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1件〜100件

  • 踊り娘・・10

    イワノフと二人きりで真正面きって、会うのは、アフターに入ると宣言して以来だ。イワノフの求婚を断ったせいもある。イワノフももう、ターニャを引きとめようともせず、ターニャの申請通り、次の日からアフターの振り付け師がついた。向かい合わせの席でイワノフが「アフターでのデビューは予想以上に大反響だよ」と、ターニャをたたえた。そうなのだろうか?実際問題、ターニャには、大きな手ごたえを感じない。むしろ、舞台をはねて、街で買い物をしていてさえも、観客のあの特異なまなざしと同質な視線を感じ、あえて、手ごたえがあるというのなら、それは、嫌悪感でしかなかった。「それが証拠に、僕個人としてははなはだ不愉快でしかないが、君と個人契約を交わしたいとの、申し込みがこの2週間で、13件。僕の一存で握りつぶすわけにもいかないし、検討するの...踊り娘・・10

  • 踊り娘・・・9

    引き返す術がなくなったのは、サーシャへの仕送りがからんだせいでもある。キエフで・・・どれだけ、金がいるか・・・。アフターの同僚が子供のために・・裸で踊った。ターニャだって出来ないわけは無い。まがいものの踊りでも、その手で稼いだ金でサーシャはいつかプロになる。踊りたい。その心を底に埋め隠すとサーシャを希望の星にかえ、・・・・。そして、いつか・・・・。私も・・・。誰かの手に落ちる。この先、何百人何千人の好奇の目にさらされるくらいなら、きっと、たったひとりのパトロンのものになったほうが、楽になれる。それは・・・・。サーシャがプロになった時?悲しい自嘲と諦めがターニャを包み真っ白になる頭の中でステップを踏むこと。胸を・・・裸の胸を張る。なにも、胸を張ること一つもてなかった女に、できることは、このくらい・・。真っ直...踊り娘・・・9

  • 踊り娘・・・8

    気が付かないまま、むきになるターニャが妙に純粋にみえて、彼女は口調を和らげた。「あたしは・・はじめから、アフターにはいったの。実入りがいいからね。あたしは、17の時に子供をうんで、どうしようもなくなって、母親に預けたの。子供の父親とは、籍もいれないまま、子供も認知されないまま・・・。母親に子供を預け、養育費を送るためにね。パトロン・・はね・・・。この仕事はいつまでもつづけていけないでしょ?そのための保険。子供もこれから、お金が要るし、女手ひとつの稼ぎで十分な教育をうけさせてやりたいと思ったら・・・あたしには、このアフターの収入とパトロンの存在は必要なのよ」あるいは・・・。目的を持って流されず、しっかりと自分の意志でアフターをはる場合もあるんだよと彼女はいいたかったのかもしれない。「もうしわけないけどね・・...踊り娘・・・8

  • 踊り娘・・・7

    あの日。サーシャのキエフ行きをお願いしにいって、そして、アフターで踊るとイワノフに告げた。「それは、すなわち、僕と結婚しないという意味だろうか?」求婚を断っておいてまだ、イワノフの元で働かせてくれというのは、いかにも、あつかましいと判っていた。判っていたがそれでも、ターニャにも考えがあった。もし、他の劇場に移ったら、収入面も減るが、客もへると思った。ソロマドンナとしてのターニャを知っている客が、アフターのターニャに対しても特殊なまなざしでなく以前からの踊り娘としてのターニャとして、見つめてくれるはず。だから、アフターを踊るにしても、ココが一番好条件だった。ターニャのあつかましい申し出にイワノフはビジネスの顔で応対した。「収入はおそらく、今の2倍以上になると思う。あと、どうしても、アフターに入ると後援者とい...踊り娘・・・7

  • 踊り娘・・・6

    「だから・・・さっきも言ったように・・・イワノフさんは姉さんのことを愛してるんだろうって思った・・から」「ばかね。それは、なぜ、イワノフさんがプロポーズをしたかってことでしょ?あたしが聞いてるのはなぜ、あたしが云というと思ったかって事・・・」「ああ・・・」確かに尋ねられたことへの、返答にはなって無かった。「う~~~ん」ナゼだろう?なぜ、ターニャが云というと思ったんだろう?「だよね。父親かと思うくらい年がはなれていて・・・イワノフさんにとっては、美人でスタイル抜群で若い・・こんな姉さんと一緒になりたいだろうねってのは、判るけど逆を言えば・・・凡庸でもう、50歳ちかい年齢・・わざわざ、こんなじいさんと一緒になりたいと思うほうがわからないよね?」「・・・」だから、尋ねているんじゃないかと、切り返す言葉を飲んだの...踊り娘・・・6

  • 踊り娘・・・5

    「姉さんに踊りしかなかったら、イワノフさんのプロポーズを考える事もなかったと思う。眼中にも無いって、大慌てで断っていたと思う。でも、姉さんの中でこれ以上ソロマドンナを維持できない自分だと分かったとき、結婚を考える姉さんになっていたと思う。そして、相手がイワノフさんだから・・・。姉さんの踊りがソロじゃ通じないと評価した相手だから、姉さんは踊りをとるか、結婚を取るか・・・迷っている。踊りを取りたいのは、やまやまだろうけど、もう、下降線を辿るしかない自分だと、知ったとき、姉さんは、結婚してもいいと思った。でも・・・。それは、ズバリ・・・。結婚を逃げ場所にしてるとも思うし自分で自分への評価を認めることにもなる。だから・・・。姉さん・・には、きつい事をいうけど、姉さん・・・は、自分に才能が無いって認めたくなくて・・...踊り娘・・・5

  • 踊り娘・・・4

    それにしても、「イワノフさんも何を思ってそんな大物のところに・・・」ポジションが正確だからって、そんなことくらいで驚かれてたら、ポリジョイサーカスの綱渡りなんか、正確なポジションが当たり前。命がいくつあってもたりやしないだろう?そんなことを考えたら特に驚くことでもない。「イワノフさんの目は確かよ。コンドラテンコはあなたをキエフのプリンシバル育成所に入所させたいと、もうしこんできたのよ」プリンシバル育成所への招待?飛び出してきた話が大きすぎてサーシャにはこの話が真実であるとは思えない。「まさか?それだったら、なんで、プリンシバル関係の人がじかにあたしに話しにこないわけ?」サーシャの疑念はもっともだと思う。「いくら、イワノフさんが口をきいたからって、あたしに断りもなし、入所を決定する権利はないわ」サーシャは関...踊り娘・・・4

  • 踊り娘・・・3

    舞台をはねて二人のアパートに帰ってくるまで、並んで歩きながらターニャの足取りが重い。「姉さん?どうしたの?」やはり、ソロマドンナ降格が応えているのだろうと、サーシャは言葉を選ぶ。「あたしは・・・アフタータイムの踊り手でも、別にかまわないんじゃないかとおもうんだけどね」悲しそうにうつむいたターニャにかまわずサーシャの言葉が続く。「姉さんはアフタータイムの踊り娘をばかにしてるし、観客を馬鹿にしてるんだ」ターニャの言葉が不思議でサーシャは尋ねかえした。「どういう意味だろう?」「姉さんはアフタータイムの踊りが実力で成り立ってない。踊りを見る目がない観客が女の裸を見に来てる。そこで踊ればさらしものだとおもってるんだ」サーシャに・・・何がわかるというんだろう?ましてや、この子は間違ってもさらし物になることなんかない子...踊り娘・・・3

  • 地名表記はそのままで・・・

    踊り娘を揚げながら・・・・なんと、世の中変わってしまったのかと思う。「サーシャをキエフにいかせる。」今や、キエフはキーウになり戦禍舞踏の聖地で、なくなってしまった。戦後の少年・少女は蛙(3)パンパンとチョコレート(12)柿食え!!馬鹿ね。我鳴る成。放流児(8)書いている。「蛙」・「パンパンとチョコレート」は大江健三郎の芽毟り仔撃に触発された。「柿食え・・・」は、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」を、もじったタイトルだが母からきいた話をモチーフに書き上げた。母の実家の坂を登ると国道がとおっていてーそこを進駐軍がジープで通って行ったーと、いっていた。あと、近未来?を舞台に戦争、前線に派遣された医師と看護師の性と生と死を書いた「空に架かる橋」がある。が、どこかで、昔の話未来の仮想話と、遠いところにいた自分と感じる。...地名表記はそのままで・・・

  • 踊り娘・・・2

    「サーシャが?」ターニャの顔が複雑にゆがんだ。妹の才能が本物であることは姉としてうれしい。だが、同じ踊り娘として、歯牙にもかけられない自分をいっそうにしらされる。「サーシャには、まだ、はなしてないが、君がサーシャの保護者である以上、まず、君の同意が必要だと思う」サーシャをキエフにいかせる。それは、サーシャが一流のプリマドンナになれるチャンス。「サーシャの気持ちしだいです」答えてから、ターニャはどこかで耳にしたせりふだと思った。イワノフだ。「踊りをつづけてゆくか、僕と結婚してくれるか、君の気持ちしだいだ」踊りを続けてゆく。イコール、結婚は断るという意味になるだろう。逆に結婚するといえば、踊りは続けてゆけない。ターニャの迷いはそこにあったかもしれない。踊りは続けたい。だが、自分の踊りはもう、踊りだけでは稼げる...踊り娘・・・2

  • 踊り娘・・・1

    剣の舞を踊るサーシャの足がおちてゆくそのポジションを見つめ続けた男はやがて、イワノフの手をシッカリと、握り締めた。***出番を控えている姉であるターニャの元にサーシャの事実をつたえにいくことは、つらいことでもある。だが、キエフの大物舞踏家が、サーシャを預からせてくれという。姉妹でありながら、ターニャはこんな、地方の劇場まがいの酒場の舞台から、抜け出ることも出来ないにくらべ、妹の舞踏の技術は世界を相手にする国立舞踏団の花形スターの目に十分な可能性を秘めている。イワノフがターニャに妹サーシャのチャンスをつげるのを、渋りたくなるもうひとつの要因がある。ターニャは今、この劇場のソロマドンナである。が、それは、ある一定の境界の中においてである。ある時間までは純粋に舞踏、レビューで、舞台をかざるのであるが、ある時間を...踊り娘・・・1

  • 次は 踊り娘・・かな?

    白砂に落つこの作品を書いたときの記憶があまり残っていない。何故かわからないが、男が刑場で貼り付けられ竹の柵のむこうに人がいっぱいいて・・・と、いうイメージ?画像?が浮かび上がっていた。そのイメージから、そういうことになるシチューエーションを考えてみたところからストーリーが浮かんだのかもしれない。物語を書いている時に断片的、部分的にであるが自分の中に「風景」「イメージ」が浮かび上がる。たとえばブロー・ザ・ウィンドアランが良く冷えた薄い黄金色の液体をグラスに注いだ。細かい泡がたち、それが軽くもりあがり、消えていくと小さな飛沫がグラスの中で弾けてゆく。アランが良く冷えた薄い黄金色の液体をグラスに注いだ。と、なるとそのシャンペンはどんな状態なのだろうと考えるせいかもしれない。頭の中にシャンペングラス(なぜかチュー...次は踊り娘・・かな?

