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  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その13

    ネタバレします。 【第54回 黄風大王 疊ねて道を遮り 河西回廊 なお路険し】 通臂公は悟能におぶさり玄奘と旅を続ける。 通臂公は黄風大王の一味を見つけ危険を知らせるが玄奘の天竺行きの決意は揺るがない。 悟空、二娘を加えた旅芸人一行も悟空の護衛で進み続けた。 黄砂が晴れ烏鞘嶺を越えると道はいよいよ祁連山脈とゴビ(砂漠)(ゴビって砂漠って意味なんだよね)に挟まれた細長い地帯に入る。これが涼州から甘州、粛州を通って西域に通じる河西回廊である。 (この地図はウェブ上で拾ったもの。本作に収録されてはおらず) 河西回廊と聞いただけでわくわくするのは何故。 沙州(敦煌)わくわく。 そしてその先は西域となる…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その12

    いっかーん。褚悟能の画像になってしまったよお。おんおん。 ネタバレします。 【第50回 蘭州城に八戒 三蔵を欺き 観音院に老僧 痴態を尽くす】 八戒こと褚悟能はいまだ追われる身。蘭州に入りたくとも入れない。どうした者かと思案しているところへ玄奘がやってきたのを見てうまく丸め込んでしまおうと考える。 玄奘に話しかけると真面目な彼は同じ志を持つ人だと勘違いして同行する。 頓珍漢なやり取りが続く。 が、悟能は玄奘にくっついてなんとか役人を騙して蘭州の門を通ってしまう。 玄奘が離れた隙に胸から紫金鈴を取り出し振ってみる。 が、音もしない不良品だとすぐにしまった。 しかし紫金鈴の効果は絶大だった。少し振…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その11

    観音院の章 ネタバレします。 【第47回 衆を欺いて八戒 閨房に忍び 盗を追って悟空 三蔵に遇う】 盤糸嶺では黄袍が枯れた樹木に突き刺しになり顔を烏に啄まれていた九頭駙馬を見届けていた。 また黄袍は笠を深くかぶった行者を見る。 不意にその笠を奪ったが見知らぬ男であった。 二娘は乾草を積んだ車をロバに引かせていた。 乾草の中には悟空が眠っている。 道中で検問をしている男たちがいた。男たちが乾草に槍を突き刺し調べようとするとどこからか蜜蜂が飛んできて男たちを襲った。 二娘は大急ぎで逃げ出し、蜜娘にお礼をつぶやく。 蜜娘はもう悟空のことは諦めていた。 蜻娘と共に去っていく。 一方、蠦娘に置き去りにさ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その10

    ネタバレします。 【第43回 盤糸洞に怪虫 群れ集い 千花洞に悟空 難に遭う】 蜢娘が矢に倒れ洞の中では年長の螞娘が一番幼い蜻娘を守ろうとしていた。 蜢娘の周囲には彼女の虫であるウシバエがたかっていた。 百眼道人に従う農民たちは次々と洞の中に入ろうとする。 その頃悟空は突厥と戦っていた。その悟空を守るように蝗が動き悟空は突厥を倒していく。 いつしか悟空は蝗婆婆がいる千花洞に入っていた。 蝗婆婆は毘藍婆菩薩を悟空に見せた。 その後に通臂公も現れた。 蝗婆婆は語りだす。 この世の中はいつも同じで権力者は互いに殺し合い弱い者から搾り取る。 そんな世の中に嫌気がさした私は仙道を修めようと決心した。そし…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その9

    ネタバレします。 【飛蝗ふたたび興りて 山沢に群れ 道人ひとたび説いて 村民を動かす】 究極のイナゴ「平天蝗」は飛び出した後、悟空の胸に留まる。 そこへ蜜娘が悟空を夜這いに来たのであった。 悟空の胸に留まったイナゴを追い払いキスしようとしているところを蜡娘によって二郎と間違われ逆にキスされてしまう。 さらに別の娘たちも悟空の部屋に入り込んできて大騒ぎとなる。 これを蝗婆婆が怒って静めてしまう。 この間に平天蝗は外へと出てしまった。 悟空は騒ぎを逃れ年長の螞娘の部屋に入っていた。 彼女が戻ってくると悟空は「なぜ蝗婆婆が恐ろしい飛蝗を作る事に熱中しているかを問う。 しかしそれは螞娘の知らぬことであ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その8

