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  • 楽しくってメンタルにも効く『希呼の実験』(長谷川 まりる)

    まさか自分が、自分から日記を書こうと思う日が来るなんて。(本文より) 今週発売された季刊児童文芸誌に載った 長谷川まりる先生の短編を紹介しまっせ。 この先生の新作については設定や文体が 弾けていたので受験向けって観点からは ほぼスルーしてきたけど今作はアリかも。 現実路線で文体もわりと教科書的だから。 短編を詳述すると酷いネタバレになる故、 今回はサラリと紹介させてもらいますわ。 広く読まれるべき作品ですね。 主人公は中学に入学したばかりの少女。 いきなり深刻な悩みを抱えることになった彼女が、思いもよらぬ場所で、手段で、活路を切り開いていきます。 この”作戦”は本当に使えそうですね。 小説とい…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2025年5月前後)

    今こそ作問向け選書のシーズン真っ盛り。 5月は藤岡先生の新作がメチャ強いよ~。 『金角』に劣らず長年愛されそうな一冊。 著者の受験小説はコレも含め外れがない。 さらに児童文学の大御所の作品が居並ぶ。 いとう先生は今年の駒場東邦で出た本の 続編だが新作の方から読んでも大丈夫だ。 山本先生の作品も入試にピッタリな感じ。 くどう先生初の短編集もそそられまっせ。 以下のリストは未読の作品が多めなんで、 たぶん問題文に向かない本もあるだろう。 4/30発売 『日下部くんには日傘が似合う』(神戸 遥真) 人気者の6年生男子が波乱を巻き起こす。 5/13発売 先行レビュー済 『僕たちは我慢している』(藤岡 …

  • さみしさと手をつないで『アリゲーターガーは、月を見る』(山本 悦子)

    ガーはガーというだけで責められ、疎まれている。(本文より) 来月下旬に出る児童文学の大御所の新作。 アリゲーターガーって外来魚なんだな? 人間に捨てられ、害をなす存在と扱われ、 池や堀からも排除される異形の淡水魚に 感情移入する面々を描いたストーリーだ。 中学生2人と19歳が思わぬ縁で繋がり それぞれの苦悩と向き合っていくんだわ。 この作品は大人の役どころが良かった~。 行動も発言も魅力たっぷりで楽しいんだ。 この著者はあまり入試では見ないんだが 本作の素材文適性はかなり高かった印象。 問題に使えるかもしれない箇所の例 一章終盤△淋しい外来魚へ抱く人の想い 三章中盤△祖母の言葉に含まれた気持ち…

  • クセ強ッ、けれど病みつきに!『父の回数』(王谷 晶)

    今週発売されたばかりの異色の短編集だ。 入試では見たことがない作家ではあるが 表題作が高校生視点なんで読んでみたわ。 何にも熱くならず空気を読めない少年が 驚きの事態に巻き込まれていく短編だよ。 ま、ちょっと小学生に見せづらい部分も あるにはあるが引き込む力がみなぎる話。 読めば終盤の展開にゼッタイ驚かされる。 面白さはタイムリープ物『リワインド』。 これが抜群に感情移入できる作品だわ~。 全力で挑む人助けが激烈に刺さるからよ。 あえて物語という虚構を美しくさせずに ビターさを持たせるのが全体の作風かな。 なにもかもうまくいくなんて嘘くさいと 感じるようなタイプだとよりハマりそう。 難易度分類…

  • 奥行きのある人生論『学歴狂の詩』(佐川 恭一)

    私たちは予備校に通う中で、それまで拠って立っていた「偏差値」以外の価値観を半強制的にインストールさせられるという大きな問題に直面していた。(本文より) 先月発売され界隈でも話題を集めている 洛星高から京都大という著者のエッセイ。 名門大学受験に向けてあたふたしまくる 男子進学校の生徒たちの姿が愉快だわ~。 風変わりな京大生たちの生態も見どころ。 自虐と他虐あふれるホントの姿が最高だ。 まったくカッコつけてないのが笑いの肝。 身もふたもない学歴のメリットの話題や 学業全振りの光と影には考えさせられる。 多分入試素材になるような本じゃないが 反面教師的な意味じゃなく付加価値大だ。 難易度分類ではや…

  • 胸に嵐を抱きながら『曇りなく常に良く』(井戸川 射子)

