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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

本猿
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2020/02/09

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  • 『ミチクサ先生』伊集院静|遠回りになろうとも、多くの経験は無駄にはならない

    『ミチクサ先生』上下 伊集院静 講談社[講談社文庫] 2023.7.26読了 ミチクサ先生とは、国民的作家夏目漱石のこと。幼少期から、生家と養家を往来し、学校を何度も変わり、ミチクサをしてきた。ミチクサは、大人になってからも続いた。 勉学も生きることも、いかに早くてっぺんに登るかなんてどうでもいいことさ。いろんなところから登って、滑り落ちるものもいれば、転んでしまうのもいる。山に登るのはどこから登ってもいいのさ。むしろ絡んだり、汗を掻き掻き半ベソくらいした方が、同じてっぺんに立っても、見える風景は格別なんだ。ミチクサはおおいにすべしさ。(下巻396頁) 5〜6年ほど前に、東京・新宿にある「漱石…

  • 『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ|お洒落で都会的、ポップなアメリカ文学

    『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ 村上春樹/訳 新潮社[新潮文庫] 2023.7.23読了 ポップで爽快感のあるアメリカ文学を読みたくなった。村上春樹さんが訳したものを欲していたという理由もある。新潮文庫の100冊とか、今回のようなプレミアムカバーに選ばれる本の常連の『ティファニーで朝食を』を読むのは2回目だ。やっぱり名作であることに疑いはない。 こんな風変わりで西部劇的な出だしだったっけ?もう、とにかく良い。語り手の「僕」は、かつて同じアパートに住んでいたある人物が、アフリカでホリー・ゴライトリーに生き写しの彫像を見つけたという話をバーで聞く。ここから、かつてニューヨークに出て…

  • 『それは誠』乗代雄介|青春まっさかり、バカバカしい笑いがたまらんのよね

    『それは誠』乗代雄介 文藝春秋 2023.7.22読了 私は関東地方に住んでいるので、中学生のときは京都、高校生の時は北海道が修学旅行先だった。札幌も楽しかったけど圧倒的に記憶に残っているのは中学生の時の京都旅行だ。今でも連絡を取り合う仲の良い友達と一緒だったこともあるし、旅行から帰ってからは「手作りのアルバムを作成する」という課題があったから、なおのこと印象に残っている。大人になってから自由に行ける旅行はもちろん楽しいが、子供の頃に行く旅は一大イベントだ。 この小説は、高校3年生の佐田誠が体験した東京への修学旅行についての物語。男女7人の班で、男の子4人だけで別行動をする冒険譚である。その別…

  • 『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ|心の声を聴くこと

    『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ 中央公論新社[中公文庫] 2023.7.20読了 2021年の本屋大賞受賞作。気になりつつも読めていなかったが、文庫化されてさっそく手に取った。クジラの形をした栞がかわいい。「感動した」とか「泣きながら読んだ」と絶賛されているけれど、読む前は大袈裟だな~と思っていた。 そんな想いは杞憂に終わる。読み終えた今、心を揺さぶられ、とてもあたたかい気持ちになれる良作だと感じた。書店員が選ぶ本屋大賞、つまり作家や批評家などのプロが選ぶのではない、本が好きな一般大衆が選ぶというのがうなずける。圧倒的に読みやすく共感できるのだ。ちなみに、文庫本カバーの裏にスピンオフ作品…

  • 『ローラ・フェイとの最後の会話』トマス・H・クック|父親と息子の確執、記憶のたぐり寄せ

    『ローラ・フェイとの最後の会話』トマス・H・クック 村松潔/訳 早川書房[ハヤカワ・ミステリ文庫] 2023.7.19読了 語り手のルークは、自身とその家族を悲しみの底に突き落とす原因となったローラ・フェイと再会しお酒を飲み交わすことになった。事件が起こってから20年後、しがない学者になったルークだったが、彼女と話をしていくうちに、悲劇を生んだかつての謎が雪解けのように明かされていく。過去の出来事と心情がフラッシュバックする巧みな構成に読み手は翻弄される。 以前読んだ『緋色の記憶』同様に、記憶をたぐるミステリーでぞくぞく感がたまらなかった。誰が事件を引き起こしたか、誰が真犯人なのか、という謎解…

  • 『事件』大岡昇平|公判を重ねるごとに形を変えていく

    『事件』大岡昇平 東京創元社[創元推理文庫] 2023.7.14読了 法廷ものを久しぶりに読んだ。来月、WOWOWで椎名桔平さん主演のドラマが放映されるようで、この文庫本のカバーの上に、まるっとカバーがかけられている(全面広告カバーは好きでないので外して写真を撮った)。 ドキュメンタリー風に仕上げた息詰まる裁判物語である。作中に何度も「これが推理小説だったら」のような表現が出てくる。それが、小説といえども現実に起こっていることのようで真実味を増す。 昭和36年、神奈川県の山林で若い女性の死体が見つかった。翌日19歳の少年上田宏が殺人および死体遺棄の容疑で逮捕される。痴情のもつれかと思われるあり…