  • 白砂に落つ・・・1

    「とっつあん・・・」張り付け台に掲げられた佐吉の目に竹縄の向こうの義父の定次郎がみえた。女房殺し、が、佐吉なら大事な娘を殺された父親が定次郎だろう。娘が犯した不義をおもわば、佐吉の罪がかなしすぎる。「おまえが、わるいんじゃねえ」定次郎の横で泣き崩れる弥彦にかける声がなんまいだぶと、かわり手があわせられてゆく。佐吉は女房殺しの罪で獄門張り付けになる。お千香が、実の亭主に殺される訳がわからない。その訳を呵責に耐えかねた弥彦にさっききかされるまで、佐吉は、処刑の場所に行く事なぞ、考えもしなかった。八っつの年から定次郎の所に預けられた弥彦の指物師としての、腕はいま、見事に開花している。定次郎の仕事場から、離れ今は一本立ちになった弥彦であるがお千香が佐吉と一緒になるといいださなければ、定次郎の跡目をついでもらいたい...白砂に落つ・・・1

  • 白砂に落つ・・・2

    佐吉の処刑は正午である。お天燈様が真上から見下ろす白日に其の罪を清算しようというのであろう。お千香と佐吉は仲の良い夫婦だった。なぜ、お千香が佐吉に殺されなければ成らなかったのか。佐吉がなぜ、お千香を殺されなければならなっかたのか。佐吉はどんなに仕置きをされようとも、そのわけをかたろうとしなかったという。其の理由がわからないまま、定次郎はお千香の残した二人の子供を引き取った。どんなわけがあるにせよ、二人の子供にとって、父親が母親を殺してしまった事実は変わらない。定次郎にとってもそれは同じでどんなわけがあったとて、娘を殺された事実は変わらないのである。それでも、なんで好いた亭主にころされねばならない。訳を知りたいという思いがもたげてくるのを、定次郎はかむりをふって、払いのけた。訳を知ったとて、お千香がかえって...白砂に落つ・・・2

  • 白砂に落つ・・・3

    其の日の朝であった。弥彦が定次郎の元にやってきた。弥彦にすれば、複雑な心境であろう。佐吉は弥彦の朋友といってよい。そもそも、お千香が佐吉としりあったのも、弥彦からなのである。兄妹といっても過言で無いほど弥彦とお千香も仲が良かった。朋友である佐吉とお千香が惹かれあい恋に落ちるともしらず、二人を引き合わせることになった、弥彦とて、定次郎の胸のうちでは、お千香の婿にと、夢を描いた男であった。無理じいはできまいが、お千香にだけは、「弥彦に貰ってもらったらどうだ?」と、ひそかにたずねたこともある。定次郎の眼の前にすわった弥彦は相変わらず、自分が佐吉とお千香を引き合わせたことをくやんでいるのであろう。お千香の死をおもえば、佐吉の処刑は当然の報いであるが、いよいよ、佐吉が処刑となると、友の立場で考えることが許されるなら...白砂に落つ・・・3

  • 白砂に落つ・・・4

    弥彦の思いつめた表情に定次郎は膝に抱いた孫を見つめなおした。下の子はともかく、上のおなごの子はわけがわからぬとも、大人の言葉を解し始めている。弥彦の話が佐吉のことであるだろうと思えば、いっそう、幼子の心のひだに何が残るかわからない話が飛び出してきそうである。定次郎は隣の部屋にいる、家内を呼ぶと、二人の孫を散歩にでもつれだしてくれと頼んだ。家内である、お福にも弥彦の話がもれきこえないほうが良いと定次郎は思った。それ程に弥彦の顔つきは尋常なものでなかった。部屋の中で定次郎と二人きりになると、弥彦はいきなり定次郎に手をつき、畳に頭をこすり付けた。「弥彦」それでは、なにがなんだかわからない。はなしてくれねば、わからぬ。わしに遠慮せず話せばよい。佐吉のことを聞きたがらない定次郎に佐吉のことを聞かせるをわびる弥彦だと...白砂に落つ・・・4

  • 白砂に落つ・・・5

    うなだれた弥彦のまま、その言葉ははきだすかのように、もれるかのように、弥彦の口からおちていった。「佐吉には・・・子胤がなかったんですよ・・・」弥彦がもらした言葉の意味はつまり、どういうことになるのだ。だが、実際には、お千香は二人の子供を生んでいる。それは、佐吉の子ではないということなのか?半信半疑のまま、定次郎は弥彦の次の言葉をまった。「親方は俺がお千香ちゃんを好いていたことをしってなさったろうか?」それが佐吉に子胤がなかったことと、何の因果があるのだろう?二人の孫が佐吉の子でないと言い切る弥彦がまさか?まさか?弥彦が孫のてて親だとでもいうのか?それは、つまり、お千香の佐吉への裏切りということになるのではないか?「ま・・・待て。弥彦、ちょっと、待ってくれ」定次郎が弥彦に告げられたふたつの事柄をつなげあわせ...白砂に落つ・・・5

  • 白砂に落つ・・・6

    佐吉は大工職人だった。指物師の弥彦とは、段々畑で顔をあわせるような知合いでしかなかったが、ひょんなことから、同郷であると知った。同じ年頃、似た境遇の同郷の知人というものが、いかに、ひとり、他国の空に暮らしているもの同士の心を暖めるか。弥彦も佐吉も、兄弟に会ったかのごとく親しみを覚えた。土地柄の持つ、古くからの因習がものの考え方、感じ方を差配する。同郷人というものは、其の部分で語らずともお互いを知るものがある。この点でも、弥彦も、佐吉もお互いの存在が気安い物になっていった。そして、弥彦は、早くも、二十四の年に一本立ちになり、せまいながらもの、長屋の一軒をかり、独り暮らしを始める事に成った。もちろん、その裏側には定次郎の願いがあったのは言うまでも無い。一本立ちになった職人であらば、弥彦もお千香を嫁にもらいやす...白砂に落つ・・・6

  • 白砂に落つ・・・7

    定次郎の願いをしりながら、お千香は佐吉と一緒になると決めた。定次郎も一人娘のお千香の言い分を聞かぬわけにも行かず、弥彦の気持を確かめる事も、もはやおそいと、判るとお千香がそれで幸せになるならと、頭を下げる佐吉を許すしかなかった。ところが、この佐吉とお千香には、中々、子供が出来なかった。「え?まだかい?なあ、男の子なら俺のところにつれてこいよ。しこんでやるよ」定次郎の指物の腕は一級品である。其の血を継いだ男の子を自ら、仕込んでみたい。その気持は良く判る。が、「おとっつあん。まだ、できてもない子供が男の子かどうだか、わかるもんかね」「うむ」女子しか授からなかった定次郎である。ましてや、ようやっとひとり。子が出来にくい血筋なのかもしれない。だとすれば、お千香に孫をせくのも、勝手すぎるというものであろうが、跡をつ...白砂に落つ・・・7

  • 白砂に落つ・・・8

    お千香が弥彦のところにやってきた其の日のことを弥彦は今でもはっきりと覚えている。玄関の戸口をあければ、そこに思いつめた表情のお千香が居た。弥彦はすぐには、なにかあったな。と、思い、お千香の胸のうちを聞いてみようと思ったし、お千香も弥彦に話す気で居るのだとも思った。「まあ、茶でもいれるから、あがってくんな」三畳の小さな部屋は居間であり、寝間でもある。奥の四畳半が弥彦の仕事場にもなっていて、仕事の道具も置いてあるし、人を通せる場所ではない。「ごめんよ。急に・・・」ぼんやりとしたまなざしで弥彦に急な来訪をわびるとお千香は座り込んだまま、何も言おうとしなかった。其の姿にけおされたまま、弥彦もお千香の前に茶をおいたきり、しばらくの沈黙が続いていた。「お千香ちゃん?なんかあったんか?」弥彦が切り出さないとお千香は喋り...白砂に落つ・・・8

  • 白砂に落つ・・・9

    弥彦が言い出した事が事実であるなら、「ちょっと、待て・・・。するってえと・・」定次郎の理解は事実だけにまず、むけられる。「あの子らは、佐吉の子じやなくて・・・お前の子だということなのか?」弥彦はそれをわざわざ、定次郎に告げている。いったん、口に出したことをもう、否定する気も無い。「そういうことです」弥彦は静かに、出来るだけ静かに事実を認めた。「ま・・まて?な・・・なんで、そんなことになっちまったんだ?いや、それより、お千香が佐吉をうらぎっちまうなんて、そんな馬鹿なことをいいだすなんて・・・」「親方。お千香ちゃんが悪いんじゃねえ。俺が、もっと、しっかりしてりゃ・・・」弥彦さえお千香を好いてなけりゃ、お千香の頼みに負けることは無かった。「俺が・・・あの日・・・」黙った弥彦に定次郎は先を促すしかなかった。「弥彦...白砂に落つ・・・9

  • 白砂に落つ・・12

    「俺は卑怯だとおもった。だけど、一度、そういうつながりをもっちまったら、自分の気持ちにうそがつけなくなっちまった」子胤を与えたら、それで、自分は用なし。弥彦の気持ちひとつ、考えてもくれないお千香であればあるほど、いっそう、好いた気持ちがどこにも、抜け出ず、はらまなかったと再び訪れたお千香をかきくどくことになる。「なあ、俺はいったい、なんなんだ?お咲の父親だということも出来ず、佐吉をうらぎって、あげく、お千香ちゃんには、種馬でしかねえ。なにひとつ、俺はむくわれねえのかい?」この惨めさにおとしこむものは弥彦の、お千香への恋情のせいでしかない。弥彦に欲だけしかなかったら、転がり込んできた熟れた女の体を棚ぼたであると、喜んでいられただろう。だが、弥彦は苦しい。苦しいのはお千香に思いをかけてもらえないことだけではな...白砂に落つ・・12

  • 白砂に落つ・・13

    お千香が身ごもった後になんどか、弥彦は無茶をいった。だが、お千香は「子供に障るから・・」と、弥彦の手をふりはらった。確かにお千香に触れたいがお千香の腹の子は弥彦の子でもある。「そうだな。俺の子だ・・・」誰にも言うことが出来ない。誰にも知られてはいけない事実をいえる相手はお千香しかいない。いくら暗黙の中に隠してもお千香と弥彦をつないでいるものがある事を念押しするためにも弥彦はくりかえした。「俺の子だ・・・」形は佐吉の女房であっても、本当の夫婦は俺たちなのだと弥彦は胸をなでる。そして、お千香が男の子を産み、産褥がおさまるころに、弥彦は約束の逢瀬をねだった。「親方・・・。お千香ちゃんは、いやだっていったんだよ。だのに、俺は・・・。佐吉にすべてを話すって、おどかしたんだ・・・」弥彦の手が再び、顔を覆った。「弥彦。...白砂に落つ・・13

  • 白砂に落つ・・14

    佐吉を囲む人の群れが定次郎をみつけると、佐吉の前までの通り道をあけてゆく。『佐吉の親父だ』『お千香さんの親父だ』通してやれ、場所をあけてやれと、言葉が飛び交い定次郎の目の前に憐れな佐吉がうかびあがってきた。娘を殺された男と女房を殺した男が向かい合う。しんと静まり返ったその場所は定次郎の舞台を演じるのを待つかのように人の群れが2歩3歩と定次郎から退き丸く定次郎と弥彦を囲んでいた。目を瞑ったまま、張付けられている佐吉ににじりよるにも、竹縄が邪魔をしている。佐吉は最後の時をまつのか、苦しみもないのか?身じろぎ一つみせずにいる。竹縄に手をかけ佐吉を呼ぼうとした定次郎の声がかすれた。そのときだった。「とっつあん。よく、きてくれなすった」ひときわ、大きな声が群れの中からひびいた。定次郎がきたくもないのは、誰だってわか...白砂に落つ・・14

  • 白砂に落つ・・15

    男の声に佐吉がうっすらと目をあけ定次郎を目に留めた。まさに目に留めたというしかない。佐吉の瞳は定次郎を映してはいたが定次郎への何の感情もよこしてこなかった。「佐吉・・・す・・すま・・」すまねえ。云おうとした言葉に定次郎はよどんだ。俺があやまったら、もしかして、佐吉はお千香の不貞のわけをしらずにいたなら、子供が佐吉の子じゃないことを云うに等しいのじゃないかと。ぼんやりと定次郎を見つめていた佐吉だったが、いよいよ、処刑役人が長槍をかまえ佐吉の横にたちならび槍を構えると佐吉は今度はしっかりと瞳を閉じた。「構え」執行奉行の重い声が響き渡るほどに静かに佐吉を見つめる人の群れの中でたけなわにしがみついた定次郎は見届けてやるしかないと思った。俺に出来ることはみとどけてやることしかないと思った。構えた槍が佐吉の身体を貫き...白砂に落つ・・15

