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葵むらさき言語凝塊展示室 http://aomra.jugem.jp/

大人のためのお伽噺を書いています。

毎週火曜日WEB連載、毎週土曜日メールマガジン発行、毎日ツイッター小説配信中。

葵むらさき
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2019/04/27

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  • どうぶつたちのキャンプ 第58話

    JUGEMテーマ:小説/詩   コードセムーは、アメリカバイソンの群れ──数十頭いるところを見ると、雌とその子どもから成るものだろう──を見つけた。「保護されているんだろうけど、悪いわね」そう呟いた後、一頭の子を分解し収

  • どうぶつたちのキャンプ 第57話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「なあ」ふいに、隣で足早に進んでいるボブキャットが声をかけてきた。「うん、はい」モサヒーは返事をする。「あの、レイヴンっていう奴が捜してる動物ってさ」ボブキャットは小走りに進みながら空を見上

  • どうぶつたちのキャンプ 第56話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「あれは誰だ〜い?」 それは、呼びかけというよりも──明らかに『歌』だった。「あそこにいる〜、あの大きな動物は〜」 高らかに朗らかに、歌声が響く。「熊かな? それともゴリラ?」 少なくともゴ

  • どうぶつたちのキャンプ 第55話

    JUGEMテーマ:小説/詩   ぎゃお──んん  遠吠えが聞こえた。 ボブキャットはびくりと身を竦ませたが、すぐに舌打ちして前進を再開した。「ごみ漁り屋か」と呟きつつ。 モサヒーの方はただちに生体信号を検索し、

  • どうぶつたちのキャンプ 第54話

    JUGEMテーマ:小説/詩   ──双葉……? ボブキャットはそれを聞いてふと足を止めた。池の畔だ。 そこに、アメリカビーバーがいることは先ほどから認知していたが、何しろそいつは池のど真ん中、

  • エレヴェイティド

    JUGEMテーマ:小説/詩  わかっている。私が降りるべき所は、一五七六階だ。イゴナロー階、と暗記した。以後成ろう階。そこで降りなければならない。 箱はただ黙々と私たちを運び続ける。上へ。箱とは言うが相当に広い。何人乗っているのだ

  • どうぶつたちのキャンプ 第53話

    JUGEMテーマ:小説/詩   モサヒーは大気圏上層にて宇宙に漂う無人偵察機に信号を送り、また管理者からの連絡を受け取った後、今日はいつものように真っ直ぐ帰ることはせず『偵察』を兼ねて広大な大陸の様子を眺めながら浮揚推進

  • どうぶつたちのキャンプ 第52話

    JUGEMテーマ:小説/詩   海氷の隙間を進む。 頭数が多いので、なかなか前には進めない。 順番待ちをする間、突然海中に沈む者もいる。 しばらく経つと、沈んだ者は何食わぬ顔でまた元の所に戻るが、その実その口にはアークテ

  • どうぶつたちのキャンプ 第51話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「いや無理っしょー」アカギツネが明るくなって来た空を仰いで、ここここ、と笑った。「ディンゴさんには牛は喰えないっすよー」「馬鹿にするな、喰えるわ」ディンゴはじたばたと大地を踏みしめた。「無理

  • どうぶつたちのキャンプ 第50話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「あっはい、いましたよー双葉。ギルドって何すかー?」アカギツネは明るく訊いた後「あっ双葉はもういませんから大丈夫っすよー」と補足を付け足した。「いなくなった?」レイヴンが訊き、「逃げたの?」

  • 岩波講座 宗教〈第4巻〉根源へ―思索の冒険

    JUGEMテーマ:自分が読んだ本 岩波講座 宗教〈第4巻〉根源へ—思索の冒険  もう20年も前の本だけども、今日はこれを読んでいた。 以下引用。 とすると神の受肉、キリストの誕生はどのような意味を持つことになるであろうか

