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2018/12/03

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  • “中動態”って何のこと?~國分功一郎著『中動態の世界―意志と責任の考古学―』から学ぶ①~

    医学書院から単行本で発刊された『中動態の世界―意志と責任の考古学―』(國分功一郎著)が今から6、7年ほど前に馴染みの古書店の書棚に並んだ時、私は手に取ってざっと全体のページを捲ってみたものの内容が難解な感じがしたので、そっと元の場所へ戻したことがあった。でも、タイトルの“中動態”という言葉に少し興味をもち、いずれは読んでみたいと思ったが、そのうち忘れ去ってしまっていた。ところが、今年になって本書が文庫化されたことを知り、職場の市立N中学校からの帰宅途中にある明屋書店で購入し、隙間時間を活用しては少しずつ読み継いできた。内容の理解が覚束ない部分も多々あるが、私なりに “中動態”という概念について…

  • 家族における加害性と被害性の交錯について~宇佐見りん著『くるまの娘』を読んで~

    前々回の記事〈歪な家庭環境が子どもに及ぼす影響について~柚月裕子著『教誨』を読んで~〉において、私は歪な家庭環境によって悪影響を否応なく受けてしまう子どもの被害性について触れた。その際、子どもが他の家族に対して加害者になることを、ほとんど念頭に置いていなかった。子どもは身体的・社会的弱者なので、家庭や社会において強者たる大人から一方的に被害を受ける存在だと無意識にとらえていたのである。 ところが、そのような家族間における暴力や権力の構造についての私の認識を根源的な視座から覆すような、家族関係のアンビバレントなリアルを描いた本と出合った。それは、当ブログの2024年2月20日付けの記事〈私たちに…

  • 学校管理職に昇任した当時の思い出あれこれ~佐川光晴著『校長、お電話です!』を読んで~

    今からもう25年ほど前に新潮新人賞を受賞し、当時多少は話題になった『生活の設計』という私小説風の作品を読んだのが、“佐川光晴”という作家の作品に私が出合った初めての体験だった。この作品に関する私なりのこだわりと思い出等については、本ブログの2021年6月29日付の記事〈主人公が未だに偏見や差別が残る「屠殺(とさつ)」という仕事を選んだ理由は?~佐川光晴著『生活の設計』を再読して~〉で取り上げているので、興味・関心を抱いた方はぜひそちらの記事にも目を通してくださると幸いである。 ところで、なぜこのような過去の記事を紹介するような書き出しをしたかというと、今回の記事はこの著者の別の作品を取り上げよ…

  • 歪な家庭環境が子どもに及ぼす影響について~柚月裕子著『教誨』を読んで~

    6月から市立N中学校へ新しい女性の学校補助員のMさんが赴任した。これで女性2名と男性1名の学校補助員による「小中学校教育活動サポートチーム」になり、その支援員の私を加えると4人が執務室に机を並べることになった。学校補助員たちは皆20代前半なので、私にとっては子どもというより孫の世代に近い年齢である。4月から勤務している2人(AさんとHさん)は家族と同居しているが、Mさんは様々な事情により東予にある実家から離れて暮らしている。大学生の友達と同居して家賃や生活費等を出し合っているらしいが、経済的にはギリギリの生活を送っているらしい。 Mさんが着任して1週間が過ぎた。Mさんは新しい職場環境や勤務内容…

  • 思い出の神保町古書店巡り~原田ひ香著『古本食堂』を読んで~

    4月から私が勤務している市立N中学校の図書室で借りた2冊目の本は、原田ひ香著『古本食堂』であった。本書を借りた理由は、ベストセラーになりドラマ化もされた『三千円の使いかた』の著者であったこと、タイトルから連想した物語に興味をもったこと、何よりも気軽な気分で読めそうだったことなどである。案の定、仕事の疲れを癒すために不可欠の睡眠前後の寝床の友としては最適で、身近に起きそうな物語の展開に付き合うことで心身をリラックスさせてくれた。お陰で気分よくさくさくと読み進めることができた。 そこで今回は、本物語の概要と特に私の頭の中で確かなイメージを想い浮かべた場面を紹介しつつ、その場面から想起した懐かしい思…

  • 「対話」における対等性について~久し振りに哲学カフェへ参加して~

    転職する手続きで忙しい年度末年度始めを送っていたので哲学カフェへ参加できていなかったが、新しい職場環境や日々の生活リズムにも慣れて来て心身に余裕ができてきたので、3か月振りに参加した。5月9日(土)に開催された哲学カフェのテーマが、日頃から興味・関心の高かった<「対話」を哲学する>だったことも参加理由の一つである。私は、現職時に一方通行的な「伝達」に終始するような授業から、双方向的な「対話」を尊重するような授業へ転換しようと実践的な教育研究に取り組み、その発生的な学びの楽しさや喜びを子どもたちと一緒に味わってきた経験がある。それゆえ哲学カフェにおける「対話」に対しても、その意義を肯定的にとらえ…

  • 重要な登場人物である写実画家が考える「存在」の重みについて~塩田武士著『存在のすべてを』を読んで~

    4月下旬、私と二人の学校補助員は、私たちが勤務するN中学校の図書館で本を借りることができるか勤務時間後に訪問した。ちょうど図書整理をしていた図書館支援員のAさんがいたので、その旨を訊いてみた。すると、図書館用パソコンには生徒も教職員も貸し出し用の個別バーコードが入力されているから、本を貸し出しする際はそのバーコードで個人を特定し、本の裏面に貼っているバーコードを読み取れば記録することができるとのこと。そして、「興味のある本があれば、一度借りてみてはどうですか?」とのお誘いがあったので、早速私たちは図書館の書架に並んでいる本を見てみることにした。 私の目は、来場者がすぐ気付くような場所に設置され…

  • 運転免許返納の時期について考える~垣谷美雨著『うちの父が運転をやめません』を読んで~

    連日、高齢者による交通事故のニュースが流れている。ほとんどの事故原因は、アクセルとブレーキの踏み間違いである。高齢者は加齢に伴って起きる視野狭窄や運動神経の鈍さなどで事故につながりそうな事態に陥ると、その危険を回避しようと焦るあまり脚の位置感覚が麻痺してしまって、アクセルとブレーキの位置を勘違いしてしまうのだろう。また、ブレーキをかけようと思ったのに、反対にスピードを出してしまうという自分の意識とは反対の事態が起こり、頭の中が真っ白になってさらに焦ってしまいアクセルをブレーキと勘違いしたまま強く踏み込むことで、事態をより悪化させてしまうのだろう。もう古希を超えた年齢になった私にとって、このよう…

  • 新年度から「小中学校教育活動サポートチーム支援員」として勤務することになりました!!②

    4月2度目の週休日の12日(土)午前中、義母の3回忌の法事があった。義理の姉夫婦と私たち夫婦、二人の娘たちとそれぞれの一人息子(私たち夫婦にとっては孫たち)、そして義母と身の近い親戚3名の合計11名の参列だった。菩提寺の住職による読経の際には、小学校3年生になったばかりの初孫Hの神妙な態度に感心したり、保育園の年中児になったばかりの二人目の孫Mの無邪気な態度に気持ちが和んだりした。その日は二女とMが私たちの自宅に一泊し翌日13日(日)の15時頃まで居てくれたので、久し振りに一緒に過ごすことができた。 その一日目、私は自宅でMと一緒にじゃんけん遊びや砂場遊び、恐竜や動物のフィギア遊びなどをして楽…

  • 新年度から「小中学校教育活動サポートチーム支援員」として勤務することになりました!!①

    本年3月末をもって、私は松山市の会計年度任用職員として3年間9か月勤務した教育委員会学校教育課所属の特別支援教育指導員を退職した。その理由は、古希を迎えた年齢になって右耳が少し聴こえづらくなって教育相談業務に支障が起きてきたり、フルタイムで働くための体力に自信がもてなくなってきたりしたからである。しかし、様々な困難を抱えている学校現場に少しでも役立つ仕事をもう少しやりたいという強い思いが私にはあり、まだまだ足腰は丈夫だからパートタイムでなら働く自信があったので、昨年夏頃に愛媛県の会計年度任用職員である非常勤講師の登録手続きをしておいた。 すると、本年2月中旬に中予教育事務所の管理主事から「障害…

  • “現象学の倫理”って何?~村上靖彦著『客観性の落とし穴』から学ぶ~

    「先生の言っていることに客観的な妥当性はあるのですか?」 『客観性の落とし穴』(村上靖彦著)の著者は、医療現場や貧困地域の子育て支援の現場で行ってきたインタビューを題材として用いた大学1・2年生向けの授業で、学生から上述のような質問を受けることがあったらしい。ともすると、現代社会では「客観性」や「数値的エビデンス」は真理とみなされている。しかし、客観的なデータでなかったとしても意味がある事象はある。数値に過大な価値を見出していくと、社会はどうなっていくのだろうか。客観性だけに価値をおいた時には、一人一人の経験が顧みられなくなるのではないか。そのような思いが湧いたことが、本書執筆の動機だと著者は…

  • AIによる自動運転車は、高齢者を救うのか?~平松類著『老人はAI社会をどう生きるか』から学ぶ~

    年初めに「生成AIの利活用に関する講演会」に参加して以来、私の頭の中はAIに関連する様々な疑問が次々と浮かび、ぐるぐると回っている状態が続いている。『本心』(平野啓一郎著)という小説を読みながら「AIによるVF(バーチャルフィギア)は、生前の当人の“本心”を語ることができるのか?」と考えたり、『人工知能に哲学を教えたら』(岡本裕一朗著)を読みながら「暴走するAIに、どのような倫理を教えればいいのか?」と追究したり・・・。そして、古希を迎えて自分の自動車運転の技能の衰えを感じ始めた私は、AIによる自動運転車はどのレベルまで安全面で進んでいるのか気になってきて、最近は「私のような高齢者はAIによる…

  • 暴走するAIに、どのような倫理を教えたらいいの?~岡本裕一朗著『人工知能に哲学を教えたら』から学ぶ~

    前回の記事を綴った後、果たしてAIは本当に感情がないと言えるのだろうかと取り留めなく考えることがある。高機能を備えたAIと言えども所詮は計算機という機械なのだから、常識的に考えて人間のような感情をもつことはないであろう。では、AIが正義について倫理的に判断することはできるのか?これはできそうだが、倫理的な判断には人間の感情も無視できないからAIにはやはり無理なのかもしれない…。でも、最近の生成AIの機能は、私のもつ常識を超えるようなところまで高まっているから、「無理!」と断定するのは控えるべきかもしれないなあ。 このような思考を巡らせている中ふらっと訪れた紀伊国屋書店三越店で、私はこの問題意識…

