百物語 六十九回目「イボイボ」
「こまわりくん、ってマンガがはやったじゃあないですか」「ああ」7年ほど前のことだったか。仕事場の裏から出てすぐ向かい側に、朝四時までやってる飲み屋があった。いつも真夜中に仕事を終えると、その店にいって飯を食い酒を飲み、埒もない話をしたものだった。「そのこまわりくんの作者が、こまわりくんの前に描いていたマンガに、いぼぐりくんというのがあって」「ああ?」「頭がいがぐりではなくて、いぼぐりになってるんです」「なんだよ、いぼぐりって」「最初にそれでブレークして、いぼブームを起こしたんですよ」「嘘つけ、知らねえよ。そんなの」「いやいや、ねえ、ありましたよねぇ」「いやあ、聞いたことないですねえ」「ありまし…
2019/06/28 23:42