このたび,化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文「明治期の訳語選定事業における「翻訳の文化」 ―bondの訳語「価標」を例に―」が掲載されました! 今回は別刷りを頼んでみました.一言で言えば,「化学用語の訳語を統一する過程では,翻訳に関するいろんな考え方が戦っていたよ」という点について,bondの訳語「価標」に注目してみた論文です. 今回はその論文のご紹介です.
身近にひそむ化学と歴史を,高校までの知識をベースに解説します. 化学は「身近な現象」を「分子レベルで」説明してくれます.本ブログでは高校までの知識をベースに,歴史的背景も含めて誰かに話したくなるような身近な化学ネタを紹介していきます.
ヨウ素の酸化還元反応を用いた滴定を,ヨウ素滴定と呼びます.ヨウ素はデンプンとの反応ではっきり検出できるのが特徴です. ヨウ素デンプン反応を用いたヨウ素滴定はどのように成立したのでしょうか? 海草の収穫(北フランス) By Guy Courtois - Self-photographed, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6419590 今回は硝石産業や温泉と関わりの深い,ヨウ素やヨウ素デンプン反応の発見,そして滴定への応用の歴史をみてみましょう.
中和滴定と並び,代表的な滴定方法が酸化還元滴定です.反応式を組み立てるのに苦労された方も多いと思います. 酸化還元滴定はどのように発明されたのでしょうか? 今回は酸化還元反応の歴史を踏まえつつ,酸化還元滴定開発の様子をみてみましょう.
pHを測定するには,pHメーターを用いるのがお手軽です. pHメーターはどのように開発されたのでしょうか? Beckman M型 pHメーター (1937) 今回はpHメーターをめぐる物語を紹介します.
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このたび,化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文「明治期の訳語選定事業における「翻訳の文化」 ―bondの訳語「価標」を例に―」が掲載されました! 今回は別刷りを頼んでみました.一言で言えば,「化学用語の訳語を統一する過程では,翻訳に関するいろんな考え方が戦っていたよ」という点について,bondの訳語「価標」に注目してみた論文です. 今回はその論文のご紹介です.
「酸をH+を供与するもの,塩基はH+を受容するもの」という定義は,1923年にブレンステッドとローリーが独立に発表しています. 彼らは,なぜそのような定義をしたのでしょうか? ブレンステッド(左,Johannes Nicolaus Brønsted, 1879-1947)とローリー(右,Thomas Martin Lowry, 1874-1936)今回は私の論文をもとに,ブレンステッドとローリー,それぞれについて酸塩基の定義を思いつくに至った経緯を探っていきましょう. 【参考】論文発表のお知らせ:ブレンステッドからミカエリスへ
「酸をH+を供与するもの,塩基はH+を受容するもの」という定義は,ブレンステッドによる定義として習います.しかしブレンステッドははっきりと,H+に注目した酸塩基の定義は生化学者ミカエリスによるものだと明記しています. ミカエリスの酸塩基理論とは,一体どういったものだったのでしょうか? Leonor Michaelis (1875-1949)今回は私の発表した論文をもとに,ミカエリスの半生とともに,その酸塩基理論の正体を探っていきましょう. 【参考】論文発表のお知らせ:ブレンステッドからミカエリスへ
「酸とは水溶液中でH+イオンを与えるもので,塩基は水溶液中でOH-イオンを与えるものである.」という定義は,アレニウスの定義として習うものです. この定義は,本当にアレニウスが提唱したものでしょうか?実は彼は生涯にわたって明確に酸塩基の定義をしたことはありません. Svante Arrhenius (1859-1927) 今回はアレニウスの業績を確認しつつ,アレニウスの定義と呼ばれるようになった経緯を探っていきましょう.