  • AIのVF(ヴァーチャル・フィギア)の<母>は、生前の母が“自由死”を願っていた“本心”を語ることができるのか?~平野啓一郎著『本心』を読んで~

    分人主義という考え方を敷衍して描いた『マチネの終わりに』や『ある男』を読んできた私にとって、平野啓一郎氏の傑作長編小説『本心』はとても気になっていた作品である。また、私は日常生活における生成AIの利活用についても関心を高めており、AIの最新技術を生かしたAV(ヴァーチャル・フィギア)の<母>が登場する本作品に対してますます興味が湧いてきていた。既に映画化されて昨年11月は全国公開されているので、いずれはどのように映像化されているのか観てみたいと思っているが、まずは原作を読んでみたいという衝動に駆られて馴染みの古書店で本書を入手した。日々の隙間時間に読み継いだ読書だったので、読了するまでに約2週…

  • 「痛み」について考えました!~4回目の哲学カフェの概要と参加所感~

    6日(月)には教育委員会の仕事始め、8日(水)には学校の3学期始業式が始あり、気が付くともう正月半ばが過ぎてしまった。そのような中、皆で一緒に遊んだ元旦とは違って、3連休中の11日(土)は孫Hと、12日(日)・13日(月)は孫Mとそれぞれ別に遊ぶことができた。前日に高熱を出して病院で診察・治療をしてもらったおかげで体調が回復したHとは、我が家で室内ゲームをして遊んだ。また新居浜市から次女と一緒に帰省していたMとは、野外で一緒にパットゴルフをしたり、専用コースのある会場でストライダーの練習をしたりして遊んだ。二人の孫たちは、遊びを通して祖父母との触れ合いを楽しんでくれたようで、私たち夫婦も心が癒…

  • 生成AIが切り拓く教育の姿とは?~落合陽一著『生成AIが変える未来―加速するデジタルネイチャー革命―』に学ぶ~

    爽やかな晴天に恵まれた今年の元旦は、長女や次女の各家族が我が家に揃ってお節料理に舌鼓を打ったり、楽しいゲームに興じたりして、久し振りに賑やかで愉快な時間を過ごすことができた。2日は、孫Hと一緒に近くの公園へ自転車で出掛け、ロープを張り巡らせた遊具に登ったり縄跳び運動をしたりして、寒中でも少し汗ばむぐらいに身体を動かした。3日は、妻と二人で箱根駅伝のテレビ中継や懐かしい洋画を観たりして、のんびりと自宅で過ごすことができた。三が日は正月気分にどっぷりと浸っていたが、4日の土曜日は打って変わって松山市の教育会と教育研究協議会の共催で実施された「令和6年度 教育を語る会」へ参加して、「生成AIの活用で…

  • “新美南吉の孤独”を見据えて・・・~本岡類著『ごんぎつねの夢』を読んで~

    年の瀬が迫ってきた。歳のせいか気のせいか分からないが、時間が過ぎていくスピードが速くなったように感じる。また、これは完全に加齢の影響だと思うが、当ブログの記事をアップする回数も減ってきた。当ブログは、「人生・生き方」「教育・子育て」「健康・スポーツ」の各カテゴリーに関連する本を読んで得た雑学的な知識を基に、その内容の要約や私なりの所感等をエッセイ風に綴ることを趣旨としている。そのために読書の灯は細々と点し続けてしているのだが、内容を要約したり所感を思いついたりする認知能力が低下しているのかもしれない。ただし、最近の記事で言い訳のように書いている、文章を綴るための時間不足や体力不足が大いに影響し…

  • 「令和の日本型学校教育」の具体的実践のあり方とは?~奈須正裕著『個別最適な学びと協働的な学び』に学ぶ~

    私たち特別支援教育指導員が、教育相談の申請があった子どもの行動観察をしに学校現場へ出向くと、以前と比べて授業風景が様変わりしたように感じることがある。コロナ禍に伴う学校教育の緊急事態に対応して、経済産業省が主導していたGIGAスクール構想を前倒しにし、子どもたちに一人一台のタブレット端末が整備されたことがその要因である。近年、コンピュータを活用した情報教育が推進されていて、子どもたちはインターネットで検索しながら調べ学習をする経験を積み重ねていたので、教育界のこのような大きな潮流に対して柔軟に対応することができているように思う。むしろ教員側、特にコンピュータ操作を苦手にしている教員は大いに戸惑…

  • どうすれば「自由」な社会を作れるか?~苫野一徳著『「自由」はいかに可能か-社会構想のための哲学』から学ぶ②~

    前回の記事をアップしてから、できるだけ早く続きの記事を綴りたいと思いつつも、相変わらず勤務日の昼間は特別支援教育指導員の業務に追われて疲れ切ってしまうため、帰宅後にはまとまった執筆時間をなかなか確保できない。でも、何とか休日の隙間時間を活用して記事の続きを書こうと決意して、今、パソコンのキーボードを叩いている。今回は、本書で著者が主張している「自由」を実現するための「社会的条件」について簡潔に要約してみようと思うが、できる限り支離滅裂な文章だけにはしたくないので、時間的な空白を挟んでも文脈を意識しながら綴っていきたい。 まずは、前回の記事内容を簡単に振り返っておこう。著者は、「自由」の本質(共…

  • どうすれば「自由」を感じられるのか?~苫野一徳著『「自由」はいかに可能か-社会構想のための哲学』から学ぶ①~

    前回の記事をアップしてから、もう1か月経ってしまった。10月に入っても残暑厳しい日が続き、推理小説やエッセイなどの軽い本を読むのがやっとだった。そのせいか、記事を綴りたくなるような題材もなく、変わりない日常をただ過ごしてしまっていたが、最近になってやっと秋らしい気温になり、少し硬い本を読みたいなと思うようになった。そこで、ここ数年間積読状態にしてしまっていた本を思い出した。本ブログでも何度か著書を取り上げてきた教育学者で哲学者でもある苫野一徳氏の著した『「自由」はいかに可能か-社会構想のための哲学』(NHKブックス/2014年6月発刊)である。読み始めて数日で読了することができた。 つい最近、…

  • スケッチ・ミステリーの醍醐味を味わう!~雨穴著『変な絵』を読んで~

    ある家の間取りの「謎」の真相を追及していく雨穴著『変な家』という不動産ミステリーが面白がったので、不思議な間取りに関するミステリー第2弾『変な家2 11の間取り図』と、奇妙な図絵に関するスケッチ・ミステリー『変な絵』を読んでみた。前者は、全国の読者から筆者に届いた間取りの「変な家」の情報の中から、11軒に関する調査資料が収録されていて、一見それぞれの資料は無関係のようだが、実は一つのつながりが浮かび上がってくるという構成で、なかなか巧みな趣向のストーリー展開になっている。筆者の友人である設計士・栗原の推理が中核になっている最後の章の展開にも、深く頷いてしまった。 でも、私がそれ以上に興味をそそ…

  • <「遊び」を考える>というテーマで哲学対話をしました!~3回目の哲学カフェ参加所感~

    9月末でも真夏日の日が続き、日々の疲れがなかなか癒せないこともあり、当ブログの記事を綴る気力が乏しくなっている。でも、今月も私の心に残る様々な出来事があったので、せめてその中の一つでも取り上げてみようと思う。それは、今月23日(月)の午前中に松山市男女共同参画推進センター(通称;コムズ)で開催された、NPO法人みんなダイスキ松山冒険遊び場が主宰する哲学カフェに参加した体験である。 この哲学カフェは、毎月第2金曜日の18時半から始まる夜の部と、第4火曜日の9時半から始まる昼の部とがある。当日は「秋分の日」の振替休日だったこともあり、私は初めて昼の部に参加してみたのである。参加者は、私が今まで2回…

  • 家の間取りから想像することについて~雨穴著『変な家』を読んで~

    単行本の『変な家』(雨穴著)を読んだ。2か月ほど前に放映されたBSテレ東『あの本、読みました?』の「丸善 丸の内本店 小説《文庫本》売り上げランキングBEST10」コーナーで、読者層が下は7・8歳から上は80代までと幅広く、中には学校の朝読の時間にクラスの人が全員読んでいると編集担当者が語っていたのを覚えていて、いつか読んでみたいと思っていた。また、前々回の記事で私が小学生時代の夏休みに観た怪談映画について少し紹介したこともあり、普段はあまり読まないホラー小説にちょっと触手を伸ばしてみようと本書を手にした次第である。 本書は、編集担当者が著者のYouTubeでアップされていた<不動産ミステリー…

  • 子どもたちと「きらい」を哲学しました!~第2回「子ども哲学カフェ」体験記 ~

    今月27日(火)の午前9時半から約2時間、夏休み特別企画・第2回「子ども哲学カフェ」が職場の隣にあるコムズの4階創作室で開催され、私はボランティア・スタッフとして参加した。今回のテーマは<「きらい」を哲学する>だったが、参加した子どもたちは小学4年生から中学3年生までの合計6名。夜に開催した前回は4名だったが、今回は昼間だったからか少し増えていた。大人は主催者側5名(私も含めて)と保護者等5名の合計10名。今回も「子ども哲学カフェ」と銘打ちながらも大人も参加して、哲学対話をすることになった。 まず、主催しているNPO法人の代表者(ファシリテーターと同姓のYさん)が簡単なあいさつをし、続いてファ…

  • 小学生の夏休みの過ごし方の移り変わりについて~森浩美著『夏を拾いに』の内容に触れながら~

    夏休みも残り1週間ほどになった今月24日(土)、私たち夫婦は孫Hが所属しているクラブチームが出場しているサッカー大会を観戦しに出掛けた。会場は自宅から車で10分ほどの所にある市営の中央公園だったが、私たちが到着した11時半頃は気温が35℃くらいになっていた。熱中症警戒アラートが発令されている中で、子どもたちは汗びっしょりになりながら3面のコートの中で試合をしていた。Hは1試合目をもう終えていて、テントの中で友達とふざけながら休憩をしていた。11時40分から2試合目があるのだが、長女は午後から吹奏楽コンクールの役員の仕事があるので、そばにいてやることができないらしい。私たち夫婦は日陰になる場所に…

