このたび,化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文「明治期の訳語選定事業における「翻訳の文化」 ―bondの訳語「価標」を例に―」が掲載されました! 今回は別刷りを頼んでみました.一言で言えば,「化学用語の訳語を統一する過程では,翻訳に関するいろんな考え方が戦っていたよ」という点について,bondの訳語「価標」に注目してみた論文です. 今回はその論文のご紹介です.
身近にひそむ化学と歴史を,高校までの知識をベースに解説します. 化学は「身近な現象」を「分子レベルで」説明してくれます.本ブログでは高校までの知識をベースに,歴史的背景も含めて誰かに話したくなるような身近な化学ネタを紹介していきます.
このたび,化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文「明治期の訳語選定事業における「翻訳の文化」 ―bondの訳語「価標」を例に―」が掲載されました! 今回は別刷りを頼んでみました.一言で言えば,「化学用語の訳語を統一する過程では,翻訳に関するいろんな考え方が戦っていたよ」という点について,bondの訳語「価標」に注目してみた論文です. 今回はその論文のご紹介です.
「酸をH+を供与するもの,塩基はH+を受容するもの」という定義は,1923年にブレンステッドとローリーが独立に発表しています. 彼らは,なぜそのような定義をしたのでしょうか? ブレンステッド(左,Johannes Nicolaus Brønsted, 1879-1947)とローリー(右,Thomas Martin Lowry, 1874-1936)今回は私の論文をもとに,ブレンステッドとローリー,それぞれについて酸塩基の定義を思いつくに至った経緯を探っていきましょう. 【参考】論文発表のお知らせ:ブレンステッドからミカエリスへ
「酸をH+を供与するもの,塩基はH+を受容するもの」という定義は,ブレンステッドによる定義として習います.しかしブレンステッドははっきりと,H+に注目した酸塩基の定義は生化学者ミカエリスによるものだと明記しています. ミカエリスの酸塩基理論とは,一体どういったものだったのでしょうか? Leonor Michaelis (1875-1949)今回は私の発表した論文をもとに,ミカエリスの半生とともに,その酸塩基理論の正体を探っていきましょう. 【参考】論文発表のお知らせ:ブレンステッドからミカエリスへ
「酸とは水溶液中でH+イオンを与えるもので,塩基は水溶液中でOH-イオンを与えるものである.」という定義は,アレニウスの定義として習うものです. この定義は,本当にアレニウスが提唱したものでしょうか?実は彼は生涯にわたって明確に酸塩基の定義をしたことはありません. Svante Arrhenius (1859-1927) 今回はアレニウスの業績を確認しつつ,アレニウスの定義と呼ばれるようになった経緯を探っていきましょう.
化学の教科書を読んでいて,「そういえばこの用語ってどんな経緯で生まれたんだろう?」とか,「この表記法って昔からこうだったのかな?」とか思ったことはありませんか? 実は2024年1月から,こうした疑問に対して化学史の側面から調査するワーキンググループ,「日本版Ask the Historian」を立ち上げ,活動を始めています. 今回はその内容について,ちょっとだけご紹介します.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版されました!化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon本記事では世界初の記載も含む,本の内容を紹介します.追加の無料ダウンロードコンテンツもあります.
このたび,ついに化学史好きが高じて化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文が掲載されました! 論文です!一言で言えば,「ブレンステッドの定義は彼のオリジナルではなくて,生化学者ミカエリスが考えたものだよ」という論文です. 今回はその論文のご紹介です.
沈殿反応は見た目にはっきりと変化があらわれるので,滴定にも用いられてきました. 沈殿滴定はどのように誕生したのでしょうか?また,沈殿滴定にも指示薬はあるのでしょうか?今回は水質調査,硝石産業,貨幣鋳造,ハーブウォーターなどを題材に,沈殿滴定の歴史をみていきましょう.
過マンガン酸カリウム溶液やヨウ素溶液のように色がはっきり変化する場合は良いですが,色が変化しない酸化還元反応はどうすれば良いでしょうか?今回は酸化還元滴定の幅を広げた,酸化還元指示薬の歴史をみてみましょう.
過マンガン酸カリウムを用いる滴定,過マンガン酸塩滴定は色がはっきり変化するので化学実験でもよく取り上げられます. 過マンガン酸塩滴定はどのように誕生したのでしょうか? 今回は鉄工業や硝石産業,水質調査と関わりの深い過マンガン酸塩滴定の歴史をみていきましょう.
ヨウ素滴定には大抵の場合,チオ硫酸ナトリウムが相棒として登場します. チオ硫酸ナトリウムを使うようになったのはなぜでしょうか? ダゲレオタイプのカメラ今回は写真撮影や水質調査を題材に,チオ硫酸ナトリウムとヨウ素滴定の歴史をみていきましょう.
ヨウ素の酸化還元反応を用いた滴定を,ヨウ素滴定と呼びます.ヨウ素はデンプンとの反応ではっきり検出できるのが特徴です. ヨウ素デンプン反応を用いたヨウ素滴定はどのように成立したのでしょうか? 海草の収穫(北フランス) By Guy Courtois - Self-photographed, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6419590 今回は硝石産業や温泉と関わりの深い,ヨウ素やヨウ素デンプン反応の発見,そして滴定への応用の歴史をみてみましょう.
中和滴定と並び,代表的な滴定方法が酸化還元滴定です.反応式を組み立てるのに苦労された方も多いと思います. 酸化還元滴定はどのように発明されたのでしょうか? 今回は酸化還元反応の歴史を踏まえつつ,酸化還元滴定開発の様子をみてみましょう.
pHを測定するには,pHメーターを用いるのがお手軽です. pHメーターはどのように開発されたのでしょうか? Beckman M型 pHメーター (1937) 今回はpHメーターをめぐる物語を紹介します.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版することになりました!発売日は2024年3月16日からで,予約はこちらから可能です. 【電子書籍版】 化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon【ペーパーバック版】 kagaku-netacho.booth.pm本記事では,どんな本になるのか,その一部を公開します.