  • どうぶつたちのキャンプ 第49話

    JUGEMテーマ:小説/詩  ディンゴ。 ディンゴか。 ディンゴが来る。 こっちに向かって来ている。「ほほほう」思わず歓喜の声が出る。「あっちこっち足を伸ばしてみるもんだな。ラッキーだ」コードイフーは電子線射出機構を急ぎ準備した。

  • どうぶつたちのキャンプ 第48話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「レイヴン、レイヴン」オリュクスは──この動物はまったく不思議なくらいに疲れるということを知らない生き物のように思えてならなかった。 いや、そんなことはない。オリュクスだって疲れて眠りたい時

  • 支配者の台詞

    JUGEMテーマ:小説/詩  暗い空間で、送出係から最後の指示を受ける。「ここから先に出ると、重力がかかってきます。大きく下に引っ張られますが、人の手によって受け止められるはずなので地面と衝突する心配は基本ありません」 基本通りに

  • どうぶつたちのキャンプ 第47話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「すごいなあ、すごいなあ」ひとり感嘆の声を上げつづけるのはオリュクスだった。「この鳥さん、すごく速いよね。すいーって、すごくきれいに飛ぶよね」「ああ……まあ、すご

  • どうぶつたちのキャンプ 第46話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンは正直なところ、日が暮れた後はただちに、殻の自動浮揚推進機能をフルモードにして、もちろん収容籠を伴い安全に進みつつ、自分も素粒子状態と化して休養およびダメージ修復に移りたかった。

  • どうぶつたちのキャンプ 第45話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンは、赤く乾いた土地の上を引き続き浮揚推進しながら、差し向きエミューから得た助言に沿ってディンゴなる動物を探してみようと考えていた。 アカギツネ同様ディンゴもイヌ科ではあるが、エミュ

  • どうぶつたちのキャンプ 第44話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「うん、なぜギルドがレイヴンを狙っているのかについては、国を挙げて考察し、場合によってはギルドへ直談判を試みるとのことです」 モサヒーからそういった報せが届いたのは、彼と実際には分かれてから

  • どうぶつたちのキャンプ 第43話

    JUGEMテーマ:小説/詩   ふさふさの尻尾を揺らめかせながら、大地を歩く。 今日届いた情報を頭の中で整理しつつ、だが周囲の状況が見えなくなったりは決してせず、それでも一定の速度を保ちながら前進する。 とはいえ事態は予

  • どうぶつたちのキャンプ 第42話

    JUGEMテーマ:小説/詩   ルルーは少しの間その動物の背中を茫然と見ていたが、やがて我に返るとひとまず後を追い始めた。 こいつはどこへ行こうとしているのか? この、果てしもなく続く砂の大地の上、仲間も持たず行くあても

  • どうぶつたちのキャンプ 第41話

    JUGEMテーマ:小説/詩   マダガスカル島を脱出した後、コードルルーはどこへ行くあてもないまま海の上を飛んでいた。 他の者と鉢合わせぬよう──初めはそう思っていたが、なんだか段々ばからしくなってきた。その言い方が悪い

  • どうぶつたちのキャンプ 第40話

    JUGEMテーマ:小説/詩 「うん、ぼくです」 すぐに返事が返って来た。モサヒーの声だ──と思われた。 セキセイインコたちは相変わらず、遥か下方でわいわいと騒いでいる。聞こえて来るモサヒーの声は対してごくか細く、検知帯の全細胞に膨

  • どうぶつたちのキャンプ 第39話

    JUGEMテーマ:小説/詩   海に向かって常に風が吹き続ける。それはつまり、レイヴンたちにとって行く手の方から吹き付けてくる向かい風というものだ。内陸部を目指すには、常に風に逆らって進まなければならないということだった