  • 「うそ」と「ほんとう」というテーマで哲学対話をしました!~「子ども哲学カフェ」初体験記~

    8月9日(金)、私は第2回学校生活支援員研修会の事務局員として松山市青少年センターで勤務した。参加者が多数になるので、午前と午後の各40分間ほど戸外で駐車場案内の仕事をした。猛暑の中だったので、全身から汗が噴き出して、熱中症のような症状になりそうになった。だから、研修会の時間には、冷房の効いた室内で水分を補給しつつ体調を整えるのが精一杯の勤務になった。また、教育委員会事務局へ帰庁してからも、頭がボーッとしたまま事務仕事をこなす状態だった。 そのような体調にもかかわらず、私は退庁後、簡単な夕食を取って職場の建物の隣にある松山市男女共同参画推進センター=コムズへと向かった。今夜は、以前に初参加した…

  • 散々だった7月を振り返ってみると・・・

    私は6月中旬から7月初旬に掛けて、通称「特6」(来年度、中学校へ就学する特別支援学級の6年生)の教育相談の業務に忙殺されていた。だから、7月6日(土)の夕方、現職中に愛媛大学教育学部附属小学校で一緒に勤務した仲間たちが集まった親睦会に久し振りに参加した時は、ホッとした気分に浸ることができ普段あまり飲まない赤ワインを調子よく飲み干してしまったが、その3日後に倦怠感を伴って発熱をし始めて以降の7月は散々なものになってしまった。 7月10日(水)の朝、体調が最悪の状態になり体温が38.3度まで上がったので、自宅近くの病院を受診すると何と!新型コロナウイルスに感染していると診断された。ほぼ1年前にも感…

  • 哲学カフェで「学び」の意味について対話をしました!~市井の哲学カフェ初体験記~

    6月も終わろうとしている。今月は1回しか記事をアップしていないが、私にとって心に残る経験を様々にしたので、せめてその中でも特に印象深かった記事をもう1本綴っておきたい。それは、もう2週間ほど前になるが、今月14日(金)の夜、私の職場の隣にあるコムズ4階の創作室を会場にして開催された哲学カフェ(NPO法人みんなダイスキ松山冒険遊び場主催で、テーマは「学ぶ」ことの意味)に参加した時のことである。市井の哲学カフェ初体験だったので、その時の様子と感想等についてぜひ綴ってみたい。 そもそも今回参加しようと思ったきっかけは、たまたま昼休みの時間にコムズの1階に設置している各種チラシコーナーをふらっと訪れた…

  • 30年間も意地で維持している古本屋の女店主の魅力とは?~田中美穂著『わたしの小さな古本屋―倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間―』から学ぶ~

    6月も中旬を迎えた頃から、私たち特別支援教育指導員は、次年度に中学校へ就学する特別支援学級に在籍している小学6年生に対する教育相談に追われて、超多忙な日々を過ごしている。そのせいか、私は自宅では気楽な気分で読むことができるエッセイ集を手にすることが多くなった。朝井リョウや村田沙耶香という30~40代の比較的若い作家の作品は、それぞれ独自性のある題材を取り上げ個性豊かな文体で綴られていて、「なるほどなあ。」とか「へーっ、そうなんだ。」とかと呟きながらページを捲ってしまっていた。私はもっとのんびりした気分に浸れそうな作品を求めて、職場の隣にあるコムズの図書コーナーで物色してみた。すると、古書が並ん…

  • 直木賞受賞作『何者』を読む上で参考になることを願って・・・~朝井リョウ著『何者』と『学生時代にやらなくていい20のこと』を読んで~

    私が読者登録しているブログ「対話と人と読書/別府フリースクールうかりゆハウス」の「第九十七回別府鉄輪朝読書ノ会6.30」の予告記事で、今回取り上げる課題図書が『何者』(朝井リョウ著)だということを知った。私もこの機会に読んでみようと、ずっと積読状態にしていた同書を書棚から取り出し、この一週間寝床の友とした。また、数日前に昼休みを利用して職場から近距離にある市立中央図書館へ行った時、本物語の題材の一つ「就活」に関連したエッセイ数篇が所収されている朝井氏の『学生時代にやらなくていい20のこと』(文庫版では『時をかけるゆとり』に改題)という本を見つけたので借り出し、ここ数日間の隙間時間に読んでみた。…

  • 金王朝よる専制国家「北朝鮮」への現実的な対応について~内田樹著『コモンの再生』から学ぶ~

    今月27日(月)の22時46分頃、テレビ画面が急に沖縄県を対象として避難を呼び掛けた「全国瞬時警報システム」(いわゆるJアラート)の画面に切り替わった。テレビ朝日の「報道ステーション」を観ていた時だった。私は「また、放送の中断かよ!」と声高に言ってしまっていた。というのは、その2時間ほど前にも、BSテレ東のシネマクラッシュで88歳のクリントイーストウッドが監督と主演の二刀流で制作した『運び屋』という映画を視聴していた時にも、物語終盤のいい場面で大雨による電波障害が原因だと思われる受信不能に見舞われていたのである。しかも、今回のJアラートはまたもや北朝鮮による弾道ミサイルらしきものが発射されたこ…

  • 再び現象学的な視座から「無意識」の本質について考える~竹田青嗣・山竹伸二著『フロイト思想を読む―無意識の哲学―』から学ぶ~

    これまで多くの哲学者は、現象学は「意識に現われているもの」だけしか認めないのだから、「意識に現れないもの=無意識」を対象にすることはできないと主張していた。そのため、現象学と精神分析は相容れない考え方だと見なされていた。実は私も、以前はそのようなとらえ方をしていたが、数年前に山竹伸二著『「本当の自分」の現象学』を読んで以来、「無意識」は意識に現われないものではなく、ある意味として意識に現われるものであるから、現象学で考えることも可能であることと認識したのである。そして、その際に学んだ内容について、当ブログの過去の記事(2022年7月16日付け)〈「本当の自分」の本質とは何なのか?〉の中で少し綴…

  • 若い頃に教育相談で援用したフロイトの精神分析の理論とは?~「100de名著」におけるフロイト著『夢判断』のテキストを読んで~

    今年のゴールデンウィーク前半は、我が家に泊まりに来ていた二女とその長男(孫M)と楽しく過ごすことができた。また、5月3日~6日の後半は、特に用事がなかったのでのんびりする時間が取れた。だから、前月に放映されたEテレ「100de名著」の4回分の番組録画を一度に視聴しながら、そのテキストを読み進めていくという恒例の自己学習を実践した。4月に取り上げられた名著は、精神分析の礎を築いたジークムント・フロイトが1900年に刊行した『夢判断』。それを丁寧に紐解き、易しく道案内をしてくれた講師は、京都大学教授の立木康介氏。NHKアナウンサーの安倍みちこ氏とタレントの伊集院光氏の司会進行による番組内容に集中し…

  • 古希を祝う会を兼ねて高校のクラス会をしました!

    1週間ほど前の4月21日(日)、古希を祝う会を兼ねて「松山商業高校学校第71回(昭和48年3月)卒業3年12組のクラス会」を、「道後温泉ふなや」という老舗旅館を会場にして開催した。前回のクラス会は還暦の年に行ったので、10年振りの開催になった。数年前からそろそろクラス会をやってはどうかという声があったらしいが、その頃はちょうどコロナ禍真っ最中の時期だったので収束するまで待とうということになっていた。そして、昨年5月8日から新型コロナウイルスが感染症法上「5類」に位置付けられたが、発起人の一人として私が参加した7月頃の話合いでは、まだ感染の危険性が高いのではないかと心配し、1年後には古希を迎える…

  • 平和は「訂正する力」によってつくられる!~東浩紀著『訂正する力』から学ぶ②~

    前回の記事では、『訂正する力』(東浩紀著)の前半内容(第1~2章)の中から私の心に深く刻まれたことをまとめ、それに対する私なりの所感を簡潔に綴ってみた。そして、次回は後半内容(第3~4章)についても綴ってみたいと書き添えておいたが、今回の記事はそれに応えるものである。ただし、中心は第4章の内容になりそうなので、読者の皆さんにはこの点ご容赦をお願いしたい。 <「喧噪のある国」を取り戻す>というタイトルの第4章は、「訂正する力」を使って日本の思想や文化を批判的に継承し、戦後日本の自画像をアップデートするための考え方や方法等について提案している。つまり、第1~3章までの「時事」と「理論」と「実存」の…

  • 今こそ「訂正する力」を蘇らせよう!~東浩紀著『訂正する力』から学ぶ①~

    ずっと気になっていた本である。それは、以前からその言論活動に注目していた評論家の東浩紀氏が上梓した朝日新書の『訂正する力』というタイトルの本である。昨年の11月頃から職場近くのデパート内に入っている紀伊国屋書店に平積みしているのは知っていたが、あの東氏の本なので気後れしてしまい、いざ読んでみようと思い立つことができなかったのである。ところが、先日、市立中央図書館から借りた同氏の『ゆるく考える』というエッセイ集を拾い読みしていて急に現在の思想について知りたくなり、新刊本の一つである本書のことを思い出して入手したという次第である。 本書の「はじめに」の冒頭において、筆者は日本にいま必要なのは「訂正…

  • 目を見張った孫たちの成長ぶり!~二人の孫の近況報告を兼ねて~

    3月中旬から4月中旬の週末の休日は、私的な行事や活動等で忙しく、ブログの記事を執筆する心身の余裕がなかった。そのため、ここ3週間ほど近く更新することができず、何となく焦りのような気持ちに襲われていた。そこで今回は、それらの行事や活動等における孫たちの様子を綴りながら、その成長ぶりを少し自慢してみたい。他人の不幸事には興味をもつが、他人の幸福事には見向きをしないのが世間の常のようだが、あえて私は自分が幸せだと実感していることを綴ろうと思う。 さて、最初に取り上げるのは3月16日(土)の土曜日の出来事。私たち夫婦は2月の誕生日で満7歳になった初孫Hと一緒に、約1年ぶりに「えひめこどもの城」へ遊びに…

  • “多様性”を尊重するって、軽々しく言えないかも…~朝井リョウ著『正欲』を読んで~

    『推し、燃ゆ』(宇佐見りん著)を読み、著者の瑞々しい感性に強い刺激を受けて以来、私は常に自分の意識を覚醒させて認識の再構成を図っていこうと、なるべく若い世代の作家の小説を意図的に選んで読むようにしている。そのような中で今回チャレンジしたのが、『正欲』(朝井リョウ著)である。本書は、朝井氏が自らの作家生活10周年を記念して著した長編小説で、第34回柴田錬三郎賞や第3回読者による文学賞等を受賞し、2022年本屋大賞にもノミネートされた作品である。累計発行部数が50万部を超えて、2023年には稲垣吾郎や新垣結衣等の豪華な俳優陣が共演して映画化もされ、衝撃的な問題作として評価を高めているらしい。 登場…

