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弌矢
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武蔵野市
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2020/09/14

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  • 旅行先の一ページ

    アフリカの夕日があった。途中、真横に太陽を見つめていた。視界の両側で、アカシアの樹が夕刻の空を掴んでいる。 日本人の旅行家に、コネで紹介されたビッグマムの家庭に混ぜてもらうことになった次第だった。エアシックのぼくは、ビッグマムにあてがわれた部屋のベッドに倒れ込んだ。 朝、目覚めると、放り出していたバックパックが、きちんと縦に置かれていた。ベッドを出てダイニングに入ると、ビッグマムがチャイをいれてくれた。アフリカ文化的飲み物。ジンジャー、ガラムマサラの味に心地よくなる。覚醒効果のある許された草を噛んでチャイで流し込む。 食事を終えると礼をいい、部屋にもどる。バックパックから

  • アランフェス通り

    自分の棲み家である都営住宅を、老人は眺めやっていた。蛍光灯の色が縦横に規則正しく発光している。あと一階上の最上階だったら夜景が見えるのに、と電話をとり出した。 「というわけで、では、いまから出る」 ここから三〇分でアランフェス通りに出ることができる。老人は電話をバッグにしまい、乗り込んだ。 電話をズボンのポケットに入れた中年は、走っている国道一四号線からアランフェス通りまで三〇分でつくようにアクセルを加減した。目のまえを光の粒子が拡散して散らばっていく。 老人はアランフェス通りに入った。前方、起伏のある道を走るブレーキランプやヘッドライトの並びが、波のように見え隠れしている

  • まほろばから遠く離れて

    この異郷の塔からは、まほろばもながめられた。不確かだった時間に鐘が響き、あたりの空気をひやした。春らしさも夏らしさも感じとれないこの異郷は秋か冬だろうが、季節と呼ぶにはあまりにも空気がよそよそしい。 冷たいアウラに包まれながら見下ろし、目線を落として見る懐中時計がしめすのは午前のような午後、根拠はないが区切りの時間の気がして、マグリットは階段を降りた。 広場に出ると、いきなりギリシャ彫刻が規則正しく一〇メートルごとに突っ立って、その列にアポリネールのシルエットが絡んでいた。長い影の反対側に陽光が位置するはずだが、建造物に隠れているらしく、一度も見えない。 広場を仕切る壁の向こうに

  • 記憶在るK

    小学四年生だった。夕闇しのびよる放課後の教室で、Kという女の子と思いがけず二人きりになった。いつもなら「きもちわるい」「体操服が黄ばんでる」「K菌が伝染る」などとKを忌み嫌ってみせるクラスメイトのイジメに加担していたぼくだが、いざKと二人になると、この放課後の教室のなか、彼女とは対等の立場として在った。要するにこのときぼくは、心ならずも彼女をタイマン相手にしてしまったのだ。放課後の静まりかえる教室は、あかねの色に色めいていた。 それでね、私がタオルケットをとりにいってもどってくるとね、もうお母さん息をしてなかった。 Kは自分の母親が危篤になったときのこと、この世を去ったときのことを

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