コロナウイルスは白黒画像を用いると、科学的で現実感があると感じやすい
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックでコロナウイルス関連情報が洪水のようにあふれかえっています。多くの場合、これらの情報には新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の画像が付随しています。 そこで、今回紹介する論文の研究目的は、2020年のコロナウイルス流行による公衆衛生上の危機の初期の段階で使用された新型コロナの画像の属性が、一般人の知覚に与える影響がどのようなものなのか調査することとしました。…
新生代で海洋温度が高いほど、軟体動物の種数が多く、生態学的機能の冗長性も大きい
気候変動が生物多様性や生物地理学的パターンに与える長期的効果に関しては、その理解が不確かな点があります。 ところで、地理的面積と種数との間には種数面積関係、地理的面積と生態学的機能群数との間には機能的多様性面積関係として知られている関係性があることが分かっています。 そこで、今回取り上げる論文は、ニュージーランドにおけるおよそ4,000万年におよぶ新生代の頃と思われる、浅海で発掘された軟体動物の…
ワーキングメモリでの復帰抑制様効果の追試研究、先行研究結果の再現に成功
"Inhibition of Return"とは、知覚心理学で未探索領域に視線をやるよりも間近に探索した領域に再び視線を向ける方が時間がかかるという現象のことです。日本語では、復帰抑制と呼ばれています。 一方、ワーキングメモリとは、認知心理学分野の中心をなすといってもいいほど重要な概念で、短期間の間、情報の処理と保持を行う能力のことをいいます。日本語だと、作業記憶と呼ばれています。 先行研究(Johnson et al., 2013)…
哺乳類の新皮質は6層構造をしており、他の動物にはないような高い認知機能を可能にしていると考えられています。しかし、哺乳類とは異なる脳組織構造を有する鳥類も、多くの哺乳類に匹敵するような複雑な運動、認知能力(道具の使用、問題解決)を示します。 鳥類の脳には新皮質に匹敵する部分がある(特に発声学習や発声を担う領域)とされますが、これらの領域が新皮質と共通の進化的起源を持つ相同領域なのか、それとも進化的…
学習者としてのヒトは、価値のある社会的情報を受動的に受け取るだけにとどまるのは稀です。むしろ、色んな人から情報を能動的に引き出し、誰が有益な情報を提供してくれるのか決定しなければなりません。 しかし、発達社会的学習の研究パラダイムの多くは、参加者自身が情報を他者から引き出す能力を検討していません。 そこで、今回紹介する論文では、子供が適切な社会的情報を捜し求める能力の年齢に伴う変化を調べるこ…
ネアンデルタール人からの分岐以降の現生人類特有のNOVA1置換が脳発達機能に影響
NOVA1(Neuro-oncological ventral antigen 1)は、発達中の神経系で選択的スプライシングを制御しており、シナプス形成に関わるスプライシング遺伝子のマスターレギュレーター(主要制御因子)です。NOVA1スプライシング活動に異常があるヒトは神経疾患をきたしがちであることから、NOVA1が神経機能に重要であることが分かります。 そんなNOVA1ですが、実はその遺伝子は現生人類のゲノムと古代のヒト族のゲノムとの間で違いがあ…
結果の不確実性が高い宝くじでは好奇心が強いが、幸福感は低くなる
ヒトは好奇心の対象がなんであるかは自分でわかるでしょうが、そもそも好奇心ってどんな心的状態なんでしょうか? 先行研究によれば、不確実性が高い時や情報で知識がアップデートされる時に好奇心を持ちやすいことが示唆されています。 しかし、好奇心は新規情報を得ることにこころが動くポジティブな欲求動因としても働き得ますし、あるいは情報がない不確実な状況におかれた時、つまり不安さえ引き起こし得る不確実な嫌…
オオシマサシオコウモリの赤ちゃんはヒトの乳児が出すのと似た喃語を発声する
喃語とは、ヒトの乳児の発話の発達における重要な段階の1つで、この発声練習を通して声の出し方を学んでいきます。 ただ、発声学習(音声学習)をするのはヒトだけでなく、鳥類やコウモリなどの他の動物も発声学習をします。 しかし、ヒト以外の哺乳類で喃語があるとのエビデンスはほとんどありません。このことが、動物種間、特にヒトと他の動物との間の喃語の比較をするのを妨げてきました。 で、今回紹介する論文は、…