滴定を行う上では,中和反応がどこまで進行したかをモニターし続けることが大事です. 有名なのは紫キャベツの煮汁やリトマス試験紙の色変化ですが,他にはどんな方法が活用されてきたのでしょうか?今回はpHメーター開発以前のモニター方法について,原理とともに見ていきましょう.
化学工業が発展した18世紀以降,酸やアルカリの量を知ることは原材料の品質を調べるうえで非常に重要でした.中でも中和反応を利用する中和滴定は未熟練者でも使える画期的な方法でした. 理科実験でお馴染みの中和滴定は,どのように誕生したのでしょうか? By UCL - Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45263025今回は水質調査や硝石産業などと関わりに深い中和滴定の成立過程の歴史を見てみましょう.
フッ化水素酸はガラスを溶かすことのできる酸として非常に有名です. フッ化水素酸はどのように発見されたのでしょうか? パリ万博(1867年)で優勝した,酸エッチングを活用したガラス作品 By Andre Carrotflower - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116226404今回はフッ化水素酸の危険と向き合い,これを利用してきた化学の歴史を見てみましょう.
リン酸は昔,骨から作られていました. 一体どのような方法だったのでしょうか?今はどのように製造されているのでしょうか? 1870年頃の骨灰工場 "Les merveilles de l’industrie, ou Description des principales industries modernes, vol. 3" p.537今回はリン酸製造法について,リン酸活用法の歴史とともに見ていきましょう.
塩酸はかつて「海の酸」とも呼ばれました. なぜそのように呼ばれたのでしょうか? 13世紀頃から行われているアドリア海での製塩 (スロベニア)今回は塩酸の製造方法がどのように変化してきたのか,見てみましょう.
硝酸合成法は色々と開発されてきましたが,波に乗ることが出来たのはアンモニアを酸化するオストワルト法です. オストワルト法はどのように誕生したのでしょうか?そもそもオストワルトはどんな人なのでしょう? ファント・ホッフ(左)とオストワルト(右)今回はオストワルト本人を主人公に,オストワルト法誕生の経緯と,そのしくみを見ていきましょう.
硝酸は高い酸化力をもつユニークな酸です. 硝酸にはどのような歴史があったのでしょうか? チリ硝石 By John Sobolewski (JSS) - http://www.mindat.org/photo-548175.html, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29139370硝酸塩である硝石や空気中の窒素から作られた硝酸製造法の歴史を見ていきましょう.
長い間使い道の少なかった発煙硫酸は,合成染料の登場により一気に品薄になりました. さらなる染料産業の発展のためには発煙硫酸の価格を安くする必要があります.そうして誕生したのが接触法です. アリザリン今回は染料産業の事情を通じて,接触法誕生の経緯としくみを見てみましょう.
18世紀,鉛室法の登場によって硫酸が大量に製造されるようになり,漂白など様々な用途に使われました. 鉛室法とはどんな方法なのでしょうか? 鉛室法19世紀の化学工業を語る上で外せない,鉛室法のしくみと歴史を見てみましょう.
硫酸をはじめとした酸は,錬金術において重要な役割をはたしてきました. その工業的製法も,はじめは錬金術で使われた手法から発展したものです. 《賢者の石を探す錬金術師》ジョセフ・ライト,1771年,油彩硫酸の製造方法の歴史について,まずは錬金術から見ていきましょう.
酸とはなんでしょう?酸っぱい物質でしょうか?それとも水素イオンを放出する物質でしょうか? 「酸とはなにか?」という疑問は化学者が長い間取り組んできた問題でもあります. 紫キャベツ抽出液の色変化 By Alessandro e Damiano - Own work, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64830970酸の定義の変遷については今後触れる機会があると思いますので,今回は酸の性質や指示薬,pHなど,ちょっと違った角度から酸の歴史を見ていきたいとおもいます.
アンモニアは肥料の原料だけでなく,火薬の原料としても重要でした.よく,ハーバーボッシュ法の発明によってドイツは戦争を決断したという話があります. 本当にそうでしょうか? 朝鮮窒素肥料 興南工場今回はドイツ,イタリア,日本を例にハーバーボッシュ法と戦争の関わりを見ていきましょう.
「空気からパンをつくる」とも称されたハーバー・ボッシュ法は,現在でも活躍しているアンモニア合成法です. いったいどのような経緯で誕生したのでしょうか? Fritz Haber (1868-1934, 左)とCarl Bosch (1874-1940, 右)今回はハーバー,ボッシュそれぞれの役割にフォーカスしてその経緯をみていきましょう.
刺激臭でお馴染みのアンモニアは,よくおしっこの臭いにも例えられますね.一方で,石灰窒素はあまり聞き馴染みがないと思います. アンモニアはどのように発見されたのでしょう?石灰窒素とはなんでしょうか? 石灰窒素工場 (1919, アメリカ)今回はアンモニアの発見や,肥料との関わり,そしてその合成法として登場した石灰窒素法をみてみましょう.
刺激臭のするアンモニアは,理科実験で特に印象に残る化合物でした. アンモニアにはどんな歴史があるのでしょう? ソグド人商人(8世紀)今回からは4回に分けて,アンモニアの歴史をみていきたいと思います.まずは,塩化アンモニウムからです.
水の電気分解は,水が水素と酸素から出来ていることを知ることができる,とても良い実験です. ところで電気分解はどのように発見されたのでしょう? 電解法による工場 (アメリカ)今回は電気分解の発見から塩素・アルカリ製造への応用に至る歴史を,しくみとともにみていきましょう.