化学の教科書を読んでいて,「そういえばこの用語ってどんな経緯で生まれたんだろう?」とか,「この表記法って昔からこうだったのかな?」とか思ったことはありませんか? 実は2024年1月から,こうした疑問に対して化学史の側面から調査するワーキンググループ,「日本版Ask the Historian」を立ち上げ,活動を始めています. 今回はその内容について,ちょっとだけご紹介します.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版されました!化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon本記事では世界初の記載も含む,本の内容を紹介します.追加の無料ダウンロードコンテンツもあります.
このたび,ついに化学史好きが高じて化学史学会の学会誌『化学史研究』に私の論文が掲載されました! 論文です!一言で言えば,「ブレンステッドの定義は彼のオリジナルではなくて,生化学者ミカエリスが考えたものだよ」という論文です. 今回はその論文のご紹介です.
沈殿反応は見た目にはっきりと変化があらわれるので,滴定にも用いられてきました. 沈殿滴定はどのように誕生したのでしょうか?また,沈殿滴定にも指示薬はあるのでしょうか?今回は水質調査,硝石産業,貨幣鋳造,ハーブウォーターなどを題材に,沈殿滴定の歴史をみていきましょう.
過マンガン酸カリウム溶液やヨウ素溶液のように色がはっきり変化する場合は良いですが,色が変化しない酸化還元反応はどうすれば良いでしょうか?今回は酸化還元滴定の幅を広げた,酸化還元指示薬の歴史をみてみましょう.
過マンガン酸カリウムを用いる滴定,過マンガン酸塩滴定は色がはっきり変化するので化学実験でもよく取り上げられます. 過マンガン酸塩滴定はどのように誕生したのでしょうか? 今回は鉄工業や硝石産業,水質調査と関わりの深い過マンガン酸塩滴定の歴史をみていきましょう.
ヨウ素滴定には大抵の場合,チオ硫酸ナトリウムが相棒として登場します. チオ硫酸ナトリウムを使うようになったのはなぜでしょうか? ダゲレオタイプのカメラ今回は写真撮影や水質調査を題材に,チオ硫酸ナトリウムとヨウ素滴定の歴史をみていきましょう.
ヨウ素の酸化還元反応を用いた滴定を,ヨウ素滴定と呼びます.ヨウ素はデンプンとの反応ではっきり検出できるのが特徴です. ヨウ素デンプン反応を用いたヨウ素滴定はどのように成立したのでしょうか? 海草の収穫(北フランス) By Guy Courtois - Self-photographed, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6419590 今回は硝石産業や温泉と関わりの深い,ヨウ素やヨウ素デンプン反応の発見,そして滴定への応用の歴史をみてみましょう.
中和滴定と並び,代表的な滴定方法が酸化還元滴定です.反応式を組み立てるのに苦労された方も多いと思います. 酸化還元滴定はどのように発明されたのでしょうか? 今回は酸化還元反応の歴史を踏まえつつ,酸化還元滴定開発の様子をみてみましょう.
pHを測定するには,pHメーターを用いるのがお手軽です. pHメーターはどのように開発されたのでしょうか? Beckman M型 pHメーター (1937) 今回はpHメーターをめぐる物語を紹介します.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版することになりました!発売日は2024年3月16日からで,予約はこちらから可能です. 【電子書籍版】 化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon【ペーパーバック版】 kagaku-netacho.booth.pm本記事では,どんな本になるのか,その一部を公開します.
滴定を行う上では,中和反応がどこまで進行したかをモニターし続けることが大事です. 有名なのは紫キャベツの煮汁やリトマス試験紙の色変化ですが,他にはどんな方法が活用されてきたのでしょうか?今回はpHメーター開発以前のモニター方法について,原理とともに見ていきましょう.
化学工業が発展した18世紀以降,酸やアルカリの量を知ることは原材料の品質を調べるうえで非常に重要でした.中でも中和反応を利用する中和滴定は未熟練者でも使える画期的な方法でした. 理科実験でお馴染みの中和滴定は,どのように誕生したのでしょうか? By UCL - Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45263025今回は水質調査や硝石産業などと関わりに深い中和滴定の成立過程の歴史を見てみましょう.
