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人生、仕事、夫婦に効く本100冊 https://businesspapa.hatenadiary.jp/

外資系メーカーに勤めて四半世紀。愛妻と二人の子供と暮らしています。昔から本を読むのが大好きで、40代の今、読んで楽しい、そして人生、仕事、夫婦に効く、そんな本をご紹介させていただきます。

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2020/06/10

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  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(7)2千年前ー包括的政治制度の萌芽と巨大帝国の成立

    人類が古代において経験したもっとも重要なできごとの一つは、国家を形成することだった。国家の多くは当初、都市そのものが政治的な独立を保持してひとつの国として機能する「都市国家」の形態をとっていた。しかし、古代ギリシアのポリスのように、都市国家そのものが長く機能し続けたケースは少なく、多くの場合、都市国家はより強力な国家に征服されたり統合されたりした。こうしてできあがった領域国家が、古代の諸地域に出現したが、中でも広い領域や多数の住民を強力な軍事力を用いて征服、支配する国家が生まれた。これが帝国である。 帝国は古代世界にいくつもあらわれる。ヒッタイト、アッシリア、アケネメス朝ペルシア、殷、周などで…

  • 『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』ハイライト

    困難や苦労があるから、いろいろ考えたり、想像力が広がり、よい人間関係を築く力がつく。幸せな人生は、よい人間関係によって築かれる。 幸せな人生は喜びにあふれている・・・けれど、試練の連続だ。愛も多いが苦しみも多い。それに、幸せな人生とは偶然の賜物ではない。幸せな人生とは、時間をかけて展開していく一つのプロセスだ。波乱、安らぎ、楽しさ、重荷、苦闘、達成、挫折、飛躍、それに恐ろしい転落がつきものだ。そしてもちろん、幸せな人生も必ず死を迎えて終わる。 陳腐な話に聞こえるのは百も承知だ。 それでもはっきり言おう。幸せな人生は楽な人生ではない。完璧な人生を送り方法など存在しないし、あったとしたら、ろくなも…

  • 『UAV あなたが知らない あなたの会社だけの強み』販売戦略の再検討時に手元に置いておきたいガイドブック

    これからプロモーション、販売戦略を考え直したい自分にとって、素晴らしい教材でした。繰り返し確認したい箇所を備忘録として。 顧客のインサイトを捉える重要性 Unique Attractive Value(顧客に選ばれ続ける価値)の開発 UAV開発の3ステップ UAVの効果を最大化するポイント マクロWHO/WHATとマイクロWHO/WHAT 多様なケースを100本ノックするとノウハウは急速にたまる 顧客のインサイトを捉える重要性 まずは、顧客が求めるものを理解し、逆算的に要件を洗い出し、顧客が対価を支払っても買い続けたくなる価値ある商品やサービスを開発すること。そして、その価値がしっかりと伝わる…

  • 『国家はなぜ衰退するのか』多元的な政治的中央集権とイノベーションを育む包括的経済制度がなければそうなる

    「制度」は実生活における行動やインセンティブに影響するため、国家の成功や失敗を形作ることになる。 ビル・ゲイツは、アメリカ合衆国の学校制度によってスキルを身につけ、その経済制度が担保する低い参入障壁のもとで起業を果たし、信頼できる政治制度のもとで権利を脅かされることなくイノベーションに挑戦し成果を享受した。カルロス・スリムは、メキシコにおける政治的なコネの重要性を活かして国営電気通信企業を傘下に収め、特権の維持が可能な法制度を利用して参入障壁を維持し、独占を恣にして莫大な財を築いた。彼らも結局のところインセンティブに反応したのだ。 国によって経済的成功の度合いが異なるのは、制度、経済の動きを左…

  • 10分間フォアハンドレッスン by パトリック・ムラトグルー

    ムラトグルーコーチが教えるフォアハンドレッスン。10分強の動画内で11個のポイントが示されるが、連動して行うことで、パワー、安定性、対応力のあるフォアハンドストロークになる、というもの。 体重を使う 準備がカギ 前に押す 短く構えて加速する 打球を分析する 手首を返す フォロースルー 加速を意識する 打球をカーブさせる 手首を使って加速する 体重を使う 後ろから前へ、体重を乗せて打つ。リターンでしっかり体重を乗せ踏み込んで打つひとつの方法として、ベースライン後方で構える。必然的に前にステップインして打てるようになる。 準備がカギ 横に動きながら打っていては体重を乗せられない。打点に向かう前にラ…

  • 『50代にしておきたい17のこと』50歳のいま、やりたいこと

    本田健さんが勧める、50代にしておきたい17のこと、の目次。そして50歳のいま、自分なりにやりたいこと。 1. 残りの人生でやりたいことを決める 50代は、どう攻めていくかで決まる:自分で意識してやりたいことだけやっていく。 10年かけてやりたいことは:5年かけて、組織メンバーの力を解き放ち、各々が有機的につながって、自律的にイノベーションと成長を促せるプロセスを確立したい。後半の5年で、どこでもそのプロセスを回せるようになりたい。 好きか、嫌いかで決める:好きな仕事をする。仕事は毎日6時半までに終わらせる。夜と週末は好きなことをする。 先立つ後悔のリストを作る:子供たちと楽しい思い出をたくさ…

  • 『住まいの解剖図鑑』から模様替えの参考点をメモ

    本書は「住宅設計を学ぶ建築系の学生向け」に書き始められたのだが、「もしかすると、これから自宅を建てようとする一般の人にも」これくらいの知識は身につけておいてもらっていいんじゃないか、と軌道修正され、解剖図鑑と相成ったらしい。 そして自宅を建てようとしている訳でもない、家の模様替えの参考書を探していた私も、軽妙な絵と文章、そして経験豊富な建築の先生らしい説得力に引かれて購入したのであった。 なので本書にはもっとたくさんのためになるポイントがカバーされているのだが、私の模様替えの指針としたい箇所を備忘録としてまとめておく。 玄関:靴ぬぎラインはホッとライン リビング:リビング=Sitting Ro…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(6)2千5百年前ー鉄器の普及と社会の振れ幅の拡大。

    古代グローバル文明とも言える青銅器文明崩壊後、人類が迎えた新たな岐路は敵機の普及であった。このイノベーションは、社会の振れ幅をさらに大きくしていく。 2千5百年前ー鉄器の普及 トマ・ピケティの『21世紀の資本』では、超長期で見た経済成長の規模感が示されている。紀元0年から1700年までの経済成長率は、0.1%以下だったらしい。厳密には、人口増加率の分が0.06%、一人当たり生産性の成長が0.02%だ。これでは毎年の成長など感じようもないが、1700年続けば2.3億人の人口がが5.9億人まで増えるのである。近代以前の人類社会の成長速度とは、このぐらいのものだったのである。さらに遡ると、人類の定住…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(5)4千年前ー古代グローバル文明の形成と崩壊。次代への試行錯誤。

    各地に領域国家を成立させ、それぞれに必要な社会のあり方を選択し始めた人類は、古代グローバル文明を形成し、そして崩壊させた。これもまた、次代への試行錯誤の過程である。 4千年前ー古代グローバル文明の形成と崩壊 紀元前3千年紀の青銅器時代に、エジプト、ヒッタイト、ミケーネ、アッシリア、バビロニアなどの古代国家は地中海世界にグローバル文明ともいえる国際交易体制を形成した。それぞれの王国、帝国は地域の覇権を巡って争い、陰謀をめぐらしつつ、同盟や縁戚関係を結び、食料や貴金属、青銅の原材料から技術者、芸術家などの人材までを相互に送り合う大規模な交易を行なっていたことが考古学的な資料から明らかになっている。…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(4)4千年前ー領域国家の成立。それぞれの社会に必要なあり方の選択。

    情報を記録するために、数千年の試行錯誤を通じて文字体系を確立した人類は、各地に領域国家を成立させ、それぞれの社会に必要なあり方を選択して行く。 4千年前ー領域国家の成立 紀元前3千年紀、メソポタミアからエジプトに多くの領域国家が誕生した。マックス・ウェーバーは「国家とは、特定の地域内で合法的に使用可能な強制力を独占すると主張する機関である」と定義した。多くの社会学者たちは、社会が複雑になるにつれ、ものごとを調整するため「トップダウンの指揮構造が必要」となり、食料の自給から解放されたフルタイムの専門家と、彼らが管理する制度が生まれ、国家となったと主張した。 『万物の黎明』で著者たちは、都市国家や…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(3)5千年前ー情報の記録。数千年の試行錯誤で完成した唯一の文字体系。

    温暖化した地球上で定住を拡大し、社会的な試行錯誤の幅を広げた人類が迎えた次の岐路は、情報の記録を可能する、文字体系を確立したことだった。 5千年前ー情報の記録 人類は数万年前から、動物の骨に刻み目をつけたり、洞窟に絵文字を描いたりして、ものごとの記憶の補助としてきた。定住の拡大にともなって交易や農業などの経済活動が盛んになると、人々はどうにかして原料、生産品、働く人、戦う人、畑の広さ、収入と支出などを管理しなければならなくなった。それまで使っていた記憶術ではもはや不十分で、何か全く異なる新しい方法が必要になった。おそらくそれが世界最古の図形的象徴をもたらし、長い期間をかけて完全な文字として確立…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(2)1万2千年前ー定住の拡大。社会的な試行錯誤の進展。

    認知能力が発展して言語を身につけ、仮説検証という独自の行動を始めた人類が迎えた次の岐路は、定住の拡大であった。 1万2千年前ー定住の拡大。 最終氷期がついに終わりを迎えて完新世という気候が温暖な時代に突入し、より容易となった狩猟採集とともに初期の農業が始まった。 人類は「農業革命」、すなわち栽培による食料獲得を発明したことで、定住が広がり、集団はより大きく、社会は複雑になりヒエラルキーが生まれ、現在の人間社会の礎と、自由を奪う軛、それらがともに誕生した、というのが人類史の常識とされていた。 しかし、人類学と考古学を丁寧に検証した『万物の黎明』の著者たちは新しい科学的真理を提示する。人類の歴史は…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(1)7万年前ー認知能力の発展。仮説検証する人類の始まり。