樹木灰に含まれる炭酸カリウムは長らく炭酸ナトリウムと同一視されていましたが,やがて独立した物質だと判明しました. Staßfurtのカリウム塩工場 By Unbekannt. Recherche:Dr. Günter Pinzke - "HUNDERT JAHRE STASSFURTER SALZBERGBAU", Anhang zu der anläßlich der Hundertjahrfeier vom Kaliwerk Staßfurt am Tage des Bergmannes 1952 herausgegebenen Festschrift, Kaliwerk Staßfurt…
前回紹介したルブラン法は,やがてエルネスト・ソルベイが開発したアンモニアソーダ法,別名ソルベイ法(またはソルベー法)に取って代わられました. アンモニアソーダ法の工場 (New York, 1917)アンモニアソーダ法とはどのような製造法なのでしょうか? また,エルネストはその後研究所の設立や社会政策にも手を広げています.そこにはどのような思想があったのでしょうか? 今回はアンモニアソーダ法について,成立・普及の歴史としくみを見るとともに,その後のエルネストの活動の背景にあった思想についてもみてみましょう.
炭酸ナトリウムは様々な工業で必要とされ,やがて最初の工業製法であるルブラン法が開発されました. ルブラン法による炭酸ナトリウム製造炉(1890年)ルブラン法とは,どんな製造法なのでしょうか? 今回は,ルブラン法以前の英仏の取り組みや,ヨーロッパ情勢に翻弄されたルブランの人生,環境問題とイノベーション,そして環境と経済の狭間で苦悩したアルカリ監査官の胸の内などを,仕組みを踏まえてみていきましょう.
炭酸ナトリウムNa2CO3はソーダ灰とも呼ばれるアルカリ性の物質です.古くはアルカリとも呼ばれた重要な物質で,ナトリウム (Natrium) やその英語名sodiumの由来とも密接に関わっています. 炭酸ナトリウムはどのように活用されていたのでしょうか? エジプト第18王朝のガラスコップ (前1550-前1295頃) By Einsamer Schütze - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3160491今回は植物や鉱石から得られる炭酸ナトリウムについて,日常生活やガラス製造との関…
アセチレンを燃やした炎は,かなり高温で明るく輝くことが知られ,照明や溶接,分析技術などに幅広く使われました. アセチレン炎今回はアセチレンの用途を中心に,その歴史をみていきましょう.
C2H2で表されるアセチレンは,三重結合を持つ特徴的な物質です.なぜアセチレンという名前なのでしょうか?どんな経緯で発見されたのでしょうか? 今回は,アセチレン発見の歴史と,その命名の由来を見ていきましょう.
19世紀半ば,石炭ガスが普及したヨーロッパにおいて理科実験に欠かせない実験用ガスバーナーの原型が誕生しました. Needle valveつきのBunsenバーナー今回は実験用ガスバーナーの生みの親であるロベルト・ブンゼンを紹介しましょう.
石炭ガスの普及により都市ガスシステムが構築されました. 【参考】炎(11):ガス灯の普及 しかし当時の技術では,石炭の燃焼によって深刻な大気汚染が引き起こされてしまいました.そこで,よりクリーンなエネルギー源のひとつとして注目されたのが天然ガスです.今回は,天然ガス普及の歴史を見ていきましょう.
現在お馴染みの「都市ガス」という,ガスが都市内のいろんな場所に供給されるシステムが作られたのは,石炭ガスの普及がきっかけです. 【参考】炎(10):石炭ガスガス灯の利用が個人レベルからどのようにして都市レベルまで引き上げられたのでしょうか? まずは18世紀末フランスから見ていきましょう.
燃えるガスの本格的な利用は,石炭ガスと呼ばれるガスから始まりました.石炭ガスは,かつてガス灯としてヨーロッパで広く使われていました.現在ではすっかり廃れてしまいましたが,その普及は産業革命期を代表する重要な出来事でした. 石炭ガスにはどんな歴史があったのか?2回に分けてみていきましょう.
火をつけると燃える天然ガスの存在は古くから知られていました. Yanar Dag By Frokor - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19319161しかし実際にそれが何者であるか?どうやったらコントロールできるか?といった課題を解決するには長い年月がかかりました. 今回から4回に分けて,天然ガスや石炭ガスが利用されていった歴史をみていきましょう.まずは,燃えるガスの伝承と,炭化水素についてです.
現在のような固く,臭いのしないロウソクが安価に作られるようになるためには,様々な技術的革新が必要でした.そのためにはそもそも油脂とは何者なのか,明らかにされる必要がありました. 今回は化学と密接に結びついたロウソクの発展についてみていきましょう.
『ロウソクの科学』は,1860年にイギリスの科学者マイケルファラデーがロウソクを題材に,化学的な考え方を一般向けにレクチャーした内容をまとめた本です.現在でも,初学者が化学に慣れ親しむにはちょうど良い本として知られています.原題は"The Chemical History of a Candle"ですが,実際のところロウソクの歴史についてはあまり触れられていません.ひとつには,あの時代がまさにロウソクの歴史の渦中だったからです. そこで2回に分けて,ファラデーの語らなかったロウソクの歴史を深掘りしてみたいと思います.
クリーニング屋さんではどのような洗濯が行われているのでしょうか?意外と知らないドライクリーニングのしくみと歴史,そして最近出てきたウェットクリーニングについて紹介しました.
漂白は色を消して白くするというアプローチでしたが,逆に色をつけて白みを増す増白というアプローチもあります.中世の漂白屋から,ドイツで開発された蛍光増白剤に至る歴史を,しくみもあわせて解説しました.
最近使われるようになった酸素系漂白剤は,正体が意外と知られていないかもしれません.過酸化水素の発見から,その意外な製造法,そして過炭酸ナトリウムをはじめとする酸素系漂白剤開発の流れを解説しました.
塩素系漂白剤は,人類が漂白という現象を化学の力で支配下においた画期的な発明でした.定量分析にもつながった塩素漂白の歴史について,しくみもあわせて解説しました.
