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北欧語書籍翻訳者の会
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2020/04/05

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  • 『エジプト人シヌヘ』80周年&「作家と作品の関係性」という命題

    言語:フィンランド語 執筆:セルボ貴子 2025年は『エジプト人シヌヘ』の原作が世に出て80周年となります。 文末にもこれについて書きますね。 ”Teema”のMika Waltari特集。 お若い、そして分け目は真ん中。 まずはこちらの話題から。先週、80周年に先駆けてフィンランド全国紙の隔月刊の冊子"Teema"が作者ミカ・ヴァルタリを大々的に特集。 これまでも読者から何度も希望がでていたのを「今でしょ!」(懐)となったようです。フィンランドの版元、WSOY社からも3月に記念装幀版が発売される予定です。 取材 今回、過去にこの作品を訳した翻訳者3名のうちの一人として私も取材

  • ヘルシンキの書店巡り2024

    ************************************** 今回の執筆者 服部久美子 専門言語 英語、スウェーデン語 居住地 日本 ************************************** スウェーデンのスンツヴァルからヘルシンキまで来てくれた葉子さんと丸一日ヘルシンキの本屋巡りをしてきました。 前回来たのはコロナ禍の前ですから5年以上たっています。ヘルシンキのアカテーミン書店では、フィンランド語だけでなくスウェーデン語、英語の本もとても充実していたので買いたい本のリストを作って期待して行きました。 前回は、このように棚は本でぎっしり

  • 美しいマルメーを体験してみませんか?

    ************************************** 今回の執筆者 中村冬美 専門言語 スウェーデン語 居住地 日本 ************************************** スウェーデン第三の都市と呼ばれるマルメーはデンマークへの窓口であり、美しい公園や街角アートで溢れています。 これまで撮りためてきた、マルメーの写真をお見せしますね。 この夏にマルメ-ーに行きました。こちらは泊まっていたAirbの前の広場です。夜中の2時頃にマルメーについたのでクタクタだったのですが、この美しい光景を見て、すっかり癒やされました。

  • 2本のノルウェー映画から見えてくること

    今回の執筆者 藤野 玲充 専門分野 映像翻訳(英日) 「北欧の映画をよく観る」と言うと、北欧映画の特徴は何かと聞かれることがある。例えばフランスなら気だるい感じ、インドなら歌い踊るといった類の回答を求められているのだろうが、『北欧といっても5ヶ国あるし、監督やジャンルにもよるし、そもそも国でひとくくりにできるようなものでもない。それにその他の国の映画にも通じていないと比較して語れないし……』などと考え始めてしまってうまく答えられず、もごもごと最近観た(あるいはお気に入りの)作品の話をして茶を濁すのであった。 とはいえ、もちろんざっくりとしたイメージがないわけではない。まず、セリフ

  • スウェーデン文学翻訳者セミナーで体験した絵本と児童書の世界 Part2

    ************************************** 今回の執筆者 中村冬美 専門言語 スウェーデン語 居住地 日本 **************************************   先週の続きで、8月に参加したスウェーデン文化庁の翻訳者セミナーについて書きたいと思います。 2024年8月23日   午前中は、ノルディンエージェンシーという本の版権を取り扱う会社を訪問しました。ノルディンエージェンシーは例えばカミラ・レックバリさんの本を扱っています。こちらにはオーグレン英里子さんという日本人の方がお勤めで、本

  • スウェーデン文学翻訳者セミナーで体験した絵本と児童書の世界

    ************************************** 今回の執筆者 中村冬美 専門言語 スウェーデン語 居住地 日本 ************************************** 今回のNOTEは中村冬美が担当します。 同じセミナーについて羽根由さんと久山葉子さんも書いてらっしゃいますが、私のはどちらかというと旅行記です。どうぞお気楽に読んでくださいね。 2024年8月21日から25日にかけて、ストックホルムでスウェーデン語-日本語翻訳者のセミナーがありました。スウェーデンの文化庁が招いてくださったのです。またヘレンハルメ美穂

  • 翻訳者の労働条件

    ************************************** 今回の執筆者 久山葉子 専門言語 スウェーデン語・英語 居住地 スウェーデン ************************************** 前回の投稿で羽根由さんが書いてくださったように、8月21日~25日にストックホルムでスウェーデン語→日本語の翻訳者セミナーが行われました。 スウェーデンの文化庁(Kulturrådet)の主催によるもので、合計8人が日本とスウェーデンから集まりました。 セミナーの雰囲気については羽根さんの投稿を読んでいただければと思うのですが、今回はセミナーのプログラ

  • スウェーデン語-日本語翻訳者 seminarium の思い出

    ************************************** 今回の執筆者 羽根 由 専門言語 スウェーデン語・ノルウェー語 居住地 スウェーデン ************************************** 去る8月21日~25日、ストックホルムでスウェーデン語ー日本語翻訳者のseminarium (*1) がスウェーデン文化庁 (*2) 主催で開かれました。 7人の翻訳者が日本から、またはスウェーデン各地からストックホルムに集まったわけですが、その旅費も宿泊費もスウェーデン文化庁が持つという太っ腹!な企画でした。(本来なら現地に8人集まるはずだ

  • フィンランド語の辞書を積んでみた

    服部久美子です。英語・スウェーデン語(数学、素粒子・宇宙物理)の翻訳ができます。 翻訳可能な言語にフィンランド語を加えるべく、今がんばって勉強中です。 上の写真は、うちにあるフィンランド語の辞書を全部積んでみたものです。 一番よく使うのは、『パスポート初級フィンランド語辞典』(吉田欣吾編、白水社)です。見出し語は5700語ですが、それぞれの語のところに派生語もまとめて書いてあるので感激的に便利です。動詞を引いたついでに対応する名詞も覚えられます。見出し語の活用・格変化も書いてあってうれしいです。この辞書で探しても見つからない語は『フィンランド語辞典』(萩島崇著、大学書林)を引きます

  • 『フーさん』シリーズと作者ハンヌ・マケラ氏のこと

    今年も暑い夏になっております。みなさまいかがお過ごしでしょうか。 今回は、私、上山美保子(うえやまみほこ・フィンランド語⇒日本語翻訳)の初めての翻訳出版となった児童書シリーズ『フーさん』(国書刊行会)と原作者ハンヌ・マケラ氏(1943-)についてご紹介します。夏休み時期でもありますので、この記事をきっかけに『フーさん』シリーズを手にしていただけると嬉しいです。 『フーさん』との出会い 日本語版の『フーさん』シリーズが出版されたのは、2007年から2008年にかけてのことでした。本国フィンランドで1作目が出版されたのが1973年のことなので、本国での出版から約35年の時を経て日本語

  • 暑中お見舞い申し上げます

    ************************************** 今回の執筆者 羽根 由 専門言語 スウェーデン語 居住地 スウェーデン ************************************** 暑い夏にはのんびりと……ということで、今回は涼しげな写真をお送りいたします。 先月(6月)なのですが、ストックホルムの Ekerö(オーク島)から市内中心部・市庁舎付近まで公共交通機関を利用してプチ船旅を楽しみました。 船が乗り場に近づいてきました。今からあれに乗ります。のんびりした景色をみながら出発進行!メーラレン湖がキラキラ。湖畔のコテージに住ん

  • 本の世界のために、北の果てからできること

    書店が閉まったり、国が支援すると言ったり ここ最近、「書店が危ない」関連の本が話題になったり、経産省が書店経営への書店振興プロジェクトチームを設置したりというようなことが出版業界で話題としてあがっていた。とはいえ、三十年前から基本的な構造は変わっていないという話もある。SNS上で、出版業界のどこがボトルネックなのか、という投稿のまとめでは、仕組み全体が旧態依然としていて誰が特に悪いというわけではないという主旨だった。けれど、硬直した仕組みをそのままにしてきた責任の一端は広く言えば声を上げてこなかった自分にも少しはあるのではないかと思っている。 私たちの会が昨年提案したこと 出版

  • スニッパ裁判終結 & スウェーデンと日本の刑法を読んでみた

    ************************************** 今回の執筆者 羽根 由 専門言語 スウェーデン語 居住地 スウェーデン ************************************** 2024年4月、「スニッパ裁判」が終結した。 2023年4月に私が書いたブログ記事があるので、興味のある方にはぜひ読んでいただきたい。↓ スニッパ裁判――スラングがわからないからと国語辞典に当たった裁判官たち|北欧語書籍翻訳者の会 (note.com) ******************** 経緯を簡単にまとめると 2021年6月13日 1

  • 偉大なる音楽家リーデルがスウェーデン文化に遺した功績

    表紙の写真 Swedish Jazz Musician Georg Riedel at Stockholm Jazz Festival, June 2010 Photo: Bengt Oberger ************************************** 今回の執筆者 久山葉子 専門言語 スウェーデン語 居住地 スウェーデン ************************************** 先週は雪が降った日もあったのに今週は昼間は25度と、スウェーデン中部も一気に初夏になりました。気付けば卒業シーズンまであと一ヵ月を切っています。あと