    人類が他のホモ属と一線を画すようになった最初の決定的な岐路。それは7万年前ごろ、認知能力の発展によって仮説検証という人類のならではの行動が始まったことだ。 7万年前ー認知能力の発展 ホモ・サピエンスの社会はなぜこれほど発展したのか。きっかけは7万年前に起きた認知革命だ、と『サピエンス全史』でユヴァル・ノア・ハラリは言うが、この時期に革命的な突然変異があったのか、数万年の時間をかけて他のホモ族と一線を画す変化が起きたのかはわかっていない。ただ、約30万年前に誕生した人類が約5万年前にアフリカを出るまでの間に、認知的な革新を起こしたことは定説のようだ。 「なぜそれが起こったのかは、私たちの知るかぎ…

  • 試行錯誤の軌跡:人類の歴史を探る(0)全人類の通史を深く学び始めたきっかけ

    高校で世界史を好きになってから30年以上が経つ。学校で使った世界史年表は社会人になってからもしばらく持っていたのを覚えている。見開きに収まる情報量には限りがあるので、当然のごとく時代ごと、地域ごとに区切られていた。歴史は時代を越えて続いていくものだし、地域が違っても同時代人は影響しあっていたはずだから、全部ひとまとまりの年表があったらいいのに、いつか自分で作りたいなと、思ったものだった。 ChatGPTという、歴史にまつわる質問をすれば即座に文章で回答をくれる道具が現れたので、Wikipediaでざっくりファクトチェックをしながら、自分なりの年表を作ってみることにした。7万年前から現代まで、全…

  • トマ・ピケティによる現代の古典『21世紀の資本』

    「本書は経済学の本であるのと同じくらい歴史研究でもある」とトマ・ピケティ自身が書いている通りで、経済学だけでなく、歴史や社会に関心がある人、長い本が読める人はみんな読んだ方がいい名作だ。文章は非常に平易で、有名な "r > g" に加えて2つほど数式が出てくるが、現代と両大戦前の社会との対比を、19世紀当時の人気小説を使って繰り返し説明するなど、できるだけ親しみやすく書かれている。 もともと、人類史における経済成長の定理を知りたいと思って読み始めたが、メインメッセージは、既存の資本主義が生む格差を是正し持続的な社会を作るには、累進資本課税がベストな解決策ではないか、という提言であった。膨大な資…

  • 『B.C. 1177 古代グローバル文明の崩壊』紀元前1177年 地中海文明の転換点

    本書はエリック・H・クラインによる歴史書で、青銅器時代にグローバル文明ともいえる国際交易体制を築いた、エジプト、ヒッタイト、ミケーネ、アッシリア、バビロニアなどの古代国家がほぼ同時に崩壊の危機に直面した謎を探る。古代世界における複雑な相互作用と、文明がどのようにして危機に陥るのかを理解する上で貴重な洞察を提供している。 B.C.1177 (単行本) 作者:エリック・H・クライン 筑摩書房 Amazon この危機の時代は「前1200年のカタストロフ」と呼ばれ、その原因は昔から歴史の謎とされてきた。考古学的に裏付けのある主たる客観的事実はこうだ。 数多くの独自の文明が、前15世紀から13世紀にかけ…

  • ルーネとバックハンドスライスを学ぼう パトリック・ムラトグルー

    ムラトグルー師がホルジャー・ルーネに授けた、バックハンドスライス12の教え。 体の近くでボールを捉える。ボールを前で捉えた場合、それ以上押せない。 ラケットは前へ振り切る。ラケットをサイドに振らない。 ラケットを長く前へ振る。腕が伸び切るまで前に出す。 体を打ち出す方向に寄せていく。そのまま体で前に押していく。 体は打ちたい方向に対して真横を維持する。 上腕も前に振り出す。横に切らない。 打点は前足あたり。それより前で打たない。 時間をかけてさらに回転をかける。 横に走りながらでも、最後は少しでも前に押す。体を打球方向に持っていく。 カットしてドライブする。コンタクトしてドライブする。 ステッ…

  • 『文字の歴史』社会的必要性から人類が選び抜いた発明品

    完全な文字とはなにか。次に挙げる3つの基準を満たすものである。 意思の伝達を目的としている。 紙など(あるいは PC モニターなど電子機器)の表面に書かれた、人工的な書記記号の集合体である。 意味を持つ音声、話しことばを系統だてて整理し、それに対応する記号(あるいは意思を伝達するためのコンピュータプログラミング用の記号)を使っている。 文字はどこからともなく生まれたのではないし、神の創造の賜物でもない。紀元前4000年紀の半ば頃に、複雑な勘定を処理するのにより良い方法を意図的に探したウルクのシュメール人が「発明」したのでもない。集団的努力あるいは偶然の発見によって完全な文字が生まれたのでもない…

  • 人類史の新たな古典:『万物の黎明』の衝撃

    人類学者のデヴィッド・グレーバー、考古学者のデヴィッド・ウェングロウの共著。「人類史を根本からくつがえす」という副題の通りに、作家のケン・フォレットが書評を寄せている。「本書は、人類の歴史についてこれまで信じてきたことを全て爆破させる爆弾だ」と。 私たちが信じてきた人類の歴史。古代は未開で単純な社会だった、農業革命が不平等の起源となった、人類社会はイノベーションにより線形に発展してきた等。 著者たちは膨大な研究資料で裏付けしながら、これらの「常識」をくつがえしていく。「シリアス」ではなく「遊戯」が著者たちの大切なテーマでもあるので、訳書の語り口もやさしい。とはいえ壮大な内容を、膨大な証拠ととも…

  • 完璧なボレーを打とう パトリック・ムラトグルー

    ムラトグルー師が教える、シングルスの中でネットに出てボレーを決めるために大切なこと。 ベースラインからネットへの出方 相手のボールが浅くなったら、アタックして前に出る。まずポイントは2つ。まず、出るべき浅さを決めておくと迷わなくなる。私の場合はベースラインとサービスラインの中間よりも浅くなったら出ると決めた。次に、アプローチはアタックである。しっかり深く打つ、もしくはしっかり滑らせる。 ファーストボレーでのネットへの詰め方 アプローチショットを打ったら、出来るだけ速く、前に詰める。そして相手が打つ直前に、スプリットステップを踏んでコンマ何秒かでも止まり、返球の方向を見る。 そしてまた、出来るだ…

  • プロのようにサーブを打つ9ステップ パトリック・ムラトグルー

    ムラトグルー師のサーブの教え。彼はスライスサーブを推している。 1. 肩を回す 2. 手首を自由にする 3. 自分のリズムを見つける 4. 前に叩く 5. 手が先 6. サイドスピンを加える 7. ボールの下にとどまる 8. トスを右にあげる 9. スライスサーブのレベルを高める www.youtube.com 1. 肩を回す ボールを投げる時と同じように、左の肩から右の肩に入れ替えていくように回す。こうやってボールを叩くと、自然にスライス回転がかかりやすい。 2. 手首を自由にする ラケットを投げ出すように手首を自由に使う。手首のスナップを使うことは回転をかける重要なコツである。 3. 自分…

  • ムラトグルー流テニスマスタークラス:週末プレーヤーのための究極のオンラインレッスンガイド

    パトリック・ムラトグルーはフランス人のプロテニスコーチ。南仏にアカデミーを構えて、ATPやWTAのトッププロからキッズまでを指導しており、非常にたくさんのレッスン動画をYouTubeやインスタグラムにアップしてくれている。 日頃オンコートでコーチに指導を仰ぐのはもちろん勉強になるのだが、オンコートにいない日の方が多い週末プレーヤーとしては、動画で学べるのは非常にありがたい。この方、セリーナ・ウィリアムズやステファノ・チチパスらを教えている人なので当然コーチスキルはものすごいと思うのだが、語り口が軽妙、かつ様々な項目にわたって大量に動画配信してくれているので、学びたい項目を選んで視聴できる。理論…

  • NVC (Nonviolent Communication) を身につけて、自分と他人を大切にできるようになる

    自分と、自分の大切な人とのコミュニケーションをよりよくするためのスキルとして、非常に有効だと思う。ガンジーの提唱した原則が「非暴力」だけでなく「不服従」とセットであったように、Nonviolent Comumunicationの原則も、言葉の非暴力を謳うだけでなく、自分の怒りをどのように扱うことが双方にとって有意義になるかもしっかりと教えてくれる。非常に素晴らしい本でありスキルなので、備忘録としてハイライトした箇所をまとめておく。 NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版 (日本経済新聞出版) 作者:マーシャル・B・ローゼンバーグ,安納献 日経BP Amazon Nonviolent …

  • 為末大さんの『熟達論』に基づき、週末テニスプレーヤーがレベルアップを図る

    為末大さんは「死ぬまでに現代版の『五輪の書』を書いてみたいです」と言って本書の執筆を始めたそうだ。引き込まれるように本書を読み、自分のテニスにおける「型」とは何かを考え、試し続けた2ヶ月。40年続けてきたスポーツで、これがきっかけで短期間に上達を実感でき、大会でも結果が出た。為末さんには感謝しかない。私にとってはまさに「五輪の書」だ。 五段階の教えの中で自分のテニスに落とし込んだ点を、まとめておくとします。 第一段階 遊 不規則さを身につける 遊びとは何か 思いきり動く 失いたくないと守りに入る 第二段階 型 無意識にできるようになる 型とは何か 型は遊びを発展させる 模倣とは観察と再現 第三…

  • 『習近平政権の権力構造』を読んでイノベーションの限界と対台湾工作に思いをはせる

    中国国家主席を3期連続で務める習近平氏。彼が頭脳明晰で強い信念を持つ人物であることはよく理解できた。「悪の権化」などではなく国民のための「共同富裕」を本気で目指していて、権力欲以前に「共産主義」の正しさを信奉する人のようだ。だからこそ余計に、彼がリードする中国は、国際情勢に大きな不安をもたらすし、独裁体制で突き進んでいくことになる。 本書を読んで認識したのが、お隣の台湾がこれから10年、ウクライナ侵攻のような直接的な戦争でなくとも、激しい荒波に見舞われるだろうこと。 本書を読んで想像したのが、どれだけ優秀な独裁者が率いようと、今のままの中国だと、イノベーションと経済成長が止まってしまうだろうこ…