最近の洗濯用洗剤には酵素が含まれています.ドイツでの酵素利用からスイス,デンマーク,オランダ,そして日本での酵素入り洗剤の開発について,懐かしのCMも紹介しつつ解説しました.
洗剤のお助け成分であるビルダーとして,キレート剤も重要です.かつて使われていた縮合リン酸の歴史や,使われなくなっていった経緯を解説しました.
洗剤には古くからアルカリが使われ,現在でも界面活性剤の働きを助けるビルダーとして加えられています.古代メソポタミアで使われた炭酸カリウムや,エジプト・地中海の炭酸ナトリウム,近代に着目された水ガラスなど,洗剤に使われてきたアルカリについて解説しました.
合成洗剤はどのような経緯で誕生したのでしょう?第一次世界大戦中のドイツにはじまり,アメリカなどで開発されてきた陰イオン界面活性剤,柔軟剤として使われる陽イオン界面活性剤,そして台所用洗剤への応用といった歴史を解説しました.
石鹸はいつ生まれ,どのように社会と関わってきたのでしょうか?石鹸の製法を中心に,古代メソポタミアから19世紀アメリカに至る歴史や,日本で使われていた植物系の「洗剤」について解説しました.
衣服の汚れは洗濯で落とすことができます.洗濯で汚れが落ちる化学的なしくみについて,繊維の性質や汚れの正体,洗剤の役割について解説しました.
水はどこまできれいにできるのでしょうか? 工業用途では超純水と呼ばれる,不純物がほぼゼロの究極の水,超純水を使用することがあります. 今回は連続イオン交換など超純水製造のしくみをみながら,ボイラー,半導体産業の発展とともに究極の水を追い求めてきた歴史を解説しました.
水道水中のフッ素は,多すぎると歯や骨のフッ素症を引き起こしてしまいますが,適切な濃度であれば虫歯を防ぐことができます.今回はフッ素を水道水に加えるフロリデーションという技術について,その開発の経緯や仕組みを解説しました.
かつて水道管は腐食されやすい金属でできていたため,腐食が大きな問題となりました.腐食は意外と奥が深く,微生物が関わるものもあります.今回は腐食,不動態,防食の化学的しくみについて解説しました.
水中に含まれる金属イオンなどの無機物は,公害病の原因ともなり社会問題化しました.今回は化学反応やイオン交換により無機物を除去するしくみについて解説しました.
硬水を軟水に変化させる方法はヨーロッパを中心に発展してきました.Lime-soda ash法からゼオライト,樹脂によるイオン交換にいたる歴史について,しくみも含めて解説しました.
軟水と硬水の違いは,味だけでなく調理や洗浄に大きく影響します.ヨーロッパで発展した,化学反応により硬水を軟水に変えるLime-soda ash法のしくみについて詳しい計算方法を含め解説しました.
活性炭や微生物の力を借りると,原水中の有機物などを効率的に除去することができます.今回は毒ガス戦で活躍した活性炭や,第二次産業革命期に発展した微生物による浄水の化学と歴史を解説しました.
炭酸飲料をふると泡が勢いよく出てきますよね.それと同じ原理で原水中のガスを追い出すことができます.今回は背景原理となるヘンリーの法則を中心に,エアレーションの化学としくみを解説しました.
塩素消毒にはアンモニアを併用する方法もあります.一体なぜでしょうか?他にもオゾンや紫外線による消毒方法があります.それぞれどのようなしくみなのか,どのような歴史を辿ってきたのか見ていきましょう.
水の消毒方法って実はいろんな方法があるんです.砂ろ過,塩素による消毒技術のしくみと,それらによりコレラやチフスといった病原性微生物と戦ってきた歴史を解説しました.
ろ過は粒子をただ取り除いて水をきれいにするだけでなく,病原菌を取り除くことによる消毒も可能です.古代ローマからフランスのフィルター開発,イギリスの緩速砂ろ過,アメリカの急速砂ろ過といったろ過技術の歴史をまとめました.
古代から,人々は水のにごりをとるために木の実やミョウバンなどを入れてみたりしていました.実はこのにごりとりの背景にはコロイド粒子の凝集という現象があります.古代インドの浄水の宝石から日本の技術者の発明にいたる歴史としくみを解説しました.
ヘリウムガスで声が変になるドナルドダック効果(ヘリウム・スピーチ)がアメリカ海軍の研究で発見されたのは知っていましたか?潜水鐘,ケーソン,潜水服といった潜水の歴史(減圧症・窒素酔い)とともにヘリウムが潜水で使われるようになり,変になった声を元に戻す装置が開発されていった歴史を解説しました.
ヘリウムガス中で声が変になるのはなぜでしょうか?また,楽器によっては音が高くならないのはなぜでしょうか?楽器の音や人の声のしくみを物理的に考え,ヘリウムガスによって音が変化するしくみを解説しました.
なぜヘリウムガスが風船に使われるようになったのでしょう?気球・飛行船・風船の歴史と一緒にヘリウムガス製造の歴史を概観しながら,水素ガスから徐々にヘリウムガスに切り替えられていった経緯を解説しました.
化学反応はドライケミカルやウェットケミカルとして消火に積極的に活用されてきました.ドライケミカルについては19世紀イギリスでの発明から,様々な消化薬剤が開発された歴史を,ウェットケミカルについては調理油の変遷と消火方法の変化を解説しました.
泡で火を消す消火剤があるのは知っていましたか?中にはタンパク質が使われているものもあるんです.石油系火災など厄介な火災で活躍する泡消火薬剤の化学的なしくみと,アゼルバイジャンの教師による発明にはじまる開発の歴史を解説しました.