  • どうぶつたちのキャンプ 第38話

    JUGEMテーマ:小説/詩   鳥たちの情報通り、そこは大変に乾燥した土地だった。 乾いた色の砂地が続く。樹木は少ない。 レイヴンは推進を続けながら、生体信号受信モード設定に余念がなかった。トランスミッター・モサヒーの発

  • どうぶつたちのキャンプ 第37話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ところで君たちは」推進を続ける中、不意にカモメの一羽が訊ねてきた。「仲間を探しに地球へ来たっていう話だけど、地球にその仲間がいるっていうのはどうやって知ったんだい?」「ああ」レイヴンは一瞬

  • どうぶつたちのキャンプ 第36話

    JUGEMテーマ:小説/詩   再び海上を浮揚推進していく中、明らかにこれまでとは周囲の状況が変わっていることを、レイヴンも、収容籠の中の動物たちも、感知していた。 鳥だ。鳥の数。 自分たちの周りを、鳥たちが──幾種類も

  • どうぶつたちのキャンプ 第35話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「まずは!」アデリーペンギンたちは今や集団でレイヴンらの周囲を取り囲んでいた。「微生物たちの作る抗生物質を双葉に食らわしてダメージを与える!」「抗生物質を?」レイヴンは驚いた。「双葉というの

  • どうぶつたちのキャンプ 第34話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「レイヴン」驚いたことに、助言を与えてくれたのはオリュクスだった。「罠のこと、訊いてみたら?」「え」レイヴンは視界に稲妻が走るような錯覚に陥った。「罠──」「罠?」「罠って?」コスやキオスも

  • どうぶつたちのキャンプ 第33話

    JUGEMテーマ:小説/詩   オリュクスを再度収容籠に『詰め込んだ』後、レイヴンは来た途をしばらく戻らざるを得なかった。 再収容を告げた時オリュクスはほんの少し哀し気な貌を見せたが、不満の言葉を並べ立てることはしなかっ

  • どうぶつたちのキャンプ 第32話

    JUGEMテーマ:小説/詩   コードルルーは間髪を入れずそのペンギンに向かって遺伝子分解能電子線を放射した。 ペンギンはきょとんとした風体でただその場に佇んでいる。 ──え? ルルーは驚き感受帯の状態を顧みた。見間違い

  • どうぶつたちのキャンプ 第31話

    JUGEMテーマ:小説/詩   コードルルーが『ぷんすか怒っている』のは紛れもない事実だった。 何に対して怒っているのか? ──これだ、と一つに絞ることはできなかった。 まず、ギルド。 自分が所属している組織に対してだ。

  • どうぶつたちのキャンプ 第30話

    JUGEMテーマ:小説/詩   海の中に入るのはもちろん初めてだった。しかし生まれて初めての感覚とは少し違うような気がしていた。 そう、レイヴンがいつか説明してくれたように、オリュクスは生まれたての頃、濃い霧の中を『泳い

  • どうぶつたちのキャンプ 第29話

    JUGEMテーマ:小説/詩  オリュクスは久し振りの疾走に、文字通り我を忘れていた。 アフリカの大地と違い、氷は足の爪で掴みにくい──そう思ったのは走り始めの何分、いや何秒かの間だけで、その後はすっかり慣れてしまった。氷の上で走る

  • どうぶつたちのキャンプ 第28話

    JUGEMテーマ:小説/詩   目指す大陸への道のりは、予想していたそれのざっと十倍──いや正直にいうと数十倍、長かった。 収容籠の中にいる動物たちはすっかり無口になり、定期的にレイヴンが与える栄養素を文句も言わずに摂取

  • どうぶつたちのキャンプ 第27話

    JUGEMテーマ:小説/詩   シャチは怒りを覚えていた。怒りを胸に抱きつつ海原を泳いでいた。 何に対しての怒りであるか──タイム・クルセイダーズに対するものだ。彼は、双葉のような形をしていると聞くタイム・クルセイダーズ

