chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

本猿
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2020/02/09

arrow_drop_down
  • 『ナチュラルボーンチキン』金原ひとみ|樹のように穏やかに生きて一緒に朽ち果てる

    『ナチュラルボーンチキン』金原ひとみ ★★ 河出書房新社 2024.10.23読了 なにこれ、めちゃくちゃ好き。わかりみが強すぎる。 まさかさんが優しすぎて、おいおい泣きたくなる。 主人公の文乃みたいな人、日本にはたくさんいるだろうなと思う。年齢が近いから親近感を覚えるし、そもそも自分とシンクロするところが結構あるから、他人事とは思えず感情移入しまくり。 ルーティーンを愛する労務課の浜野文乃(はまのあやの)は、幸せではないがかといって不幸でもなく、波風を立てずにひっそりと生きている。文乃は「皆多かれ少なかれ、三十代後半くらいになってくると楽しいことがちょっと重くなってくる」「心が動かない平穏な…

  • 『死者は嘘をつかない』スティーヴン・キング|ホラー要素満載だけど怖くないよ

    『死者は嘘をつかない』スティーヴン・キング 土屋晃/訳 文藝春秋[文春文庫] 2024.10.22読了 この作品は、キングお得意の幽霊ものでホラー要素満載だ。キングの初期作品に原点回帰したようで、ストーリーもなかなか良かった。とはいえ米国で2021年に刊行されたものだからかなり最近の作品である。 複雑さがないからすらすら読める。登場人物も少ない。キングの作品は章ごとに番号が付与されているタイプが多いのだが、その章自体がものすごく短い。2頁とか3頁で終わるなんてこともざら。 ジェイミーは死者の姿が見える。この怪奇的な能力が備わっていることがわかったのは彼ががまだ6歳の頃だ。自然死でなければ亡くな…

  • 『雪の花』吉村昭|医学の進歩と発展は昔の人たちが命懸けでおこなったから

    『雪の花』吉村昭 新潮社[新潮文庫] 2024.10.18読了 私が天然痘という病を初めて知ったのは、池田理代子作の漫画『ベルサイユのばら』を子供の時に読んだ時である。時の王ルイ16世だっただろうか、天然痘にかかり顔に吹き出物が表れた姿は画とはいえど印象深く、かかったら最後治らない恐ろしい病だと思った記憶がある。 1830〜40年頃、福井県の笠原良策という町医が、多くの人命を奪う天然痘から守るために、命をかけて戦い抜いた。吉村さんお得意の記録文学である。病を治す薬を作り出したというわけではない。種痘の苗を福井に持ち運ぶ経緯と、子供達にそれを植え付けて広めていくという困難がこの作品の読みどころで…

  • 『弟、去りし日に』R・J・エロリー|誠実かつ王道のヒューマンミステリー

    『弟、去りし日に』R・J・エロリー 吉野弘人/訳 東京創元社[創元推理文庫] 2024.10.17読了 原作のタイトルは『The Last Highway』であるから、随分と飛躍している邦題だなと思った。弟の訃報を知ったときにヴィクターはハイウェイ(高速道路)に眼をやり、そしてまた、弟の最後(死んだ場所)がハイウェイだったことからこのタイトルなのかなと思っていたら、作中に出てくる「最後の道のり」という言葉に「ラスト・ハイウェイ」とルビがあったから、「道のり」の意味があるのだと理解する。見たこともない作家さん(一見ジェイムズ・エルロイと勘違いした)で期待していなかったこともあるからか、なかなか良…

  • 『あのころなにしてた?』綿矢りさ|普通の人と同じようにコロナ禍を過ごすが作家独特の感性がある

    『あのころなにしてた?』綿矢りさ 新潮社[新潮文庫] 2024.10.14読了 タイトルにある「あのころ」というのは新型コロナウイルスの感染が猛威をふるい始めた2020年のこと。4年前、私自身はどうしていたかなぁ。2月に個人的なことで初めての手術と入院があって、その後療養のために少し会社を休んでいた記憶が大きく、そのあと徐々に日本というか世界の形相がコロナによって変わってしまったという印象がある。あれからもう4年も経つのか…。会社がリモートワークを取り入れたりと仕事のやり方が色々と変わり、そもそもの仕事の在り方を考えていたあのころ。 作家独特の感性というか、普通の人が気にならない(というか気づ…

  • 『虚史のリズム』奥泉光|何もかもが超ド級マンモス小説!