  • 児童文学のなかのお母さん

    ************************************** 今回の執筆者 中村冬美 専門言語 スウェーデン語 居住地 日本 **************************************   5月12日は「母の日」だった。老若男女問わず、多くの人が母親のことを想い、実家を離れて久しい大人の皆さんも母親のもとを訪ねたり、電話をかけたりしたのではないだろうか。私自身は先日娘に「お母さん、なにかほしいものある?」と聞かれたので、   文藝春秋社から出版されたモンゴメリ作松本侑子さん訳の『アンの夢の家』がほしいと答えておいた。

  • 「ああいう、交遊、EU文学」発足記念イベント講演・補遺

    昨年(2023年)11月の、EU文芸フェスティバル期間中に東京・青山で開かれた『変容することばたち』」(11月23日)に、参加者のひとりとして登壇しました。 この日、参加したいろいろな言語の翻訳者は20名超。それぞれが翻訳する原語の未邦訳作品や未紹介作家をピッチスタイルで紹介するというステージでした。フィンランドの文学作品は、日本ではまだ翻訳されているものが多くないので、フィンランド国内での人気や、他言語への翻訳の有無を参考に、ぜひ知っていただきたいと思う作品がある作家を11名に絞って駆け足でご紹介しました。 今回は、当日、時間が足りなくて“語りつくせなかった”作家や作品を加筆

  • アイスランド映画『ゴッドランド/GODLAND』と字幕ルール〈山括弧〉の話

    先月末に劇場公開されたアイスランド映画『ゴッドランド/GODLAND』を鑑賞してきました。 若きデンマーク人の牧師ルーカスが、植民地アイスランドへ布教の旅に出る。任務は、辺境の村に教会を建てること。しかしアイスランドの浜辺から馬に乗り、陸路ではるか遠い目的地をめざす旅は、想像を絶する厳しさだった。デンマーク嫌いでアイスランド人の年老いたガイド、ラグナルとは対立し、さらに予期せぬアクシデントに見舞われたルーカスは、やがて狂気の淵に落ちていく。瀕死の状態で村にたどり着くが… https://www.godland-jp.com フリーヌル・パルマソン監督の作品は、トーキョーノーザ

  • フィンランド大統領選と『エジプト人シヌヘ』

    北の果てのこの地では、目に見えて日が長くなり、朝は小鳥のさえずりが冴え冴えと響き、心浮き立つ季節の兆しが感じられるようになりました。 大統領選が終わった… 前回、私はヘルシンキ・ブックフェアに関した投稿をしましたが、今日は徒然に話を進めてみたいと思います。果たして着地点は見つかるか...。 ではまずフィンランドで六年に一度の大統領選が戦われたお話から始めますね。 昨年秋から翌年一月の国民投票に向け、選挙戦がスタートし、各候補者は実に様々なイベントに登壇し、全国を縦断して有権者と雑談し握手をし、セルフィ―を撮る……。 選挙戦中に勇気出して話しかけてみた新たな大統領となった

  • 女性形がある言葉のむずかしさ

    スウェーデン語に初めてふれたとき、名詞に「両性」と「中性」があると読み、「なんのこっちゃ、どういうこと?」と、頭の中がはてなでいっぱいになりました。どれが両性で、どれが中性か、は覚えるしかないのですが、両性名詞(「共性名詞」とも)は、もともと、男性名詞と女性名詞とに分けられていたものを「共性」としていっしょにしたものであると、あとになって知りました。 この「両性(共性)」「中性」という区分とはまったく別ですが、職業などを指す名詞には、女性形が存在するものがあります。日本語や英語でも、「俳優(actor)」という言葉に女性形の「女優(actress)」があるような感じです。たとえば

  • 北欧の文学団体が現在募集している出版社向けフェローシップ・プログラム

     北欧の文学団体が現在募集している出版社向けフェローシップ・プログラムを紹介させてください。 ノルウェー NORLA Fellowship in Oslo 2024: Adult fiction - Call for applications - NORLA NORLA invites foreign publishers, editors, and scouts of adul norla.no 応募締め切り:2024年2月25日 中央ヨーロッパ時間12時(日本時間20時) 開催日:2024年6月4~7日 開催地:ノルウェー、オスロ 主催者、ス

  • サウナにはいくつもの顔がある--『至福の北欧サウナ』

    1月10日、グラフィック社から『至福の北欧サウナ』が発売されました。 上の写真の右側がスウェーデン語原著です。Bastu というのはスウェーデン語でサウナのこと。もともとは badstuga で、これは bad と stuga の合成語、「風呂小屋」という意味でした。 「スウェーデン発のサウナ本? サウナと言えばフィンランドでしょ」とお感じになったそこのあなた。私も同感です! 私の周りのスウェーデン人数人にサウナについて聞いてみたところ、「あんなの熱いだけだから嫌」との答えばかり。唯一、サウナ好きの方はフィンランド系でした。 人口550万のフィンランドには300万個ものサ

  • Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点

    東京都現代美術館 昨年11月に東京都現代美術館で開かれたTOKYO ART BOOK FAIR(TABF)。前回の投稿でよこのさんが詳しくレポートしてくれたとおり、北欧がゲストカントリーでした。私も会場でスウェーデン児童文学プロモーションのプログラムに参加し、各出版社の絵本の原書をたくさん拝見させていただきました。 大学で絵本制作を指導するヨンス・メルグレンさんによるプレゼン。 娘が幼かった頃、彼の絵本が大好きでした。 会場では「Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点」という特別展示も行われており、今日はそのレポートをしたいと思います。 特別展示「Tove’s

  • スウェーデン児童文学プロモーションチームが来日しました

    新しい年が始まりました。 各地で続く内戦や戦争、攻撃などは、よい見通しがまったくないままに年が明けてしまった、と思っていたら、元日には非常に大きな地震が能登半島で起こりました。今も大きな余震が続いているようで、本当に心配です。一刻も早く状況が落ち着き、救助活動などが進むことを祈るばかりです。 少しでもよい年になりますようにと願いつつ、よい年にするべく、何ができるのかを考え続けねばと思います。 TOKYO ART BOOK FAIRにて もう2ヶ月近く前のことになってしまいましたが、11月下旬には東京では出版関連のイベントが多数開催されました。 恒例となったEU文芸フェステ

  • 2023年北欧語書籍翻訳者の会的まとめ

    本年、みなさまはどのような本読み時間を楽しまれましたか。 私たち「北欧語書籍翻訳者の会」メンバーが手がけた翻訳書も手に取っていただけていれば幸いです。今年も会のメンバーは、興味深い本を日本語読者のみなさま向けに出しました。 本年最後のNOTE記事は、2023年総括とうたい2023年に発行となったメンバーの手がけた翻訳書籍を発行月別にご案内します。 書籍名に出版社WEBサイトへリンクをはりましたので、書籍内容の詳細は、そちらでご確認ください。なお、文芸誌等に掲載されたものは対象外としました。翻訳を手掛けた本人が、その書籍について「語った」NOTE記事もございますので、そちらとあわせてお

  • 書店員さんに賞を――デンマークの事例

    ブリクセン賞とは? https://blixenprisen.dk/prismodtagere/prismodtagere-2023/ デンマークにはブリクセン賞という文学賞がある。ブリクセンとは、お察しの通り、『アフリカの日々』や『バベットの晩餐会』などで知られるデンマークを代表する作家、カレン・ブリクセン(イサク・ディーネセン)が由来となっており、デンマーク文学に寄与する人、団体、機関等の功績をたたえるため、2015年から、デンマーク作家協会、デンマーク文学協会、デンマークの出版業界により与えられる賞だ。 ブリクセン賞には、「今年の本」「今年の小説」「今年の伝記」「今年の

  • 「やっと会えたね」ある10月の午後、書籍見本市にて

    さて、勿体ぶったのはタイトルだけ、余韻も0.5秒で消えたでしょうか、今回はフィンランドからお届けします。   毎年、各国でブックフェア(書籍見本市)が開催され、フィンランドで最大規模を誇るのはその名もヘルシンキ・ブックフェア(Helsingin Kirjamessut)、実は初回は2001年ですので、500年以上の歴史を誇る世界最大規模のフランクフルト等とは比べるべくもありませんが、フィンランドの書籍や文学に関心を持つ人にとっては大切なイベントです。   公式サイト Helsingin Kirjamessut   ちなみに、北欧で最大規模の書籍見

  • 『サウナをつくる スウェーデン式の小屋づくりのすべて』出版されました!