    友だちからの評価って何て信用ならない。全部嘘でも成り立つ。(本文より) 先月発売された芥川賞作家の青春小説だ。 それぞれに重いものを抱える高校生達の ままならない日常を切り取った話だった。 噂の独特文体にきりきり舞いだったな~。 正直、俺レベルじゃ慣れるに一苦労だよ。 とはいえ会話のみずみずしさは圧倒的だ。 5人全員に共感するのは無理だったけど 何人か目が離せない子もいて読み切れた。 多彩な苦悩を振り下げるので誰かしらに 感情移入ができるんじゃないかと思うよ。 文体的に素材文適性は高くなさそうだが 強いて一つだけを挙げると中盤の机運び。 担任と生徒の会話が使えなくもないかな。 難易度は例の4段…

  • アイデア勝負はお手の物『てまりのナゾほどき帳 出島と秘密の紅い石』(荒川 衣歩)

    海へと続く地形の先端部には、扇形の島が浮かんでいる。出島だ。そこは長崎であって長崎ではない。(本文より) あと3ヶ月ほどで刊行される見込みの 講談社児童文学新人賞の大賞作品だよ。 カバーを見て判るようにこれは時代物。 実は俺、時代物は挫折しやすいんだが 今回の作品は全然オッケーだったよ~。 時代は古くても内容は新しかったから。 主人公の少女の頭の回転も見どころだ。 大人をコロッと引っかける場面とかな。 さすが受賞作、最後まで楽しいうえに 新鮮でプラスアルファの学び付きだわ。 心配性の父親のあたふたするさまとか 仲良し少年のしどろもどろにもニヤリ。 13歳前後の子どもたちがメインだが 登場する大…

  • 無垢な善意に削られて『声に出せずに叫んでる』(朝霧 咲)

    な?いいだろ?こんなバカげたことできるの高校生のうちだけだぜ。(本文より) 高3時に応募した作品で小説現代新人賞。 今は京大生という期待の星の2作目だよ。 細かなところにも若い感性がほとばしる マジで共感必至のストーリーだったわ~。 真っ白な善意を向けられて黒く染まる心。 このわかり合えない感じがリアルすぎる。 けれど重くなりすぎずラストにかけては 胸がスッとするから安心して読める感じ。 素材文適性は後半にかけて高まっていく。 繊細に描き込まれた感情の揺らぎに注目。 問題に使えるかも知れない箇所の例 三章前半△部活でのトラブルからの対話 三章後半△体の弱い少女の気持ち溢れる 四章前半〇少女が驚…

  • 語り継ぎたい創作道『日曜日の文芸クラブ』(小手鞠 るい)

    文章は人を映し出す鏡、とも言えるでしょうか。(本文より) 言葉の連なりが持つ輝きを教えてくれる アメリカ在住の作家の来月出る新作だわ。 この先生は出版のペースがチョー早いよ。 幼児向けまで含めると年十冊はありそう。 今回の紹介本は広く子どもたちに向けて 惜しみなく文章のイロハを贈ってくれる。 あぁ、こんな簡単なことなんだ!だとか こうも奥が深いのか!という気づきの嵐。 文章を書くのが苦手な子も、得意な子も そればかりか大人にとっても嬉しい本だ。 難易度は前半平易、後半普通という印象。 先行レビューはこんな感じにしてあるよ。 物語に救われた過去に共感の大嵐! 先生の創作活動は恩返しであり、この作…

  • 命、はなかくも・・『願わくば海の底で』(額賀 澪)

    みんな、教師って生き物は心の底から生徒を嫌ったり憎んだりしないって思って甘えてるんだもの。(本文より) 東日本大震災の緊迫したシーンがド迫力。 わりと入試に出る作家の2月の新作だよ。 生きづらさを抱える少年を周囲の視点で 多角的に映し出したストーリーだったな。 少年本人視点の章はないにもかかわらず、 彼の苦悩がくっきりと浮かび上がるんだ。 諦観と生きる覚悟、その果てにある宿命、 これがありえないほど全身に響いてくる。 読めば一日一日を慈しみたくなるだろう。 誰かの葛藤に敏感になれるかもしれない。 素材適性は結構あるんじゃないかと思う。 以下に並べてみたのはその一例になるよ。 問題文に使えるかも…

