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穢銀杏
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2019/02/02

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  • 同時代評 ─小作争議篇─

    群集心理は恐ろしい。 小作争議が激化して紛糾に紛糾を重ねると、「多数派」かつ「攻め手」たる小作側から急速に良心とか節度とか、分別とか見境とか、世間普通の水準で「正気」に属するあらゆるモノが消えてゆく。 我が意を通し勝利に至る為ならば、どんな非道も厭わない。闇討ち、放火もなんのその。地主当人のみならず、彼の親類知己縁者、掌中の珠と可愛がる童子童女に対しても、威脅圧迫は及ぶのだ。 「或地方では消防組を組織しても小作人の方で其指揮権を握り、地主の子弟にはなるべく危険な役目を仰付けるやうにして居る所もあれば、又小学校の児童の間にも地主の子女と小作人の子女とが相分れ、遊戯を共にすることなきは勿論、小作人…

  • 新参神格「孫逸仙」

    今更敢えて鹿爪らしく言うまでもない事実だが、人間は死後、神になり得る。 遺された者、弔う者らが死者を神座へ押し上げる。 大変な作業だ、人手は多ければ多いほどいい。 徳川家康が大権現に、 豊臣秀吉が大明神に、 菅原道真が天神様に、 それぞれ祭りあげられたように、生前現世で大なる功を成し遂げた、──英雄性を発揮すればするほどに、その霊魂が神性を帯びる見込みは高くなる。 (上野東照宮にて撮影) 孫文もまた、神になった。 彼亡き後の広州を──国民党の膝元を──三日も歩けば得心のゆくことである。劇場、学校、商店と、人の出入りの盛んな場所には必ず彼の肖像画が掲げられ、大抵の場合それは青天白日旗と遺訓と連れ…

  • 工匪跳梁、大陸赤化プレリュード

    軍閥打倒・支那統一の方便として、孫逸仙は赤色ロシアと手を組んだ。 モスクワが、コミンテルンがこの繋がりにどれほど執心していたか。ものの数年を出でずして送られて来た「顧問」の数が物語る。 軍事、教育、政務等々、各方面に合わせて二百人超だ。二百名を凌駕する赤色工作員たちが専門分野に食い込んで、「改革」「指導」の美名の下に組織の仕組みを根っ子からアカく染色していった。 おそるべき作業といっていい。 甲斐あって、たちまち支那の天地には「兵匪」に加えて「工匪」なる、──資本家憎しに脳細胞を専有されて、本来の業務もそっちのけ、ただひたすらに暴力的な階級闘争を事とする、元労働者の現ロクデナシ、そういう類の獣…

  • 美しき封建律

    人を殺ったら鉱山(ヤマ)に逃げ込め。 腕に覚えのある技師にとり、鉱山(ヤマ)は格好の逃避先、奉行所の詮索も届かない、藩邸同様ある種の治外法権だ。──… 江戸徳川の世に於いて、異常な速度で発達を遂げ来たった観念である。 山の腸(はらわた)、暗くうねった坑道(あな)の底には地上の法の支配とて、まず易々とは及ばない、そうした意味でも闇の領域が広がっていた。 そもそも鉱夫全般が幕府から特権を受けているのだ。 「山師金掘師、人を殺し山内に駆込むとも留置き、仔細を改め何事も山師金掘師の筋明白立候はゞ留置相働かせ可申事」。──たとえ人殺しであろうとも、事情を検(あらた)め人品を閲し役に立ちそうであるならば、…

  • 勝つまで止めぬ ─共に地獄に堕ちてでも─

    交戦一年を経たあたりから、帝政ドイツの外交態度は新傾向を帯びてきた。 講和への熱烈な欲求である。 ベルギー、ロシアは元よりとして、大日本帝国に対してまでも単独講和の打診があった。むろん、悉くを撥ねつけられた、実のならぬ花に過ぎないが、あったことはあったのだ。 戦争は勝っている間に畳むに限る。フリードリヒ大王やビスマルクを生み出した、恐るべきドイツ民族がその程度の要領を掴んでいない筈がない。彼らは実に常識的な、真っ当な手を打ったろう。 ただ、問題は、同じ理屈を英仏以下の、連合諸国の人々もごく当然に呑み込んでいたという点だ。 (フランスの列車砲) 「戦争は勝ってる内に終わらせるに限る」なら、裏を返…

  • 木堂むかしがたり

    あくまで犬養木堂の主観に基く印象である。 統計学的根拠ゼロ、およそ「正確な記録」とはとても呼べない代物ではあるものの、それでも当時の世相の一部を写し取ってはいるだろう。 ──文明開化の掛け声も初々しかった明治前期の日本で。 記者たらんとの志望に燃えて新聞社の戸を叩くのは、往々にして「御家人の道楽者のなれの果てか町家の道楽者の果てで」あったとか。だから彼らは「通人粋人ぞろひで宴会にでも出れば当今の無芸な記者諸君とちがってタイしたものだった」んだぜ、と。まさにそうした「当今の無芸な記者諸君」を睥睨し、憲政の神は豪放に気を吐いている。 わけても特に水際立った、目から鼻に抜けるが如き才覚ぶりを発揮して…