  • 『言語の本質』を読んでホモ・サピエンスの認知革命の原因を理解する

    これはすごい本なのではないだろうか。 『サピエンス全史』でユヴァル・ノア・ハラリ氏が提唱した認知革命。7万年前にホモ・サピエンスに認知的革新が起きて、他の種を圧倒して進化してきたことは、多くの学者が認めるところらしい。 認知革命のおかげで、虚構、すなわち想像上の現実である神話や法律などを言葉にして共有し、信じあうことで、人類は大規模に協働できるようになった。 『サピエンス全史』では、なぜその変異がホモ・サピエンスに起こったのかは、私たちの知るかぎりでは全くの偶然だった、重要なのは原因よりも結果を理解することだと、非常にさらっと前に進んでいく。 虚構を言葉にして共有し、信じあう。我々だけがそれを…

  • 制度が築く経済:大国の興亡と成長の三つの柱

    古代ローマがその絶頂期から衰退へと転じた瞬間を思い浮かべてください。一体何が起こったのでしょうか?歴史にそのような瞬間があるとすれば、私たちは歴史的な大事件を思い浮かべます。紀元410年に起きた西ゴート族によるローマ陥落とか。しかし著者らは、そのような大事件は衰退の結果でしかなく、原因は別にあると言います。 著者のグレン・ハバード氏は、世界的に有名な経済学者であり、彼の経済学入門書はアメリカの多くの大学で教科書として使用されています。本書では、彼がその専門知識を活かして古代ローマから現代アメリカまでの大国の経済動向を詳細に解析します。 著者らは「経済成長の基盤は制度である。制度で全てが説明でき…

  • 高インフレ・高金利時代の到来 - 人口動態の変化と新たな投資戦略

    この本で著者らは、この本で著者らは、長期に渡る低インフレと低金利の時代が終焉を迎え、大きな人口動態の変化が引き金となり、世界が高インフレと高金利の時代に突入しているとの主張を展開します。本書から得た洞察と、それを個人の行動にどう活かすか、を以下にまとめました。 高齢化と労働力の減少がもたらす高インフレと高金利の時代 人口動態の大転換が投資戦略に及ぼす影響 - ChatGPTと考える 高齢化と労働力の減少がもたらす高インフレと高金利の時代 中国をはじめとする新興国が世界経済に参入し、その巨大な労働力がグローバルな労働供給を増加させたことで、過去数十年間は、賃金とインフレが抑えられてきました。しか…

  • 違う場所、同じ挑戦:『ローマ人の物語』ユリウス・カエサルと『キングダム』嬴政が挑んだ歴史的統一と大変革の痛み

    こんにちは、皆さん。今回は、『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル編』と『キングダム』を読んで感じた共通点、カエサルと嬴政の下での大統一と政治体制の変革に焦点を当てて書いていきたいと思います。 大統一への挑戦 政治体制の変革と法の力 暗殺と後継政権 まとめ 大統一への挑戦 まずはローマから見てみましょう。ユリウス・カエサルが初めて執政官となった時代、ローマの版図は地中海沿岸部全域に広がり、元老院という寡頭制の集団指導体制下で領地を支配していました。カエサルはその外側に広がるガリアを制圧してライン川を境界線として確立。そしてポンペイウスとの内戦を経て、この広大な地中海世界を第一人者による独裁で安定…

  • "ゼロで死ね" - 家族との価値ある時間を増やすための哲学

    DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール 作者:ビル・パーキンス ダイヤモンド社 Amazon お金と時間の価値。これについて深く考えさせてくれたのが、「Die with Zero(ゼロで死ね)」という本です。この本は、1億ドルを超える資産を持つヘッジファンドのマネージャーによって書かれました。彼のメッセージはとてもシンプルです。 「墓場にお金は持っていけない。だから、元気なうちに自分や大切な人のためにお金を使おう。」 資産と健康の双曲線。年をとれば資産は増えるが楽しく使う体力はない。 この本は、私たちがどのように生き、どのように時間とお金を使うべきかという問いについて、…

  • 中級者が試合に勝つための『ベイビーステップ』1−16巻

    自分が挑むのは草トーナメント中級、市民大会B級。ベイビーステップのマルオ君たちのようにレベルは高くないが、試合に勝つ、という観点から読み返すと改めて響く箇所が多い。1−16巻、各巻から1箇所ずつポイントを抜粋。 1巻:ボールを迎えてリターン 2巻:自分の打ち方より相手を見る 3巻:3回戦を突破せよ 4巻:心も練習で訓練するもの 5巻:正々堂々、弱点を突く 6巻:全球が最後に前で決める狙い 7巻:身体が進歩すれば技も心も 8巻:パワーではなくパターンで攻撃 9巻:好きなことは頑張りやすい 10巻:1ポイントのスリルを楽しむ 11巻:いつも同じリズムのトス 13巻:全ての球をコントロール 14巻:…

  • 男性が家事レベルを上げるのに役立つ『勝間式 超ロジカル家事』

    男性にありがち?な家事レベルと推移。 レベル0。社会人になって一人暮らしを始める前。インスタントラーメンを作る以外の家事能力なし。このまま結婚すると非常にヤバイ。 レベル1。一人暮らしで最低限の炊事、洗濯、掃除を覚える。炊事は炭水化物を一品を作って食器を雑に洗う。洗濯は洗って干して畳まずにまた着る。掃除は見えるところ以外やらないというか「気にならない」。 レベル2。専業主婦の妻に任せきっていた家事に「協力」。ゴミ出しはゴミ集めから出来る。週末の料理は買い出しから洗い物まで心がけるが、シンクの汚れは放置しがち。洗濯はひととおり出来るが、つい「見落とす」ので干し忘れ発生。 レベル3。レベル2の弱み…

  • スライスだけで勝つ!シングルス編 テニス漫画『BREAK BACK』より

    シングルスをスライスだけで勝つのは、ダブルスより難しい。。 ダブルスではポイントの半分以上がネットプレーで決まる。だからいかにいい状況でネットプレーに行けるか重要になる 逆にシングルスはポイントの半分以上がベースラインプレーで決まる。ベースラインプレーってのはネットプレーよりもはるかに自由度が高い BREAK BACK 8巻で冴島コーチが語るように、ボレーと同じグリップのスライスはネットプレーにつなげやすい。一方でベースラインでスライスしか打てないなら自由度は激減して相手に攻められやすくなる。 スライスの正しい打ち方はダブルス編を参照するとして、しっかり滑るボールで低い打点でしか打たせないよう…

  • 大人も目から鱗が落ちる『13歳からの地政学』

    子供向けのようなタイトルだが非常に読み応えがあり、子供でも理解できるように平易な言葉遣いやわかりやすい例を用いて書かれている。自分が知らなかったこと、これまで疑問が解けた点をまとめる。 日本は世界第4位の体積。深い海とそのメリット 民主主義の本当のメリットとは なぜアフリカにはお金がないのか 対戦国に対する各国の国民感情 日本は世界第4位の体積。深い海とそのメリット 島国だがそれなりの人口を抱えるだけの大きさがあり、日本海という簡単には渡れない海を挟むため隣国から守りやすく、豊かな海産物に恵まれる。そういった地政学的な特徴は理解していたが、日本という国は体積が大きい、とは考えたことがなかった。…

  • 文系でも経済の大きな流れがよくわかる本『父が娘に語る経済の話』

    読みやすい文章と秀逸な例えで本当にわかりやすい。格差はなぜ起きるのか、何でも買える市場社会はどう確立したのか、そういった大きな問いに軽やかに答えてくれる。市場社会は未来から借金をして発展したこと。人は予言を自己成就するので経済は思い通りにならないこと。機械化の未来、中央銀行の役割と仮想通貨の限界。市場社会が地球を壊す可能性と解決策。 この本を読むと大きなストーリーがわかるので、逆にわからない細部はググって勉強することで、幅広く、深く、経済を理解することができた。 各章での大きな問い、そしてこの本とググった知識からの理解をまとめてみた。 なぜ「格差」があるのか? 市場社会、はどう確立? 市場社会…

  • ダブルスで使えるスライスのコツ4つ テニス漫画『BREAK BACK』より

    スライス、特にフォアのスライスは守りのショット、積極的には使わないというイメージがあります。しかしある日、リターンをワンポイントで見てくれたプロコーチから「ダブルス中心で勝ちたいなら、リターンはフォアもスライスにしてはどうか」とアドバイスされました。 まるで上条コーチに全部スライスで打てと言われた丸山君のように。。 BREAK BACK 3巻 全部スライスで打て もちろん誰にとってもという訳ではなく、私の場合は極端に厚い握りのフォアがイマイチだったからなのですが、実際にスライスだけでリターン練習してみると、かなり使えたんです。そこで改めてBREAK BACKを読み返したところ、ダブルスで使える…

  • マンガでテニス上達『ベイビーステップ』リズム編

    ストロークでの深く食い込まれた球、前衛で受ける速球や急に来たチャンスボール、足が動かず手打ちになることがよくありました。ボールを「迎えに行く」ことと、スプリットステップを含めた「リズム」。これらを意識するとスムーズに返せることを、ベイビーステップを読んで勉強しました。 ベイビーステップ(2) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:勝木光 講談社 Amazon マルオ君がまだ完全な初心者だった1巻、2巻、プロを目指し始める15巻、プロになった後の43巻など、いろんなレベルで「リズム」の大切さが取り上げられます。フォーム安定から、高いレベルでのストローク、ボレーの対応力確立まで、リズムは必要だとい…