  • 鮮烈の桜蔭選書『イザベラ・バードと侍ボーイ』(植松 三十里)

    英語を武器にして、何か別の分野に飛躍していかなければ、夢の実現は遠い。(本文より) 今年の桜蔭で使われた物語文も凄かった。 重厚な歴史、果敢な挑戦、豊富な気づき、 こういった要素が見事に凝縮された本だ。 困難な道を突き進む主人公が感動を誘い 学びだけでなく生きる原動力をくれるよ。 よくもまぁ、こんな本見つけられたな~。 もう手放しで礼賛するしかない感じだわ。 ただ、難易度は普通の小学生には難しい。 最難関にふさわしい素材といえるだろう。 例によってマイレビューを上げといたよ。 英国から来た紀行作家イザベラと、随行する若き日本人通訳鶴吉の視点で、困難な旅路を描く実話を元にした小説。 なんたる重厚…

  • 少女は七つの誓いを立てる『コメディ・クイーン』(イェニー・ヤーゲルフェルト)

    「パパはまた幸せになるんだ。わたしが幸せにするんだ!」(本文より) なんと21カ国で翻訳されているという 世界で愛される児童文学が日本にも上陸。 母の死から1年、動揺の消えない家庭の 12歳の少女が思わぬ誓いを立てるよ~。 深いかなしみを越えて成長する主人公と それを支える人々のドラマは衝撃だった。 特に友人の振る舞いが素晴らしいんだわ。 コメディアンのアドバイスも実にいいよ。 生きていく上で役立つ言葉が溢れていて 大人にもグサグサ刺さりそうな本だった。 難易度では4段階で3番目にあたる普通。 俺のレビューをちょっとだけ置いとくよ。 主人公は母の死に囚われたスウェーデンの12歳。 全身全霊で異…

  • 守る者の気概『イズミ』(小手鞠 るい)

    私たちは、単なる白衣の天使ではなかった。戦場に咲く花ではなかった。(本文より) たまに入試にでる作家の1月発売の本だ。 第一次世界大戦の折に国の威信を賭けて 欧州へ派遣された医療チームの看護師と それを描く作家の視点で書かれているよ。 いや~、戦時は病院も戦場さながらだな。 たとえ凄惨でも目をそらしちゃいけない。 きっちり向き合う必要があると感じたわ。 もしろんそんなシーンばかりじゃないが これほど戦争の愚かしさが響く本は稀だ。 一方、現代のパートでは作家に寄り添う 編集者の仕事ぶりに引き寄せられたよ~。 いろんな意味で学べる要素の多い本だわ。 知識面では、英語で時間をつぶすことを 時間を殺す…

  • 肯定感のプチ革命『おとなになりたくないわたし』(夜野 せせり)

    人の見た目のこと、いろいろいってくんの、やめてくれない?(本文より) 女子向け作品が多数ある作家の新作だよ。 今作も表紙からわかる通りのターゲット。 けど、苦悩をかなぐり捨てるアイデアは 男子だけでなく大人にも有効な気がする。 主人公は成長するからだを嫌悪する少女。 彼女がナイトのような級友との関わりで 自分の殻をやぶっていく爽やかな物語だ。 紹介作品の中では平易なレベル感だった。 俺のレビューの一部をまた紹介しとくよ。 対照的な二人が抱える葛藤の意外性に注目! 主人公は劣等感に染まる中学一年生です。 自分自身が嫌いな彼女が、憧れのクラスメイトと関わるなかで、さまざま感情を味わい、見違えるよう…

  • 受験界を吹き抜ける『教場の風』(安孫子 正浩)

    「どちらでも参ります」といいながら願ったのは、ただ中学受験クラスを担当させてほしい、ということだけだ。(本文より) 12月に発売された中学受験小説だけど 中受界隈では話題になってないようだな。 大藪春彦新人賞作家にして現役塾講師が 描き上げたという触れ込みのストーリー。 正直な感想をいうと掴みがちょっと弱い。 が、しかし二章のトラブルで引き込んで 志望校が問題になる中盤でも魅力が増す。 最高だったのは夏合宿を描いた辺りだよ。 スロースタートな作品だけど8章は必見。 受験本番の9章も、もちろん見逃せない。 ちょっと見つけにくい作品ではあるけど 素材文適性はなきにしもあらずって印象。 全9章だがこ…

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