科学の専門家、特に動物行動の専門家なら、素人よりも専門分野に関する判断力が高いはずです。 ところで、主要な科学ジャーナルに出版された研究には、ニシツノメドリ(Fratercula arctica)の道具使用についての逸話に関するものが近年報告されていました。このウミスズメ科の鳥の道具使用の様子はビデオ映像にも記録されています。ただ、この報告については懐疑的な見方も存在します。 で、今回紹介する論文では素人よりも…
介在ニューロンの移動や統合の時間経過についての研究は始まっており、これまでシナプス神経支配を選択的に増強または抑制する初めての分子手がかりが同定されてきました。しかし、出生後の発達における皮質の抑制性神経支配に関する包括的なマッピングに関する報告はありません。 神経組織に対するハイスループットな3D電子顕微鏡イメージングと解析法が開発され、コネクトーム解析が可能となってきています。これにより、多…
顔の見た目から第一印象を形成する傾向は、発達初期に出現します。これらの印象が学習されるルートの1つに親子の交流が考えられます。 そこで、親子に人物顔を見せて、その人の性格などについて話し合ってもらう研究が実施され、下記の論文に報告されました。この論文では研究が2つ実施されました。1つは親子にコンピュータで合成した顔4つを見せて、その顔から受ける印象を話し合ってもらう実験でした。もう1つは最初の研究…
分子的な分岐年代のデータ解析によれば、陸上植物(有胚植物)の起源はおよそ5億年前で、カンブリア紀に相当します。 一方、植物の化石記録のデータによれば、陸上植物が初めて出現したのは、それからほぼ8,000万年後で、その時代は中期シルル紀に該当します。 この分子データと化石データとの間における陸上植物の出現時期をめぐる矛盾は、いまだ発掘されていない植物化石があって、そのデータが欠損していることが原因だと…
ケナガマンモスはライフステージによって移動パターンが変化していた?
今は絶滅していますが、昔はケナガマンモス(ウーリーマンモス,Mammuthus primigenius)という哺乳類が地球上に生息していたことが知られています。 しかし、このケナガマンモスの移動性や行動圏についてはそれほどよく分かっていないのが現状です。 そこで、この問題を克服するために、ケナガマンモスの1.7 mの全長の牙に沿ってストロンチウム同位体比の系列分析を時間的側面に関して高解像度で行った研究があります。これ…
額嚢節弁翅亜節のハエは平均棍を使って離陸時の速度と安定性を支える
双翅目とは、2枚の翅を持つ昆虫のことです。昆虫の翅は4枚のことが多いですが、双翅目の場合、後翅が平均棍という機械感覚を担う器官になっているため、翅が2枚になっています。平均棍の用途は、飛行や他の行動の最中に生じる身体の回転を検出し、安定性を維持することにあります。 ところで、双翅目の中には額嚢節弁翅亜節という単系統の分岐群があります。額嚢節弁翅亜節のハエは双翅目の多様性のおよそ12%を占めます。イエ…
子供型アンドロイド、ibukiの曖昧表情の情動価は、身体情報で明瞭になる
様々なモダリティを通して情動を表出することは、ヒトだけでなくロボットにとっても重要です。 ロボットの情動表出に関する研究では、表情から基本的情動へのマッピング法が広く使われています。このマッピング法を用いた研究によれば、それぞれの情動表出に特異的な顔面筋の活動パターンがあって、ヒトはこれらの活動パターンを読み取ることで当該の情動を知覚できるとされます。 しかし、ヒトの行動に関する近年の研究に…
課題をこなしながら次の課題への準備をするのに作業記憶資源が重要
進行中の活動をこなしながら将来に備えて準備することは、重要なスキルです。ですが、他の課題をしながら将来に向けて準備できる程度については現在のところ研究が進んでいません。 そこで今回紹介する論文では、2つの実験を実施することを通して、現在行っている課題のいかなる特徴が将来に向けての準備に影響し、また将来への準備をする時に影響するのかを準備の有用性への影響とともに検討することを目的とした研究を行い…
伝えるエビデンスの種類が違えば、相手に与える人物印象が変わる
説得に関する研究は、メッセージのソースとなる話者の特徴が相手の態度変容にどのように影響するのかどうかという疑問を探求する傾向にあります。ですが、メッセージの特徴がそのソースとなる話者に対する知覚を変えることもあり得ます。 メッセージに基づく印象形成効果によれば、受け手となる知覚者は、メッセージの特徴を使ってソースの話者の特徴を推論します。そのような推論で様々な結果が引き起こされたりすることも想…