  • マンガでテニス上達『ベイビーステップ』正しい打点への入り方と打ち方編

    テニスマンガ『ベイビーステップ』は主人公マルオ君の強みがボールコントロールなだけに、正しい打点への入り方、正しい打点での打ち方について、非常に丁寧に描かれています。 ベイビーステップ(8) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:勝木光 講談社 Amazon 適切な打点に入り、適切な打点で打つ 飛んでくるボールは毎回違うので、適切な打点に入る(立ち位置)。そして適切な打点で打つ(当て位置)。これがキホン①。 まず、適切な打点に入る。ボールにちゃんと追いついて、しっかり止まって、自分から近づくくことで体重を乗せて打つ。大切なのは右足をしっかりきめること。打点がぶれず、自分のタイミングで打てるように…

  • マンガでテニス上達『BREAK BACK』相手をよく見て予測編

    元選手、コーチのKASAさんが描くテニス漫画『BREAK BACK』。面白いだけでなく、週末テニスプレーヤーの自分に必要な上達のヒントが、丁寧に描かれています。 今回参考にしたのは、予測して準備、次の攻撃につなげる「相手を見て予測する」ということ。 相手を見て予測する テニス歴が長い割に、自分がどう打つかばかりを気にして、相手をよく見ていませんでした。相手が見えると、どこに打つかを察することができる。それが出来るか否かで、コートカバリングは全く変わります。さらには相手にプレッシャーをかけたり、次の攻撃につなげることが出来ます。 シングルスでもダブルスでも、自分が打ったボールは見る必要がなく、相…

  • 『マンガでわかる地政学 改訂版』国家は地政学を冷静に把握し生き抜いて行く

    マンガは導入と挿し絵程度なんですが、絵を有効活用しようという発想ゆえか、地図が多用されていて、地形や位置関係が国家間に与える影響がわかりやすいです。 その前に読んだ成毛眞氏の『39歳からのシン教養』に触発されて、本を読みながら気になった用語、人名、事件などをかたっぱしからWikipediaで深掘りするクセがついたのですが、本書はそんな読み方をすると理解が広がります。 超大国アメリカのシーパワー戦略や移民が国のキャラクターに与える影響。 ヨーロッパ半島の沖に浮かぶ島国イギリスにとってのウクライナの意味。 ドイツにとってのロシアの位置づけと独露関係を注視する英米の思惑。 朝鮮半島の分断を「必要」と…

  • 『自分で作るテニス筋力』股関節と肩甲骨の可動域を広げよう

    腰を落とすパワーポジションを自然に作りたい。ラケットを肩甲骨で引きたい。デスクワークも長いし健康とテニスのために姿勢を正したい。その辺に重点をおいたエクササイズをピックアップ! 正しい姿勢 デッドバグ リバースプランク デッドリフト プッシュアップ ロッキングチェア ハーフニーリングツイスト アジリティーステップ 肩甲骨の可動域を広げる 正しい姿勢 基本的に猫背。一日最低10時間は椅子に座る生活。椅子に座りながら正しい姿勢をキープすること、顎を引いて肋骨を前に出して首や肩の力みを抜くこと。この2つはテニスにも健康にも大きなインパクトがありそう。とりあえず今日からやってみる。 日頃から意識してお…

  • エマニュエル・ドットの『第三次世界大戦はもう始まっている』を読んで浮かぶ問い

    リアル本屋に行くと、いい本との出会いがある。 ロシアによるウクライナ侵攻を、エマニュエル・ドットがどう捉えているのか。読んでみると、それまで考えたことのなかった様々な問いが浮かんできました。 ウクライナ侵攻はなぜ起きた? ウクライナはもともと3つの別の地域だった? 各国のウクライナ侵攻に対する反応が違う背景は? ウクライナ侵攻はなぜ起きた? ウクライナのNATO加盟はロシアには絶対容認できない一線だった、というのは日本でも理解された上で、多くはプーチンが悪い(大多数)、いやゼレンスキーが悪い(ごく一部)という議論にとどまります。 しかしよく考えてみれば、NATO加盟をウクライナ国民の相当数やゼ…

  • 『スッキリわかるPython入門』を読んで、テニスレッスンの空き状況お知らせプログラムを自作してみる

    このブログでは、全くの素人が一冊の本読んでPythonの基本を理解し、WEB上の写経コード(丸写しできる参考コード)を組み合わせ、レッスン予約の空き状況を自分のLINEに通知できるようになるまでをまとめています。 通っているテニススクールで週末レッスンの予約をしたいのですが、めったに空きがありません。WEB確認も結構な手間で、省力化したいと考えていました。 プログラミングには人生で一度も触れたことはありませんでしたが、本を読んでコードがかけるようになったらいいなあと、購入したのがこちらの本です。 下記のような用語もまったく知らなかった初心者が、下記の基本を一通り理解できるようになります。会話形…

  • 『銀河英雄伝説5巻 風雲編』35年目に読み返して思うこと

    この長い物語を何度読み返したか分かりませんが、いくつになっても面白い。そしてこの年になったからこそ、胸に響く一節と思うことも。5巻からはこちら。 私は最悪の民主政治でも最良の専制政治にまさると思っている。 ラインハルト・フォン・ローエングラムによって専制統治される銀河帝国と、ヨブ・トリューニヒトを民主政権のトップに置く自由惑星同盟。両者に代表される選択肢のどちらがいいのか?この物語の主要命題のひとつでもあります。 暮らし向きは最良の専制政治下の方がいいに決まってる。どっちの政治体制にしても、いい運用をされるのがいいに決まってる。「最悪の民主政治」と「最良の専制政治」のどっちがいいかはとても難し…

  • 『銀河英雄伝説4巻 策謀編』35年目に読み返して思うこと

    この長い物語を何度読み返したか分かりませんが、いくつになっても面白い。そしてこの年になったからこそ、胸に響く一節と思うことも。4巻からはこちら。 ユリアン、現在の状況は古来から固定しているものとわれわれは誤解しがちだ。だけど、考えてもごらん。銀河帝国なんて代物は500年前には存在しなかった。自由惑星同盟の歴史はその半分の長さだし、フェザーンにいたっては1世紀そこそこの歳月を経ただけだ ほんとに、人は今やっていることが当たり前と、すぐに思い込んでしまいます。国の成り立ちほど大層なこと、ロングスパンのものだけでなくて。ほんの数年前から始めた会社のプログラムとかでも、そのやり方が当然のもののように考…

  • 『銀河英雄伝説3巻 雌伏編』35年目に読み返して思うこと

    この長い物語を何度読み返したか分かりませんが、いくつになっても面白い。そしてこの年になったからこそ、胸に響く一節と思うことも。3巻からはこちら。 歴史家を志していたヤンの信念。ペンは剣より強し。 剣よりペンが絶対に強い、と信じるヤンであった。真理などめったに存在しない人間社会で、これだけは数少ない例外だと思っているのだ。 ルドルフ大帝を剣によって倒すことはできなかった。だが、我々は彼の人類社会に対する罪業を知っている。それはペンの力だ。ペンは何百年も前の独裁者や何千年も昔の暴君を告発することができる。剣をたずさえて歴史の流れを遡行することはできないが、ペンならそれができるんだ 2022年はロシ…

  • 『銀河英雄伝説2巻 野望編』35年目に読み返して思うこと

    この長い物語を何度読み返したか分かりませんが、いくつになっても面白い。そしてこの年になったからこそ、胸に響く一節と思うことも。2巻からはこちら。 ヴェスターラントへの対応にあらわれる、オーベルシュタインとキルヒアイスの信念の違い。自由惑星同盟のあるべき姿を思う、ヤンとグリーンヒル大将の信念の違い。 人間の歴史に、「絶対善と絶対悪の戦い(ハルマゲドン)」などなかった。あるのは、主観的な善と主観的の善との争いであり、正義の信念と正義の信念との相克である。一方的な侵略戦争の場合ですら、侵略する側は自分こそ正義だと信じているものだ。戦争が絶えないのはそれゆえである。人間が神と正義を信じている限り、争い…

  • 『銀河英雄伝説1巻 黎明編』35年目に読み返して思うこと

    この長い物語を何度読み返したか分かりませんが、いくつになっても面白い。そしてこの年になったからこそ、胸に響く一節と思うことも。1巻からはこちら。 恒久平和なんて人類の歴史上なかった。だから私はそんなもの望みはしない。だが何十年かの平和で豊かな時代は存在できた。我々が次の世代に何か遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和が一番だ。そして前の世代から手渡された平和を維持するのは、次の世代の責任だ。それぞれの世代が、後の世代への責任を忘れないでいれば、結果として長期間の平和が保てるだろう。忘れれば先人の遺産は食いつぶされ、人類は一から再出発ということになる。まあ、それでもいいけどね。 要する…

  • 読んで上手くなるテニス漫画②『BREAK BACK』コートカバリング編

    元選手、コーチのKASAさんが描くテニス漫画『BREAK BACK』。面白いだけでなく、週末テニスプレーヤーの自分に必要な上達のヒントが、丁寧に描かれています。 今回参考にしたのはコートカバリングの2つのコツ。動き出しとボールへの入り方が良くなる「パワーポジション」。そして、予測して準備、次の攻撃につなげる「相手を見る」ということ。 パワーポジション 相手を見る パワーポジション 初めてのオムニコート戦でスリップに悩む五十嵐君へ、上條コーチが授けたアドバイスが、パワーポジションで構えることでした。これでバランスを整えた五十嵐君はコートカバリングが大きく進歩します。 パワーポジション もっとも動…

  • 『オードリー・タンの思考』ソーシャル・イノベーションの天才に学ぼう

    本書のはじめに紹介される、インタビュー初日のオードリーの言葉。 これからあなたが本を出す前に、少なくとも2つの日本の出版社から私に関する本が出ます。どちらも私の過去の仕事を作品集のようにまとめ、通っていた幼稚園の事まで細かく書いてくれたものです。あなたの話を聞いていると、読者が社会改革や革新に参加できるようになってもらいたいという、「ソーシャル・イノベーション」がテーマである点が、それらの本と違うように思えます 「一人の天才を生むことは難しいが、一人一人の心に小さなオードリー・タンを宿そう」というのが本書のコンセプト。 オードリーの言うソーシャル・イノベーションとは、人々が持つ考え方やスキルを…