  • どうぶつたちのキャンプ 第26話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「とにかく、下りてみよう」レイヴンは誰にともなくそう言い、下降しはじめた。「え」「下りるって?」「あれ、泳ぐの?」動物たちは一斉に質問した。「いや、まだ水面近くにいるみたいだから」レイヴンは

  • どうぶつたちのキャンプ 第25話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンは生まれてこの方初めてなほど、触手に全エネルギーを注ぎ入れた。幸いエネルギーの素となる分子は海水中から無限に取り込める。生成する端から各触手に送り込み、各細胞で燃焼させた。 サブ触

  • どうぶつたちのキャンプ 第24話

    JUGEMテーマ:小説/詩   一羽の鳥が沖の方から飛んで来た。そう大柄の鳥ではなく、嘴がどこかバランスを欠いたような変わった形をしている。アフリカハサミアジサシだ。大陸から海を渡って島に来たらしい。鳥はバオバブの木の樹

  • ドラゴニアファットバーニングオンメタボロス

    JUGEMテーマ:小説/詩   月は新月。闘技場を取り囲む松明が闇に向かいジリジリと牙を剥く。観客はいない。これは極秘裏に行われる、ダークイベントだ。「ではこれよりユウヤ対ヒロトの竜脂炎闘試合を行う」宣言するのは固そうな

  • どうぶつたちのキャンプ 第23話

    JUGEMテーマ:小説/詩   ゲラダヒヒの捕獲は『失敗』に終わった、と、ルルーはついに判断を下した。 彼奴らは誰かに入れ知恵でもされているのだろうか?「タイム・クルセイダーズがこの当たりをうろついている間は、決して岩陰

  • どうぶつたちのキャンプ 第22話

      ミーアキャットたちは食事をしていた。 子どもたちはもうお腹いっぱいになったようで、じゃれつき合って遊んでいる。 群れの大人たちは順番に、食事を取る班、子どもたちを見守る班、そして外敵の接近を見張る班に分かれ行動している。&nb

  • どうぶつたちのキャンプ 第21話

    JUGEMテーマ:小説/詩   フェネックギツネにマルティコラスの外見的特徴を説明した後、レイヴンは再び乾燥した大地の上を浮揚推進しはじめた。 そうしながらも、出遭う動物たちに可能な限り声をかけてゆく。だが心躍るような情

  • どうぶつたちのキャンプ 第20話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンはフェネックギツネたちがいたところに降り立った。彼らはほとんど一瞬の間に土中へ潜り込んだから、そこからそう離れていない地下に巣があるはずだと予測したのだ。「おーい。すいませーん」レ

  • どうぶつたちのキャンプ 第19話

    JUGEMテーマ:小説/詩   ルルーの目の前に現れたのは、鳥だった。モモイロペリカンだ。Vの字の隊形を作り飛んでいく。飛びながら、ルルーをじろじろと観察してきたのだ。 ルルーはぷいっと視線をそらした。お前たちに用などな

  • どうぶつたちのキャンプ 第18話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「コードルルー」通信が入る。「今どこにいる?」「今は」ギルド員は足元遥か彼方に広がる地形を見下ろしつつ答える。「サハラの目のところだ」「ゲラダヒヒは捕まえたか?」質問が続く。「いや&hell

  • どうぶつたちのキャンプ 第17話

    JUGEMテーマ:小説/詩   地上を目指しながらもレイヴンは、聞こえてきた謎の声について考えを深めた。 聞き覚えのある声か否か。動物の声か否か、動物だとして、何の動物の声に似ているか。大人か子どもか、雄か雌か。 それに

  • どうぶつたちのキャンプ 第16話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ん」オリュクスは走りながら、一瞬上を見上げた。「オリュクス! ここだ、ぼくだよレイヴンだ!」レイヴンは叫んだ。 だがオリュクスはすぐに前を向き、そのまま走り抜けた。立ち止まりもせず、それど

