ある朝、スマホの通知履歴を見ると見知らぬ番号から着信があることに気づいた。留守電が入っていた。 「初めまして、急にお電話を掛けてすみません。私、H子の妹です。もしご迷惑でなければ、お電話頂きたいです......。」 あどけなさの残るその声は緊張で震えていて、そしてH子にそっくりだった。 私には、4歳年下の弟がいる。H子の妹さんは確か同い年で、そんなところまで私とH子は似ていた。もし私が一人で死に、H子が生き残っていたのなら、弟もこんな声でH子に電話を掛けたのだろうか。 姉を死に導いたこの私に妹さんが電話を掛けて来るという事態は、いずれにしても尋常ではない話を想起させた。が、覚悟を決めて折り返し…
ある夜、やりきれない気持ちで公園のベンチで一人コンビニの缶チューハイを飲んでいると、足元に茎の折れた花が咲いているのを見付けた。 誰かに踏まれたのだろうか。植物には詳しくない。紫色の花の名前を検索したけれど、よくわからなかった。 その花を根元から抜いて持ち帰り、缶を洗って水を差して活けると、缶に描かれた花火の模様が映えそれはそれなりに風流な姿だと思った。独り暮らしの男の部屋には、数少ない彩りだった。 あのまま公園に放置されているよりも、死を迎えるまでの間ここにいるのは悪くないのではないかとも思った。 そうしてじきに花は枯れてしまった。そして缶ごとゴミ袋に入れるとき、心に何か形容し難い感情が生ま…
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