  • 『伝わる 短い英語』仕事で使う英語がラクになる

    英語はなんでも3語で言えるとか、英語はパターンを覚えればいいとか、素敵なタイトルの本たちと似た題名ではあります。副題の違いに引かれて手に取りました。 「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア政府公認」 英語が公用語の国々で、お役所言葉や専門用語を市民や消費者にわかりやすく言い換える。英語が第二言語の人が多く集まる多国籍企業で、誰にでもわかりやすく意図を伝える。 数千万人、もしかしたら数億人を対象として、コミュニケーションコストを下げるために工夫され、政府や官公庁で採用されてきたメソッドなので、非常に合理的です。 Plain English は中学生でもわかるとされていますが、幼稚なわけでは…

  • 『源頼朝の世界』鎌倉殿と歴史好きには絶対楽しい歴史エッセイ集

    2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。北条義時に興味を持って、義時と源頼朝のWikipediaを熟読するまで、永井路子さんを知らなかった、もぐりな歴史好きの私。本書は1979年に出版され、鎌倉殿の13人の放映を機に復刊したようですが、40年以上前に描かれたとは思えないほどフレッシュで、鎌倉時代を深く知るには最適です。塩野七生さんといい、女性歴史小説家の人間洞察力はすごいですね。 あとがきにある、作者の鎌倉という時代の捉え方と、頼朝と同時代人の書き方。これらが何ともカッコよく、印象に残りました。 鎌倉時代は(古代社会に終止符をうち、中世社会を実現した点で、近代社会を確立した明治維新に対…

  • ちきりん『自分の時間を取り戻そう』徹底するとリターンが大きい生産性アップの教え

    うちの会社で働くなかで、優先順位設定や80/20という考え方、「7つの習慣」のタイムマネージメントトレーニングなど、生産性について考える機会は多かったので、それなりに出来ているつもりでした。年末年始に読んでみて、書いてある内容が「初見だ!」ということはなかったのです。 しかし半端なく忙しかった年明け第1週、ちきりんさんが言う通り「こんな短い時間ではとても無理」というスケジュールを自分に課し、絶対に週末に回したり睡眠時間を削らずに「その時間内で終わるやり方」を考えるようにしたら。。終わったー。 ものすごく頭が疲れたし、勤務時間中はキツかったですが、週末に疲れと仕事を残すことなく乗り切れたのは、随…

  • 一気読みをオススメするSFバディ小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

    著者アンディ・ウィアーの前々作、2015年の映画「オデッセイ」でマット・デイモンが演じる主人公は火星に一人取り残されましたが、今回は一体何が? 天文学や恒星科学、物理や化学に関する科学的描写を極力正確なものに、という著者の努力の賜物で、フィクションとしての風呂敷はでかいですが、リアリティがあります。ストーリーは壮大ですが、主人公の視点を大事にしていて、読みやすいし共感できです。 ハラハラするトラブルを主人公の創意工夫で乗り越えるくだりや、ちょっと仕掛けのあるプロットは推理小説のような面白さもあり。そして読み終えると、最高の「バディ小説」だったなと。一気読みできるお休みにオススメの小説です。 プ…

  • 具体的な行動の指針になる『LIFE SHIFT 2 - 100年時代の行動戦略』

    LIFE SHIFT 第2巻を読んでいる自分もあと数年で50歳。企業人としてはベテラン。一方でいわゆる定年後も働く予定であり、先々の身の振り方を当然考える時期です。親としては、100年時代を生きる子どもの教育は自分たちの頃とは違うのかもと思いつつ、答えはありませんでした。 第6章「企業の課題」と第7章「教育機関の課題」からの学びは、企業人であり子供の親である自分にとって、ぜひ行動戦略としたいと考えさせられるものでした。 戦略の前提となる、「年齢のインフレ」という年齢に対する考え方が非常にわかりやすいので、最初にまとめておきます。 物価のインフレ:1952 年のアメリカでは0.65ドルだった50…

  • 『鈴木貴男のサーブ&ボレーレッスン』動画レッスンと本のポイントを組み合わせて習得

    本自体は2008年初版と古く、鈴木貴男選手のサーブ理論も進化しているので、本と動画を合わせて見るのがベター。貴男プロのYouTube「速くて入るスライスサーブ」は秀逸です。ボレーのカギは「ボレーを後ろから見て技術を学ぶ」の動画がおすすめ。自分のクセのどこを改善すべきかが、本を読むことで理解することができました。 速くて入るスライスサーブ 立ち位置とコース スマッシュ ボレーのカギ4点 試合に勝つテニス 鈴木貴男のサーブ&ボレーレッスン (LEVEL UP BOOK) 作者:鈴木 貴男 実業之日本社 Amazon 速くて入るスライスサーブ 貴男プロがたどり着いたスライスサーブの肝は、ボールを捉え…

  • AI入門書として秀逸、かつ自分のプロジェクトにいいヒントがもらえた本『文系AI人材になる』

    AIを使ってビジネスを構築する人が、のぐりゅうさんの言う「文系AI人材」。対比として、ビジネスで使うAIを構築する人が「理系AI人材」。本書はまず、文系AI人材への第一歩としてキホン(役割、種類や用語)と作り方(特徴づかみの名人であるAIが作られるステップ)を理解する入門書として秀逸。これからの人とかじった人には大いに参考になるかと思います。 個人的には、日用品販促のパーソナライズという、自分のプロジェクトを進めるために、いいヒントを二つもいただきました。 深いビジネス知識とAIを掛け合わせる アイデアを段階ごとに遠くまで進める フランスの小説家であるジュール・ヴェルヌは「人間が想像できること…

  • 大企業の中に身をおいてイノベーションを起こすには。ケヴィン・ケリーが語る『5000日後の世界』への心構え

    新書なので、ケヴィン・ケリー氏の真骨頂である、幅広い知見にもとづく未来予測の深みだとか、哲学的なテクノロジーの捉え方とかについては、割とあっさりした内容です。そのあたりは『インターネットの次にくるもの』が詳しいかなと。 個人的に響いたのは、大企業がイノベーションを起こせない理由と、その中で自分がイノベーションを起こすためにできることに関する提案でした。 大企業にはイノベーションを起こせない? 書くことでイノベーションへの考えをまとめる 問い続けることがイノベーションにつながる 5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる (PHP新書) 作者:ケヴィン・ケリー PHP…

  • 『あたらしいランニング入門』ケガなく、やせるギリギリの負荷でラクに走るためのプロのアドバイス!

    学生の頃から長距離走は苦手。。たまに意気込んで走ると膝が痛くなる。。 けれどお腹まわりも気になってきたし、いい方法はないかと探していたら、あの青山学院大学駅伝チームのフィジカル指導も担当する、中野ジェームズ修一さんの本書で、最適なアドバイスが。私のように志の低いランナーから、フルマラソンを目指すジョガーまで、マンガで読みやすくためになるランニング 入門です。 ケガなくラクに走る やせるギリギリの負荷でラクに走る ケガなくラクに走る ケガをなくすには、フォームではなく、カラダを修正せよ!というのが中野ジェームズ先生の教え。 人間、カラダは千差万別。カラダはその状態にあわせ、動きやすいように勝手に…

  • 『試合に勝つテニス 鈴木貴男のダブルス講座』非常によいダブルスの即効薬

    スクールのレッスンでもショットの上達を感じたり、遊びのゲームでも勝った負けたのワクワク感は味わえますが、試合に出て一勝することは、上達を実感できる違う楽しさがあります。サーブ&ボレーを得意とし、ダブルスの名手でもあった鈴木貴男選手。「裏セオリー」含めて勝ちに直結する彼のダブルス論。1400円のもとはすぐに取れること請け合いです! ①ダブルスはポジショニングで勝つ 相手に無理させるポジションを ②ポジショニングの基本と応用 相手リターン時はサーバー側前衛もスプリットステップを入れろ! 前衛ポジショニングの鉄則3つ 前衛の動き方 雁行陣前衛の動き 雁行陣対雁行陣でネットに出る レシーバー側の前衛の…

  • 『Break Back』ダブルスプレーヤーも楽しく学べるテニス漫画

    作者のKASAさんは、JTAランキング最高86位の元テニスプレーヤー。本書内コラムによると海外武者修行で有名コーチから手ほどきを受けたり、トップジュニアのコーチをされてたりと、実際に優秀なテニスコーチでもあるようです。 怪我で挫折し、1億円の借金を作ってしまった元世界ランキング7位の女子テニスプロが、美人の元世界ランカーが、無名の高校を率いて高校テニス界で暴れまくる!というのが本書の紹介なんですが、荒唐無稽なようでいてテニス論は堅実。初連載にして絵も見やすく、テニス好きにじわじわ広まりそうな漫画です。 リアルな描写で人気のテニス漫画、ベイビーステップと違うのが、テニスのレベルとダブルスがあるこ…

  • 『保身』立ち場も、胸の内も、縛られすぎず、楽しい方へ抜け出そう

    記者の藤岡雅さんが克明に記した、積水ハウスで2018年1月に起きた「クーデター」の深層。前年に起きた地面師詐欺事件に始まり、2021年までの積水ハウス経営陣の軌跡を追います。本書の終章時点では著者が考える正義は勝っていないので、読後感は苦いです。 詳細とは別に思ったのは2つのこと。 まずは、本書をすすめる成毛眞さんもおっしゃってましたが、属する組織に縛られすぎないこと。学校でも、会社でも、避けたり逃げたりすることは全く悪いことではないので、おかしい、辛い、楽しくないと悩んだら、抜けることを考えましょう。 自分のできることを精一杯やろう、この変化に適応できずに負けるのはいやだ、そんなことを考えな…

  • 『アフターデジタル2』を読んで日用品業界のDXを考える

    新たなUX = User Experience、顧客体験を作り、顧客とオンライン、オフラインを横断した関係性を築くこと。DXとはそういうこと、社会をよりよくするUXが提供できないDXは本末転倒。著者の藤井保文さんの説明はわかりやすい。 私が働く日用品業界でもデジタルの浸透によって、メーカーや小売と個々のショッパーは、店頭で商品を選ぶ瞬間、家で商品を使う瞬間だけでなく、買い物前、買い物中、買い物後までの一連の流れの中でつながれるようになりました。 オンラインとオフラインを横断して、ショッパーの「買い物体験」をよりよいものにする。これは私の会社のミッションである「毎日をよりよくする」ことにも直結し…