      この11月9日にリーサ・イェルホルム・ルハンコ作『サウナをつくる スウェーデン式小屋づくりのすべて』という本がグラフィック社より出版されました。 中村冬美と安達七佳が翻訳を担当し、太田由佳里さんというスウェーデンで家具職人をしている方が監修を致しました。また柚井ウルリカさんが、中村と安達のスウェーデン語表現に関する相談に載ってくれました。この本の編集はFermentbooks社の和田義彦さんとグラフィック社の南條 涼子さんがご担当くださいました。皆様に心からの感謝を申し上げます。   こちらでこの本を少々ご紹介させてください。   本書の作者、リー

  • 「私たちのエコロジー」展

    六本木ヒルズ内にある森美術館で開催中の「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」より、2人のアーティストと作品を紹介したいと思います。 森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために 森美術館 - MORI ART MUSEUM 現代アートを中心にファッション、建築、デザイン、写真、映像など様々なジャンルの展覧会を開催。 www.mori.art.museum 第1章 全ては繋がっている 本展が定義する「エコロジー」は、「環境」だけに留まりません。この地球上の生物、非生物を含む森羅万象は、何らかの循環の一部であり、

  • 氷河の裾を歩いてきました

    今回は画像だけです。 天井の融けた氷の洞窟氷舌に整えられた道氷河の川がはじまる場所復路は晴れていた。氷河が融けた細流が流れていく。 撮影者:朱位昌併

  • 「手に負えない者たち」のこと

    少し前、女性史について発信するインスタグラムアカウントで、スウェーデンで近々公開されるという映画が紹介されていた。映画はデンマークのものだったが、同じようなことがスウェーデンでも起きていた、と書かれている。なんのことだろう、と思ったら、女子収容所と強制不妊手術のことだった。 デンマークでは、女子収容所が1923年から1961年まで存在し、500人以上の女性が、低能である、あるいは、性的に奔放であるとして収容された。スウェーデンの配給元サイトにある資料には、そう書かれている。少し調べてみると、女性たちは期限のないままに収容され、強制不妊手術を施されることもあったことがわかった。

  • フィンランド・ヴァーサ周辺の旅--フィンランドのスウェーデン語と日本庭園

    2023年8月上旬にフィンランドを旅行してきた。 22:39 ストックホルム発ウメオ(Umeå)行の夜行コンパートメント内。2段ベッド。右端にトイレ・シャワーあり。 翌朝8時、ウメオ到着。そして12:00、船に乗ってフィンランドへ! ウメオのターミナルにて 4時間の船旅のあと、着いたのはフィンランドのヴァーサ(Vaasa)。 1)フィンランドのスウェーデン語の発音 ヴァーサ周辺はフィンランドでスウェーデン語話者の多い地域。 実は同様の別の地域に行ったことがあり、その時は「それほどスウェーデン語は通じないな」と思ったので、ヴァーサもそうかと思いきや。 通じます、通じます! 若い人

  • 北欧発の脳科学本が続々と

    ここ数年、スウェーデンでは脳科学が大流行しています。なぜかというと(私見ですが)、まず第一にストレスで燃え尽き、うつなどの精神的不健康が激増していること。特にデジタル系はその弊害がやっと部分的に分かってきた状態で、よく知りたいと思うのは当然の心理でしょう。 「科学」がこれだけ注目を集めるもう1つの理由は、コロナ禍にもあると思います。感情的な意見や噂が飛び交うなか、公衆衛生局の主席疫学官(当時)アンデシュ・テグネルが、どれほど国内外から批判を浴びても科学的根拠に基づいた姿勢を崩さなかったのを見て、多くのスウェーデン人が「これぞあるべき姿!」と改めて心に誓ったように思います。それ以来、以

  • ソフィ・フォン・フェルセンと彼女の過ごしたロフスタッド城

    皆さんはフランス王妃マリー・アントワネットの愛人と言われる、アクセル・フォン・フェルセンに妹がいたのはご存じでしょうか? 彼女の名前はソフィ・フォン・フェルセン。アクセルがマリー・アントワネットの他に心から愛した女性がいたとすれば、このソフィでしょう。私はこの夏、スウェーデンのノルチェーピングにあるロフスタッド城を訪れました。ロフスタッド城はソフィ・フォン・フェルセンが晩年を過ごした城なのです。 Eva Sophie von Fersen (婚姻後:Sophie Piper) スウェーデン国立美術館所蔵 今回のNoteでは、ソフィ・フォン・フェルセンをご紹介したいと思います

  • フィンランドの旗日は平日にもあります~国旗掲揚の日いろいろ~

    この記事公開を公開日する8月9日は、日本では長崎の原爆忌(長崎原爆の日)です。平和への祈りと、戦争が無くなることを願う日の一つ。その8月9日、フィンランドでは、『トーヴェ・ヤンソンの日 フィンランド芸術(アート)の日』と定められ国旗掲揚が推奨されています。この日が「トーヴェ・ヤンソンの日」と言われるようになったのは、8月9日がヤンソンの誕生日だったため。トーヴェ・ヤンソンの誕生日を記念日にするにあたり、絵・イラストだけでなく文学作品も手がけ広く芸術分野で活躍したヤンソンにちなみ「フィンランドの芸術の日」と定められました。また、日本では「ムーミンの日」と記念日登録されています。 202

  • 訳書刊行イベントはやるべき?――翻訳者の悩み

    皆プレゼンが怖い 先週の土曜日(2023年7月8日)に、銀座ナルニア国さんで『デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち』の講演会を開いていただきました。 枇谷玲子さん講演会 “デジタル世界と どう付き合えばいいの? ~デジタル中毒克服のために~” 教文館ナルニア国 『デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち』翻訳者 枇谷玲子さん講演会 “デジタル世界と どう付き合えばいいの? www.kyobunkwan.co.jp 参加者には子どものデジタル中毒に危機感を持っている方、強い関心をお持ちの方が多く、そういう方々と直接対話をし、ご意見をうかがえて本当に

  • 2022年 フィンランドの図書館貸し出しランキング(カテゴリ別)

    さてフィンランドは6月のはじめに学校が夏休みに入りました。そして夏至の頃から多くの大人も夏休みに入り、サマーコテージに行く人も増え、町中は閑散としているところも…。 夏と言えば、フィンランドの書店ではミステリなど肩肘張らずに読めるものが多く売り出される季節で、ゆったり休み期間中に気楽に読書を楽しむ人が多いようです。 新刊書店、または古書店で買う手もありますが、なにせフィンランドやデンマークは国民一人当たり図書貸出し数でトップを入れ替わり争う国。   という訳で、今回は昨年フィンランドの図書館で最も貸し出しが多かった書籍のランキングニュースを見たのでそちらをお伝えしようと思

  • EUフィルムデーズの季節到来!

    さて、今年もEUフィルムデーズの季節がやってきました。開催20周年を迎え、会場も4箇所に増えており、毎年楽しみにしているフィルムデーズファンとしては喜ばしい限りです。 【東京】国立映画アーカイブ 6/2(金)~6/30(金) 【京都】京都府京都文化博物館 6/20(火)~7/23(日) 【広島】広島市映像文化ライブラリー 7/21(金)~8/5(土) 【福岡】福岡市総合図書館 8/9(水)~8/27(日) https://eufilmdays.jp 北欧諸国からは、以前にnoteで取り上げたことのあるスウェーデンの作品『タイガーズ サンシーロの陰で(原題:Tigrar)』のほ

  • アイスランドの地獄のひとつ

    アイスランドの「地獄」と言われれば、何を思い浮かべるだろうか。ヘクラ(Hekla)という火山に地獄への入口があるのだと、17世紀のとあるイタリアの修道士のように大真面目に話す人がいたら、きっと観光ガイドか何かだろう。 アイスランドに地獄の入り口があると信じている人は、おそらく現代には(ほとんど)いないだろうが、いつからか「地獄」と呼ばれる場所は、アイスランドに複数存在する。ヴィーティ(Víti)という地名の付いているところなのだが、単に「ヴィーティ」という名前の場所が2箇所あり、ほかにも「長ヴィーティ」、「大ヴィーティ」、「小ヴィーティ」がある。 この中で観光地として知られて

  • 『よるくまシュッカ』ぬり絵コンテスト開催中

    こんにちは。私は翻訳者の中村冬美と申します。 私は2021年から『よるくまシュッカ』というねんね絵本のシリーズを翻訳しています。 シュッカという名前のくまが子どもたちを抱っこして星の森へ連れていくという内容のお話です。 2021年にはこのような絵本を翻訳させていただきました。百万年書房という版元さんから出版されています。 『よるくまシュッカ』 『よるくまシュッカ ミニ』 『よるくまシュッカ と ゆきのおふとん』 『よるくまシュッカ と ゆきのおふとん ミニ』 2022年の6月、シリーズの5作目 『よるくまシュッカ と あんしんのはな じぶんをたいせつにすること』 が出版されま