  • 「親和的な秩序」と「疎遠な秩序」をめぐる考察について~村瀬学著『理解のおくれの本質―子ども論と宇宙論の間で―』から学ぶ~

    若い頃にチャレンジしてみたものの、途中で頓挫してしまった本が数冊かある。その中の一冊に『初期心的現象の世界―理解のおくれの本質を考える―』(村瀬学著)があり、その続編に位置づく『理解のおくれの本質―子ども論と宇宙論の間で―』に至っては40年近くも積読状態になっていて、本の存在自体が私の意識外に置かれてしまっていた。ところが、65歳を過ぎてから松山市教育委員会の特別支援教育・指導員という職に就き、何らかの困り感をもつ子どもに対する適切な関わり方や支援の仕方等について担任の先生や保護者に助言するという立場になった私は、まず発達障害と言われる「自閉スペクトラム症」(ASD)や「注意欠如・多動性障害」…

  • 言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る探究の書!!~今井むつみ・秋田喜美著『言語の本質―ことばはどう生まれ、進化したか―』から学ぶ~

    探究による学びの過程をワクワクしながら追体験することができる本に出合った。『言語の本質―ことばはどう生まれ、進化したか―』(今井むつみ・秋田喜美著)である。著者の一人である今井氏は、言語と身体の関わり、特に音と意味のつながりが言語の発達にどのような役割を果たすのかという問題に興味を持ち、成人と乳児、幼児を対象に数多くの実験を行ってきた認知科学・発達心理学者。もう一人の秋田氏は、大学院生の時から一貫して、他言語との比較や言語理論を用いた考察により、オノマトペがいかに言語的な特徴を持つことばであるかを考えてきた言語学者。今井氏が実験をデザインする時にいつも頼りにしてきたのが、世界中のオノマトペ研究…

  • 文化政治としての哲学と「感情教育」による「連帯」の可能性について~「100分de名著」におけるリチャード・ローティ著『偶然性・アイロニー・連帯』のテキストから学ぶ③~

    今回は、いよいよ『偶然性・アイロニー・連帯』の3つ目のキーコンセプトである「連帯」について取り上げる。2月のEテレ「100分de名著」の放送やテキストでは2回分の内容になるので、講師の朱氏の解説を要約するためには、なりの力技が必要になる。私の力量では大変困難な作業になり、文脈が整わない記事になりそうなので、この点について読者の皆様には寛容な気持ちで受け止めて、各自で行間を埋めつつ読んでいただけたら幸いである。 前回、確認した「人間や社会は具体的な姿形をとったボキャブラリー」という本書の中心的なテーゼは、ことばづかいが変われば人間も変わるし、社会も変わるということを意味していた。これをローティは…

  • 「連帯」への希望をつなぐ「リベラル・アイロニスト」について~「100分de名著」におけるリチャード・ローティ著『偶然性・アイロニー・連帯』のテキストから学ぶ②~

    今回は、2月のEテレ「100分de名著」で取り上げられた『偶然性・アイロニー・連帯』の2つ目のキーコンセプトである「アイロニー」について、テキストの中で朱氏が解説している内容を私なりに大胆に要約しようと思う。特に「リベラル・アイロニスト」というあり方に関する内容が中心になるが、まずはローティの言う「アイロニー」という言葉の意味から入っていこう。 アロニーという言葉は一般的には「皮肉」「冷笑的」「斜に構えた」などというネガティブな意味合いを含んでいるが、ローティが言う「アイロニー」は18世紀末~19世紀はじめのドイツ・ロマン派の批評家シュレーゲルらが用いた「ロマンティク・アイロニー」という言葉に…

  • 「哲学が人類の会話を守る」というテーゼと「偶然性」について~「100分de名著」におけるリチャード・ローティ著『偶然性・アイロニー・連帯』のテキストから学ぶ①~

    早いもので今年も3月に入ってしまったが、2月のEテレ「100分de名著」で取り上げられたのは、『偶然性・アイロニー・連帯』(リチャード・ローティ著)だった。私は大変興味があったので先月初旬にテキストを購入し、休日には4回分に構成された解説を予習的に読みながら、各回の放送録画をその都度視聴していった。久し振りに「100分de名著」の放送を活用して自ら学ぶ経験をしてみて、改めて本番組の面白さと醍醐味を味わった。講師の大阪大学招へい教員で哲学者の朱喜哲(ちゅ・ひちょる)氏の要領を得た分かりやすい解説と、司会者の一人タレントの伊集院光氏の相変わらずの的確で具体性に富む解釈によって、私の知的欲求は十分に…

  • 私たちにとって「推しを推すこと」に代わることは何?~宇佐見りん著『推し、燃ゆ』を読んで~

    文学には、純文学と大衆文学との区別があると思うが、私は推理小説や時代小説等の大衆文学の作品が好きで、どちらかというと芸術性の高い純文学の作品は苦手である。その理由は、文章表現における芸術性というものがよく分からないからである。純文学の中の豊かで個性的で言葉遣いや独自性に満ちた比喩的な表現等に接しても、それらから著者が表現したい表象や心情等を読み取り解釈するという能力が乏しいのだと思う。だから、私は芥川賞より直木賞の受賞作品の方を好む傾向がある。芥川賞受賞作品は、よほど何かのきっかけがないと読まないのである。 そんな私が、今回、第164回(2020年度下半期)芥川賞受賞作品『推し、燃ゆ』(宇佐見…

  • 子育てに関する常識的な考えを鵜呑みにすることの愚かさを知る!~本田秀夫著『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』から学ぶ~

    私には、ともすると子育てに関する常識的な考えを十分に検討し直さないまま鵜呑みにしてしまう傾向があると思う。例えば、「あいさつが基本である。」「たくさんの言葉掛けをする方がよい。」「スマホ育児はよくない。」等々、どれも常識的な子育ての考えだと信じて疑わなかったが、それらに対して「そうでもないのではないか。」と疑問を呈している“目から鱗”の本に出合った。それが今回の記事で取り上げる『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』(本田秀夫著)である。 本田氏については、以前の記事でも何度か取り上げた本の著者なので、読者の皆さんもご存じの方が多いのではないだろうか。『発達障害―生きづらさを抱える少…

  • 「探究的な学び」の実践とその必要性について考える!~「愛媛教育研究大会」に参加して~

    2月2日(金)に年休を取って、愛媛大学教育学部附属幼稚園・小学校で開催された「第102回 愛媛教育研究大会」に参加した。午前中は、附属小学校で公開された授業の中から6年生のくすのき学習(総合的な学習の時間)の単元「共に燦めけ 道後の町とわたしたち」、1年生のぎんなん学習(生活科)の単元「いちほしたんけんたい!ふゆもたのしもう」、3年生の国語科の単元「深い読みから自己と対話する―成長とは―」の3つを参観させてもらった。また、午後からはくすのき学習の研究協議会へ参加し、その後は体育館で行われた講演「そもそも『探究』は何のため?~その原理と具体的な方法について~」(講師は熊本大学大学院教育学研究科・…

  • 「1980年代まで」に私が影響を受けた「思想」について少し振り返る・・・~佐々木敦著『増補新版 ニッポンの思想』に触発されて~

    1983年9月、最先端の哲学を扱った高度な内容の『構造と力―記号論を超えて―』(浅田彰著)という単行本が勁草書房という出版社から刊行され、何と15万部を超える大ベストセラーになった。それを契機にして「ニュー・アカデミズム」(略称「ニューアカ」)現象が起きて、世の中に一大センセーションを巻き起こした訳だが、この『構造と力』が初版から約40年の歳月を経て、最近やっと文庫化(中公文庫)されたのである。2020年代の混迷する世界を理解する上で今なお新しさを失わないその「思想」を、多くの市井の人々にも知ってもらいたいという思いからであろう。 1983年当時、私は30歳前の年齢で、愛媛大学教育学部附属小学…

  • 私の中にある無意識の「エイジズム」(年齢差別)について~「100de名著」におけるボーヴォワール著『老い』のテキストから学ぶ~

    1月6日(土)の午前中、松山市教育会と松山市教育研究協議会の共催によって実施された「令和5年度 教育を語る会」に私は参加した。内容は、愛媛県教育支援センターの坪田朋也指導主事が「メタバース(仮想空間)上の学びの場による児童・生徒への支援」という演題で行った講演会だった。愛媛県教育委員会がインターネット上のメタバースを活用して不登校生が学べる環境を新たに整備した本年度事業に関する、今までの具体的な取組内容をライブ映像も加えて紹介するものだった。学校だけでなくフリースクールなどの他の教育機関とのつながりもない、完全にひきこもっている子どもたちが、他者や社会とつながるための最初の一歩になってほしいと…

  • 「コンヴィヴィアル」な老いの生き方とは?・・・~岡本裕一朗著『世界の哲学者が悩んできた「老い」の正解』から学ぶ~

    喪中で迎えた今年の元日は例年とは違い、華やかなお節料理が食卓に並ぶでもなく、束になった年賀状が郵便受けに入ることもなかった。恒例行事が中止になったような一抹の寂しさを隠し切れなかったので、全品20%割引のウルトラセール中のブックオフへ行ってみることにした。妻から以前に依頼されていた医学関係の実用書と自分好みの哲学や言語学関係の新書を数冊購入して、私はちょっといい気分を味わうことができた。帰宅後に、それらの書籍をどの書棚に入れるか思案しながら何となく書棚に並ぶ本の整理をしていると、年末に入手していた『世界の哲学者が悩んできた「老い」の正解』(岡本裕一朗著)の背表紙が目に入った。「最近、<〇〇の正…

  • 人が“断捨離”できない理由について考える~垣谷美雨著『あなたの人生、片づけます』を読んで~

    いよいよ年の瀬が迫ってきた。この時期になると、我が家でも年末の大掃除、いや小掃除をする。私の分担は、室内の窓やドアの桟の埃を拭き取ったり、玄関周りの掃き掃除や玄関ドアの拭き掃除をしたりして、お正月のお飾りを付けることなのだが、今年は義母が亡くなったのでお飾りはしない。だから、今日の日中にやってしまった。年末の大掃除と言えば、26日(火)の夜、たまたまBS朝日テレビの「ウチ、“断捨離”しました!傑作選 年末スッキリしましょう!スペシャル」を観た。内容は、年末大掃除の参考にしたい回をリピートする放送だった。私には不必要だとしか思うような物が捨てられない人の心について考える機会になった。 そんなこと…