  • 『未来の年表』『未来の年表2』これから日本に起きる課題リスト。解決に貢献したい4つの課題。

    著者でジャーナリストの河合雅司氏が書かれている通り、向こう50年の人口動態は大きくぶれることはありえません。2021年に50歳の人は約190万人。50年前は第二次ベビーブームで出生数は約200万人でした。2071年の50歳は絶対に81万人より少ないです。なぜなら2021年の出生数が約81万人だから。 なので、著者の語る将来の日本の人口予測は、基本的に非常に正しいはずです。その結果として何が起きるかについては、少々テクノロジーの進歩に対する期待が小さすぎる気がしますし、外国人労働者問題を、外国人参政権付与と一足飛びに結びつけたりするのは飛躍がすぎると思いますが、最終章で提示する処方箋は、ジャーナ…

  • 『94%の顧客が「大満足」と言ってくれる私の究極のサービス』デジタルと戦略と温もりを掛け算できたら響くんじゃないか

    いま仕事で販促のデジタル化をリードしています。どのような販促が問題解決につながるか。そういった戦略的な考え方には強い会社なので、1to1アプローチに強いパートナーと、効果的に一緒にソリューションを作っていこうとしています。 元CEOが「Consumer is boss」と語ったように、戦略的にお客様ニーズを第一に考えなくてはならない、と頭では分かっているつもりですが、自分の心の底から身についてないとも思います。 高級化粧品部門の営業支店長時代にこの本を買いました。日本では2004年出版で、アメリカのニューヨーク郊外に2店舗を構える衣料品店CEOのおじいちゃんが、顧客満足をもたらす秘訣を教えてく…

  • 『1%の努力』これらを徹底して、楽しく生きる

    「働かないアリ」であれ。 ひろゆきさんの提言は極端なようでいて、至極もっともなことにこう続きます。 「働かないアリ」のように、お金や時間にとらわれない状態になると、チャンスが見えるようになる。 まさしく「サボる才能」があるかどうかが問われる。2時間でやるべきことを1時間で終わらせて、1時間余らせること。さらに、30分で終わらせることができないかと考え続けること。 目的は1つ。死ぬまでの「幸せの総量」を増やすためだ。 ひろゆきさんって優しい人だな、というのが読後感です。既存の価値観を否定するアナーキーな感じを勝手に想像していましたが、人それぞれ、生きやすいように生きたらいいよ、自分はどういう感じ…

  • 『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』Whyで動かす。盗んで返す。

    クリエイティブとは、クリエイターのためだけのものじゃない。ビジネスマンのためのものでもある。 プレゼンテーションの目的は説明することでも、理解させることでもない。聞いた人の「感情を揺さぶる」ことである。 人はどうすれば動くのか、人を動かすクリエイティブはどう作るのか。著者の原野守弘さんは、クリエイターという枠を超えて、多くのビジネスマンに染み渡るわかりやすい言葉で、それらの極意を共有してくれます。 What-How-Why Good artists copy, great artists steal. What-How-Why 特定のブランドやリーダーだけが、なぜ「突出した影響力」や「人を動か…

  • 『DXの思考法 日本経済復活への最高戦略』DXで思索を深めたい人に。抽象化する。本屋にない本を探す。

    DXについて高次で思索を深めたい人は、経産省の誇る知性、西山圭太前経産省局長が書いたこの一冊を、安宅和人さんがすすめていたので手に取りました。読みはじめると、なんて勉強家で頭のいい人なんだろうと、感嘆させられます。 破壊力のある変化を起こすための抽象化の大切さ、DXの捉え方や仕組みの肝であるレイヤー構造、これらを実際のエピソードや親しみやすい比喩を使い、なるべく分かりやすく説明してくれます。 個人的に、①ビジネスマンとして課題への向き合い方、②自分のDX責任範囲の進め方、とても勉強になりました。前者の重要性は「エピソード」を通じて印象づけられましたし、後者の理解は「比喩」と「チャート」で理解を…

  • 『新九郎、奔る!』俺の主は俺だ!そうありたいもの。すごく面白い歴史マンガ。

    北条早雲こと、伊勢新九郎盛時が主役の、ゆうきまさみ最新作。応仁の乱前夜、新九郎11歳から物語は進んでむのですが、1巻冒頭は、新九郎38歳が起こしたある事件の場面から始まります。 室町殿奉公衆、伊勢新九郎盛時!主命により足利茶々丸様の御首頂戴に参上仕った! 主命かあ、お前さんも大変だな。主が変わる度に右往左往させられてな。 言うな左近次。やるしかないのだ!ここまではやる!だがこの後のことはもう決めたぞ…俺が決めた! 思えば簡単なことではないか。明日から俺の主は俺だ! 新九郎、奔る! ゆうきまさみ 1巻 このマンガを読むまで北条早雲の歴史知識に乏しかったので、この場面が、下剋上の嚆矢、戦国時代の幕…

  • 『いじめと探偵』高度な技術とプロ意識と優しさで、子どもたちの救いとなる

    いじめを受けている子どもには、どこかに助けがあると知ってほしいし、いじめをしている子どもには、必ず報いがあると学んでほしいし、そういう社会でなくては残念すぎる。 日本ではじめて、いじめ調査を請け負うようになった、著者の阿部泰尚氏が率いる探偵事務所は、保護者や学校だけでは解決できない問題に、探偵業者としての高度な技術と知識を持ち込み、それが多くのケースで子どもたちの救いになっているのを知りました。 本書で紹介される、深刻ないじめの現実に背筋が寒くなったり、いじめられている子ども、いじめる子ども、保護者や学校関係者の心の動きに驚きを覚えたりするとともに、私よりも若い、阿部泰尚氏の子どもを見守る視線…

  • 『Who Gets What マッチメイキングとマーケットデザインの経済学』人と人のニーズを適切にマッチさせ、自分や人々の暮らしをよりよくする

    需要と供給のバランスが価格によって最適化されるのが、資本主義社会における市場の役割。では、モノやサービスの配分が価格で調整できない時はどうする? 例えば公立高校の学校選択。はたまた腎臓移植。いずれも需要と供給の問題はあるが価格で調整するわけにもいきません。 マッチング理論とは、人と人、人とモノ・サービスをどうマッチするかを研究する学問であり、マーケットデザインとは、マッチング理論を応用して、人々が必要なものを交換したり手に入れたりするために、最適な制度を設計することです。 この経済学の理論、研究が社会問題に成果をあげ、本書の著者であるアルビン・E・ロスは2012年のノーベル経済学賞を受賞しまし…

  • 『<インターネット>の次に来るもの』未来を決める12の潮流を知り、対処していこう

    著者のケヴィン・ケリーが本書で示唆するこの世界の行く末。何が起きて、どうなるのか。2点にまとめると、 コンピューターの時代は、それらが電話につながれて初めて、本格的に始まった。コンピューターというプロダクトの能力には限界があった。インターネットにより、マシンとマシン、人と人がつながり、つながることが変化と進化を加速した。手で触れられないデジタルの世界では静的で固定されたものなどない。常に変化し進歩するというプロセスは、特定のプロダクトを作り出すより優れており、全てはプロダクトから、壮大なプロセスになる。 デジタル世界に躍り出てくる突き抜けたテクノロジーに遭遇すると、まずはそれを押し戻したい衝動…

  • 『10年後の仕事図鑑』3つのことを突き詰めること、自力x他力で問題を楽しく解決することの大切さ

    2018年に出た、落合陽一氏と堀江貴文氏による対談形式の本書。さらっと読んだ2年後に読み返すと、時代に対する私の理解が追いついたことと私自身の変化から、メッセージが二つ、すごく胸に響いてきました。若い人が読んでも発見があるだろうし、自分のように四半世紀ほど働いてきた人間が、今後の働き方を見つめなおすにもいい本だと思います。 3つのことを突き詰め、AI社会も外資系も楽しく生き抜く テクノロジーx人、自力x他力で問題を楽しく、速く解決する 3つのことを突き詰め、AI社会も外資系も楽しく生き抜く 自分が強い関心があって好きだと思えることを突き詰めたり、巡りあった職を長期にわたって継続していくと、それ…

  • 『日本の医療の不都合な真実 コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側』今こそ変わる機会

    経済学部出身現役医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏。現場のリアルと全体を俯瞰するデータの両方を見る著者は、 いまの日本の医療を下記のようにたとえます。 最強の戦力を保持しているにもかかわらず、それらを適正に配置する指揮命令系統を失ってしまったので誰も動けない。しかし敵はもう足元まで迫ってきている 世界最高水準の病床数と、勤勉な医師と看護師を有する日本。2021年2月現在の100万人あたり死者数は54人。これはアメリカと比べて3.4%、ヨーロッパの優等生ドイツと比べても6.9%(Google COVID-19統計情報)。 それでも「医療崩壊」の危機が叫ばれるのは、フェイクニュースでも、コロ…

  • 『海の底』成人男性から女子中学生までハマる潜水艦?小説

    読み始めて9ページで、とんでもない設定に度肝を抜かれます。あまりに気持ちよく意表を突かれ、その先が気になってしょうがなくなります。まだ裏表紙の内容紹介にも目を通していない方、ぜひそのまま読み始めてください! その1点は突拍子もなく、それでいてストーリーにはリアリティがあります。 おやしお型潜水艦の精緻な艦内描写や、行政組織やマスコミの機能不全や限界。 自衛隊、警察関係者がみせる葛藤やプライドと、子供達が抱える鬱屈と成長。 深い取材と洞察に基づく骨太な骨格と、魅力的で感動的な登場人物達の動きは、初期三部作にして有川浩さんの真骨頂。 ラブコメ的要素含め図書館戦争シリーズが好きな方は一気読み間違いな…

