ナガスクジラの鳴き声は動物の発声の中でも特に大きく、海洋で距離が遠く離れていても検出可能です。 今回はなんと、そんなナガスクジラの鳴き声(歌)が地殻構造の研究に役立つという内容の論文です。 Kuna, V. M., & Nábělek, J. L. (2021). Seismic crustal imaging using fin whale songs. Science, 371(6530), 731-735. DOI: 10.1126/science.abf3962
家族システム理論によれば、家族というものは体制化された全体としてみなせ、この家族システム内の関係性は相互に連関しているとされます。 しかし、これまでの研究で両親間の関係ときょうだい関係とが関連しているかどうかについてそれほど分かっているわけではありません。また、仮に両親間関係ときょうだい関係との間に関連があったとして、その関係性がポジティブなのかネガティブなのかについても謎です。 両親間関係…
世界中の政府は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の拡散を抑えようと、様々な対策を実行しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる死者数の増加、感染拡大防止策の中には社会的コストが大きなものがあることを踏まえると、対策の相対的な効果を理解することは重要です。 そこで、今回取り上げる論文では、新型コロナの第一波で各国政府がとった対策の効果を検証することで、パンデミックを抑え、収束さ…
非注意性盲目で、麻酔科医はレントゲン写真の「ゴリラ」を発見するのが難しい
ヒトは、予想外の事象が生じることを見込んでおくことはできません。いわゆる「ゴリラ実験」に代表される非注意性盲目は普通の人がなじみのない課題に取り組んでいる時だけでなく、何年も訓練・研修を積んだ、その道の専門家でも生じます。 麻酔科は高度な注意を要する分野の1つです。そこで、今回紹介する論文では、非注意性盲目が日常業務での麻酔科医のパフォーマンスに影響し得るのか検討することを目的とした研究を実施…
ビデオゲームへの暴露が年少児の発達とどのように関連しているかに関する関心が増大してきています。 ビデオゲームをすると、ゲームに時間がとられて、発達的に重要な活動に割く時間が減る恐れがあります。また、ビデオゲームをしているほど、リーディングスキルが低いということもこれまでの研究で示唆されています。 ですが、その一方で年長児や青年での研究では、注意が要求されるゲーム、素早い反応が求められるゲーム…
最終氷期極大期の北アメリカにヒトがいたというエビデンスとなる足跡を発見
考古学やその周辺分野の学問研究では、北アメリカへのヒトの定着に関する知見を深めることが長年の課題であります。 たとえば、研究課題として、いつ、どのように、ヒトが北アメリカに移動してきたのか、彼らはいったいどこからやってきたのか、北アメリカにヒトが来たことで、もともとその土地に住んでいた動物相や地形への影響はどうだったのかといった問題が未解決のままです。 そこで、今回紹介する論文では、北アメリ…
ウルトラマラソン中の気分の揺らぎが大きいと、完走に時間がかかる
ウルトラランニングには、並外れた持久力が必要です。メンタルも重要でしょうから、ウルトラランニングが上手くいくには心理的要因、精神的要因も関与しているはずですが、それほど研究が進んでいるわけではありません。 気分の揺らぎ(変動)が持久力が必要なことのパフォーマンスに重要な役割を果たしていると考えられています。ですが、この考えは、マラソンやそれより短いランニング前後の気分を比較した研究が主たる根拠と…
オンライン検索で民族マイノリティに対するデマへの信念は弱まるが、感情は悪化する
「フェイクニュース」という言葉に代表されるように、オンライン上のデマに関する関心が増してきています。 そこでオンライン検索の認知的影響や感情的影響について実験的に検討した研究が実施され、下記の論文に報告されました。 Kobayashi, T., Taka, F., & Suzuki, T. (2021). Can “Googling” correct misbelief? Cognitive and affective consequences of online search. PLoS ONE, 16(9): e0256575. …
世界宗教は国の境界を越えた高次の文化的アイデンティティを形成する
文化的進化理論によれば、様々な地域に広まった世界宗教は、民族を超越した文化的アイデンティティ内で信念、価値観、実践をまとめあげてきたとされます。 このことから、宗教的伝統に従うことは、文化的特性の世界規模でのばらつきと関連することが予想されます。 このことを検証した研究が実施され、その結果を報告したのが、下記の論文になります。 White, C. J. M., Muthukrishna, M., & Norenzayan, A. (2021). Cu…
就学前幼児は大人と違って、他者の行為が効率的か否かを認識できない
