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都合による詩誌に載せられなかった詩を掲載しています。全員が全員共感してくれるとは思いません。でも100人中、5~6人は共感してほしいな、という個人的希望を持っています。

牛田丑之助
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2020/08/27

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  • 見えない隣人諸君

    見えない隣人諸君諸君らは歩むだろう床に播かれた薔薇の花びらの上を首筋に 鈍く断ち割る鉈を当てがわれているのか温湿布を貼られているのかもわからないまま向かう先は虹の麓であり地獄の崖の淵でありあるいはカレーライスが電子レンジで温め直されている2LDKのテーブルであり見えない隣人諸君しかし明日は来る明日が来れば諸君らはまた出かけるだろうマンモスを狩りに桑の実を採りに諸君らのアルテミスを探しにその営為が九千年...

  • 五體投地

    五體投地とはお前が身体を投げ出すのではない大地がお前を抱き 受けとめることだ倒れているお前を群衆が跨いで行っても大地はお前を離さない大地がもういい お前をすべて受け入れたというまでお前は大地に抱かれていよ傍らに野良犬が寝転んでいてもしかし犬は大地には抱かれない何故なら犬には苦悩がないからだ犬にお前以上の苦悩がもしもあれば大地はお前を捨てて犬を抱きとめるだろう玄奘三蔵も河口慧海も丹巴の長男も五百キロ...

  • 結婚

    予定も練習もしていなかったのに急に歌えだなんて そして合わせて踊れだなんてもちろんめでたい席だからやらせてもらいましたが終わった瞬間出店が店をたたむようにてきぱきと段取りを進めたのは あまりに冷たくはないか僕が歌っている間は確かに虹がかかり天を馬が駆けたのに君は幸せという甘い夢を感じなかったとでもいうのだろうかまさかそんなことはあるまいなぜならここからも見てもわかるほど君は恍惚とした表情だったから...

  • 足だけが二十八歳の幼女

    脚だけが二十八歳の幼女赤いハイヒールを履いて何の邪心もないようにわたしを見る(本当はあるくせに)二十八歳の脚は膝を揃え足首を一層きゅっと細くして色香を芬々と漂わせながらおかっぱ頭の上半身を支えているしかし少女の上半身が脚に追いつくことは生涯ないだろうなぜならおかっぱがパーマになって胸が膨らみ二十八歳になった時脚は老婆と化しているからだそれが幼女の生まれながらの罪業であり誰もかなわない恐ろしい魅力だ...

  • 三輪ミゼット

    長屋の三軒隣の空き地に三輪のミゼットが打ち棄てられていた私は開かないドアの窓からもぐり込み運転席に座って遥かなドライブを始めたミゼットは牛乳屋の角を曲がり 二歳で生まれて初めて行った砂浜である湘南を経由して脳みその裏側の宇宙まで疾走したミゼットはもうしんどいよと言いながらも黄昏の中を進み私は母の折檻からどんどん遠ざかるやがて周囲が闇に侵食される頃ミゼットは無条件の肯定が待つ約束の地へ辿り着くもうこ...

  • 眼光

    昭和二十一年三月十三日朝省線有楽町駅英語で記載された列車の行き先表示の下を無言で俯き歩く国民服の群に私を仇敵のように切りつけて見る男がいたお前はどこの隊のものだ階級は何だお前は何人殺したんだお前はなぜ生き残れたんだなぜ生きて帰ったんだ多くの僚兵が死んだのにどの質問にも答えられないどの質問から答えていいいのもわからないどの質問がはったりなのかもわからないだから私はただ黙って男の眼光を受け止めそしてそ...

  • ぷっぷくぷー

    ぷっぷくぷーあんたはパリを寒い街だと扱き下ろすがでもおいらをご覧 裸で天に向かって踊りながら喇叭を吹いている幸せなんて優しい娼婦のように片手で陰茎を握り 片手を懐に入れてくるものさだからあんたのように眉間に皴を寄せて肩を竦めて歩いても誰かが狩った首の骸骨をくれるわけでもない旧約聖書を冒頭から朗誦できる人間だと示すために目の前で一世一代の宙づり大回転をしてもおいらはちっとも驚かないがでも一度きりの人...