  • うちの北欧関係の本を掘り出してきました

    家にある北欧関係の本を出してみたら、積読も含めてたくさんありました。翻訳書が多いですが、これはすごいことです。北欧語から直接翻訳できる翻訳者の方たちが出てきたのはここ20年ほどのことではないでしょうか。それまでは英語からの重訳が多く、二重の訳によるずれもあり、またミステリーは英訳されるときにかなり削られる傾向にありました。原語から直接訳されたものを読めるようになったことはとても嬉しいことです。北欧語書籍翻訳者の会と関係ある本を中心にながめてみます。 フィンランド 北欧は国民の幸福度が高いと言われますがフィンランドでの生活については、翻訳者・通訳者のセルボ貴子さんと、靴家さちこさん

  • スニッパ裁判――スラングがわからないからと国語辞典に当たった裁判官たち

    2023年2月23日にスウェーデンの高等裁判所が出した判決が波紋を呼んだ。10歳の少女をレイプしたとして一審で有罪判決を受けた男性が、二審で無罪になったのだ。その理由は、被害者である少女が使った言葉「スニッパ」だった。少女は、男性が「下着の中に手を入れ、さらにスニッパの中に指を入れた」と証言している。しかし高裁の裁判官たちは「スニッパの意味がわからない」と言い、国語辞典(SO)に当たった。そこには「女性器の“外側”を意味する俗語」と書かれており、したがって「容疑者である男性は被害者の膣に指を入れたとは断定できない」と判断、そして男性を無罪とした。 このニュースは3月1日に公共放送

  • タイタニック号に乗っていたスウェーデン人たち

    前回のブログで藤野さんがタイタニック号の話を取り上げていらっしゃいました。タイタニック号に乗船していたスウェーデン人の話はわたしも興味があるので、勝手にバトンを受け取ってみます。 当時は多くのスウェーデン人がアメリカに移住し、わたしも知り合いから祖先がアメリカに移住したという話、あるいはアメリカに移住したけれど結局スウェーデンに戻ってきたという話を聞いたことがあります。 昨今の難民問題でも、難民を多く受け入れすぎだという意見に対して、”かつてスウェーデン人がどれだけ他国に受け入れてもらったかを忘れてはいけない”という論調もよく見られます。 ヴィルヘルム・モーベルイがアメリカへ移住

  • 25年ぶりに映画館でタイタニックを観た話

    先日、公開25周年で『タイタニック』の3Dリマスター版が上映されていたので鑑賞してきました。 映画『タイタニック』とは 映画史に残る大ヒット作なので改めて説明するまでもないかもしれませんが、念のため概要をおさらいしておきましょう。 映画『タイタニック』は、1912年に実際に起きた豪華客船タイタニック号沈没事故をベースに、画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)と上流階級の令嬢ローズ(ケイト・ウィンスレット)の身分違いのラブストーリーを描いた物語です。 公開当時の1997年には、巨額の製作費が話題となり、全世界歴代興行収入1位を記録、世界中で大旋風を巻き起こしました

  • 作家ミカエル・ヴィアンデル氏へのインタビュー

    今年の1月25日、私は東京にいらしたスウェーデンで大人気の児童文学作家、ミカエル・ヴィアンデル(Michael Wiander)さんにお会いしました。 東京のイタリアンレストランで、ヴィアンデルさんとランチをご一緒しつつインタビューしました ヴィアンデルさんは、『デクステル・オルソンの冒険』というスウェーデンで小学生に大人気のシリーズを書いてらっしゃいます。 この本は、主人公の小学生デスクテルが発明家のお祖父さんと一緒にコストロフという敵を相手に戦い、世界中を旅する冒険物語です。日本では残念ながらまだ出版されていません。 ミカエル・ヴィアンデル氏 ストックホルムの本屋さんで

  • 日本語で綴るアイスランド語の音声

    アイスランド語と言ったとき、中世北欧の諸々に興味があれば、きっとエッダやサガが書き残された中世アイスランド語――古アイスランド語とも呼ばれる――を真っ先に思い浮かべるだろう。もし特別の関心を寄せていないのであれば、アイスランド語を学ぼうという意気込みは、きっと19世紀にほぼ現在のかたちに整えられて出来たアイスランド語――現代アイスランド語と呼ぶことにする――に向くにちがいない。 ある言語の歴史について仔細に話そうとすれば、いつまでも話題は尽きることない。そもそも何をもってアイスランド語とするのか、古ノルド語と中世アイスランド語はどう区別するのか、いつまでを中世として扱うのか、など

  • 北欧発、自然をテーマにした本

    北欧語翻訳者の枇谷玲子です。私は翻訳者として活動しはじめた当初、特に絵本の翻訳の仕事をいただくことが多かったのですが、活動する中で、編集者さんからよく聞かれた質問は、「北欧の本(絵本)の特徴は何ですか?」というものでした。 その質問に対して、私は主に以下のように答えてきました。 ●子どもを未熟者扱いしない ●タブーが少ない ●アンチ・オーソリティ(反権威)のマインドを感じさせる作品が多い etc. また、以下のような指摘もよく受けます。 ●自然が出てくる作品、自然をテーマにした作品が多い 確かに自然が出てくる/自然をテーマにした北欧の作品は、絵本に限らず、たくさんありま

  • ヘルシンキ・ブックフェア2022のことなど

    2020年は完全オンライン、2021年は、会場で開催、一部オンラインでトークなどを配信、昨年2022年は、完全平常通り開催だったヘルシンキ・ブックフェア2022のことをお届けします。2022年10月末の開催からほぼ3か月、瞬発力的レポートではなく、会場の熱量と、私が会場で感じたほぉ!へぇ!をお届けするじっくり発酵型レポートです。 フィンランドの出版業界の変化を実感できるがブックフェア。かつては、大型書店、大手出版社は常に個別にブースを構えていましたが、出版社と書店の経営提携で、全国規模の書店と出版社が共同のブースを構えるようになって数年が経っています。出版社も各社の名前を残しつつ

  • 今、北極圏がアツい! 新刊『白夜に沈む死』

    今日は1月19日刊行の新刊をご紹介したいと思います。 『白夜に沈む死』 オリヴィエ・トリュック著 『白夜に沈む死』上『白夜に沈む死』下 以前、北欧書籍翻訳者仲間の久美子さんがブログにも書いてくださった、『影のない四十日間』のトナカイ警察シリーズ2作目になります。 日本では多くの北欧ミステリが翻訳されていますが、北極圏のサーミ人に脚光を当てた作品は珍しく、1作目はSNSでもたくさんのご感想をいただきました。”北欧版金カム(ゴールデン・カムイ)”と評してくださった方も多かったです。 Twitterではみどママ(みどふく)さんが素敵なプレゼン画像をつくってくださいました。みどママさん、

  • 「フィンランド語始めました」

    フィンランド語を習って6年になりました。きっかけは、インド・ヨーロッパ語族ではない言語の文法に興味をもったことでした。 学び始めてみると、文法は想像以上に複雑でした。 1. 動詞は人称変化する。(これは、普通。) 2. 動詞の不定詞は5種類ある。(うそでしょ!) 3. 名詞、形容詞の格(「~が」「~を」「~へ」など)は普通使われるものだけでも 12種類ある。単数形と複数形のそれぞれが格変化をする。(まあ、ロシア語も格は多いし...。) 4. 動詞の不定詞も格変化する。(こんなのって、聞いたことある?) 5. 所有接尾辞がある。つまり、私の」「あなたの」「彼/彼女の」などを接尾辞で表す

  • 第六回 ヨーロッパ文芸フェスティバル内と外

     さて、今回フィンランドセンターよりゲストとして頂き、ヨーロッパ文芸フェスティバルに参加するために日本に。 実に、二 十 年 ぶ り の十一月の日本でした。(前回は妹の結婚式で、長男が生後半年だったなと…)   EU代表部、フィンランドセンター、みずいろブックスさん、イタリア文化会館、インスティテュト・セルバンテスといった関係各所に心からお礼を申し上げます。   では文芸フェスティバル・レポ、行きますよ! おのおのがた、用意はよろしいか?(意訳:長文ですぞ)   このお話が始まったのは私とフィンランドセンター所長アンナ=マリアさんとの間では「伝説

  • 『森の来訪者たち』--70代の作家が別荘にプチ引きこもり、生物と人間について考える

    10月31日、草思社より新しい訳書が刊行された。 森の来訪者たち 草思社 (soshisha.com) 著者ニーナ・バートンは1946年生まれ。スウェーデン語原著の刊行は2020年なので、74歳のときの発表作となる。 著者の執筆意欲は旺盛で、この別荘を購入したのも「原稿を持って引きこもれそうだったから」。 おそらくかなり安い物件だったのだろう。天井裏にはリスが棲みつき、床下にはキツネやアナグマが出入りする。壁の中には二種類のハチが巣をつくり、壁の上ではアリの隊列が行進する……。 とどめは、なんと湿気のために海に面した壁が腐敗していて、取り壊すことに……。 執筆

  • リューベン・オストルンド監督は、お好きですか?