    盤糸嶺の章 ネタバレします。 【第37回 皇帝と称すといえども 身に仁なく 民を救わんとせば 義守り難し】 明けて貞観元年、この年の冬突厥の地には大雪が降りたくさんの家畜が死ぬ。 人々は飢え長城を越えて村々を襲った。 冬が過ぎても中国全土を干ばつが襲い多くの人々が飢えたのであった。 さてその中国全土でいまだ唐に平定されていない者がひとり残っておりそれが夏州の梁師都であった。 とはいえその梁師都も突厥の支援を受けてかろうじて持ちこたえている状態だったのだ。 李世民はこの梁師都を一日も早く降すようにと望んでいた。 ところがここに悟空は関わってくるのである。 どうやら何かの恩を受けて悟空はしばらく梁…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その7

    【第30回 厩に逃れて弼馬に見え 観を尋ねて 異人に遇う】 玄奘は天竺行きたさに宮城を勝手に歩き回り皇帝に会いたいと願うのだがこれはあまりにも無謀であった。 どういうことか、紅孩児と地湧夫人が悪だくみをしている場面に遭遇し話を聞いてしまう。 物音をたててしまった玄奘は逃げ出すが紅孩児は「殺せ」と叫ぶ。 玄奘が逃げ込んだのは悟空が捕らえられている厩であった。 思わず経を唱えるとその声は幻影に苦しむ悟空を再び救うことになる。 紅孩児と地湧夫人が追ってきた。 悟空が玄奘を匿う。 地湧夫人が悟空に気づき近寄ってくる。 が、紅孩児が「馬丁だ」と呼びかけふたりは逃げていく。 悟空は玄奘に声をかけ「城外の落…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その6

    ネタバレします。 【第27回 六健将 深更に井を潜り 三太子 地底に剣を振るう】 悟空はじめ紅孩児とその仲間はいよいよ宮城へと入り込む。 井戸を降り横穴を通り地下道を抜けて森羅殿へと到着する。 龍と思っていたのは鰐だと気づく。 悟空はこの中に入るとどうしても頭が痛くなる。 そんな彼らに近づいてきたのは三太子の哪吒だった。皆はおかしな子供だと思ったが悟空は怖れる。 如意真仙は宝に目がくらむ。 悟空はそこにある立像にも恐れをなして暴れた。 哪吒は巨霊神を呼び悟空を襲わせた。 が、ここに六耳が現れ悟空を守る。 その隙に雲裏霧は悟空の手を引き逃げ出す。 紅孩児は先を急いだ。 その後に続いたのは生き延び…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その5

    ネタバレします。 【第23回 李元吉 牢城に首を検め 李世勣 悟空を押送す】 李世勣によって捕らえられた悟空は李元吉に詰問を受けるが答えず、厳重に押送車に乗せられ長安へ向かうことになる。 李世勣は一足早く長安へ急ぎ悟空の護送はその後に続いた。 これを襲ったのが紅孩児であった。 さらに猿たちが金箍棒を取り返してくれた。 長安に到着した玄奘は大覚寺へと進む。 【第24回 落胎観に六健 聚義し 大覚寺に三蔵 聴講す】 悟空は紅孩児ら劉黒闥の残党に助けられ長安の郊外に潜んだ。 そこは紅孩児の叔父如意真仙の道観だった。 悟空は紅孩児の仲間、雲裏霧に連れられ長安の町中を歩く。 そして悟空は皇帝に献上される…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その4

    ネタバレします。 【第16回 竜女 環を投げて少年を援け 悟空 賊を殺して学僧を救う】 竜児女はもう斉天玄女の力をすっかり失っていた。 銀角に追い込まれ逃げる術もない。 ついに投げ網によって捕獲されてしまう。 平頂山では唐軍と山賊の戦いが始まっている。 金角大王が立ちはだかっていた。 銀角によって手籠めにされそうになった竜児女だが唐軍の襲撃で危うくも助かる。竜児女は捕らわれながらも悟空を救おうとしていた。 悟空の目の前に竜児女の銀箍棒が現れ悟空はそれを武器として山賊相手に戦う。 そして捕らわれていた玄奘を救った。 【第17回 竜児女 心迷いて魔を忘れ 孫大聖 新珍鉄を得る】 力を失ったとはいえ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 【第11回 仙境に処女 天意を図り 村裏に凶徒 良民を虐ぐ】 この部分も微妙に描きかえられている。 通臂公によって竜児女がどんな修行をしてきたかが語られる。 竜児女は悟空が力を持った時に得られる金箍棒を見せる。それは岩から生えているようで今の悟空の力では抜くことができない。 竜児女が持つのは銀箍棒でありそれも彼女が力を持った時に得られたのだ。 しかし悟空は斉天大聖などただの妖怪であり人々や野人までも見境なく食ってしまったと疑問を持っていた。 反抗する悟空の前に岩壁の斉天大聖が「悟空」と呼ばわった。 悟空は脅威を感じる。 白雲洞の中には外国のものらしい読めない文字も書かれていた…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その2

