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  • うの華 番外編6

    窓辺で二人がそんな話をしていた時、不意に姉がおやっとした顔付きをした。そんな彼女の顔を見て、子供は何だろうと思った。「智ちゃん、いつ迄も何してるんだ!。」叱る様な声が智の直ぐ傍で響いた。子供はビックリして声のした方向を見た。智の直ぐ傍に子供がいた。「あれ、史くん!。」『さっきもう帰ったんじゃないのか?。』と、智は遊び友達の史の姿を自分の直ぐ真横に認めて驚いた。「智ちゃん、迎えに来たんだ、帰ろうぜ。」史は姉妹の家の窓辺に一瞥をくれてから、臆する事無く智に言った。「ここで長居し無い方がいいぞ。」。史の登場とその横柄な態度に、窓辺の姉は不愉快に思いながらも、ははぁんと判じた。先程から彼女の背後で何かしら忙し無くバタバタと動いていた彼女の妹、その彼女の目的、それが何であるのかに漸く姉は気付いたのだ。そこで彼女は後...うの華番外編6

  • うの華 番外編5

    姉も妹のこの落胆ぶりに言葉が無かった、妹の顔から目を逸らすと、ほうっと溜息を漏らした。「次が有るわよ。」「有るかしら。」「有るわよ、お前なら。」「私は行かずだから有っても無いわ、よ。だけどお前は嫁に行きたいんだから、必ず有るわ、ね。」と、姉は明るく静かに言うと、外の方を向いて微笑んだ。窓には日中の陽光が穏やかに差し込んで来る。「分かったかい、私は行けずしゃなくて、行かずなんだよ!。」窓の外の子供に向かって、姉は叫んだ。彼女の叫びはそう大きな声でも無かったが、外にいる子供の耳にでもよく聞き取れる声だった。『いかず?、いけずの間違いじゃ無いのかしら?。』外の子供には又謎の言葉が増えた。この世は謎だらけだ。お芝居しなくて良いなら、と、妹は思う。『お誂え向きに、丁度よく目の前に子供がいる事だし…。』彼女は破談でむ...うの華番外編5

  • うの華 番外編4

    子供は涙の訳を話し始めた。自分が悪いのだと言う。「へー、自分で自分の悪い所が分かるの?。」彼女の何時もの茶々が入った。「そんなだからいけずと言われるのよ、姉さん。」直ぐに彼女へ妹からの嗜めの言葉が入った。少し静かにしてその子の話を聞いてやったらどう、親切に。と、妹に促されて、彼女は渋々、「で、話の続きは、」と、目の前の子供に話の続きを促した。子供の方は姉の言葉に出鼻を挫かれた感じでいたが、促されてはみた物の、実際何を如何話し始めて良いか分からずに困惑していた。モジモジと口を開かない子供の様子に、この手の対応に慣れている姉の方は、ははあん、話し方が分からないんだねと、「あんたと誰が?」「何処で?」等、定番の5W1Hの問い掛けをしてみる。「喧嘩したのかい?」「何か壊したの?」等々、あれこれと口にしてみる。そう...うの華番外編4

  • うの華 番外編3

    寺からの帰り道、何時ものお姉さんと顔の合った智だ。「あんた、お寺で何かあったのかい?。」お姉さんは尋ねた。お姉さんは彼女の家の窓辺に顔を出していた。この窓辺の前を先程史が通って行ったのだ。彼女はその時、史のせいで智が悪影響を受けた、悪い言葉を教えたね、と、窓から罵った。すると史の方も負けてはいなかった。自分は教えて無いさ。智にしても本当の事を言っただけだろう、と、一向に怯まなかった。そうして、あいつは間が悪い奴だから、寺で何か嫌な事に出会して、あんたそのとばっちりを受けたんだろうさ。と悪態をついた。続けて史は、事は昨日の事だったんだろう。丁度寺が取り込んでた時だよ、姉さんはその時、ムシャクシャでもしてた智に出会って、きっと八つ当たりされたんだよ。それだけさ。とにべも無く、彼女は子供にやり込められた。「ふん...うの華番外編3

  • うの華 番外編2

    さて、暫時遊んでみると、今日もこの境内には誰もやって来無いという閑散とした気配が漂い始めた。もしかすると、と、その静寂を察知し始めた智だった。見ると、何時の間にか本堂の所に居た住職さんも消えていた。『これは帰った方が良いだろうか?。』智は不安になった。「こんな所に箒だけ有る。」本堂の下の踊り場に遣って来た智は、投げ出された様に無造作に放置されている竹箒を眺めた。これは先程住職さんが使っていた物だ。当の住職さんは何処へ行ったのやら、側には影も形も無い。不思議に思い智はキョロキョロと辺りを見回した。それから石段を降りると、智は山門に向かって歩き出した。帰宅するつもりだった。門の外、通りを見晴るかすと人の気配は無い。やはりそうだ、これは来てはいけ無い合図だと、智は八百屋のおばさんの言葉を思い出した。将にこれが寺...うの華番外編2

  • うの華 番外編

    「本当にあの子そんな事をお姉さんに言ったんですか。」「言った、確かに言った。しかもその後急いで走ると、ピューっと逃げて行ったんだよ、あの子が。」屋内で、さも意外だと言う風に、そん事を驚き、慌てふためいて話し合う姉妹がいた。「あの、いつもお姉さんが話し掛けて気にしてます子でしょう。」「そうなの、あのふっくりほっぺの可愛い子よ。」「そんな事、信じられませんけどねぇ。」「でも、本当なのよ。」…。聞き間違いでは無いかと言う妹に、否、確かに「いけずの姉さん」とあの子は言ったと姉は答えた。妹は言う、「意味を知ら無いで言っているのでしょう、もう一つの方の意味の方じゃ無いかしら。あの子の年代ならそっちの方を言うでしょう。」妹の言葉に、姉はそうかしらとやや安堵した。「ならそれでも良いけれど、そうね、あんな小さな子が嫌味を言...うの華番外編

  • うの華4 60

    住職さんは、いかにも大人の余裕とでも言いたげに胸を張ると、しゃんとした姿勢になり、その場で両の足を踏み締めた。仁王立ちとでも言うのだろう。如何にも威風堂々としていた。それは私達が見る何時もの住職さんの姿だった。子供と話をすると、これだから困る。何処まで知っているのか知らないのか、こっちも判断に困る。彼は私に背を向けるとブツブツと、頭を掻きながらそんな事を独りごちていた。それから又私に向き直ると、「なぁ、」と、同意を求める言葉を掛けて来た。私が見上げる彼の顔は笑顔だった。そんな事を言われてもと、私の方は返事の仕様も無いという、眉間に皺という難しい顔をした。「まだ帰ら無いのかなぁ。」、あの子供は。鈍な子ですからなぁ。そんな言葉を本堂の中で交わす舅と嫁。こちらは寺の先代の住職と、現在の住職の嫁、若奥様であった。...うの華460

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