  • 哲学対話で「探究による学び」を探究しました!~「第7回愛媛の探究をつくる会」より~

    12月15日(金)18:30~20:00、愛媛大学教育学部附属小学校の1年教室で、「第7回愛媛の探究をつくる会」が開催された。今回は、『「探究による学び」を探究しよう』というテーマで、私がファシリテーターになって哲学対話をするという企画であった。参加者は、愛媛大学教育学部教授1名、愛媛大学教育学部附属小学校教諭3名、愛媛大学教職大学院生4名(内1名は記録者)、松山大学の学生3名だったので、私を含めて12名。いつもよりは少ない参加者数だったが、本会で初めての哲学対話だったので、気軽に安心して話すことができる環境であるという点で結果的に適当な人数だった。 高校の教員を目指しているという松山大学の学…

  • 「こども哲学」と発達障害の子との相性について~川辺洋平著『自信がもてる子が育つこども哲学―“考える力”を自然に引き出す―』から学ぶ~

    私の職場の隣には市の男女共同参画推進センターの建物があり、その2階にちょっとした図書コーナーがある。昼休みの時間にたまにそこを訪れるのだが、先日ちょっと興味を惹く本を見つけた。それが、今回の記事で取り上げる『自信がもてる子が育つこども哲学―“考える力”を自然に引き出す―』(川辺洋平著)という、私が以前から実践してみたいし考えていた「こども哲学」に関する本である。本書の1~5章までは、親子で「こども哲学」(3歳から小学生を対象)という取組にチャレンジした方々に、著者がお話を聞いてまとめている。さらに6章には、本ブログの以前の記事でも取り上げた『ゼロからはじめる 哲学対話』の編著者の河野哲也氏との…

  • 「心的なもの」という概念の住処とは?~古田徹也著『このゲームにはゴールがない―ひとの心の哲学―』から学ぶ~

    幼稚園に通う3歳半になる娘に、焼き海苔を敷いて巻く卵焼きを得意になって作り弁当に入れていた著者が、何気ない会話の中で実はその卵焼きは娘の好みではないという本音を知りショックを受ける。しかし、著者はそれ以上に娘がその本音を隠そうとしたことに驚いた。それまでの娘は著者にとって裏表のない分かりやすい存在であったから、娘が自分への本当の気持ちを内面に押しとどめ、嘘をつけるようになっていたことに対して、我が子の成長の証と喜ぶとともに純粋で無垢な時間はもう過ぎ去ってしまったという多少の複雑な感慨を覚えたという。そして、このことを「彼女は私にとって遠い存在になり、それによって、むしろ以前よりも近い存在になっ…

  • 弱い心を癒してくれそうな「珈琲屋」の熱いコーヒーを飲んでみたいなあ!~池永陽著『珈琲屋の人々―どん底の女神/心もよう―』を読んで~

    つい2週間ほど前まで夏日が続いていたと思っていたら、最近は最低気温が10℃を下回る日があり、あっという間に晩夏から晩秋、いや冬になってしまった感じがする。もうこの時期なので、当然と言えば当然なのだが・・・。日本の四季は本当になくなってしまうのだろうか。我が国に長く伝えられてきた季節に対応した繊細な感性や情緒性は、衰えていってしまうのだろうか。俳句の季語は、どのように変化していくのだろうか。近年の地球温暖化に伴う異常気象の影響は、日本人の精神性や文化の在り方まで根本的に変化させるのかもしれない…などと、取り留めのない思いを転がしてしまう。 結局“読書の秋”を味わうことがなかった今週初め、私は気軽…

  • 「探究」に関する講演を拝聴しての所感あれこれ~藤原さと著『協働する探究のデザイン―社会をよりよくする学びをつくる―』を参考にして~

    11月19日(日)の午前中、愛媛大学教育学部2号館の4階多目的講義室を会場にして開催されたSDGs研修会の講演「協働する探究のデザイン―すべての教師が大切にされる探究―」を拝聴することができた。講師は一般社団法人「こたえのない学校」代表理事で、『協働する探究のデザイン―社会をよりよくする学びをつくる―』の著者である藤原さと氏。私は今回の研修会の案内チラシを初めて見た時に、「探究」という学びに関する基礎的な知識や具体的な実践例を知りたくなった。そこで、早速、本書を購入して目を通してみた。すると、さらに「探究」という学びについての興味がますます沸き、初めて愛媛県へ来るという著者の講演を直接聞いてみ…

  • 江戸時代の村医者の矜持に共感!~青山文平著『本売る日々』を読んで~

    11月に入って、喉の痛みや鼻づまり、肩こりなどの花粉症のような症状が起きて、ついには声が出なくなってしまったので、2日(金)の午前中に年次有給休暇を取ってかかりつけの耳鼻咽喉科で診てもらうと、何と「風邪だ。」と言われた。この2~30年ほど風邪を引いた記憶がなかったので、「えっ、本当?」と正直思った。でも、よくよく考えてみると、10月最後の土・日に我が家を訪れていた二女たちは微熱を伴う体調不良の状態だったので、もしかしたらその際に何らかの風邪の原因となる細菌かウイルスが感染したのかもしれない。 ともかくも、私は11月3日(金)~5日(日)の3連休中、医師から処方された薬を正しく服用しながら、不要…

  • やっと教員対象の哲学対話にチャレンジできるぞ!~河野哲也[編]『ゼロからはじめる 哲学対話』から学ぶ~

    やっと秋の気配を実感するようになったと思っていたら、10月も下旬になっていた。仕事関係では初旬から「就学児を対象とした秋の教育相談」の運営を行う事務局の業務に追われたり、自身が相談担当をして審議資料を作成したり、中旬には「特別支援学級に在籍する子ども対象の体育大会」の準備や当日の運営等の業務もあったりした。また、その間にも各学校への訪問相談をする業務をこなすなど、何かと慌ただしい日々が続いていた。 また、私的にも孫Hの「秋祭りの提灯行列」や「小学校の運動会」等の行事に参加したり、新居浜市の住んでいる孫Mの所へ行って一緒に遊んだり、また、市教育会の地区支部長の立場で来賓として校区中学校の体育大会…

  • 「サバァン症候群」と「ギフテッド」について考える~柚月裕子著『月下のサクラ』を読んで~

    9月下旬になったのに、まだ真夏日が続いている。朝晩は少しの冷気を含んだ空気になり、微かな秋の気配を感じるようにはなっているが、それでも日中は残暑が厳しい。日本の四季は、本当に夏と冬の二季になってしまうのか。季節の移ろいを楽しむ気分に浸ることができない。また、この老齢の身には連日の残暑は身体にも響いてくる。ましてや先週、先々週の勤務は、週5日間のフルタイムだけではなく、時間外勤務時間も多く激務だった。午前中は何らかの「困り感」をもつ子どもたちの行動観察をするために授業参観に出掛け、午後は夕方から担任や保護者との教育相談のために学校訪問をするという毎日だった。本当に心身共に疲労困憊! また、16日…

  • 夫が妻を介護する老老介護について考える~上野千鶴子著『男おひとりさま道』から学ぶ~

    前回の記事では、『妻の終活』(坂井希久子著)という小説に触発されて、「男おひとりさまの老後を見据えて」の対応について自分事としてとらえ考えたことを綴ってみた。その中で、今後自分がおひとりさまになった時を想定してみると、今から精神的かつ生活的自立を図っておくことの大切さをしみじみ痛感した。また、まだまだ様々な対応についても考える必要があると思い、そのために参考になりそうな本を探し始めた。すると、上野千鶴子氏のベストセラー『おひとりさまの老後』の続編ともいうべき、その名も『男おひとりさま道』(上野著)という本を見つけた。前作と比べて、内容的にはほとんど重複するところはない。両者の出版のあいだにある…

  • 男のおひとりさまの老後を見据えて・・・~坂井希久子著『妻の終活』を読んで~

    「女性の方が平均寿命は長いから、普通は旦那の方が先に逝くんじゃないか。」 「でも、先々のことは神様だけしか分からないから、逆の場合もあるよ。その時は男のおひとりさまの老後になるけど、大丈夫なの?」 亡き義母の遺産相続の手続きをどうするか、義姉夫婦と私たち夫婦の4人で話し合った時の中で交わした会話の一部である。妻と義姉は、今までに何度か無料法律相談の会場へ足を運んでいる。相談の中で担当者から、遺産相続の手続きを司法書士や弁護士に依頼すると、結構な額の手続き費用が掛かると言われたそうである。しかし、自分たちで役所に出掛けて手続きをするのも大変なようなので、これからどのように対応しようかと話し合った…

  • 腎臓の機能低下を防ぐにはどうしたらいいの?~高取優二著『人は腎臓から老いていく』から学ぶ~

    7月20日(木)に当市の医師会健診センターで受けた「日帰り人間ドック」の結果報告書が、8月3日(木)に自宅へ送付されてきた。早速、総合判定を見てみると、何と「5 精密検査を必要とします。」に星印が付いているではないか!一体、何の検査項目が引っ掛かったのだろうか?!私は慌てて検査項目を上から順に目で追った。すると、今までの健診で一度も引っ掛かったことがなかった「尿・腎」の項目に、「5 精密検査を必要とします。」と書かれていた。 私は次にドキドキしながら「指示内容」と「検査項目の数値」等を見てみた。引っ掛かっていたのは、まず「尿蛋白」と「尿潜血」で陽性の判定。また、「尿素窒素(BUN)」で「22.…

  • 後悔しない、真っ当な人生の送り方とは?~勢古浩爾著『人生の正解』から学ぶ~

    前回の記事でとり上げた『ある男』(平野啓一郎著)の内容は、凄惨で不幸な自分の過去を捨てて、全く別人の人生を生き直そうとした「ある男」の身元調査の過程が謎解きになるという、ミステリー仕立てのストーリーだった。フィクションとは言え、「ある男」が置かれた情況が我が身に起こったとしたら耐えられないものだったので、「ある男」が止むを得ず選んだ行動には共感するところがあった。しかし、私たちは自分の人生がどんなに耐え難く悲惨なものであったとしても、その中で生きていくほかないのが現実であろう。だとしたら、自分なりに後悔しない、真っ当な人生を送るためには、どのような在り方をしていけばいいのだろうか。 そのような…

  • 愛に過去は必要なのだろうか?~平野啓一郎著『ある男』を読んで~

    暑い!本当に暑い!!四国地方の梅雨明けは例年より少し遅かったが、その前から酷暑の日々が続いていた。そのため、私は早くも夏バテ気味になり、当ブログの更新もままならない情況だった。書斎のクーラーが故障していて、パソコンでキーボードを打つなんてことは地獄の所業なのである。もちろん冷房の効いたリビングにパソコンを持ち込めば、涼しい環境で記事を綴ることはできる。しかし、仕事場から帰宅したらもう汗びっしょり。夕食を取りながらビールを一缶飲み干すと、なかなかパソコンに向かう気にはならないという状況に陥っていた。だから、今日は約半月ぶりの記事である。月が変わり8月になったので、気分を一新し衰えた気力をなんとか…