    【第6回 処刑場に鬼哭啾啾 黄河上に悟空大いに怒る】 断頭坡で野ざらしになっていた白骨たちは恨みの声を上げた。 「大聖、おれたちの怨みを晴らしてくれ」 しかし悟空には自分がなにものかすらよくわからなくなっていたのだ。 そこに通りかかったのが旅の僧、玄奘だった。荊州から来て長安へ帰るところであった。 玄奘は白骨たちにお経を唱えさらに檻の中で横たわっている悟空が心を取り戻せるよう祈ったのだった。 すると今までどうしても思い出せなかった悟空が自分の名前を思い出したのだ。 悟空は別の道へ進んでいく玄奘を見送った。 やがて一行は黄河をさかのぼる船に乗り込んだ。 すでに別の一行がいたが彼らは劉黒闥の一味、…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その1

    いつも単行本の横に発表および発行年月日などを記しているのですがこの作品に関してはかなり複雑で修正加筆さらに中断そして掲載誌も様々に移り変わるなど煩雑すぎるので省略することにします。 本作は双葉社『月刊スーパーアクション」にて1983年から始まった作品であります。 私は画像右上の双葉社発行の第一巻1984年第2刷から数冊持っているのですがこれが中断されているうえに「大唐篇」として大幅な加筆修正が成されているとされていて頭を抱えました。これでは今不足している巻を買い足しても意味がない・・・。 しょうがないのでもうやむなく『大唐篇』デジタル版を購入し手持ちの双葉社版と読み比べながら進めることにします…

  • 『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』諸星大二郎

    2014年2月「ヤングジャンプ・コミックスウルトラ」 「美加と境界の神」が読みたく文庫本を購入しました。 が、文庫本は目がつらい。 やむなくデジタル版も購入。ううう。 ネタバレします。 「美加と境界の神」2009年8月号「ウルトラジャンプ」 天木兄妹の美加が登場。 携帯に四方口村にある不思議な大きな藁人形の画像を入れそれを探している。 同じく四方口村で亡くなった姉の謎を解き明かしにきた木戸健人と出会い道連れとなる。 この作品で驚きだったのは「両墓制」だった。 遺体を実際に埋める「埋め墓」「捨て墓」と呼ばれるものと別にお参りするために作られた墓がある、というのだ。 この場合埋め墓捨て墓のほうは土…

  • 『闇の鶯』「それは時には少女となりて」「書き損じのある妖怪絵巻」 諸星大二郎

    2009年4月「KCデラックス」 wiki記載で記事を進行しようとしてやや困惑する事態が発生しました。「妖怪ハンターシリーズ」の中にこの単行本が記載されていなかったのです。 が、「妖怪ハンター」リンク先のエピソード一覧の下に単行本の記載がありそこにはちゃんと記されていました。 ううむ。全部目を通さなかったために起きた困惑でした。いかんいかん。 (個人的事件でなんのことかよくわからない説明となりました) ネタバレします。 「それは時には少女となりて」2004年9月号「アフタヌーン」 大島&渚シリーズ。 大島君が海から来た裸の少女に魅入られてしまう。 海岸にある防塁の向こう側に見知らぬ少女が顔だけ…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 三章「苧環の男」2004年9月号「メフィスト」 「魔障ヶ岳」で”モノ”を見た四人のひとり岩淵翔子の場合は「神上嵩」であった。 苧環伝説そしてさらに箸墓伝説を重ねるように翔子は神上と自分の関係をそられに模してしまう。 神はその正体を知られた時に姿を消し、女は自殺してしまう、稗田礼二郎はそれを危惧して翔子の後を追う。 果たして神上嵩は消えてしまった。 翔子はそんなはずはない。彼の赤ちゃんがいるのだからと腹部を抑え、そして去っていく。 四章「名を付けなかった男」2005年1月号「メフィスト」 そして「魔障ヶ岳」の”モノ”に名を付けなかったのが稗田礼二郎である。 他の三人はそれぞれ”…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    なぜかwiki記載の章と本記載の章が異なるので詳細な年月日は省略します。 本にする前加筆されているのでそのせいでしょうか。 ネタバレします。 一章「魔に遭った男」 奈良県三輪山で遺跡発掘が行われていた。 主導者の赤井高信助教授は遺跡が三世紀は下るまいと判断していた。 記者はドンピシャで発掘場所を当てた赤井に「新たなる神の手と呼ばれているそうですが」と話しかける。 ここに出てきた「神の手」(発掘における)は記憶している人もいるだろう。 2000年に起きた「旧石器捏造事件」だ。 本作の赤井助教授はそんな事件を思いわせるほどの発見を次々に実現していた、と描かれている。 しかし発掘を手伝う人々からは「…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その1