キツネリスの樹上生活には身のこなしの華麗さだけでなく、学習も重要
樹上性の動物は、複雑な林冠の間を跳躍することで移動したり、捕食者を回避したりします。 樹上性動物がその生体力学的能力を活用して、このような失敗すると命に危険が及ぶような決定を、瞬時に行い、成功して無事に枝から枝へと飛び移れるには、アクロバティックな身体の操作を巧みに行い、過去の跳躍経験から学習する必要があります。 そこで、今回紹介する論文では、樹上性動物の1種、キツネリス(Sciurus niger)の野生…
ヒトにはサーカディアンリズム(概日リズム)があって、その個人差でクロノタイプが生まれます。クロノタイプとは簡単にいってしまえば、朝型人間か夜型人間かということですが、生理学的、行動学的あるいは遺伝学的な特徴に特異的なものがあります。 しかし、クロノタイプがヒトの脳の生理学的側面や認知機能を調整するか、仮に調整するとしたらそれはどんな様式によるのかについての知見が不足しています。 そこで、今回紹…
哺乳類では、基礎代謝率は体質量と関係します。ところが、体質量から予測される基礎代謝率から外れている生物もいます。この予測のはずれの1つの解釈としては、適応的なもので、代謝リモデリングが生じているというものがあります。 ラッコも体質量から予測されるよりも約3倍高い基礎代謝率を示す動物です。ラッコのこのような基礎代謝率の高さは、水温の低い海水を生息地とすることへの熱産生適応だと考えられています。 …
マカクザルの側頭極に個々の既知顔への選択的応答性が高い細胞を発見
脳がどのように知っている個体(相手がヒトの場合は個人、知人)の顔を認知しているのかという疑問は、神経科学の歴史の中でも重要視されてきたトピックの1つです。そのような研究文脈では、視覚処理と人物記憶(動物の場合は個体記憶)とを関連づける細胞があるだろうと考えられてきたものの、これまで見つかっていませんでした。 で、今回そのような細胞が見つかりましたという報告をした研究論文が発表されました。 Landi, …
英語にはTL;DRという頭字語表現があります。TL;DRとは、"Too Long, Didn't Read"の略語で、「長すぎて、読まない」という意味です。つまり、「長文うざい」という意味になります。 TL;DRという表現が人口に膾炙しているということは、テキストが長いと意図的に注意を文章から別のところに向ける習性がヒトにあることを示唆します。 さて本当にそうでしょうか?ということを教育という文脈で検証したのが今回紹介する研究に…
選択した選択肢の価値が低いと、選択しなかった選択肢の価値を高く感じる
2つの選択肢があった時、熟慮して一方の選択肢を選択して、もう片方の選択肢をそのまま選択しないでおくことがあります。つまり、2つの選択肢が分離されるわけですが、逆説的に熟慮によって選択した選択肢と未選択の選択肢との間で記憶上に連合を形成し得ることにもなります。 そこで、今回紹介する論文では、この連合形成の可能性を検討し、その影響について、選択した選択肢の価値への効果だけでなく、選択しなかった選択肢…
集合的記憶研究によれば、アメリカ人の大統領に関するテストの記憶成績のパターンは決まり切っています。それは、いわゆる「系列位置曲線」というやつで、それに加えてなぜかエイブラハム・リンカーン第16代大統領の記憶成績が高くなります。 しかし、これらの先行研究はすべて、アメリカ人の大統領に関する集合的記憶を名前で検証したものでした。では、大統領についての集合的記憶を顔で調べたらどうなるのでしょうか? …
寄生蜂に毒性のあるpkf遺伝子がウイルスと鱗翅目昆虫のゲノムで見つかる
膜翅類の捕食寄生者とこの捕食寄生者と昆虫宿主が同じ昆虫ウイルスとの間では、生物競争が生じます。 捕食寄生者の幼虫は、寄生先の宿主の死とともに死亡するか、宿主資源をめぐる競争の結果として死亡するかするとこれまで考えられてきました。 今回紹介する論文は、捕食寄生者に毒性のあるタンパク質をエンコーディングし、寄生の成功に影響する遺伝子ファミリーを発見したという報告になっています。 Gasmi, L., Sie…
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