    『虚史のリズム』奥泉光 集英社 2024.10.14読了 いやー、長かった!感想がどうこうよりも、今はもうこれを読み終えたという達成感が大きい。一冊の本としては、読了するのに今年一番時間がかかったような気がする。よく読み通したと少しばかり自分を褒めたいくらい。読むことすら難儀なのに、これを書き切った奥泉さんとは一体何者か…、頭の中は一体どうなっているのか…と疑問だ。まぁ色んなモノが詰め込んである、超ド級マンモス小説だ。 冒頭から盛り上がる奥泉節!熱量たっぷりで、いい意味でくどくどした癖のある文体は一度ハマったら抜け出せないんだよなぁ…。小さい時から探偵になりたかった石目鋭二(いしめえいじ)は、…

  • 『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ|分かり合えないことを肯定してくれる

    『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ 鴻巣友季子/訳 新潮社[新潮文庫] 2024.10.05読了 ストーリー自体は特になくて、ただただひたすらに心理的な描写が続いていく。お世辞にも物語としておもしろいとは言えないのに、どうしてこんなにも魅了されるのだろう。読んでいて何故かホッとする心地良さがある。 明日の天気が良ければ灯台に行こうという会話から始まり、散歩をしたり絵を描いたりディナーをしたり、なくしたブローチを探そうとかどうでも良いようなことがつらつらと綴られる。別荘にいるラムジー夫妻とその子供たちがメインとなるのだが、他にもラムジーの友人バンクスや画家のリリーたちが語る。その語り手が、というか思…

  • 『ガチョウの本』イーユン・リー|青春期のほんの僅かなかけがえのない瞬間

    『ガチョウの本』イーユン・リー 篠森ゆりこ/訳 河出書房新社 2024.10.01読了 不思議なタイトルだなと思いつつ読み進めると、語り手アニエスが飼っているのがニワトリとガチョウだと知る。そのガチョウの話なのか?愚鈍で間抜けなイメージがあるガチョウ?いや、これはかつて一心同体だった親友ファビエンヌとのある時期にしかない青春の物語。でも、読み終わるとこのタイトルの意味に気付きそれがたいそう素敵なものだと知るのだ。 お互い家族から疎外感を感じていたアニエスとファビエンヌは、小さな頃から仲良しでいつも一緒だった。ファビエンヌは鋭い感性から物事の確信を突くすでに大人のような存在。そんなファビエンヌが…

  • 『母の待つ里』浅田次郎|現実を忘れて心地良くなれる場所を求める

    『母の待つ里』浅田次郎 新潮社[新潮文庫] 2024.09.28読了 ある外資系サービス会社が提供するプレミアムクラブ・メンバー限定の顧客サービス、それが故郷を擬似体験するというものである。還暦近い3人の男女がこのサービスを受ける。 最初は「変な話だなぁ」とか、「こんなに簡単に信じ込んでしまうものかな」と疑っていた。そもそも出来すぎているし、手の込んだ新手の詐欺じゃんかと。しかし本物だと思うふしも所々にある。何より母親役の女性が演技をしているようにはみえないのだ。 よくよく考えると夢の国ディズニーランドだって、ユニバーサルスタジオだって、イマーシブ東京(行ったことはないが)だってそう。わかって…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、本猿さんをフォローしませんか?

ハンドル名
本猿さん
ブログタイトル
書に耽る猿たち
フォロー
書に耽る猿たち

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用