    2005年11月「KCデラックス」 1974年から始まったこのシリーズが30年の時を経て描かれます。 他の作者作品の多くが最初は緻密でアクティブなのに段々と投げやりになっていく感がありますが本シリーズはクオリティが落ちないどころかより複雑に活動的になっていくようです。 ネタバレします。 序章「魔障ヶ岳」2003年5月号「メフィスト」 稗田礼二郎は美しい和服女性と話をする。 年かさの上品な佇まいだ。 その女性が言う「この子に良い名前をつけてあげたい」と。 その女性は前作『六福神』「淵の女」で登場している。 本作では稗田が赤井と共に御霊山山系の入り口姥ヶ峠で見かけたとなっている。 (どういうことな…

  • 『六福神』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎

    1998年12月「ヤングジャンプ・コミックスウルトラ」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 「産女の来る夜」1994年8月号「月刊ベアーズクラブ」 産女ー難産で死んだ女の霊が化けた妖怪。なんという悲しい話だろうか。 妖怪自体が怖いのではなく女性の妊娠と出産に対する家父長制が恐怖なのだ。家の繁栄のために女性の性と生が犠牲になるシステムを嫌悪するのは当然だろう。 こんな場所に住んではいけない。 そう思わせるほど悲しい産女を諸星氏は描いている。 「海より来るもの」1994年2月号。 大島&渚コンビの物語の舞台はやはり海辺の町、粟木。 こんなに「ドザエモン」が大量に出てくるマンガがあ…

  • 『黄泉からの声』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 「黄泉からの声」 第一章 井戸のまわりで 1993年8月号、10月号「月刊ベアーズクラブ」 これもまた複雑で奇妙な筋立てである。 稗田の学生時代からの友人・青山が登場する。 一か月前に九歳になる娘・珠美が行方不明となり探し続けているゆえか心身ともに疲れ果てている様子だ。 妻は夫がノイローゼになっていると稗田に伝えていた。 娘は井戸のある空き家で遊んでいる時にいなくなったという。 青山はボロボロの空き家を買い取り井戸をさらい娘を探し続けているのだ。 稗田が青山を訪ね話し合っている時、ひとりの若い女が土手に座り「ずいすいずっころばし」を口ずさむ。青山が聞きとがめると女は「この家も…