    今回は、今年のカンヌ国際映画祭で二度目のパルムドールを受賞したスウェーデン人映画監督、リューベン・オストルンド(Ruben Östlund)について、過去作を振り返りながらご紹介したいと思います。 一度目のパルムドールを受賞した前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、現代美術館のキュレーターである主人公クリスティアンが、財布と携帯をすられたことに端を発して、一人の少年にしつこく謝罪を要求される状況に陥ります。クリスティアンは理知的で社交的な人物ですが、プライドが高く、なかなか自分の誤りを認めることができません。 私はオストルンド監督の作品がとても好きですが、手放しでそ

  • 『LAMB/ラム』をアイスランドで観たときのこと

    アイスランド発の映画『LAMB/ラム』(原題:Dýrið(動物))が日本で公開されてから約1 か月が経った。興行収入が1 億円を突破し、封切り後早々に売り切れたパンフレットや公式グッズの一部が再版されるなど、非常に人気らしい。 筆者は、本作がアイスランドで公開されたときに最寄りの映画館で鑑賞し、それからアイスランドでの批評記事もできるかぎり目を通したが、これほどの小さな熱狂が日本で巻き起こるとはまったく予想していなかった。実のところ、公開されたら「なんだこれは!」と混乱から声を荒げる観客が少なくないのではないか、と思っていた。いや、これは、アイスランドで観たときの周囲の観客の反応が

  • ブックフェア(Bokmässan) in Göteborg 2022

    スウェーデンでは9月22~25日にヨーテボリでブックフェアが行われました。私も参加したのですが、パンデミック後、初の本格的な開催ということで盛り上がっていました。 まずは月曜日に(ブックフェアのプログラムの一環というわけではないのですが)、ヨーテボリ大学日本語科が主催するワークショップに参加させていただきました。 ワークショプ「キャラクターと同一性・個体性」 役割語研究の創始者であり大阪大学名誉教授・放送大学大阪学習センター所長の 金水 敏 先生がスウェーデンにいらしての、対面ワークショップでした。 当日は日本語を教えている先生や日本語を学ぶ学生が参加し、金水先生のお話を興味深く

  • 読書のネタ探し ~フィンランド語訳が出ている日本の小説~

    情報の発信者は、その情報が確かに“誰か”に届くことを《願って》、あるいは届くことを《狙って》発信し続けます。一方、情報発信者からそれらの情報の受け手と想定されている私たちの側も、自分が求める情報はいずこにあるかを積極的に探しに出かけることも、また大切なことだと常々感じ、考えてもいます。ということで、今回は私が能動的に集めた情報を、私が発信者となってNoteのページからお届けします。 フィンランドの小説や絵本、児童文学の中で読みがいのある作品に出合いたい、といつも新刊書を中心に探します。もちろん、この《探す》という作業には、私自身がひとりの読者として、自分が楽しめる、と思える作品探

  • ミステリーで外国語を

    ミステリー小説と外国語が何より好きな私にとって、寝る前に外国語のミステリーを読むのが至福の時間です。私にとっては、リンドグレンの『長靴下のピッピ』のような少し古い児童小説よりも、現代の平易な文章で書かれたミステリーの方がどうも読みやすいようです。単語の面でも、話が論理的に展開するので推測できるという面でも(女の子が片手で馬を持ち上げたりしない!)、そして、クライマックスになると本がぐいぐい背中を押してくれます。 これからスウェーデン語の本を読んでみようと思っている中級学習者の方々に向けて、まだなんでも読めるという段階に至ってないからこそわかる、文章が易しいスウェーデンのおすすめミ

  • 「若者」と「住まい」から考えるスウェーデン社会

    8月20日、グレタ・トゥンベリさんが、学校ストライキを始めてから4年になることをツイートしていました。4年前のこの日は月曜日、新学期の始まりに合わせて、彼女は「気候のための学校ストライキ」というプラカードを持ち、国会議事堂前で座り込みを始めました。この年の9月、スウェーデンで4年に1度の選挙が行われることになっており、当初、彼女は投票日の9月9日までストを続ける、としていました。スト決行にいたるまでの、何年もの葛藤や困難などは『グレタたったひとりのストライキ』に詳しく記されていますが、この年が選挙の年だったことも大きなきっかけのひとつとなったのではないかと思います。気候変動に関する政

  • みずいろブックス 第一作 記念対談 シッランパー『若く逝きしもの』

    フィンランド文学に特化した出版社の誕生 フランス・エーミル・シッランパー 作/阿部知二 訳 復刊の表紙と帯 セルボ貴子(以下:セ):では改めまして、今日はよろしくお願い致します。今Googleドキュメント共同編集で紙上対談というものをやってみていますが、リアルタイムですからお互い打ち間違いとか(!)変換こうやってるんだとかばれちゃうわけですね(笑)   みずいろブックス 岡村(以下:み):はじめての体験でドキドキしています。さっそく変換ミスばれましたね(笑)今日はよろしくお願いいたします。   (セ):私も打ちながら誤字連射中です。さて、みずいろブックスさんとは去年

  • 5歳と7歳の児童が殺人犯? 抑圧された記憶と虚偽自白、スウェーデンの冤罪事件

    ケヴィン事件の発生 「5歳と7歳の兄弟が4歳の子どもを殺害しました。彼らは自白しています」 こんな警察発表を聞いたあなたはどう思うだろうか? 「まじか?」とまずは耳を疑うだろう。さらに「年齢が低いために裁判にはかけません。これから兄弟は保護観察下に置かれます」と続けば、「いやまて、真相究明しなくていいのか?」とも。 だがこれはスウェーデンで1998年に起こった実際の事件なのだ。 1998年8月16日、4歳の男の子ケヴィンの死体がアルヴィーカという町の湖畔(トップ画像。出典)で発見された。最初は溺死と思われていたが、やがて警察はこれを殺人事件として捜査しはじめる。  

  • 北欧発、勉強したくなる本

    1.塾の夏期講習説明会--何のために勉強する? 翻訳者の枇谷玲子です。 私事ですが、先日、高校受験を控える中3の娘と塾の夏期講習の説明会に行きました。 それまで比較的安価で、ゆったりとした雰囲気の個別指導塾に行っていた娘ですが、部活動引退を機に、厳し目の塾に移ろうかと親子で考え、説明会に参加したのです。 そこで塾の先生が熱く、何のために勉強するのかを説いていました。大筋としては、 1.可能性を広げるため 2.努力する力を養うため 3.学ぶこと自体が尊いから 勉強をしようという内容でした。 勉強ができて、よい高校に行けば、将来の可能性が広がるのでしょうか? 親として答えは出ま

  • ノルウェー文学普及協会(NORLA)主催の翻訳者ホテルに参加して。第2週

    こんにちは! 先週に続き、ノルウェー文学普及協会が主催しているプロジェクト「翻訳者ホテル」についてご報告いたします。 再びエージェンシー訪問です。オスロ・リテラリー・エージェンシーに続いてうかがったのは、ギュルデンダールエージェンシー(Gyldendal Agency)です。 エージェントのアンネ・キャスリン・エングさんとニナ・ペーデシェンさん エージェントのニナさんと一緒に これぞ北欧という感じのすてきな表紙のカタログをいただきました こちらはNORLAの選書リストにもはいったスターゲイトという作品です。 仕事を失った父親とクリスマスの飾りを売る娘の物語 次に訪問した

  • ノルウェー文学普及協会(NORLA)主催の翻訳者ホテルに参加して

        こんにちは! 私はスウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語から日本語への翻訳をしております中村冬美と申します。 今年の5月9日から22日まで私はNORLA(ノルウェー文学普及協会)が主催してくださった、翻訳者ホテルというプログラムに参加していました。     今回のNOTEではこの翻訳者ホテルについて報告したいと思います。     この「翻訳者ホテル」とは、ノルウェー文学を翻訳している翻訳者が2週間オスロに滞在して、その間に翻訳の仕事を進めたり、オスロのエージェンシーを訪問したり、作家さんや色々な言語からノルウ

  • アイスランド映画――2022年5月

    テレビがなければプロジェクターもない自室で映画を観ようとすれば、PC画面と向き合わざるをえない。ただ、その画面の小ささか音の平さゆえにか、どうにも集中できない。90分の映画でも、30分ごとには一旦止めてしまう。つまらないものを観ているわけではない。けれども、その気になれば自由に振る舞える環境で観ていると、どうにも集中できないのだ。時計を見ることが憚られる真っ暗な映画館のなか、ここでお前はこの映像を見るしかないのだ、と強いられないと――自ら望んで代金を払ってそうされているのだが――映画を一気に観ることができなくなって久しい。○○を観た、と誰かが口にするときにオンラインでしか配信していな

  • 『未邦訳書籍展』 開催報告

    去る2022年4月12日に初の試みである『未邦訳書籍展』を出版ホール@神保町で開催いたしました。当初の予定では、北欧語書籍翻訳者の会のメンバー4名が参加予定でしたが、パンデミックの影響や、仕事の都合等で2名での実施となりました。 開催形態は、事前に登録いただきました出版社の編集担当の皆さまとの個別商談会。1社30分という時間の中で、ご興味のあるジャンルの書籍を中心に、翻訳者が準備した未邦訳書籍をご案内しました。 会場の様子 その1 当日は、総勢17名の編集者の方々にお越しいただくことができました。単なる書籍の紹介にとどまることなく、各国の出版界事情や読書スタイルなども含め、直

  • 楽しい北欧フィルムデーズ!