観察は他者から効率的な行為を学習する方法として影響力があります。しかし、他者の行為の効率を評価する際の観察者の側の運動スキルが果たす役割については十分に分かっているわけではありません。特に就学前期の幼児は、道具の取っ手をつかむといった、複数の段階から成る行為をすることが苦手であることが知られています。 というわけで、この就学前期の幼児の特性を利用して、他者の行為の効率を評価する際の観察者の運動…
自動化への信頼が高いドライバーは、運転とは関連のない他の視覚性行動をしがち
自動車の自動化技術がどんどん向上しており、自動化に対する信頼に関する研究も注目されています。 そこで、今回紹介する論文では、自動化に対する信頼がドライバーの視覚的注意散漫に与える影響を検討することを目的とした研究を実施し、その結果を報告しています。 Zhang, Y., Ma, J., Pan, C., & Chang, R. (2021). Effects of automation trust in drivers’ visual distraction during automation. PLoS ONE, …
アクションの危機とは、個人的目標を追い求め続けるのかそれともその目標を手放してあきらめるのかの間で思い悩む心の中の葛藤のことです。 アクションの危機の特徴として、目標関連の疑問を経験することがあげられます。 今回紹介する論文では、アクションの危機に関する現在の知見をさらに深めるため、日常生活で感じる疑問の動態について調査しています。 Ghassemi, M., Wolf, B. M., Bettschart, M., Kreibich, A.,…
大きさの恒常性のように、視覚系は修正をほどこします。これにより、たとえ網膜上のイメージが変化していても、首尾一貫した、安定的な視点が得られるようになります。 今回紹介する論文では、写真のようにまるで無修正の2次元画像のような視点を教示したら、成人は自身の視覚をどのように捉えるかを検討することを目的とした実験をしています。 Samuel, S., Hagspiel, K., Cole, G. G., & Eacott, M. J. (2021). ‘Seeing…
コカイン嗜癖への道に眼窩前頭皮質-背側線条体でのセロトニン系が関与
有害な結果が待ち受けているにもかかわらず、強迫的に薬物を使用することは、嗜癖に該当します。 中脳辺縁系のドーパミン信号伝達が強迫行為を駆動させるのに十分であることは分かっています。ですが、他の神経伝達物質系の関与もあります。つまり、コカインなどの精神刺激薬にはセロトニンの再取り込みを阻害することで細胞外セロトニンレベルを高める作用もあるのです。 そこで、今回紹介する論文では、薬物嗜癖における…
温暖化の影響を小型哺乳類は穴居で緩和できるが、鳥類はできない
気候変動の温暖化への暴露で多くの生物が絶滅リスクにさらされ、生物多様性の喪失の危機が深刻化すると考えられています。 ただ、生物は受動的ではなく、能動的な主体で、極端/異常な温度環境の影響を緩和する様々な方略を駆使することがあります。 今回はそんな方略の一端が垣間見える研究を取り上げます。 Riddell, E. A., Iknayan, K. J., Hargrove, L., Tremor, S., Patton, J. L., Ramirez, R., Wolf, B. O., & Be…
ヌタウナギの眼は他の脊椎動物の眼と比較して、必要最小限のものしかありません。したがって、ヌタウナギの眼には色素上皮、水晶体および光受容体、介在ニューロン、神経節細胞という3つの細胞層から成る網膜構造がないのです。 ヌタウナギが無顎類という最初期に分岐した脊椎動物グループであることと共に、このような派生特徴が欠損していることもあって、ヌタウナギの眼は脊椎動物の視覚の初期進化における過渡的な形態だ…
セナスジベラというサンゴ礁魚の仔魚は月明りに成長が左右される
仔魚の成長と生存は、変動性、予測不能性が高いことが知られています。 この種の変動性に対する理解が不十分なために、魚類の個体群動態を予測し、漁業を効果的にマネジメントすることができないでいるのが現状です。 で、今回紹介する論文は、魚類の中でもサンゴ礁を生息地とするセナスジベラ(Thalassoma hardwicke)の成長速度を毎日調査した研究をとりあげます。 Shima, J. S., Osenberg, C. W., Noonburg, E. G., Al…
欺瞞研究の脳科学は20年前に始まったばかりですが、それ以降様々な文脈や反応モダリティでの実験パラダイムで欺瞞研究が行われています。 この種の研究をすることで、ヒトが他者を騙すことに関わる神経科学的知識や法学的知識が深まることが期待されます。 そこで、今回紹介する論文では、BrainMapソフトウェアを用いて活性化尤度推定法(Activation Likelihood Estimation,ALE)とメタ解析的結合モデリング(Meta-Analytic C…
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