百物語 五十七回目「一つ目坊」
学生時代の話である。おれは、嘘をつくのが好きな彼と話ていた。「おまえ、眠たそうやな」彼の言葉に、おれは答える。「夢見が悪かったんだよ」「夢なんか見るのか。 どんな夢なんや」「いや、それが」多少、ここに書くには憚れる内容の夢なのであるが、詳細をはぶくとようするにおれは男性器を切断して自殺する夢を見たのである。その話を聞いたとたん、彼はにこにこと楽しそうにしはじめた。「なんだよ」「いやあ、とうとうきたんやなと思って」「どういう意味だよ」「まあ、いつかはくると思っとったよ、おれは」「何がいいたいんだよ」「おまえはさあ。そういう運命なんや」「たかが夢だろう」「いやいや。 その夢は間違いなくおまえの真実…
2019/05/31 23:38