火災の消火に活躍していたハロンという物質をご存知でしょうか?ハロンによる消火のしくみと,それがどのように使われてきたのか,またオゾン層破壊や地球温暖化のため製造が中止されていった歴史を解説しました.
二酸化炭素による消火設備は1910年代からヨーロッパで普及しはじめました.二酸化炭素による消火のしくみと,炭酸泉の飲泉ブームから二酸化炭素の発見・利用の歴史を幅広く解説しました.
水による消火装置といえば,スプリンクラーです.火事の際に自動で散水するスプリンクラーがどのように開発されてきたのか,18世紀から現代に至るスプリンクラーの歴史を解説しました.
火事になったとき,火を消す手段としてまず思い浮かぶのは「水」です.なぜ水をかけると火は消えるのでしょうか?どんな火災にも水を使っていいのでしょうか?最新のウォーターミストもふくめて水による消火のしくみを化学的に解説しました.
リンの発見からマッチへの応用,そして安全なマッチの開発に至る歴史を,しくみも含め解説しました.はじめ使われていた白リンは毒性が強かったため,社会問題にも発展してしまいました.しかし開発者たちはあきらめず,やがて現在の手軽で安全なマッチの誕生につながりました.
マッチの発明以前,どんな点火方法が使われていたのか?デーベライナーランプなどの忘れられた点火器具からマッチ誕生に至るまでの歴史を化学的なしくみとともに解説しました.
マッチのしくみって知ってますか?リンとKClO3の酸化還元反応が中心ですが,反応を調節するため他にもいろんな物質が使われています.今回はマッチの教科書を発見しましたので,そちらをベースに,軸木の防炎剤も含めて解説しました.
黒色火薬の重要な原料である硫黄の歴史について,中国を中心に形成された「硫黄の道」,科学技術の発展でシチリアなどのヨーロッパ諸国を振り回した「硫黄の時代」などをまとめました.
黒色火薬の重要な原料である「硝石」について,ヨーロッパ諸国が苦労した硝石製造の歴史や,チリ硝石により繁栄し,そして衰退したペルーの軌跡をまとめました.
黒色火薬とともにはじまった花火の歴史について,中国での黒色火薬の発明,ルッジェーリ家やベルトレらによるヨーロッパでの花火技術の発展を中心にまとめました.
蛇玉(蛇花火)の謎の多い仕組みについて、その200年にわたる歴史を軸に解説しました。砂糖やp-ニトロアニリンと硫酸を使った"蛇"反応についても紹介しています。
映画の演出やカラースモーク,昼花火にも使われる,色のついた煙を発生させる仕組みを解説しました.色煙においては,色素の分解を防ぐための工夫が重要となります.
花火がドーーン!!と開く音、クラッカーの音、パチパチする音、など火薬で作られるいろんな音の仕組みを解説しました。
花火が打ち上がる時の「ヒューーー!」という笛音、意外と原理は複雑なんです。その音の発生のしくみとして、振動燃焼をもとにしたモデルを解説しました。
花火大会では,点滅する光り方をする変わった花火もよくみられます. 一体どのようなしくみなのでしょうか? 点滅花火のしくみは,ここ100年ほど科学者を悩ませています. まだ決定的なモデルはできていませんが,有力かな?と思われる説を紹介したいと思います.
花火では,炎色反応の光のほかにも様々な光が活用されています. 例えば江戸時代の花火である和火は,ロウソクの火と同じように黒体放射でオレンジ色に輝きます. 炎(3):ロウソクの炎の色 噴出花火や手持ちスパークラーでは金属粉末の燃焼時にみられる白色光が利用されています. 炎色反応の原理(3):Mgの白色光? 今回は,金属粉末を活用したフラッシュ,スパークなどの光をみていきましょう.
線香花火は燃え方がだんだん変わる,不思議な花火です. 燃え方にはそれぞれ名前がついています.火をつけるとやがてオレンジ色の火球ができ(蕾),やがて火花が飛び出し(牡丹),多くの火花が四方八方に飛び出します(松葉). やがて火花の勢いは衰えだんだんと消えていきます(散り菊). 線香花火の開発は,江戸時代の寛文年間(1661-1673年)にさかのぼります. 以来,日本では夏の風物詩として広く親しまれてきました. 線香花火のしくみについては,日本では寺田寅彦(1878-1935),ヨーロッパではAugust Wilhelm von Hofmann(1818-1892)らを魅了してきました. 現在でも…
前回は花火の燃焼についてみてきました.omizu-water.hatenablog.com 花火といったらやはり,あのカラフルな色火です. 明治時代初期に西洋から伝来した新しい花火(洋火)は,高温で燃焼し金属の炎色反応による紅・青・緑の鮮やかな色火が美しい衝撃的なものでした*1. 日本で製造されるようになるのは明治12年頃だったようです. ところで,色火が炎色反応によるものは知っていても,実際に何が配合されているかを知っている方は少ないのではないでしょうか? 今回は色火のしくみについて,みていきます. 炎色反応の記事を先に見ていただくと,わかりやすいかもしれません. 炎色反応(1)(2)(3)…
高校生のとき,「花火の色は,炎色反応で説明できるんだよ」と先生から言われた記憶があります.その当時,自分は「へ~,そうなんだ」と思ってそれ以上調べることはありませんでした. 今になって調べてみると意外と奥が深かったので,数回にわたって花火についてまとめてみようと思います. 今回はまず,花火の燃焼について,しくみをみていきたいと思います. 花火のしくみ(1):花火の燃焼 花火のしくみ(2):花火の色 花火のしくみ(3):線香花火
Mgは炎色反応は「なし」と覚えます. 一方でMg粉末やマグネシウムリボンは燃えるときに強い白色光を発することも学びます. なぜMgは炎中で白色光を発するのでしょうか? 炎色反応とは違うのでしょうか? 今回は,他の炎色反応とは一味違った,Mgの白色光の原理をみていきます. 炎色反応の原理(1):アルカリ金属 炎色反応の原理(2):アルカリ土類金属,銅 炎色反応の原理(3):マグネシウムの白色光?