  • 白砂に落つ・・16

    佐吉の最後を見届けた人の群れが波を退くように消え去ってゆくと、定次郎と弥彦は役人詰め所に向かい歩きだした。がくりと肩を落とした弥彦は佐吉の死の前と後でいくつも老け込んだかのようにみえた。憔悴とせめぎが、弥彦をとらえている。「弥彦。佐吉の亡骸をお千香の横にうめてやれねえかなあ」佐吉は身寄りも無い。このままでは、野ざらし同様に阿弥陀淵の投げ込みにすてられ、無縁仏になるしかない。佐吉の亡骸をゆずりうけることができるか、どうか。それも判らないが、お千香を呼んで死んだ佐吉があわれすぎる。そして、もっと、憐れな男がいる。「お願いしてきてみます」と、役人詰め所に足を運びかけた弥彦のことである。「うん。そうして、佐吉を一緒につれかえってやろう。そしてな・・・」定次郎はどうつたえようか、迷った。「なんでしょう?あっしに出来...白砂に落つ・・16

  • 白砂に落つ・・17

    定次郎の菩提寺である寒山寺のお千香が眠るに傍らに葬られた。本来ならば、とが人を墓所にほうむってやることなど、断りをいれるはずの住職であったが、人づてにきいた佐吉の最後の絶叫があまりにあわれでもあった。お千香さんの横でねむらせてやれれば、佐吉の魂も、やすらぐであろう。お千香さんもそうのぞんでいるだろう。住職はそうもかんがえた。だが、残された家族。定次郎や定次郎の妻。つまりお千香さんの両親には、許せないことであろう。ところが、案に相違して定次郎が処刑場から佐吉をひきわたされると住職に頭をさげてきたのである。とが人を墓所にいれてやってくれというのも、無理難題であろうが佐吉の亡骸をお千香のそばにほうむらせてくれないか。と。住職が定次郎の温情に手を合わせたことはいうまでもない。実際、お千香が自分を殺した佐吉を傍らに...白砂に落つ・・17

  • 白砂に落つ・・18

    お千香の墓に線香を手向けると続けて佐吉の墓に手を合わせる男を見つけた弥彦が子供を抱いたままちかよって深々と頭を下げるのを見ていた定次郎である。「弥彦。どなたさまだろう?」定次郎が川端を知らないのは無理もない。佐吉が入牢してからも、一切佐吉の下に出むくこともなかったし、川端も佐吉の黙秘のわけを思うと定次郎に事情をきくこともやめていた。定次郎は今日、初めて佐吉を取り調べた川端と顔をあわせたのである。「定次郎さんといいなすったかねえ。よくぞ、赦してやんなすったね」佐吉の亡骸をお千香の傍らに埋めてやったことを云う川端の言葉に弥彦の胸がつぶれそうになる。その弥彦に振り返り「弥彦さんもずいぶんおもやつれしなすった」無理もないと思う。朋友である佐吉が死んだ。指物の師であり、弥彦にとって父とも仰ぐ定次郎の娘は弥彦の妹のよ...白砂に落つ・・18

  • 白砂に落つ・・19

    定次郎が弥彦と二人で佐吉の亡骸を下げ渡してくれと願い出てきたときから川端の胸の中に妙なしこりを感じていた。それがなにであるか、わからないまま家に帰ってぼんやりと庭を見ていた。家内のお春が「おまえさん。また、なにか、かんがえてなさるね」と、茶を入れてくれたものをずずっとすすると、ふと、お春に佐吉のことを漏らした。佐吉がお千香さんの不貞を隠し通したことには、触れずに、「佐吉って男はよほど、女房にほれてたんだなあ」と、つぶやくようにいうと、お春は即座に言い返したのである。「やだよ。本当にほれてたら恋女房をころしたりするもんかね。自分だけがおっちんじまうよお」お春のいいようが妙に明るくて川端はそのときは「そうかもしれねえな」と、お千香を殺すほどに思いつめた佐吉が馬鹿だと思った。なにも、そこまで思いつめなくても自分...白砂に落つ・・19

  • 白砂に落つ・・20

    川端は自分の中に突然沸きあがってきた推量をもう一度、さらえ直してみた。佐吉のもともとの性分をいうなら、お春の云うとおりにほれた女房を殺すだいそれた男ではないと思った。なぜなら、そんな性分の男だったら、定次郎がお千香の傍らに埋めてやるわけがない。また、、傍らにうめてやらずにおれなかったのは、お千香の不貞の挙句の佐吉の狂乱だったと定次郎が知ったからだろう。だが、弥彦に子供を頼むといったのが、既にお千香と弥彦の仲を知ってのことであれば、ここが、おかしい。どのみち、あからさまにしなければならなくなるだろう、弥彦が父親であるということを隠す必要も、かばう必要もない。あっさりと、弥彦にくれてやりたくなかったからだ。と、云って見せてもかまわない気もする。そうなると・・・・。世間の人間はどうだろう?弥彦を非難する・・・か...白砂に落つ・・20

  • 白砂に落つ・・21

    川端が門前で涙をぬぐっている。その後ろから住職が声をかけた。「川端さん・・・」牢役人である、川端は近在では、良く知られている人間である。川端がとが人を調べるときにまず、自分の名前を名乗る。「俺は川端という。山端にすんでいるが、川端という」この名乗りは世間の人の耳に有名らしく、時折、「山端の川端さんですね」と、問われる。だが、住職はそんなたしかめをしなくても、川端が川端であることをしっていたし、佐吉の吟味役にあたったのが、川端であることも知っていた。その川端がお千香の墓所に現れ、定次郎たちといや、厳密には弥彦とお千香の子供たちと顔をあわせた。そして、門前に立ち尽くした、川端がじっと、考え込んでいるのを見つめ続けた、住職は川端のそばに歩んでいったのである。あわてて、男泣きを拭い去ると川端はふいに現れた住職に照...白砂に落つ・・21

  • 白砂に落つ・・終

    「どういうことでしょう?」川端の目の中に小さな憤りが見える。しらせてくれれば、佐吉を処刑に追い込むことは回避できたかもしれないというのに・・・。「お千香さんがしんだあとに、佐吉には生きていく理由が無かったでしょう・・・子供は弥彦の子・・・。お千香さんはいない・・・。ほうっておいても、佐吉はお千香さんの後をおったとおもいます」それが、捕縛された・・・。「佐吉は自分が殺したといったんですよね?私はそれだとおもうんですよ・・・・」住職の言うことがわからない。川端はもう一度、たずねなおした。「どういうことでしょうか?私にわかるようにおしえてくれませんか?」戸惑った顔の川端を見ながら住職は小さく、ため息をついた。「佐吉は自分が殺したことにしたかったのですよ。わかりますか?自分の女房を死なせたのは誰でもない「佐吉」で...白砂に落つ・・終

  • 白砂に落つ・・23

    「お千香さんと佐吉は本当に仲のよい夫婦だったのですよ」先祖の墓に参る佐吉夫婦を見るたびに住職はそう思った。仲のよい夫婦というのはともに並んで歩いているだけで華が咲いたように明るい風をそよがせる。「佐吉がお咲ちゃんを授かったときにも佐吉はずいぶんよろこんでいたものですよ」柔らかな頬に佐吉の頬をすりつけ、もみじの手を佐吉の手でくるんで、墓参りに来たときも佐吉がお咲をだいていた。だが、お咲が成長してくるにつけ佐吉の疑念が大きくなってきたのだろう。目をつぶっても、朋友の弥彦の面立ちを思い浮かべることの出来る佐吉なら川端がきがついたより、はっきりと、確信をもったのではないだろうか?「私はお千香さんが弥彦に気をうつしたとは、どうしてもかんがえられないのですよ」お咲をあやす佐吉を見つめたお千香の瞳は幸せ色そのものだった...白砂に落つ・・23

  • 白砂に落つ・・22

    川端がどこまで、はなしてよいものか。どこから、はなしてゆけばよいもか。迷っていると、住職のほうから、さきに口をひらいた。「実は・・・私はお千香さんの死は自害だったのではないかとも、考えられるのではないかと、おもっているのです」その根拠というのが・・・。「ご存知のように寺のまかないは檀家衆の寄進でなりたっているのでございますが、私の口を潤わすことばかりが寄進ではなく・・・」蝋燭や線香という寺で使われるものであがなわれることもある。そして、こういう使えば、無くなるものを特に、住職のほうからも寄進の項目の中に足しこんで伝えているのであるが、「その中に帷子の寄進を特におねがいしているのです」死人の装束である帷子は枕経を上げに来てくれと伝えにきたものに、最初に手渡すものである。死装束は死人がそのまま、墓にみにつけて...白砂に落つ・・22

  • 白砂に落つ・・11

    「つ・・・まり、それで、お咲が、できたってわけかい」孫娘の名前は佐吉の「さき」をもらって、咲と、なづけられている。定次郎はどうしても信じられない。お千香が口をぬぐい、あげく、「咲」と、なづける事を承諾する?承諾するしかなかったか、いかにも、佐吉の子とおもわせたかったか。「親方。勘弁してくだせえ。お咲にやあ、何の罪もねえこった。お咲は佐吉を父親だと思ってるんです。俺もそれは、充分に承知しているつもり・・・」弥彦の言葉が、又も途切れた。お千香が咲を産んだ。その事が弥彦の鬱屈をいっそう、大きくした。親方が男の子を欲しがっているのをよく、知っていた弥彦である。「俺はお咲の出生の秘密を種にお千香ちゃんをなんど、おどかそうとしたか、わかりゃしない。だけど、それだけはしちゃいけない。あのことはそれ一度限りのこと、そうか...白砂に落つ・・11

  • 白砂に落つ・・10

    「佐吉には、子胤がないんだよ」お千香が口を開いた言葉がそれだった。弥彦は其の言葉でお千香の望を理解した。弥彦に子胤を落としてくれといってるに違いなかった。が、「だから・・。と、いって、そんなことができるわけはないじゃないか。え?子供ができねえからって、なんだよ。貰い子でも、なんでも・・・」弥彦はお千香を真正面から見据え、もっともな、意見をしたつもりだった。だが、お千香は悲しい目で弥彦をみつめかえした。「佐吉はそんなことに、きがついてないんだ。そんなこと、いえやしない」じゃあ、子供が出来ないならできないでいいじゃないか。できなけりゃ、佐吉もきがつこう。きがつかなくとも、子供のことについては、あきらめがつこうというものだろう。「そして、子供ができないまま・・?あたしも佐吉もそりゃあ、そんなこと、かまいやしない...白砂に落つ・・10

  • 葵のタイトルって・・・

    ひさしぶりに、小説もどきを書きたくなって、葵・・をしあげたものの、まあ、つじつまの合わないこと、この上なし。だいたいにして、なんで、タイトルが葵なのか・・・ここが、実は今までのタイトル付けを考えると作品の軸になっている。第一印象というやつだな。その印象を一言でいうと、葵ってことになる。だからあああ、なんで、第一印象が葵なのかってことになる。そこで、逆に考えることになる。葵といえば、一番におもうのが、葵のご紋水戸黄門さまだろう。そして、葵の花。どちらも、存在感、はんぱね~~~~!!君臨しているというイメージなのだけどどちらも、柔らかく、情のある感じだな。相手を思いながら、君臨している、そんな柔らかさがある。ここかな?主人公・・・相手を傀儡のようにあやつってると考えるけど実際は、男性側が崇拝するかのように、主...葵のタイトルって・・・

  • 犬夜叉、蛮蛇小説の裏話

    犬夜叉、蛮蛇小説をあげましたが・・・。憂生は自分の作品を小説といいたがらないのです。小説の域に達していないという謙虚な気持ちではありません。憂生の中で「作品と(あるいは、物語)」と「小説」との区別があるとおもいます。今回の犬夜叉、蛮蛇作品は臆面なく小説といっています。あと、ADARUTO小説や、官能(官能にならないんで、ADARUTOとよびかえていますが)小説ならば、小説というわけです。時代物BL小説(みじかいんで、小説ともいえませんが、お笑い系です)も小説というときがあります。きがつきましたか?娯楽的な読み物として、書いたものや娯楽的作品とうけとめられるだろうものを「小説」と呼ぶ憂生がいるようです。ですので、自分のことも「小説家」とはいいません。もちろん、小説家というには、もっと、資格がいります。まず、...犬夜叉、蛮蛇小説の裏話

