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よも 言葉のアトリエ http://apismos.blog.fc2.com/

言葉で描くみえないこころ。 縦横高さ、時間軸、いつか 見えてくるでしょうか? 拙いながらの一綴り、ジャンルは絵のように…詩や小説の創作物を載せています。 どうぞお気軽にお立ち寄りください。

上遠野世方
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2020/06/20

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  • アツシのカレイドスコープ(七)

    七、アツシのカレイドスコープ アツシの部屋には古びた骨董品のような机がある。以前粗大ごみに捨てられていたものを拾ってきたという。椅子はビール瓶のケースだ。二個積み上げてある。万華鏡は二つしかない引き出しの右に入っていた。手に持つとこれも古い。母に買ってもらったというが本当にそうだろうか?和紙のはげ落ちた筒はブリキでできているようだ。覗くと決まった形のピースが複雑な幾何学模様を描く普通の万華鏡だ。...

  • アツシのカレイドスコープ(六)

    六、アツシは万華鏡を見ていた それから数日、アツシとは違う気配を部屋の外に感じるようになった。アツシが新たな仲間でも連れてきたのかと内心恐れよりも厄介ごとがまた増えるのかと気をもんでいた矢先のことである。「夜さ、誰かと話ししてるよね。もう来ないでくれとか、お前は死んだんだとか、あれ絶対会話だった。アツシって誰?」不意にタイチが言ったものだからマモルは飛び上がってしまった。部屋の外に感じた気配は...

  • アツシのカレイドスコープ(5)

    五、台風一過のゲロ 台風九号が本土上陸で災害危険高まるといわれていたが運よく東へと避けて行った。一安心した。それでなくとも小さな台風が我が家に居座っているのだ。そして年齢も同じということから、たぶん同じクラスに来る。考えるだけで憂鬱だ。これも被害状況の拡大といえようか。次の日にはこれまで味わったことのない緊張感にさらされていた。もちろんタイチの登校日のことである。従兄弟としての紹介に始まり、そ...

  • アツシのカレイドスコープ(四)

    四、アレルギーな従兄弟登場 ぼくは無様なゴミの町で暮らしている。通学路の二十分間にいやというほどそれを味わう。空き缶にペットボトル、それに空になったカップ麺。ペットのウンチも落ちている。途中にゴミステーションがあるが、指定曜日でない日にゴミを出すせいもあって、カラスが散らかしていることがある。醤油のミニボトルやお弁当仕切りのバランなどは臭いを発し、想像過多なぼくの胃袋は急に逆流しそうになることが...

  • アツシのカレイドスコープ(三)

    三 トモの家にタクシーが止まった 日曜の朝、隣の幼馴染トモの家にタクシーが止まった。若宮友美。通称トモはぼくの一歳上になる幼馴染だ。なんとなく見ていると、トモの母親が両手にバックを持ちながらタクシーに乗り込んだ。トモも父親も出てこない。タクシーも走り去ってしまった。目線を離そうとすると裏口からトモが飛び出して来た。そして家庭菜園の畑を抜けて北の路地へと走って行く。ぼくは反射的に部屋を飛び出すと玄...

  • アツシのカレイドスコープ(二)

    二、時間は消しゴムのように 時間は消しゴムのようにアツシの思い出を消していった。三週間になろうとする頃には話題に浮かぶことすらなくなっていた。時間は猛烈な勢いで出来事のすべてを過去にしてしまう。出来事はアルバムの片隅に納まって、記憶の部屋のどこかに片付けられて行く。もし過去に引っかかっていたら、現実や未来、ここでこうしている今の時間に取り残されてしまう。現実も一時の流行みたいなものなのだ。でもぼ...

  • アツシのカレイドスコープ(一)

    一、アツシが死んだアツシが死んだ。シゲオもノリオもトモコもサチも泣いていた。ぼくの心は暗い底に沈んでいたが、悲しいともかわいそうとも思わなかった。涙すら出なかった。反対に心のどこかでは羨ましいとさえ思っていた。生前のアツシは学校ばかりか、父兄の間でも決して評判は良くなかった。いつも問題を起こし、意地悪もするし、万引きもしていた。どこかすねたところがあって、友達も先生も最後には無視するようになっ...

  • しずかの神隠し談(六)

    「干渉ってどういうこと。私の夢に干渉したの。そんなことできるの?」「欄さんは…これ言ってもいいかな…」「どうぞ」「欄さんは岩戸神社の巫女でね。そういうことができる体質なんだ」「…霊能者とか」確かに彼女の雰囲気を思うとまさにそんな感じ。「そうだね。そうとも言えるかな」すると欄さんが恐ろしいことを話し出した。「いいえ違います。私の半分は死んでいるのです。平田篤胤は幽世(かくりよ)こそ本世(もとつよ)とお...

  • 静香の神隠し団(五)

    …いきはよいよい かえりはこない…こないながらも…かえ~らんセ かえらんセ~ センジュフダには人封じと忌のイトが織られていたよ…静河はそう言った。そしてそれだけではない。静河は自分とは正反対の女性を連れていた。いわゆる影のような女性をである。全身黒づくめで季節柄暑苦しそうに見える。がその肌には汗のひとつも浮かんではいない。ロングの髪をポニーテールのようにまとめ後ろで何重にも結っている。肌色は白い石膏の...

  • しずかの神隠し談(四)

    携帯を手にしたまま寝付かれない夜を過ごした。連絡が取れないとしりつつも、圭太と雅人に連絡を入れてみるが何の反応もない。三時過ぎだろうか突然携帯が歌い出した。『とおらんセ とおらんセ~…ごようのないものとおしゃせぬ~ …わたしのみたまの願かけにおふだをおさめにまいります~…』 なに。なに…なんなの。歌を止めようと携帯を持つと画面にそれが見えた。着信『鳥場鏡子』と。えっ。どうして…ああ~貧血だろうか。未...

  • しずかの神隠し談(三)

    ごようのないものとおしゃせぬ~わたしのみたまの願かけに~おふだをおさめにまいります~… 三日が過ぎた。以前として圭太には連絡が取れないでいる。静河からはなんの返事もない。サークルの仲間にも尋ね回ったが誰も知らない。気にはしているようだが鏡子の名を出すとどこかとおじけづく。あんまりかかわらない方がいいよ。と言われるとますます鏡子という存在が暗い影を帯びていく。そんな中、大学の校門先でスーツ姿の男...

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