前回はガスバーナーの青い炎についてみてきました. omizu-water.hatenablog.com 一方で,ロウソクの炎はオレンジ色です.今回は,ロウソクの炎のしくみをみていきます. 炎(1): 炎の温度の計算? 炎(2): ガスバーナーの炎の色 炎(3): ロウソクの炎の色
これまでに炎色反応の解説をしてきましたが,そもそも炎にも色がついています.ロウソクの炎はオレンジ色で,ガスバーナーの炎は青色です。なぜでしょうか? 今回は,ガスバーナーの炎が青くなるしくみについて,みていきます. 炎(1): 炎の温度の計算? 炎(2): ガスバーナーの炎の色 炎(3): ロウソクの炎の色
プロパンガスガスバーナーの炎は最高で1925℃に達することを以前紹介しました. 一方で,アセチレンを用いると炎の温度は2300℃に達します. 空気の代わりに酸素ガスを用いるとアセチレン炎の温度は3100℃にまで上昇します.なぜこのような違いがでるのでしょうか? 今回は炎の温度の計算方法について,みていきます. 炎(1): 炎の温度の計算? 炎(2): ガスバーナーの炎の色 炎(3): ロウソクの炎の色
前回の記事で炎色反応の原理について解説しました. omizu-water.hatenablog.com 今回はMg以外のアルカリ土類金属(Ba, Ca, Sr)や銅についてみていきましょう*1. 炎色反応の原理(1):アルカリ金属 炎色反応の原理(2):アルカリ土類金属,銅 炎色反応の原理(3):マグネシウムの白色光? *1:2022/1/14 高校化学でMgがアルカリ土類金属に分類されていることを知らなかったので追記しました
炎の中に特定の物質をいれると,鮮やかな色の炎が出現する. そんな炎色反応の実験は,理科の実験でひときわワクワクする実験でした.アルカリ金属が発する色についてはリアカー無きK村(Li赤 Na黄 K紫)などと語呂合わせして覚えました. 一方,炎色反応の原理についてはあまり詳しいことは習った記憶がありません. 大学に入ると,一応アルカリ金属(Li,Na,Kなど)の炎色反応の原理については電子軌道を用いて学びます. しかしアルカリ土類金属やCuについてはほとんど扱われません. なぜでしょうか? 炎色反応の原理について調べてみたところ,思わぬ沼が広がっていたのでここに書き留めておきます. まずは,炎色反…
「再結晶をさあやってみるぞ」となったとき,「どのくらいの水に溶かそう?」という問題にぶつかります. 特に得られる結晶が水和物の場合は,計算がたいへんです. 私自身,この手の計算は苦手だった記憶があります. ところで高校物理では公式を覚え,そこに実際の数値を代入します. 再結晶の収量も,同じように公式は作れないでしょうか? それではやってみましょう. 再結晶(1):再結晶できれいな結晶を得るには? 再結晶(2):再結晶の収量の公式?
みなさんは再結晶の実験をしたことがありますでしょうか? 自分は正直うろ覚えなのですが,小学校で「ミョウバン水溶液から大きくきれいな結晶を得よう!」みたいな実験をしていた記憶があります. 頑張れば結構大きな結晶が得られるらしいので,夏休みの自由研究では親子で再結晶に情熱を燃やしました!なんて方もいるかもしれません. どうやら「大きな結晶」を得るには「ゆっくり冷やす」と良いという話は習った記憶があるのですが,「きれいな結晶」を得るにはどうしたらよいか?という話はどうも聞いた記憶がありません. そこで気になって大学の教科書を引っ張り出して調べてみたところ,意外と奥が深かったのでこちらにまとめてみよう…
はじめまして.
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このたび,化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文「明治期の訳語選定事業における「翻訳の文化」 ―bondの訳語「価標」を例に―」が掲載されました! 今回は別刷りを頼んでみました.一言で言えば,「化学用語の訳語を統一する過程では,翻訳に関するいろんな考え方が戦っていたよ」という点について,bondの訳語「価標」に注目してみた論文です. 今回はその論文のご紹介です.
「酸をH+を供与するもの,塩基はH+を受容するもの」という定義は,1923年にブレンステッドとローリーが独立に発表しています. 彼らは,なぜそのような定義をしたのでしょうか? ブレンステッド(左,Johannes Nicolaus Brønsted, 1879-1947)とローリー(右,Thomas Martin Lowry, 1874-1936)今回は私の論文をもとに,ブレンステッドとローリー,それぞれについて酸塩基の定義を思いつくに至った経緯を探っていきましょう. 【参考】論文発表のお知らせ:ブレンステッドからミカエリスへ
「酸をH+を供与するもの,塩基はH+を受容するもの」という定義は,ブレンステッドによる定義として習います.しかしブレンステッドははっきりと,H+に注目した酸塩基の定義は生化学者ミカエリスによるものだと明記しています. ミカエリスの酸塩基理論とは,一体どういったものだったのでしょうか? Leonor Michaelis (1875-1949)今回は私の発表した論文をもとに,ミカエリスの半生とともに,その酸塩基理論の正体を探っていきましょう. 【参考】論文発表のお知らせ:ブレンステッドからミカエリスへ
「酸とは水溶液中でH+イオンを与えるもので,塩基は水溶液中でOH-イオンを与えるものである.」という定義は,アレニウスの定義として習うものです. この定義は,本当にアレニウスが提唱したものでしょうか?実は彼は生涯にわたって明確に酸塩基の定義をしたことはありません. Svante Arrhenius (1859-1927) 今回はアレニウスの業績を確認しつつ,アレニウスの定義と呼ばれるようになった経緯を探っていきましょう.