  • どうぶつたちのキャンプ 第15話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「レイヴン」 キオスの呼ぶ声にはっと我を覚えたレイヴンだった。「あ、ああ」「あのチンパンジーは……どうするの?」キオスは、どこかおずおずとしながらそう訊ねてきた。

  • どうぶつたちのキャンプ 第14話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「攻撃……?」レイヴンは衝撃を覚えながらも心の片隅で、こいつは法螺を吹いているのではないか、と勘繰りもしていた。「君たちを、ということは、ギルドを?」「そう」ルル

  • どうぶつたちのキャンプ 第13話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンはその後、チンパンジーの群れに声をかける機会を見つけられないまま、彼らが群れの仲間の一頭の元へ向かい、その対象に対し金切声を挙げながらよってたかって叩いたり引っ掻いたり噛みついたり

  • どうぶつたちのキャンプ 第12話

    JUGEMテーマ:小説/詩   オリュクスは素早い。疾風のように素早く、水のように無駄のない動きで流れるように走る。 彼はとにかく元気で、いつもご機嫌で、とにかく自分の体を動かすのが好きな動物だ。自分の体が動くということ

  • どうぶつたちのキャンプ 第11話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「なんか聞こえる?」「なんか言ってるわ」「どこ?」「どいて」「ちょっと尻尾引っ張らないで」「やめて」「どいて」 ハダカデバネズミたちは何やらもめている様子だった。「あの、ここです」レイヴンは

  • どうぶつたちのキャンプ 第10話

    JUGEMテーマ:小説/詩   リーダーのゾウは立派な牙を備える巨大な体躯の持ち主だった。その前足を持ち上げ、キオスの上に下ろされるだけで、この小さな動物はぺしゃんこになるだろう──杞憂にすぎないとわかってはいるが。「あ

  • どうぶつたちのキャンプ 第9話

    JUGEMテーマ:小説/詩   キオスは群れの仲間といっしょに水を飲んでいた。正確にいうと、水を飲む振りをしていた。具体的にいうと、水に鼻先をつけ、水を吸い上げているように見せかけた。 すべて芝居だ。実際のところキオスは

  • どうぶつたちのキャンプ 第8話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「よく食べるわね」不意にキオスは背後から声をかけられた。 振り向くと、立派な牙を持ったひときわ大柄なサバンナゾウがそこにいた。「リーダー」今まで話していたサバンナゾウがキオスの代わりに呼び返

  • どうぶつたちのキャンプ 第7話

    JUGEMテーマ:小説/詩   サバンナゾウといったか。この動物はあまり眠らない。常に草木を探し、食んでいる。「食べ続けていないとだめな気がするんだ」 以前、なぜそんなに食べ続けるのかと問いかけた時、そういう答えが返って

  • どうぶつたちのキャンプ 第6話

    JUGEMテーマ:小説/詩   意識が朧げに構築されていく。レイヴンは少しずつ、ほんの僅かずつ我を取り戻していった。「こんにちは」声がした。 レイヴンは振り返った。 そこに、死んだような表情の巨大な浮遊物がいた。「うわあ

  • どうぶつたちのキャンプ 第5話

    JUGEMテーマ:小説/詩   月が一つ見える。まん丸に近い形で光っている。活動するなら今のうちだ。 ネコ科動物たちに嗅ぎつけられないよう注意を払いつつ、砂漠を移動する。ネコ科は素早い。あ、こいつこのぼくを仕留めようとし

  • どうぶつたちのキャンプ 第4話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「探しに来てくれて、見つけてくれたのは嬉しい。ありがとう、レイヴン」 コスは収容籠の中に大人しく──あるいは諦めを抱いて──入った後で、そういった意味の声で啼いた。「どういたしまして。心細か

  • どうぶつたちのキャンプ 第3話

    JUGEMテーマ:小説/詩   へいいいいいん 「うわっ」 突如耳を襲った大怪音に、レイヴンは思わず身をすくませた。 ぱうあああああ ぽほおおおおお えわわわわわん 怪音はなおも続いた。どこから聞えてくるのか—