  • 『黄泉からの声』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その1

    1994年7月「ヤングジャンプ・コミックス」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 「うつぼ舟の女」1991年冬の号、1992年春の号、1992年夏の号、1992年秋の号「ヤンジャンベアーズ」(全4回連載) タイトルにある「うつぼ舟」という伝説にまつわる物語。 他の創作者は「うつろ」という表記を多くとっているようだが「うつぼ」になったのは諸星氏の感覚なのか柳田國男氏がそちらを表記しているからか。 中に若い女が入っていた、というもので興味をそそられる話である。 異国の女性かあるいはその船がUFOでつまりは宇宙人だったなどの説があるが諸星作品ではやはり異世界とのつながりが感じられる…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 『天孫降臨』 第二章 樹海にて 1990年12月号「月刊ベアーズクラブ」 ”光の木”真理教団の信者全員が教祖もろとも行方不明となる。 富士の裾野の青木ヶ原に入り集団自殺を行っているのではないかと報道される。 ここを訪れたのが天木薫と橘であった。 稗田もまたひとりで向かったがその前に美加に電話したところ呼び出し音の中に 「来ないで・・・せめて三本目の矢に気を付けて」という声が混じって聞こえた。 その矢とは稗田が枯野村で見つけた古い鏃で作ったもので橘が持ってきた天の鹿児弓につがえて薫が射るのである。 稗田は駆け付け三本目の矢にカバンを投げつけ惨事を防ぐ。 その間に”光の木”真理教…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    稗田礼二郎フィールド・ノートより 下の画像があんまり怖いので一枚上に乗せました。 まあこちらも怖いですが。 ネタバレします。 コワスギル 「川上より来りて」1988年7月号「月刊ベアーズクラブ」 「生命の木」シリーズと呼ぶべきだろうか。 「花咲爺論序説」と「幻の木」が融合していく。 天木薫・美加兄妹が諸星先生のお気に入りになったのか、最初からこのシリーズを描くはずだったのか。 航空機事故で死んでしまうはずからの転生をして妹の美加はいわば超能力を身に着けてしまう。 本作で稗田礼二郎は「幻の木」のその後を追っている。 そして美加は「光る木」を夢見てどうしてもそれを見つけねばならないと兄の薫に訴えた…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎

    1993年2月「ヤングジャンプ・コミックス」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 『闇の客人(まろうど)」1990年1月号「YJベアーズクラブ阿蘇 本作最高に爆笑、と言いたいけれどかなり人が死んでてその表現はサイコパスだが面白すぎるのだ。 某県大鳥町。大小五十ほどの集落からなる過疎地域である。 そんな場所を活性化しようという「町おこし」が流行った時期があるが大鳥町もその一つであった。 そしてその「町おこし」のために「百年近く前に断絶した古い祭りを復活させること」が行われる。 我らが稗田礼二郎はそんな「古い祭り」について相談を受けたらしい。彼は以前文献などから「大鳥村の神迎え神…

  • 『海竜祭の夜』〈妖怪ハンター〉 諸星大二郎

    1988年7月「ジャンプスーパーエース」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより(あるいは妖怪ハンターと呼ばれた男の手記) うん、かっこいい 諸星氏は『妖怪ハンター』というタイトルが嫌いだったようで本当はこのタイトルにしたかったのでしょうか。私はどちらも好きですが。 ネタバレします。 「海竜祭の夜」1982年9号「週刊ヤングジャンプ」 萩尾望都が怖くてたまらなかったという作品である。 だからというわけではないが本作もやはり名作だと思う。 まあだからこそ単行本のタイトルに選ばれているのだけど。 諸星氏は礼二郎をハンターではなく傍観者として位置づけしている。 そのために「妖怪ハンター」というタイトルを…

  • 『妖怪ハンター』諸星大二郎 その2

    第四話「闇の中の仮面の顔」1978年「書き下ろし」この作品の中に「ルングワンダルング」という言葉が出てきて「?」となったのですが検索して「リングワンダリング」だと判る。 単なる印刷ミスなのか、作者の間違いだったのか、別の本では訂正されているのか、それともそういう言い方もあるのかわからないが、視界が限られた場所でぐるぐる回ってしまう現象のことである。 本作では狩猟中濃霧に迷った男が同じ場所をぐるぐる巡ってしまったという現象が描かれる。 有名な話では『八甲田山』で吹雪の中軍隊が同じ場所をぐるぐると回り続けてしまうものがある。 私は「リングワンダリング」という言葉そのものを知らなかったので(見落とし…

  • 『妖怪ハンター』諸星大二郎 その1

    1978年7月「ジャンプスーパーコミックス集英社」 すみません。どうしても先にこのシリーズを読みたくなり先日書いたwikiの順番を無視して急遽稗田礼二郎シリーズに突入します。 『夢みる機械』も半ばだったのに心変わり失礼します。 ネタバレします。 第1話「黒い探求者」「週刊少年ジャンプ」1974年37号 稗田礼二郎初登場。九州F県(というのは福岡県しか考えられないが)比留子古墳に赴く。「比留子古墳」というのは創作だろうが『暗黒神話』にも福岡県某所にあるとして登場する。 郷土史家の父を持つ矢部まさお少年は稗田礼二郎に手紙を送ったらしい。 それに答えて稗田はF県を訪れたのだ。 まさおの父親は一か月前…