  • 誰でも「普通」ではない面があるのではないの?~村田沙耶香著『コンビニ人間』を読んで~

    私は時々、昼休みの時間を利用して職場近くにある市立中央図書館へ足を運ぶことがある。つい先日も暇つぶし程度の感覚で訪れ、特に当てもなく小説のコーナーをうろついていた。すると、私の目が、黄色地に黒の字で書かれたある本のタイトルに惹き付けられた。以前、私が初めて参加した紹介型の「読書会」で、やはりその時に初参加していた20~30代くらいの女性が紹介していた『コンビニ人間』(村田沙耶香著)である。第155回(2016年)芥川龍之介賞・受賞作。翻訳本を含めて全世界発行部数は累計100万部を突破した作品である。 当時のテレビ・ニュースで著者の若い女性が受賞の喜びをコメントしていた映像が、私の脳裏に微かに残…

  • 人と人との関係性は発生的に変化していくのがよく分かる物語!~砂原浩太朗著『高瀬庄左衛門御留書』を読んで~

    年に何回か「時代小説が読みたい!」という思いに心が囚われて、古書店の時代小説の棚にどうしても足が向いてしまう時がある。それが6月下旬だった。以前に新刊本が出た時に、「面白そうだな。」と思って気に留めただけの時代小説の単行本を、今回二冊購入した。私の好きな作家の青山文平氏(2016年、『つまをめとらば』で第156回直木三十五賞を受賞)の著作『泳ぐ者』と、私にとっては初めての出会いになった作家の砂原浩太朗氏の著作『高瀬庄左衛門御留書』(第134回山本周五郎賞・候補作、第165回直木三十五賞・候補作!)である。 『泳ぐ者』は、過去の当ブログで取り上げた『半席』の続編になる。今回も、御家人から旗本に出…

  • 「読む」ことについて考える~高橋源一郎著『「読む」って、どんなこと?』から学ぶ~

    先日の日曜日、車で約1時間半の場所に住んでいる二女とその長男M(私たち夫婦にとって二人目の孫)を訪れた。父親は、市役所の秘書課勤務なので日曜日でも出勤していて不在。Mとは久し振りの再会だったが、すぐ私たちに甘えてくれた。まだ2歳4か月なのだ。でも、身の回りの物や色等の名前を言うことができ、簡単な会話なら言葉でのコミュニケーションもできて、よくおしゃべりをするようになった。また、絵本の読み聞かせをすると、興味を示してじっと聞いている。平仮名やアルファベットなどの文字にも少し関心を示すようになっていて、もうすぐ「読む」ことができるのではないかと、その成長ぶりに驚くばかりである。 「成長」と言えば、…

  • 二つの〈良心〉が和解(相互承認)することができた理由とは?~西研著『ヘーゲル・大人のなりかた』から学ぶ~

    前回の記事で、5月のNHKのEテレ番組「100de名著」で取り上げられたヘーゲルの『精神現象学』で述べられている「精神」の成長過程を、講師の斎藤幸平氏のテキストを参考にして素描した。そして、「精神」の最終的な到達点である<良心>の和解(相互承認)、つまり「絶態精神」や「絶対知」についても簡単に触れた。しかし、二つの〈良心〉が和解(相互承認)するプロセスについて触れる余裕がなく、その内実を分かりやすくまとめることができなかった。 私はこのことが気になっていて、次の記事では二つの〈良心〉が和解(相互承認)する過程について綴ってみたいと思っていた。そのような面持ちの中、確か昔読んだ本の中でこの点につ…

  • 分断を乗り越える思想とは?~「100de名著」におけるヘーゲル著『精神現象学』のテキストから学ぶ~

    四国地方はすでに梅雨入りし、カレンダーも6月のページになってしまったが、今日は先月放映されたEテレの「100de名著」の話題を取り上げよう。5月に取り上げられた名著は、「近代哲学の完成者」とも称されるゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリッヒ・ヘーゲルの『精神現象学』であった。極めて難解な哲学書として有名であり、読破した人はほとんどいないのではないかとも言われている書である。もちろん私などには手が出る哲学書ではないが、今までにヘーゲル哲学について触れた哲学関連の本を何冊か読んだことがあったので、ちょっとした興味をもった。また、講師が「100de名著」で以前にカール・マルクスの『資本論』を取り上げた…

  • 様々な刺激を受けた初参加の読書会!~『読書会入門―人が本で交わる場所―』に触発されて~

    随分前になるが、『読書会入門―人が本で交わる場所―』(山本多津也著)を読み、著者が「読書会に慣れ親しむことで、同じでなくてはならない、同じ言葉しか使えないといった強烈な同調圧力も軽減されるのではないか」という理由で読書会を学校の授業に取り入れてほしいと提案していた箇所に共感を覚えたことがあった。つまり、同じ一冊の本を読んでも、10人いれば10通りの読み方があることに気付くことができ、人間の本来の多様性を実感することができる場が、読書会である。 私は、機会があれば読書会に参加してみたいと思っていたが、コロナ禍を理由に断念していた。ところが、今月初旬に新型コロナウイルスが感染症法上、2類相当から5…

  • 人間をトータルにみるための視点について~榊原哲也著『医療ケアを問いなおす―患者をトータルにみることの現象学―』から学ぶ~

    書店で『医療ケアを問いなおす―患者をトータルにみることの現象学―』(榊原哲也著)という書名を見た時、私はサブタイトルの「トータルにみる」と「現象学」という言葉に強く惹かれた。その理由の一つは、私が現職中に子どもの問題行動を理解する視座として、「子どもをトータルにみる」という言葉をよく使っていたからである。また、もう一つの理由は、そのためには「現象学」という哲学的アプローチが有効ではないかと考えていたからである。 本書は、そもそも病いということはどういうことか、病いを患う人をケアするとはどういうことなのか、「現象学」という哲学の視点から改めて考えてみた上で、「医療ケア」を見つめ直していこうという…

  • コロナ禍で見失っていた哲学的な問いとは?~國分功一郎著『目的への抵抗 シリーズ哲学講話』から学ぶ~

    先日、久し振りにジュンク堂書店三越店へ行き平台に置かれている本たちを何気なく見ていると、帯の「自由は、目的を超える。『暇と退屈の倫理学』がより深化。東京大学での講話を収録!」という言葉が目に飛び込んできて、止むに止まれぬような気分になり『目的への抵抗 シリーズ哲学講話』(國分功一郎著)を購入した。以前、國分氏の『暇と退屈の倫理学』を読んで、あまりにも面白かったので当ブログの記事において10回連続で、各章の内容概要や簡単な所感を綴ったことを思い出し、あの時に味わった知的興奮が蘇ってきそうな予感が沸いてきたのである。 本書は、第一部「哲学の役割―コロナ危機と民主主義」と第二部「不要不急と民主主義―…

  • 勉強とはこれまでの自分の自己破壊である!~千葉雅也著『勉強の哲学~来るべきバカのために 増補版~』から学ぶ~

    今年のゴールデンウィークを9連休にするために、5月1日(月)と2日(火)に年次有給休暇を取った。ただし、4月29日(土)~30日(日)に二女が趣味でやっているフラダンスの発表会に出演するために、孫Mと共にやって来て一泊して帰ったので、ゆっくりと休養という訳にはならなかった。でも、久し振りにMと一緒に遊んでやることができたので、充実した時間を過ごすことができた。今年2月に満2歳の誕生日を迎えたばかりのMだが、とてもおしゃべりが上手になっており、ほとんど日常的なコミュニケーションには困らないほど語彙も増えていた。歌やダンス、模倣遊びなども自然にするようになり、遊びの相手をしていても飽きることがなか…

  • 「イメージができない子」に対する支援のあり方について~岡田尊司著『発達障害「グレーゾーン」―その正しい理解と克服法―』から学ぶ』~

    4月中の勤務内容はまだほとんどが「研修」なので、今まで気になっていたことについて考えを深めてみようと思い、最近購入した『発達障害「グレーゾーン」―その正しい理解と克服法―』から学ぶ』(岡田尊司著)を読み進めた。本書は、発達障害の徴候はあるが診断は下りない「グレーゾーン」の人が、時には診断が下りている人よりも深刻な事態に陥っており生きづらくなっている実態を報告し、その正体と対策について分かりやすく解説している。私が気になっていたのは、今まで教育相談を受けた子どもの「困り感」の中で今一つ支援内容がすっきりとしていなかった「イメージができない」という特性についてなのだが、本書には「グレーゾーン」の人…

  • 生前の義母との思い出、あれこれ…

    4月12日(水)の午後11時47分、義母が急性心臓病で亡くなった。享年94歳。 その週の日曜日に、私たち夫婦は義母とお弁当やおはぎを一緒に食べようと実家を訪れたが、義母は食欲がなく、おはぎをほんの少し食べただけでお弁当は口にしなかった。次の日も食べ物を口にしない状態が続いたので、火曜日に義姉と妻は義母を掛かりつけの病院へ連れて行き診察してもらったが、詳しい検査が必要だからと近くの総合病院を紹介してもらった。そこで検査を受けた後で主治医から「炎症反応値が高くなっているが、その原因ははっきりしない。取り敢えず点滴を打ち様子を見てみよう。」と言われたそうである。点滴のお陰か義母は火曜日には食欲が少し…

  • 「感覚過敏」と「感覚鈍麻」って、同居するの!?~井出正和著『発達障害の人には世界がどう見えるのか』から学ぶ~

    3月末~4月上旬に掛けて、長女たちは新しく購入したマンションへ引っ越しをした。私たち夫婦は、土日はもとより平日の夕方などを活用してその手伝いをしていたので、何かと慌ただしい私生活を送っていた。また、公的にも年度末の人事異動による転任者を送る諸行事や、新任者を歓迎するための諸準備に余念のない日々を過ごしていた。そのような中で新年度が始まり、今日は職場で新任者の方々との新しい出会いがあった。私たち特別支援教育担当の部署では、指導主事1名と指導員2名が新たに加わり、指導主事3名と指導員7名の計10名の態勢が整った。「このメンバーで本年度の担当業務をよりよく遂行していくのだ。」と、年甲斐もなく気分が高…