フッ化水素酸はガラスを溶かすことのできる酸として非常に有名です. フッ化水素酸はどのように発見されたのでしょうか? パリ万博(1867年)で優勝した,酸エッチングを活用したガラス作品 By Andre Carrotflower - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116226404今回はフッ化水素酸の危険と向き合い,これを利用してきた化学の歴史を見てみましょう.
リン酸は昔,骨から作られていました. 一体どのような方法だったのでしょうか?今はどのように製造されているのでしょうか? 1870年頃の骨灰工場 "Les merveilles de l’industrie, ou Description des principales industries modernes, vol. 3" p.537今回はリン酸製造法について,リン酸活用法の歴史とともに見ていきましょう.
塩酸はかつて「海の酸」とも呼ばれました. なぜそのように呼ばれたのでしょうか? 13世紀頃から行われているアドリア海での製塩 (スロベニア)今回は塩酸の製造方法がどのように変化してきたのか,見てみましょう.
この度,当ブログの記事をもとに加筆修正し,本を出版することになりました!発売日は2024年3月16日からで,予約はこちらから可能です. 【電子書籍版】 化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ作者:遠藤 瑞己Amazon【ペーパーバック版】 kagaku-netacho.booth.pm本記事では,どんな本になるのか,その一部を公開します.
滴定を行う上では,中和反応がどこまで進行したかをモニターし続けることが大事です. 有名なのは紫キャベツの煮汁やリトマス試験紙の色変化ですが,他にはどんな方法が活用されてきたのでしょうか?今回はpHメーター開発以前のモニター方法について,原理とともに見ていきましょう.
化学工業が発展した18世紀以降,酸やアルカリの量を知ることは原材料の品質を調べるうえで非常に重要でした.中でも中和反応を利用する中和滴定は未熟練者でも使える画期的な方法でした. 理科実験でお馴染みの中和滴定は,どのように誕生したのでしょうか? By UCL - Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45263025今回は水質調査や硝石産業などと関わりに深い中和滴定の成立過程の歴史を見てみましょう.
フッ化水素酸はガラスを溶かすことのできる酸として非常に有名です. フッ化水素酸はどのように発見されたのでしょうか? パリ万博(1867年)で優勝した,酸エッチングを活用したガラス作品 By Andre Carrotflower - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116226404今回はフッ化水素酸の危険と向き合い,これを利用してきた化学の歴史を見てみましょう.
リン酸は昔,骨から作られていました. 一体どのような方法だったのでしょうか?今はどのように製造されているのでしょうか? 1870年頃の骨灰工場 "Les merveilles de l’industrie, ou Description des principales industries modernes, vol. 3" p.537今回はリン酸製造法について,リン酸活用法の歴史とともに見ていきましょう.
塩酸はかつて「海の酸」とも呼ばれました. なぜそのように呼ばれたのでしょうか? 13世紀頃から行われているアドリア海での製塩 (スロベニア)今回は塩酸の製造方法がどのように変化してきたのか,見てみましょう.
硝酸合成法は色々と開発されてきましたが,波に乗ることが出来たのはアンモニアを酸化するオストワルト法です. オストワルト法はどのように誕生したのでしょうか?そもそもオストワルトはどんな人なのでしょう? ファント・ホッフ(左)とオストワルト(右)今回はオストワルト本人を主人公に,オストワルト法誕生の経緯と,そのしくみを見ていきましょう.
硝酸は高い酸化力をもつユニークな酸です. 硝酸にはどのような歴史があったのでしょうか? チリ硝石 By John Sobolewski (JSS) - http://www.mindat.org/photo-548175.html, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29139370硝酸塩である硝石や空気中の窒素から作られた硝酸製造法の歴史を見ていきましょう.
長い間使い道の少なかった発煙硫酸は,合成染料の登場により一気に品薄になりました. さらなる染料産業の発展のためには発煙硫酸の価格を安くする必要があります.そうして誕生したのが接触法です. アリザリン今回は染料産業の事情を通じて,接触法誕生の経緯としくみを見てみましょう.