  • 『日本沈没』重厚な問いにしびれたのち、一周まわって楽観的になりました。

    1973年発刊の高名なパニック小説は、気候変動が大きな社会問題となっている現代にも一読の価値ある作品です。 手に取るまでは、天変地異や都市の崩壊など、派手なシーンが売りの昔の小説かと勝手に思い込んでいました。 実際は、日本列島を失った日本人はどうなるのか、国土が失われん時に組織はどう動くべきなのか、そういった非常にシリアスな問いを投げかける本です。 出来うる最大限のことをしたとしても、全国民を救うことはかなわない。それでも何をすべきか。そんな重い問いに立ち向かう人々の物語は胸を打ちました。 読み終わって一週間すると、思わぬ楽観も湧いてきました。本書では日本人として想像しうる最悪の災害が、終章に…

  • 『すばらしい新世界』こんな世界もあり?いや本当にそうか?と考えさせるディストピア小説

    このままだとこんな世界になってしまうから気をつけろ!ではなく、こんな世界もありかもしれない?でも本当にそう?と考えさせてくれる小説です。 安定を最優先に、副作用なく気分をあげてくれる錠剤「ソーマ」や欲求を充足する「フリーセックス」を活用し、新しい「常識」への疑問を持たないよう工業的に育成される人類。 オルダス・ハクスリーによる1932年刊行の有名なディストピア小説は、皮肉が利いたユーモアにあふれています。おどろおどろしさもなく、90年前後の現代に読んでもそのSFの世界観に違和感は覚えません。文意を損ねることなく原書の韻を日本語化する翻訳や、kindleでの注の付き方も読みやすく秀逸でした。 刊…

  • 『すごい宇宙講義』ブラックホールとビッグバンがわかるすごい本

    誰しも宇宙にロマンを感じ、多くの人がブラックホールやビッグバンの謎に疑問を持ったことがあると思います。 著者の多田将氏は素粒子研究の専門家。宇宙の専門家ではありませんが、素晴らしい、教え上手です。 平易な例やかわいいイラストを駆使して、私のような物理の素養のない人間もわかった気にさせてくれます。ブラックホールもビッグバンも、最初に理解するとっかかりを与えてくれて、自分なりにかみ砕くことができました。 「着想や理論」と「観測や実験」、科学の発展にはこの2つを絶えず繰り返していくことが大切だ、というメッセージも響きました。考えることとやってみること。これは研究でも、仕事でも、スポーツでも何でも、大…

  • 『ドラえもん ひみつ道具大辞典』どこまで実現されたかな?

    私が子供のころからあるドラえもんのひみつ道具大辞典。バージョンが変わりつつ、2008年版は2020年段階で22刷もかかっているようです。 藤子・F・不二雄先生は、本書のはじめにこのような言葉を贈っています。 ドラえもんのひみつ道具には「レンタル」と「セル」の二種類があります。 あまり高価な道具は買えないので、安い使用料で貸してもらいます。ドラえもんは三分の二ぐらいをこのレンタルで間に合わせているのです。 それにしても、20世紀のぼくらから見たら、夢みたいに便利な道具をいくつも持ち歩くなんて、よっぽどドラえもんは金持ちなのかと思うのですが、そうでもないのです。例えば今はどこの家庭にもある車とかテ…

  • 『アフターコロナの生存戦略』未曽有の時代を楽しみましょう

    「生きる時代を楽しめ!」成毛眞氏からの一貫したメッセージを感じる本です。 アフターコロナをできるだけ前向きに捉えたいと思っている。実際、何もかもが一度に変わったわけではなく、それまで水面下で始まっていた変化が顕在化した面もあるだろうし、ワクワクするような変化、私たちを楽しませ、幸福度を上げるような兆しも、あらゆるところで生まれ始めている。 序章の3例を見ても本当にそうだなと。 波の立つところにしか事務所を構えないというパタゴニア。これからは彼らに限らず、海でも山でも川でも、自分の好きな場所、自分たちにとって良い環境で、働き、暮らすことが、以前よりも容易になりうる。 これからの消費は、人に見せる…

  • 『ライフスパン』人類の健康寿命を本気で伸ばす科学者が書いためちゃめちゃ面白い本

    『シン・ニホン』『ホモ・デウス』『ライフシフト』などに並ぶ、すごくワクワクする科学読本です。 安宅和人さん、ハラリ氏、リンダ・グラットン氏は、文筆家でもある学者、というイメージですが、本著者のデービッド・A・シンクレア氏は、ハーバード大学医学大学院教授で「世界で最も影響力のある100人(タイム誌)」にも選ばれた最先端のバイオサイエンティスト。だけど文章がわかりやすいうえに、ストーリーもすごく面白いです。 全体は三部から成るのですが、それぞれが連なりつつも独立した興味深さを持っています。 第一部 私たちは何を知っているのか(過去) 第二部 私たちは何を学びつつあるのか(現在) 第三部 私たちはど…

  • 『そして、バトンは渡された』とても暖かい気持ちになれる素敵な小説

    母親が二人、父親が三人。親の死別や離婚が繰り返されて、高校生の今は二十歳しか離れていない"父"と暮らす優子。悲しいこと、切ないことはたくさんあった。でも、周りからよく同情されるけれど「困った。全然不幸ではないのだ。」と思える彼女。 彼女との出会いを大切に思い、愛情をいっぱい注ぐ大人たちと、当然悩むこともあれども、しなやかに生きる優子。優しい人たちの織りなすストーリーはとても暖かく、出張帰りの新幹線で大泣きしてしまいました。 物語には食卓の場面がよく出てきます。 カレーは辛いのに、玉ねぎもにんじんも甘くておいしい。きっとしっかり炒めたからだ。塞いでいるときも元気なときも、ごはんを作ってくれる人が…

  • 『ジャック・ライアンシリーズ』トム・クランシーによる超一流エンターテイメントたるテクノスリラー小説

    冷戦期に作家としてデビューしたトム・クランシー。軍事や諜報活動を扱うテクノスリラーとして、政府関係者にも評価されるほど、リアリティがあるのですが、それだけにとどまりません。ハリソン・フォード主演で映画化されるほど魅力的な登場人物たち。そして何より、近未来を予期するような壮大かつ緻密なストーリーは、四半世紀後に読み返しても色あせず、ハラハラドキドキさせてくれます。 重要建造物にハイジャックした旅客機で突入する大規模テロの発生。 合衆国全土を覆う感染症発生による国民の行動制限と医療機関の奮闘。 国家規模の資金力と最先端の技術力を誇る巨大ハイテク企業の登場。 これらは、『日米開戦』、『合衆国崩壊」、…

  • 『運転者』自分の機嫌は自分でとれる人間であることの大切さ

    Amazon prime readingで無料貸し出しされている小説の中でもすこぶる評価が高く、七十代の方が、いくつで読んでも胸に響く、とコメントされていたのが印象的でした。 不運を嘆く四十代半ばの営業マンが、不思議なタクシーとの出会いから変わっていく、自己啓発書っぽさもあるファンタジー小説です。 読みながら涙するということはありませんが、読んですぐに態度を改めさせられたのが、自分の機嫌は自分でとれる人間であろう、ということ。 すごく不機嫌にしていた時にこの物語を読んで、下記のセリフが、すとんと腹落ちしていきました。ストーリーの力はすごくて、すこし上を向いて、視界を広げることができ、感謝してい…

  • 『pen 2020/11/1号 人生に必要なのは、心に響く本。』普遍的、だけど多様な視点、思考のスイッチを手に入れよう

    雑誌なのでいつまでも手に入るものではありませんが、様々な好みの読書好きのみなさんに、いままで手を出していなかった少し新しい分野、興味を引く次の一冊に出会うきっかけをくれる特集でした。 本の紹介ではなく、本を読む意義、本の強みについて語られた冒頭の寄稿、インタビューがとてもよかったです。 朝井リョウ(『桐島、部活やめるってよ』著者) 時間をかけてでも本を読む意義とは、なんだろうか? 自分とは違う誰かの視点で、この世界をのぞきに行くこと。 読後に体内に搭載されたと感じるもの。それは、視点だ。 視点というのは思考のスイッチのことであり、それが増えていくことは大切なことだ。 最近、社会が大きく変化する…

  • 『日本史サイエンス』神風や天才で片づけてはならない必然があることを、文系x理系的アプローチで証明する。

    日本史、世界史いずれにおいても「歴史の謎」とされているものは多く存在します。真実を解き明かすには、タイムマシンで見に行かない限りわからない。そんな風に思っていましたが、物理や数学の知見を活かすことで、ここまで説得力のある解明ができるのかと、大いに楽しませてもらいました。 本書の著者である播田安弘さんは、船舶設計のプロフェッショナル。歴史家ではありませんが、深い船舶設計の知識と、理系的な好奇心で、船がからむ3つの歴史の謎に挑みます。 その3つとはサブタイトルにもありますが、元寇は偶然にも「神風」によって撃退されたのか、秀吉はなぜ超短期間で軍の「大返し」を実現して光秀を討てたのか、戦艦大和は単なる…

  • 『父滅の刃』男子たるもの、父性、すなわち規範と方向性を示さなないといけませぬ

    タイトルは大ブームになった「鬼滅の刃」のパロディ。著者の樺沢紫苑さんが2012年に出版した作品を加筆、改題して2020年に再版した作品です。 ちゃんと中身を表しながらもキャッチ―なタイトルをつけることは、手に取ってもらうために非常に大切ですね。そして著者が語るように、時代を先取りしすぎて一度は絶版になった内容が、いまその必要性が高まってきているようです。父性不在がさらに進んで父性消滅の危機だと。その証拠が、ひきこもりの増加、将来に夢や希望を見いだせない子どもの増加、そしてそれが最近の映画やアニメの内容に表れていると。 著者の映画、アニメ評論は、時としてこじつけに映るかもしれません。しかし、もの…

  • 『最後の医者は桜を見上げて君を想う』生を全うする。そのための背中を押してくれる本。

    人の死を描いて、こんなにも生への希望を感じさせてくれる小説は読んだことがありませんでした。 あなたの余命は半年です―ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは? 究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか? それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生! 生を全うする。本書の作品紹介や表紙のイラストにも描かれている二人の医者は、どちらもそのために心底から患者に向き合…