    今年も5月下旬から8月にかけて、EUフィルムデーズが開催されます。 EUフィルムデーズ 2022 欧州連合(EU)加盟国の在日大使館・文化機関が提供する作品を一堂に上映するユニークな映画祭です。20回目の節目を迎える本年 eufilmdays.jp 東京 国立映画アーカイブ 5/28(土) - 6/23(木) 京都 京都府京都文化博物館 6/21(火) - 7/18(月・祝)) 広島 広島市映像文化ライブラリー 8/23(火) - 8/31(水) オンライン配信 7/8(日) - 7/31(日) (*オンライン配信の作品や視聴方法については、こちらをご参照

  • ミステリ作家になるには?

     先日、わけあってスウェーデンミステリ執筆講座に参加しました。自分でミステリを書こうとたくらんでいるわけではないのですが、仲間と主催しているスウェーデン・ミステリフェスティバルのイベントのひとつとして企画しました。講師は有名ミステリ作家Dag Öhrlund氏で、金・土・日の三日間の濃密なコース。受講者の大半は私も知っている人で、地元の新聞記者、フリージャーナリスト、すでに自費出版でミステリを出している人たちでした。毎年多数のミステリ作家がデビューするスウェーデン、私の周りにもミステリを書いている人、書きたいと思っている人が何人もいます。専業作家を目指しているというよりは、普

  • 主人公たちが話す言葉は? 方言と翻訳

    小説を読んでいるとき、登場人物が話している「言葉」を気にしていることがどれほどあるでしょうか。登場人物の生きる時代、年齢や出身地、あるいは彼ら、彼女たちの職業や物語上の立場の違いによって話し言葉は、当然のことながら異なっているはずです。 古典の中でも特に数多くの言語に翻訳されている『源氏物語』。河添房江氏はまず伊藤鉄也氏が「海外源氏情報」というWEBサイトで、英語、中国語等「33の言語」で翻訳されていることに触れておられると紹介した上で、明治以降、与謝野晶子の『新訳源氏物語』を始め、日本を代表する幾人もの作家たちが現代語訳を試み、近くは平成に入ってからも新訳のニュアンスの異なる橋本

  • オーディオブックは本の世界をどう変えるのか?

    ここ数年、飛ぶ鳥を落とす勢いなのが「オーディオブック・サービス」です。 オーディオブック・サービスとは、定額サブスクリプション型サービスで、月額でいうと約5ユーロから20ユーロくらいの価格帯で朗読された書籍がほぼ聴き放題になるというもの。オーディオブックだけでなく、電子書籍が読める場合も多いようです。日本でも大手を始め、複数のサービスが開始されているようですね。以前、よこのななさんが書かれた、「大手オンライン書店以外から本を買う(スウェーデンの場合)」 でも同サービスが言及されていましたが、北欧を中心にスウェーデン発の企業に勢いを感じます。今回はその良し悪し、出版業界や書き手の受け止

  • 北欧語書籍翻訳者の会メンバーによる『未邦訳書籍展』へのご案内

    出版編集者の皆様へ   私ども北欧語書籍翻訳者の会は、来る4月12日に翻訳者と各出版編集者の皆さまと一対一で未邦訳書籍をご紹介させていただくワークショップを開催いたします。   フィンランド語の翻訳者、上山美保子およびスウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語の翻訳者、中村冬美が各国のフィクション、ノンフィクション、児童書、絵本、その他をご紹介させていただきます。どうぞ奮ってご参加ください。 開催日時 2022年4月12日(火)13時~19時 開場 12時45分 最終面談開始時間 18時30分 会 場 日本出版クラブ内会議室 402

  • 老人と猫―ある愛の物語

    今日はスウェーデンの心温まる本をご紹介したいと思います。ニルス・ウッデンベリ著『老人と猫―ある愛の物語』です。引退した心理学教授(著者)の家に、ある日子猫が住み着きます。元教授は子猫に対して「うれしいに違いない」と決めつけたり、「これをしてほしいはずだ」などと勝手に推測せず、心理学者らしく、対等な存在として猫の気持ちを理解しようと努力します。ペットの可愛さをただ描写する本ではありませんが、読んだ後幸せな気持ちになれるすてきな本です。 邦訳は『老人と猫』というタイトルでエクスナレッジからでています。 まだ翻訳はありませんが、続編『猫とふたりぼっち』が出ているそうです。

  • 翻訳やことばに興味がある人におすすめの本

    今回は、最近買った・読んだ本の中から、翻訳やことばに関する書籍をいくつかご紹介したいと思います。新刊が2冊、それ以外もこの1年ほどの間に発刊された本です。 日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年 (本の雑誌社) 田口 俊樹 著 日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年 訳書200冊の名翻訳家が、自身の訳書を読み直し、翻訳人生最大の危機からチャンドラー新訳での大発見まで、40年におよぶ翻訳 honto.jp 翻訳家として40年以上の経歴(訳書200冊!)をお持ちの田口俊樹さんが、ご自身の訳書と当時の出来事を振り返る回顧録です。インターネットがなかった時代の翻

  • あなたはどのくらい幸福ですか?

        本日はスウェーデンの幸福の本、『幸福についての小さな書』をご紹介したいと思います。 世界幸福度ランキングを見ると、北欧諸国は常に上位にあります。 1位 フィンランド、 2位 デンマーク 3位 スイス 4位 アイスランド 5位 オランダ 6位 ノルウェー 7位 スウェーデン   2017年にマイク・ヴァイキング著『ヒュッゲ365日「シンプルな幸せ」のつくり方』という本がベストセラーになったことは、皆さんまだ記憶に新しいと思います。 HYGGE 365日「シンプルな幸せ」のつくり方 こちらの本ではいかに日常生活の中にくつ

  • 今週(2/9)のブログはお休みです

    今週(2/9)のブログはお休みします。 2019年4月にブログを開始してから初めての休載です。執筆はメンバーの回り持ち。しかし翻訳者も人の子、いろいろあります。コロナに感染した人、親を自宅介護することになった人、仕事のクライマックスを迎えた人……。 来週(2/16)は新しい記事を公開しますので、楽しみにしてくださいね。 その後は当分の間、隔週(二週間に一度)の更新になります。 「北欧語書籍翻訳者の会」のメンバーは全員、ぜひともこのブログを継続したいと希望しております! 今後とも、このブログをどうぞよろしくお願いいたします。 (文責:羽根 由)

  • 北欧語の翻訳者4人が訳書について語る座談会動画 ぜひ見てね!

    こんにちは! 寒い日々が続きますね。 1月21日、「北欧語書籍翻訳者の会」のメンバー4人がFacebook上で座談会をやり、視聴者の方からコメントしていただく……という企画を予定していたのですが、なんと! システムがうまく動かず、中止することになりました(涙)。 しかし、その翌日の22日、同じメンバーが集まり、オンラインで座談会をしました。その様子をYouTubeでご覧いただけます! 参加者の顔ぶれは、 セルボ貴子(フィンランド在住) 久山葉子(スウェーデン在住) 中村冬美(日本在住) 枇谷玲子(日本在住) の4人です。 時差が最大8時間あるのですが、国境を越えて座談会が

  • 日本でできるスウェーデン語の勉強&ナチスによるアーリア人増殖施設で生まれた女性の実話

    トップ画像:ルンド大学(Credits: Aline Lessner/imagebank.sweden.se) スウェーデン語のようなマイナーな言語の翻訳。どういう経緯でそんな職業にたどり着くのか、不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 たまたま本日発売のこちらの雑誌で、翻訳者になろうと思ったきっかけや、どのようにして最初の仕事をゲットしたかをお話させていただいています。 通訳者・翻訳者になる本2023 (イカロス・ムック) その記事に補足する形で、今日は私がどのようにスウェーデン語を勉強したかをお話しようと思います。 スウェーデンとの出合いは高校時代の交換留学で