  • 悪童丸  から・・

    自分で書いて、自分で感心するのも、妙とも当然ともいえるがwww我ながら、こんなところに、いっぱい「ネタ」を仕込んでいるのだとおもう。その「ネタ」が芽吹いてくるのがこれまた、ずいぶん先の話であったり、同じ・・本編であったりする。「ネタ」をしこむのに、できうるかぎり、さりげなく場合によっては、ぜんぜん気がつかれず・・・ということがおおくある。この「ネタ」もあえて、埋めるものとあとから、ほじくりだして、咲かせるものがある。いわば、古代の蓮の種のようなもので、本人もおぼろげにしか咲く「ネタ」になるとわかっていないことがある。たとえばであるが、まあ、ちょっと、しつこいほど、政勝とかのとの睦言をかいている。この中でしこまれているのが睦言のときには、「政勝さま」(ちがったかな?だんなさま?)と、返す。と、いうさりげない...悪童丸から・・

  • 白峰大神 終えました。

    白峰大神終えました。順番替えは明日にします。文字数多くても1スレッド5000文字までが読みやすいと、思ったりしているのですが切れが悪いといっていいか。つなげてしまう書き方が悪いというか。なかなか、切れ目が見つけられず文字数の多いスレッドが多いです。原稿用紙にしたら6万文字ほどだったと思います。白峰大神より、長いのが白蛇抄では邪宗の双神です。これを掲げるには、まだ、登場人物が出そろってないのでまだ、先になります。7年ほど前の同人誌ペーパーから、およそのあらすじを・・・・只今、16編を完成し、17話ー銀狼ーで停滞しています。続きに文芸社からの審査書評を掲げますが、これにも、書かれているように、「前編では、判然としなかった事が他編で初めて明らかにされる事実によって急に輪郭をもったものとなって眼前に立ち現われる」...白峰大神終えました。

  • ちょっと、一休み・・・

    白峰大神をあげておりますが・・・・過激な表現が多いため・・・冒頭にそれらがでてこないように掲げると1ページ(1スレッド)が3万文字近くなる・・と、いうことが起きていたりしています。(フォント4にしているので、実際はその半分の文字数)この白峰大神も悪童丸と同じようにふたつの「物事」を一挙に解決していく形をとっています。そして、書評の中・・・人と鬼と、そして神。多くの登場人物が絡みあいながら、少しずつ物語の道筋が付けられてゆく。―読み手は何よりもその壮大で深遠な世界観に度肝を抜かれるだろう。エピソードはそれぞれ個々に独立はしているものの、前章が次章に、そして、次章が前章と関連しながら、著者の描く世界の拡がりは留まる事を知らない。番外編4編を含む全十四編の本作品は、複雑な人物相関の中で、人間の業、情愛の深さ、本...ちょっと、一休み・・・

  • 白峰大神・・1   白蛇抄第3話

    白銅が鏑木の部屋にいると、伝えられて澄明は部屋の戸を開いた。そこに白銅が、じっと立っていた。が、その足元に黒い醜い者がいるのが見えた。「白銅!餓鬼ではないか?」思わず澄明は叫んだ。「見えるか・・・・鼎だ」澄明の言葉にふりむいた白銅の袴の裾を掴んでいた餓鬼の姿がふっと消えた。「なんと?我気道に落ちやったか?」「うむ。それよりも、不知火が白峰よりあふりがたったと、言霊を寄せてきよったわ」「そうか・・・」「澄明。直、齢十九の役であろう?」はっとした顔を見せた澄明である。承知の事であろうが十九の役と言えば、当然女子の役である。「知っておったのか?」「随分、前からの。幾ら、男の造りで誤魔化してみても、障りの血の臭いは消せぬ」「麝香も無駄か」白足袋から、髪を括る紙縒り紐まで麝香を焚き染めて居たのも、障りは元より女には...白峰大神・・1白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・2   白蛇抄第3話

    「嫁にくれと?そう申すのか?そちが、か?澄明をか?正気か?知っておろう?」白銅は澄明が女子である事もしっている。が、問題はそれだけではない。正眼の声が震えている。「勿論です。だからこそ・・・白峰なぞに・・・・」白峰の名前が白銅の口からでた。白峰の目論見をしっているということである。「無理じゃ。勝てる相手でない。加護を与えるどころか、むしろ、澄明の足手まといになる。澄明の方が法力は上だ。その力をもってしても、相成らん事だのに・・・」「みすみす・・・」「沙少に触れても、あのざまであったろうに。潤房に及ぶまでに命がはつるわ」先程の白銅の挙動を既に正眼は知っていた。「・・・・」「あれも、好いた男がおったようだが、そう考えたのであろう。両極、想い揃うてなんとか、なろうかもしれぬが、好いた男の命を賭けることなぞ、でき...白峰大神・・2白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・3   白蛇抄第3話

    白銅は項を垂れたまま、正眼の部屋を出るとそのまますぐに不知火の庵に向かった。先ずはこの目で白峰のあふりがどれほどのものか見定めたかった。扉を開けてぬっと入ってきた白銅にさして驚きもしなかった所を見ると、不知火も白銅のくるのを予期していたのであろう。「早くも来たか?」「おお」振り向きもせず不知火は声をかけるとそのまま茶を立てつづけた。風流な男である。床の間に飾られた花もこの男が手ずから活けている。白銅にも花瓶の中で咲きかけている花が桃の花だという事だけは判る。白銅が不知火の側に座りこむと不知火は立て終えた茶の湯を白銅の前に押しやった。それを無造作に掴み上げると白銅はぐびっと飲んだ。作法も何もあったもので無かったが、不知火はこだわりのない男でもある。澄明が白峰のあふりを抑えようと予見したのはこの男である。かの...白峰大神・・3白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・4   白蛇抄第3話

    「白峰の事もか?」「判らぬのう。澄明の事を読むお前の気持ちは気がついたが、何に左程に白峰が気に障る」「澄明を読んではおらぬのか?」「するものか?御主ではないわ」「・・・・・」「いうてみろ」「初めはわしも、判らなんだ。御主の言う通り、澄明の心を透かして見とうてな。都度、都度、読む内に白峰の名前がよう過った。その内、かのとが政勝の嫁に行く頃に、『妻には成れぬ』といいおる。深い悲しみがある中に『この身、白峰のものか。などか、くじられねばならぬ』と、呟くように聞えてきた」「何?」とうとうとしゃべる白銅の言葉の中の一言であった。が、くじられるとは?ただごとではない。「そういうことだ」「ま、待て。では、あの、あふりは?」「そうだというておろう」澄明をよこせという白峰の発動だという。「あのあふりを受ければ周りの者が異変...白峰大神・・4白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・5   白蛇抄第3話

    「巫女様!!」息を切らして半蔵が駆け込んで来た。「どうした?」巫女は半蔵をじっと見た。「それが、嗚呼。白峰様がいかってらしゃるのだ」「訳が判らぬ。きちんと聞かせや」齢を七拾を超え様かという老いさらばえた巫女である。少しの事では、驚きはしないのだが、白峰の怒りという言葉に膝を正し、幾ばくか、背筋を伸ばした。「昨日の雨の後、雨に打たれた者は身体が痺れると言い、草を突付く鳥もしばらくすると地べたにじたじたと這い回り、何よりも白峰様の大きな杉が残らず、枯れ果てたように茶色に」「判った」あふりだということはおぼろげに判るが何故、白峰様があふりをお上げになるのかまで巫女にも判らなかった。「まあ。よい。祈ってみるわ」祈祷の祭壇に額ずくと、しばらくして巫女の長い祈祷の声が流れ出した。「はああああ。はっ。はっ。はああああ」...白峰大神・・5白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・6   白蛇抄第3話

    『雨が降ってしもうた』白銅と同じ思いが今、ひのえの胸に去来する。『この、雨をどんな顔で見ているのやら・・・』白銅はひのえへの溢れる思いをどうする事もできず、只、白峰の物に成るのを指を咥えて見ているしかない。それを、ひのえが望んでいる事なら白銅も諦める事もできる。が、ひのえはもはや諦念している。その諦念を託つものはせめて村人達にこれ以上白峰のあふりを受けさせないですむという事だけであろう。次の日は雨が嘘のように、晴れ上がった空が顔を覗かせた。白峰の麓の村人達が大勢で父の元の詰め寄って来るのは、目に見えている。行かせたくないものを無理やり承諾させられて、ひのえに、どう言えば良いか、苦渋に満ちた顔でひのえの前に座る父を見たくもない。ひのえは墨をすると正眼への置手紙を書き始めた。――村人たちが来る前に、先に行きま...白峰大神・・6白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・7   白蛇抄第3話

    重たい社の扉を開け放つと、予期していたかのように白峰が待っていた。「きやったか」つと、立ち上がると見えたら、もう白峰の姿はひのえの側に寄り添う様に立っていた。「さて・・・ひのえ・・・・いかがなす?」「・・・・・・」「この白峰。ひのえが七の年より十二年、この時の来るのをどんなに待ち受けた事か」「好きになさるが良い」「ひのえ・・・良いのだな?」「ほっ。嫌だと申せば、おやめ下さると?」美しい白峰の顔がひのえを覗き込んだ。「ひのえは、この白峰が欲しくないか?」ぐううと瞳をねめつけられると、ひのえの身体が痺れる様に陶酔してゆく。余りに美しい白峰に口説かれると、さしもの、ひのえとて女である。呆然とした顔の真中。瞳がほだされる様に潤んだ。「よいな」ひのえの顔をよせ来ると、白峰が口を啜った。「よくも、白銅が如きに口吸いを...白峰大神・・7白蛇抄第3話

  • 白峰大神・17   白蛇抄第3話

    「かのと・・・かのと」呼び起こされる声に、かのとは目を覚ました。が、夫てある政勝は今宵のかのとにおおいに満足したのであろう。かのとの中で果つるとそのまま深い眠りの中に落ち込んでいた。「はい?」うろんげに政勝を見やりながら小さく返事を返したがやはり、政勝はぐっすりと眠っている。「かのと・・政勝を起こすでない」潜めた声が響くと、かのとの目の前に男が現れた。ぐっと後退りをしながらかのとは、男を見た。が、こんな夜中に夫婦の部屋に忍び入った男であるのに不思議と恐ろしくない。むしろ、なにか温かく、懐かしい感じさえする。「かのと。覚えておるのだの。わしじゃ。黒龍じゃ」「はい?」懐かしげに語りかける男に面識などない。が、男の口振同様、ひどく懐かしい気がするのはかのとも同じであった。「案ずるな。伝えおきたい事があってな。人...白峰大神・17白蛇抄第3話

  • 白峰大神・18   白蛇抄第3話

    次の日。かのとは白銅の所へ急いだ。「白胴様」息を切らして玄関先にしゃがみ込むかのとを驚いた様に白銅が見た。「なんで、教えてくれませなんだ」「・・・・」やっと、ひのえの事に気がついたのだと判ると、白銅は何も言えなかった。「白峰が荒らぶっておるだけかと、思うておったのに」やはり、そうだと判ると「すまなんだ。がの、ひのえがかのと殿に知らせとうなかった気持ち、わしにはよう判る」「すみませなんだ。恨み言を言いに来たのではありませぬのに、つい」「どうなされた」「実は、私の元に黒龍が現れましてな」「え?」「事の次第は黒龍から、聞かされました。ひのえは、やがて、蛇を産みます」一気に言ってしまってからかのとは、は、と気がついて白銅の顔を見た。恐る恐る「孕んでおる事は・・・知っておいででしたか?」「ああ。知っておる。蛇を産む...白峰大神・18白蛇抄第3話