  • 『家族じまい』桜木紫乃|自ら終えることの清々しさ、潔さ

    『家族じまい』桜木紫乃 ★ 集英社[集英社文庫] 2023.7.11読了 家族じまいーー 何気ない言葉だけれど「家族を終わらせる」ということだろうか。「じまい」には「仕舞い」「終い」のどちらの字も充てることができるが、両方とも「終わり」を表している。家族という形になんらかの決着を自分でつける、またはそんな決断を迫られたそれぞれの想いと行動とは。 各章には人の名前がついており、5人の女性の視点で語られる連作短編集になっている。もうすぐ50歳になる智代は、夫の円形脱毛症を発見したことを何かの予兆にも感じる。妹からの「ママがぼけちゃったみたい」という電話を受け、人が老いることを痛感し、自分がなすべき…

  • 『ルクレツィアの肖像』マギー・オファーレル|スリリングで鳥肌ものの読書体験間違いなし

    『ルクレツィアの肖像』マギー・オファーレル 小竹由美子/訳 ★ 新潮社[新潮クレスト・ブックス] 2023.7.9読了 ひとつの絵画と曰く付きのエピソードから、こんなにも豊かでスリルあふれる物語を生み出せるとは。数ページ読んだだけで虜になり、最後の頁まで存分に楽しめた。久しぶりにひたすら続きが気になって仕方ない、夢中になれる小説に出会えた気がする。本当なら、読み終えたくなかった! 初代トスカーナ大公コジモ一世の三女ルクレツィアが主人公である。彼女はフェラーラ公アルフォンソ二世と結婚したが16歳で急死した。死因は公式には「発疹チフス」とされたが、夫に毒殺されたとの噂があったのだ。 フィレンツェに…

  • 『三の隣は五号室』長嶋有|人はただ生きているだけでも感動や共感を呼び起こす

    『三の隣は五号室』長嶋有 中央公論新社[中公文庫] 2023.7.6読了 第一藤岡荘という古いアパートに住んだ多くの人々がいる。連作短篇集とはちょっと違って、部屋にあるもの(というか生活に欠かせないけれど脇役である何か)がバトンをつないでいくような感じ。例えばガス管に繋がれたホースであったり、誰かが置き忘れた洗剤であったり。そのバトンで次から次へと人が変わるりはするが、行きつ戻りつするから、住人がみんな一緒に住んでいるような錯覚に陥る。 文章は溜め息がでるほど巧みで、優しさと滑稽さを合わせ持つ。特に会話文のあとに続く地の文にセンスが溢れていると感じた。そして、驚くのがやはり構成力だ。こんな作品…

  • 『時々、慈父になる。』島田雅彦|ミロクくんと一緒にお父さんも成長する

    『時々、慈父になる。』島田雅彦 集英社 2023.7.5読了 3年ほど前に島田雅彦さんの自伝的小説『君が異端だった頃』を読んだ。自身のことを「君」として、いささか(というかかなり)自己愛・自信に満ちた語りが島田さんらしかった。今回の自伝的小説は一人息子との関係をメインに炙り出したものだ。写真ではわかりづらいと思うけど、このカバーの色がとても素敵。朱色に近いがなんともいえない鮮やかな色で燃える魂を予感させる。 honzaru.hatenablog.com 息子の名前は彌六と書いて「ミロク」と読む。名前をどうやって決めたかのあれやこれやは本の中に書いてあるが、ミロクくんって縁起も良さそうだしゴロも…

  • 『無垢の時代』イーディス・ウォートン|人生において自由をどこまで追求するか

    『無垢の時代』イーディス・ウォートン 河島弘美/訳 岩波書店[岩波文庫] 2023.7.3読了 アメリカの資本主義が急速な発達を遂げた1870年代、ニューヨークに新興富裕層が台頭し、新しい波が古い世界に押し寄せた、変化する時代の物語である。もともと新潮文庫で『エイジ・オブ・イノセンス』という邦題で出版され、ウィノナ・ライダー演じる映画でも高く評価されていたようだ。 弁護士であるニューランド・アーチャーは、純真で美しいメイと婚約をしていた。ある日歌劇場で幼馴染みのエレン(オレンスカ伯爵夫人)と再会する。メイは清楚で優しく誰からも好かれている。一方で大胆で自由奔放な生き方をするエレン。アーチャーは…

  • 『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』莫理斯|中国の歴史や文化、故事成語が興味深い

    『辮髪(べんぱつ)のシャーロック・ホームズ 神探福邇(しんたんフーアル)の事件簿』莫理斯(トレヴァー・モリス)舩山むつみ/訳 文藝春秋 2023.6.29読了 ★ パスティーシュとは「作風の模倣」のことで、文学だけでなく芸術作品に多く用いられている。文学ではクリスティー作品が最も多いんじゃないだろうか。パスティーシュになるということは、先行した作品が優れており世にも広められたもの。この作品はあの有名なホームズをモチーフにした探偵ものである。 香港のホームズ!しかも辮髪! 辮髪ってあれだよなぁ。本の表紙にあるように、後頭部を残して全体的に髪を剃り上げ、伸ばした髪は長く1本にまとめて垂らしているあ…

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