求せずに「そうです」と、答えたあとに、小さな言い訳をつけたした。「彼女に妙な心配をかけたくなかったのです」恵美子を介護してもらうためとはいえ、一つ屋根の下にしょっちゅう、他の女性の存在がある。女にとって、好ましからぬ状況に「彼女」が、なんらかの釘をさしたのだろう。父親であることよりも、男である事を選んだ男は彼女の条件をのんだということだろう。「じつはですね。こちらで、女性職員を担当にしようとしたところ、恵美子さんが、ひどく、おびえたのですよ」園長は介護員が男であった事に納得していた。「です...笑う女・・・2

  • 笑う女・・・3

    此処に来たときに所長は俺達に介護精神の基本をひとつ、訓示してくれていた。それは、米国に渡ったある女子介護員の話からだった。恵美子の父親のように専属で介護員をやとうということは、よくあることで、ベビーシッターなども、その顕著な例である。仕事をこなしてゆく人間の家庭内事情を労働により、補佐、援助し、賃金を得る。こういう仕組みがうまく出来上がっているから、渡米した女子介護員もまもなく、仕事にありつくことができた。ところが、前任の介護員は、非介護者に対し、とおりいっぺんの介護しかしていなかった。食事をたべさせ、排泄物を世話し、ただ、傍にいるだけの存在でしかなかったといっていい。女子職員は、非介護者にたいし、わずかでもの自立を促しもせず、ただ、身体の介護だけをしてきた現状に憤怒を覚えた。女子職員が行ったことは自分で...笑う女・・・3

  • 笑う女・・・4

    女性への恐怖心を取り払わなければ、笑子はおかしな状況であるといえる。なぜなら、女性を恐れる笑子も女性でしかないのだ。笑子の中で自分を女性であると、認識し始めることがあったとしたら、笑子の精神は自己崩壊をおこさないとも限らない。とは、いうものの、笑子が精神的に成長するということはまず、ありえることではないが・・。が、逆に女性を恐れるあまり笑子が女性であるという自覚を排除しようとすることはありえる。狂った精神で性別のない自我は無色透明な世界を構築してゆくのだが、はたして、それで、笑子はしあわせだといえるであろうか?肉体があるばかりに人間はその性に自分を左右される。肉体の性別によって、精神や感情や感性、その他もろもろのことが形をつくってゆく。男も女も後天的に性に見合った人間になってゆくとするなら、性別の自覚をな...笑う女・・・4

  • 笑う女・・・5

    笑子は16になっていた。俺たちはこの3年間、笑子の介護をしつづけてきていた。介護というものは単に人間の生命維持のための補助でない。肢体を自分の意思でうごかすことができない、笑子の筋肉を萎縮させないためにマッサージを行う。もう一度、繰り返すが、これは、筋肉を萎縮させないためだけのもので、笑子の肢体の自由が回復するものではない。結局、笑子の症状は平行線を描き続け13歳でここに来たときと何も変わってないといってよかった。変わった事といえば、笑子の外見が非常に女性らしくなってきたことと、3年の常駐介護で、江崎への信頼が厚いものになっていることぐらいで、3年の月日が流れたのは俺たちの方だけだった。その年の5月の連休も、あいかわらず、笑子は家族の迎えを得られないまま施設のベッドの上にいた。俺たちは二日ずつの交代を組み...笑う女・・・5

  • 笑う女・・・6

    江崎と交代して、俺は自分のアパートに帰るために車を走らせていた。途中、コンビニによると、出来合いの弁当を物色し1冊、週刊誌をかいこんだ。車に乗ってエンジンをかけたとき俺は自分の中にある疑問に新たな疑問を感じている自分をはっきりと自覚した。簡単にエンジンキーを差込み、ぐっとひねる。こんな簡単な動作でも笑子には、むつかしいことだ。と、なると、笑子のあの行動が欲求行動であるとするなら・・・。笑子が俺の手に性器を押し付けてくる前に・・・。笑子がその部分の快感を学習した。と、考えられる。俺は男だから女の欲求はよくわからないが、女の欲求というものは、接触なしに身のうちからわいてくるものだろうか?おうおうにして、性器への何らかの形での外部からの接触がきっかけで、性器に快感を感じるポイントがあることにきがつかされるのでは...笑う女・・・6

  • 笑う女・・・7

    ドアの前に立ったとき、俺の耳にいつもとは違う笑子の異様な声がきこえてきていた。獣の咆哮にもにているが、ひどく、鼻にかかった声。まるで、春の猫のさかり声だ。この時点で俺は江崎が笑子に何をしているか、見当がついていた。ただ、それがどこまでのものか・・・。江崎の行為はセックスボランテイァの域をだっしいているものか。逆を言えば、笑子の肉体がどこまで、性を希求しているものなのか。野卑な俗語で言えばABC。単なる、性器への接触というBクラス。自らの肉体でお互いの性器を結合させるCクラス。俺はドアの外で笑子の声を聞きながら江崎が笑子に与えているだろう、接触の深度を考えた。既にこの考えが俺の心の色を露呈させていたといっていいだろう。江崎が笑子にあたえているだろう、接触の深度。こんなことが、なんの問題になるという?問題にす...笑う女・・・7

  • 笑う女・・・8

    笑子の腕がにゅっと天井に向けて突き出されると筋肉は一瞬の躍動をささえることを放棄する。ひらひらと笑子の腕がベッドにまいおちると、先の獣の呻き声とともに、笑子の両腕は天井を目指す。繰り返される空中への浮遊は水のないプールでの平泳ぎのイメージトレーニングにも似ている。だが、それは江崎に与えられる鋭い刺激にあえぐ笑子の抑揚のデモンストレーションでしかない。江崎は笑子の鋭い場所をなでさすり続けている。そう考えて間違いがないだろう。俺はもう一歩、部屋の中に入り込んで江崎の行為がどこまでのものか、はっきりと見てみたかった。笑子の身体はベッドの後方にずらされている。笑子の舞い上がる腕の位置でこれは、もう、判っていたことだ。既に笑子の身体がベッドの足元にまでずりさげられているということが、江崎の行為の種類を物語っていた。...笑う女・・・8

  • 笑う女・・・9

    江崎のその言葉は、もう、何度かこういう行為を笑子に与えているということを物語っていた。そして、なによりも、笑子の反応。男の物を飲み込んだ笑子の局所は「女」として、充分に開花している。1度や2度の交接で笑子がここまであえぐだろうか?「笑ちゃん・・いいね?・・いいね・・いいね・・」江崎の声がうわずりだし、笑子へ与える振幅が早くなってくる。「笑ちゃん・・いっちゃえ・・ほら・・」江崎の声と与えられる動きに答えるかのように笑子は異様な声で笑子の絶頂を訴える。「笑ちゃん・・いいね?気持ちいいね?・・いい・・ね・・いい・・いい」笑子の内部がのぼり詰めだしている。快感を与えている江崎の男の部分に笑子の内部の変化がつたわってゆくと、江崎の問いかける言葉が江崎自身の訴えにかわってゆく。女が頂点を極め始めるとその部分は男の動き...笑う女・・・9

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