  • 白峰大神・19   白蛇抄第3話

    かのとが白銅と話しおる同じ頃にひのえは父、正眼と話し合っていた。「父上」何も言わずとも、正眼は察したとみえて「白銅は得心したか?」と、尋ねた。「いえ。断り損ねました。」「そうか」「蛇を産み足れば行くというてしまいました」ひのえは白峰の言葉を疑ってはいない。百夜の満願成就で白峰がひのえを解いて天空界に上がるのだとそう考えている。身体も弱り果てても、子を見たい一心で生き長らえ様としている故にあふりなぞ挙げたくないのだけは判っている。が、白峰が天空界に上がれば、あふりはもう無い。生まれくる子が人の姿でないのならば、白銅が思いを受けても良いのかもしれぬ。そう考えて白峰に告げに言った筈であるのに今度は己から白峰に抱かれて帰って来る事になれば、さすがにひのえも白銅が元へは行かぬと心に決めざるを得なかった。「心は白峰の...白峰大神・19白蛇抄第3話

  • 白峰大神・20   白蛇抄第3話

    かのとが急に高笑いで正眼の言葉を跳ね返した。父は、白峰が寿命を迎えているせいであふりを上げずにいるとは気が着いてない。が、それはどうやら、ひのえがいおうとしていないせいである。「ほほほほほほ。ああ、おかしい。それがどうしました?九十九が見ゆるのは前世でしょう?後世を見ゆるのなら、私も納得いたします。何もかも前世の因に縛られるのなら、こんな、父上の陰陽道も成立ちますまい?」厳しい目付きである。日頃はひのえの翳に隠れて判らないが、かのとのほうが性も根もひのえよりもっと男勝りを凌ぐ。勝気な娘であった。「宜しゅう御座います。こうなれば白銅どのにも直々の談判。いかにひのえを思うておるか、父上自からお聞きあそばれるがよい」言捨てて、つと、立ち上がると怒りが心頭から発するのであろう。凡そ普段のかのととは信じられない勢い...白峰大神・20白蛇抄第3話

  • 白峰大神・21   白蛇抄第3話

    ぷいと立つとかのとは家に急ぎ帰った。家にたどり着くとかのとは慌てて黒龍を呼んだ。ふと、件の男が現れた。「何をあふりを上げおる」「聞いて下され。ひのえの強情にもほとほと手を焼きます」どちらも似たような者なのであるが。「仕方なかろう。きのえがそうだったに。あれは、おまえによう似ておった。普段は大人しいが、ここぞとなったらきつうてな。言出したらきかなんだ」「良い方に言出して聞かぬならよう御座います」始まったなと思いながら黒龍は黙って聞いている。「情にひかかりおってからに。果てには白峰に溺れさせられた事に負けてそれを引け目にして白銅をば断わると言うてききませぬ。白銅はそれでも良いと言うておるのに。何故あのように強情を張らねばならないかが判らない」「良い男がおるというのか?」「あ、はい。ひのえが事なら命を掛けましょ...白峰大神・21白蛇抄第3話

  • 白峰大神・22   白蛇抄第3話

    正眼の仕事が一つ増えた。さそくに、家に帰ってひのえを呼ばわる。「ひのえ」「はい」「わしも断れなんだわ」「やはり・・・」「そう。思うておったか?」「はい」「ならばいうが。おまけにひのえが良いと言うたら婚儀を許すと言うた」「え?」「あれは、どうにもならん。いっそ、共に死んでやれ」「父上?」「と、言いたくなるほど深い思いじゃ。後はお前が断りたければ、断われ」「あ」詰まる所、父は白銅との縁組を望んでいると言う事であった。正眼はちらりとひのえの顔を見た。厭ではないらしいの。そう見える。後は、白銅が胸中で封じている事で、通り越しができる勝算があるのだろう。それに委ねてみよう。と、思うと自室に引篭もった。「あふりが無いか」呟いた正眼は直ぐに白峰が、そんな落ち度をする訳が無いとおもう。齢千年を生き長らえた蛇神がそんな落ち...白峰大神・22白蛇抄第3話

  • 白峰大神・23   白蛇抄第3話

    かのとは生気の戻った正眼の顔を見ながら「が、まだまだすることがあります。先ずは産所を考えてやらねばなりませぬ。私の所では白峰が邪魔だてしてきましょう。龍が子孫には深き因縁が御座います故。八葉が所はどうかと思うております」「ここでは?」「男手で産ますのですか?白峰は杉を切らせております。産所を建てさす算段でございましょう。さすれば、白峰が我が手で取り上ぐると言いましょう」「ふむ」「八葉なら、ひのえには母のようなもの。そう言えば、白峰も厭とは言いますまい。白峰の聖域に入り足れば白銅も行く事も叶いませぬ」「それ・・・では」正眼は、又、白峰の所にその事をひのえをして伝えに行かせねばならない事を考えている。産屋まで立てさす白峰に負けて今度こそ、ひのえが帰って来ぬのではないかと、思う。よしんば、帰って来るとしても、只...白峰大神・23白蛇抄第3話

  • 白峰大神・24   白蛇抄第3話

    冬の朝。八葉のくどには湯を沸かす白い靄が立ち込めている。「やはり、産湯を遣わすのであろうな」独り言を呟いている所に白銅が来た。「ああ、聞いておりますに。先程聞かされて驚きましたが、何、それが一番よう御座います」戸の影に白銅を座らせると「出でくればお声を掛けますに、よろしゅうに・・・」と、言うと、部屋に入って行った。「うむ」子蛇を討つことをかのとはこの朝になって、陣痛が来たのを知らせに来た八葉に告げた。「御前様はてつないに来ないのかや」「はい。行く所が御座います」「気を付けて」引き詰った顔のかのとの様子で何事かを察したのであろう。八葉は、家に戻って行った。かのとはそのまま白峰神社に上がって行った。白峰は冬の寒さで身体が思うように動き難くなっている。死期も近い。思った通り結界ももろかった。ずううと、奥に入ると...白峰大神・24白蛇抄第3話

  • 白峰大神・終   白蛇抄第3話

    一人、己の発した言葉を聞くと、かのとは静かに頭を垂れた。命を断たれた者への鎮魂を呟くとかのとは社を後にした。誰もすむ者のなくなる社殿の新しさがひどく目に痛かった。ひのえの腹より、ま白な小さな蛇の姿が現れると八葉は白銅を呼んだ。産まれたばかりの子蛇は、もう、小さな赤い舌を出して外の空気を嗅ぎ取る様にひららと蠢かした。己の生を確かめる様にずうううとくねるとするりと身体を動かしてみた。そしてじっと、動きを止めた。やがて鎌首を擡げて上を見るとその赤い目が白銅の姿を捉えた。白銅の手に持った草薙の剣で、ひのえは白胴がここに現れた理由を悟ると、「白銅。どうぞ。見逃がしてやって下さりませ」と、大声で叫んだ。その声に子蛇はひのえを振向いた。じいいと、ひのえを見ていた小さな頭がもう、一度白銅の方に向けられると、軽く頭が上に上...白峰大神・終白蛇抄第3話

  • 白峰大神・16   白蛇抄第3話

    ところが、「や?澄明がおらぬ」不知火の声に白銅もはっと振り返った。その場所にひのえの姿は無かった。ひのえは白峰の所に行ったに違いない。「しまった。行かせるでなかったに」「そうじゃの。ひのえを留め置いてほんにあふりがこぬか、確かめれば良かったかの?」確かめるには交情を持とうとすればすぐ判る。ひどく皮肉った言葉を投げ掛ける不知火である。「なにぞ、思いがあるのだろう。ひのえを信じてやれ。戻ったのではないわ。帰ってくる」「そう、思うか」「ああ、白峰の姿であれば来ると言うたのだろう?」「ああ」帰って来るのであろうか?いや、帰ってくる。来ぬものならすでに白峰の元に留まっておろうに。あれも、己の気持ちが見定めきれずにおるに、迷うたまま白峰の元には留まらぬ。そうだと思うと白銅はやっと鼎の事に気がついた。「鼎?」「ああ・・...白峰大神・16白蛇抄第3話

  • 白峰大神・15   白蛇抄第3話

    鼎の眼が虚ろに開いたまま、夕刻迫り探しに来た白銅に見付けられるまで山童の蹂躙が何度も繰返された。「か、な、おのれ!」白銅は鼎の有り様に気が突くとたちどころに法術を唱えた。風が起きると山童の身体が巻き上げられ引き切られぼたぼたと肉片となりて落ちて来た。「鼎」慌てて、鼎の側によると鼎の顔を覗き込んだ。「鼎?」眼が宙をさ迷い白銅と目があわない。ひしと鼎を抱き締めると、「鼎?」もう一度呼ぶと鼎の眼がぼんやり、山童の肉片を見つめた。やがて小さく悲鳴を上げた。「ひっ」「鼎」「あ」やっと白銅に気が付くと「兄上」一言呟く様に言うと「うわああああああああ」声を上げて泣き出した。白銅が鼎の身体の汚れをはたくと、鼎は、「痛い、痛い、痛い」と、うめく様に言う。「鼎。なんでもない。忘れろ。良いな。忘れてしまうのだ」鼎は呆けたような...白峰大神・15白蛇抄第3話

  • 白峰大神・14   白蛇抄第3話

    「白銅もう一つ用事があると言うたであろう」「お、おお。言うておったの?」白銅はやっとひのえを放した「鼎様の事だ」「鼎」「何故、ああなった?」「聞かぬがよい」「あの姿のままで良いと言うのか?もしも、助くらるる法があったらどうする?」「え・・・?」「伊達に、白峰の所におったわけではない」ひのえの嘘である。が、そうでも言わなければ白胴も喋るまい。『白銅から読み透かしはしとうない』色んな思いが渦巻いている。それも拾うてしまう。これ以上その思いを知れば産を成した後の結果によっては尚、苦しむのはひのえの方である。白峰の慟哭も心に応えた。だが、白銅は澄明に請われるまま澄明の迷いさえ思い浮かばぬまま話し始めた。「鼎が数えの十三の年。森羅山に入った。知っての通り霊域だ。が、護守の数珠を持たせている。我らはなんの気にも止めて...白峰大神・14白蛇抄第3話

  • 白峰大神・13   白蛇抄第3話

    白峰の百日があけようとするのに、なんの手立ても得られなかった。手繰る糸は有るのに手繰る術がない。歯噛みしながら日が過ぎて行った。矢も立ても溜まらず白銅はもう一度正眼の元に行った。ひのえの心さえ白峰の物になっていなければそれで良い。が、正眼の応の返事は無かった。意に沿わぬ婚儀でこれ以上ひのえを苦しめたくない。ひのえの心はどうなのじゃ?逆に正眼に聞かれ、白銅は答える事が出来なかった。「白峰の事が無ければ考えられたやも知れぬ」と、ひのえが言った事が答えに成る筈がない。考えた挙げく否という事だって有り得る。が、白峰との事が終わりを迎えようとしている。ひのえが考える事だけでもしてくれるやもしれぬ。とにかく、動こうそう決めて白銅は正眼の元に来たのである。「本意に望んでおると、それだけは必ずや、お伝え下さりませ」最後に...白峰大神・13白蛇抄第3話

  • 白峰大神・12   白蛇抄第3話

    何時のまにやら夏の盛りになり、青く小さな柿の実が花を結んで枝枝に付いている。蝉の声がじいいいと底鳴りをさせるように唸り出すと、あちこちから、呼応していくつもの蝉が鳴き始めた。ひのえは急いでいた。早く家に帰りつきたい。父に逢いたい。そう思うが父の顔を見て泣き付いてしまわぬだろうか。やっと、帰って来たひのえを迎える父の前でけして泣いてはならない。そう言い聞かせながら足早に歩いていたひのえの足が止まった。白銅の家の前にさしかかった。開け放たれた縁側に今日は白銅の姿は無かった。今更、どんな顔をして逢えばよい。ひのえはふと俯いた顔をあげると又、すぐに歩き始めた。家の玄関まで来ると足駄をはむ正眼の姿があった。ひのえに気が付くと「おお、今、白峰の麓まで迎えに行こうと思うておった」「帰りました」「よう、帰って来たの。ああ...白峰大神・12白蛇抄第3話