  • 「いいね」によって束ねられる健常発達者の危うさ!~兼本浩祐著『普通という異常―健常発達という病―』から学ぶ~

    3月も中旬を過ぎると、ほとんど各学校からの教育相談業務はなくなり、私たち特別支援教育指導員の仕事は開店休業状態になる。こんな時は、自分の課題意識に即した特別支援教育関連の本を読んで研修をしようと、私は少し気合を入れて読む必要があると思っていた新書を購入した。以前に職場近くの大型デパート内にある紀伊国屋書店で目にして、パラパラとページを捲ると内容的にちょっと難しそうだったので、その時は買うのを止めた『普通という異常―健常発達という病―』(兼本浩祐著)という新書である。 <後書き>の中で、著者の愛知医科大学医学部精神科講座教授の兼本氏は、本書を執筆中に亡くなった木村敏氏と祖父江逸郎氏という二人の大…

  • 「主体的・対話的で深い学び」の視点で授業改善を図ることの妥当性は?~小針誠著『アクティブラーニング』から学ぶ~

    前回の記事で、2020年度から小学校で全面実施となった新学習指導要領で謳われている「主体的・対話的で深い学び」(「アクティブラーニング」のこと)を、私は無意識に「エセ演繹型思考」によって受容していたことを反省し、意識的に「帰納型思考」を駆使することを通してもう一度とらえ直す必要があると述べた。そして、そのためにこれから具体的にどのような作業をすべきかを考えなければならないとも綴った。 そのような課題意識を抱きつつ薄い霧の中を彷徨っていた私にとって、その霧を少しは吹き飛ばしてくれそうな本と出合う好機が訪れた。つい先日、いつもの古書店へ出掛けて行き、私の課題解決に役立ちそうな本を物色していると、現…

  • エセ演繹型思考に基づく文科省の教育改革の問題点とは?~苅谷剛彦著『コロナ後の教育へ―オックスフォードからの提言―』から学ぶ~

    全国の小学校は2020年度から新学習指導要領を全面実施する予定だったが、政府が3月から5月まで新型コロナウイルスによる感染症対策の一つとして各学校の全国一斉休校措置を取ったために、思わぬ事態に陥り全面実施どころではなくなってしまった。特に、新学習指導要領で謳われていた「主体的・対話的で深い学び」(「アクティブ・ラーニング」のこと)を視点とした授業改善への気勢がそがれてしまう結果となった。だからという訳ではないが、私が2021年7月より特別支援教育指導員として各学校を訪問して参観させていただいた授業の多くは、旧態依然とした授業展開であった。 ところが、従来の授業風景とは全く違う場面と出合うことが…

  • 「やりたいことをやりましょう」は〈奴隷の道徳〉なの?!~古川雄嗣著『大人の道徳―西洋近代思想を問い直す―』から学ぶ~

    先月10日(金)の「愛媛の探究をつくる会」が終わった後、附属小学校の道徳科を研究している先生と「道徳科教育の在り方」について少し意見を交わすことができた。主に道徳科と他教科等との合科的・関連的な指導を構想するカリキュラム・マネージメントの大切さについて、共感的な対話ができたことが印象に残っている。また、熊本大学の苫野一徳氏が主張している「自由の相互承認」をねらいとする「道徳科教育の在り方」に関して少し話題にしたことも記憶している。 そのような経験をきっかけにして、私はここのところずっと「道徳科教育の在り方」に関する原理的なことを考えていた。そのような中、私に改めて「学校教育においてなぜ道徳が必…

  • 久し振りに学び合う楽しさを体験した!②~「愛媛の探究をつくる会」に参加して~

    前回の記事で、2月3日(金)に開催された第101回愛媛教育研究大会において、体育科の公開授業を参観したり研究協議会へ参加したりした内容の概要と簡単な所感を綴った。実は、その大会当日にわずか10分間ほどだったが、私は1年生の「ぎんなん学習」(生活科と特別活動等を統合して運用している附属小独自の領域名)の公開授業も参観していた。単元名は「おもい出いっぱい キラわく じぶんたんけん」で、本時(6/14時)のテーマは「『じぶんたんけん』で見つけた『じぶんのせいちょう』をつたえよう」だった。 私は午後の研究協議会は体育科の方へ参加したので、当然「ぎんなん学習」の方へは参加できなかった。しかし、「ぎんなん…

  • 久し振りに学び合う楽しさを体験した!①~「愛媛教育研究大会」に参加して~

    2月3日(金)に開催された第101回愛媛教育研究大会(幼稚園・小学校の部)へ参加させてもらった。新型コロナウイルスの感染拡大のために、この2年間はオンラインでの開催だったので、対面での開催は3年振りである。私は午前中2つの体育科の公開授業を参観し、午後からは体育科の研究協議会に参加したので、今回はそれぞれの内容の概要と簡単な所感をまとめてみたい。 1年生の体育科「つながるベースボール~投げて走ってあつまって~」の公開授業は、1チーム4人で攻撃が一巡したら攻守交替をして3回まで、ボールを打つのではなく投げる、攻めは投げる人以外は塁いて満塁の状態で攻撃し一人ホームインで1点、守りは捕球者とその他の…

  • 思春期のADHD児に対する支援について~小栗正幸著『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』から学ぶ~

    今年も早や2月を迎え、本年度は後2か月ほどで終わる。本年度の勤務状況について振り返るにはまだ早いかもしれないが、特別支援教育指導員として昨年度とは少し内容が異なる教育相談を担当することがあったので、今回はそのことについて綴ってみようと思う。 その教育相談というのは、中学1年生のADHD(注意欠如・多動症)児に関するものである。一つ目の事例は、昨年の4月、入学式を終えてまだ2週間ほどしか経っていない時期に、市内のある中学校から「1年の男子生徒2名(A君とB君)が授業中に立ち歩いたり、 教室を飛び出したり、高所に登るなど危険な行為を繰り返したりする。また、注意をしても反抗的な言動を取ってしまうため…

  • 「考える」って、どうすることなの?どのようにすればできるの?~安野光雅著『かんがえる子ども』と野矢茂樹編著『子どもの難問~哲学者の先生、教えてください!』を読んで~

    今の職場の隣に、半年間勤務して約2年前に退職した職場である当市の男女共同参画推進センターがあり、その2階に図書コーナーが設置されている。主には男女共同参画推進に関する本を所蔵しているが、小説やエッセー、子育て本等も少しは並んでいるので、勤務していた時には昼休みの時間を利用して数冊の本を借りることもあった。その懐かしい図書コーナーに、今月13日(金)の昼休みに久し振りに足を運んでみた。 しばらく何気なく見回っていると、子育て本の書棚の中に面白そうな本を見つけた。一冊は、私の好きな絵本作家の安野光雅氏のエッセー『かんがえる子ども』。もう一冊は、当ブログの前々回の記事で取り上げた『難しい本を読むため…

  • 久し振りに「シャーデンフロイデ」を投影する池井戸作品の痛快さを味わった!~池井戸潤著『半沢直樹~アルルカンと道化師』を読んで~

    以前に、『「恨み」という感情をコントロールするには?…』(2020.4.12付)という記事の中で、「正しい恨みの晴らし方」の一つに「シャーデンフロイデ」(他人の失敗や不幸を嬉しいと思う感情を表わすドイツ語)を活用する方法があると綴った。その際は、自分に沸き起こってきた「恨み」を晴らす方法としては誤魔化しだと否定的にとらえていたが、この感情を小説やドラマなどの創作エンターテイメントに投影していることに対しては、内心ではどちらかといえば肯定的な受け止め方をしていた。 私は基本的に因果応報を信じており、悪いことをした人はその報いを受けるべきだと考えている。だから、「忠臣蔵」や「水戸黄門」、「大岡越前…

  • 上質の歴史小説は面白いなあ!~葉室麟著『実朝の首』を読んで~

    今月8日(日)、松本潤主演のNHK大河ドラマ「どうする家康」の初回放送を視聴した。今までの徳川家康像とはかなり異なるイメージだったからか、ちょっと拍子抜けした感じだった。また、テーマ曲も題字も、豊かな感性に乏しい私には少し違和感があった。多くの視聴者は、どんな感想を持たれただろうか。因みに平均世帯視聴率は、15.4%(関東地区、速報値/ビデオリサーチによる)だった。前作の小栗旬主演「鎌倉殿の13人」の初回が17.3%だったらしいから、1.9ポイントのダウン。この10年間でも、2018年の鈴木亮平主演「西郷(せご)どん」と同率の最下位になっている。今後、「どうする家康」をどれだけの国民が視聴する…

  • 読解の秘訣としての「解釈学的循環」という概念について~山口尚著『難しい本を読むためには』から学ぶ~

    2023年元日。昼前に長女たち家族3人、昼過ぎに二女たち家族3人が、我が家へ年賀の挨拶に来てくれた。皆で華やかなお節料理を囲みながら、成長著しい孫たちの話を酒の肴にして愉快な時間を過ごした。食後は、娘たち夫婦と孫Hは任天堂スイッチ・スポーツのゴルフで盛り上がっていたので、私は孫Mを抱っこして近所の散歩を楽しんだ。つい2週間前にも二女とMがお泊りをしたので、Mはもうすっかり我が家や近所の様子には慣れたのかリラックスした表情に満ちていた。久し振りに賑やかな元日になり、私たち夫婦にとって爽やかな新年のスタートを切ることができた。 さて、私の新年最初の読書対象は、昨年最後の出勤日になった12月26日に…

  • 気骨ある“精神の革命児”逝く!~渡辺京二著『さらば、政治よ 旅の仲間へ』読んで~

    今年のクリスマスの日、日本近代史家で評論家の渡辺京二氏が熊本市の自宅で老衰のために92歳で亡くなったことが報じられた。渡辺氏のことについては、幕末・明治期に訪日した外国人たちの滞在記を題材として、江戸時代を明治維新によって滅亡した一つのユニークな文明として甦らせた『逝きし世の面影』の著者として知っていた程度であったが、私はこの訃報に触れてある種の喪失感のようなものを抱いた。その理由はよく分からないが、もっと渡辺氏の生きざまについて知っておくべきだったという悔恨があったからではないか。しかし、私は今までに一度も渡辺氏の著書群に目を通すことはしていなかった。私は弔意を表するつもりで、手元の本箱の中…