  • 新語・流行語 フロム フィンランド2022&2021

    2019年秋に「新語・流行語 フロム フィンランド2019」をお届けしました。が、昨年(2020年)は、このテーマを取り上げませんでしたので、2022年に入って間もない今回は、2020年と2021年の2年間に現れたフィンランド語の、新語・流行語・注目語の中から面白いな……と感じたものを幾つかお届けすることにします。情報源は、前回同様『フィンランド国語センター(Kotimaisten kielten keskus)』です。 【2020年篇】 japandi ⇒ヤパンディ 日本を表す「Japan」とスカンディナヴィアを表す「Skan

  • スウェーデンの新しい児童文学賞

    昨年の秋、ノーベル文学賞の選考で知られるスウェーデン・アカデミーが、児童・ヤングアダルト向け文学に対する新たな賞を創設したことを発表しました。同時に発表された初代の受賞者はフリーダ・ニルソンです。1979年生まれ、2004年のデビュー後、コンスタントに作品を発表し、国内外の文学賞の候補にもたびたび挙げられる作家で、昨年4月には日本語訳として初めての作品『ゴリランとわたし』が刊行されました。同書を翻訳させてもらったこともあり、とてもうれしいニュースでしたが、同時にとても驚きました。あのスウェーデン・アカデミーが児童文学賞を創設するとは、と。   スウェーデン・アカデミーはス

  • カウトケイノー血塗られたナイフ

    あけましておめでとうございます。今年が皆様にとって良い年になりますように。   昨年は、カウトケイノのトナカイ警察が活躍する『影のない四十日間』(オリヴィエ・トリュック著、久山葉子訳)が翻訳ミステリー大賞シンジケート「書評七福神の十一月度ベスト!」に選ばれ、北極圏ミステリーの時代が到来したか、とちょっと期待しております。   カウトケイノを舞台にするミステリーのシリーズは、もうひとつ、ラーシュ・ペッテションによる検事アンナシリーズがあります。 物語は、アンナが、夜遅く雪道をアルタからカウトケイノに車で向かう途中、トナカイと衝突する場面から始まります。アンナ

  • ゆく年くる年

    あっという間に年の瀬ですね。(トップ画像は私の住むPori市の旧市庁舎です) 日本の皆さまは学生さんなら冬休み、社会人の方は仕事納めとともに、年賀状宛名印刷(or手書き)に追われていらっしゃるでしょうか。  こちらフィンランドでは、12月24日のイブがクリスマス本番。つまり準備する側は一番力が入る日なので、日本より一週間前に忙しさのピークがやってくるといえば分かりやすいかもしれません。  コロナ禍も丸二年が経とうとしている今、完全にコロナ前に戻るということは無く、制限を緩めては引き締め、状況を見ながら気を付けて生活をしていく時期がこちらでもまだ半年は続きそうな

  • ノーベル財団の介入とスウェーデン・アカデミーの改革

    『ノーベル文学賞が消えた日』(平凡社、2021)を訳したあと、私の頭の中にはスウェーデン・アカデミーについて疑問や不満がいくつか残った。例えば、A)「なぜいつまでもスウェーデン・アカデミーがノーベル文学賞を選考しているのだろう?」ということ。 『ノーベル文学賞が消えた日』にはこんな記述がある。 スウェーデン・アカデミー初の女性事務局長が追放された〔注:2018年4月12日〕というニュースは、世界中に広まった。すぐさまノーベル賞全般に責任を持つ組織が反応した。ノーベル財団だ。 何人かのアカデミー会員を前にして、ノーベル財団は二〇一八年のノーベル文学賞の発表を中止する提案をおこなっ

  • 日本未公開のスウェーデン映画『Tigrar(英題:Tigers)』に注目!

    ロンニ・サンダール(Ronnie Sandahl)監督の『Tigrar(英題:Tigers)』は、スウェーデン人サッカー選手マルティン・ベントソン(Martin Bengtsson)の自伝を元に、プロサッカー界の闇の部分に焦点を当てた映画です。北欧の映画祭や各賞の情報で概要を目にして、とても興味深い作品だと感じました。日本での配給の情報は今のところ見当たりませんが、公開されることを願ってご紹介したいと思います。 スウェーデン出身のサッカープレーヤーといえばズラタン・イブラヒモビッチ選手が有名ですが、ベントソンは「第二のイブラヒモビッチ」と称されるほど将来を期待された選手でした

  • 『よるくまシュッカとゆきのおふとん』ご紹介

    今回は、拙訳『よるくまシュッカとゆきのおふとん』 についてご紹介させてください。 『よるくまシュッカとゆきのおふとん』は11月10日に発売された絵本で 作家はエミリー・メルゴー・ヤコブセンさんというデンマーク人です。 日本での出版社は百万年書房さんです。https://millionyearsbk.stores.jp/items/614a6d0ac120966e1d3ae99e この絵本の主人公は、一作目の『よるくまシュッカ』と同じように、 読み聞かせをしてもらっている子どもたちです。 絵本の中には(…………)という部分がでてくるのですが、ここに読んでもらっているお子さんの名

  • 物語中で障がい者はなぜ残酷な仕打ちを受けたのか?――障がいを持つ登場人物が、負わされがちな役割について

    海外文学の中で突然に殺された障がい者 ある文学作品の中で、障がいを持つ少年が、残虐に殺された。作品を読んだ人の多くは、人間の狂気、残忍さを描いた傑作などと絶賛していた。 私(枇谷玲子)も一緒に「いいよね」とうなずいて、仲間に入りたい。だけど、疑問を抱かずにいられなかった。「どうしてその障がいを持つ少年は、殺されなくてはならなかったのだろう?」「障がい者が物語の雰囲気作りの道具に使われたのではないか?」と。 私の世界を見る目を変えた、ある作家との出会い そんな風に感じたのは、自分自身の思考の癖によるのかもしれないが、ある作家との出会いも、無関係とは言い切れない。 その

  • アイスランドで出会ったさむがりや

    一時帰国中の今週の当番、朱位昌併(あかくらしょうへい)です。 てっきりアイスランドで見守ることになると思っていた、ラニ・ヤマモト作『さむがりやのスティーナ』(以下『スティーナ』)の刊行を日本で迎えられたのは、とても幸運でした。 今回は、この絵本の紹介と、アイスランド語版『Stína stórasæng』(/sti:na stou:rasaiŋk/)に出会ったときのことを書きます。 ラニ・ヤマモト『さむがりやのスティーナ』(朱位昌併訳) 2021年11月19日、平凡社から出版 さむがりやの女の子スティーナにはじめて出会ったのは、2020年2月、レイキャヴィーク図書館でで

  • 10周年を迎えたスウェーデン・ミステリフェスティバル&11月の新刊案内

    お久しぶりです、今週のお当番の久山葉子です。 先週は3日間のスウェーデン・ミステリフェスティバルがありました。 今年で10周年を迎えたスウェーデン・ミステリフェスティバル。最初の3年は聴衆として参加し、そのあとは実行委員として主催する側に回りました。仲間と1年間かけて企画や予算組み、助成金の申請を行います。北欧じゅう、時には英語圏からもミステリ作家さんを招聘し、聴きに来てくださるお客さんに楽しんでもらう……。毎年、それをやり遂げたあとはすごい充実感を覚えます。 今年も20名ほどの作家さんに登壇していただきました。邦訳されている方だと、『死ぬまでにしたい3つのこと』が出ているピ

  • 『ヘルシンキ・ブックフェア2021』ハイブリットで開催

    毎年、書物好きの心をワクワクさせるブックフェア。しかし、昨年は残念ながら全面的にオンライン開催になってしまった『ヘルシンキ・ブックフェア2020』。そのことを本欄で記事にした際(2020.11.25)に、2021年のブックフェアは「オンライン開催になるのか、はたまたハイブリッド開催になるのか、いまのところわかりませんが、それがどのようなものになるにせよ、今年の経験を生かしたスタイルの開催になることを今から楽しみにしています」と締めくくりました。早いものであれから一年。そして嬉しいことに、今年は無事、例年の会場で、例年の時期に、4日間にわたって開催され、多くの本好きが楽しみました。今回は

  • ある自転車配達員の日記

    みなさんは日記をつけていますか? わたしは日記をつけるのも、記録を取るのも苦手ですが、日記や紀行文など、日々の記録として書かれた文章を読むのは大好きです。いつ、どこで、なにをしたか、そのときどんなことを考えていたのか。文章をたどっていくと、書いた人の見ていた風景が少し見えてくるような、追体験しているような、そんな気がします。 11月下旬刊行予定の雑誌『シモーヌ(Le Simones)VOL.5』(現代書館)では、「「私」と日記:生の記録を読む」という特集が組まれています。わたし(よこの)も参加させていただき、『リンドグレーンの戦争日記 1939-1945』(アストリッド・リンド