  • 人魚を釣る

    テトラポットのある岸壁で人魚を釣った人魚は絵本で見たように上半身人間 下半身魚だったが円形ハゲの周囲に長く髪が伸びて落ち武者のようであり顔は生活に疲れたおっさんだったおっさん人魚は 昨日も八時半からパチンコ屋に並んだのに全く出なかった あんたよく出るパチンコ屋を知らないか 煙草が値上げになるのが不満だ 税金を取るなら俺らみたいな庶民じゃなくもっと金持ちから取れ これからは一日ひと箱にしなければ そ...

  • 乳房

    ブラウスの釦をひとつひとつ外し腕を袖から抜き肩を曝して肩から裾にかけて折り返し袖をその中にたくし込んでお前は丁寧に畳むそしてスカートのホックを静かに外しするすると床に落として同じようにプリーツに沿って畳み静かにソファの上でブラウスに重ねるブラジャーに装飾は一切なくまるで盲人の目隠しのようでしかしそんなことに頓着せずお前は腕を背中に回しホックを外し肩ひもを外し今度は邪険にソファの背に投げかけて隠す気...

  • その指のささくれを

    その薬指のささくれを 剥がすのが怖ろしいぴっちり貼られたラップを剥がすように数ミリのささくれを摘まんで引っ張るとそこから ぴりり ぴりりと からだぜんたいの皮膚が剥けてしまいそうで一枚剥がされたわたしはどうなっているのか柔らかく生暖かいもう一人のわたしが現れるのか脱皮後の蛇のように あるいは真皮も筋肉も内臓も露出した人体標本それとも全く新たな人類そしてその時にわたしの自我はどうなるのかわたしの広汎...

  • 幸せの魔法

    魔法使いのパパに一日だけその力を貸してと言ったらお前も遂にそういう年頃になったかと相好を崩された手始めにまずは牡犬と人間の男を結婚させたら深く愛し合い生涯を共にしようと誓い合ったので拍子抜けした次にアラスカのイヌイットをアメリカ大統領にしたら国民全員が銃を捨て幸福になったのでがっかりしたじゃあと月の回る方向を逆にしたら世界中の詩人が詩作に没頭したほかは何も起こらなかったこんなんじゃ折角魔法使いの力...

  • 渡り廊下

    渡り廊下を歩いてた赤い草の茂る丘を越え海豚ののたうつ砂山を登り左手の生えた荒地を抜け延々と続く渡り廊下を歩いてた時々背泳して来る僧侶とすれ違い押入れに閉じ込められて泣いている幼い自分とすれ違い自転車で走り去る女学校の生徒とすれ違い少女が老残した盲目の婆さんとすれ違うこの渡り廊下はどこにつながっているのかそれは私の見たくない場所なのか約束された土地なのかしかしそれが分かったとしても 今になって戻るわ...

  • 地下教会

    君は立って待っている 同僚か彼女か あるいは 雲間から現れる銀の龍か時々腕時計を見たりしながらその足元の遥か地下に 教会があることを知らずにそこにはシャンデリアがかかりキリストの磔られた十字が架けられ祭壇があり 説教台があり周囲はキリスト生誕から復活までのタイル画で埋め尽くされている燭台には十三本の蝋燭が灯され聖水が準備されている君はそれも知らずに昨日犬の糞を踏んだ革靴をいらいらと踏み鳴らし吸いか...

  • トイレに飾られた花

    トイレで枯れている花はまだ咲いている手のひらから砂金がさらさらと零れるようにあなたはいつも私に背中を向けて眠るがそこで見るのは玩具になる夢か会議地獄かでもあなたが寝付くまで私はベッドから抜け出ないそして寝息を聴きながら深夜の街へ滑り出す黒犬の訝し気なまなざし社会学者の遠吠えサイレン サイレン静寂なはずの街は意外なほどの喧噪で私の嗚咽などかき消してしまう首筋が好きそう言ったはずのあなた自身の陶器のよ...

  • 風葬のご案内

    あなたがもしも死んだあと自然の循環の中に還りたいと望んでいたら風葬という方法を選ぶとよいかもしれない風葬と聞くとシルクロードの楼蘭の美女のように大自然の中に遺体を安置され草原を渡って来る風によって徐々に骨となり 骨が砂となり そして風とともに大地に戻っていくそういうことを想像するだろうおお 何というロマン自分は自然の元素の一つとしてある部分は大樹の葉を繁らせる養分となりある部分は海に戻ってプランク...