18世紀,鉛室法の登場によって硫酸が大量に製造されるようになり,漂白など様々な用途に使われました. 鉛室法とはどんな方法なのでしょうか? 鉛室法19世紀の化学工業を語る上で外せない,鉛室法のしくみと歴史を見てみましょう.
硫酸をはじめとした酸は,錬金術において重要な役割をはたしてきました. その工業的製法も,はじめは錬金術で使われた手法から発展したものです. 《賢者の石を探す錬金術師》ジョセフ・ライト,1771年,油彩硫酸の製造方法の歴史について,まずは錬金術から見ていきましょう.
酸とはなんでしょう?酸っぱい物質でしょうか?それとも水素イオンを放出する物質でしょうか? 「酸とはなにか?」という疑問は化学者が長い間取り組んできた問題でもあります. 紫キャベツ抽出液の色変化 By Alessandro e Damiano - Own work, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64830970酸の定義の変遷については今後触れる機会があると思いますので,今回は酸の性質や指示薬,pHなど,ちょっと違った角度から酸の歴史を見ていきたいとおもいます.
アンモニアは肥料の原料だけでなく,火薬の原料としても重要でした.よく,ハーバーボッシュ法の発明によってドイツは戦争を決断したという話があります. 本当にそうでしょうか? 朝鮮窒素肥料 興南工場今回はドイツ,イタリア,日本を例にハーバーボッシュ法と戦争の関わりを見ていきましょう.
「空気からパンをつくる」とも称されたハーバー・ボッシュ法は,現在でも活躍しているアンモニア合成法です. いったいどのような経緯で誕生したのでしょうか? Fritz Haber (1868-1934, 左)とCarl Bosch (1874-1940, 右)今回はハーバー,ボッシュそれぞれの役割にフォーカスしてその経緯をみていきましょう.
刺激臭でお馴染みのアンモニアは,よくおしっこの臭いにも例えられますね.一方で,石灰窒素はあまり聞き馴染みがないと思います. アンモニアはどのように発見されたのでしょう?石灰窒素とはなんでしょうか? 石灰窒素工場 (1919, アメリカ)今回はアンモニアの発見や,肥料との関わり,そしてその合成法として登場した石灰窒素法をみてみましょう.
刺激臭のするアンモニアは,理科実験で特に印象に残る化合物でした. アンモニアにはどんな歴史があるのでしょう? ソグド人商人(8世紀)今回からは4回に分けて,アンモニアの歴史をみていきたいと思います.まずは,塩化アンモニウムからです.
水の電気分解は,水が水素と酸素から出来ていることを知ることができる,とても良い実験です. ところで電気分解はどのように発見されたのでしょう? 電解法による工場 (アメリカ)今回は電気分解の発見から塩素・アルカリ製造への応用に至る歴史を,しくみとともにみていきましょう.
樹木灰に含まれる炭酸カリウムは長らく炭酸ナトリウムと同一視されていましたが,やがて独立した物質だと判明しました. Staßfurtのカリウム塩工場 By Unbekannt. Recherche:Dr. Günter Pinzke - "HUNDERT JAHRE STASSFURTER SALZBERGBAU", Anhang zu der anläßlich der Hundertjahrfeier vom Kaliwerk Staßfurt am Tage des Bergmannes 1952 herausgegebenen Festschrift, Kaliwerk Staßfurt…
前回紹介したルブラン法は,やがてエルネスト・ソルベイが開発したアンモニアソーダ法,別名ソルベイ法(またはソルベー法)に取って代わられました. アンモニアソーダ法の工場 (New York, 1917)アンモニアソーダ法とはどのような製造法なのでしょうか? また,エルネストはその後研究所の設立や社会政策にも手を広げています.そこにはどのような思想があったのでしょうか? 今回はアンモニアソーダ法について,成立・普及の歴史としくみを見るとともに,その後のエルネストの活動の背景にあった思想についてもみてみましょう.