  • どうぶつたちのキャンプ 第2話

    JUGEMテーマ:小説/詩  感受帯角質に正式な辞令が届いたのは、その日の夜だった。『レイヴン=ガスファルト 上記の者を地球方面行方不明動物捜索捕獲係に任命し、地球への出動を命ずる』すべての準備を終えてから、レイヴンはふう、と息を

  • どうぶつたちのキャンプ 第2話

    JUGEMテーマ:小説/詩   感受帯角質に正式な辞令が届いたのは、その日の夜だった。『レイヴン=ガスファルト 上記の者を地球方面行方不明動物捜索捕獲係に任命し、地球への出動を命ずる』すべての準備を終えてから、レイヴンは

  • どうぶつたちのキャンプ 第1話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンは窓外の超高速雲流を眺めるともなく見遣りながら、ハヤミ総司令の待つオフィスへと浮揚推進していた。 呼び出しを受けたのは、昨日の夜だった。「明日の朝、私のオフィスに来てくれたまえ」

  • 重家族 第35話(了)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「松村彩夏、さん」初めて見る男の人が私の名を呼んだ。「はい」私は返事をした。「──」男は手許のタブレットに視線を下ろし、しばらく無言でいた。 私も椅子に座った状態で行動をしなかった。「橿原圭

  • 重家族 第34話

    JUGEMテーマ:小説/詩   施設からの迎えが来る日の朝、定時刻に電源がオンになると同時にスピリットの呟きが検知された。  あんたの娘になんか、生まれて来なきゃよかった。 泉は俺の女だ。俺がどうしようが俺の勝

  • 重家族 第33話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「命令?」翔は戦慄の声を挙げた。「何、それってどういうフィードバックの?」「よくわからないけど……翔くんも見る? この映像」「──法的に問題なければ」「大丈夫、担

  • 重家族 第32話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「何」櫃原圭輔は眉をしかめ私に向かい言った。「命令するのか? ロボットが人間に?」 その時私には、今私の発した言語は人間とのコミュニケーションにおいて選択されるべきものではないという認識があ

  • 重家族 第31話

    JUGEMテーマ:小説/詩   葬儀は恙無く執り行われた。 通夜には親戚が集まり、読経と焼香の後皆で食事をし、その晩は線香を灯し続けなければならないと誰かが言った、 圭輔も棺の傍に座っていたが、どの位経った頃かに叔母が「

  • 重家族 第31話

    JUGEMテーマ:小説/詩   葬儀は恙無く執り行われた。 通夜には親戚が集まり、読経と焼香の後皆で食事をし、その晩は線香を灯し続けなければならないと誰かが言った、 圭輔も棺の傍に座っていたが、どの位経った頃かに叔母が「

  • #当社では死んでもそのような事は申し上げません

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般   変なメールというものが、まあ毎日々々勤勉に送られて来ますよね。 曰く『あなたのアカウントに不審なログインがされました』『あなたのアカウントが停止されます』『今す

  • 重家族 第30話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「──」慶子はやはりすぐに返事の言葉を探すことができなかった。「また、後日」圭輔は搾りだすような声で続けた。「父と一緒に、お詫びのためお伺いしたいと思います」「いいえ」慶子は自分でも驚くほど

  • #初詣

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般   行って参りました。初詣。 今年は海辺の神社にて参拝いたしました。 「一礼二拍手二礼だっけ?」「二礼二拍手一礼じゃない?」等と思い出しつつ考えつつ復唱し

  • 重家族30の執筆&配信予約

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般  もう30話か〜……400字詰換算で、29話めまでの所378枚となっています。 多分最終話までで、450〜500枚ぐらいになるのかな〜、と。あと書

  • ショート2編微々たる進捗

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般  大晦日から元旦にかけてTVをつけていなかった私なのですが、今朝今年初でつけた所大地震のニュースを初めて知ったのでした……TVつけずとも時事ニュー

  • #明けましておめでとうございます☆

    JUGEMテーマ:日記・一般  うむ。 今年こそは、日記を、毎日、一日一記事ずつ、己の命の証として、今ここに私はいるということの魂の叫びを、こつこつと、かちかちと、誤変換満載で、全世界に恥しげもなく送信していってやるぅ! 

