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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『惑う星』リチャード・パワーズ|人間以外の生き物が何を感じているか

    『惑う星』リチャード・パワーズ 木原善彦/訳 新潮社 2023.10.26読了 一瞬、星が惑うとはどういうことだろうと考えてしまう。タイトルは「惑星」のことだが、「惑う星」とあるといささか戸惑う。地球を含めた恒星(一番近いのは太陽)のまわりにある天体にはどうして「惑星」という名前がついているんだろう? 宇宙生物学者シーオと、9歳になる息子ロビンをめぐる父子の物語である。母親を亡くし情緒不安定で心が弱ってしまったロビンは、学校で問題を起こしてしまう。向精神薬の治療はしたくないシーオは脳のデータに基いた訓練、神経フィードバック治療を始める。その過程の中でロビンはどうなっていくのかー。挿入される自然…

  • 『神秘』白石一文|自分を労わること、原因を突き止めること|記憶とは感覚による部分が大きい

    『神秘』上下 白石一文 毎日新聞出版[毎日文庫] 2023.10.24読了 読んだことがあるという予感があったが、それでもいいやと思い手に取った。再読も辞さないと思える白石一文さんの作品だから。特に私は昔の作品が好きである。とはいえ、この小説は2014年に刊行されたものだからそんなには古くないか。 癌に犯されて余命一年を宣告された54歳の菊池は、20年前に会話をした女性を探すために、住んでいた東京・神楽坂の地を離れ、兵庫・神戸へと移り住む。彼女は思いのままに人の病を治すことができる不思議な手を持っていたのだ。 余命ってどうなんだろう。自分がいつ死ぬかは神のみぞ知ることであって、仮に1年と余命宣…

  • 『美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄』瀬戸内寂聴|強烈な個性を発揮する人物らの生き様に惚れ惚れする

    『美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄』瀬戸内寂聴 ★ 岩波書店[岩波現代文庫] 2023.10.21読了 村山由佳さんの『風よあらしよ』を読んで、伊藤野枝さんの熱い人間性とその生き方に圧倒された。この作品は、故瀬戸内寂聴さんが94歳の時に、ご自身が「今も読んでもらいたい本をひとつあげよ」と問われたとしたら『階調は偽りなり』と合わせて真っ先にあげると述べている。 副題に「伊藤野枝と大杉栄」とつけられているが、続編の『階調は〜』とこの『美は乱調にあり』は対になっている。『美は~』にはあの有名な日陰茶屋事件までが書かれており、なんとなんと大杉栄は最後の4分の1位からしか登場しない。まだ二人のことは序盤…

  • 『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス|読んで自分がどう感じるか、それがすべて

    『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス 池田真紀子/訳 新潮社[新潮文庫] 2023.10.17読了 被害者も関係者も、作者自身すら信用できない。語りを中心に構成される文章(メールやSNSもある)、そして挿入される作中作。私の苦手なものが満載であんまり読む気が起きなかったのだが、、間を空けてしまうと積ん読まっしぐらな予感がするので、分厚いけど意を決して読み始めた。 マンチェスターの女子学生ゾーイ・ノーランが6年前に失踪したまま未解決事件となっていた。これをイヴリン・ミッチェルという作家が関係者に取材し、その結果をインタビューという形式のノンフィクションにまとめた書籍が『トゥルー・…

  • 『柴田元幸翻訳叢書 ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース』|怪奇小説よりの粒揃いの名作短編

    『柴田元幸翻訳叢書 ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース』柴田元幸/編訳 スイッチ・パブリッシング 2023.10.14読了 愛でたくなるような美しい本だ。柴田元幸さんが厳選し自ら訳した英文学の短編傑作が12作収められている。この叢書シリーズには、姉妹編として『アメリカン・マスターピース古典編』という本があるようだ。 ひとつめのジョナサン・スウィフト著『アイルランド貧民の子が両親や国の重荷となるを防ぎ、公共の益となるためのささやかな提案』という短編にまず驚いた。まぁ、そもそもタイトルがやたらと長い。で、中身はというと、一歳になる子供を食用にするという、なんたる提言かよ…。しかし読み進め…