  • 白峰大神・11   白蛇抄第3話

    八十八夜白峰はこの所よく眠る。朝に昼に夜に供物を届けてくる巫女の声にはっとしたように目を開けると、必ず白峰は自分から供物を取りに行く。巫女の方はそれを置くと一目散に山を下って行く。うっかり白峰の姿なぞ覗こうとしたら、どんなあふりがくるか。自分から姿を現わさぬ限り触れる事のならない掟のような物を巫女は判っている扉を開けて供物をとりいれると白峰がひのえの前に供物を置き食べるように言う。「精をつけねば、ややが育たぬぞ」確かにひのえは孕んでいる。軽いむかつきが胸に上がってくるようになっていた。悪阻である。『やはり、宿ったか』悪阻が上がってこぬでも、もう、二月以上つきの物が無い。その上、連夜の白峰の責めである。孕まぬわけがない。「ひのえ、女子じゃ」「は?・・い」「宿ったのはの、女子じゃ」「もそっと、馳走を出すように...白峰大神・11白蛇抄第3話

  • 白峰大神・10   白蛇抄第3話

    「何者じゃ?」その声と共にぬっと、現れた男は背が高く、いかつい顔で年の頃は三十半ばを越していようか、すこし、剣のある目付きをしていた。「なんだ?陰陽師風情が何の用だ?」一目でそれと見ぬくと高飛車な言葉を投げ掛けた。不知火はその男がくりくりの磨髪であるのが判ると、「堂を守るのは、御主であるかな?」と、問い正した。男からはむっとした返事が返って来た。「俺が守っておってはいかぬか?もそっと、高尚なやつばらがおると思っておったか?」自らの品のないのを認めているらしく、よく自分を心得た口のききようである。「なに、御主に用があってきたわけではない。まともな口さえきければよいわ」いがみ合いになるかと思うような口を返すと不知火はにやりと笑って見せた。不知火が妙に落ちつきはらしているのと、なんの用事か気になったのであろう。...白峰大神・10白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・9   白蛇抄第3話

    今は静かな佇まいを見せているが、ご開帳の日ともなると弁財天を信奉する者の人の波でごった返す境内を不知火は突っ切っていった。「あいすまぬ」不知火が呼ばわる声に住職が出てきた。「はい。いらさりませや」「御くつろぎの所、あいすまぬの。ちと、御知恵を拝借しとうてな」通り一遍の挨拶をすると、住職の方が「陰陽道の不知火様の御力になれるやらどうやら・・・」と、ひどく慎まし気な返事を返して来た。が、そんな事で引くような不知火でもない。海千山千の人擦れをしている男である。気の付かぬ振りでけろっとした顔をして「おおう。わしを知っておるなら、話が早いわ」言う顔が瞬時に引きつめられるとさすがに住職も何事かは察したのであろう。低く、くぐもった声で「なにぞ?」と、尋ねると、居住まいを正した。物腰の柔らかさと腰の低さが逆にこの住職の徳...白峰大神・・9白蛇抄第3話

  • 白峰大神・・8   白蛇抄第3話

    五十四夜白峰がくすりと笑った。「ひのえ。」「はい」「昨日、人の物を触った事が無いと言うておったの?」「あ、はい?」何を言い出すのかと訝しげなひのえの返事である。「が、鬼の物には、触れたの?よう、掴んだの?」「あっ、ああ。そうでありましたな。が、よう知っておいでである」「お前の成す事は、全て見ておった。危なげな事を平気でしおる。が、時折、よう判らぬ事をする」「判らぬ事?」白峰がひのえを抱きこみながら答えた。「おお。そうじゃの、例えば、なんで悪童丸の舌をしゃいた?悪童丸の韻なぞ、お前なら跳ね帰せように?」「ああ。舌に情念が逃げ込みます故」「知っておるか。ふむ。下の物に情念を詰め込んで勢を孕ませてやろうとその折に決めよったか?」「それもありました。が、情念が舌に逃げこめば陽の物を断ち切られては悪童丸がほたえ苦し...白峰大神・・8白蛇抄第3話

  • 釦を・・・

    まだまだ、揚げたいものがあり、ついつい、スピードアップ。懐の銭などは、ゆっくり余韻をたのしみつつ、次、どうなるの?と、きになってしまう。と、いう読む楽しみ?みたいなものを・・・と、思うくせに、やっぱ、揚げてしまうWWWその揚げる合間に、ちょっと、他の人の記事を読みに行く。良いね。とか、応援。とか、続き希望。とか・・・そんなボタンを押すのは、かえって軽々しい、と、思ってしまう深い内容。訪問したことは相手の方には判っていると思う。そして、その記事には次々と釦が押されていく。押すのがいけないという意味ではない。自分が「いいね」と、押す、その重さが記事を受け止めた深さと重さが「いいね」では、伝わらないと思う。読み物のように、読んで簡単に評価するように見えてしまうのは釦の表記の仕方だろうか?ー心に沁みましたーとか真...釦を・・・

  • 懐の銭・・・1

    いつまでも、のんだくれていたって、しょうがねえ。そうは、おもうものの、つい、酒に手が出る。酒に手がでらりゃ、がんらい、気の小さい男だから、なおさら、からいばりでつっぱしってしまう。「つけがたまってんだよ」女将のいやな小言も今日は平気でききながせる。「なに、いってやがんでえ、ほらよ」懐からさっきかせいだばかりのばくち銭をとりだすと、女将になげわたす。「ふ~~ん」女将はしたり顔でうなづく。「なんだよ・・」「いやあ、別にさ。はらってもらえるんだから、文句はいえないんだけどさ・・」「なんだよ・・」言い含めたい事があるのは、女将の顔つきでわかる。「あんたさ・・もう、そろそろ、まっとうに銭をかせがないとたいへんなことになっちまうよ。元々、いい腕してたんだもの、そのまま、ねむらしちゃああんたがおしい。それにさ、あんた、...懐の銭・・・1

  • 懐の銭・・・2

    そして、次の日になれば、男は賭場のあがりを懐にのみに来る。ちょいと、いい目がでたものだから、たんまり懐が厚い。傍目のうろんの目が逆に男の心を逆なでする。けばだった心をなでおろすかのように、男は懐の銭をはたく。「ええ、たんまり、のませてやってくれよ。つけ払いだなんて、けちなことはいいやしない」つれてきたか、さそったか、たかられているのか、三人ばかりの風采の悪い男が男を取り囲む。「いやあ、ごちになりますよ」「しかし、まあ、あの賽の目のよみよう・・神技としかいいようがねえ」「ここはおやっさんの、これかい?」小指をたててみせた男の言葉にてんでかってをいっていた男たちが一様にだまりこむと、女将を上から下までなめまわす。「へへっ・・・いい女じゃないですかあ」「賽の目も見る目があるけど、こっちも見る目ありで・・」女将の...懐の銭・・・2

  • 懐の銭・・・3

    こんなことがいつまでも続くはずがない。女将の思ったとおり、男の賽の目に狂いが生じ始めていた。今日はつけでたのむよと、殊勝な小声でたのむことが、ふえてきた。勝てば、いつもの与太者がついてくる。まけても、付けですますものだから、やはり与太者がついてくる。三度に一度の付け払いが五度に一度になりながらも「かったら、きれいにはらってるじゃねえか」が、男の言い分だったが、男一人でのんでるならまだしも、懐の銭をあてこんだ与太者があたりまえのように男にくっついてくる。はじめのしおらしい態度もとうにどこかにきえうせて、ひどいときには、男より先に店にきて、のみくいする。男の顔をみれば、口だけはかわいらしい。「さきにごちになってますよ」うむをいわせぬ強請りをいえるところが、よたものがよたものである由縁でしかない。席にすわりはじ...懐の銭・・・3

  • 懐の銭・・・4

    女将の覚悟は男の末路をおもうだけのものなら、簡単につけられたものかもしれない。どんな意地があるのかわからないが、自分の生き様が自分のままならずにどこで、おっちんでしまおうが、そりゃあ、自業自得、覚悟の上、男にゃあそれで本望かもしれない。だけど、修造の奴が、そのまま、ひきさがるわけがない。たとえ1文の銭だってかえせなきゃ、それで、大義名分ってものができる。借金をたてに、お里ちゃんをかたにとって、女郎屋にうっぱらって、甘い汁を吸おうってのがはじめからの目論見に違いないんだ。だから、男に賭場銭をかして、最初はいいめをみせて、そのうち負けがこんでくれば、愛想のよいしなをつくって、また賭場銭をかしてやる。かてば、男も律儀なもんだ。しっかり、賭場銭は返す。そして、しばらくすりゃあ、また、負けがこむ。賭場銭を貸し与える...懐の銭・・・4

  • 懐の銭・・・5

    ちょいと、早すぎる刻限だとおもいながら、女将は白銀町まで足をのばした。どうせ、まゆつば。酔客の戯言をまにうけるなんざ、いかに商いなれしてないか、自分のおぼこさぶりをまんまみせつけられるだけになるだろうと思いはする。だけど、ひょっとして、ひょっとすると、本当に白銀町の大橋屋の隠居なるものかもしれない。ちょいと、眉のつばがかわかないうちに、ほんのちょっと、たしかめてみたって、かまわないじゃないかとも思う。だから、無駄足にならないために、店の仕入れに足をのばすだけにした。そうすりゃ、酔客のたわごとだったとしても、たばかれた気分をあじあわずにはすもう。そんな理由で女将は朝早くから、白銀町の乾物屋をのぞきこんでいる。「大橋屋?なんだい?ご隠居をたずねなさるのか」乾物屋の親父は一元の客にも愛想がよい。「いえ、そうじゃ...懐の銭・・・5

  • 懐の銭・・・6

    ここだねと大橋屋の前にたちどまってみたものの、思案六法、なんと言って入っていけばいいんだろう。ちょっと考えあぐねて、暖簾のすきまから中をのぞいてみたものだから、店の中の人間と目があってしまった。ばつの悪さを笑みでごまかしてちょいと頭をさげたのが、よけいいけなかったんだろう。店の中の目をあわせた男がのれんをわけて、女将の前によってきていた。こうなればしかたがない。「あのう・・」男は40がらみ。乾物屋のいう息子なるものか、はたまた、手代か番頭か?女将の言葉がつまったままをながめていた男だったが、はたして、その口から出てきた言葉が女将を安堵させることになる。「人違いでしたらもうしわけございませんが、もしや、お多福の女将さんではございませんでしょうか?」女将はその言葉が何を表すか、すでにさとっていた。「さようでご...懐の銭・・・6

  • 懐の銭・・・7

    「事のおこりなんてのは、実にたあいのないもんでしかない。だけど、どういうんだろうねえ。性格が禍するというかなあ」丁稚が茶をもってくると、隠居は煙管に煙草をつめはじめた。たてとおしにしゃべってしまいたくないと隠居の指先が煙草をほぐしゆっくりと火打ちをはじめる。白煙をすっぱり吸うとまあ、あんたも一服と茶を促す。湯飲みの端に口をつけながら、隠居を伺うとわずか、ぼんやり遠くをみつめる目つきになる。それは、どういう風に話そうかをかんがえているようにもみえた。「あんたが、いってたよねえ。殿中ご用達ってね。事のおこりはそれだよ。うちのご領主ってのは、まあ、質実剛健っていうんだろう。きらびやかに見栄えがいいものだけじゃなくてなあ、実用性ってのを慮られる。何軒かの棟梁をよんで、その腕を評するのでも、本当に良いものを私らの生...懐の銭・・・7