  • 重家族 第29話

    JUGEMテーマ:小説/詩   病院の廊下には少し暗めの蛍光灯の光が当たり、しんみりとした灰色を呈していた。 受付で教えられた病室の位置を目指し、早足で歩く。 だが行先はすぐに見つかった。 廊下の片隅で、どこかに電話をし

  • 重家族 第28話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「スピリット──」一夫も声もなく繰り返した。 それはそうだ。当然のことだ。クローノイドの専門家であれば、彩夏の状態を把握していないわけがない。技師たちは、知っているのだ。 スピリットの彩夏の

  • 重家族 第27話

    JUGEMテーマ:小説/詩   弁護士及びクローノイド技師、及び保険会社の担当社員との面談後、私と母は田代の運転する車に乗り自宅へ帰った。  そうか。 私がロボットになったんじゃないんだ。 そうなんじゃなくて、

  • 重家族 第26話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「よろしく、お願いします……」慶子は若干圧倒されつつも頭を下げ、改めて依頼した。「わかりました」石野崎美知留は頷き「では今後、橿原圭輔及びその母親との会話を記録し

  • 重家族 第25話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「どうしてなのかは、現時点で我々にもわかっていません」椎木は瞼を伏せながら話した。「ですがこの現象について、我々としてはできるだけ早い段階で解明する必要があると考えています」「──け」慶子は

  • 重家族 第24話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「はい。私は今でも、ニューロンの呟きを無視しています」彩夏は石野崎に対して答えた。「──そうか」石野崎はクローノイドの顔を見ながらゆっくりと頷いた。 ニューロンの呟き──その言葉に対して質問

  • 重家族 第23話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「松村慶子さんから、面談の際には良星家族保険株式会社の営業担当、田代さんを同席させて欲しいとの申し入れがあったわ」石野崎美知留は両手を組んで机の上に置き、そう言った。 そこは彼女の運営する弁

  • 重家族 第22話

    JUGEMテーマ:小説/詩   田代には『スピリット』のことについては言わなかった。 差し向きクローノイドが話をしなくなった、というトラブルについてだけ報告し、対処を依頼した。 恐らく保険会社からクローノイド製作業者に連

  • 重家族 第21話

    JUGEMテーマ:小説/詩   彩夏の取得情報データ及び発話生成ログから、AIによりクローノイド彩夏が人間たちと交わしたと思われる会話内容が生成される。 石野崎は、オフィスに来てもらった椎木と並んで椅子に座り、彩夏の声で

  • 重家族 第20話

    JUGEMテーマ:小説/詩   彩夏が遺した、最後の日記。 一夫は一心に、一度も目を逸らすことなくそれを読み続けた。 だが読み続ける内、その手は細かく震え出し、呼吸は穏やかなものではなくなってきた。やがてその唇からは、「

  • 重家族 第19話

    JUGEMテーマ:小説/詩   彩夏の遺したメモには、右上隅に数字の羅列──年月日が、これもまた小さな字で記入されていた。 日記の内容はその後も、夫である圭輔から理不尽に禁止されたこと、改善を命じられたこと、強制されたこ

  • 重家族 第18話

    JUGEMテーマ:小説/詩   慶子は気が遠くなるほどの震えを感じながら、手許の紙束から輪ゴムを外し、メモを開いた。 なるほど確かに、大層細かい字で紙面全体にびっしりと書かれてある。慶子は両眼を精一杯すがめたが、それでも