  • 外交官と宣教師 ─明治の苦労人たちよ─

    森有礼が駐米外交官として精力的に活動していた時期と云うから、つまりは明治四、五年あたりのことだろう。 (Wikipediaより、森有礼) 筋金入りの開明主義で鳴らしたこの人物は、しかし一日(いちじつ)、ともすれば、自分以上の熱量を宿した者に遭遇し、狼狽を余儀なくされている。「神の愛を未だに知らず猶も迷いの中に居る哀れな日本人たち」を教化したくて堪らない、宣教師の一団である。 日本に渡航(わた)ったこの連中が、 「活動範囲を居留地内に限定されては、到底使命を果せない」 と、口を揃えて文句を言って、自国の外交筋を動かし、 「居留地云々に拘束されず、必要とあらば何処へでも布教に赴く特権を是非とも我ら…

  • 出稼ぎ目障りお断り

    一九二四年、連邦議会に提出された排日移民法案を、「新聞王」ウィリアム・ランドルフ・ハーストは徹底的に首肯した。 彼のビジョンは米国が、少なくとも濠洲と同程度の有色人種排斥国と化するところにこそ在った。 (Wikipediaより、ハースト) これは誇張でも推量でもない。以下、本人の口吻をそのまま引かせていただこう。 「我等米人はオーストラリアと同等に絶対的に東洋人の侵入を防止せねばならぬ、単に白色人種の為めでなく、西洋人の生活の標準及び労働賃金の標準を維持する為めに東洋人の侵入を防止せねばならぬ。西洋文明の偉大なる業績は高き道徳及び生活水準に由来するものであって高き道徳標準は或る程度まで生活程度…

  • 共和国に死の香り

    占領からものの三ヶ月内外で、五十人もの死者が出た。 一九二三年、フランス・ベルギー軍によるルール占領を言っている。 同年四月十日に於けるヴィルヘルム・クーノの演説内容に則る限り、どうもそういうことになる。ワイマール共和国の首相閣下は、その日、以下の如くに述べたのだ。 「仏国兵士は頭髪一本をも損はざるにドイツ労働者五十名は己の血潮の中に斃れた。機関銃は未だ曾てドイツ人民の精神を奪った例がない。余は敢て世界各国民に問ふ、ドイツ国民は何時まで待てば世界は此の狂暴なる力の濫用に対して中止を命ずるのであるか」 と。 (Wikipediaより、ヴィルヘルム・クーノ) 悲愴としか言いようがない。 悲愴であろ…

  • たまには明るい話を ─五月病の予防薬─

    蛙鳴蝉噪、野次が飛ぶ、足踏みをする卓を拳固でぶっ叩く、挙句の果てには互いに胸倉掴み合い、柔道の技を競い合う。 「これが仮にも文明国の議会かね」 とは、大日本帝国の衆議院を見学した人々の、一様に浮かべる嘲笑だった。 多少なりとも表現力に自信のある文士らは、衆愚院だの日比谷座だの何だのと、議会を揶揄し諷するための新たな言葉の発明に余念のない有り様だ。 ところがしかし何処にでも変わり種は居ると見え、 「あれはあれで進歩の一過程なのだ。そう辛辣に、批判ばかりするもんじゃない。──たとえ牛歩の歩みでも、日本の政治は確実に、洗練されて行っている」 と、苦しい擁護に敢えて乗り出す者も居た。 富士川游が、まさ…

  • 一流の条件

    国の印象──。 大日本帝国の視点から遠望したアルゼンチンは先ず以って、「イギリスの食糧庫」程度に過ぎず。 反対に、アルゼンチンから眺めた場合の大日本帝国のイメージは、「ロシアを打ち負かした国」が、その殆んどを占めるであろう。 更に言を重ねれば、「自分たちのお蔭で勝てた」と考えている人々が、国民の中にかなり居る。 (Wikipediaより、ブエノスアイレス、パレルモの森) かの日本海海戦を華々しい勝利で以って飾ることが出来たのは、「自分の国から日進春日といふ二隻の軍艦を譲ってやったからだ」と正面から見栄を切られて。大阪毎日新聞社の特派員、浦田芳朗は覚えず真顔になったということである。 大正十一年…

  • 出戻り御免 ─戦後恐慌と公務員─

    警官ばかりに限らない。 大戦景気に浮かされて、公僕たる身に飽き足らず、濡れ手で粟を掴むべく、実業界──野に下った連中は教職中にも多かった。 (満洲にて、粟の穂叩き) こういう場合、数字は何より雄弁だ。実に大正八年度には六百人以上もの中等教諭が不足して、無理難題といっていい過酷なやりくり算段に、当局者らを追い込む事態になっている。 「一体中等教員は何時の年だって不足で困るが昨年の統計で見ると六百人の大多数は従来に見ざる大不足であった、辞表の上に病気としても其多くは皆実業界に飛込んだものと睨んでゐる、その筈である不足の多い英語の教師はタイプライターを叩いて直ぐ役に立つし物理化学の教師はさうした会社…

  • プリンストン夜話

    学校でも、職場でも。 日本だろうと、アメリカだろうと。 時代を問わず、国境を超え。 古顔による新参いびりは人間社会につきものだ。ニュージャージーの名門校、プリンストン大学に新たに入学(はい)った若者は、先輩たちからいのいち(・・・・)に、腐った卵を投げつけられる通過儀礼を課せられた。 (Wikipediaより、プリンストン大学) ご丁寧にも卵には、粘土が塗られて強化され、命中すると結構痛い。 馬鹿げきった話たが、この屈辱と痛みとに耐えないことにはまず真っ当なキャンパスライフを送ることが不可能になる。 「自由の国」を金看板にしているだけのことはあり、大学の運営も学生の自治に任せる部分が相当多く、…

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