  • 『鵼の碑』京極夏彦|蘊蓄たらたらがこのシリーズの醍醐味

    『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』京極夏彦 講談社[講談社ノベルス] 2023.10.11読了 本が好きなら大抵の人が一度はハマったことがあるだろう京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ。中禅寺、榎津、関口、木場など懐かしの登場人物たちが勢揃い。ベストセラーを生み出した作家のほとんどは、何年も経つと筆が衰えてしまう。そんなの読者の勝手な期待であって本人からすると余計なお世話だろうけど、偉大な作家であればあるほど期待が高まってしまうのだ。 それでも、この作品は変わることなくおもしろかったのである。もう、まずは17年ぶりに刊行してくれたというただそれだけで満足している読者がほとんどであろう。相変わらず荒唐無稽で…

  • 『マルナータ 不幸を呼ぶ子』ベアトリーチェ・サルヴィオーニ|読んでいる間守られている感がある

    『マルナータ 不幸を呼ぶ子』ベアトリーチェ・サルヴィオーニ 関口英子/訳 河出書房新社 2023.10.8読了 小中学生の頃、学年に2〜3人は悪ガキ男子がいた。どうしてか決まって彼らは見た目も良いことが多くて人気があった。そして女子も同じ。周りの友達よりも抜きん出て悪そうで、突っ張っているけどなんかカッコよくて、私もどこかで憧れるような気持ちを持っていた。そういう子達と付き合うのはあんまり良くないと大人たちは思っていたけれど。 小説の語り手である12歳のフランチェスカはお嬢様のように、品行方正に育てられていた。しかしフランチェスカは過去の弟の死に対する自分の想いに罪悪感を持っていた。近所に住む…

  • 『沙林 偽りの王国』帚木蓬生|科学者集団「オウム真理教」が目指したものとは

    「沙林 偽りの王国』上下 帚木蓬生 新潮社[新潮文庫] 2023.10.5読了 弁が立つ人、屁理屈を捏ねる人のことを「あぁ言えば、上祐」という言葉で揶揄するのが当時流行っていた。オウム真理教元教団幹部・上祐史浩(じょうゆうふみひろ)のあの嘘八百に、饒舌なトークと堪能な英語力に、日本中が翻弄された。上祐史浩はテレビ番組に引っ張りだこでタレント然としていた記憶がある。 自分が今まで生きてきた中で、最も印象深く忘れられない事件の一つがオウム真理教による地下鉄サリン事件である。当時はまだ中高生だったが強烈だった。オウム真理教による一連の事件、宗教観、そして教祖松本智津夫については、多くの関連文章が出さ…

  • 『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』リチャード・オスマン|エンタメ感増し増しの作品に

    『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳 早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2023.10.1読了 シリーズ3作めとなる。年1くらいで自分の好きな海外シリーズがコンスタントに翻訳されて読めることは本当に嬉しい限りだ。このシリーズに限らないけれど、作者と同時代に生きてリアルタイムで読めるのは素晴らしいこと。 今回の殺人クラブが調査対象にしたのは、人気報道番組で10年ほど前にサブキャスターを務めていたペサニー・ウェイツ殺人事件だ。ある詐欺事件を調べていた最中に彼女は車ごと海に転落し、遺体は上がっていないままの未解決事件である。この事件だけでなく、同時進行でエリザベス…

  • 『緋文字』ナサニエル・ホーソーン|胸に刻まれた緋文字の正体

    『緋文字』ナサニエル・ホーソーン 小川高義/訳 光文社[光文社古典新訳文庫] 2023.9.28読了 母国では学校の課題図書として読まれるほど、アメリカ文学史のなかでは定番であり名作と言われている。刻まれた文字、過ちを償う、キリスト教などの言葉が並び、ちょっととっつきにくいイメージがあってまだ読めていなかったのだが、名翻訳家小川高義さんの訳が光文社から刊行されていたので読んでみた。ようやく読めたという安堵感。 そもそも『緋文字』が「ひもんじ」と読むのか「ひもじ」なのかわかっていなかった。どうやらこの本は「ひもんじ」が正解というか、出版物には読み方を確定しなくてはならないから、光文社古典新訳文庫…

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