昔昔、20年くらい前に若気の至りで某文学賞に出したら1次に引っかかっていて、久々にパソコンの整理をしていたら、その文章が出てきて、もうあの頃のように小説は書いていないけど、とりあえず誰かに読んでもらいたくて、なんというか、そういうことです。
タイトル忘れた(20年くらい前、某文学賞に出して1次に残った)11
11 五月の末になった。 午前中に目覚め、いつものように棒状のチョコチップパンを食べながら、本日のやるべきことを考えていた。『やるべき』というよりも、『やってもいいかな』というほうが正しい。観たい映画がある。行きたいライブもある。回転寿司も久しぶりに味わいたい。焼きサーモンが口内でとろけて絶品なのだ。外出するとお金がかかるので、部屋でできることをしようか。なにをしようか思案にくれているうちに朝食が済...
タイトル忘れた(20年くらい前、某文学賞に出して1次に残った)⑩
10 スロープを上がり、扉を押し開けてファミレスに入る。冷房がきいていた。店員に案内されて禁煙席の窓側のテーブルに座った。お隣りさんはペスカトーレとサラダ、僕はイタリアンハンバーグとライスセットを注文した。「今日はほんと暑いね」「こうやって人類は滅びていくんです」彼女は外を眺めていた。コップの水がもうなかった。「温暖化で?」「はい。風邪ひくと、身体が発熱してウイルスを弱らせますよね。それと同じこと...
タイトル忘れた(20年くらい前、某文学賞に出して1次に残った)⑨
9 大学生のとき、2人目の彼女ができた。初めて2人で食事したのが学食で、2年の春だった。雨が降っていて、濡れた傘が邪魔だったことを覚えている。その日のA定食はとんかつとコロッケ。B定食は揚げ豆腐とかそんなものだった。 昼休みの学食はたいへん混んでいる。空いた席が見当たらずに困っていると、彼女が近寄ってきて、「私の前空いてるよ」と誘ってくれた。6人用テーブルの左側は4人組の女性が座っていて、残りの2席に僕...
タイトル忘れた(20年くらい前、某文学賞に出して1次に残った)⑧
8 夏の到来を予感させる強い陽射しの下、僕は書店へと足を運んだ。暇な時間が多いので、読書でもしようと思ったのだ。いい歌詞を書くためには感性を磨き、思いを最大限に表す語彙力が必要だ。社会人になってからは読書量がぐっと減った。あらゆることに疲れていた。スーツを着ることにも、朝食を摂ることにも、風呂に入ることにも、落ちたボールペンを拾うために腰を曲げて腕を伸ばすことにも。一週間ほどそのボールペンは落ちた...
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