  • 二人の孫の成長を実感したクリスマス会~孫たちの現況報告を兼ねて~

    世間でいう「クリスマス」は今日だが、我が家の「クリスマス会」は先週の土曜日にもう済ませた。久し振りに長女と二女がそれぞれの長男(私たち夫婦にとっては孫たち)を伴って来訪してくれたので、家族そろって妻の誕生日(12月29日)の前祝いを兼ねて行ったのである。妻が丹精を込めて作った料理と、クリスマスとバースデイを祝うケーキなどが並んだ我が家の食卓は、普段とは違って華やかな雰囲気に満ちていて、二人の孫たちも会の始まりを今か今かと待ち望んでいる様子だった。特にHは、妻が味付けたローストチキンにかぶりつきたくて我慢ができないようで、何度も食べる素振りを見せていた。それに対してMは、食卓に並んだ料理を不思議…

  • 何でも「歳をとる=老化」のせいにしてはならない!~平松類著『老化って言うな!』から学ぶ~

    「歳をとると、眼も老化するからしかたないね。」 「白内障の手術をすることにしたよ。」と妻が告げた後の私が言った言葉。 「歳をとると、首を痛めることがよくあるよ。」 「原因は分からないけど、首の左側が痛いのよ。」と妻がつぶやいた後の私が言った言葉。 どちらの言葉も、白内障や原因の分からない首の痛みを「歳をとる=老化」の現象と考えての発言である。ところが、ところが…である。それらは、老化ではなく、「心身の正常な変化」であるという、目から鱗の本に出合った。『老化って言うな!』(平松類著)である。 著者の平松氏は、現在、二本松眼科病院、三友堂病院に勤務する眼科専門医であり、今までに延べ10万人以上の高…

  • 「最後の活動期」と言われる70代をどう過ごすか?~和田秀樹著『70歳が老化の分かれ道―若さを持続する人、一気に衰える人の違い―』から学ぶ~

    前回は、久し振りに「健康・スポーツ」のカテゴリーの記事を投稿した。ここ数年は自分の第2の人生をどう過ごしたらいいか、新たに始めた特別支援教育指導員の仕事をどうしていけばいいか、また二人の孫とどう関わったらいいかなどについて考えることが多く、「人生・生き方」や「子育て・教育」のカテゴリーに関する記事の投稿が多くなっていた。その間、「健康・スポーツ」について関心がなくなった訳ではないが、コロナ禍でテニスコートの使用が制限されたために、還暦を過ぎてから始めた「硬式テニス」をする機会がなくなってしまったことも影響して、趣味としての「スポーツ」の実践から遠ざかってしまった。また、今年は「腰椎脊柱管狭窄症…

  • 「心療整形外科」で腰痛を治す!~谷川浩隆著『腰痛は歩いて治す―からだを動かしたくなる整形外科―』から学ぶ~

    先日、5回目の新型コロナウイルスのオミクロン株対応2価ワクチンを接種した。幸い副反応はほとんど出なかったので、いつも通り食後のウォーキングを妻と共にした。そもそも私がウォーキングを始めたきっかけは、55歳の時に受けた人間ドックの結果、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールが高値になったために、「脂質異常症」と診断されたこと。その予防のための運動療法の一つとして始めたのである。それ以来、2度の「虚血性腸炎」による短期入院や「腰椎椎間板ヘルニア」による約2月間の療養生活等による何度かの中断はあったが、その度に再開して今まで続けてきた。現在は週4日程度、夕食後に1時間弱のウォーキングと約5分間のスト…

  • 「がんばればできる」という不自由!~浜田寿美男著『心はなぜ不自由なのか』から学ぶ~

    「やればできる!」 最近、テレビでよく出演しているお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸が連発するキャッチフレーズである。このフレーズのルーツは、高岸の母校・済美高校の校歌の中にある、『やればできるは魔法の合言葉』という歌詞である。元高校球児の高岸が、試合に勝って校歌を歌う時にこの歌詞に励まされていたことから、様々な人を応援するという意味を込めてこのフレーズを使っているらしい。 確かにこのフレーズはとてもポジティブであり、困難なことに出会って逡巡している人々の背中を押してくれる言葉である。「やる」「やらない」は個人の自由であるが、何かを成し遂げようとするなら、まず「やる」という行為を選択する必要が…

  • 「無意識データ民主主義」という構想に未来を託したい!~成田悠輔著『22世紀の民主主義―選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる―』から学ぶ~

    私がたまに観る報道や討論等のテレビ番組で最近よく目にする、メガネのフレームの左右が丸と四角になっている男性コメンテーターがいる。肩書はアメリカのイエール大学助教授。聞くところによると、日本では半熟仮想株式会社の代表をしているらしい。また、経済学者やデータ科学者の肩書もある。私は“半熟仮想”や“データ科学者”という聞きなれない言葉に、興味をもった。さらに、ある番組の中でインタビュアーが「これからの社会で注目する人は、どんな人ですか。」という質問をした時、彼が「変な人です。例えば、不登校になって引きこもり、テレビゲームしかせずに生きている人とか…。」と発言したことにも、私の関心バロメーターの針が触…

  • 「限界哲学」という考え方って、面白い!~上原隆著『こころが折れそうになったとき』から学ぶ~

    もう一週間が経ってしまったが、10月19日(水)は私の68回目の誕生日だった。先々週の日曜日には、娘二人と孫二人が自宅を訪れてくれて、バースデーケーキを一緒に食べて前祝いをしてくれた。また、当日の夜は妻と二人で、女性に人気がある近くの居酒屋に行き祝杯をあげた。久し振りに外でアルコールを嗜みながら、少し贅沢なディナーを楽しんだ。普段の食事は妻が健康のためを考えて、塩分の少ない薄味の料理を作ってくれているので、当夜の食事は私の舌には味が濃いように感じた。でも、美味しかった。「食」は油断すると、強い欲望を駆り立てる。「美味しいものを食べたい!」という衝動に突き動かされてしまうので、健康のためには日々…

  • 生活保護の受給申請を扱う窓口対応のあり方について~中山七里著『護られなかった者たちへ』を読んで~

    円安が止まらず、物価も高騰している。公的年金も減額されて、年金生活者の暮らしは楽ではない。幸い自宅の住宅ローンは退職金の一部を充てて完済したので、住居費はいらないから私たち夫婦は気が楽である。また、私たちは重症化している持病らしきものがなく、医療費もほとんど掛からない。だから、家計の主な支出は光熱費と食費、衣料費、さらに意外と高い各種の税金ぐらいである。今のところ、私は仕事をしてわずかの給料を得ることで、何とか現職時代の生活レベルをほぼ維持しているが、完全にリタイアした後は倹約しなければならないだろう。しかし、それでも老夫婦だけの所帯としては、世間的にはまだマシな方かもしれない。 小泉政権時代…

  • 学校を「共生社会」にするために大人ができることとは?~本田秀夫著『学校の中の発達障害―「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち―』から学ぶ~

    秋らしい日が続くようになったので、私は久し振りに昼休みを利用して、職場近くのデパートに入っている紀伊国屋書店へ行ってみた。特別にはっきりした目的があったわけではない。最近、書店へ行く暇もなかったので、どのような新刊書が並んでいるのか知りたいという程度の目的であった。時間を気にしながら、足早に店内を見回っていると、興味を引く新刊本を見つけた。『学校の中の発達障害―「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち―』(本田秀夫著)という今の仕事に役立ちそうな本である。私は、今まで本田氏の著書を数冊読んで、「発達障害」をもつ子どもたちへの適切な支援のあり方について有益な示唆を得ていた。だから、早…

  • やっぱり紙の本の方がいいなあ!~塩田武士著『騙し絵の牙』を読んで~

    日々の雑用に追われ、ブログを更新することができない日々を送っていたら、もう10月になっていた。朝晩が涼しくなったなあと思っていたら、秋祭りの時期を迎えて急に日中の気温が20℃ぐらいになり、足早に秋本番を迎えた。“秋”と言えば、「食欲の秋」「行楽の秋」「芸術の秋」等の言葉が思い浮かぶが、私はやっぱり「読書の秋」が一番しっくりくる。酷暑の外気に包まれた冷房の効いた室内での読書より、私は少し冷気を含んだ外気に触れながら、じっくりと本の世界に浸る方が好きである。ただし、最近は“じっくり”と過ごす時間的・精神的な余裕のない日々を送っているので、就寝前後の寝床での読書時間を少し長めに取っている。 夏頃から…

  • 約20年前の「村上龍」の学校教育に対する問題意識とは?~村上龍著『希望の国のエクソダス』を再読して~

    前回の記事で、村上龍著『オールド・テロリスト』を取り上げて、私の「村上龍」作品の読書体験の概要を述べた。その際に、私の興味内容の転換点に位置付けたのが、教育問題に対する彼の課題意識の高さを表した『希望の国のエクソダス』という作品であったことに触れたのだが、では彼の学校教育に対する問題意識とは何だったのだろうか。私はそれを改めて確かめてみたい衝動に駆られて、約20年前に読んだ本書を再読してみた。 そこで今回は、本書を再読した簡単な所感を綴った後で、約20年前の「村上龍」の学校教育に対する問題意識について、本作品の中でポンちゃん(不登校の中学生グループの一つASUNAROのリーダー)が国会中継で語…

  • 現代社会におけるマスコミの自己欺瞞について~村上龍著『オールド・テロリスト』を読んで~

    隣の市で「本」をキーワードにした活動を展開している団体が、毎月第1土曜日か日曜日に同市のJR駅近くの手作り交流市場で「古本交換会」(1冊につき1冊交換)を開催している。私は、今年になって気が向いた月には、不要になった文庫本を数冊車に乗せて、この「古本交換会」へ片道約20分掛けて行っている。もちろん気に入った古本があれば交換して帰るのだが、今までの交換本10冊ほどは積読状態になってしまっている。でも、今回読んだ『オールド・テロリスト』(村上龍著)という文庫本は、先月の交換本でありほとんど積読状態を経験しなかった本である。 では、なぜ本書をすぐに読もうと思ったか。それは、「村上龍」が著した比較的最…

  • 子どもは小さな科学者!~現代教養講座(放送県民大学)で学んだこと~

    9月4日(日)の午前中、私は本県の生涯学習センターが主催するコミュティ・カレッジを初めて受講した。なぜ受講してみようと思ったかというと、本講座のテーマが「小さな科学者としての子ども―幼児教育の再発見―」だったからである。特にサブテーマに即した内容に興味を惹かれた。私が地元の国立大学教育学部附属小学校に勤務していた頃に低学年を担任することが多く、そのために同じ敷地内にある附属幼稚園と連携して「幼年教育研究」を進めていたことがあり、一時は研究責任者を任されたこともあった。また、現在の仕事においても、保育園や幼稚園、小学校低学年の子どもたちと接することがよくあり、私は幼児教育に対してずっと課題意識を…

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