  • 余熱

    余熱で駆動するお前それは終わってしまった青春の余熱ではなく始まらなかった人生の余熱読む前に「完」の文字が記された長編大恋愛小説の余熱投げる前にキャッチャーミットに収まった118キロの直球の余熱すべては終わり、しかしすべては始まっている山奥の杣道を草を薙ぎ払いながら歩いていけば158年間誰にも詣でられていない地蔵があり モアイ像があり互いにいつになったら夢精してくれるのだろうとひそひそ話をしているだから心...

  • 青春

    原宿の深夜の表参道を裸足で走った切ない切ない恋の歌を叫び、喚きながら声は同潤会アパートの壁に吸収され月が涙で曇ったうつうつまはる水車のコマネズミみたいに夢中で自分を痛めつけたそれは早速効果を発揮し左の脹脛が千切れ飛んだそこで二十四時間営業の薄暗いデニーズに入り胸とお尻の大きなお姉さんに注文しチョコレートパフェを正確に十三秒で食べたどれもこれも復讐であり自瀆だったそれでやっと鎖骨から異次元の真空に吸...

  • 蛇の脱皮

    蛇が羨ましい 繰り返す脱皮によって 常に自分を更新できる昨夜の男の移り香が加齢臭が躰に残っていても一回の脱皮で奇麗さっぱり消える 演歌のように 真夏の夕立のようにそれに引き換え俺はどうだ 同じ顔に同じペニスをぶら下げてできるのは漏れ尿の自然乾燥ウォシュレットで肛門周りの尻っぺたの清掃だからいつまでたっても総務部庶務課記録係なのだそれでいて俺はドライフラワーの美しさを愛する滅亡直前の王国の皇女のよう...

  • 花の名前

    濃茶褐色と白で統一された部屋に常に一輪の花が飾られているそれはあなたが活けてくれるものでこの部屋の唯一の色彩だあの花の名は何というのだろう野の花のように小さな花弁を持つあの花はしかし本来はその名を知るべきではないというより知りたい欲望そのものが花の聖性を蹂躙している名を知ろうとする行為が求愛だった万葉の時代ならまだしも名を花から切り離して知りたいということはその意味性の否定だ花はただそこにあり私の...

  • ちんどん一家の昼食

    顔を白塗りにしたままもりもりと昼食をとるそれはまるで田舎芝居の食事場面だちんどん屋の珍さんはご飯粒を飛ばしてが喋り倒し奥さんは時折茶々を入れ悦ちゃんは笑ってしまってなかなか食事が捗らない珍さんはやがてボーリングのピンでお手玉を始める奥さんは扇子の先から水を噴き出させ負けずに悦ちゃんは玉乗りをする待て待てそれは曲馬団の芸であってちんどん屋のやることじゃないしかし構うものか こちとら日銭生活者だ 芸人...

  • 神々のパレットⅡ

    美術鑑賞眼と関係なく大雪山系瀧見沼の紅葉の美しいと形容するしかない風景を前に詩人に何ができるというのだ神々のパレットに暗喩して一編の詩を書くことは可能だがそれは誰の心も揺り動かさない神の造った景色の方が数段勝っているから美しいものはすべてを蹂躙する美しいものはすべてを否定する美しいものはすべてを無力にするだから詩人は美の中の醜を探す神々のパレットは原色絵の具の散乱した板片で原色絵の具は色盲検査のツ...

  • 聖なるジプシー女

    ジプシー女が淫乱だと誰が決めた一生交合さえせずに死んでゆく そんな女もいるのに街から街へ 踊れる飲み屋を求めて漂泊しながら心はいつも神の方を向いているのに深夜に敬虔な祈りと共に休み朝 清しき陽射しの中に起き少しの水とパンだけで一日を始める穢れは最も清浄なるものに近く俗なるものは聖なる存在に転移するしかし仮に交合していたとしても それが多数の異性または同性相手であったとしてもジプシー女が聖女であるこ...

  • 早く僧侶を入れてくれ

    早く裏口を開けてくれキャデラックでやって来た僧侶が待っている金糸雀色の風呂敷包みを抱えてぐずぐずしないで家の中へ入れて極楽往生の道を示させてやってくれまだぴんぴんしてるってそんなことは関係ない人間は生きながらにして死んでいるだから極楽往生の途は早めに知るに越したことはないのだ僧侶を裏口から入れたら扉には忌中の札を貼って五鈷杵(ごこしょ)を四方に置いて結界を張り邪鬼も疫神も女子高生も越境できないよう...

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