  • 懐の銭・・・8

    女将が大橋屋からかえってきてから、その心境は複雑なものになっていた。確かに修造においつめられて、煮え湯をのまされれば、男の目がさめるだろう。だけど、その己の馬鹿さかげんにどんなにうちのめされるか。今の女将はその機会がめぐってくるほうがよいと考えている・・だろうか?できれば、そんなみじめな思いをくぐりぬけずに、賭場通いをやめてくれればよい。そんな風に考えていた女将だったが、その考え自体すでに甘い了見でしかなかったとしらされることになる。賭場通いをやめたら、それで、すむなんてものじゃない。人の暮らしをつぶしてでも、甘い汁をすするのは、女将だって同じだと自分せめさいなんだように、修造だって、覚悟の上で人を落としこんでたっきの道にしている。女将はいくばくか、自分を責めてみたが、修造はそんなあまっちょろい罪悪感なん...懐の銭・・・8

  • 懐の銭・・10

    女の平手打ちなど、たいしたものでもないのだろう。男はほほをさすりあげると、ひどく、悲しげな目つきで女将をみつめかえしていた。「俺は・・」なにかいいかけたが、男は黙った。「事情はきいたよ。文次郎親方がよかれと思ってしたことが、かえって仇になっちまったってね。でも、あたしは、あんたが、文次郎親方をどういうふうに誤解してるかを懇切丁寧にはなそうなんて、おもっちゃいないよ。ただね、あんたの生き方、あんたの弱さにむしょうに腹がたつんだ。いいかい、自分の娘が身売りされるかどうかって瀬戸際なんだよ。あんたの意固地をとおしている場合じゃないだろう?親ならね、文次郎親方に頭をさげてわびをいれて、金を算段してもらえないかって、いうのが本当じゃないか?そういう親らしくない心立てが、あんたの弱さだ。文次郎親方に子飼いの時からしこ...懐の銭・・10

  • 懐の銭・・11

    お多福をあとにした男の足はまっすぐに文次郎親方の元へとむかい、寸刻のちに、文次郎親方の前で、ひざをつき、土間に頭をこすりつけんばかりの男をとめたのが他ならぬ文次郎親方だった。「よせやい・・謝らなきゃいけねえのは、俺のほうだ・・それは、なしにしてくれ」思い越せば子飼いの倣いから男と親方の付き合いは三十年をこす。すりつけた頭を上げて親方をみつめれば、親方の目の端が赤くうるんでみえる。「殿中ご用達の品はな、おまえじゃなけりゃつくれねえんだ。きっと、けえってきて必ずつくってくれるとおもってな・・おりゃあ、ずうううと、さしとめていたんだぜ」まちがいなく男を一人前の職人として認めているとその言葉でわかると、男の目からも、にじむものがほほをつたいはじめていた。けれど・・。「親方・・勝手にとびだしちまって、迷惑をかけて、...懐の銭・・11

  • 懐の銭・・12

    その白銀町の大橋屋の隠居は、こけつまろびつ、大急ぎで店をしめてやってきたお多福の女将からの委細事情をきいていた。「文次郎親方の所にわびにいくっていって、まあ、それが、順序だろうって・・順序って言えば、修造の若い衆にもそういって追い返す事ができたんですよ・・そりゃあ、ご隠居が金をだしてくれるって判っていたから、あたしも・・こう・・なにくそってね・・やおら、腕をまくられたときにゃあ、本当は足ががくがくふるえていたんだけど・・」まだ、興奮さめやらずで、順序、順序といいながらとうの女将の話の筋道はたっていなかった。年恰好はせいぜい三十絡みにしかみえない女将にとっては、こんな愁嘆場をくぐりぬけたことなど初めてのことであったろう。無理もないことだと女将の口から興奮が飛び出すのを聞き流していたが、肝心なことをきかねばな...懐の銭・・12

  • 懐の銭・・13

    玄関から頭をすりつけるかのように、かがみこんで、はいってきた文次郎と男は大橋屋の前で、さらに、べたりと頭を畳にすりつけんばかりである。男の胸中をおもんばかって、大橋屋・隠居は制した。「親方。私と親方の間でそれはない」文次郎をも、土下座まがいに頭をすりつけさすさまは、男の胸にも痛かろう。文次郎も隠居の心根を察っすると、男にちいさくめくばせをした。いっそう、男は小さくちじこもり、親方を見つめた瞳を畳の目をかぞえんばかりに低頭した。「まあ、それはよしにしましょうや」男にいいなおすと隠居はこほんと小さく咳払いをした。「お顔をあげなすって・・。まあ、私の話をきいてやってください」柔和な笑顔を男にむけて、男の顔が上がるのを待つと隠居はしゃべりはじめた。「私がね・・お金を用立ててさしあげようときめたのは、文次郎親方の思...懐の銭・・13

  • 懐の銭・・14

    泣いてる男の機嫌取りをするわけじゃないが、本来の目的をはたしきってから泣いてくれと隠居は男をおいたてはじめた。「さあさあ、その金を修造のやつにたたきつけ・・・おっと、また、なんくせをつけられちゃあいけないから、まあ、そこはこらえて、しっかり、証文をかかせて、きっちりかえしましたって、ぐうの音もでないようにしときなさいよ。なにせ、あいつは、町方役人とつうじてるんだからね。三日といったのでも、どんな、なんくせつけて、町方役人をひっぱりだしてくるかわかりゃしない。とにかく、急いで、一刻でもはやくけえして、変な考えをもたせちゃいけない」隠居の不安は、修造がいかに姑息かわかってるからだ・・。ちょっと、首をひねったのは、姑息に隙をつかれないようのという考えがわいてきたせいだ。「ご隠居のおっしゃるとおりだ。さあ、一時も...懐の銭・・14

  • 懐の銭・・15

    矢来の雨がふってきそうだと空をあおいで、懐の銭をぐっと押さえて確かめる。急ごうと走り出しながら、男の胸に大きな安堵がうかんでくる。これで、お里も安心だ。女将にいわれたように、男は死んでしまおうと思っていた。そうすりゃあ、なにもかも、かたがつく。その考えが甘いものだなんて思いもしないほど、なにもかもに嫌気がさしていた。逃げ出してしまえる理由がほしかったんだと思う。だが、親方への誤解が解けた今、男にはやっていかなきゃならない事がいっぱいできた。文棚をこしらえる。それから、大橋屋のご隠居にすこしずつでも、金をかえしていく。それから・・お里・・。嫁入りしたくなんかしてやれそうもないが、お里は手のいい針子だって、大店からあつらえものがくるようになってきてる。まあ、それで、ちょいと、小銭をためれりゃあ、恩の字だ。とに...懐の銭・・15

  • 懐の銭・・16

    懐の銭をおしながら、余計にわたしてくれた心使いの1両の所在も確かめる。落としちまっちゃいけねえと、足元に気をくばりながら男の足はせく。しかし・・。女将がなあ・・。文次郎親方なら、いざしらず・・。女将がなあ・・・。人の世がいかに情でささえられてるか。女将にも安心してもらえるような生き方をしなきゃいけない。品や物や金で礼をすることができない男はいっそう、生き様でかえすしかないと思う。それにしても、この1両・・。隠居さまはよくよくの苦労人・・まてよ?渡された30両と1両。もう一度ぐうと押してみて男は考えた。「俺は金かさの話をしたおぼえがない。親方だって、なんにもいってない・・」はあと男はおもいあたる。親方のほかに30両という金かさをしってるのは、女将しかいない。女将が金かさを隠居につたえ、ご隠居は黙って金を用意...懐の銭・・16

  • 懐の銭・・17

    大池の男を眼の端にとめながら、男は小道を登りきった。だが・・・・。池の端の男は男をおいかけてもこなかった。男の姿にさえきがついていないようだった。待てよ・・・。男は目の端に移った池の男の姿をおもいかえしていた。待てよ・・・。待てよ・・・。あの恰好は・・・。どこかの番頭か、手代か?男は不思議だと思った。こんな時刻に奉公人が池の端でじっとしている。店に帰らなきゃおかしいだろう?そんな自由がゆるされるはずもない。勝手気ままに息抜きをするにしたって・・・こんなところで・・。それとも、逢引かい?女を待ってるって、態か?男はほんのすこし、ふりかえって、大池の男をみた。なんとはなしに、妙な気がしただけだ。やけにものさびしそうなのは、女がなかなかこないせいかもしれない。人の恋路を邪魔する無粋はやめておくことだ。そんなこと...懐の銭・・17

  • 懐の銭・・18

    いきなり何者かにとびかかられ、驚いたのは池の男のほうだろう。まっさおに青ざめた顔がいっそうひきつっていた。「な・・なにをするのですか」40がらみの男がくみついたまま、池の男をおさえつけようともがいていた。「な・・・なにをするってのは、こっちの科白でぇ!!」男に怒鳴り挙げられ池の男は顔をふせた。自分が死のうとしていたことを思い出したというところだろう。「え?てめえ、死のうってしてやがったろ?おっちんじまおうっておもっただろう?」目的を思い出した池の男は静かな声で男につげた。「ええ。おっしゃるとおりです。どうぞ、みのがしてやってください」妙に弱弱しい声のくせに覚悟がこもってる。説教なんぞで、気がかわらない深いわけがあるように思えた。「みのがしてくれっていったってなあ。こそ泥だってそんな言い草がつうじるわけねえ...懐の銭・・18

  • 懐の銭・・19

    用心しながら池の男から身を離し、男は正面を切った。「ああ。まず、とくと、きかせてもらおうじゃねえか」だいたい、死んじまおうなんて思うのはせっかちすぎる。あの手、この手うってるのかどうか?やるだけやってだめだったのか?なにがあったか知らないが、うまい解決方法をみつけられないだけで、思い込みのあまり、おっちんじまうってのは、笑い話にしかなりゃしねえ。ちょいと前の自分がそうだった。思い込みすぎて、解決方法をさがすのさえ、どうでもよくなっちまう。てっとり早く解決しちまえばいいって死んじまうことばかり考える。だけど、解決するのは、自分の思い込みだけで、問題は依然としてそこに残るんだ。へへっ。これは女将の受け売りだな。男は腕を組んだ。おまえさんの話をきくから、もうおさえつけたりしねえから、話せという男の意志表示だった...懐の銭・・19

  • 懐の銭・・22

    「けえったぞ・・」声をかけてみても、家の中はしずまりかえっている。かかぁの奴は洗濯女だ。また、宗右衛門町にいってるに違いない。ため息がでる。お里に告げることもつらいが、、お木与の落胆を想うと・・。戸口をあけて、中にはいると座敷の淵に腰をかけた。お里は手のいい針子になった。大店からあつらえがくるようになっていたから、できあがったものを届けにいっているのだろう。その腕もなんの役にもたたなくなる。伝い落ちる涙をぬぐうと、宣告の刻がいっとき、引き伸ばされたにすぎない今をただ、うすらぼんやりとすごすだけになる。なにも考えたくない。と、想うのに、ちいさな頃のお里がうかぶ。手まりをわたしてやったら、そいつをしっかり胸に抱いて、寝るときも、布団のなかに抱いてねやがった。お里には、なぁんにも良い目をみせてやれず、あげく・・...懐の銭・・22

  • 懐の銭・・21

    有難うございますと何度も頭を下げる池の男、いや、桔梗屋の手代にさあ、さっさと、銭をもっていけと男がいうと、「どこのどなた様か、お名前とお住まいをおきかせください」と、尋ねられる。「まあ、いいってことよ。俺もわすれてなきゃあ、節季にでもちょいと、顔をだすから、銭がありゃあ、ちっと、かえしてくれりゃあいい」はなから、かえせる金がさじゃないんだ。へたにかえさねばといらぬ心労をもちゃあ、この男のことだ身体をめがしちまう。あくまでも、どうでも良い金であるふりを繕うと男は笑った。「あんまし、遅くなるとな、かかあの奴が悋気をおこしやがる。刀が売れたんで、色里にいっちまったにちがいないってな。だから、おりゃあ、もう、けえるぜ」言い捨てると男は池をあとにした。もうふりかえることなく、峠をめざし、のぼりきってしまわないと、桔...懐の銭・・21