  • 影のない四十日間 - 北極圏ラップランドが舞台のミステリー

    1月11日,40日間地平線の下に隠れ続けた太陽がついに昇る日,人々は丘に集まり太陽を待つ。太陽が地平線に姿を見せると、子供たちは喜んで駆け回り大人たちは手をたたいて迎える。この日太陽は27分で沈んだ。 これは、久山葉子さんの訳で11月に創元推理文庫から刊行される『影のない四十日間』(オリヴィエ・トリュック著)の印象的な一場面です。舞台はノルウェーの思い切り北のカウトケイノです。 シリーズの中心人物はトナカイ警官の二人組で、ノルウェー南部出身でサーミ(ラップランド)の地に赴任したばかりの若い女性警官ニーナと,年季の入ったサーミ人の男性警官クレメットです。トナカイ放牧に携わるサーミ

  • マリメッコを蘇らせたキルスティの物語

    『マリメッコの救世主 キルスティ・パーッカネンの物語』 (祥伝社 2021 年10 月末発売) こちらは私にとっては評伝として二冊目の翻訳となります。 原書は2020 年の春にフィンランドで発売され、直後から数カ月間ノンフィクションの書店売り上げ一位を独走、注目の高さがうかがえる作品でした。 これは! と思い、5 月のはじめに連絡先を電話番号検索サービスで見つけて、作者にいきなり電話をしたのをまだ覚えています。 「西部のポリに住んでいる日本人の翻訳者の者ですが、もし良かったらキルスティ・パーッカネンさんの評伝を日本語に翻訳させて下さい!」 こちらは原書の装丁と原作

  • ノーベル文学賞とスウェーデン・アカデミー

    10月はノーベル賞受賞者が発表される月。 ということで先月、関連書籍の拙訳書が刊行された。タイトルは『ノーベル文学賞が消えた日』(平凡社)。 みなさんは2018年のノーベル文学賞の発表が延期された事件を覚えておられるだろうか? ノーベル文学賞の発表がないなんて、1901年の初授与以来、第二次世界大戦中を除けば異例の事態であった。 ノーベル文学賞は世界最高峰の文学賞と呼んでいいだろう。物理学や化学、平和などのいくつもの分野を含むノーベル賞の一部門であり、それになんといっても賞金額が大きい。一億円以上もあるのだ。 それほど有名な文学賞の発表中止の原因となったのは、選考団体で

  • デンマークオリジナル版VSハリウッドリメイク版:映画『THE GUILTY/ギルティ』

    ジェイク・ジレンホール主演の映画『THE GUILTY/ギルティ』が9月24日より劇場公開、10月1日よりNetflixで配信開始となりました。同名のデンマーク映画をハリウッドでリメイクした作品です。画面に映るのは緊急通報センターの内部のみ(というか、ほぼ主人公の顔)、電話越しの声と音だけで誘拐事件を解決するという設定の面白さから、2019年のデンマーク版公開時にも話題となっていましたが、ハリウッド版は人気と実力を兼ね備えたジェイク・ジレンホールが主演ということで、さらに注目を集めているようです。 さっそくNetflixで視聴しましたので、オリジナルのデンマーク

  • 自分とは何か。『ソフィーの世界』より

    『ソフィーの世界』を書いたノルウェーのベストセラー作家、ヨースタイン・ゴルデルの名前を知っている人は多いと思う。 1995年に『ソフィーの世界』が出版された時、この本は哲学ブームを巻き起こした。私もいそいそと本屋さんに出かけていって購入した。 本書は、14歳の少女ソフィーが哲学者から手紙をもらうことから展開していく。最初に受け取った封筒に入っていたのは紙切れ一枚。そこには「あなたはだれ?」と書かれていた。ソフィーは手紙によって、プラトンの提唱したイデアの世界、プロティノスの考えた光である神、インドの神秘主義、聖書の教える神と人間といった哲学を学ぶ。それらを通し、ソフィーは「自分とは

  • Books from Denmark2021年上半期の選書リスト(ノンフィクションと児童書)――『つきのぼうや』を輩出したデンマーク発、判型、めくる方向が独特な絵本にご注目を

    早いもので、季節はもう秋ですが、前回に引き続きBooks from Denmark2021年上半期の選書リストを紹介いたします。今回はノンフィクション(大人向け)と児童書です。リストを作っているのは、デンマーク文化庁。つい先日、世界の翻訳者を集めて翻訳者セミナーをデンマーク第三の都市オルボーで行ったばかり。執筆者(枇谷)も参加したかったのですが、コロナの状況を鑑みて泣く泣くキャンセルしました。 Kavt og gratv脱rk - overs脱ttere blev klogere p奪 dansk humor og dialekt Klik og

  • アイスランド大学での学生生活

    アイスランドへの関心が高まり、学生の留学先にも希望する声が増えているらしいが、アイスランドでの学生生活についての率直な意見を目にすることは難しいようで、先日「実際どうですか?」と訊かれた。そこで、アイスランドで延々と学生生活を続けている私が、その経験と思うところを(とくにアイスランド大学での勉強について)いくらか書いてみることにした。 下記に述べるのは、国立アイスランド大学で正規学生である場合なので、交換留学生用のプログラムや、レイキャヴィーク大学、アイスランド芸術大学についてはよく分からないことを、ここで予め述べておく。 アイスランド大学の新年度がはじまるのは、夜に空

  • この秋はトーベ・ヤンソン! 映画x評伝x自選短篇集

    以前こちらのブログで、訳書『メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集』についてご紹介させていただきました。自伝的要素が多く詰まっていて、「トーベ・ヤンソンってどんな人間、そして芸術家だったのかな?」という好奇心を満たしてくれる作品でした。 そんなトーベ・ヤンソンの半生を描いた映画『TOVE』が、日本では10月1日に公開になります。 映画『TOVE』公式サイト わたしはこの春、一足お先にスウェーデンでこの映画を観てきました。ただ日本語の字幕にも興味があったので、その後、日本版の試写をオンラインで拝見させていただきました。なるほど、セリフとはこうやって訳せばいいのか……と大変

  • 読書の季節を前に(2021年ヨーテボリブックフェアのことなど)

    前回の担当記事で書いたスウェーデンの大手オンライン書店BokusのEU圏外への輸送停止問題は、いまだ解消されていません。6月下旬に更新されたお知らせには、8月中には落ち着く見込みとあり、夏季休暇期間中の進展はないと悟りましたが、8月ももう下旬、いまだ進展はありません。そんなわけで、いまはもっぱら、イングランドとオーストラリアに拠点を持つ大手オンライン書店Book Depositoryを利用しています。Bokusの事情を反映しているのかどうかは定かではないですが、スウェーデン語書籍の取扱いが急増しています。ちなみにフィンランド語などの書籍もそろっているようです。 さて、夏休みも終

  • ヴァランダー警部のイースタ

    ヘニング・マンケルの警部ヴァランダー・シリーズは、日本での北欧ミステリー・ブームの火付け役ともいえるでしょう。本格ミステリーとは言えないのですが、主人公の心理と市民の目線で見た社会問題がみごとに描かれています。ヴァランダー警部はごく普通の中年男性。不摂生がたたって糖尿病持ちです。自分の老いに対する不安、時代に取り残されるのではないかという不安が繰り返し描かれています。それでも警部としては優秀です。警部42歳から始まるシリーズの中で、認知症の父親や反抗的な娘との関係、そして遠くにいながら互いに惹かれあうリトアニアの女性バイバとの関係がそれぞれのペースで発展していき、シリーズ最終巻の『

  • スウェーデンの刑法改正と同意

    現在翻訳中のスウェーデン作品のテーマの一つは性的暴行。1985年から2011年にかけて被害に遭った女性たちが登場する。そのうちの一人は何年も経ってから「私はあのとき確かに抵抗した」ということを確認しようとする。 2018年の刑法改正で「同意なき性交」はレイプと見なされるようになったが、当然それ以前は違った。そこで1980年代から現在までの刑法のレイプ罪の規定(刑法第6章第1条第1項)の変遷について調べてみることにした。 1984年改正により、男性もレイプ被害者として扱われるようになった。 だが相変わらず暴行や脅迫によって性行為を強要されたことが要件で、被害者が飲酒のため

  • スウェーデン出身のアニメーション監督:ニキ・リンドロス・フォン・バール

    今回は、スウェーデン出身のアニメーション監督、ニキ・リンドロス・フォン・バール(Niki Lindroth von Bahr)をご紹介したいと思います。 NORDISK PANORAMA 2020 などのインタビューでご本人が語っている内容を元に構成しています。Stop Motion Geekのブログ記事(①、②)は、話の内容もさることながら、キャラクター考案時の資料や制作過程の写真が載っていたりして、とても興味深いです。他にも参考にした動画や記事のURLを末尾に掲載していますので、さらに詳しく知りたい方はぜひご参照ください。 トールとトール【※上

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