  • 『夢みる機械』諸星大二郎

    1978年 サンコミックス朝日ソノラマ なぜか手持ちの単行本には何刷りかすら記載されておらず。&表紙カバーは外れて存在せず。 ネタバレします。 「夢みる機械」1974年週刊少年ジャンプ11月号掲載 絵柄が何とも言えず可愛らしい。 隣の哲学者シブさんが良い味出している。 無個性で何の刺激もない社会にうんざりしてドロップアウトする、というSFは多々あるだろう。 本作はいわば『マトリックス』カテゴリSFだ。勢作年順としては『マトリックス』が『夢みる機械』カテゴリともいえるが。 単調で退屈な現在に留まるか、『不思議の国のアリス』世界に飛び込んでいくか、それを選択するのは自分自身なのだという問いかけだ。…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 「人間の巻」 スサノオの命は八俣の大蛇を退治し、その尾からひとふりの剣を発見する。 その後その剣はスサノオからヤマトタケルの手に渡る。 それが天叢雲剣、別名草薙剣である。 竹内老人は武に「聖痕もあとふたつ。この先はわしが案内しよう」と告げる。 この後本作で名場面のひとつが描写される。弟橘姫(おとたちばなひめ)の登場である。 ふたりは静岡県焼津市を訪れる。 このあたりでは丸石の信仰があるという。 この丸石を本作では卵としてその中から人が生まれた物語があり、かぐや姫も元来は竹ではなく卵から生まれた話だったらしい、と語る。 老人はとある洞に祀られていた丸石=卵を杖で叩き割る。 中に…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 「餓鬼の巻」 菊池彦は大神美弥を連れ大角隼人が待つ国東半島へ急ぐ。 隼人は武を見失ったという。 武はとある施餓鬼寺に辿り着き倒れていたのを住職らに助けられる。 本堂に寝かせられていた武の周囲に餓鬼どもが集まるのを和尚は観る。 菊池彦は石仏の上に彫られている梵字が気にかかっていた。 そこには「ヤマタイ」と書かれていたのだ。 寺では武が目を覚ましていた。 泥酔和尚は武に馬頭観音の説明をする。 畜生道や餓鬼道に落ちた人間を救ってくれる。 珍しい憤怒の観音である。 観音の馬頭は転輪聖王の乗馬を現しているという。 この施餓鬼寺は普段は寂れているが最澄が施餓鬼供養のために開いた寺であり毎…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その1

    週刊少年ジャンプ1976年20ー25号 先日記事で書いた通り諸星大二郎シリーズ始めることにしました。 wikiに記載されている単行本リストに従って読んでいきます。 画像の本と2021年第20刷の文庫本を持っています。 (先の本を失くしたと思い購入した) しかし文庫本では細かすぎて読めません。 しばらく映像を観ようと予定していたのですがどうしても映像に耐え切れず本に戻ります。 ネタバレします。 これが一冊の内容とは信じられないほど濃い。 とても順を追って説明するほどの根気はない。 それをやったらたぶんそれだけで膨大な資料になりそうだ。 「畜生の巻」 冒頭の描写がとても良い。 現在のうるさい演出が…

  • 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』その2

    いつもあーだこーだ書く人間だけど本作については今のところ、特にこの3話4話言いたいこともないんだけど楽しんでいるからいいのかな。 楽しんではいるが一方キャラクターについても設定についても物語についても今のところ猛烈に言いたいこともない。悪口もない。 普通に楽しんでいる。 ところで・・・自分だけの感覚なのか、台詞がすごく『ヨルムンガンド』なのだ。 といってもそもそも『ヨルムンガンド』が『ガンダム』台詞だったのだから仕方ないのかもしれないが。

  • 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』1

    久しぶりに映像を観る。 賛否両論、かまびすしくもりあがっている、そんな作品に参加してみる。 第一話目、初見、思った以上に面白く好きになれる世界観だった。 問題視されている「スマホ」に関しては確かになあ、という感じ。 存在に別にむかつきはしないがあんな落としやすく割れやすい代物をこの時代にアナクロ趣味としてではなく貧乏学生が必需品として持っているものかな。 しかしそれで言えば学生服も今はおかしくないが将来見る時には古風衣装だろう。 あえて古めかしい鳥居を入れ込んだりして新と旧を混ぜ込んでのお遊びなのだろうと自分的には判断した。 私にとってそれ以上に問題だったのはマチュとニャアンの登場演出なのだ。…

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