化学の教科書を読んでいて,「そういえばこの用語ってどんな経緯で生まれたんだろう?」とか,「この表記法って昔からこうだったのかな?」とか思ったことはありませんか? 実は2024年1月から,こうした疑問に対して化学史の側面から調査するワーキンググループ,「日本版Ask the Historian」を立ち上げ,活動を始めています. 今回はその内容について,ちょっとだけご紹介します.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版されました!化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon本記事では世界初の記載も含む,本の内容を紹介します.追加の無料ダウンロードコンテンツもあります.
このたび,ついに化学史好きが高じて化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文が掲載されました! 論文です!一言で言えば,「ブレンステッドの定義は彼のオリジナルではなくて,生化学者ミカエリスが考えたものだよ」という論文です. 今回はその論文のご紹介です.
沈殿反応は見た目にはっきりと変化があらわれるので,滴定にも用いられてきました. 沈殿滴定はどのように誕生したのでしょうか?また,沈殿滴定にも指示薬はあるのでしょうか?今回は水質調査,硝石産業,貨幣鋳造,ハーブウォーターなどを題材に,沈殿滴定の歴史をみていきましょう.
過マンガン酸カリウム溶液やヨウ素溶液のように色がはっきり変化する場合は良いですが,色が変化しない酸化還元反応はどうすれば良いでしょうか?今回は酸化還元滴定の幅を広げた,酸化還元指示薬の歴史をみてみましょう.
過マンガン酸カリウムを用いる滴定,過マンガン酸塩滴定は色がはっきり変化するので化学実験でもよく取り上げられます. 過マンガン酸塩滴定はどのように誕生したのでしょうか? 今回は鉄工業や硝石産業,水質調査と関わりの深い過マンガン酸塩滴定の歴史をみていきましょう.
ヨウ素滴定には大抵の場合,チオ硫酸ナトリウムが相棒として登場します. チオ硫酸ナトリウムを使うようになったのはなぜでしょうか? ダゲレオタイプのカメラ今回は写真撮影や水質調査を題材に,チオ硫酸ナトリウムとヨウ素滴定の歴史をみていきましょう.
ヨウ素の酸化還元反応を用いた滴定を,ヨウ素滴定と呼びます.ヨウ素はデンプンとの反応ではっきり検出できるのが特徴です. ヨウ素デンプン反応を用いたヨウ素滴定はどのように成立したのでしょうか? 海草の収穫(北フランス) By Guy Courtois - Self-photographed, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6419590 今回は硝石産業や温泉と関わりの深い,ヨウ素やヨウ素デンプン反応の発見,そして滴定への応用の歴史をみてみましょう.
中和滴定と並び,代表的な滴定方法が酸化還元滴定です.反応式を組み立てるのに苦労された方も多いと思います. 酸化還元滴定はどのように発明されたのでしょうか? 今回は酸化還元反応の歴史を踏まえつつ,酸化還元滴定開発の様子をみてみましょう.
pHを測定するには,pHメーターを用いるのがお手軽です. pHメーターはどのように開発されたのでしょうか? Beckman M型 pHメーター (1937) 今回はpHメーターをめぐる物語を紹介します.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版することになりました!発売日は2024年3月16日からで,予約はこちらから可能です. 【電子書籍版】 化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon【ペーパーバック版】 kagaku-netacho.booth.pm本記事では,どんな本になるのか,その一部を公開します.
滴定を行う上では,中和反応がどこまで進行したかをモニターし続けることが大事です. 有名なのは紫キャベツの煮汁やリトマス試験紙の色変化ですが,他にはどんな方法が活用されてきたのでしょうか?今回はpHメーター開発以前のモニター方法について,原理とともに見ていきましょう.
化学工業が発展した18世紀以降,酸やアルカリの量を知ることは原材料の品質を調べるうえで非常に重要でした.中でも中和反応を利用する中和滴定は未熟練者でも使える画期的な方法でした. 理科実験でお馴染みの中和滴定は,どのように誕生したのでしょうか? By UCL - Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45263025今回は水質調査や硝石産業などと関わりに深い中和滴定の成立過程の歴史を見てみましょう.
フッ化水素酸はガラスを溶かすことのできる酸として非常に有名です. フッ化水素酸はどのように発見されたのでしょうか? パリ万博(1867年)で優勝した,酸エッチングを活用したガラス作品 By Andre Carrotflower - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116226404今回はフッ化水素酸の危険と向き合い,これを利用してきた化学の歴史を見てみましょう.
リン酸は昔,骨から作られていました. 一体どのような方法だったのでしょうか?今はどのように製造されているのでしょうか? 1870年頃の骨灰工場 "Les merveilles de l’industrie, ou Description des principales industries modernes, vol. 3" p.537今回はリン酸製造法について,リン酸活用法の歴史とともに見ていきましょう.
塩酸はかつて「海の酸」とも呼ばれました. なぜそのように呼ばれたのでしょうか? 13世紀頃から行われているアドリア海での製塩 (スロベニア)今回は塩酸の製造方法がどのように変化してきたのか,見てみましょう.
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滴定を行う上では,中和反応がどこまで進行したかをモニターし続けることが大事です. 有名なのは紫キャベツの煮汁やリトマス試験紙の色変化ですが,他にはどんな方法が活用されてきたのでしょうか?今回はpHメーター開発以前のモニター方法について,原理とともに見ていきましょう.
化学工業が発展した18世紀以降,酸やアルカリの量を知ることは原材料の品質を調べるうえで非常に重要でした.中でも中和反応を利用する中和滴定は未熟練者でも使える画期的な方法でした. 理科実験でお馴染みの中和滴定は,どのように誕生したのでしょうか? By UCL - Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45263025今回は水質調査や硝石産業などと関わりに深い中和滴定の成立過程の歴史を見てみましょう.