  • 懐の銭・・20

    「で?なんだよ?いくら・・」呉服屋から預かった代金がいくらかときいてるとわかった池の男はかくかくと首をふった。「なんだよ?わからないのか?」男の問いにかすかに笑っているようにみえた。だが、男もすぐに思い当たる。おっちんじまおうと思う額だ。簡単にどうにかなる額じゃない。男はじんわりと懐をおさえた。30両と1両ある。この中からちょいと用立てやりゃあ・・・。と、考えはするものの、男は考えあぐねる。よわった・・この金はご隠居が親方が・・。女将の顔が浮かぶ。そしてなによりも、お里だ・・。ご隠居が天袋から1両の金をだしてきたのだって、ありゃあ、すからかんになっちまったに違いないんだ。封を解かず、1両ぬきだしてきたんだ。呼び銭にちがいねえんだ。なにもかもはたきだしてその金でお里をたすけてやれって、渡してくれた金だ・・。...懐の銭・・20

  • 懐の銭・・・9

    「そりゃあ、確かに付けってものに、いちいち、証文をかいてもらうわけにはいきませんけどね。取立てをするには、順序ってのものがあって、まず、いくらのつけがございます、って、おしらせして、いついつまでにはらってくださいって、きちんと話をもっていく・・」女将の話ぶりが男を庇うとみてとると、修造の若い衆は、やおら、袖をまくってみせた。二の腕に、波模様の刺青があるというのは、背中に背負うは昇竜か昇り鯉というところだろう。もちろん、若い衆が刺青をみせびらかすために二の腕をまくってみせたわけじゃない。女将の口を封じさせようとの脅しでしかない。有無をいわせぬ脅しにはいはいとへいつくばってしまっては、男を窮地からすくいだせない。「おや、この柄は昇竜かい?」と、女将はすっとぼけてみせた。女将のいちかばちかの捨て身の策でしかない...懐の銭・・・9

  • 箱舟 第3部を終えて・・・次は・

    作品箱舟のうしろにあるものは、「深淵」なのかもしれない。なにか、今のご時世の中例えば、統一教会に対する信仰こんなのも、考えようによっては「寄生体」のようなものに乗っ取られている・・と、いえるかもしれない。けして、宇宙人とかでなくそれ以上に質の悪い「癌細胞」のような自らが生み出す寄生なのかもしれない。だとすると、自覚の無いまま「寄生」(あるいは増殖)されているより箱舟の編集長などは、幸せなのかもしれない。などと、考えてしまった。次・・・よく考えたら、もうひとつ、二次創作が有った。元ネタは落語。落語のタイトルを書くとネタばれしてしまいそうで落語の方の紹介はしないけど・・・二次創作ということになる。落語という話芸を物語に仕立てようとしたときあ~~あの落語かあ・・・と読んでる途中に気が付かれてしまう・・・と、いう...箱舟第3部を終えて・・・次は・

  • 箱舟  ☆☆1

    その日を境に私の生活は、急変した。箱舟をかきあげた私はそれを世にだすことをあきらめた。なぜか、急激に、出版への意欲がうすれていったのだ。それは、おそらく私の中にはいった寄生物の操作に他ならないと思えた。彼らが人類に寄生するエネルギー体であること、そして、彼らがまず、実験的に人類にはいりこんで、仲間を誘導していくこと。このモデル実験に選ばれた人間はかなりいる。編集長もそうだろう。そして、ゴーストライターだった彼女もそうだった。ゴーストライターだった彼女はこの寄生体の存在を公開しようと試みた。その結果に訪れたのは死ではなかったのだろうか?彼女はどこまで、寄生体を認識していたか、さだかではない。だが、私が寄生体に寄生される未来を予知したように彼女もまた、予知したに違いない。そして、彼女の箱舟を書いた。彼女の中で...箱舟☆☆1

  • 箱舟  ☆☆2

    だから、彼らは私の意識の中にある「欲」を操作しているのだ。出版欲、名声欲・・。何でも良い。それらの「私の意識・観念」は、彼らにとって自分の環境に他ならない。その中で暮らす(寄生)彼らにとって私の意識・観念はまるで、大気のよごれのようにすみにくいんだ。私が出版して彼らの本当の目的を公開しようという思いは彼らにとって、自分たちの存在を否定され吐き出される行為にちがいない。けれど・・。彼らは逆に自分たちの存在を認めさせる必要がある。それは、禅問答ににているけれど、「在る」とするものにしか、存在し得ない存在なんだ。ゴーストライターはなにかのきっかけで、彼らの存在を認識した。そして、彼らが、ゴーストライターに寄生するために、なにかの引き金が必要だった。それは、なに?簡単な答えかもしれない。ゴーストライターの執筆欲を...箱舟☆☆2

  • 箱舟  ☆☆3

    まず、私がおこした行動は箱舟第1部を機関紙に発表するという当初の予定行動を実現することだった。穴埋めのゴーストライターのゴーストライターだってかまわない。まず、寄生生物の概念を多くの人間にしってもらうことが先だと思った。ところが・・・。ありえないことだった。編集長は私の顔をみるなり、「これは、使えない」にべのない返事だった。この時点ではっきりわかった。ゴーストライターから渡された「箱舟」を私に読ませる事が目的でしかなかったのだ。この時点でゴーストライターと私が書いたものが一致するという、ありえない事実をしることになる。私はこの物語が本当のことを言っていると知る。つまり、寄生型宇宙人がいると存在を認めてしまったのだ。これにより、波長がシンクロし私の中に寄生型宇宙人が入り込んだ。それだけが、目的だったのだ。編...箱舟☆☆3

  • 箱舟  ☆☆4

    すでに多くの人間が罹患していたといってよい。そこで、私はやっときがついた、おそらく、私の伝える事は(たわごと)あるいは(捏造)にしか受け取られないというに。私はいっそう、あせった。そのまま、箱舟を書き続ければ私は狂人としか、判断されない。どうすれば、よいのか、どうすれば、論破できるのかこれができなければ、根拠の無いものを信じない人間が目の前に見せられる偶然さえも、エレメント体の力だと信じている洗脳状況を解くことはできないだろう。微小ながらでも、寄生されていることに気がつけば何かが変わる。私は、自分の中の寄生エレメントの正体をさぐることにした。だが、これは、多くの人間を巻き込んでいるイリュージョンマジックに自分も罹患されることになるとは、気がついていない私であった。ここまで、意識世界を操っているとはしらず、...箱舟☆☆4

  • 箱舟  ☆☆5

    彼女が私を護った?そういうことになるのだろうか?私の考えすぎで単に本当に共存するだけ?だが、それは、彼女の罠でしかなかった。私の深層心理はマイナスエネルギーの存在を恐怖として信じ始めていた。これが、いっそう、自分から彼女からの答えをひきだそうとする心理になっていった。私はひどく、気分が沈みはじめた。それは、ほかでもない。自分をのっとろうとする存在である彼女にふりまわされてしまったせいだ。ひどく、気持ちが沈みながら、彼女の存在が気になる。マイナスエネルギーを発生する存在なんてあるものだろうか?もっと、いえば、悪霊なんて、いるものだろうか?自分の心のせいでしかないと彼女の存在を知る前なら私は一笑にふすことができた。だが、得たいの知れないマイナスエネルギーがあるという事実に驚愕しつつ、それを知ることができる彼女...箱舟☆☆5

  • 箱舟  ☆☆6

    つまり、私は自分の意志で彼女をえらんだのでなく彼女の意志に操られていたんだということ。つまるところ、自分の弱さにつけこませたのだ。私の中でまだ、疑問は残った。なぜ、元の寄生生物は私の「欲や恐れ」をはしごにしたのだろう。これが、なくなると、もうすこし、高度な精神性をもっているように思える寄生生物がはいってきた。むしろ、「欲や恐れ」からよりつく、悪霊らしきものや前の寄生生物から私を護ってくれるように思えた。彼女は私を導こうとしているのだろうか?私は自分が自分の主人公でないことに怒りをかんじていた。だから、疑問を感じる事が出来たのだと思う。だが、それでも、私は新たなる寄生生物を受け入れていた。ここにも、かすかな疑問を感じ始めたある日、「宇宙人とのコンタクト」というブログにたどり着いた。そこに書かれていたのは確か...箱舟☆☆6

  • 箱舟  ☆☆終

    ******編集長・・。お客様です。ええ。なんでも亡くなられた水上千絵さんの遺作を出版したいとのことで、ご家族がおみえになっています。はい?・・・・・・・・・。ああ、作品タイトルは「箱舟(三部作)」だそうです。はあ?ああ、・・・・そうですか。判りました。***********水上千絵の家族が、ほかの出版社に「箱舟」をもちこまないためにも、私は「箱舟」をあずかった。「ほかに、ブログなどに発表されていませんよね?発表されていた場合、版権の問題がしょうじますので、あったら、削除なさってください。元の原稿もこちらで、保管させてください。ええ、ワードなどに書いてある物も完全消去願います。著作権は刊行本によって、証明されます。この著作権利に対し、売り上げの8%の印税をお渡しします。ところで、お母様は「箱舟」をおよみに...箱舟☆☆終

  • 意外と短かった第二部www

    同じタイトルが続くもので混乱させてしまうかもしれない。カテゴリから、引いていただくとして・・・箱舟第一部箱舟第二部自分が思っていたほど、第二部は長くなかった。で、第三部に突入するけど・・・ちょっと、挙げた作品の羅列をしてみる。作品の順番替えしたらカテゴリ順も替えるようにしているので箱舟第二部は箱舟第一部の下に付くようになる。現状の作品名(カテゴリ)1カテゴリに居れてしまっている物も有るので35作品と思う。カテゴリー箱舟第二部(5)掌編(7)パンパンとチョコレート(12)蛙(3)俺の胸の中の陽だまり(ー神戸にてー)(2)ユニコーン(8)彼の魂が・・(1)金と銀の夢の鞍(1)ノンちゃんの犬(1)思案中(4)葵(1)奴奈宣破姫(25)風薫る丘の麓で(10)「いつか、見た夢・・デ・ジャブ」(7)箱舟第一部(8)柿...意外と短かった第二部www

  • 箱舟  ☆1

    (箱舟(第1部)を書き終えた私だったが、物語の終わらせ方がしっくりこなかった。だいいち、-私ーはこの先どうなってしまうんだろう?彼女と共存するにしたって、どういう風に共存していくんだろう?寄生植物を考えたって、寄生側が宿主を殺してしまうようなことをしないのとおなじように、彼女が宿主に必要以上のコンタクトをとらないのはわかるけど、どうなるんだろう?もうひとつの案でもう一度かきなおそうか?そうおもいながら私はカレンダーをちらりとみた。某出版社、編集長からのじきじきのお声がかりで、私は箱舟を書き始めた。猶予は1週間。短編でよい。新進作家の登竜門でもある機関紙に載せてもらえれば私は作家になれる。だけど・・・・。こんなもんじゃだめだとおもう。おもいながら、この箱舟に妙な愛着がわいていた。そうだ・・・。編集長に一度よ...箱舟☆1

  • 箱舟  ☆2

    「これ・・?あなたが・・自分でかんがえて、かいたんだよね?」あたりまえじゃないですか。そう、いいかえすこともできたけど、あまりにも、ぱくりっぽい?あるいは、ベタ物設定・・・。オリジナリティに欠ける。そんなものしか、かけないってことは、作家になるのは無理だね。編集長の言葉のニュアンスがよみとれて、私は「はい」それだけしか答えられなかった。「そうだよね。そうだよね」同じ言葉で、編集長は自分の中の煩悶をねじふせてる。もしも、いえ、知人の案を・・と、嘘をいったら、どうなっていたのだろうか?たいして、結果はかわらないだろう。この編集長ともう、会うこともなくなる。出版社にくることもない。物にもならない状態は子供のままごと遊び。私は・・もう、書くこともなくなるんだろう。そんな決心を自分にいいきかせなから、編集長の判決を...箱舟☆2

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