  • 『下町ロケットシリーズ』明日から頑張ろうと思わせてくれる全ての働く人への応援歌

    テレビドラマ化されている池井戸潤さんの人気シリーズのひとつ。ドラマが空前のヒットとなった『半沢直樹シリーズ』同様、最後に正義は勝つ、痛快な展開です。ただし、半沢シリーズが「ヒーローもの」だとすれば、こちらは「人情もの」といった趣があります。 かたや、超人的に優秀な銀行員、半沢直樹による、とてつもない逆境からの鮮やかな「倍返し」。爽快で完璧な立ち回り、カッコいい啖呵や決めゼリフは、企業を舞台にした、まさにスーパーヒーロー。最高に面白いファンタジーです。 一方の『下町ロケットシリーズ』は、より等身大の悩める主人公が、善い面も悪い面もある仲間、ライバルとぶつかり合い、助けられ、切磋琢磨する中で光明を…

  • 『邦人奪還』元自衛隊特殊部隊小隊長の著者による、秀逸の軍事スリラー小説

    著者の伊藤祐靖氏は、実際に自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊「特別警備隊」の小隊長。ご自身が『書いているほとんどにはモデルがいますし、ストーリーや物語設定は架空ですが、切り取った「部分」は事実なんです。その意味では、見たことをそのまま書いているだけだとも言えます』と語るように、実在のモデル、実際の事件と、非常にリアルな自衛隊員の活動や日常を組み合わせて描かれた物語は、非常にリアルかつスリリングで、一気に読まされました。とても秀逸な軍事スリラー小説です。 登場人物のセリフが著者の想いを代弁しているとすると、それもまた考えさせるものがありました。1つ目は、日本人の性向に関する意見。まずは外国特殊部…

  • 『2060 未来創造の白地図』未来への旅はよりよい社会に通じる希望が持てる本

    歴史の転換期だからこそ、未来を予測する本が最近人気ですね。本書でも暗喩に使われている『ホモ・デウス』では、データテクノロジーや遺伝子工学の発展が、後戻りのきかない格差の発生や、倫理的な歯止めが効かなくなるリスクも描かれました。それに対して本書の著者はこのように語ります。 ヒトは、神人になるのではなく、飽くなき冒険の旅を続ける存在「ホモ・オデュッセイア」になるのではないでしょうか。 決して楽観視している訳ではなく、非常にタフな旅になるはずだけれども、AIをパートナーとしながら乗り越えられるはずだと。 本書の特徴は、7つの分野で、2020年初頭段階で既に市場に投入されている製品やサービス、2020…

  • 『ホモ・デウス』歴史を通じて人類を発展させてきた方程式を考える

    第一弾の『サピエンス全史』で、ノヴァル・ユア・ハラリ氏は、ホモ・サピエンス、人類の歴史を振り返り、認知革命、農業革命、科学革命が、が人類を発展させてきたことを段階を追って整理し、深く理解させてくれました。第二弾の本書では、認知、農業、科学という新ツールを、人類がうまく活用するために必要であった要素を深堀していきます。それは「虚構」。宗教ともイデオロギーとも物語とも言いますが、それはどのような役割を果たしてきたのか。そしてこれからどうなっていくのか。それが本書のメッセージです。情報量が膨大で、個別の意味だけではなく全体の流れをつかみ取るには繰り返し読む必要がありましたが、歴史を通じて人類を発展さ…

  • 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』歴史を知るだけでなく、現代の社会問題とつなげて考えられるようなる素晴らしい本

    日清戦争から太平洋戦争まで、日本人はなぜ戦争を選んだのか。この本は、東大文学部教授で歴史学者の加藤陽子さんが行った、栄光学園歴史クラブの中高生たちと、5日間の対話形式の授業をまとめたものです。まずイントロがいきなり面白い。戦争について考えることと現代社会への疑問を、すーっとつないでくれるんです。 1930年代、国民は社会民主主義的な改革を求めていましたが、時の帝国議会や内閣には実現できませんでした。すると、自作農創設や工場労働者の待遇改善など、「疑似的な」改革構想を謳う軍部の人気が集まったといいます。しかし、軍部にとっての第一は国家の安全保障ですから、ソ連との戦争は不可避、アメリカとの戦争が必…

  • 森浩美 家族短編集シリーズ 家族とけんかしても、読めばやさしくなれる

    家族なのに、傷つけるようなことを言ってしまう。家族だから、生な想いをぶつけてしまう。家族でも、わからないことがある。夫婦や親子で、けんかをしたり、不安にさせたり、心配をしたりすること、誰にでもあると思います。そんなこんなで、気持ちが少しささくれだったとき、森浩美さんによる家族のショートストーリーを読むと、気持ちがほわっとして、家族のかけがえのなさを思い出させてくれる。やさしくなれる。 私が読んだ下記の4冊は、そんな物語がつまっていました。主人公は夫や妻、父や娘など、30代から50代の男女。彼らの家族との物語は、どちらかといえば苦しい状況から始まることが多い。でも、最後には希望の光が見える。森浩…

  • 『三体 II 黒暗森林 上・下』普遍的な真理、有効な戦略は、単純である。発想が大きくなるSF小説

    第一巻『三体』で三体文明から地球に送り出された侵略艦隊が地球に到達するのは四百数十年後。その時間を短縮できない三体文明は、それだけの時間があれば地球文明は十分に対抗可能な科学技術を発展させうると知り、極微スーパーコンピュータ・智子を送り込み、地球の素粒子研究、すなわち物理学が次のステージに上がることを阻止する。地球文明は、このままでは来る「終末決戦」に敗北することは必定であるため、対抗策を探す必要に迫られる。 第二巻の前提をまとめるとこうなります。この絶望的な状況を打開するために発動する「面壁計画」。この構想が最高に面白い!そしてそれからの年月、一旦のエンディングまで、大変面白く読ませる『三体…

  • 『2100年の科学ライフ』現代のジュール・ヴェルヌ?ワクワクする未来予想

    著者のミチオ・カクさんは日系3世のニューヨーク市立大学理論物理学教授。アメリカで有名な未来学者でもあります。一人の専門家が自分の意見をまとめたり、各分野の専門家へのヒアリングをまとめた未来予測本は色々あります。しかし、現役バリバリの科学者が、300名にのぼる各界トップの科学者たちにインタビューを重ねて、分厚い裏付けをもって2100年の未来を予想した本書はとてもユニーク。以下の9章から構成されています。 コンピュータの未来 人工知能の未来 医療の未来 ナノテクノロジー エネルギーの未来 宇宙旅行の未来 富の未来 人類の未来 2100年のある日 8つの分野の最新技術、理論を踏まえ、向こう25年ぐら…

  • 『21 Lessons』現代社会が抱える課題に対して特に考えさせられた9つのレッスン

    『サピエンス全史』で人類の来し方を俯瞰し、『ホモ・デウス』でその行く末を案じたユヴァル・ノア・ハラリが、現代が抱える課題について論じた21の授業、とでもいいましょうか。前2作に比べるとボリュームは軽いですが、多くの示唆に富む興味深い本です。個人的に考えさせられた9点をご紹介します。 幻滅。 雇用。 自由。 平等。 文明とナショナリズム。 テロと戦争。 ポスト・トゥルース。 教育。 瞑想。 幻滅。 この第一章は、自由主義への幻滅の先に何が来るのか、という最初のトピックです。自由主義は、FACTFULLNESS的な事実からすると、人類社会を最も安全で健康にしてきました。人間の「幸福」とは相対的なも…

  • 『俺か、俺以外か。』ローランドはいい人だ。

    美容室で興味本位でパラパラとめくり、この人はとてもまじめだな、と感心させられました。彼の言葉として有名な本書のタイトル。「俺」以外を見下しているのではなく、切磋琢磨し続け、何としても「俺」であり続けようという覚悟なんですね。日本一のホストは、自己愛の強さと同時に、人を引き付けるユーモア、セルフプロデュースへのたゆまぬ努力、オリジナルなポリシーの持ち主で、従業員愛の深い、いい人でした。仕事にも夫婦にも効く、彼の2つのポリシーをご紹介。 「人を魅力的にさせる最も大切なツール。それは自信だと思っている。」 「どんなときも、ユーモアを大切にすることを忘れない。」 「人を魅力的にさせる最も大切なツール。…

  • 『ジョコビッチの生まれ変わる食事』パフォーマンスを高める柔軟運動とフォームローリングがおすすめ

    プロテニス史上最強の呼び声も高いノバク・ジョコビッチ。現役、しかも世界No.1のテニス選手が著書を出すほど伝えたいことは? 本書前半は、ユーゴ内戦の空爆が続くセルビアジュニア時代、そしてキャリア初期のコンディション不良の振り返り。ピザ屋の息子がまさかの小麦アレルギーだと判明し、一年後に初のウィンブルドンタイトルを手にするまでと、グルテンフリーの食生活の紹介。これがメインテーマで、ジョコビッチファン、食生活改善に関心が高い方におすすめ。 後半で紹介される、彼が信じるパフォーマンス向上の方程式は、仕事にも効きます。よい食べ物に加えて下記の4つ。在宅勤務で凝り固まった関節痛解消にも有効。各トレーニン…

  • 『人生がときめく片づけの魔法』情熱、左脳、右脳が駆使されたプロの仕事

    かの有名な、こんまりさんのベストセラー。モノを選ぶ基準は「触ったときに、ときめくか」といったキャッチャーなワードにあふれる本ですが、彼女が示す片づけの極意は、おそらく何千回にも及ぶ試行錯誤、自分の具体的な経験から抽出された、研ぎ澄まされたシンプルなもの。非常に理論的でもあります。 片づけで必要な作業は「モノを捨てること」と「収納場所を決めること」の二つだけ。大事なのは「『捨てる』が先」の順番だけ。 本書の冒頭では、こんまりさんが幼児の頃からいかに片づけマニアだったかが記されています。はっきり言って普通じゃありません(笑)大好きだからこそ、子供時代から様々な片づけ法を実践し、試行錯誤を繰り返す。…

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