フッ化水素酸はガラスを溶かすことのできる酸として非常に有名です. フッ化水素酸はどのように発見されたのでしょうか? パリ万博(1867年)で優勝した,酸エッチングを活用したガラス作品 By Andre Carrotflower - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116226404今回はフッ化水素酸の危険と向き合い,これを利用してきた化学の歴史を見てみましょう.
リン酸は昔,骨から作られていました. 一体どのような方法だったのでしょうか?今はどのように製造されているのでしょうか? 1870年頃の骨灰工場 "Les merveilles de l’industrie, ou Description des principales industries modernes, vol. 3" p.537今回はリン酸製造法について,リン酸活用法の歴史とともに見ていきましょう.
塩酸はかつて「海の酸」とも呼ばれました. なぜそのように呼ばれたのでしょうか? 13世紀頃から行われているアドリア海での製塩 (スロベニア)今回は塩酸の製造方法がどのように変化してきたのか,見てみましょう.
硝酸合成法は色々と開発されてきましたが,波に乗ることが出来たのはアンモニアを酸化するオストワルト法です. オストワルト法はどのように誕生したのでしょうか?そもそもオストワルトはどんな人なのでしょう? ファント・ホッフ(左)とオストワルト(右)今回はオストワルト本人を主人公に,オストワルト法誕生の経緯と,そのしくみを見ていきましょう.
硝酸は高い酸化力をもつユニークな酸です. 硝酸にはどのような歴史があったのでしょうか? チリ硝石 By John Sobolewski (JSS) - http://www.mindat.org/photo-548175.html, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29139370硝酸塩である硝石や空気中の窒素から作られた硝酸製造法の歴史を見ていきましょう.
長い間使い道の少なかった発煙硫酸は,合成染料の登場により一気に品薄になりました. さらなる染料産業の発展のためには発煙硫酸の価格を安くする必要があります.そうして誕生したのが接触法です. アリザリン今回は染料産業の事情を通じて,接触法誕生の経緯としくみを見てみましょう.
18世紀,鉛室法の登場によって硫酸が大量に製造されるようになり,漂白など様々な用途に使われました. 鉛室法とはどんな方法なのでしょうか? 鉛室法19世紀の化学工業を語る上で外せない,鉛室法のしくみと歴史を見てみましょう.
硫酸をはじめとした酸は,錬金術において重要な役割をはたしてきました. その工業的製法も,はじめは錬金術で使われた手法から発展したものです. 《賢者の石を探す錬金術師》ジョセフ・ライト,1771年,油彩硫酸の製造方法の歴史について,まずは錬金術から見ていきましょう.
酸とはなんでしょう?酸っぱい物質でしょうか?それとも水素イオンを放出する物質でしょうか? 「酸とはなにか?」という疑問は化学者が長い間取り組んできた問題でもあります. 紫キャベツ抽出液の色変化 By Alessandro e Damiano - Own work, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64830970酸の定義の変遷については今後触れる機会があると思いますので,今回は酸の性質や指示薬,pHなど,ちょっと違った角度から酸の歴史を見ていきたいとおもいます.
アンモニアは肥料の原料だけでなく,火薬の原料としても重要でした.よく,ハーバーボッシュ法の発明によってドイツは戦争を決断したという話があります. 本当にそうでしょうか? 朝鮮窒素肥料 興南工場今回はドイツ,イタリア,日本を例にハーバーボッシュ法と戦争の関わりを見ていきましょう.
「空気からパンをつくる」とも称されたハーバー・ボッシュ法は,現在でも活躍しているアンモニア合成法です. いったいどのような経緯で誕生したのでしょうか? Fritz Haber (1868-1934, 左)とCarl Bosch (1874-1940, 右)今回はハーバー,ボッシュそれぞれの役割にフォーカスしてその経緯をみていきましょう.
刺激臭でお馴染みのアンモニアは,よくおしっこの臭いにも例えられますね.一方で,石灰窒素はあまり聞き馴染みがないと思います. アンモニアはどのように発見されたのでしょう?石灰窒素とはなんでしょうか? 石灰窒素工場 (1919, アメリカ)今回はアンモニアの発見や,肥料との関わり,そしてその合成法として登場した石灰窒素法をみてみましょう.
刺激臭のするアンモニアは,理科実験で特に印象に残る化合物でした. アンモニアにはどんな歴史があるのでしょう? ソグド人商人(8世紀)今回からは4回に分けて,アンモニアの歴史をみていきたいと思います.まずは,塩化アンモニウムからです.
水の電気分解は,水が水素と酸素から出来ていることを知ることができる,とても良い実験です. ところで電気分解はどのように発見されたのでしょう? 電解法による工場 (アメリカ)今回は電気分解の発見から塩素・アルカリ製造への応用に至る歴史を,しくみとともにみていきましょう.
樹木灰に含まれる炭酸カリウムは長らく炭酸ナトリウムと同一視されていましたが,やがて独立した物質だと判明しました. Staßfurtのカリウム塩工場 By Unbekannt. Recherche:Dr. Günter Pinzke - "HUNDERT JAHRE STASSFURTER SALZBERGBAU", Anhang zu der anläßlich der Hundertjahrfeier vom Kaliwerk Staßfurt am Tage des Bergmannes 1952 herausgegebenen Festschrift, Kaliwerk Staßfurt…
前回紹介したルブラン法は,やがてエルネスト・ソルベイが開発したアンモニアソーダ法,別名ソルベイ法(またはソルベー法)に取って代わられました. アンモニアソーダ法の工場 (New York, 1917)アンモニアソーダ法とはどのような製造法なのでしょうか? また,エルネストはその後研究所の設立や社会政策にも手を広げています.そこにはどのような思想があったのでしょうか? 今回はアンモニアソーダ法について,成立・普及の歴史としくみを見るとともに,その後のエルネストの活動の背景にあった思想についてもみてみましょう.