  • 重家族 第17話

    JUGEMテーマ:小説/詩   姫奈は、圭輔さんのことが好きなのかな。 圭輔さんと、結婚したいと思っているのかな。 でも圭輔さんのこと『あいつ』って、呼んでたよね。 私がロボットになったとしても、きっと攻撃してくるって。

  • 重家族 第16話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「彩夏……?」慶子はクローノイドを見て呼びかけた。 それはしかし、クローノイドに対する呼びかけではなく、その中に『いる』と今し方聞いた、彩夏の──娘の『魂』に対す

  • 重家族 第15話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「もしもし、彩夏? どうしたの?」母が電話に出てそう言った。「お母さん、彩夏です」私は通信機構を稼働させた状態で母に発話生成した。 私の傍に立つ姫奈にも対話の内容を聞かせる方が良いと判断され

  • 重家族 第14話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「うーわ」石野崎は目を見張った。「こりゃあ……すげえなまた」 松村彩夏のCPUから送られてきた取得環境情報および生成モーションのフィードバックデータだ。 ざっくり

  • 重家族 第13話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ああ」警官は残念そうな表情をした。「まあでもそれが、DVを受けてるんじゃないかって最初に気づいたきっかけだったんですね」「ええ……でもあの子、結婚前からたまに、

  • 重家族 第12話

    JUGEMテーマ:小説/詩   どうすればいいのだろう。 慶子は自分の全身が震え続けていることを感じ取りながら、その場に立ち尽くしていた。 自分は何をすればよいのか。 誰かに助けを求める? 誰に? どこに連絡する? 最初

  • 重家族 第10話

    JUGEMテーマ:小説/詩   玄関ドアを開けると、そこには二人の人間が立っていた。 慶子は一瞬言葉を忘れ、目を見開いた。 橿原圭輔だ。 彩夏の夫 だった 男だ。 半袖のポロシャツにチノパンという、ラフな出立をしている。

  • 「昔のアニメ」と言われて思いつくのは?

    JUGEMテーマ:日記・一般  今日、娘が「YouTubeで昔のアニメやってるけど、観る?」と訊いてきました。 私はそれに対して「昔のアニメ?」と問い返し、続けて 「マジンガーZとか?」 と訊きました。 娘は「

  • 『多重人格の急須 2 〜肉じゃがは時空を超えて〜』発売のお知らせ

    JUGEMテーマ:小説全般   四人の人格が入った魔法の急須の主である女子高生、春日舞子は、ある朝目覚めた途端に羽の生えた天使から「規定値以上の反重力操作を施しここ以外のいずれかの時空に移動しようと企む何者かの犯罪を、未

  • 短編集『カウントアップが始まる』発売のお知らせ

    JUGEMテーマ:小説全般   ある日少女に問われた「今まで何回『ありがとう』を言いましたか?」 そして世界は激変した── 表題作ほか15編のショート小説集。『カウントアップが始まる』 ¥300(Twitter拡

  • 重家族 第9話

    JUGEMテーマ:小説/詩   慶子は洗濯機を始動させた後、バスルームの掃除に取りかかった。 シャワーでバスタブに水をかけながらふと、昨日ショッピングモールで出会った姫奈の姿を思い出す。 ──姫奈ちゃん…&

  • 重家族 第8話

    JUGEMテーマ:小説/詩   朝の仕事のルーティンが片付いたところで、石野崎はコーヒーを一口すすってから、再度データファイルを開いた。 彩夏から送られて来た外界センサによる取得情報のすべてだ。 モニタの黒画面に久遠の文

  • 重家族 第7話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ちょっと、あなたそんな服着るの?」 母の声が聞こえた。「やだ、なんかおばさんっぽいわよ。どういう趣味なのよ」 正確には外界センサ──耳から取得した音声情報ではなく、彩夏の記憶から検出された

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